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女子会板/2

174うー:2013/01/14(月) 11:59:53 ID:waBIOL7w
    すずちゃん

 大学生のころ、梅田地下センターの蕎麦屋で皿洗いのアルバイトをしていた。
夕方、学校から帰った私は中崎町の男子寮に本を置き、歩いて蕎麦屋まで通った。
途中に二階建ての女子寮があり、その一階には蕎麦粉の入った袋がいっぱい積まれていた。

 この袋の前で毎日、店に出ず漬物を刻んでいる女の子がいた。すずちゃんと呼ばれていた。
「わたしも店に出たいな」ある日、ぽつんとすずちゃんが私に言った。
 どういうわけか、すずちゃんは店に出ず、いつも漬物を刻んでいた。

 夏のある夜だった。皿洗いの仕事から帰った私は、空腹のためラーメンを食べに外へでたのだが、
戻ってみると寮の入り口に鍵がかかっている。締め出されたのだ。女子寮まで歩き、開いていた二階の
窓めがけて十円玉を投げ入れた。私に気づいたすずちゃんが寮の玄関のドアを開けてくれた。
事情を知ったすずちゃんは、空いている二階の部屋で寝られるよう仲間に交渉してくれたが、結果はだめだった。

 私は一階の蕎麦粉の袋の上で寝ることになった。ごめんね、とすずちゃんがなぐさめてくれた。
すずちゃんはどうして漬物ばかり刻んでいたのだろう。すずちゃん、どうしていますか。
 あの夜はありがとう。昭和四十一、二年のことである。

福岡完夫(54)病院職員 奈良県三宅町  『夕焼けエッセー』産経新聞社


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