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倉工ファン

288名無しさん:2018/10/14(日) 12:52:40
「 甲子園の詩  ( 阿久悠 ) 」

1989年8月9日  一回戦  「 早過ぎる夏の終り 」


奇跡の春は 夏には無情の蜃気楼となった 連覇の夢は どこかかけ違えたボタンのように

嚙みそこねた歯車のように おそらくは切実感を伴わぬままに スルリとすり抜けた行ってしまった


勝者の誇りを胸に飾って行進してから わずか数時間 君らが敗者となって去る姿を 誰が予想しただろう

しかし 絶対のないのが現実で 可能と不可能は どちら側からも焦点が合うという教訓を 

酷薄なまでに知らしめて 試合は終ってしまったのだ


野球というゲーム 同じ一点が日によって グラムとトンほども違うもので だからこそ 一点にこだわるべきだと教える

そして それは まさに 生きることそのままで 春にミクロの運命線を突破した 東邦高ナイン 夏は教訓のページを数枚めくった


君たちに もし 悔いるところがあるとしたら 完全燃焼の炎を 自覚することが出来なかったことだろう

さらば 春の勝者 早過ぎる夏の終り グラウンドから一瞬の闇の通路を通って 引き上げて来る君らに

それでも夏は灼きついたと 声かけたかった



人で埋めつくされたスタンドは、豊饒な光を分解して描く点描画に見える。 緑の芝生は、夏の日に既に葉先が焦がすものと、
土から新に芽吹くものが、数刻で入れかわる。 鉄塔で雀が遊びつづける。 青空はないが、光はたっぷりとある。

そのグラウンドから、勝者も敗者も同様にくぐって退場して来るトンネルがあって、当然のことに逆光線である。
ドラマの後の主人公たちを迎えるには、効果があり過ぎる自然の仕掛けである。 多くを考えようとすると、いくらでもひろがる。

倉敷商と東邦高の試合の直後、ぼくは、その中に立って、勝者と敗者を見た。 不思議なことに、勝った者も、
敗れた者も全く同じように呆然としている姿が印象的であった。 とにかく、波乱の幕が開いた。


( 倉敷商2-1東邦 )




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