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女が男を金的攻撃で倒すSS

1管理人★:2017/01/18(水) 12:30:15 ID:???0
2chスレッドの避難所になります。

版権(漫画・アニメ・ゲーム)・オリキャラ等の
金蹴りや電気按摩といった金的攻撃があるSSならなんでもOK!
ただし女→男でお願いします。

それ以外は別所でお願いします。

389名無しさん:2019/07/15(月) 22:37:59 ID:JXIdl3KE0
ぜいたくを言うと、たまには金蹴りイラストも見たい
金蹴りドアップで描いてある物がイイ!

390名無しさん:2019/07/16(火) 20:52:21 ID:S/KMKWTA0
前いたエクストリームの人とか嫁婿の人とか好きだったわ
このスレの存在を知らないとか?

391名無しさん:2019/07/16(火) 21:09:57 ID:Td0eCJbg0
嫁婿の人はここにも投下してる
エクストリームの人は分からないけど普通に力尽きたんだと思う

392名無しさん:2019/07/18(木) 02:08:34 ID:xkeyOhoo0
ロッカーの中に隠れてたら見つかった話とかスパリゾートとか未だに待ってる

393名無しさん:2019/07/18(木) 12:02:43 ID:33w0PoxE0
>>392
ロッカーの中の話って何?
見たい

394名無しさん:2019/07/18(木) 20:39:09 ID:NeqOhf2Q0
導入が丁寧なだけに続きが気になるよね

395名無しさん:2019/07/27(土) 15:52:18 ID:fmD6PwHo0
女子が一方的に話して、男キャラのセリフがない物も
SSに分類される?

396名無しさん:2019/07/27(土) 23:31:38 ID:oiSdH3B.0
自分はアリだと思う

397名無しさん:2019/08/09(金) 00:21:38 ID:d4dJevAs0
過去の遺作を見て楽しむのも限界だわ
執拗に責めるのも好きだけどエクストリーム空手みたいに互いの心理の描写みたいな方に重きを置くのが好きだった

398名無しさん:2019/08/09(金) 23:49:26 ID:Yyl/2HJ.0
むかーし、むかしの読み物。アーカイブにぶちこんで貰えば。
読めなくなってるのも多数。保健室の話が好きだったわ(´・ω・`)

ttp://raq1.tlcnet.com/users/tamahimeden/bbp/toukou/syousetsu/index.html

399名無しさん:2019/08/13(火) 04:33:22 ID:.mKf1WhY0
超気になるけど見れない

400名無しさん:2019/08/13(火) 22:00:02 ID:AywWQ/120
>>398
さんくす
しっかり潰してるの多くて良かった

401名無しさん:2019/08/14(水) 01:08:26 ID:guJ4BSnE0
見れないんだが

402名無しさん:2019/08/17(土) 00:22:34 ID:0nXKin3U0
>>398
こんなサイトが昔にあったとは知らなかった。
潰す所までやる話は滅多に見かけないのでとても貴重。
ありがとうございました。

403名無しさん:2019/08/18(日) 17:22:38 ID:WwJ7W2Cw0
俺も初めて知った
昔から色々なキーワードで検索掛けていたけど
なぜ見つからなかったか、謎
まだ埋もれているサイトがあるかも知れない

404名無しさん:2019/08/28(水) 01:28:03 ID:Kz.LC5KE0
みれない・・・

405名無しさん:2019/08/28(水) 11:06:03 ID:8pWVXYSQ0
普通に見ることはできないんじゃないか? たぶん。
アーカイブにぶち込めって書いてるし。web archiveで見るよろし。
なんていうかゲイの人って文章力高いね。今は亡き?kekkoのHPに
男男物を書く人が男女物を書いていくつか投稿してたけど、
抜きん出た品質の高さだったわ。

406名無しさん:2019/08/28(水) 16:46:44 ID:MeSGLwDQ0
というかこの界隈自体が創作力低いんだよね
絵描ける人も文章書ける人も少ない
ゲイの玉責めだって相当なニッチジャンルだろうに作品の質も量も段違いで辛いわ

407名無しさん:2019/08/28(水) 20:15:21 ID:9ui1o7uc0
スカトロやグロリョナの方が需要、供給、知名度も高いというね。
それに対して玉責めは「ずっと書(描)き続ける人」が殆どいない。

408名無しさん:2019/08/29(木) 00:02:20 ID:4pBkok0w0
>>406-407
羨望や悲観するのは分かりますが、もう少し書き方はありませんか
界隈全体を貶める意図はないとは思いますが、創作力や継続力が低いなどと言うのはいかがなものかと

続くようでしたら、SSスレに相応しくないと思いますので議論スレで返信します

409名無しさん:2019/08/30(金) 11:22:22 ID:trBYA3x.0
古典太平記のボイス作品は素晴らしいですね。
管理人さんを尊敬します。

410名無しさん:2019/08/30(金) 15:33:33 ID:OWkLNXqI0
『ド聖さん』ってブログはどうなん?

411名無しさん:2019/08/30(金) 18:49:38 ID:trBYA3x.0
>>410
金蹴りよりも強制射精に力を入れている感じ

412名無しさん:2019/08/30(金) 22:55:23 ID:kUEEx8m20
同時にエロもとなるとそうなるんだろなぁ
もしくは女勝ちの表現を金的以外にも出したいからとか

413名無しさん:2019/08/31(土) 09:54:41 ID:jZuYWpIY0
男女物と男男物の混載で思い出したけど、ここのスレ民的に英語コンテンツってどんな扱い?
読むのに時間がかかるから発掘するのは手間だし、過疎状態なのはたぶん変わらんけど、手を
付けてないなら未開拓の金鉱みたいなもんだと思う。俺は一時期夢中になった。

414名無しさん:2019/08/31(土) 18:56:19 ID:t9bH4J1A0
>>413
海外サイトは全然手をつけていない
TOEICの勉強でもしようかと思い始めた

415名無しさん:2019/08/31(土) 23:26:54 ID:Dxgvetdg0
>>408
おっしゃる通り貶す意図は全く無く事実を言っただけですね
特別棘のある言い方はしてない筈ですし、正直何がそこまで気に障ったのかさっぱり分かりませんが議論スレで話したいなら応じます

416名無しさん:2019/09/02(月) 12:45:03 ID:F8tubvc20
だったら自分でレベル高いのいっぱい作ってくださいとしか
てことだと思うけど

417名無しさん:2019/09/04(水) 00:47:50 ID:pVVLfx8c0
ss作るより、古典太平記みたいにセリフ集にして音声化する方が、創作のハードルも低いしコンテンツとして需要ある気がする

418名無しさん:2019/09/04(水) 23:24:13 ID:5wlh/Zjk0
たしかにQ&Aを読み上げるだけなのに興奮するよな
DVDとかでも掘り下げて経験談を語ってくれるものは見たことないし
盲点を突かれた感じ

419名無しさん:2019/09/05(木) 13:02:21 ID:nyMrbgwc0
台詞だけ作って依頼するのも一つの手ではあるんだけどねぇ
何なら絵描いて貰って良い訳で
ただやっぱり自分で創作出来る人が多い方が影響力はあるし、あわよくばそれでこのフェチに目覚める人が増えれば供給も多くなって万々歳なんだけどなぁ
それが目的でSS書いてた時期もあるし

420名無しさん:2019/09/05(木) 21:22:05 ID:2P5AFYjY0
古典太平記の1番新しいボイス作品が1番好き
ただ、恋愛テクでも古典でもないよなw
でも、ボイスを聞いた女性がSっ気に目覚めてくれると
それはそれでうれしい

421名無しさん:2019/09/12(木) 10:23:43 ID:YlwbkGTo0
昔pixivで艦これとかミックスファイト倶楽部とか
ミックスファイトのシリーズ物を書いていた人もう一度復活しないかなぁ。
金蹴り率かなり高かったしフェチのツボついていたし
それでいて男と女どっちが勝つか分からない感じがすごく良かったのに。
なんで消してしまったんだ・・・

422名無しさん:2019/09/12(木) 19:11:13 ID:OcuRl3XA0
エクストリーム好きだったんだけどな…

423名無しさん:2019/09/12(木) 20:25:30 ID:rSecAIv.0
エクストリームとか嫁婿の良いところはやられた男が無闇に叫ばないところ
自分のプライドとかで声を押し殺すも我慢できない感じが本当にすき
ついでに言うと設定が高校生くらいで多感な時期なのもいい
復活してくれー

424名無しさん:2019/09/12(木) 21:20:33 ID:C1HWPqzk0
昔あったらしいけど、あなたに○○ついていますか?
みたいな名前のサイト。URL知ってる人いないかね。
今だったらアーカイブでみれそうなんだけど。

425名無しさん:2019/09/12(木) 22:27:58 ID:8wui0XE60
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こんな思いを噛み締めるのは、自分が最後でありますように------

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「〜〜〜〜♪」

軽快とは言い難い調子の鼻歌が響く。鬱蒼とした森の中、俺以外の気配は露ほども感じない。
いや、生き物ならば掃いて捨てるほどいるのだろうが。その姿を視認することは全くといっていいほど無かった。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪」

なんという歌なのかは知らない。歌詞の意味も分からない。生まれる前の曲だってことは知ってるが、それだけ。
自慢じゃないが、俺と英語は縁遠い。それこそ、俺と女ぐらい......自分で言って悲しくなってくるな。ただ、切なげなメロディーが脳裏に焼きついて消えてくれない。
そういう経験、アンタ達だって覚えがあるだろう?

昼前に街を発って、もう日も大分傾いた。シャツが身体に貼りついて、無言のまま不快感を訴えてくる。グラサンの下、目に入りそうな汗を拭う。
俺が不機嫌だと察してか、煩いほどだった蝉の声も、こころなしか控えめになったような気がする。とはいえ、あくまで気がする、程度だが。

少し前に乗り捨てた原チャのコトを恨めしく思う。オンボロもいいトコロで、だが目的地までは持つと考えていたがとんだ見込み違いだ。
持ち主の顔は忘れた。多少腕力に訴えさせてもらったが、快く譲ってくれたと認識している。アイツも、あのガラクタを買い換えるいい機会になっただろう。
思い入れだとか、愛着だとか。そんなモノは幻想で不要だ。そんなモノがあるからこそ、人は終わりにへばりついて離れられない。

スマホで確認すると、目的地までは1kmを切っていた。平地の1kmは気にもならないが、山道ならば話は別だ。
しかも、人跡が絶えて久しい獣道。正直、後悔しないといえば嘘になる。だが、ここまできて戻るのも業腹だ。進退窮まって惰性で歩みを進める。まさに俺の人生だな、と冷笑。

GPSだけを頼りに進む俺が生まれ育ったのは、どこにでもあるような地方都市。俺が生まれる前に、死んでしまった都市だった。
よくある限界集落のように、派手に消滅したわけじゃない。主要産業であった鉱山が廃れ、緩やかに活気を失っていったというだけの話。

景気が冷えれば、人心も荒む。当然だろう?朝っぱらから、暇とエネルギーだけを持て余した大人が街をふらついてんだから。
人心が荒めば、治安はお察しだ。そこかしこで小競り合いやら、殴り合いやら。誰もが自分を持て余していて、持て余したもののぶつけ先を求めていた。
コミュニケーションの通貨は、言葉と暴力。物心ついてからそういう環境で育った俺には極めて自然、だが実際は世紀末だったんだろうな。
西暦が、千年紀が切り替わった後に世紀末を迎えるなんてな。皮肉だが、あの遅れた街には相応しかったのかもしれない。

荒廃のピークは、俺が中学に上がる直前。5〜6年ほど前か。他所では中々起きないだろうコトが、ここでは日常茶飯事だった。
例えば。一つしかない高校で殺人事件。女生徒が、男子生徒を殺した。例えば、街の名士の娘が精神を病み、それが原因で一家とも街を追われた。
どこかネジが狂ったような出来事が立て続けに起きては、日常に溶けて流される。そういう日々を送ると、ネジが外れた日々そのものが日常に変わる。
幸いなのは、麻薬が蔓延しなかったことぐらいか。モラルが高かったわけじゃない。単に、この街は病みすぎていて採算が取れると思われなかったのだろう。

で、だ。そのまま病状が進行するとどうなると思う。答えは簡単。街も死ぬのさ、人間と同じように。
見込みのあるヤツほど早めに見切りをつけて去っていく。若い連中は潮が引くように消えていく。沈む船からネズミが逃げ出すみたいにな。

426名無しさん:2019/09/12(木) 22:28:35 ID:8wui0XE60
で、残るのは。俺たちみたいなロクデナシ、他所では生きていけないだろう底辺連中や、流されるまま惰性で生きているゾンビどもだけだ。
街は既に末期の状態で。誰かが、死に水をとってやらないといけない。だが、屍のような連中は、誰も街を看取ろうとはしない。

腐っても故郷だ。腐敗が進みすぎて白骨になっていても、街が死んだとは認めたくないのかもしれない。俺もそうだから、気持ちは分かる。そして、だからこそ気分が悪い。
―――誰か。誰かが、この街に引導を渡さなければならない。そう、誰もが思っていた。それは、ココに何の思い入れも無く、だからこそ無慈悲に終わらせることが出来る誰か、だ。
救世主願望、とでも呼ぶのだろうか。世紀末も四半世紀近く経ち、それでもこの街はメシアが到来するのを待っていた。

と、目の前が開ける。獣道から、踏み固められた道に。何故そう思ったかって?タイヤ痕があったからさ。
上方は深緑の天蓋で覆われていて、成程、航空写真じゃ分からない筈だ。ほっとしたか?いや、馬鹿馬鹿しい。むしろ落胆したね。
車輪の轍から、この先には人間が住んでいるというのは明白だったから。そういえば、俺が誰で、何をしているのか言ってなかったな。


名前は、鷹ノ上 隆一。年齢は18……性別は見ての通り、男だ。高校は辞めた。入って二月と保たなかったけど、中退といっていいのかね?
ほんの数年前には人死にさえ出したというのに。入学した頃は事勿れ主義者しかいなかった。退屈って概念が顕現したらば、さしずめあんな感じなんじゃないかね。
気に食わないヤツをぶん殴ったら、それで停学だと。いや、参ったね、実際のトコロ。この街だと、ありふれたコミュニケーションの一つだって当然知っているだろうに。

実家との縁が切れたのも、その頃だったかな。親父とお袋、そして妹が一人。皆、俺と違って頭の出来が良かったんだろう。
それまで散々厄介事を起こしてきた長男の面倒は、もう見きれないっていうわけだ。頭の宜しい妹を、あんな高校にやれないってのもあったのかもな。
とにかく。それを契機に家族もこの街を捨て。あとは俺が、この街の申し子みたいな俺一人が残されたってわけさ。

別に怨んじゃいないさ。むしろ、感謝している。俺は生まれつき身体が壮健頑丈だったからな。身長も無駄に薄らでかく180はゆうに超えてる。
身体がでかくて頑丈だというのは、ココで生き抜くのには何よりの財産だ。暴力に勝れば大抵の無茶は通せる。少なくとも、この街ではな。
だからこそココは住みよくて。だからこそココを捨てる踏ん切りがつかないのかもしれないと思うと良し悪しだけどな。

向かっているのは、所謂ところのお化け屋敷。いや、この年齢で肝試し。情けなくて、逆に怖いし笑ってしまう。
彩色された泥水が出てくると専らの評判、行きつけの場末、くたびれた盛り場で旧いツレ。谷崎のアホから聞いた冗談が全ての起点だ。

ソイツが言うには、この街の外れ、山を一つほど越えたところに呪われた神社があるらしい。そこには幽霊か山姥か……はたまた精神異常者か。
恐ろしい化け物が潜んでいて、訪れた男は皆、想像を絶する恐怖を味わうらしい。ビビりあがる余り、性格まで変わっちまったヤツも居る、とか何とか。

この街に住んで久しい俺でも聞いたことが無い与太話。そんなモンがあるなら町興しにでも使ったらどうだ、と笑い飛ばす。
だが、珍しくソイツは引かず。スマホで地図を見ると、確かに噂の場所には何らかの建物が存在するようにも見える。

詳しく聞けば。ソイツも野次馬根性旺盛なクズどもの御多聞に漏れず、実際にソコまで行ってきたらしい。マジで幽霊がいたぜ、と真剣な表情で告げてくる。鬼火と共に現れた、と。
どんなヤツだ?野郎か、女か、と聞けば、そこで途端に下卑た笑いに変わり、女だった、と笑い出した。何やら、女の幽霊に下半身を見せ付けてから、一目散に逃げ帰ってきたのだとか。

キチガイかお前は、と問えば、幽霊にチンコを見せ付けた勇者と呼んでくれ、と笑って返される。御立派なモノを拝めて未練も消えたろと言われ、粗品でよく言う、寧ろ本物見たいって未練ができたんじゃねーか、と返す。
視線を合わせて、沈黙一つ。そして、爆笑。今度、一緒に見せ付けにいかねーか、と誘われ、ホモかテメーは、と混ぜっ返す。また爆笑。

……ま、そのときはそれで話しは終わり。高校の友人の消息を話す方に話題は移った。
高校を辞めた時点で、俺と連中の接点は切れていて、それでも知り合いの現状を聞くのは心落ち着くような気分になる。

427名無しさん:2019/09/12(木) 22:29:25 ID:8wui0XE60
こんな場所だ。街を去ったヤツ、揉め事に首を突っ込んで、下らない事故で命を落としたヤツ。人生、一期一会だという言葉は、ココでは生の現実だ。
俺にも、幼馴染が居た。餓鬼の頃は、コイツと結婚すんのかな、と朧気に想像していたのを覚えている。小学、中学とずっと一緒だったソイツとも、高校中退で縁が切れた。

縁を切りたかったわけじゃない。ただ、ある日、ふっつりと音信が途絶えたのだ。死んだ、とは聞いていない。幾ら田舎でも、桜田門組はしっかり仕事をしていて。
流石に、死人が出たならばニュースやら何やらで耳に入る。俺が、新聞の地方欄にだけは目を通すのも、そういう理由だ。つっても、自分で取ってるわけじゃないけどな。

最後の記憶は、クラスの前で立ち塞がった姿。何処で聞きつけたのだろうか、俺が高校を辞めるという噂は風よりも速く広まっていた。
まぁ、基本は腑抜けの群れ、烏合の衆だ。大体の連中は、『和』を乱す異物が消えるって清々とした面をしていたぜ。

だが、アイツは違った。隆一、一時の感情に流されないで、将来のことを考えて、と懇願してきた。
いつもそうだった。俺が誰かを殴るときも、自分が殴られたときをと考えろと。喝を入れてやろうとしたときも、入れられることを考えろ、と。
正直、辟易したこともあった。でも、なんだろうな。不思議と、嫌いにはならなかった。それこそ、腐れ縁ってヤツだと勝手に思ってた。

あの時は……そうだ。顔面に一発、拳を叩き込んでやったんだっけ。偉そうなお題目を唱えておきながら、それで終わり。
未練がましく俺の足にしがみついてきたが、軽々と振り払って。恨めしげな視線に、やり返せねぇ方が悪いと吐き捨てて。意気軒昂、揚々と高校から凱旋したんだっけか。

まぁ、意見の相違を腕力で通すなんてコト、俺にとっちゃ呼吸みたいなもんで。……?女を殴るのはいいのかって?……?何が駄目なんだ?
弱いから?か弱いから、守るべきなんじゃって?―――ハァ、馬鹿なこというんだな。逆だろ?弱いから、殴られるんだ。通り魔だってそうだろ?ヤクザやら何やらじゃなくて、弱いヤツが襲われるだろ?
弱いってことは、何をされても仕方が無いってことだ。やり返されるかもしれないなら、やらない。弱いモノを襲うなってのは、弱い連中が、『自分がやられたくない』から唱えるお呪いに過ぎない。

『強い』ヤツが似たようなお題目を唱えたって、ソイツがやられりゃ『お題目』なんて吹っ飛んじまう。自分じゃない『強者』は、『弱者』と食い合ってろっつーのが正直なトコロさ。
食物連鎖と同じだ。弱者は数だけはいるから……残酷な話だぜ。つまり、幾らでも替えが聞くってコトだからな。ま、せいぜい、群れて、物悲しく傷を舐めあっていればいい。ソレぐらいは許してやるさ。俺は優しいからな。

幼馴染も……ミヅキも所詮はそんな連中の一人で。腐れ縁は切れないハズだったが、それ以来。アイツが弱虫の輪から抜けられず、結局疎遠になったんだったな。
とはいえ、多少の風の便りもあったが……ある日、消息を絶って、それっきり。ん?やけに詳しいなだと?―――そうだな。何でだろうな。謝りたいと思ったことは天地神明に誓って無いハズだが……俺、何をしたかったんだろうな。
退屈だったからか。きっと、そうだ。死んだ街には刺激なんて無くて。女も男も、若いヤツは大体都会に行っちまって。あるのは、不味い模造酒だけ。俺が今、曰くつきの廃墟に向かっているのもそれが理由だ。

428名無しさん:2019/09/12(木) 22:30:02 ID:8wui0XE60
轍に沿って歩く。ぬかるんだ道は不快感を刺激して、それでも歩みを止めはしない。遠く、何かの灯が見えて、それが目的地だと理解する。
知ってるか?退屈は人を殺す。生きるには、刺激が必要だ。噂の廃屋……実際には誰か住んでるみたいだが……あの場所の話、街の誰もが知らなかった。いや、歳を食った奴らは知っていたのかも。だが話したがらなかった。
曰く、前段の『街を去った』名士の持ち物だったらしい……辺りの山々も含めてな。街を去って、それでも頑なに『ソコ』だけは、その一帯だけは手放さなかったらしい。

年嵩の連中は、『さもありなん』という顔をしていた。つまり、ソコには『手放せない』理由があることは明白で。だったら、好奇心がビンビンに刺激されるってのも自然の道理だろ?
だが……蓋を開けるとガッカリだ。大山鳴動してネズミ一匹ってトコか……単純に、ソイツが街を偲ぶための別荘なのかもしれないな。俺のダチも、結局ただの変態だったっつーわけだ。ま、コレはアイツの知り合いみんな知ってるけどな。

べチャべチャと音を立てて進むと、ボロボロに崩れた土塀に行き着く。不自然な人工物。自然がソレを呑み込まんとしているのか、何かの芽が生え蔦が絡まり茸も生して、森の一部と一体化しつつある。
一昔前は立派な山門だったのだろうソレも朽ち果てて、奥に見える社殿……神社だったのか、ココは……ソレも今日明日にでも自然に還りそうだ。俺の街に相応しい、死んだ建造物だ、そう思った。そして、死んだとも自覚出来ていない。

足を踏み入れると、糞の臭いと味噌の匂い。予期せぬ闖入者に驚き慌てたのか、鶏が騒ぎ立てる音が聞こえる。左手にはプレハブのこじんまりとした物置、そして左手奥にも多少は見れた平屋が見える。
外にはプロパンボンベが幾つかと、横付けされた軽トラ。味噌の香りはそこから漂ってきているらしい。何の気無しに、その建物に歩み寄ると―――いや、違うか、ココまで来て手ぶらで帰れるかと―――背後から、清廉な声が聞こえた。

「当家に、何か御用でしょうか―――?」

振り返ると、ソコには。お目当ての幽霊が居た。

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429名無しさん:2019/09/12(木) 22:31:00 ID:8wui0XE60
いや、幽霊の正体見たり枯れ尾花っつーのはこういうコトを指すのだろう。

身長は170cm無いぐらいか?年齢不詳、若々しくは見える。女にしては長身だ。化粧などはしていないのだろう、薄らと目の下に隈が出来ているのも分かる。
だが、恐ろしい程に容姿は整っていた。碧為す黒髪というのはこの出で立ちを指すのか。薄暗い中、黒光りするように艶々とした毛髪を右肩で束ねて。
出で立ちは、殆ど裸に近い。薄い身体の上、更に薄い襦袢。真っ白い襦袢を申し訳程度に羽織っている。頭に三角巾的なものがついていれば、文句の出しようが無い程度には完成された幽霊だ。

ただ、一点。画竜点睛を欠くのは、普通に足が生えていること。襦袢の下からババむさい下着と、『無い』ことで存在を主張する『女』が覗き。そこから、瑞々しい太腿が伸びているのが見える。

幽霊だ、山姥だの噂になったのも頷ける。こんな山奥で、やぶからぼうにコイツに出食わせば俺だってそう思うかもしれない。多少冷静なら……下着の上に襦袢のみ羽織った姿で、精神異常者だと誤認するやも。
だが、話はきっと単純だ。ココの住人が予期せぬ訪問者に驚いて、着の身着のまま、上っ張りだけを羽織って様子を見に来た、それだけのコトなのだろう。鶏舎も落ち着きを取り戻し、隣に家庭菜園が拵えてあるのが見えた。

「あの、聞こえていらっしゃいますでしょうか?お役所の方、ですよね?何か御用件が―――」

幽霊モドキは現状を把握できていないらしい。ポヤポヤとした空気を保ったまま、見当外れの問いかけを投げてくる。おいおい、俺が役所の人間に見えるか、と内心苦笑。役所は、街で唯一のマトモな職場だ。俺とは縁遠い。
極彩色のアロハに、膝丈、白の短パン。履いているのは、ゴム製のサンダル。あれだけ歩かされていなければ、髪も逆巻いた金髪で……グラサンと併せ、どう贔屓目に見てもチンピラ、半グレ。ヤクザと思われたって不思議じゃない。

茫洋とした雰囲気の女が、所在無く手持ちの行燈を揺らす。鬼火の正体はコレか。他人事ながら心配になってしまう程の無頓着さ。俺がその気になるだけで、次の瞬間には土の味を堪能させてやることが出来るというのに。
いや、コレだけの肢体を持っているんだ。組み伏されて犯されるコトに対する危機感ぐらい抱いてもいいんじゃないか?そうなっていないのは、単純に俺が硬派だから……というか、やり方を知らないからだ。
……死にたいなら笑えばいい。風俗なんて洒落た場所、あの死んだ街にゃ無いのさ。若い女は直ぐに出て行ってしまうし、それに。そも女連中は、暴力の価値を、中々正確に評価することも出来ないようだからな。

女が一歩進み、俺の顔を下から覗きこむ。物怖じしない様子、だが無防備が過ぎるんじゃないか?誰かから危害を加えられるなんて想像もしていないのか、そもそも何をされても構わないと思っているのか。女からは読み取れない。
襦袢の併せは緩く。この体勢からだと、決して豊満とは言えない、むしろ俎板と形容して差し支えない胸元がどうしても視界に入ってくる。覗くつもりはないとはいえ、見えてしまう。チラチラと。
―――俺は女じゃないから知らないが。家で寛ぐときは、その、ブラジャーって着けないモンなのかね。つまりは、何だ。その、桜色の―――靴が。……靴?靴だと?!


「曲者ーーーーッ!!!!」


背後から。また、背後からだ。今回は、何処か聞き覚えのある声が響いた。ただ、その声に払う注意は霧散していた。何故か―――簡単だ。見下ろす俺の視線の先……股間から、足が生えていたから。
一拍遅れて、身体が衝撃を知覚する。グラサンが外れ、どうしようもない悪い予感が全身を駆け巡る。何をされたか……理性では分かりきっている!キンタマを、蹴り上げられたんだ!そして、理性が認めたくないと叫んでいるのも分かる。

あらまぁ、と。女が口を覆って声を漏らす。股間から覗く足は、密着した女の股間をも同時に蹴り上げる……なんてことは無く。出っ張った部分が無いからこそ、紙一重の距離で静止。密着した女は、他人事のような態度を崩さない。
もしも。本当に意味が無いもしも、だが。目の前の人間が『男』だったなら……二人仲良く蹲っていたような蹴りだった。当たらなくとも。股間の直前を蹴り足が通過したなら、男なら腰を引いただろう。女は、女だからこその無反応。

また、一拍空いて。耐え難い激痛と虚脱感が、股間から全身に充填されていくような感覚を覚え、堪えきれず、膝から崩折れようとしたところで。後ろの誰かが腰にしがみつき、引き倒すようなタックルを掛けてきた。
先ほどの一撃が無ければ意に介す必要も無い程度の衝撃だが、『金的』を蹴り上げられた状態では抵抗すること値わず、そのままうつ伏せに組み伏されてしまう。腿裏に、重量感のある肉塊の感触二つ、それで背後の誰かが女だと理解。

430名無しさん:2019/09/12(木) 22:31:44 ID:8wui0XE60
いや、『ソコで』っつーのは語弊があるな。あんな、血も涙も無い蹴りをタマに叩き込めるのは、タマの痛みを知らない女に決まってる。だがその時は、その『タマ』の痛みに全身が満たされていて……そこまでは思考が回らなかった。

「このッ、腐れ変質者がッ!性懲りも無くッ、まーたこんな山奥にまでッ―――このまま絞め落としてやるから覚悟しなさいッ!!!!」

絞め落とすって聞いて、どんなコトをされるとイメージする?頚動脈を絞めて、意識をブラックアウトさせる……アンタが女なら、それだけで正解だ。だが、男なら―――
俺もその時初めて知ったよ。背後の女は俺の短パン、右裾から右手、左裾から左手を入れて、あろうことか、俺のタマを締め上げはじめたんだ。外そうにも……敵の身体は背後、太腿に上半身を乗せた体勢で両腕が届かねぇ。
そもそも、キンタマを握り締められて身体に力を入れられるワケがねーだろ?これも、女にゃ分からないと思うがさ。

男だったら、さ。最初の一撃で勝負あったって分かっただろう。生憎、俺に急襲を掛けてきやがった何者かは女で―――後で聞いたところだと、初撃でダメージを与えられたかどうか、半信半疑だったんだそうだ。
流石に潰すまで行ったら勝ったって思うけど、と笑い。そうは言っても、実際に潰した経験あるわけじゃないけどね、なんてはにかむ。悪びれなくのたまったソイツの顔に、俺のタマが縮み上がっちまったのは仕方が無いことだろう?
ともかく、この時はソイツが誰かも分からずに、地臥で必死に藻描いていたワケだ。

再度。あらあらまぁまぁ。頭上から能天気な声が降ってくる。距離にして1メートルも無いだろう。目と鼻の先で起きている修羅場に対して、何処か遠くの出来事としか認識出来ていないような、幽霊女が溢した声だった。

助けを求めようと顔を上げると……背後の誰かと揉み合いになった弾みだろうな、女の帯が外れ、前が全開に……晒された股間が、彼女は俺を苦しめている器官……タマなんて持ち合わせていないと無言の内に主張していて。
唐突に理解しちまう。俺のタマがどんな目に遭わされているのか……それに共感できる人間は、四方1km以内に誰もいないのではということを。背筋に、ヒヤリ、という感覚が走る。
当然共感できない背後の誰かは、五指を俺の肝心な部分に突きたてるようにして、ゴリゴリとソコを責め立ててくる。股間が痛み、激痛が腹痛にまで波及しつつあるのを、ソイツは全く感知しようともしていない。出来ない。
思わず許しを乞おうとして……激昂しているらしいソイツに、この感覚をどう伝えればいいのか分からず、言葉に詰まる。苦悶していると、更に肝が冷える台詞が投げつけられてきた。

「右のが大事?!左のが大事?!片方で勘弁してあげるけど……今度また来たら、残った方も潰してやるからねッ!!!女になりたくなかったら、二度とその面見せないことねッ!!」
「えーと、ミヅキちゃん?確かに女性はおタマタマ持ち合わせておりませんが……逆に男性がおタマタマを失くしたからって女性になるわけじゃありませんよ?」

調子外れの指摘が幽霊から零れたが、要点はソコじゃない。苦痛に煩悶し、朦朧とする頭の中に響いたのは聞き覚えのある名前で。
畜生、お前、昔からそーゆートコ潔癖なヤツだったよな、と恨む。怒りの理由は、つまり、田崎が……あの頭蓋骨に名産の蟹味噌が詰まっているようなアホが、チンコ見せつけに来たからだな、と。俺、関係ねーよ、とも。
郷愁と恐怖と、様々な感情が綯い交ぜになった俺が放てたのは、一言だけ。幼馴染の……片瀬 海月の名前。

「ミ、ミヅ、キ―――??」

「え?何よ……って、ちょっと何?アンタ、もしかして隆一?何でこんなトコロに―――って、ちょっと?大丈夫?!?」

テメェでタマキン握っておいて、大丈夫も何も無いもんだ。だが、驚いた拍子に海月の親指がタマの裏側―――副睾丸って言うらしい―――に突き立てられ。俺は、魂を搾り出される思いをしながら失神した。

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431名無しさん:2019/09/12(木) 22:32:19 ID:8wui0XE60
「だ〜〜〜〜〜〜〜〜〜からさ、マジでゴメンって!この通り!許してつかぁさい!!」

何で、こうなったんだろうな。失神していたのは、極短い時間だったらしい。幽霊……高屋敷 櫻子と名乗った……と海月は二人で、俺を母屋へと運び込んでいた。
クソ、このクラゲ女が……と憤懣遣るかた無い表情を崩さない俺に、数年振りに顔を見た幼馴染が拝み倒さんとばかりに頭を下げてきて。何故クラゲかって?そりゃ、海月って書いたらクラゲって読むだろーが、普通。

金的ってヤラれると気力が萎えるのな。そうじゃなければ、もう一回拳の味を思い出させてやったんだが……とても、そんな気になれない。そして、女の海月はそんな男の仕組みは知らないのだろう、俺の様相が意趣返しかと思っての謝罪。
餓鬼の頃は雰囲気への流されっぷりからクラゲだクラゲだと囃したてていたが、数年振りに相見えた彼女は、その、身体の一部がソレこそクラゲを抱えこんだように膨らんでいて……あぁ、そうだよ。オッパイがだよ!!
それを直視し難い、クソ、我ながら童貞臭いぜ、というのもあり。俺は視線を反らしたまま、ぶっきらぼうな憎まれ口しか叩けない。あの乳が気になるにも程があるだろ、あの海月だぞ?!正気かよ、俺。

「まさか、お前がそんな変態だったなんて知らんかったぜ。ぐ……。男日照りが過ぎて、自制出来ずに握っちまったってか?」

嘘だ。我慢出来そうに無いのは俺だ。握りたいのは、揉みしだきたいのは海月の乳だ。股間から時折差し込むような痛みを感じるが、それを押してでもアイツを押し倒したい、と思ってしまう。
そういえば。アイツ、自分がされたら嫌なコトは、他人にしては行けないって金科玉条の如く言っていたっけか。なら、俺がされて嬉しいことは、アイツも嬉しいんじゃないか、なんて愚にもつかない考えすら浮かんで。
ただ、そんな俺の気持ちを知ってや知らずや。憮然とした態度を崩さない俺を段々と面倒くさく思って来たのか、海月の謝罪と心配の中にも、何処と無く険が交じってくる。
いや、険の中にも心配が混じるといったほうが正しいかな?海月はそういう女だった。

「もう、わざとらしく痛がる振りなんてしちゃって……!結構時間も経ったし、もう平気でしょ?……ホント、大丈夫?駄目そうなら言ってね?アタシ持ってないから、言ってくれないと分かんないよ?」

両腕で胸を押さえ込むような形でコチラを覗き込んでくる。自然、視線は彼女の谷間に吸い寄せられ……気力を総動員して引き剥がす。何でだろうな。見たいんだから、ガン見すればいいじゃねーかって俺の心は言っているのに。
首よ折れよ、とばかりに顔を反らす俺に、海月はまた不満げな表情。むー、大人げない、と口を尖らせる。それでも男なの、タマタマ付いてるの、と非難の口調。おいおい、謝罪は何処いったんだよ?

と。襖が開く音と共に、櫻子が麦茶を載せた盆を携えて姿を現した。いいトコのお嬢様なのだろう、少なくとも、苗字が三文字なら大抵名家だ……実例が俺だな、なんて冗談めかして問うたところ、実際そうだと聞かされて仰天する。
街を去った名士の一人娘だそうだ。何故、そんなヤツが人里離れたこんな場所に封じられているのかは見当もつかない。色々ありまして、と櫻子は笑うが、それ以上自分から語ろうとはしなかった。

心ココに有らず、といった風情はそのまま。まぁ、病んだ街だ。病んだ令嬢がいても何も可笑しくは無いだろう。

今の彼女はジャージ姿。色やデザインから見て、懐かしきは俺の高校のジャージ。ウチのはほぼ新品だが、ソレは海月のお古といったところだろうか。彼女のために誂えたように身体にフィットしたソレは、まるで第二の皮膚にも見えた。
まぁ、アレだ。誤解を怖れずに形容するなら……今の櫻子は、着古されたジャージの空気とも相俟って、相当な年季と、鉄筋もかくやという程の筋金が入ったニートに見えた。馬子にも衣装って、逆だとこーなるんだな。

「あ、先輩!聞いてくださいよ、隆一ったら臍を曲げちゃって―――」

432名無しさん:2019/09/12(木) 22:33:56 ID:8wui0XE60
海月は、櫻子のコトを先輩、と呼んでいた。聞けば、歳の頃は24……確かに、干支半周分も年嵩なら先輩と読んでも差し支えないだろう。ま、櫻子も十分俺の守備範囲だ、と内心で評点。自己満足だよ、いいだろ別に。
二人が並ぶと、上半身の一部の差が残酷なまでに顕現する。マジ、上半分だけだと、同じ性別だって思えないかもな。ま、金的をやられついでに言うならば……二人とも、下半身は俺と違う、この痛みとは無縁の身体なんだろうが。
あらまぁあらまぁ、と櫻子が言葉を発する。口癖か?喧嘩は良くないですね、と呟いて。俺と海月に手招き。なんだろな、不思議と人を従える雰囲気を醸し出していて、幼子のように二人で櫻子の前に並んでしまう。すると。

頭が真っ白になった。次に脳裏を過ぎったのは、『意外と硬い』という素朴な感想。そこで、ようやく何が起きたのかを把握する。櫻子が俺の右手を取ると、海月の股間に突っ込んだのだ、と。
海月の方は、何が起きたのか理解が追いついていないらしい。酸欠の金魚のように、口をパクパクと開いて閉じて……そこから意味を為す言葉は出てこない。まぁ、言葉が出ないのは、俺も一緒だ。きっと、同じような表情なのだろう。

「はい。喧嘩両成敗ってコトで……隆一さんも握り返して、それでお仕舞い。仲直り。先程のことは、これで水に流してしまいましょうね」

グイグイと、俺の掌を海月の股間に押し付ける。掌から、アイツの、女の股間の感触が伝わってくる。『無い』、『やり返せない』ということも。だが……女性器を触るのは初めてで。それ以上に、新鮮な感覚が俺を満たした。
これが女の―――と呟いたところで、ツイてるのはもっと下だよ、と呆れた声が海月から。彼女も状況を理解したのだろう、いいよ、握り返しても、と余裕綽々の表情になる。とはいえ、顔は紅葉よりも真っ赤だが。

何て返すのが正解だったんだ?童貞には荷が勝ちすぎんだろ……出来るわけねぇだろ、と呟くのが精一杯。何でですか?と何食わぬ顔で問う櫻子に、そもそもキンタマ付いてないじゃねぇか、とボソボソと告げる。
海月は、ムカつくことに得意満面。『やり返せねぇ方が悪い』ってアンタの台詞だったわよね、と勝ち誇った表情に腹が立つ。何でまだ覚えてるんだよ、そんなコト。男らしく―――いや、女だったか、と触覚が伝えてくる現実を堪能。
怒ればいいのか?喜べばいいのか?混乱の極致にある俺を尻目に、やり返せないなら仕方ありませんね、と櫻子が告げる。知ってたくせに、と海月が不満の声をあげると、そりゃ、当然私も女性ですから、と櫻子が悪びれず応じる。
隆一がこうなってないのは、アタシの優しさのお陰だかんねと海月が嘯けば、それって優しさなんでしょうか……と櫻子が混ぜっ返す。いや、怒るべきトコロなんだろうな、コレ。だが、思わぬラッキースケベ展開に脳味噌が付いていけない。
自然と俺の勢いも鎮まる……痛ッ!畜生、まだタマが痛みやがる。でも、でも、だ。タマが無い股間を触ったのは初めてで……愚息が痛いほど主張しそうになるのを、腰を引いて隠す。海月には知られたくない、そう思って。何故だろうな。

そのまま、自然と三人で卓袱台を囲む。簡素なサラダと、白米のご飯に新鮮なタマゴ。酒は無い。肉類として、ボソボソと筋張った鶏……カシワっていうんだったか?が供されて、閉口しながらも咀嚼する。
コケ悟朗?と愕然とした表情で海月が呟くと、櫻子が何てことの無いような顔で首肯する。もう歳でしたし。海月ちゃんのお友達なら、ちゃんと御持て成ししないとと思いまして、と。
ヨヨヨ、アタシの大切なコケ悟朗が、と海月が泣き真似。こんなコトなら隆一の大切なトコロ、交換がてらに貰って置けばよかったよ……と冗談を飛ばすが、あのな、全く笑えないからな、その冗句。
櫻子は、『大切なトコロ?』と小首を傾げて疑問符を浮かべ。いや、ピュアなのはいいけどさ、マジでマイペースだな、アンタは、と心底呆れる。こういう夕餉って、何年振りだろうな。全く、記憶の片隅にだって残ってないぜ。

プツン、と微かな音。櫻子がテレビをつけて、液晶から変わり映えのしないニュースが流される。曰く、また。米の国で、田舎町銃の乱射事件があったらしい。
何一つ苦労なんてしたことが無いだろうアナウンサーは、滑稽なほど畏まった顔でその知らせを読み上げていて。ソレだけで大金を貰ってるのかよ、と。見る度に、腹が立って仕方が無くなる。
そんな奴らが……田舎町で、閉塞感に絞め殺されそうになって銃に逃げた連中を非難するのかよ、ってな。実際のトコロは知らないが……田舎町での乱射事件を見るたびに、俺は自分の身につまされるような気がするんだ。

「物騒ねー。もう鉄砲なんてぜーんぶ取り上げちゃえばいいのに」

433名無しさん:2019/09/12(木) 22:34:32 ID:8wui0XE60
俺の気持ちも知らずに。完全に、遠い世界の絵空事を眺めているような温度感。海月が毒にも薬にもならないコメントを吐くのが聞こえて……止せばいいのに反論してしまう。

「どーやって取り上げるんだよ……今の御時勢に刀狩か?海月の脳内とセンスは戦国時代でも、現実的には無理だろーよ。むしろ、乱射するようなヤツだけピストルを隠し持って、治安が悪化するんじゃねーのか?」

平素なら絶対にしないだろう、ニュースを見ながらの意見交換。仲間内でAVの品評会をすることはあれど、ニュースだぜ?頭が沸いちまったとしか思えねぇだろ?俺もそうだ。
俺から投げ返された異見に、むぇー、とへちゃげるような声を上げながら海月が突っ伏した。あのな。そのな、そのへちゃげてへしゃげて変形してるオッパイ、マジで男には目の毒だからな?俺の前以外ではやるなよ?

「私だったら……法律で、銃弾に100発に1発は不良品を混ぜるようにルールを決めますね。考えなしに危険物を振り回してたらどうなるか、やっぱり身体で覚えてもらわないと」

櫻子が乗ってくるが、それもまた現実性に乏しい、というか夢物語のような提案で。呆れて二の句が継げない俺の替わりに海月が突っ込みを入れる。

「えー、先輩、ソレって危なくないですかー?」
「危ないからいいんですよ。いつ暴発して大変なコトになるか分からないってなれば、きっと、皆様自発的にピストルを捨ててくれると思うんです。ただただ取り上げるんじゃ駄目。身体で、危なさを実感して頂かないと」

いや、さ。だったら、銃弾も家内制手工業で作るだろ、どー考えても。阿呆か。禁酒法の時代だってそーだっただろーが。と、様々な物言いが頭を巡るが、特に口に出したりはしない。
何でだろうな、何だかな。ただ、居心地が良かったんだ、この空間の。海月も櫻子も、別にマジの反論が欲しいわけでもないようで。単に、テレビを肴に喋くりたいってだけなんだろう。それが、心地よかった。
……タマは未だ痛むがな!主に海月のせいで!!お前等が、もう済んだコトみたいな面してられんのも、付いてないからってだけだからな!!!

しばしの歓談、そして談笑。まぁ、いくらムカついたところで、この痛みを伝える術なんて無いんだ。遠くから、梟の鳴く声が響いた頃合で、櫻子が席を立つ。
何でも、寝つきが悪いから?彼女は離れで寝ることにしているらしい。最初、物置だと思った建物が離れなんだそうな。だからこそ……二方向から、櫻子と海月は現れたんだと遅ればせながら納得する。
夜が明けたら麓まで送って差し上げますね、と笑顔を見せる櫻子に、一抹の寂しさを感じる。それこそ、自分で自分の正気を疑ったね。でも、信じ難いことに……俺は名残惜しさを感じてしまっているらしい。

それを察したのか、海月から渡された提案は完全に俺の予想の外からのもので。耳を疑ったね。アイツ、俺もココに住んだらどうかって言い出したんだ。曰く、アイツも居候らしい。
いや、居候の身分で厚かまし過ぎんだろ……と愕然とする。こんな女だったっけか?と疑問符を浮かべ、半眼でアイツを睨むと……頬に手をあて、あらあらと櫻子は呟いて、あにはからんや、それもイイかもしれませんねと言い切りやがった。

434名無しさん:2019/09/12(木) 22:35:40 ID:8wui0XE60
語れば、ココは神社や、まして廃屋なんかでは無く、古い道場で……道場跡地の間違いだろ?とからかうと、海月が凄い目で睨んできやがった……視線が下がり、思わず股間を押さえる……櫻子は違いありませんね、と笑って流したが。
いや、人が出来てるね、と俺も笑う。多勢に無勢だよー、と海月が膨れっ面になって。その顔も可愛いぜ、なんて歯が浮くような台詞が口を衝きそうになり、慌てて呑み込む。なんか俺、キャラが変わってきてないか?

櫻子曰く、教えているのは護身術。門下生は海月一人。時折、他の道場に招かれては、演舞や講習をすることもあるらしい。正直、それだけでは食べていけないので……仕送りと、自給自足頼りですけどね、と薄ぼんやりとした笑み。
でも、天職だと思っていますと独り語る櫻子を見て、一人合点。何てことは無い、お嬢様の我儘で潰れそうな道場に住まわせてもらってるっつーオチかよ、と。なら色々と納得だ。年頃の娘、外聞も悪いだろうから街中では無く、街外れ。
下手に悪評をばら撒かないように、僻地に仕送りと共に封じて……本人だけは、満足みたいだが。開かれた座敷牢みたいなモンかってな。まぁ、それはいい。そこまでは良かったんだ。

和気藹々とした雰囲気はソコまでだった。何の気はなしに、櫻子が溢した妄言……

「やっぱり。護身術は『弱い方』のためのものですから。隆一さんも入門してくださるというなら、私としても安心です」

そうだ。アイツは、櫻子は、俺のコトを弱いって評しやがったんだ。確かに……タマをやられて不様を晒したがな。女に、弱いって言われる筋合いはねぇ、そう思った。それも、あんな不意打ちで、だ。
こんな話しを知ってるかい?野生動物ってのは、自分がどんなに弱っていても、敵に弱った姿は見せないんだそーだ。弱いと思われると、舐められると、組みし易しと侮られ、四方八方から襲われる。『死』に、直結する。
櫻子は、そして海月も。あの街から離れて久しいから、忘れてしまっていたのだろう。アソコで生きるということと、野生で生きるということの間には、毛筋程の差も無いってコトを。『強い』は、俺のアイデンティティだった。

空気が瞬間冷凍されたように冷える。櫻子は、その変化すら良く認識していないようで、あら?と一言漏らしただけだったが……海月は心配そうな目で此方を見やってきているのが分かった。
本当、どうかしていたんだ。普段なら、そのまま卓袱台を引っくり返して殴りかかっていた。だが、暖かい団欒を味わってしまって、ソコまでする気にはなれなくなっていた。だから、バシン、と卓袱台を叩くのに留まる。

そこまで来れば、いかに浮世離れした櫻子でも雰囲気の変化に気付けたのだろう……だろうか?彼女が纏う空気感は小揺るぎもしなかったが、神妙な面持ちで卓袱台の前に座りなおす。
海月は、まだ心配そうな顔で、俺と櫻子の顔を相互に見やりながら……「止めなよ、隆一」と声を掛けてきて。知ったことか、そう思いつつも、その言葉が俺に実力行使を思いとどまらせる。

何をしたかって?いや、言いたくねぇな。思い返せば、ダセェにも程がある。他人が同じことをしたならば、墓場を掘り返しても弄ってしまうような振る舞い……つまりは、アレだ。語ったんだよ、武勇伝をさ。
それも素面で、だぜ。クッソみっともねーだろ……笑えよな。でも、あの時は……櫻子に、そして何より、海月に軽んじられたんじゃないかって思って、頭に血が上っていたんだ。逆上っつーやつだな。

ぬるま湯に浸かって生きてきた連中にとっては、寝物語の中の出来事だろうが……あんな街で無頼を気取ってたんだ。そりゃ、それなりに色々あるさ。
草臥れた酒場、1対多で大立ち回りを演じたこともある。ビール瓶でぶん殴られたことも。腐れ縁の谷崎に助っ人を頼まれて、他校にバイクで突っ込んだこともあったっけか。果たしあいなんてまどろっこしくてさ。
ヤクザと殴り合いをしたことだってあれば、警官に囲まれたことだってある……まぁ、そん時は臭い飯を食う羽目になったけどな。でも、アンタ達よりは随分と修羅場を潜っているんだぜ、俺は、と。

俺が一つ二つと語る度に、海月は呆れ果てたといった様子で溜息をつき。櫻子は、まぁ、アイツの感情は良く分からん、あらあらまぁまぁ、と相槌を打つ。随分と、危ないことをされてきたのですね、と問われ。性分なんだよ、と返す。
一頻り語りを終え、俺がアンタ達に教わることなんてあると思うか?と凄む。海月は気圧されたように黙り込む。ただ……俺を侮辱しやがった張本人は、お澄まし顔。色々とご教授しないといけないことが出来ました、と世迷言を。

「先輩―――
―――大丈夫、です。ミヅキちゃんは何も心配しなくて大丈夫ですよ?勿論、隆一さんも……生活に困るような大怪我なんてさせませんから、ね?」

435名無しさん:2019/09/12(木) 22:36:16 ID:8wui0XE60
もう、売り言葉に買い言葉だ。気遣う言葉に気色ばむ俺に人差し指を一つ。櫻子は、それでも悠然とした態度を崩さぬまま、明日、道場でお話ししましょうね?と微笑みながら退室していく。
ズキリ、とキンタマが痛むが、それをおくびにもださず。まぁ、未だキンタマが痛むとは思ってもいないだろう女共にどれだけの効果があるのかは疑問だが……いや、逆に。痛む素振りを見せたらば侮られるのか?どーでもいいか。
背を向けた櫻子に食って掛かろうとすると、さらに背後から海月が止める。抱きつき制止され、背中に二つ、尋常じゃない存在感を主張する膨らみを認識する。……何でだろうな。男は単純で……それだけで俺の勢いは削がれてしまった。

母屋に残されたのは俺と海月の二人。俺がキレると何をするか分からないってこと、海月は痛いほど知ってるだろうから……櫻子を心配しているのだろう。
保護欲、というのだろうか。痛ましげな顔をした海月に、そんな顔をして欲しくない、そう思った。だから、笑顔で……多少引き攣っていたかもしれないが……彼女の頭を軽く叩くと、俺は冷静だよ、と告げる。
確かにムカつき度はパないが……殺すまではしないから。オマケして、顔面だけはセーフにしてやっておくから、と。男としての約束だ、と伝えると、そんな話じゃない、と逆に食って掛かられる。

「隆一、アンタ、武術を修めた人間と立ち会ったことあるの?どーせ、齧ったことがある程度の連中と喧嘩したことがあるって程度じゃないの?」

率直に言おうか?鼻白んだね。冷めた。海月は、俺の心配をしていると理解してしまったから。だからこそ引けないと、そう思った。アイツに弱いと思われるのだけは耐えがたかった。だから、告げる。
心の芯は冷え切っていて、なのに頭の中は煮え滾るようで。激情が流れ出すのを必死で押さえながら、言葉を投げていく。

「お前、俺が勝てないとでも思ってんのか?何年幼馴染やってきたんだ、海月。そもそもだ……格闘技が何で男女分けられてるんだと思う?なんで、体重差なんて区分けがあるんだと思う?心配するなら……お前の先輩の方だろう?」
「でも……心配だよ、隆一のコト。絶対に勝てっこないもの……今からでも謝るってことには出来ないワケ?」
「クドイな!お前、マジで俺が勝てないとでも思ってんのか?お前も、俺が『弱い』って!?泣き虫クラゲの海月が、か?!」

口調が荒れる。俺を心配する一言一言が、俺を後戻りできない境地に追いやっていく……いや、違うな。窮地に追いやられているのは、櫻子の方だ。まったく、とんだ後輩を持っちまったもんだな、同情を禁じえないぜ。
彼女は俺の説得が不可能だと思い知ったのだろう。唇を噛み締め、下を向く。そりゃ、四六時中、自分より強いヤツと顔付き合わせてれば、強さの過大評価もしちまうだろうよ。
だが……俺は櫻子に負ける気は微塵もしなかった。あんな細腕、華奢な矮躯で。俺に有効打なんて入れられるとはとても思えなかった。ま、夕方みたいに?タマキンに一撃を入れられれば別だが……正対しておいて喰らうか?馬鹿馬鹿しい。

自分で熱くなって、自分の熱に自家中毒を起こしていたんだろうな。馬鹿馬鹿しいがてら、一つ、海月に提案をしてみる。断られて当然だ、と思ったソレを、アイツは表情を変えないまま「いいわよ」と首肯してみせた。
マジかよ!と歓喜が俺を満たす。頭に昇った血が、液化した喜びに変化し……言ってみるもんだな、と満足してしまい……その日の話は、ソコでお仕舞い。何を聞いたか。……まぁ、いいか。簡潔な話しだ。俺が聞いたのは―――



「なら。俺が勝ったら、海月。お前、俺の女になれよ?」



ただ、それだけ。

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436名無しさん:2019/09/12(木) 22:38:07 ID:8wui0XE60
我ながら単純明快に出来ているモンだ。酒も煙草も抜け、その朝は久方振りに清々しい気分だった。
昨日の告白染みた戯事の残熱が未だ身体を駆け巡っていて。これからのコトが無ければ、森を駆け巡っては歓喜の雄叫びをあげてしまいたいような気分だった。

あー、そうだな。長々と済まなかったな。ココまでが、思い出話だ。といっても、別に聞いてくれって頼んだわけじゃないけどな?
そして、これからが。俺の、新しい人生のはじまり。海月がいうには、十時頃に道場に来て欲しい、そう櫻子から伝言を受けたらしい。激しい運動になりますから、朝ご飯はそれからですね、とも。
まぁ、食べれたらの話しですけど……と、何処まで人を見下せば気が済むのか。その言葉を聞かされたとき、俺は、もう何度目か分からない激昂と共に、離れに怒鳴り込もうとしてしまった。

そうしなかったのは海月の手前というのもあるし……彼女の、先輩は全然悪気なんてないから、そーゆー人だから、とフォローになるのか疑わしい取り成しを無碍にしたくは無かったというのもある。
軽く湯を浴びて、屈伸。準備運動を行う。昨日と同じ下着、一度汗に塗れた服装なのは余りいい気分では無かったが。女物の下着でよければ替えあるけど、と冗談めかしていった海月に、冗談じゃない、そう返す。

頼もう!確か、道場破りってこーすんだろ?なんて、付け焼刃の知識で道場の扉を押し開くと―――櫻子が俺の度肝を抜くのは何度目なんだろうな。頭が可笑しい女がいるというのも、あながち間違った評じゃないのかもしれない。
そこには……小さいサイズのワンピース水着に無理矢理肢体を押し込んでみた、といった出で立ちの彼女が。アンビバレントに、凛、とした様子で正座していた。ぶっちゃけていいか?俺、溜まりすぎて狂ったのかと思ったぜ、正味な話。

彼女は俺を視認すると、昨夜俺が逆上していた様子を露ほども覚えていないといった振る舞いで相好を崩す。よく眠れましたか?と問いかけ、おかげさまでな、と返すと心の底から安堵したような表情になった。
やはり、慣れないと動物達が五月蝿いでしょうから、と微笑みながら直立する。慣れれば可愛らしいモノですけどね、と言葉を繋ぐ。私、寝付きが悪いからよく聞くんです、と語ってくるが……いや、コレも実際目の毒だな。

櫻子は、海月と比べると胸部の装甲が薄く……その分長身で。立ち上がると、その、水着の股間部分が引き伸ばされるように形を変えて。何だったか?ハイレグっつーのか?競泳水着?エグいって言えばいいんだっけか?昔のAV用語でさ。
海月というモノがありながら、と言われるかもしれないが、仕方が無いだろう?男なんだから。俺の視線は、櫻子の股間部分に、追加の穴を開けんばかりの勢いで注がれてしまい。

「―――?何か、変でしょうか?私、女性ですから―――ココに変なモノなんて付いていないハズなのですが」

視線を意に介さず……違うな。純粋に、『有る』ならまだしも、何故『無い』コトに興味が示されているのか疑問だという表情で、彼女は己が股間部分を弄る。昨日のミヅキちゃんと同じですよ、と語るとはなしに語りつつ。
小狡いな、とせせら笑う。あれだけ偉そうなこと言っておいて、色仕掛けかよ、と。櫻子は、また疑問が増えたという顔をして。色仕掛けと言われましても、私、ミヅキちゃんほど若くは無いですし、おっぱいも無いですよ?との返答。
視線を下げて、平たい、申し訳程度の膨らみしか視認できない胸部を揉む……いや、それは物理的に不可能で。櫻子が、自身のその部分を不思議そうに撫で擦っているのが見えた。

じゃ、その格好は何なんだ、と問えば。昔、柔道場に出稽古にいったとき、胴着を掴まれて右に左に振り回されて手も足も出なかったので、掴まれないような格好にしたんですと、一応は理屈を伴った回答。
『道』が泣くぜ、と伝えると、『術』でしかないですからね、ウチはと微笑み返される。『道』なんて御立派なモノは、私に教える資格なんてない……手に余ります、とも。ほんの刹那、微笑みに寂しさが入り交じったような気がした。

「一応、聞いておくぜ?ルールは―――
―――ルール無用、です。護身の場ではルールなんて無いでしょう?隆一さんの経験でも……」

437名無しさん:2019/09/12(木) 22:39:41 ID:8wui0XE60
OK、そこまで聞けば十二分だ。俺は無造作に踏み込むと、大雑把に右腕で櫻子を薙ぐ。技?要らねぇよ。この体重差だ、どう防ごうと吹っ飛ぶだろ?当然さ。正拳じゃなく、面を制圧する意図の攻撃だ。
勿論、避けられると想定していた。屈めば、そのまま前蹴りをお見舞いしてやろうってさ。ソレが入れば、もう勝負有りだ。確かに、金的は男だけの急所だがな。女は、何処にあたっても致命的だろ、そう慢心して。

結論から言おうか?慢心が足りなかったのかもな。俺の一撃は苦も無く櫻子のガードの上から直撃し、彼女は2メートルほども後ろに吹き飛ぶ。手応えの軽さから、後ろに飛んだんだろうとは理解したが……それでも、彼女は顔を顰める。
そりゃそうだ。両腕、痺れちまったんじゃないか?と揶揄すれば、お気遣いありがとうございます、と場違いな礼。そのまま両腕を構え直すが、おい、隠せてねえぜ?真っ赤に腫れちまってんじゃねえか。内出血を防いだだけで特筆もんだな。
下手な男だったら、今の一撃で完全に戦意喪失してるぜ。それでも。俺から見たら雑魚の部類だがな……ま。海月には、あの弱虫にとっては、それだけで越えられない壁に見えたのかも知れねぇな、なんて。

追撃に移る。再度。丸太のような腕での横薙ぎ。昨日の恐怖が鮮明で、無防備に蹴りを放つ気分にはなれない。アレが無ければ……もしかしたら、キンタマにカウンターでも喰らってたかもなと思い、海月に感謝。
蹴りを入れるならコンボの〆だな、なんて独りで櫻子を料理するレシピを考えつつ振るわれた鉄槌を今度はいなそうとして、再現VTRか何かのように。櫻子はまたもや吹っ飛ばされる。甘ぇよ。小手先でどうにかなる筋力差じゃねーだろ?

三撃目、惨劇のはじまりだ。もう鼻歌交じりで歩を進めると、再度、いや三度。右手を突き出すと、大きく横へ薙ぐ。流石に、いや、ようやくか?防げないと学習したのか、彼女は身を沈めてその一撃をかわす。
大股を広げて……躊躇は精々一呼吸分程度だ。俺を蔑んでくれた礼、釣りはいらない。これぞ意趣返しってヤツだよ、と。俺は左脚を振り上げて、櫻子の股間を蹴り上げようとする。顔面は打たないっつったけど、コレは約束してねーよな?

と。彼女の腰がうねるように動き、重心が後ろへと遷移した。それこそ、男であればかわしきれていない程の紙一重の差で、俺の左脚は空を切る。ペシ、と彼女の股間に、爪先の先が当たって。引っ掛かるものが無く、撫で上げる。
体幹の強さか、バランス感覚なのか。櫻子は、自身の股間を襲った衝撃を気にとめることも無く……そりゃそうだろ?女なんだから……俺の左脚の下に身体を滑り込ませてくる。俺が脚を引くと、圧に耐え切れず体勢を崩して―――

ペシン、と音がした。俺には、コリッという感触が伝わる。体勢を崩しながら……猫のような形に変わった櫻子の手掌が、俺の股間に差し入れられていたと認識したのは、ほぼ同時。
指先に睾丸を引っ掛けて、そのまま股間から掻きだすように打ち込んだのだ、と気付いたのも、ほぼ同時。俺の爪先蹴りよりも、随分と軽い一撃、だが。ソコを打たれたと認識すると、俺の思考が一瞬止まる。昨日の地獄を思い出す。

大したダメージじゃなかったんだ、正直な話。完全に崩れた体勢から、苦し紛れのように放たれた掌打。だが……その思考の空白は、何よりも致命的だった。
ぷちゅ、と言う音が聞こえてきたような気がした。直ぐに、それが完全な錯覚だと分かるが……それは、一足先に体勢を立て直した櫻子が。俺とは違い、刹那の躊躇も無く。左足の甲で、俺のキンタマをカチ上げた直後だった。
俺は、完全に静止。全精神力を持って、喉元までせり上がってきた悲鳴を呑み込む。こんな声、海月に聞かせるわけにはいかない、と耐えた俺を待っていたのは。情け容赦無い追撃、俺の金的に叩き込まれた、櫻子の右足の甲だった。

背足っていうんですよ、と。子供相談室の解説員のような口調で櫻子が呟く。彼女には微塵の逡巡も無く……弱点が晒されていたので、当然のごとく狙いました……ソレ以上の感情は発していない。アイツにとっては、ただソレだけ。
俺にとっては―――

「ッ!!!!グ!!!ググ!!ググゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!」

438名無しさん:2019/09/12(木) 22:40:19 ID:8wui0XE60
本能的に、両膝を絞る。両手で気付かぬ内に股間を抑え、反射的に窄められた喉から、発したくなかった……海月には聞かせたくなかった、甲高い悲鳴が押し留めようもなく流れ出していく。
舐め腐っていた。慢心し切っていた。苦痛と共に後悔は止め処なく溢れ、そしてそれら全てが後の祭りだと実感する。確かに、男の方が筋力に優れ、体重に優れ。油断しなければ、順当に櫻子を叩き伏せられたハズだった。
俺が失念していたのは……だからこそ、男だからこそ、逆に。ただの一撃で地に伏すしかない急所を、男だけがぶら下げていたということ。警戒はしていた……だが、思えば、幾ら警戒しても警戒し過ぎるということは無かったハズだ。

櫻子は、曖昧な視線を保ったまま。ただ、蛇口を捻れば水がでるように。議論の余地も無く、金的を蹴り上げられれば、当然男性はそうなりますよねぇ、と。その双眸で言外に語っていた。
完全に他人事として捉えている視線。実際、彼女にとってはどうしようも無く他人事。決して、同じ経験をすることは無い……忌々しいことに!だが、その事実に怨みを置くほどの余裕すら、先だっての一撃は俺から奪い取っていて。

あらあらまぁまぁ、と聞き飽きた感嘆詞。映画の登場人物が苦境に陥っている、そんな距離感で心配そうな視線を送ってくる。彼女の様子は常日頃と何ら変わりが無く、この痛みと彼女の距離はそれだけあるのだ、と絶望してしまう。
お辛そうですね、おいたわしいことです……と口元を押さえながら告げる台詞に嘲笑の気配は欠片も無く。それが、無味乾燥な社交辞令という印象を更に強めてくる。

「御自分が危ないモノを持ち合わせていると、身に沁みて御理解頂けたのではないですか?恥ずかしく思うことはありませんよ。男性は、皆ソコが『弱い』のですから。隆一さんが気付くべきなのは、もっと別のコト―――」

金的を打たれると、沈静作用があるつったな。だが、俺は。何度目か分からない激昂を覚えていた。ココに来て、何回俺の脳内血管がブチ切れたのか、もう数えることすら馬鹿馬鹿しい。
絶対に聞かせたくないみっともない悲鳴を。絶対に聞かれたくない、特別な人に聞かれてしまったかもしれないという恐れでもあり。睨めあげた先、悲鳴を上げさせた張本人の股間に、その原因となるモノが無いせいでもあった。
俺の視線を感じ取ったのか、櫻子は股間の前で組んでいた両手を開いて、急所が無いソコを、ご丁寧にもよく見えるように蹲る俺に突き出してくる。『無い』こと御確認されたいのでしたら、どうぞ、と癇に障る一言を添えて。

「その痛みを、相手に絶対に味あわせ返すことが出来ない……遣る瀬無いですよね。よく、分かります。その痛み自体は一生理解出来ないと思いますけれど……その気持ちだけは、痛いほどに」

戯言を、と怒髪天を衝く思いがする。一生味わうことが無いと言っておきながら、舌の根も乾かぬうちに『気持ちは分かる』だと?矛盾しているだろ?
精神が肉体を凌駕するという言葉を聞いたコトがある。読んだこと、か?何処のマンガだったような、記憶は曖昧だ……俺が読んだ経験があるっつーなら、マンガだろうと当たりをつけただけ。
完全に、プッツンきちまったよ、と怒りに身を任せて立ち上がる。そこで、思い知らされたのは。

「ほら、キーン!……危ないコトが御好きだとは伺いましたが、金的をお持ちの御身体で不用意に立ち上がられますのは、その……。趣向を通り越して無謀、ですよ?ちょっと反省していてくださいね」

間髪入れず。立ち上がるのを読んでいたのか、櫻子が右足を振りかぶったヤクザキックの要領で、股間を押さえる両手の更に上から、ガード毎押し潰すような蹴りを入れてきて。
男なら……分かるだろ?女でも、覚えておいた方がいい。『金的』は蹴り上げには弱いが、蹴り下ろしには意外と鈍感なことを。奥まった場所にあるから、そも蹴り下ろしはあんまり上手く当たらないんだ。
それこそ、平素なら。魔法のように、銀の弾丸のように『金的』が一撃必殺だと信仰しているような女は、頼みの綱が通用しないことに混乱したまま、禁域を侵そうとした報いを受けて叩きのめされるのが常だった。
だが、昨日今日と散々に痛めつけられた俺のタマにはその程度の衝撃でも十分。分かってやったワケじゃないんだろ、と。女だもんな、分かるわけがない。そう彼女を恨めしげに睨みながら、俺の身体は床に沈み込む。

439名無しさん:2019/09/12(木) 22:40:54 ID:8wui0XE60
その想定も甘かったようで。畜生!俺は何処まで見積もりがヌルイんだ、と自分の不甲斐無さを噛み締めたのは、櫻子が世間話のように次の言葉を投げかけてきたあとだった。

「普通なら前蹴りは効果が薄いのですけど……金的のダメージって尾を引かれる御様子ですからね。昨日今日、アレだけ虐められたのですから、コレでも十分にお効きになりますでしょう?」
「テメェ……テメェ、全部分かってて―――???」

瞳孔が開き、焦点が合わさっていない櫻子の瞳。何処を見ているのかも茫洋として掴めないソレが、まるで『男』の全てを見通しているような錯覚を覚えて背筋を冷やす。
彼女はそんな俺の様子をみやると、あらあらまぁまぁ、と。両手を併せて小首を傾げ、表情に困ったかのようにニッコリと微笑む。その口から放たれたのは、全く雰囲気にそぐわない恐ろしい言葉。

「お苦しみが実際どんなモノなのかは分かりませんよ?私には『金的』ありませんから……ただ、どんな衝撃でどういった反応をされるのか、積み重ねで学んできたというだけです」

と、片手を猫の手のように構えると、バシン、と自分の股間を叩く。最初に俺の股間を打ったのと完全に同じ攻撃……だが。櫻子には金的が無いが故に、まるで平然とした様子を崩さない。

「例えば、ですね。こんな感じに金的を打つと、男性って動きが止まるんです。軽く、で十分。勿論、男性のみですよ?女には効きません。覚悟する猶予?が与えられるからだって御説明頂いた殿方もいらっしゃいましたっけね。
 ……打たれた後に、何の覚悟がご入用なのでしょうね。不思議ですけど、まぁ、私から見たら、ね。申し訳無いのですが、隙だらけとしか言い様が無い状態です。そうなるとどうされるのか……体験、されましたよね?」

ああ、文字通り『身に沁みる』程にな、クソ女。動きを止めて本命を入れるのが勝ちパターンだってのか?えげつない、汚い真似をしやがるぜ。

「汚い、と仰られましても……同じコトをされても、私は別段汚いとは思いませんよ。勝負なのですから、弱い部分が狙われるのは当たり前でしょう?特に、隆一さんは『男性』なのですから……特に『弱い』部分、しっかり守らないと。
 話が逸れちゃいましたね。動きが止まったら……お説教の気分の時は、手を差し入れておタマタマを握ります。それだけで……ふふっ、いつも微笑ましいと思うのですが、それだけで男性、為す術が無くなってしまうのですよね。
 
 教導を続けたいときには……先ほどご体験なされたように、背足で金的を跳ね上げます。軽く、ですよ?そうしないと、教導どころでは無くなってしまうので……仕方が無いことだと分かっていますから、恥ずかしがらないで下さいね?」
「軽く、だと―――」
 
軽く?軽く、だと。アレでか?『その部分』に対する男女の余りの認識の違いに、立ち眩み……いや、座り眩みか。眩暈がするような感覚を覚え、気が遠くなりそうになる。
アイツは、櫻子は。俺にコレほどまでの痛みと屈辱を与えておきながら、それを単なるワンポイントアドバイスの一環としてしか捉えていない。

「えぇ、軽く、です。お仕置きが必要だと感じましたら、背足では無く膝……ココ、この部分です……抱きつくようにして、膝でおタマタマ、身体の奥に蹴りこむようにカチ上げます。その反応、未経験、なのですね?
 折角ですし、後でコレも体験しておきましょうか。効果覿面、ですよ?皆様、涙に鼻水まで流して悶絶なされますから……失禁なされる方も。その時になれば、最初のは『軽く』打たれただけだったんだなぁって分かって頂けると思います。

 ―――そして。もう。会話の余地もないかしら、なんて思ってしまったときは」

ブン、と風を切る音。何気ない動作で櫻子が膝を振り上げた音だ。その動きは淀みなく流麗で、相当、その攻撃方法に習熟しているのだと、遠目にも分かる。

440名無しさん:2019/09/12(木) 22:44:59 ID:8wui0XE60
「逆に、ね。奥では無く、手前にカチ上げます。恥骨……分かります?腰骨の股間部分……ほら、昨日のミヅキちゃんの硬い部分、アソコです。女の子の方が、恥骨の場所は分かりやすいですね。邪魔なモノがないから、実際に触れますし。
 ソコとおタマタマを挟み込んで……気の毒ですけど、ぷちって、ね。潰します。コツさえ知っていれば、意外と簡単に潰れますよ?ぱちゅッて。この場合は、効果覿面というより、天罰覿面といった反応になりますね。
 
 ……?潰すコトに対する感想、ですか?事例毎に覚えているワケでは無いのですが……御期待に沿えず、申し訳ありません。ただ、強いて言うなら」

441名無しさん:2019/09/12(木) 22:51:21 ID:8wui0XE60
それこそ、タマが縮みあがるようなコトを平然と。海月は、『未だ』潰した経験は無い、そう言っていた。櫻子は、違う。明らかに『経験者』……こんな言葉があるのか知らないが、『去勢処女』を捨てた人間だ。

442名無しさん:2019/09/12(木) 22:53:14 ID:8wui0XE60
「……安心する、でしょうか。感想のコトです。私、おタマタマをキチンと潰して差し上げた日だけは―――」

眉根と寄せて、困り顔3笑顔7といった複雑な表情を櫻子が浮かべる。俺は、恐怖4困惑3激昂3の絶妙なブレンドの顔になっているのだろう。彼女はボンヤリとした印象を保ったまま、俺の顔色を気にする様子も無い。

「―――安心して、グッスリ眠れるんです」

言葉に反して。瞬間、哀しみが4、笑顔が7といった形に櫻子の表情が歪むが、文字通り一瞬のコトだ。俺は、そんなコトを気にする余裕も無い。
ザリガニのように後ろに下がり、目の前の『男殺し』から距離を取る。何時でも丸まれるように意識しつつ……言うコトを聞きたがらない身体を、キンタマの抗議を無視して引き起こす。
予想とは異なり、櫻子が追撃を仕掛けてくることは無かった。遠い目をして、今では無い何時かを眺めているような表情。幽霊のような。彼女が現世に戻ってきたのは、俺が立ち上がり体勢を整えなおしたのとほぼ同時。

「あのまま寝ていただいていて結構でしたのに。金的、まだお痛みになるのでしょう?」

それとも、先程の言葉で怖がらせてしまったのかしら。櫻子が、頬を押さえて溜息をつく。ごめんなさいね、一言の謝罪。ご自分のが潰される想像をしてしまったのでしょう?私、そんな想像したこと無くて、気が回りませんでした、と。
ただ、逆説的にですね。『分からない側』の私は、いざ『潰す』と決めたら躊躇無く出来ますよ、なんて縁起でもない言葉が零れてくる。その余裕、洒落にもならなければ演技にも見えない。

何度立ち上がっても、這い蹲らせることは容易だと考えているのかと思っていたが。全く違った。気遣わしげな目線を俺に向けてくる櫻子は、もう、勝負はついた、そう認識しているのだと理解する。
その慢心、その油断!さっきまでの俺と相似形に見え、俺と同じ苦渋を舐めさせることは出来ないという事実に歯噛み。股間から鈍痛が響き、立ち上がったものの未だ満足に動けそうに無い。だから、言葉で時間を稼ぐ。

「テメェみたいな、な。男を舐めきった女の靴を舐めるなんて、男の沽券「股間の間違いでは?」ッせーな、茶々を入れんな。沽券、だよ、沽券に関わるんだ」

股間を押さえ、みっともない格好だってコトは自覚している。ハラハラとした様子で此方を見やる櫻子に、視線だけで闘志を失っていないと訴える。と、相手は何か納得したような表情を浮かべ。

443名無しさん:2019/09/12(木) 22:54:19 ID:8wui0XE60
「あ、お話しでおタマタマの痛みが治まるまで引き伸ばそうってコトですか……そんな、謀を巡らせなくても、ちょっと待ってって言ってくだされば幾らでも待ちますのに……。でもまぁ、好都合かもしれませんね。
 私としても、隆一さんにお話ししておきたいこと、たくさん有りますから」

お見通し、かよ。つくづく、癇に障る女だ。ピ、と人差し指を挙げ。何か、子供に注意するような、道理の分からぬ駄々っ子に言い聞かせるような調子で、櫻子の言葉は続く。だが、その内容は。

「……私、男性を下に見てなんておりませんよ?寧ろ、強さを尊敬しているぐらいです……脆い急所をお持ちにも関わらず、胸を張って生きていらっしゃるのですから。私だったら、到底無理な芸当だと、そう思っております。
 男性の不幸は。コレが、隆一さんに伝えたかったことでもあるのですが……『金的』を持ち合わせている、ソレそのものでは無いのです。そんなコトでは無く……『弱い』男性も、『強い』男性も、一律で急所をぶら下げていること。
 
 お強い方なら、いいでしょう。身体の壮健さとトレードオフの関係なのかもしれません。私風情なんて、軽く捻れるような方であれば……実際、沢山いらっしゃいましたよ、そんな方」

あの女が侮辱しているのは、『男』では無い、アイツが侮辱しているのは、他ならぬこの『俺』だ。沸々と、腹の底から流れ出る苦痛が、マグマに変わって行くような感覚。

「女は弱い、これも真実だと思います。ですが……『弱い』私と、『弱い』上に『金的』まで持たされた隆一さん……立会いの結果が、何よりの答えになりますよね?異論があれば、御自由に仰ってください。
 だから、だからこそ。『弱い』隆一さんにも、護身の術が必要だと考えたのです。これが昨日の真意……御理解頂けましたでしょうか?『弱さ』を捨てられないのなら、せめて守る技術は身に着けておいて頂かないと……ね?
 
 生憎、股関節、全身の動きの起点。とても狙われ易く……防ぎにくい場所でしょう?女にとっては有り難い限りですけど、男性にとっては……防ぐことも出来ない『弱い』男性にとっては。それは、とても不幸なコト」

全身の血が、沸騰を通り越して爆発したかと思った。股間が、キンタマが喧嘩に際する禁域だとしたら。今の櫻子の言葉、『弱い』という一言は俺にとっての禁句。ズケズケと無神経に、触れてはならないモノを踏み躙る女に虫唾が走る。
全身全霊でファイティングポーズを構える。何か、お気に触ってしまったのでしょうか、と所在無さげな櫻子。何が気に触ったかって?全部だ、全部だよ。お前の全てが気にいらねぇ。

櫻子の視線が俺の股間に伸び。右手が差し出されると、ぷちっと擬音を発して握り締められる。そのジェスチャーが何を指しているのかを感じ取ってしまい、思わず俺は腰を引く。櫻子が、失笑。
怖いでしょうに無理をなさって、と。ポツリ、同情の言葉が漏れる。私には知る由も無い恐怖ですけど、と相変わらずあの女は一言多い。

「危険なコトに突っ込んでいくコトを、勇気とは呼ばない、そう思います。逃げると判断することの方が、よっぽど勇気が必要だとも。隆一さんは違うのですか?」
「男にとっちゃ違うのさ。まぁ、女のテメェには一生分からないだろうがな。男の意地ってヤツだよ」

無論、嘘だ。コレが街でのどうでもいい喧嘩なら、とっくにケツを捲くって逃げてる。お礼参りは後日をお楽しみに、ってヤツだな。だが、今回は、今回だけはそうもいかない。
海月の顔が浮かぶ。ココで勝てば、俺のモノになる女の顔が。櫻子の顔が浮かぶ……眼前に本人、ノホホンとした顔で立ち尽くしてやがるがな……どうにも落とし前をつけないと、前に進めない女の顔が。

444名無しさん:2019/09/12(木) 22:54:49 ID:8wui0XE60
あらま、とまた意味の無い音節。そして、また。何か納得したような顔になると、櫻子から、また。本人は意図しないのだろう、だが、聞き逃せない侮蔑の言葉が。

「ミヅキちゃんとの約束のコトを仰られてます?それでしたら、入門すると一言いってくだされば、私が負けたコトにして口裏を合わせても構いませんよ?といいますか、もうソレしか方法、残って無くないでしょうか?」

何で、ソレを知っているんだ、と愕然とするのは一瞬。アイツ、今度は。俺のみならず、海月まで馬鹿にしやがった。今度こそ、もうどうなってもいい、アイツはボッコボコに叩き伏せると腹を括る。
また何か地雷を踏んだとことまでは理解したんだろうな。どうしても、駄目ですか―――と消え入るような声の櫻子。駄目だよ、もう決別したんだ。すると。櫻子は神妙な顔に変わって、こちらを正視してきて。

「……分かりました。残念です、とても。でも、仕方がありませんね……考え直して欲しかったのですが、無理、なんですよね。……そう、ですか。分かりました。守る技術、身に付けて頂くつもりは更々無い、そう仰るのでしたら」

哀しみを湛えた顔で、笑う。

「……もう、『弱さ』を捨てていってもらうしか無いんですね。昨日のピストルの話と同じ。危なさを十分に実感して頂いてから―――つまり、ですね」

分かりますよね、と寂しげに告げられるが。もう、決別は済んだんだ、と。昨日の団欒は暖かかったぜ、と内心で最後の礼を言って―――と、なのに。続けられた言葉には。俺の動きを完全に止めるだけのインパクトがあった。

「隆一さん―――

445名無しさん:2019/09/12(木) 22:55:26 ID:8wui0XE60










「貴方のキンタマ、潰します」

446名無しさん:2019/09/12(木) 22:56:13 ID:8wui0XE60
なぁ、アンタ。自分より遥かに技量が勝る相手に、キンタマ潰すって宣言されたコト、あるかい?アンタが女なら、一生分かんねぇだろうし……男でも、実際経験してみないと、その空恐ろしさは理解出来ねぇだろうな。
タマが無い生活。アンタが女なら、それは普段通りなんだろうさ。櫻子や、海月と同じくな。だが、男なら―――な、想像つかねぇだろ?沸騰した血液が、泡だった状態のままに凍結しちまったような気がしたぜ。

タマを、潰す。言葉にしてみれば、単純な単語二つなんだろう。だが、その言葉が与える印象は……男と女で、あまりにも異なる。男なら、キンタマ潰されるぐらい覚悟の上で一矢報いてみせてみろ?オーケー、アンタは女か?
男だっつーなら……タマ打ったことが無い、幸せな人生を送ってきたんだろうな。羨ましいぜ。実際、白熱した戦いで脳汁がアドレナリンに完全に置換されて、結果、決着がついた後にタマが潰れてたコトに気付くって例もあったそうだが。
俺にゃ、無理だ。覚悟が云々っつー話しじゃない。何故、俺が引かない、引けないのか。単純に、それが理由。海月の顔が……乳が脳裏に浮かぶ。いざアイツを手にいれたところで、タマ失くしてたら世話が無い。

怒りと恐怖が渾然一体となって、俺の反応が一手遅れる。櫻子は、未だに何の動きも見せないように見えて……気付いた時には目と鼻の先、至近距離まで迫ってきていた。
摺り足だと気付いたのは、彼女の視線、未だに焦点を定かに結ばないそれが、俺の両目を射抜いているのを感知した直後。頭部の上下動が全く無かったため、アイツの初動が、起こりが全く読めなかった。

感情の天秤が一気に傾いたよ。恐怖、恐慌の側にな。櫻子は、タマを潰すという言葉に……その行為に一切深い意味を見出していないようで。そして、あの女が自発的に……『返し』じゃない行動を起こしたのも初めてで。
虚を衝かれたわけじゃない。単純に俺の反応を掻い潜って、苦も無くアイツは懐に。俺のタマの命運は、タマがどうなろうと知ったこっちゃない、櫻子に完全に掌握されちまった、そんな予感。ケツ穴に氷柱がぶッ刺されたような悪寒。

必死こいて一歩下がると、半呼吸前まで睾丸が震えていた場所を、櫻子の右手が撫で上げるように通過したのが分かった。もう、反撃どころじゃない。櫻子もソレを認識してか、力任せの攻め。反射的に、膝を絞ると、下から衝撃。
俺の股間のサッカーボールを蹴り上げて、男としてのサドンデスつまりは突然死。俺の男の人生をゴールに叩き込まんと、ゴールデンゴールを狙った蹴りが運良く膝で阻まれたのだと分かった。

「ま、待ってくれ。ノーボール・ノーライフだ……分かるだろ」

何を言おうとしたんだろうな。俺の啖呵も男の威勢も、去勢目前という現実の前ではこんなにも無力なのか。混乱の極致で、命乞い、いや、タマ乞いか。情けない台詞が口を衝く。櫻子はソレを微笑んで受け止める。

「ノーボールのライフ、未だ経験なされてないですよね?ノーボールの先達として言わせて貰えば―――

また、次は左手。その股間にキッチリ差込んで、ボールを捻じ切って差し上げましょう、未練が残らないようにね、と。そんな意思が込められたコークスクリューを、両手を下げることで辛うじて弾く。

―――先達として言わせて貰えば、結構お気楽でいいモノですよ?ノーボール。女性ならではの悩みは確かにありますけど……隆一さんは、女性になるわけじゃないですものね」

気楽に言ってくれる。そりゃ、お前は気楽だろうよ?だが、俺の方は!櫻子の視線が、再度、俺の顔面を射抜く。心が通じ合い、互いに埋めようが無い差が、性差があることを否応無く実感させられる。
アイツは、このまま。俺の顔面を打ってこようとしている。そして、股間を覆う手が外れたら―――遠慮なく、俺の『男』を外すつもりだ、と。股間を強く押さえ、目を細めて一撃に備える。もう、何とか耐える、それしかない。

「かはっ……」

……息が詰まった。衝撃の大元は、上腹部、鳩尾。貫き手で横隔膜を強かに痛打され、本能的に酸素を求めて喘ぐ、と。

「ごほっ!!」

蛇のように軌道を変えた櫻子の貫き手が、伸ばされた俺の首の中央、丁度喉仏のあたりを衝く。無名ではありますけど……ココも男性特有の急所です、と一人言が。
息が、出来ない。それでも酸素を取り込もうと、パクパクと口の開け閉めを行っていると……視界に火花が散った。櫻子が、鼻っ柱に頭突きを入れてきたのだと理解したのは、鼻を両手で抑え、大きく仰け反った後で。

447名無しさん:2019/09/12(木) 22:57:01 ID:8wui0XE60
腹に、滑らかな水着の触感が。それに包まれた、ささやかな、本当にささやかな膨らみの感覚が。背に、俺を抱え込むように回された、櫻子の両腕の感触が。
櫻子の言葉を、思い出す。『分からない側』の私は、いざ『潰す』と決めたら躊躇無く出来ますよ、その言葉は時間差を伴って、死刑宣告のように俺に響いた。だから、恥も外聞もかなぐり捨て、必死に乞う。

「許して……」
「駄目です」

口調こそはニコヤカに、言下の否定。ズドン、と。鈍い音が響いた。タマが押し込まれる感覚がして呆けてしまう。不気味な静寂。まるで、幼子が爆発的に泣き喚く前に、静かに息を吸い込んでいるような―――


その時、確かに。俺の股間を起点に、世界に罅が入っていくのが見えたんだ。




「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!〜〜〜〜〜ッ!!!!〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!!」




気絶するなどと生易しいことは出来なかった。これも、櫻子の想定通りなのだろう。恒星が炸裂しそうな衝撃が股間から迸り、俺は爆発寸前の超新星を両手で押さえ込もうとしているのだと錯覚してしまう。
激痛という形容など生温い。苦しみだとか、後悔だとか。絶望、だとか。言葉で包装された負の概念から虚飾が全て取り去られ、その、負のイデアとでも呼ぶべき何かが、俺の股間に顕現したようだった。
床を転がり、転がり、痙攣。全身で苦痛を訴える。涙と鼻水が止め処なく溢れる。それでも、それでも。苦しみの一厘ほどですら、その行動で表現出来ているとは思えなかった。

「先だってお伝えした通り、コレが『お仕置き』の蹴りです。どうです?初撃、小手調べだったって実感して頂けたのではないでしょうか。
 ふふ。女性である身としては、足先で蹴り上げるか、膝で蹴り上げるかの差異でしかないので。ピンとはこないのですが……その反応を拝見する限り、御理解頂けたようで何よりです」

俺を地獄に突き落とした女は。俺が掴まれて、地獄に引きずりこまれようとしている部分など存在しない股間を無防備に……それこそ自慢げにひけらかして、得意気な顔を見せる。
いや、ひけらかしている意識など無いのかもしれない。櫻子にとっては『存在しない』のが自然で。だからこそ、ソコを自慢するなどといった考えが彼女の脳内に存在していないようだった。

「ですが……今からその反応だと、実際に潰して差し上げたときが思いやられますね……。あの、きっと、もっと苦しいですからね。無い私には見当もつきませんが……リアクション、激烈ですから。
 私などに気を遣わず、存分に悶えて叫んで頂いて結構ですからね。みっともない、なんて気にしないで下さいね?男性は、皆そうなるのが自然、恥ずかしがることなんて無いですから」
 
これで―――これで!?まだ、足りないっていうのかよ?!これだけの苦痛……これまでの人生の全ての痛苦を束ね合わせても比較にならない激痛を味わわせて、それでも、まだ?!
俺の口から、意味を為す言葉は吐き出されない。だが……その視線からいいたいことを読み取ったのか。櫻子は俺の腹を蹴り転がし、仰向けにすると、失礼、と一言。ドスン、と腹の上に横座りの体勢になって。

「あの―――苦痛のコト、私に言われても困ります。分かりませんから。それに……信じてもらえないかもしれませんが、私、痛みが少なければ少ないほどいいと、そう願っているんですよ?」

何を言っているのか分からないという表情になったのを察したのだろう。彼女は、さらに説明の句を継ぐ。

448名無しさん:2019/09/12(木) 22:58:14 ID:8wui0XE60
「目的は『潰してあげる』ってコトで……率直にいうと、ですね。ですから、去勢の際の苦痛などは、単なる付属物、副産物なんです。私にとって。だから……潰すときはいつだって、早く楽になって欲しい、そう祈っています」

そこで一区切りついたのか。俺の下半身に向き直ると、ズルリ、と下穿きを、トランクスごと膝まで下ろす。見ーつけたっ♪と、童女の如き笑い声が一つ。無意識か、ちょっと小振りな方ですね、と。残酷な言葉を、ポツリと溢す。
地雷を踏んだと思ったのだろう。実際、俺にはそんな戯言に取り合う余裕など毛筋程も無かったがな。慌てた口調で、女性はサイズを気にしませんから、大丈夫、とフォローを入れて……いや、小さいって意味じゃなくて、と再度慌てる。
その、そうです!これから潰れて無くなってしまうんですから、サイズなんて関係ありません、と力強い宣言。誰かに聞かれたら、前は御立派なモノが付いてましたよって偽証して差し上げますから!って、それもフォローじゃないだろう?

そのまま、更に腹の上で半回転。所謂、騎乗位に近い体勢になる。軽々と、力が入らない俺の両手を引き剥がすと、後ろに身体を傾け……あろうことか、俺のタマを掌底で床に押し付け、揉み込みはじめる。
体勢を崩した関係上、必然的に眼前、目の前に櫻子の股間が突き出される形になる。分かるか、あの絶望が。俺の目の前に晒されたソコには、キンタマのキの字もない。タマなんて自分とは無関係です、と素知らぬ形をしていたんだ。

「おうっ!!はうっ!!ぐはっ!!ぐひっ!!!」

櫻子の身体が俺の上で弾むたび、汲めども尽きぬ内臓痛がポンプで汲み上げられ、撒き散らされているような気分だった。脱力した両腕で櫻子を押し退けようとして……それは叶わず。
櫻子の両腕を外そうとしても、跨る彼女の両脚が、肢体が、俺の両腕を阻んで届かせず。空しく、櫻子の下腹部……性器は俺の腹筋との間で隠されていて……何も無い、下腹部としか形容出来ないソコを空しく引っかく。
こそばゆいのか、恥ずかしげにクスクスと笑う彼女は、笑い声の下、早速『予習』とは感心ですね、と揶揄とも賞賛とも付かぬ言葉を投げてくる、『無い』とはどういうことか、心いくまで存分に確認してくださいね、とも。

また真顔に戻って……股間を弄る俺の手に、時折噴出しそうになりながらも……彼女は、何でもないことのように告げる。俺に、獄卒からの託宣が下される。

「……苦しめたくないといっておいて、恐縮ですが……コレも、必要なコトなんです。おタマタマって意外と弾力がありまして……蹴り上げて、隆一さんの体重をお借りするならば、直ぐに潰してあげられるのですけど。
 その、もう、お立ちになれませんよね?いいんです。ちょっと、調子に乗った私が悪かったんです。隆一さんは、何も悪くない……で、ですね。このままだと、踏み潰すときに多少梃子摺ってしまうかもしれませんので―――

健気にも頑張る子供を見るような目、慈しむ目で俺を見下ろして。

―――下拵え、です。この程度で潰れた事は今までありませんから、ちょっとだけ、ちょっとだけ我慢してください?」

「ふっ!ひっ!!あっ!!ぎぃぃぃぃッ!!!」

リズミカルに、俺の睾丸……腫れあがり、少しの衝撃でも電撃のような痛みが走る器官を容赦無く揉みしだく。男では出来ない、女しか出来ない拷問だと思った。手の先、睾丸の無い櫻子の股間が言外にその通り、と主張していた。

「言いましたよね?タマタマ握られると、男性はもう為す術が無いって……受け入れてください、コレ、だから急所なんです、潰しやすいように、外にはみ出ているのもそう。潰すって決められたら、無駄な抵抗が出来なくなるのもそう」

違う、と。何かで読んだことがある。睾丸が外に出ているのは、単に精子が熱に―――

―――眉唾ものです。だって、ウチの鶏……雄鶏のコトです、みんな人より体温が高いですけど、タマなんて飛び出てないですもん。昨日の夕飯の、コケ悟朗だってそうでした」

449名無しさん:2019/09/12(木) 22:58:45 ID:8wui0XE60
櫻子の股間に揉みこめるものは無く。彼女は、躊躇無く俺のキンタマを揉み潰していく。この激痛は、俺しか感じることが無い、そう痛感すると、鼻の奥がツ-ンとした。餓鬼の頃、理不尽ばかり感じていたことを思い出す。

「隆一さんしか、感じられないからこそ。せめて、痛みを感じる回数は、少なくてすむように。横着せず、シッカリ揉み込んであげないと、ね。貴方のため、貴方のためなんです。面倒臭がってなんて、いられません」

弾む息の下、櫻子の言葉が続く。涙が一筋、左目から溢れた。あらあらまぁまぁ、と久方振りの台詞。大丈夫です、と。男の子じゃなくなるんですから、変な意地なんて張らなくていいんです、とズレた励まし、そして。
唐突、本当に唐突だ。櫻子の目に光が戻って、意識が現世に戻ってきたと直感する。何故か、それは分からない、でも。

「まだ、しばらく掛かりそうですから……少し、昔話をしましょうか」

そう言った櫻子の目には、俺がハッキリと写しだされている。理由は分からない、だが、理解ってしまった。

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450名無しさん:2019/09/12(木) 22:59:23 ID:8wui0XE60
「私にも、高校生だった時代があるんです……隆一さんたちの先輩、OGってことになるのかしら?驚くことは無いでしょう?あの下らない街に、高校なんて一つしか無いんですから」

滔々と語りはじめる。視界に俺が写っていながら、彼女は遠くの誰かを見ているようだった。

「校内暴力華やかなりし時代ってヤツでした。本当、反吐がでそう。ミヅキちゃんが言うには、今は少しは落ち着いたんですってね。……正直に言って、嫉妬してしまいます。

 私は、あの頃既に護身術を修めていて……○○道の××流ってヤツ。ふふ、風評被害になっちゃいますから、実名は避けますね。実際、事故でしたが……道場で、その、男の方を『終わらせた』コトもありました。
 知ってましたか?金的を潰された後の処置が悪いと、男性って亡くなってしまうコトもあるんです。あ、隆一さんは心配しないでいいですよ?後始末、私はちゃーんと何すればいいのか熟知していますから。
 
 で、ね。狭い街でしょう?その噂も瞬く間に校内に広まっていて……気付くと、女子生徒達の顔役、みたいな身の丈に合わない立ち位置にいたんです」
 
無くなっても生活に支障は無いのに、意地悪な作りですよね、と微笑む。支障が無いといえるのは、櫻子が女だからだ。と。世界の半分は女ですよ。達観したように、彼女が笑う。
揉む手は緩めず、それなのに寂寥感を表情に滲ませて。せめて、語るか揉むかどちらかに―――いや、語るのみにして欲しい。

「そんなに辛いんですか……ふふ、もう少しの辛抱ですからね。男の子のウチは、我慢しましょう?まぁ、男の子で無ければ、そもそも我慢する必要も無い痛みなんですけれど……男の子を止めるまでの、我慢。 
 で、ですね。未熟だった私は、その立ち位置に満足していたんです。今思い返すだけで、顔から火を噴きそうですが……『か弱い』女子生徒を守るのが、自分の責務だと、そう思っていました」
 
泣き笑いのような顔。そして。

「初恋も、知りました。ケンタロウ君という方で。身体的には弱くても、精神的には非常にお強い方、でした。気高い人、尊敬できる人、でした。揉め事に首を突っ込んで、自分が殴られても解決したことを喜べるような方。
 初対面は最低最悪。私の前で、ケンタロウ君がキンタマを抑えて青い顔、蹲っていたのを覚えています。当然でしょう、男性だったので。あの頃の私は天狗で。男なんて、股間を蹴れば一発の生き物だって嘯いていました。

 あの人は、懲りなかった。それでも、何度も私の前に立ち塞がって……何度地面を転がっても、それでも。逆に、私の方が心配してしまったぐらいです。あんなに蹴られて大丈夫なのかしら、と。自分で蹴っておきながら、非道い話。
 ……噂では、私は冷血非道で。何人のタマを潰したのか数え切れない、なんて怖れられていましたけど。本当のトコロは、潰すなんて考えたくも無い、そう思っていました。潰してしまった方の悶絶具合を見ていたから、尚更のこと」

本当に、未熟、と。櫻子の右目から、一筋の涙が流れて。ココで俺も理解する。哀しみをトリガーに、彼女が正気を取り戻したことを。いや、コレを正気と呼んでいいのだろうか。揉み込む手は、未だに止まらない。

451名無しさん:2019/09/12(木) 23:00:20 ID:8wui0XE60
「何の変哲も無い冬の晩でした。粉雪が散らつく、澄んだ空気。曇天で、少し憂鬱だな、と思ったことを覚えています。忘れもしない、あの日。

 もう名前を思い出せませんが、一人の女生徒がいました。単に、思い出したくないだけかも知れません。貴方様にも興味を持っていただけるように伝えると……とても、整った容姿をした方でした。
 物静かで、喧嘩なんてしたこともないような方。ショートカットが良く似合う、清楚な方。だからこそ、私とはまったくと言っていいほど接点がありませんでした。
 
 あの腐った街で。物静かなんて何の足しにもなりません。知っているでしょう?よく、からかわれているのを見ていました。ストレスを貯めていたのでしょう。でも、暴力で発散するなんて、思いつきもしなかったのでしょうね。
 ……後で知ったのですが、ご両親が不仲だったそうです。お父様がリストラされてしまい離婚調停中だった、とか。それが、最後の一押しだったのでしょう」
 
唐突に、話題が変わる。だが、櫻子の動きは変わらず、リズミカルに身体を上下させ、絶えず睾丸を圧迫してきて。俺は、チカチカと点滅する意識の中、彼女の独白を聞くしかない。

「―――切欠は、万引きだったそうです。ドラッグストアで、他愛も無い化粧品を手にとって、そのまま。自慢ではありませんが……いや、寧ろ、恥ずべきことですが。あの街では、珍しいことではないでしょう。
 ただ。ただ、それを、ケンタロウ君が見ていた。運命というものを、今でも恨んでいます。何故、何故彼だったのでしょうか。話しを戻しますと……ケンタロウ君は、それを看過することが出来なかった。
 
 ドラッグストアから抜けて。人気の無い通りまで辿り着いたときに、声を掛けられたそうです。そう、掛けてしまった。想像はつきます。一目があるところで詰問したく無かったのでしょう。ですが、全てが裏目に出てしまった」
 
泣きそうな声。泣きたいのはこっちだ。なのに、櫻子の声は、どこか吸い込まれるような響きを纏っていて。いや、彼女自身が、その日の記憶に吸い込まれているのだろう。
俺の睾丸を圧迫する彼女の動きが止まる。泣き笑いの顔で此方をみやると、自嘲するような口調で告げた。


「……ご存知でしたか?『内臓破裂して死亡』ってニュース……結構な割合で、『睾丸破裂』……キンタマが潰れて死んでしまったことを指しているって」


櫻子の涙腺が決壊する。ポタポタ、と俺の胸に涙が落ち、脂汗と混ざって異様な臭気を放つ。

「彼女が男だったら……事態の重大さに気付けたのでしょう。いや、少なくとも喧嘩慣れしていれば、そこまで行きつく前に引くことが出来たのかも知れない。でも、でも、それでも。そうは、ならなかった。
 ……彼の苦しみようを見て、怖くなって逃げた、そう言っていました。そして、不安になって、私に連絡を入れてきた……腐っても、顔は売れていましたからね。折り合いの悪いご両親には頼れなかったのでしょう。

 駆けつけたときには、ケンタロウ君は。もう、冷たくなっていました。ちらついた粉雪よりも、彼の身体の方がずっと冷たい……今でも夢に見ます」

だったら、何でだ!苦痛の奥底で、俺の脳裏を疑問符が埋め尽くす。そんな経験をしたなら―――進むべきは、真逆の方向だろう?

452名無しさん:2019/09/12(木) 23:00:58 ID:8wui0XE60
「アイツを呼び出して、報いを与えようとしました。あの人が感じただろう苦痛を、思い知らせてやりたい、と。お笑い草、ですよね。でも、あの時は。臓腑が煮えくり返って、そんなコトにも思い至らなかった。
 死んでたよ、と一言。彼女が身を竦ませるのに併せて踏み込んで、全力で股間を蹴り上げる。……ふふ、起点は一緒。結果もそうです。タマが無い股間をおさえて、情けなく地面にへたり込む。違いは、ただ一点だけ。

 ……?勿論、女だって股間は急所ですよ?会陰、と呼ぶのですが……その、叩かれたり握られたりでは響かないので、脱出するのは諦めてくださいね、隆一さん。骨、骨盤を覆う筋肉が少ない部分ですから……脛とかと一緒です。
 
 違いは一点。ケンタロウ君を死に至らしめた、蹴り上げられたキンタマが破裂するという過程。『無くなる』というその過程だけは、あの女に。蹴り上げてからへたり込むまでの間に、絶対に介在させることが不可能で!!
 
 分かりますか?イヤイヤながら幾つも潰してきて……初めて。心の底から、キンタマを潰してやりたいと思った相手に!絶対にやり返せないと痛感したときの遣る瀬無さを!!
 
 その女、ですか?さぁ?鑑別所だか、少年院だかに送られたと聞きました。潰したからだなんだとかそんな瑣末な話しでは無く、『人殺し』ですからね。ご両親も離婚されたそうですが……もう、何の興味もありません」

一瞬の激昂。櫻子が感情を表に出したのは、それが最初で最後。渾身の力でタマを握り締められ、彼女の絶叫の伴奏のように、俺も魂を絞られるような悲鳴をあげる。
そして、小康。櫻子の全身が脱力し、絶好のチャンス、それでも。俺の全身はそれ以上に……それこそ、全ての骨が砕け散ってしまったかのように力が入らず、抵抗するにも抵抗できない。

「……ようやく、悟ったんです。守らないといけないのは、『か弱い』女子生徒では無かったと。『か弱い』上に、『金的』なんていう致命的な弱点を抱えた、男子生徒の方だったんだって」

話の着地点が全く見えない。櫻子の独白と行動は、字義通り正反対のベクトルを示していた。何故、それが『俺のキンタマを潰す』なんて暴挙に繋がるんだ?!

「後悔、しているんです。六年なんてあっという間。あの日の出来事は、一日足りとも私の脳裏から消えたことはありません。毎日、寝付く前に悪夢を見て飛び起きます。本当に、何で、何で。
 何で、私が。私が先に。ケンタロウ君のキンタマを、何できちんと潰してあげられなかったんだろうって!!」

悄然とした様相で零れた言葉、俺はそれを咀嚼することが出来ない。目を白黒させていると、委細構わず櫻子は語りを継いだ。

「―――そうでしょう?私だったら、潰してあげた後の手当てだって、きちんと出来た。死なせてしまうなんて、絶対にしなかった。
 私が潰してあげていれば……あんな女にキンタマを蹴り潰されて、死んでしまうことなんて天地がひっくり返ったって有り得なかった!だって、先に潰しておけば。あの女と同じ。キンタマが無ければ、潰されようもなかった!!
 
 潰されるなんて有り得ないほど『お強い』なら、それでいいんです。その『弱さ』を知って、自分で守ろうとされるなら、それでもいいんです。でも、どちらでもない方は……私が、私が何とかして差し上げないと!!」



『こんな思いを噛み締めるのは、自分が最後でありますように------』



魂から搾り出されたような独白。俺は、場違いにも、田崎の話を思い出していた。山姥……というより、バーバ・ヤーガ、亡霊。過去に囚われた、幽霊。いや、全部ひっくるめて、精神異常者。
アイツの評が、全て正鵠を射ていたことに驚きを隠せない。この女は、この女は。―――完全に、イカレてやがる……!!!

453名無しさん:2019/09/12(木) 23:01:46 ID:8wui0XE60
キュ、と俺のタマが縮み。掌で感知したのか、櫻子が怖がらなくても大丈夫ですから、と微笑む。今日まで、今日までですからね、と。今まで、良く頑張りましたね、沢山褒めてあげますからね、と。

「あの野生にも劣る街で……大変だったでしょう。隆一さんがお好きな、自然の摂理って言葉で包めば……野生動物は、強い『雄』が、『数多の雌』を独占することも珍しくないそうです。あの街は、その典型。
 根腐れしていて、もう手の施しようがありません。変わるなんて不可能。誰かが引導を渡してくれることを待ちながら、変わることなく惰性で動き続けるしか無い……なら。自分が変わる他ないのです。
 ……もう、いいでしょう?人間なのですから、人間らしく。虚勢なんていらない。野蛮な街の掟は、野蛮な方々に任せておけば宜しいのです。隆一さんは、一足先に足を洗ってしまいましょう?私も、協力は惜しみませんから―――」
 
正気、いや狂気か。生気が蒸気のように櫻子から抜けていって、また茫洋とした表情に戻る。ムカつくとしかいえなかった表情。今は、恐怖しか感じない。
なのに、なのに。何故か、俺の愚息が痛いほどに勃起しているようだった。海月の顔が脳裏に浮かぶ。こんなトコロで去勢されるわけには行かない、そう叱咤された気持ちがして。

「違いますよ?おタマタマが潰れそうになると、自然と勃起されるのです。そろそろ、そろそろ、ですね」

一刀両断。その気力を、櫻子は一言でバッサリと切って落とす。微笑みを絶やさぬまま立ち上がると―――最早全身に力が入らない、俺の両脚を小脇に抱えて壁を向く。俺に尻を向けた体勢で……タマに、踵を乗せる。

もはや人聞きなど知ったこっちゃなかった。恥も外聞も無かった。やめてくれ、と。せめて、一度だけでも使わせてくれ、そう懇願する。
海月の顔が、去来する。彼女の乳と股間の感触が。だが―――屈辱的にも程が有ることに―――もう、櫻子でも良かった。ただ、童貞のまま去勢されたくは無かった。

櫻子から、苦笑が齎される。

「私は一向に構いませんが……ミヅキちゃんのモノ、横取りするわけにも行きませんからね。大丈夫。セックスだけが絆じゃありません。隆一さんは、セックス……性と性交、両方をこれから失いますが……それだけ。
 日常生活に問題はありませんよ。だって、そうでしょう?今までも経験が無かったのですから、それが『これからも』になるだけ。大したことじゃありません」
 
頼むよ。せめて、女の味を、一度だけでも―――あらまぁ、と驚いた調子で櫻子が声を上げた。
男という性の浅ましさに顔から火が出るような心地すらする。櫻子はそんな俺を軽蔑することもなく……ニコヤカな表情、慈愛の表情を保っているのだろう。だが、学習した。その顔は、また碌でもないことを言い出す顔だ。

「女性器に御執心なのですね……それでは。長話にお付き合いいただいたお礼も兼ねて―――おちんちんも、ちょん切ってしまいましょうね?邪魔なモノが無くなったら、出来るだけ女の子のっぽく整形してあげますから。
 ふふ、もし触りたくなったら、幾らでもご自分のを弄繰り回せますよ?流石に穴までは無理ですけど……男性として18年、でしたっけ?生きてきたのですから、次は女性として生きてみるのも、ええ、乙なモノかも知れませんね」

貴方も、男性を諦めるいい機会になるでしょう。思い入れだとか、愛着だとか。そんなモノは幻想で不要なのです、と。そんなモノがあるからこそ、人は終わりにへばりつくのですから―――何処かで聞いた台詞が告げられて。
踵に体重がかけられ。とうとう、俺の『男』が終焉を向かえると、頭では無い。本能が警告音を大音声で鳴らし、その癖に対処方法は一向に伝えてこない。やきもきとしていると、櫻子が最後通告を伝えてきた。

お目覚めになられましたら、もう男の子では無いですから。そうだ!ご褒美に、本物の女性器も見せてあげますね、と含み笑いの櫻子。ミヅキちゃんには内緒ですよ、と振り返り、悪戯っぽい微笑を湛える。

「それでは……行きます。これだけ柔らかくなっていれば、一瞬で済みますよ。よく、耐えましたね。あとは、もう一踏ん張り……一緒に、頑張りましょうね?」

何が、何が一緒にだ、と。抗議の声を上げようとした刹那。

454名無しさん:2019/09/12(木) 23:02:21 ID:8wui0XE60









「ぷっちゅん」








櫻子から、軽い声、そして。これまでの地獄が児戯だと嘲笑うような。痛いでは無い。もう、怖い、でも無い。寒い、とでも形容すべき感覚が。俺の股間から全身を。稲妻の如くに駆け巡った。



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455名無しさん:2019/09/12(木) 23:03:00 ID:8wui0XE60
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!!」

道場の方角から、聞きなれた怪鳥音。あー、隆一ったらご愁傷様、とおどけて両手を合わせてみせる。チーン!……アレ?チンは取られちゃったんだっけ?キンの方だけ?ま、どっちでもいっか。
アタシ、片瀬 海月は。嗾けた身の上な関係上、多少の申し訳なさを覚えつつ、隆一の『男』の冥福を祈る。とはいえ、『男』じゃなくなったから何なのってトコでもあるんだけど。
アイツ、単純だからさ。アイツの方が弱いから心配って焚き付ければ、絶対ムキになって喧嘩売るって思ったのよね。結果は、聞いての通りだけど。

何ていえばいいのかな?ほら、アタシにとってはタマなんて無いのが当たり前で。だから、タマを取られたって出来事の重みは正直良く分からない。男じゃなくなる?そもそも、アタシは生まれたときから違うけど?
時々さ、タマが無いってどういう感覚なんだよって聞かれることがあるけど……マジ、変態チックだよね。実際のトコ、『無い』って感覚は無だ。ほら、人間だって、尻尾が無いってどんな感覚って聞かれたら、無としかいえないでしょ?
『無い』って感覚自体が無いからさ。無くなったって言われても、ふーん、ぐらいで終わっちゃうのよね。で、それが何なのって具合でさ。

ただ、男が『無い』ってことに興奮するのは、多少分かる。アタシだって、男の股間に『真ん中の穴が無い』ってこと確認するのは好きだもん。不思議な気分と、性差ってヤツを感じちゃう。

久し振りに会った幼馴染は、以前よりも更にアルファシンドローム……ボス犬症候群を拗らせていて、もう手のつけようが無かった。狂犬は、飼い犬になる前に去勢しないとね、程度の軽い気持ち。

ジャラジャラと、足元で鳴子が鳴るのが分かる。遠くで、聞きなれた声……隆一じゃない。隆一じゃなくて……あのアホの、田崎だ。どうやら、罠にかかったらしい。

いや、ちょっと違うかな。男がキンタマ潰されて……みっともなく、全身汁塗れで悶絶してるのを見てるときだけは、『無い』って実感するかも。ぶっちゃけ、その感覚は結構好き。
何てゆーかさー、普段当たり前のように享受している『安心』ってヤツを、全身で実感できる気がするのよね。あ、アタシには『無い』から、絶対にあんな目になんて合わされないな、なーんて。


ズキリ、と胸が痛む。……正直、アソコまでやらせるつもりは無かった。もし、隆一から何かキンタマ以上のモノを奪おうというなら、きっと止めていた。流石に可哀相だよ、と。タマだって……ちょっと気の毒だと思ったもの。
引き止めたときも、本当のトコロ。数回、道場でタマキン蹴っ飛ばしてやれば、今まで虐められていた鬱憤も晴れるかなって、それぐらい軽い気持ちだったんだ。ただ……あの武勇伝が、どうにもこうにもいけなかった。

先輩の空気がさ、どんどん硬くなってたの、分からなかったでしょ?隆一。アンタ、アタシのオッパイばーっか見てたもんね。バレてないと思ってた?
あの人は……隆一が死に急いでいるように見えたんでしょう。で、止めないとって、そう思った。タマタマ潰せばね、気性も落ち着くし……なんでなのかな?まぁ、止めるには最適の処置だったんでしょ。

456名無しさん:2019/09/12(木) 23:03:31 ID:8wui0XE60
あの人、アタシじゃ止めらんないよ。街の人達だって、薄々なにが起きているのか知ってるんだろうけど……腫れ物扱いで寄ってこないでしょ?
何でアタシはここにいるかって?まぁ、色々あったのよ。街の人達ほど賢くなかったからさ。先輩も隆一も、あの街のことを悪し様に罵るばっかだけど……そういう強かさ、アタシは好きだ。

鳴子が鳴った方へ、歩を進める。ズキズキと痛む胸は、体調を崩したせいだろうか。隆一の、隆一のクセに、アタシを真っ直ぐ見据えちゃって……アンタの女になれですって?まったく、笑っちゃうわ……ホント、ウケる。
もう、彼は男じゃない。それだけの事実なのに、妙にアタシの気が沈んだ。後悔はしていない、何処に後悔する理由があるのか分からない、それでも。


遠くで、田崎が宙吊りになっているのが見えて。胸の痛みを押し殺して、歩を進める。討ち取ったり〜〜なんて、隆一のコトが無ければ叫んでいたかも知れない。
別にアイツのことなんて。昨日まで、何とも思ってなかったハズなのに。


―――まぁ、いいか。隆一が、『去勢され童貞』を卒業したなら。アタシは、アソコの馬鹿で『去勢処女』を捨てよう。そう考える。
アタシが潰したワケじゃない。アタシに潰されたワケじゃない。でも、同じ日に、童貞処女を卒業……初体験を経験する。そんな距離感が、アタシ達には似合っている、そんな気がした。

それに、ね。隆一だって、潰され体験を慰めあえるヤツがいた方が気が楽でしょ?いっつもアンタ達つるんでたし。アタシも先輩も、その体験だけは共有できないからさ。『元』男子って、タマ無しって呼ぶだけで傷付いた顔するもんね。
単なる事実だし、アタシはそんなこと言われても、当然でしょ?としか……いや、それすら思わないか。タマって何のことって疑問符を浮かべちゃうかも。あまりに実生活と関係無さ過ぎてさ。

胸の痛みを押し殺し、釣られて藻描く馬鹿へと駆け寄る。また来るって言ってたと、教えてくれた隆一に感謝……つっても、昨日の今日とはねー。
明日は隆一と二人。仲良くタマ無しの股間をおさえて、ベッドで寝てるわよ。

空は高く、風は幾分かの涼気を孕んでいて。今日はいい日だ、きっと明日もいい日だね、と。アタシは、柄にも無くそんなコトを考えたんだ。ふう。アタシの話は、ここで終わり!バイバイ!!



                                                                                         <おしまい>

457名無しさん:2019/09/12(木) 23:05:56 ID:8wui0XE60
ご無沙汰してます。一年振り?書き込むときは投下と一緒に、って決めてるので。

一書き手としては、アレですね。感想さえ頂ければ大満足です。ただ、パターン煮詰まるので……
こんなのがいいなってのがあったら、参考にしたりしなかったりします。それだけです。

458名無しさん:2019/09/13(金) 00:11:32 ID:QC2d4EBE0
上手くてビックリした
この1/10の力もない自分が辛くなるくらい上手い

唯一気になったのは、ケンタロウは毎日のように強い女と手合わせしてたのに一切学習してない(ド素人相手なら対処できたのでは?)のかってこと
一方的にボコられてただけかもですが
つまらないこと言って申し訳ないです

459名無しさん:2019/09/13(金) 20:08:05 ID:PEMuQOWI0

最後を海月の独白にして隆一と対比にするのとかすごいなって思う
それでいてフェチのツボもしっかり押さえてるし

460名無しさん:2019/09/14(土) 02:33:53 ID:pxgQuLN.0
すごく良い
攻め執拗ながらも攻めすぎない感じでいい
一々不自然に叫ばないのもいい
ただ褒めてばかりだと良くないと思うので一点だけ言わせてもらうと終始男側の独白みたいな感じだったけどセリフ調の方が良かった
まぁ才能の無いやつの戯言だと思ってください
ここ最近の大作です有難うございます

461名無しさん:2019/09/14(土) 16:26:48 ID:VsvdS2us0
すごく良かったです。
性差が出ていて男がいかに苦しんでいるかの心理描写もあり興奮しました。

462名無しさん:2019/09/15(日) 20:56:19 ID:ISC8UWWU0
最初の方の殺人事件の話とか隆一の独白とかが
伏線になってて良かった
女を殴るのがダメとかケンタロウが殴られても気にしないとか、女生徒がそれまで暴力沙汰と縁遠かったとかで
ケンタロウが女生徒の突然の暴発で不意打ちで死んだんだろうとか
色々想像の余地があったし良くできてる

どうでもいいですが、これまでの作品だと義務のようにパイパン出されてましたけど改宗したんでしょうか
教徒としてちょっと隆一が気の毒だったので

463名無しさん:2019/09/15(日) 23:41:09 ID:p7vQyz8I0
pixivの好みの作家さんは皆消えてしまった…
この界隈にいると定期的にSSを投稿してくれる、話を完結させてくれる、この2つがどれ程有難いか身にしみるよ

464名無しさん:2019/09/19(木) 09:49:25 ID:ErjeUfeE0
最高でした
最近の渇きが少し癒えた感じがしました

議論スレかもだけど書き手の継続力よりも読み手の継続させ力の問題な気がする
感想書く奴少ないしだから渋行く人多いんじゃね?

465名無しさん:2019/09/20(金) 16:24:52 ID:KwbTBnXI0
素晴らしいの一言です。
引き込まれるように何度も読んでしまいます。
事が終わった後の海月のモヤモヤとした感じがすごくよかったです。
また次を楽しみにしています。

466名無しさん:2019/09/21(土) 21:57:44 ID:k7iYdw3c0
力作の長編とてもよかったです
最初は片方で勘弁してやるって言ってたのにとばっちりで両方潰される田崎カワイソス

467名無しさん:2019/09/24(火) 03:29:12 ID:2gx.q0uY0
みんなどこでオカズを見つけてるんだろうって思う
書いてくれた作者さんに感謝!
しかし読む側にも文才が無いと難しいね

468名無しさん:2019/09/30(月) 08:17:59 ID:j632R3.U0
>>421
ミックスファイト倶楽部は良かった…
どこかに保存されてないかなぁ

469名無しさん:2019/10/14(月) 19:18:16 ID:lidSZUtE0
私の名前?うーん、秘密っ♪。好きに呼んでくれていいよぉ?あ、でも可愛い名前がいいかなー。
大丈夫、心配しないで。おにーさん、きっと、忘れられない顔と名前になるからさ。うん、それは絶対そう。

というか、おにーさんも不運だったよね。でも、いい勉強になったんじゃない?ほら、お母さんから教わらなかった?知らない人に、ホイホイ付いて行っちゃだめだよって。
お菓子あげるからとか、玩具あげるからって言われてもね。攫われて、酷い目に合わされちゃうかもしれないって思えば考え物でしょ?

あ、ワケが分からないって顔してるね。いや、単純な話しだよ。おにーさんが呑んでたお酒に一服盛ってさ。デロデロになったキミを介抱する体で連れてきたの。

ここ?ここ、ラブホだよ?防音設備が整ってるみたいだから、おにーさんが泣いても喚いても誰にも聞こえない……にひひ、どう?怖くなっちゃった?
ココ、SMとかにも対応してるんだ。前に下見に来たとき確認したから。って、おにーさんの今の状態見れば、説明しなくても一目瞭然か。あはははは。大の字に磔にされちゃって、なんか可愛いね。

ん?何をするつもりだって?そりゃ、裸の男女がホテルにいるんだから、やることなんて一つでしょ?イ・ケ・ナ・イ・コ・ト♪
おにーさんさ、SMって興味ある?え?虐められるのには興味ないって?ふふ、ですよねー。いや、重畳、重畳。話しててそう思ったんだ。だからおにーさんに決めたんだけど。

ふふ、いい身体してるね。筋肉質で、ガッチリしてる。私とは全然違う、男の人の身体。見てるだけで興奮しちゃうなー。ほれ、スリスリ〜。ふふ、お肌はガサガサだね。
おにーさんも見てよ、私の身体。ちゃーんと、下の毛まで処理してきたんだよ?違うでしょ、おにーさんのと。ね、何処が違うと思う?ふふ、シンキングターイム!制限時間は〜、十秒!!

10.9、8、7、6、5、4、3、2、1……はい、答えをどうぞ!ん?ふざけてないで拘束を外せって?……ん〜ッ、残念!不正解です!罰ゲームッ!!それっ!!!!

キーン!!!

……ふふ、凄い顔。いつみても、キンタマ蹴られた男の顔ってステキ……♪ふふ、特別サービスだよ?オマケに、もう一発!!てやっ!!!

キーン!!!

あはははは!!!目玉が零れ落ちそう。そんなに痛いの〜?私、『ない』から分っかんな〜い♪それじゃ、確認のために……もう一回ッ!!せいやっ!!!!

キーン!!!

470名無しさん:2019/10/14(月) 19:19:23 ID:lidSZUtE0
は、あはは、あははははははははは!!!すっごい悲鳴。大丈夫だよ〜。心配しなくても、この部屋は防音だから、誰かに迷惑かけちゃうことなんてないですよ〜。
ふふ、もう一回って洒落込みたいトコだけど、まずは感想聞いてみようかな?どう?タマタマ痛いでちゅか〜?うふふ、そうなんだ。そんなに痛いんだ……なんて、アタシには全然分かんないんだけど。ゴメンね?
ほら、見てよ。アタシの両脚の間……おにーさんみたいな弱点、ぶら下がってないでしょ〜?というか、アタシから見たら無いのが普通でさ。そんなトコに急所くっつけてるおにーさんが変なんだけど、さっ!!!

キーン!!!

ぶふっ……ゴメンゴメン。人が話してる最中にもブラブラ揺れてたからさ。キンタマちゃん、構ってほしいのかな〜って思って。はは、また悶えてる。可愛い〜〜〜♪
え?こんなコトされる謂れは無いって?それ聞く〜?おにーさん、自分の胸に聞いてみたら?分からないなら……ほらっ!!

キーン!!!

ひひ、痛そう〜。キンタマ付いてる側は大変だ。アタシは付いてない側だけど。ほらほら。見える?アタシ、タマとかチンなんて変なモノ持ってないって。で、何でか分かった?まだ?そっかー……とりゃっ!!

キーン!!!

ほらほら。早く答えないと……物理的に、キンタマ蹴られない身体になっちゃうぞ〜。ふふ、大ヒント。どう?何でこんな目に合わされてるのか分かった?え?心当たりなんてない?そう……ていっ!!!

キーン!!!

あーあ。もう悶絶しちゃって答えるもなにもないか〜。タマタマあると大変ね〜。ま、明日には……ともかく!正解は〜、おにーさんにタマタマが付いてるからでした〜。わー、どんどんぱふぱふ〜!!
いや、そりゃそーでしょ。キンタマ無かったら、キンタマ蹴られるも何もないもん。アタシ、キンタマ蹴られたことなんて一度も無いよ?無いもん。キンタマ攻撃なんて、アタシには全然効きませーん。

というか、女にやってもキンタマ攻撃じゃないよね。何て呼べばいいのかな……おにーさん、何かいいアイデアある?無い?ん?何?止めろ、ふざけるなって。あはは、いいよねー。アタシ、そういうの大好き、だ、よっ!!

キーン!!!

でも、もっと好きなのは……男の人がタマタマ虐められて、どうしようも無くなって言いなりになっちゃうのを見るときかな〜。ふふ、どういうことか、おにーさんも直ぐに分かるよ。
そういうの見てると、アタシ、女に生まれて良かったって心底思うもの。気持ちいいよ?男の人にはわからない、女の快感ってトコかな〜?おにーさんは、女に生まれればよかったって噛み締めてね?ほらっ!!

キーン!!!

ひひ、ひひひひふふ、あっはっは!!スッゴイ暴れよう。男の子に生まれちゃって残念でちたね〜。でも大丈夫だよ?仕上げまで終われば、おにーさんも、『おにーさん』じゃ無くなってるから。
え?どういう意味って……んまたまたー。青い顔して、分かってるク・セ・に♪うん。タマタマ、アタシが貰っちゃうってコト♪良かったね〜、これでおにーさんも、明日から金蹴りに脅えなくて済みますよ〜、なんちゃって。

471名無しさん:2019/10/14(月) 19:19:58 ID:lidSZUtE0
犯罪?訴える?いや、どうぞどうぞとしか言えないけど……別にアタシを訴えても『元おにーさん』が『おにーさん』に戻るなんて無理だよ?タマ無しちゃんのまま。
というか、そもそもアタシ、もうお尋ね者だし。?あ、単にもう訴えられてるよってコト。写真見る?ほら、この『おにーさん』とこの『おにーさん』と……タマタマ貰っちゃったコにタレこまれてるからさ。

うーん、スマホや銀行が使えないのは不便かなー。ほら、アタシのスマホ、もう写真とる専用みたいになってるし。GPSが狂っちゃってるのは逆に都合がいいんだけどさ。
おにーさんも、アタシの被害者団の一員にでもなれば?みんなタマ無しだから、きっと仲良くなれると思うな。ただ……っ!!

キーン!!!

ふふ、皆、その痛みをもう味わえない身体になってるからさ。おにーさんが仲間外れにされないように、アタシがちゃーんと、ぷくく、新しい扉を開いておいてあげる。感謝はいいよ〜。
アタシだって、その痛みを味わえないんだし。あはは、女の子の特権の、お裾分け、ってトコだねっ♪お金が持つ限り、あっちにフラフラ、こっちにフラフラして、男の人をキンタマから解放してあげてるの。

とはいえ、そろそろ蓄えも限界なんだけど……悲しい。え?お金なら払うから、このまま解放してくれって?え〜、なんかソレって強盗で、ガチ犯罪者じゃん。ちょっと引くんですけど〜。
いや、タマ潰しも犯罪なんだけどね?自分には無いからさ、なーんか、悪いコトしてるって実感が全然ないんだよね〜。あーあ、お兄さん可哀相。こんな変な女に誘拐されちゃって……ま、身代金貰えば解放してあげるけどさ。
ん?身代金、幾らだって?ぶふっ、またまた、んまーたまたー♪分かってるでしょ?おにーさんの身代金は―――

―――こーれ♪おにーさんの股間にひっついてる、『金』のボール、ふ・た・つ・ぶ♪


ふひひ、おにーさんったら、震えちゃって。タマタマの入れ物、掌で包まれたのがそんなに怖いの?アタシ的には、暖かくていい手触りなんだけどなー。ほら、コリコリコリ。あはは、身を捩ってる♪
普通はコレ、ひんやりしてるんだけど……ガンガン蹴っ飛ばしたからさ、ちょっと腫れちゃったのかな?ま、どうせ今日で無くなるんだし、どうでもいいよね?

ん。何でこんなコトするんだって……さっき答えたでしょ?何?逆?何でアタシがこんなコトするのかって?そりゃ、したいから、としか言いようが無いんだけど。
子供の頃ね、ガキ大将的な男子とケンカしたことがあってさ。まぁ、ちょっと好きな子だったんだけど……ね、思いっきりキンタマ蹴っ飛ばしたら、一撃で蹲って泣いちゃって。

女で良かったって思った。アタシ、女なんだって。蹴られるタマなんて、ほら!何処にもついてないんだぞって。なんだかエッチな気分になっちゃって。

丁度、護身の授業でさ。変な人に襲われたら、股間を蹴っ飛ばして逃げましょうみたいなコト習ったから、つい試しちゃったんだけど……スッゴイ反応で、なんか興奮しちゃって。でも、あの授業も片手落ちよね。
だって、ほら。この部屋だと、変な人ってアタシだけど……アタシ、別に蹴っ飛ばされても効かないもん。もう一回見る?普通に痛いだけ。逆に蹴っ飛ばしてきた子に……ふふ、男の子ならだけど……大変なコトしちゃうかも。
女の子だったらぶん殴ってお仕舞いかな〜。ほら、アタシと同じで蹴っ飛ばして欲しそうなトコ無いもんね。あ、話しが逸れちゃったね。

472名無しさん:2019/10/14(月) 19:20:31 ID:lidSZUtE0
で、キンタマ蹴るのに嵌っちゃってさ。アタシは全然平気なのに、男の子は脆いよねって。もう、中学ではキチガイの金蹴り女だって、学校中の男子に怖れられてたんだから、
失礼しちゃう話しよね〜。キンタマ蹴られるのが嫌なら、自分で取っちゃえばいいのに。何?男にとっては大切な場所?アタシ、男じゃないから分っかりませーん。馬鹿みたい。誰もアンタ達のキンタマなんて必要としてないよ。

ゴリっ!!

おっと、つい力入っちゃった。おにーさんのタマタマ、ゴリっていったよ?痛かった?ゴリってなったらどう痛いのか、言ってくれないと分かんないよ?アタシ、ゴリッどころかコリってなるモノもないからさ。
と言っても、胸のあの部分はコリコリしてきちゃったけど……興奮してさ……ここは、別に触っても気持ちイイだけ。ほら、おっぱいスリスリ〜、どう、固くなってるの分かる?

でもさー、何か学校中で問題になっちゃったんだよね。お母さん呼び出されて苦情を言われたみたいだし。アタシ、ママに呼び出されてビンタされたもん。バシッバシッて何回も。アンタ、最低ねって言われてさ。
変な話だと思わない?なんで、ママにもキンタマなんて無いのに、他人のタマのために怒るのよ?まぁ、ママにタマあったら、アタシ速攻で蹴り上げてたけど……逆にね。無いから、手も足も出なかった。

で、ギガにムカついたからさ。なんか都合よく100万円ぐらいはお金持ってたし……お年玉貯金ね。コレ使って、全国でタマ落としツアーをしてやろうって思って家を飛び出したの。
いつかは潰してみたいって思ってたけど、流石にソレはねって我慢してた。でも、こうなれば我慢する必要も無いかなって。掴まるまでに幾つ潰せるか、記録を狙ってみても面白いかもって思ったんだよ。

え?年?……15だけど?見えないでしょ。お酒飲んでも誰にも注意されないし。おにーさん、呑み屋で口説いてきたもんね。幾つに見えた?二十歳ぐらい?そうでちゅよー、コレ、JCのおっぱいでちゅよーなんつって。
どうなの?若いと嬉しいモノ?何でなのかな……プレミア感なの?ねー、どうなの、おにーさーん。


………………………………へぇ、そんなコト言うんだ。こんなコトしてママに顔向けできるのかですって?へぇー、ふぅーん。おにーさん、勇敢だね。キンタマ、アタシに掴まれてんのに。
はぁ、もういいよ。完全に萎えた。もう、おにーさんのタマは潰すから。抵抗も説得も無駄だよ?タマ潰しされると、男の人はどうしようも無くなるみたいだからさ。女には効かないのにね。

本当は、もっと甚振って愉しみたかったんだけど、醒めちゃった。っておっと。危ないなぁ……だーかーらっ!!今更暴れてみても駄目!!

ゴリゴリゴリゴリッ!!!

ほらね?無駄だって。男子はキンタマ握られちゃうとどうしようもないの。女子は平気だけど……握られようが無いし。勉強になったね?男の子は、タマ握られちゃったら負け。もう駄目。
女の子の気分次第で、どうされちゃっても文句言えないの。で、アタシ結構ムカついてるから……おにーさんのタマは、このまま、ぶちゅって潰しちゃう。止めて?もう遅いよ!男らしく、タマ潰されて泣きなさい!

473名無しさん:2019/10/14(月) 19:21:49 ID:lidSZUtE0
……っと、準備しないとね。ん?コレ、結束バンド。これで袋の付け根縛って……これでヨシ!いや、アタシ優しいからさ。奪うのは『男の命』で勘弁してあげよっかなって。感謝してよね。
タマ潰れるとショック死しちゃうっていうじゃない……知らなかったの?そーらしいよ?不思議だよね、女には元から無いのに。で、それってさ。一つは、出血多量による血圧低下のショック死……タマ、内臓だからね。
ここ潰すと、沢山血がでちゃうんだよ。経験者のアタシが言うんだから、ホントよ?で、それを防ぐために、予め袋の付け根をギュって縛っておくの。

あとはね、急激な苦痛によるショック死……血圧が上がっての心不全とかだって。寒い日に熱々のお風呂に入って死んじゃうみたいなコトかな?実際はどうなんだろうね。潰されたコトないから分かんないな。
ま、アタシは潰されることなんて一生無いし、ふふ、おにーさんとは違って♪おにーさんは、これから潰されちゃうんだよ?感想はどう?命乞いしてみる……別に聞くつもりはないけど。

これは、予め痛めつけておいてあげれば防げるかなって。駄目でも、一応、このホテルにはAEDあったし。ちょっとぐらいは蘇生療法試してみてあげる……まぁ、コレが必要になったコトは今まで無いけどさ。

で、コレが秘密兵器ーっ!!って、そこらで拾った小石なんだけど……分かるかな、おにーさん。結構ゴツゴツしてるよね?ふふふふふ、コレとおにーさんのタマタマ一緒に揉み込むと、楽しみ、あっという間に潰れちゃうの。
これね、江戸時代の護身グッズにさ、中に棘が生えた鉄の指輪みたいのがあって、そこから思いついたんだ。チョー賢くない?お侍さんのお嫁さんとかが嵌めてたらしいよ?襲われとき、その棘で暴漢のタマ挟んで潰せるようにって。

あはは。時代が変わっても人が考えることって似たり寄ったりだよね……何?止めて?謝るから?土下座もするから?……ふふふふふふ、だーめ。あんなにイキってたのに、タマ潰されるとなると怖いんだ。
勇気だしてよ。男でしょ?アタシ、女だけどさ、タマ潰されるってなっても全然怖いとは思わないよ……ぷくくく、当然か。潰されるタマ無いんだもの。大丈夫、おにーさんもそうなるだけ。

よし!!準備完了!じゃ、覚悟はいい?あはは、女になりたくないって、心配しないで。タマ無くなっても女にはならないよ。
キンタマ潰された経験がある女なんて、この世に一人もいないもん。だって、元からキンタマなんて変なもの付いてないんだからさ。おにーさんは、女にタマ取られちゃった、間抜けなオカマちゃんになるだけ。
え?そこは男にとって本当に大事なトコだから止めてくれって?うーん、じゃ、男辞めればいいんじゃない?その伝だと、男じゃなければ大切じゃないってことよね?現にアタシにとっては全然大事じゃない場所だし。

そんなに大事ならさ、自分で守ってみなさいよね〜。別にソコ全然大事じゃない、アタシに守ってもらおうなんてムシが良すぎない?偉そうに説教までしておいてさー。
でも、まぁ二つとも一遍に潰してあげるから、うん、ソコも感謝してよね。仏心ってヤツ?ほら、アタシには検討つかないけど、タマ潰れるのってとっても痛くて苦しいらしいじゃない?で、さ。
その痛みを知ったまま、タマ抱えて生きてくのって怖いでしょ?だから、二度と同じ思いをしなくていい身体にしてあげるの。無ければ怖がらなくていいでしょ?アタシ、潰される恐怖なんて一回も感じたこと無いよ?


じゃ、そろそろいいかな。行くよ?アタシとは一生無縁な苦しみで、みっともなく足掻く様、よーく見せてね?…それっ!!!


グジュリ……ッ!!

474名無しさん:2019/10/14(月) 19:22:22 ID:lidSZUtE0
あは、は、は、ははっはははっははは!!スッゴ!!あんなにカッコつけて説教してたのに、みっともなーい!恥ずかしーい!!打ち上げられたお魚みたいに跳ね回ってる!!
……いやー、いつ見てもいいもんですなー。ふふ。『無い』自分のアソコ弄りながらだと、殊更に格別な見世物ですわい。

で、おにーさんのタマ袋は……うん、大丈夫みたい。内出血で膨らんできてない。なら、もういいかな。これ以上、アタシが責めたい部分残ってないし。
じゃ、あとは警備員さんとか、係の人が来たら、事情を説明して助けてもらってね?

それじゃね、おにーさん。タマタマ無くなっちゃったけど、元気出してね。世界中の半分の人は元からタマなんてないんだから、別に特別な人になったわけじゃないんだよ?
女の子に、タマ無しタマ無しって虐められたら、オメーだってタマ無しじゃねーかって言い返していいからね?女の子は、タマ無しにそんなコト言われても誰も気になんてしないからさ。

宣言通り、忘れられない夜になったよね。じゃ、バイバイ。
                                                                                      <おしまい>

475名無しさん:2019/10/14(月) 19:23:40 ID:lidSZUtE0
ひと月ぶりに覗いてみたら、前作の感想が沢山あって嬉しくなったので。とはいえ、何か投下と一緒じゃないと書き込まない縛りを勝手にしてるので、突貫で一つ上げてみました。
あと、前作誤植ありますが、脇役Aの名前は田崎としておいてくださいませ。

>>154
亀にもほどがありますが、『睾丸を蹴って欲情する女』ってキャラ付けすごい楽なんです。結構類型化が進んでいるので。上手い人は味付けの妙で凄く魅力的なキャラに仕上げられてますよね。
>>395,396
女キャラのセリフのみって試みが実験的で面白い気がしたので、やってみました。いや、悪くないというか、書くのが楽ですね。このサイズなら二時間ぐらいでした。
というか、書いてみて思ったんですが、咽せかえるようなボイス販売サイトのサンプル臭。
>>458
だいたい462さんが書いている通りで想定していました。もっというと、女子生徒の中で金的が流行ったのは櫻子がやりまくってたからです。
彼女も薄々それに気付いていて、だからこそ自分の責任に耐え切れず、曖昧な状態になって明後日の方向に迷走しているイメージです。
>>460
独白とセリフ調の差異がよく分かりません。独白=セリフ調=一人称では?読解力が無く申し訳ないです。
>>462
その教えに背信したわけでは無いのですが、その神のご神体染みた方がこう仰られたので……。
 (|)<隆一は男性としての運用をしておりませんので、心配ありません。

476名無しさん:2019/10/15(火) 00:51:40 ID:hQznbA0s0
いつもあなたの作品を楽しみにしています。
今回も最高でした。

欲を言えば、
潰されることって現実にはそうそうなくて、男に危機感とか現実感がいまいち湧かない場合が多いと思いますが(そこから恐怖を与えていく描写の筆力も素晴らしいと思いますが)、
まず1つ潰してから、男に恐怖と取り返しのつかない現実を分からせた上で、ゆっくりと追い詰めながらもう1つも容赦なく…というのが見られたらもう死んでもいいです

477名無しさん:2019/10/17(木) 12:25:38 ID:zjMQKhwc0
投下乙でした
さり気ない「ついてない」女性の部分を弄りながらの玉責め描写にかなりグッときました
同じ股間でも地獄の苦しみを感じる男と快感を得る女性の対比がとても映える…

478名無しさん:2019/10/18(金) 23:13:04 ID:8vj8F8yc0
なくなってしまったのかもしれませんが
オリジナルやリトバス等の二次創作があった金蹴りの小説サイト名知りませんか?
金蹴り 小説でググったらすぐ出てきたような気がするのですが思い出して読もうとしても見つからない…

479名無しさん:2019/11/05(火) 07:01:29 ID:IIqtD5pA0
あー、あったな懐かしい
黒塗り背景のシンプルなデザインのとこだよね

今どっかにブクマ残ってないか探したけどだめだった
多分ドメイン切れてるんじゃないかなぁ
昔アーカイブ見た記憶があるからリンクさえ分かれば見れそうではある

480名無しさん:2019/11/09(土) 00:06:34 ID:6Tlywl0A0
過去スレにあったこれかな。まだ見れる

【金蹴り】女が男を金的攻撃で倒すSS 2【電気按摩】
ttp://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1295229329/646

481名無しさん:2019/11/10(日) 18:23:20 ID:SWFli7RA0
たぶんチェリーバスターズかな?
ttp://s6.artemisweb.jp/cherryhurts/top.html

482名無しさん:2019/11/11(月) 21:50:50 ID:1jDy/xX.0
ありがとうございました
昔のHPは消えてるのが増えてきてリンク忘れてると本当に見つからないです

483名無しさん:2020/01/13(月) 00:11:36 ID:a.GNHank0
遅くなりましたが、みなさんあけおめです
近年は金的小説が不景気で寂しい限りですが、今年は活気に満ちる年になればいいですね

484名無しさん:2020/02/03(月) 00:43:53 ID:DqKN8Qwo0
うむ

485名無しさん:2020/03/27(金) 13:23:55 ID:SymrAxs20
ここ以外で良質なSSに期待できる場所ってpixiv以外にある?

486名無しさん:2020/03/30(月) 11:49:46 ID:1h5RV9Gc0
しっぽの練習○の金的ネタは男女差や女の優越感を描写してて美味しいが、最近金的無いからな
数年前までは最強サイト・金玉を蹴る女たちが定期的に更新されてて神だったが、WOW同様みんな活動休止していく
ゲームのsc6も金的女神ソフィーが最新グラフィックで復活と思いきや、5やロストソーズで復活した男悶絶バージョン膝金がなくなり超劣化してしまった
金的フェチにはまさに冬の時代
小説ではクライマックス手前の婿嫁の続きは見たいものです

487名無しさん:2020/04/13(月) 22:39:16 ID:4LLBzwTI0
>>485
定期的に更新があるサイトだと
「ド聖さん」と「古典太平記」がある
ただ、古典太平記は音声作品にシフトした感じ

488名無しさん:2020/04/14(火) 15:26:24 ID:bLs4Y0Fg0
この性癖のストライクゾーン突いてたのはやっぱり金玉を蹴る女達なんだよな
本当に復活して欲しい


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