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1以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/05(金) 20:22:45 ID:R4QiEhY.O


8370/78:2013/08/28(水) 14:07:38 ID:y780oguI0
  _
(##゚∀゚)o「ぽっぽ、お前見てたろ? シラネーヨの動きが化けたの、なんでか分かる?」
(*;‘ω‘ *)「……ペニサスだ! お前の心を読んで、ネーヨと共有してるっぽ!」
  _
(##゚∀)o「さんきゅ、それだけ分かれば充分だ」


ジョルジュは拳を打ち鳴らして、二人に向き直った。
左足の火傷は見た目にも重く、少し引き摺るように歩いているのが分かる。

画戟を持つペニサスの手が、僅かに震えた。


('、`;*川「……カラクリを知っただけで勝てると? 丸腰の貴方が?」
  _
(##゚∀)o「馬鹿言うんじゃねぇよ。俺は初めから、お前ら三人纏めたよりもよっぽど強い」

(∮₤;メд`) 「!!」


一歩、また一歩。
幽鬼の如き足でゆっくりと進むジョルジュ。

ネーヨは慌てて息を吸い込んだ。
もう一度火炎弾を叩きこむために、そして、この戦場の重圧から逃れたいために。

そして――ジョルジュという天敵の前で、その焦りが致命傷となる。

8470/78:2013/08/28(水) 14:12:46 ID:y780oguI0
('、`;*川「待って、ネーヨ! 駄目!」
  _
(##゚∀)o「遅い!」


ペニサスが制止した時に、既に手遅れだった。
ネーヨの口内にある炎晶体――火炎を生み出す器官は、既に灼熱している。
もはや彼自身にも、止める事は出来なかった。
思考を読む力が無くても、今この場限りにおいて、ジョルジュにも少し先の展開は見えている。


(∮₤;メд`)「な」


光弾が放たれる、直前。ジョルジュは焼け焦げた足を引き摺って、大きく一歩を踏み込む。
口腔内で維持しきれなくなった豪火球がネーヨの口を溢れ出し、苦し紛れに飛びだす。
叩きつけられた猛炎弾を掻い潜るように、ジョルジュは大きく斜め前へと飛んだ。

再びの轟音、閃光。熱の爆風。
思わず目を覆ったペニサスは、ネーヨの"恐怖の悲鳴"の、その"声"を聞いた。

8570/78:2013/08/28(水) 14:15:14 ID:y780oguI0
熱の閃光が通り過ぎた後、覆った眼を開いたペニサスの前で、死闘は終わりかけていた。

黒竜の鱗ばった右前肢を、ジョルジュのゴツゴツした左手がしっかりと掴んでいる。
純粋な力比べで、若いとは言え最強の竜種を相手に、身体中を火傷に覆われたまま。
それでも、ジョルジュの腕力は、その相手が逃れることを許さない。


('、`;*川「ネーヨ――ッ!?」


相方の窮地を見たペニサスが慌てて画戟を振りあげた、その手首を鉄木の固まりが殴り抜いた。

"声"の外から投擲された折れた戦棍の片割れ、増幅器付きの先端部分。
"赤"の精霊が生んだ衝撃で画戟は彼女の手を離れ、遠く地面を転がる。


(*‘ω‘)「……お前の相手はあたしだ、って、言ったっぽ」
('、`;*川「くっ、この……」


得物を失ったペニサスには、二人の怪物の戦いに僅かでも介入する力は無い。
痛む腕に構わず画戟を拾い上げようとした時には、既に勝負は決まっていた。

8670/78:2013/08/28(水) 14:16:35 ID:y780oguI0
(∮₤;メд`)「放セーヨ……ッ、放セッ!」
  _
(##゚∀゚)o「お断りだね」


巨竜の胸元に、ジョルジュは右手を伸ばした。
胸筋を覆う、黒く鋭い鱗の隙間に手を掛け、しっかりと掴む。

ペニサスを介して、巨竜はその狙いを知り、抵抗しようと足掻いた。
自由な左前肢が数度、ジョルジュの頬を打つ。しかし、狂戦士は揺るがない。


(∮₤;メд`)「放……ッ!」
  _
(##゚∀゚)o「長いこと、良く頑張ったが……ガキはお寝んねの時間だよ!」


怒号と共に、ジョルジュは両腕に全力を掛けた。
漆黒の竜の巨体を背負い込むように、両足を踏ん張る。
巨体が宙に浮き上がり、受け身すら取れないままに、一直線に地べたに落ちる。


(∮₤メ д )「ガァぁッ!」


強かに頭を打ち付けたネーヨは、完全に脱力し、その場に伸びきった。

8770/78:2013/08/28(水) 14:24:46 ID:y780oguI0
……


(*‘ω‘ *)「……終わった、っぽ?」
  _
(##゚∀゚)o「多分な」

地面に大の字を描いて倒れたネーヨ、ジョルジュはその喉元にしゃがみ込み、手を触れた。

呼吸はしているが、反応は無い。
どうやら、完全に意識を失くしているようだ。
油断なく勝利を確認するジョルジュの背後に、手首を押さえたペニサスが立った。


('、`*川「……まさか、ここまで手も足も出ないなんてね」

  _
(##-∀)o「流石に火球はキツかったよ。あんたは、もう良いのか?」

('、`*川「ええ、降参よ。シューには"ネーヨが負けたら諦めろ"って言われてるから」


脱力した様子で言いながら、彼女は腰のポーチを探った。
警戒するジョルジュに構わず、漆塗りの薬筒を彼に差し出す。

8870/78:2013/08/28(水) 14:33:49 ID:y780oguI0
  _
(##゚∀゚)o「本当に?」

o ('、`*川「本当に。ほら、火傷に使いなさい」


彼女の様子は確かに、戦闘中のそれとは違う。
ジョルジュは受け取った薬筒に目を落とした。

蓋を開けると、白い、強烈な腐敗臭を放つ膏薬。
毒とも薬とも取れる悪臭に、思わず顔を背ける。


('、`*川「毒じゃないわ。一応だけど薬術の心得はあるから、効果は保障する。
     何より、そもそも貴方には普通の毒じゃまともに効かないでしょ」
  _
(##;-∀)~o「いやだって、この匂いはなぁ……」

('、`*川「ま、信用ならないと思うとしたら、それも当然ね。気持ちはわかる」


ペニサスはそれだけ言うと、倒れたネーヨに向き直り、懐から別の瓶を取り出した。

8980/78:2013/08/28(水) 14:49:16 ID:y780oguI0
(*‘ω‘ *)「そりゃ信用するわけ……って、ジョルジュ!?」
  _
(##゚∀゚)d~「うわぁ、これを顔に塗るのは流石に嫌だなー……」


言いながらも、ジョルジュは一掬いの軟膏を指に取って、顔の火傷に塗った。
まだ熱の冷めない傷跡に、ジクジクと薬効が染み込んでゆく、気がする。

臭いを気にしなければ、それなりの効果は有りそうなものだ.
ジョルジュはその場に座り込み、黒焦げになった薄手のズボンの裾をぺりぺりと肌から剥がした。

熱で崩れた左足の組織から、ぽっぽは目を逸らした。

  _
(##゚∀゚)「そう気張るなよ。敵じゃないなら喧嘩腰になるだけ無駄だろ」

(*;-ω-)「はぁ……あたしの感覚の方が普通なんだよな?」
('、`*川 「そうね、自信持っていいと思うわ」

9080/78:2013/08/28(水) 14:53:57 ID:y780oguI0
(*‘ω‘ *)「それで、この泥沼を渡る方法は無いのか? ミセリ達が心配だっぽ」


ぽっぽは小瓶の口を開けようと苦戦するペニサスに尋ねた。
ミセリが泥河の向こうの森に消えてから、まだそう長くは経っていない。
しかし、非道を極める"魔導師"の死霊が相手とあっては、一刻の猶予すら無いと思った方が良い。

ペニサスは彼女に目を向けると、諦めたように小瓶をジョルジュに差し向け、答える。


('、`*川「方法は……一応、ある」
  _
([#]∀゚)o「?」 ポンッ…


彼女の腫れあがった手首を見て、ジョルジュが代わりに瓶口のコルクを抜いた。

膏薬の腐敗臭を大きく上回る、強烈な刺激臭。
ペニサスはその劇物を壜を仰向けのネーヨの口に差し込み、一気に逆さにした。

とんだ罰ゲームだ。ジョルジュが小さく呻く。

9180/78:2013/08/28(水) 14:56:59 ID:y780oguI0
  _
(##゚∀゚)o「その方法ってのは?」

('、`*川「……すぐに荷物を纏めて」
(∮₤;メд`),;/ ・゚ ガハッ


劇物を流し込まれたネーヨが咳き込み、その巨体を大きく痙攣させた。
巨体をのた打ち回らせて苦しむ彼の頬を、ペニサスは容赦なく平手で張る。


('、`*川「ほら、起きなさい。仕事よ」

(*;‘ω‘)「……まさか……!」
('、`*川「正解」


三発、四発目の平手で、痙攣する竜が小さく唸り声を上げた。
頬を押さえた彼は、虚ろな目で身を起こす。

視界の端でジョルジュの目が少年のように輝いたのを、ぽっぽは見逃さなかった。

92以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/08/28(水) 15:01:28 ID:y780oguI0
今日の深夜に来ると言ったな? すまん、ありゃ嘘だった。

半端と言えば半端ですが、長いので、ここで区切らせて頂きます。申し訳ない
纏まったご挨拶は後編の後に差し上げますので、よろしくお付き合い下さい

93以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/08/28(水) 15:05:29 ID:y780oguI0
あと一応、ジョルジュやハインをしっかり書くのは最初の予定ではハ章と五章でした。
よろしければ気長にお付き合い頂けると幸いです

94以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/08/28(水) 20:40:31 ID:1rQBwQ260
ショシルジュつええええ


95以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/08/29(木) 04:24:45 ID:mkZu2z2oO
乙でした、後編はいつかな

96以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/08/29(木) 08:00:41 ID:yCR66cUk0
乙です!
ちんぽっぽも強くなってきたな

97以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/08/30(金) 01:26:21 ID:ESwA5dls0
ネーヨすげええええええええええええええええええええ

98以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/08/30(金) 21:19:05 ID:ESwA5dls0
次が待ち遠しいぜ

99以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/01(日) 14:56:22 ID:877ikvNA0
先日は御迷惑お掛けして本当に申し訳ない

後編の書き溜めは半分くらい終わってるので、遠くないうちにまた参ります、と報告します

100以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/02(月) 07:11:49 ID:9Hg6DXlI0


101以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/02(月) 21:58:48 ID:7LWJTYpc0


102以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/10(火) 04:42:43 ID:Cf9Ea7DY0
待ってます

103以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/11(水) 01:54:49 ID:xP7cMZao0
おつ
この作品のジョルジュ好きだ
おっぱい言わないけど

104以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 00:57:47 ID:BxExUQ.Y0
回線が……
取り敢えず投下します、がいつまでもつやら

105以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 01:13:48 ID:BxExUQ.Y0
……


泥の大河を越えて対岸に渡り付いたミセリは、肩で息をする

泥上を走っている間は、まるで生きた心地がしなかった。
何しろ、一歩でも踏み外すと、即座に底無しの泥沼だったのだから。

なんとか呼吸を整えたミセリの目の前にキュートが降り立ち、その顔を覗き込む。


<_プー゚)フ ナイスラン 感動したよ

ミセ*;-ー)リ「あー……ありがと」


振り返ると、遠く泥沼の向こう、三つの人影と一つの竜影が見える。
呼吸を整えたミセリは、進む先、樹海の奥の"黒"に目を戻した。


ミセ*;゚ー゚)リ「あの"黒"の真中、だよね」

<_プー゚)フ そ 道案内は要らないみたいッスね

ミセ*;゚ー゚)リ「ん、ありがと」


安心した、そう言い残し、キュートは道を譲る。
彼女の透き通った白い半透明の手がその色を薄めている事に、ミセリは気付いた。

10680/140:2013/09/14(土) 01:15:05 ID:BxExUQ.Y0
ミセ*゚ー゚)リ「え」
<_プー゚)  ええとですね ジブン 見ての通り大した無理ができない体でして


親和を起動するなんて、そうそう出来ないんですよ。
既に半ばまで消えかけた身体で、キュートは笑った。


_プー   暫く"下"で休んでるから あとはお願いね

ミセ*;゚ー゚)リ「お、おう! またな!」

 _フー    あーい


気の抜けた声を残し、少女の幽霊は姿を消してゆく。

彼女が闇に溶けきった後は、暗い夜色の森で、ミセリは独りだった。
風も、光も、空も、暗き湿林には無い。

ビロード、ぽっぽ。ハイン。ジョルジュ。
ブーンやドクオ、ダイオード、フォックス。ツン、なち。そして、キュート。

肩を並べて戦った誰も、ミセリの側には居ない。

10780/140:2013/09/14(土) 01:15:45 ID:BxExUQ.Y0
ミセ*;-ー)リ


心臓が急激に高鳴る。
汗が噴き出て止まない。
ミセリは、己の心を締め付ける"それ"の正体に思い当たった。

これは、"恐怖"だ。

そして、それが"恐怖"だと分かった時、ミセリは躊躇わず、樹海の奥に駆け出していた。
今、一人で戦っているのは。今、一人で"恐怖"に挑んでいるのは、自分じゃない。


ミセ*;゚ー゚)リ「……根性ッ!」


友の元へ、仇の元へ。
……ミセリがその凄惨な死闘の場に辿りつくまで、そう時間は掛らなかった。

死闘の場。より正しくは――

10880/140:2013/09/14(土) 01:16:31 ID:BxExUQ.Y0
ミセ*゚−)リ「シャーミン、松中……」

,(,,・)・)",「あん? またお客様だすナリか?」


ミセリは"黒"の中心に辿りついた。

斜めに傾いだ首の上の鍔広の帽子を猟銃に掛けた親指で押し上げ、血塗れの男が振り返る。
地面には三つの死体。いずれも内側から引き裂かれたように、無残に腐った傷口を大きく晒している
そして、唯一その場に立つ男、彼がくるくると指し向ける猟銃の先に。



lw´ _ ノv


――そう、より正しくは、凄惨な死闘が終わった痕に辿りつくまでに、だ。

頭部を布袋で包まれ、大樹に十字磔された呪式士を、ミセリは茫然と見上げた。
ローブを赤黒く染めたその姿はまるで、標本に縫いとめられた黒い蝶のようで。


ミセ*;゚д)リ


左胸の黒い痣が熱く鼓動を打った。
喉の奥で潰れた声が悲鳴を上げる。

10980/140:2013/09/14(土) 01:17:51 ID:BxExUQ.Y0
ミセ*;゚д゚)リ「――な、」

,(,,・) ),  y[≡]======== 「すまないだす、今ちょっと盛り上がってるなり。要件は後で聞くなりだす」
 ,∀ /ミシ            「それともてめーもオレに混じるか、え?」


言いながら、シャーミンは猟銃の引き金を引いた。

止める暇すら無かった。
火薬が爆ぜる不快な音と臭い。銃弾は真っ直ぐに飛び、張り付けられた蝶の左腕を撃ち抜く。

真っ赤な血が流れ、黒いローブを斑に染める。


lw;´ _ ノv「――ッ!」
ミセ*;゚д)リ「や、やめろ、撃つな! そのヒトを撃つな!」


そのヒト。
自分の口を突いた言葉に、ミセリは自分で驚いた。

素直シュール、シューさん、シュー姐さん。
頭の中に有る言葉が、堰止められたように、胸で止まって固まった。

激しい痛みに、磔にされたシューは声も無く震える。
シャーミンは混乱するミセリに目を戻すと、口の端を持ち上げて見せた。

11080/140:2013/09/14(土) 01:18:44 ID:BxExUQ.Y0
,(,,・) ・),  y[≡]======== 「……まぁ、お客人が言うなら考えてもいいだすが……」
 ,∀   /ミシ           「どの道"赤"を使えない俺じゃ大した威力は出ねーしなあ」


銃。旧世界の遺した兵装技術。

その希少さを裏付けるのは、その生産に必要な技術の『高度』さ。
その希少さを裏付けるのは、その使用に必要な火薬の『貴重』さ。

ラウンジに優れるこの"高貴"なる兵装が、長く続くヨツマとの"度重"なる抗争の目的であり、手段だった。

ミセリは長剣を握り、親和を起動した。

銃は"赤"の精霊の加護があって初めてその威力を発揮する。
もし相手にクーやなち程の親和があれば、シューを跡形も無く消すこともできたはずだ。

――警戒が僅かでもこちらに逸れた隙に、踏みこんで銃身を切り飛ばす。


ミセ*゚−゚)リ「それ以上そのヒトを狙うなら、容赦なく叩き斬る……!」

11180/140:2013/09/14(土) 01:20:08 ID:BxExUQ.Y0
,(;,,-)-),「それは怖いナリだすね、ちょっと考えさせてほしいだす」
 ,∀ 「それじゃあ、ここで俺が銃を捨てれば見逃してくれるか?」


銃口を動かさないまま、シャーミンは目をあちこちに這わせる。。

視覚、それに、聴覚も奪われているのだろう、痛々しい姿のシューは、
二人の会話に何の反応も示さず、ただその身を強張らせていた。

……ミセリは怒りを必死で呑み込み、彼の申し出に、躊躇いながらも頷く。

シャーミンはそれを確認し、ゆっくりと磔の蝶に目を向けた。


,(,,・) ・),「……じゃあ、考えた結果だすが」


そして、ミセリの甘さを嘲うように、彼は笑った。


 ,∀「やだプー」


不格好な長槍は、その円筒形の穂先を呪式士を向けたまま、短く火を噴いた。
磔の蝶の、その左足に深紅の華が咲く。

11280/140:2013/09/14(土) 01:21:01 ID:BxExUQ.Y0
lw;´ _ ノv「ッ!」

ミセ#゚д゚)リ「お……お前、お前は――!」

,(・)(・),「あひゃ、怒った? 怒っちゃったなりだすか!?」
 ,∀  「はははあははあはあッ! おら掛って来いよチビガキ!」


シャーミンは弾切れの銃を投げ捨て、腰のナイフを抜いた。
一直線に飛び掛かったミセリがその長剣を振り下ろすと同時に、彼の腐りかけた足が動く。

長剣は空を切り、地面を断ち割った。


,(・)(・),「ぶぁぁぁか、まともに受けるワケねぇだろ?」


ナイフを抜いた迎撃の姿勢は、それ自体が罠。
失策だった、頭が理解すると同時に、素早く体制を立て直しつつ敵影を目で追う。

よろよろと凭れ掛かるように、彼が行き付いた先は。


ミセ*;゚−゚)リ「!」

,(・)(・),「動くなよ。人質ゲェムの再開ナリだす」
lw;´ _ ノv「ッ……ッ……!」

11380/140:2013/09/14(土) 01:22:01 ID:BxExUQ.Y0
ミセ*;゚−)リ「んの卑怯者ッ……離れろ!」

,(・)(・),「卑怯って、別に正々堂々戦うなんて言った覚えはないだすが……」
 ,∀  「離れるのはてめーだ。まぁ、この女を見殺しに出来るなら近寄って来ても良いが」


ナイフの先端を首筋に押しつけられ、その冷たい感触にシューは身体をビクッと震わせる。

視力も声も、恐らく聴覚も奪われたシューには、その肌に触れる恐怖だけが感覚の全てだ。
彼女の胸元の増幅器は光を発しておらず、抵抗する力も、その意思も無い事を示していた。


,(・)(・),「ほら、下がるだす。おいどんは先端恐怖症だから、長剣とか怖くて仕方ないナリよ」
 ,∀  「でないと、この女がどうなっちゃうかも分からないなぁー……!」

ミセ*;゚−)リ「……私が下がったら、お前もナイフを下げて、そのヒトから離れろよ」

,(,,~),~),「あ〜あ、良いだす。あい分かった、約束するだす」
 ,∀  「"魔導師"シャーミン松中の名に誓って、そうする」


ミセリは、一歩、また一歩、静かに下がった。
酷薄さ、狡猾さ、不快さ、どれをとっても、目の前の魔導師を上回る者など見たことがなかった。

11480/140:2013/09/14(土) 01:23:36 ID:BxExUQ.Y0
ミセ*;゚−)リ「……これで、満足? だったらナイフを下げて」

,(・)(・),「よぉーし良い子だ、きっと長生きするだすね。もう五年もしたら食い頃の良い女なりよ」
 ,∀  「ちょうどこのアマみてーにな」
lw;´ _ ノv「!」


ナイフを下す、どころでは無い。
シャーミンはむしろ、刃先のフック部分をシューの顎に押し当て、のけ反らせた。

自由な方の手が、シューの形の良い胸を鷲掴みに掴み、乱暴に揉みしだく。
驚きと恐怖に強張る彼女の身体を、シャーミンは楽しむように弄り続けた。

長剣を握る手が、抑えきれぬ怒りに震えた。


ミセ#゚−)リ「ふざけるなよ、"誓い"とやらはどこに消えた!?」

11580/140:2013/09/14(土) 01:24:26 ID:BxExUQ.Y0
,(・)(・),「まぁ、落ち着くなり。おいどんが満足したら、すぐにその"誓い"とやらに従うだす」
 ,∀  「指くわえて見てろよ。参加したくなったら何時でも言ってきな、ケヒヒ」

ミセ#゚д)リ「今すぐだ! 今すぐその汚い手をどけろ! それ以上そのヒトに触れるな!」


ミセリの怒号に、シャーミンは肩をすくめた。
奇妙に捻じれた首を縦に戻しながら、下卑た笑いをその顔に張り付かせる。

その目はミセリを通り越し、樹々の合間に投げかけられていた。


,(・(・,,),「……お嬢ちゃん、この森が『呪い』に沈んだ経緯は知ってるだすか?」

ミセ#゚−)リ「……?」

11680/140:2013/09/14(土) 01:25:08 ID:BxExUQ.Y0
,(・)(・), 「『呪い』って、何だと思うだす? 草木が病に歪んで、瘴気が満ちて、死霊が這いまわる――」
 ,∀  「――俺達みたいな半端な死体どもにとっての楽園は、いったいナニから作られると思う?」
lw;´ _ ノv「ッ! ……ッ!」

ミセ#゚−゚)リ「何が言いたいの?」


シューの身体を這う手はやがて、彼女の服の首元を引き下げ、その奥へと侵入しはじめる。

一歩、ミセリはシャーミンに詰め寄る。
たった一歩、それ以上はならなかった。
シューの首元のナイフが己の存在を誇示するように煌めき、ミセリは奥歯を噛み締めて歩みを止める。


,(・)(・),「……おいどんの研究は、不死の追及だす。生命を精霊に置き換えて、魂を取り出す実験」
 ,∀  「ラウンジの先代、バジリオの元、俺は日夜を費やし研究を重ねた。成果はすぐに上がった」

ミセ#゚−゚)リ「だから何? 悪いけど、自慢話なら木にでも向かってやってくれない?」

,(・)(・),「まぁ聞くだす。研究の過程でおいどんが生み出した副産物は幾つもあるだすなり」
 ,∀  「『魂転移』を初め、『屍兵』、『人造森人』、『魂魄喰らい』、そして……『呪砲』!」

11780/140:2013/09/14(土) 01:27:01 ID:BxExUQ.Y0
ミセ#゚−゚)リ「『呪砲』……?」

,( 。 )( 。 ),「そう、『呪砲』! 精霊と生命の融合を強制的に起こす、至高の大砲ナリ!」
     「たった数人の火種で、ヨツマの精鋭部隊数千をこの呪いの森に沈めた、決戦兵器ナリだす!」


狂ったように高らかに叫ぶシャーミンに、ミセリは思わず息を飲んだ。
焦点の合わない虚ろな両目は樹海を彷徨い、その声はまるで獣じみた咆哮。

口角に真っ赤な血の泡を飛ばしながら、興奮した魔人は叫び続ける。


ミセ*;゚−゚)リ「……"数人の"火種? 数千の精鋭を、呪いに沈めた?」

,( ゚)(。),「あひゃは、知らなかった? 知らなかっただすか! んじゃあ教えてやるだす!」
 ,∀   「――数十年前、ラウンジとヨツマの大戦はほぼ決着していた。忌々しい、ヨツマの勝利にな」

ミセ*;゚−゚)リ「……?」

 ,∀「クソ天使サマとやらの加護を受けたヨツマの騎士に、ラウンジの兵団は手も足も出なかったのさ。
   ダットの支流に掛けられた要塞群は悉く突破され、ここ朱琴平原に至った。その数、実に数千!
   ラウンジを滅ぼすに足るその数千の兵団を、一瞬で滅ぼし返したのが俺様の『呪砲』さ!

11880/140:2013/09/14(土) 01:30:11 ID:BxExUQ.Y0
,(・)(・),「『呪砲』の仕組みは至って単純だす。『呪』の毒を着弾点に撒き散らし、感染させる」


ミセ*;゚−゚)リ


実に、単純だろう。
それじゃあ――その『呪毒』を浴びた人間は、どうなると思う?

シャーミンは、ナイフの先端のフック部分をシューの服に掛け、一気に引き裂いた。


ミセ*;゚д゚)リ「――」
lw;´ _ ノv

,(。,,)" ゚),
 ,∀  「"こう"なってゆくのさ!」


冷たい外気に地肌を晒され、シューは身体を震わせる。
大きく晒された豊かな白磁の胸、その肌の一部が、どろどろに溶けた昆虫のように変色していた。

11980/140:2013/09/14(土) 01:31:40 ID:BxExUQ.Y0
,(^)・・(^),「あひゃはひゃはひゃは! 如何なりだすか、おいどんの芸術は!?」
  ,∀   「最ッ高の見世物だろう! 病み付きになるねぇ!」

ミセ* д)リ「……なんで、こんな……」

,(,,・)・),「あー、っとぉ……勘違いしないで欲しいナリだすが、これはおいどんが生きる為でもあるだす」


魔人はゆっくりとナイフを動かし、シューのスカートを引き裂いてゆく。

扇情的な即席のスリット、その下には闇に映える雪色の肌。
ほっそりとした左の太股の真中に、真っ赤な銃痕が血を吐き出している。

残忍な笑みを浮かべたシャーミンは、傷口に指を這わせ、優しく撫でた。

シューが声もなく悲鳴を上げる。
痛々しい傷の周りの白い肌は、魔導師の指が触れた所から、『呪』に侵された部分と同じく腐っていった。


ミセ*;゚−゚)リ「! やめろ!」

12080/140:2013/09/14(土) 01:33:59 ID:BxExUQ.Y0
,(,,-)-),「っあぁぁあ、この絶望に浸された女の肌……癒されるなりだす」
 ,∀ 「こうして心痛む拷問を続けるのも、要はこの女を『呪』に変えるのが目的なのよ」

ミセ*;゚−゚)リ「……その手を、どけろ」

 ,∀ 「この"布晒"ってのは、目と耳鼻を封じて触覚を増大させる拷問法なんだが……。
   この女は随分と"黒"が強いらしい。かなり抵抗していやがる」


"黒"が強いって事は、それだけ強い『呪』に化ける可能性があるって事だ。
数百年に一人いるかどうかの逸材を、みすみす捨てる手は無い。
口の端を吊り上げるシャーミンに、ミセリは姿勢を低く構えた。


ミセ* −)リ「そう。それが分かれば、充分だよ」

,(・)(・),「……? 何をする気だすか? こっちには人質が居るなりだす」
 ∀"; 「おい、それ以上動いたらこの女を――」

ミセ*゚−)リ「これ以上動いたら、何をするって?」


シャーミンの脅しに構わず、ミセリは平然と歩み寄った。

――縞。
魔人の淀んだ視神経の奥で、ミセリの影は薄く焼けつく。
一瞬の後には彼の腕は樹海の闇に解けるように消滅し、ナイフが地面に落ちた。

12180/140:2013/09/14(土) 01:35:59 ID:BxExUQ.Y0
,(;・)(),「んぐぉあがッ、い、あ」

ミセ*゚−)リ「間抜け。簡単に殺すつもりが無いなら、人質にはならないじゃん」


地面を転げ回る魔導師を横目に、ミセリはシューの顔を覆う布を引き裂いた。
彼女の知覚を妨げる"黒"の精霊が、敗れた布の隙間から漏れ出る。

その顔にはまるで精気が無かったが、しっかりと呼吸している。
ミセリは安堵の息を吐いた。


lw;/_ -ノv「……うッ……?」

ミセ*゚−)リ「大丈夫、今この杭も――ッ!」
 ∀,「勝手な事してるんじゃねーよ、クソ」


気の杭に手を掛けたミセリの喉元に、透明な何かが巻き付いた。
不可思議な攻撃に驚く間もなく、一気に締め付けられる。

12280/140:2013/09/14(土) 01:37:05 ID:BxExUQ.Y0
ミセ*; д)リ、「か、は……何が……?」

,(;;〜) ;~)。「痛いなり、痛いなりだすぁぁ……!」


"何か"に触れようとしても感触が無く、それでもギリギリと首は締まってゆく。
足元のシャーミンは左手を押さえて蹲り、小さく呻いている。

ミセリは"緑"の精霊を込めた足を、背中を丸めた振りあげた。


ミセ*; д)リ、「なにを、したッ!?」
,(#) )。)「ギャあっ?!」


蹴り飛ばされたシャーミンは、血を噴きだしながらゴロゴロと転がる。
それでも、喉に纏わりついた不可視の感触はますます強まるばかりだった

空気が足りず、頭がぼーっとする。ミセリはその場に膝をついた。


ミセ*; д)リ「……ぁ……」

lw;´ _ -ノv「ッ、親和…… "黒"を通して見ろ……!」

12380/140:2013/09/14(土) 01:37:58 ID:BxExUQ.Y0
ミセ*; д)リ「!」

絞り出すようなシューの声に反応して、ミセリは"黒"の親和を起動した。
精霊に応じ、瞳の輝きが黒に染まる。

その目に映ったのは、半ばで千切れた不透明な左腕だった。
べったりとした血糊も爛れた皮膚も、斬り落としたシャーミンの腕と同じだ。

ただ、実体だけが無かった。


ミセ*; д)リ「な、に、これ……!」

lw;/ _ ノv「精霊を集めて……そしたら、触れる……ッ!」

ミセ*;-д)リ「〜〜!」


冷たく、ぶよぶよした腕。
渾身の力を、精霊を込めた右手で、ミセリはその腕を振り払った。


ミセ*;゚д゚)リ「っは、アブな……今、助けるから……」
lw;´ _ ノv「ダメだ! それより早く、逃げ――!」

  ∀' 「――逃がさねぇよ」

12480/140:2013/09/14(土) 01:38:45 ID:BxExUQ.Y0
ミセ*;゚−゚)リ「!」
,(。,,(゚”),「うびゃあああああッ!?」


シャーミンの身体が、ばね仕掛けのように跳ねあがる。

避けられない。すぐ後ろには、磔のままのシューが居る。
ミセリは長剣を斜めに振るい、襲いかかる影を斬り下ろす。

肉と骨が斬れる、鈍く不快な手応え。
身体の半ばまで長剣をめり込ませたまま、シャーミンは尚もミセリに、身体をぶつけた。


ミセ*;゚д゚)リ「え、ちょ……ッ!」

,(。,,(゚”),「あびょみょびょっびょみょッ」
“∀” 「死ね」

ミセ*; д)リ"「ッ!」


ミセリは咄嗟に、左腕を咄嗟に身体の間に挟んだ。
痛覚を通していない腕に、深い違和感。

12580/140:2013/09/14(土) 01:40:32 ID:BxExUQ.Y0
ミセ*;゚−)リ「ぐ……離れろ!」

,( ,,( ”),「びゃぶるら!」


緑の親和を駆使し、鼻面を蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされたシャーミンは、どす黒い血を撒き散らしながら数歩下がった。

ミセリは彼の異様な風体に、吐き気を抑えられなかった。
首は完全に圧し折れて引っくり返り、片腕を失い、それでもなお平然とナイフを持ち上げてみせる。

その姿は、まさに亡者の王と呼ぶに相応しい。


  A,  「……あー……準備、完了だ」
'( ゚)(。)'「く、首ぃ!? おいどんの首がぁあ!?」

ミセ*゚−)リ「……準備?」


腕に突き立てられたナイフを引き抜こうとしたミセリは、自らの身体の異常に気付いた。
痛覚を遮断した型の先、その下腕は、数百もの蟲が溶け合ったように――

ミセ*;゚д゚)リ「! これは……!」

  A,  「ひゃははっはあはあああはッ! 勇敢なお嬢ちゃんにも『呪』のプレゼントってなぁ」
'(;;;゚)(。;;;)' 「痛い、痛い痛い、痛いよぉぉおぉ!?」

12680/140:2013/09/14(土) 01:41:51 ID:BxExUQ.Y0
ミセ*;゚−゚)リ「……くっ……!」


禍々しい紫の腐敗にどっぷりと侵された左腕から、強引にナイフを引き抜く。


左腕の傷口を中心に、『呪』はじくじくと広がっている。
親和をもってしても、その進行を止める事はままならない。

シャーミンは首を無理やり回転させて元に戻し、焦るミセリを嘲うように奇妙に捩れた声で笑った。


,(・)(・), 「ヒィーッ……残念なりだすが、それはもう治らないだす」
  ∀'  「『呪』が"心"に達したら、おめーもおしまいだよ」

ミセ*;゚−)リ「……そうなる前に、お前を倒すだけだ」


意識を剣に、視線を敵に。
額に汗を浮かべたミセリに、魔人は鼻で息を噴いた。

127100/140:2013/09/14(土) 01:44:57 ID:BxExUQ.Y0
,(・)(・), 「おいどんを斬ったとしても、その『呪』は二度と消えないぞ?」

ミセ*;゚−)リ"「!」

  ∀'  「事実だ。残念ながら、完全な解『呪』の方法は見つかってねえ」


呪式士の身体は既に半ばまでを黒い斑渕に浸され、呼吸は荒く掠れている。

誰の目にも、彼女に一刻の猶予すらない事は確実だった。
そして、もうしばらく放っておけば、間違いなくミセリ自身も同じ道を辿る。

口角を狡猾な笑みに釣り上げ、シャーミンは恍惚の表情で捩れた両手を広げた。


,(・)(・),「ま、そんなに嫌なら――ひとつ取引の提案があるナリだすが?」

ミセ*;゚−゚)リ「……断る、決まっているだろう!」


鋭く踏み込み、長剣を袈裟に振り下ろす。
シャーミンは、その一閃の前に身動き一つ取らなかった。

128100/140:2013/09/14(土) 01:45:59 ID:BxExUQ.Y0
――めり。

肩口から入った剣は、心臓の有るべき場所を引き裂き、崩れた背骨を抜けて身体を両断する。
シャーミンはそれすら想定内と言うように、己の腰を右手で掴み、バランスを取った。

真っ二つの身体を一つに保つ彼の姿はまるで、奇妙に捻じくれた腐肉の接ぎ樹。
吐き気のするような歪んだ芸術に、ミセリは無我夢中で剣を振り下ろす。

血飛沫は、上がらない。
解体される調理場の生肉のように、シャーミンの身体は細切れになってゆく

右腕を、両太股を、腰を、首を。
斬り刻まれたシャーミンはべちゃべちゃと崩れ落ち、潰れて飛び出した目玉が虚ろにミセリを見上げる。


,(−)(−),「そりゃあ断りたいナリだすね。だとしてするからに、お前が生き残る道が他にあるなりか?」
  ∀'  「死にたくなきゃ従え。いいか、俺は別に、おめーの生死には興味なんてねーんだ」

ミセ*; −)リ「……」


沈黙を承服とでも捉えたのだろう。
シャーミンは折れ曲がった右腕で首を支えたまま、不敵な顔で続ける。

129100/140:2013/09/14(土) 01:47:18 ID:BxExUQ.Y0
,(・)(・),「『呪』の強さは、種にした人間の"黒"の親和と、抱える絶望の深さで決まるだす」
  ∀'  「この呪式士の親和は逸材だ。生前の俺にも匹敵する。あとは絶望を深めるだけだ」


だから、
地面に転がった魔導師の顔がその先を言う前に、ミセリはそれの頭を思い切り蹴り飛ばした。
歪にひしゃげたボールは勢いよく飛び、遠くの樹に激突して汚らしく爆ぜる。

彼が何を要求しようとしているか、はっきりと分かった。

背後で別の猟師の死体がうぞうぞと蠢き、身を起こす。
何事も無かったかのように失った肉体を'挿げ替え'る魔導師に、ミセリは怒りのままに剣を向け直した。


ミセ#゚−)リ「ふざけるな、そんな取引……!」

,*(‐)(‐),「っあ゙ぁぁー、この蘇る瞬間が心地よいナリだす……」
  ∀'  「良いから、まずは話だけでも聞けよ」


絶望とは、希望が無いという事ではない。
絶望とは、希望が絶たれるという事だ。

嘲るような魔人の言葉に、剣を持つ手が震えた。


  ∀' 「おめーの持ってるその剣で、希望とやらを絶て。その女をナマス斬りにしろ」

130100/140:2013/09/14(土) 01:49:12 ID:BxExUQ.Y0
感情のままに、ミセリはシャーミンに斬りかかった。
誰かを殺したいと心から思ったのは、十六年の人生の中で、初めてだった。

鋭い剣閃は、今度は相手を斬り裂かなかった。

シャーミンの身体は見えない糸に操られるように飛び退き、ミセリの間合いから一気に離れる。
精霊を纏わりつかせた屍は、新しい身体を確認するかのようにごきごきと骨を鳴らす。


,(〜)(〜),「おぉおぉ怖い怖い、斬られるのは結構痛いなりだすよ」
  ∀'  「それならそれで良いがな。代わりにおめーの公開処刑レイプでショーに華を添えるだけだ」

ミセ#゚−゚)リ「……もういい、消す」

,(・)(・),「はは、どうでもいいだすが、あんまり熱くならないほうが良いと思うだすよ?」

ミセ#゚−゚)リ「何を――!」


腕に走った違和感に、言い掛けた言葉を飲み込む。
シャーミンが指したミセリの左腕で、『呪』は、もう肘に達していた。

進行が速まっている。ミセリは眉根を寄せた。


,(・)(・),「不思議そうだすね。……さっきも触れたけど、『呪』化の進行は絶望が深いほどイイだす」
  ∀'  「ということは、だ。メスガキ、おめー、本当はもう心のどっかで諦めてるんじゃねぇのか?」

131100/140:2013/09/14(土) 01:49:56 ID:BxExUQ.Y0
ミセ*;゚−)リ「何を……」

,(・)(・),「そりゃあ当然ナリだす。いくら斬っても死なない相手に、自分は不治の毒」
  ∀'  「たった今見かけただけの女ひとりの為に、お前が身を投げ出す事は無いと思うぞ?」

lw;´- _ ノv「……奴の言う通りだ、'名も知らぬ'剣士のお嬢さん」

ミセ*゚−)リ「!」


シューの掠れた言葉に、身体が強張る。
半ばまでを『呪』に侵し尽くされたまま、絞り出すように彼女は続けた。


lw;´- _ ノv「私はどの道、助からない。キミだけでも、生きるんだ」

ミセ* −)リ「……」

,(・)(・),「ほぉ、美しい自己犠牲なりだすね。泣っかせるぅー!」

lw;´- _ ノv「約束は……守れよ」

,(・)(・),「分かってるナリ。おいどんは契約を決して破らないだす」
  ∀'  「どうでも良いからサッサとやれよ。ほら」

ミセ* −)リ「……分かったよ」

132100/140:2013/09/14(土) 01:53:20 ID:BxExUQ.Y0
長剣、その切先は磔のシューへ。

――一閃。


ミセ*゚−)リ


斬り裂いたのは、シューの腕の。杭に縫いつけられたローブの、その両袖。
解放されたシューは立ち上がる力も無く、その場に崩れ落ちる。


ミセ#゚−)リ「ようやく分かったよ、呪式士。あなたの狙いが……!」

lw;´- _ ノv「何を言って……」
ミセ#゚−)リ「うるさい! 人の記憶を簡単に弄んで……!」

,(〜)(〜),「あ〜、期待通りなりだすね〜。都合が良い。纏めて『呪』にしてやるだす」
  ∀'  「……記憶? 何を言っているんだ、おめーら?」


"黒"の親和を通したミセリの目に、数本の、不可視の'影'が映る。
ボロボロの左腕を酷使し、ミセリはシューを抱えて飛び退いた。

シャーミンの足元から伸びたその'影'は二人を追うように自在に形を変え、迫る。

133100/140:2013/09/14(土) 01:54:24 ID:BxExUQ.Y0
ミセ*;゚−)リ「っと、これは何?」
lw;´- _ ノv「"黒"の、精霊……! 捕まるな、『呪』に……引き込まれる!」


幸いにも、'影'の動きはそう速くない。
シューを背中に庇いつつ、ミセリはその触手の先端に剣を振るった。

精霊を纏った剣は不透明に濁った影を斬り裂き、斬られた先は樹海の空気に消えてゆく。
一本一本の動きは遅く、さしたる脅威ではないものの、その数は次第に増していて、厄介きわまりない。

ミセリは再び一度シューを担ぎ、さらに後方へと引き下がった。


ミセ*゚−)リ「……それで、あいつは何をしたら倒せるの」

lw;´- _ ノv「……術式核、身体の中心あたりに有る。
      それと、感情的になるな。奴は、キミの憎悪をそのまま『呪』に変える」

ミセ*゚−)リ「……了解。あとは私がやるから、また人質にならないように気を付けてろ」


影はどうやら、そう遠くまで伸ばせないらしい。
どす黒い渦を挟んで、剣士と魔人が向かいあう。

静寂が樹海に落ちる。
ミセリは静かに親和を起動した。

その瞳は"緑"、春に芽吹く若草の色。

134100/140:2013/09/14(土) 01:55:30 ID:BxExUQ.Y0
ミセ* −)))リ「――」


"黒"に費やしていた容量を、全て"緑"へ。
ミセリの視界から、蠢く'影'が姿を消す。

緑に染まった瞳でシャーミンを見据え、ミセリは真っ直ぐに歩み寄る。

獲物を狙う豹のように、静かにしなやかに。
それは例えるなら、矢風吹き荒ぶ戦場で目を瞑って歩くに等しい行為。

狩られるべきシャーミンは、驚きつつも、己の手に不可視の'影'を集めた。


,(・)(・),「おいおい、自殺でもするナリだすか?」


'影'が為すは、触れた生者を『呪』と変える死の槍。
眼前に迫るそれは、"黒"を切ったミセリの目には映らない。

――殺った。
魔人が確信したその瞬間、剣士はその身を真横に振った。
シャーミンが突き出した'影'はそのすぐ脇を走り抜ける。


ミセ* −)リ ヒュ…

135100/140:2013/09/14(土) 01:56:07 ID:BxExUQ.Y0
lw;´ _ ノv「!」
,(・)(・),「うん……!?」


最小の、最短の。洗練された獣の動き。
虚を突かれたシャーミンは、唖然とする。

咄嗟に引き戻した'影'の触手を、精霊を纏った長剣が両断した。

引き裂かれた'影'は"黒"の精霊に帰し、樹海に四散してゆく。


,(・(・;;),「んぐおッ……!」


核を、守らなければ。意思が形を為し、『呪』の鎧を纏う。
魔人の胴体から噴出した新たな'影'を、剣士は深追いせずに避けた。

"黒"の精霊は樹海に満ちた『呪』からほぼ無尽蔵に得られるとはいえ、
再生の暇も無く攻め立てられては、流石に分が悪い。

焦るシャーミンに、再び長剣が迫る。

136100/140:2013/09/14(土) 01:57:24 ID:BxExUQ.Y0
,(・(・;;),「勘……だと、野獣め……!」

ミセ*゚−゚)リ「失礼な、レディーに対して――」


振り据える触手を、ミセリはやはり紙一重で避ける。
その身体を突き動かすものは、それこそ、勘としか表現しえない。

霧を風が引き裂くように、闇を光が引き裂くように。

本領に帰したミセリの猛攻に、シャーミンは押されてゆく。

そして。


,( )( ),「ンぎばッ!?」

ミセ*゚−゚)リ「――滅多な事を言わないでよね」


'影'を繰る両腕を、今度はその軸であった"黒"の精霊もろとも、鋭い剣閃が断ち落とした。

137100/140:2013/09/14(土) 01:58:26 ID:BxExUQ.Y0
シャーミン松中という魔人の存在は、実のところ、その『核』のみにすべての機能を預けている。

『核』は、高度で狂気的な術式印。
流し込まれた"黒"の精霊を呼び風に、かつて滅びた彼という存在を再構築する術式。

ゆえに、彼の根源は"黒"の精霊であり、ゆえに彼は"黒"の精霊そのものである。

『核』に与えられた術式は精霊をして『呪』を為さしめ、彼の親和は『呪』をして精霊を為す。
触れた者を『呪』と変える『呪』の性質ゆえに、自身を『呪』に構築する彼は、核と贄ある限りは不死である。

オサムの遺書に記された"魔導師"シャーミン松中の、これがその正体だった。

……そして、その性質ゆえ、こうして精霊もろとも核から斬り落とされた肉体は、再生にやや時間がかかる。


,( ;;)( ;;),「あが、おいどんの、腕……」
  ∀'  「こんな、クソがぁッ!」


失った腕を取り戻すまでの隙は、この局面において致命的だ。
返す刃は胴を深く引き裂き、裂かれた腹からは行き場を失った"黒"の精霊が溢れだす。

剥き出しになった精霊回路――核は、小さな色ガラスの玉だった。


ミセ* −)リ「――!」


剣に僅かな迷いが生じた。
その一瞬に、傷口から漏れ出た精霊は『呪』の'影'を為し、ミセリは慌てて距離を取る。

138100/140:2013/09/14(土) 01:59:12 ID:BxExUQ.Y0
,( ;;)( ;;),「貴様、如きニ……」

ミセ*゚−)リ「……」


シャーミンの肉体は、溢れだす精霊に押されるようにして、グズグズに溶けてゆく。

……彼は『核』。彼は『呪』。彼は『精霊』。
それゆえに、彼がやがてこうなってゆくのは必然だった。

精霊が、呪が、渦巻くようにその核を覆い、膨れ上がる。

繋ぎとめるべき身体を捨て、膨れ上がった黒い靄。それが彼の――

;;::;;:;    ヾツ/
;:;       lミ;;|
,   ,(:::::::;;;;)(::::::::;;;;), 
:・:'``:``…―,、..,,.,;´.~/;;;(  「――俺の、真の姿を見せる事になるとはなァァアアァ……」
:::。::‘`l;;:::::;;;;;;;;;・`/;;;;;;;;;;;
・.;:::::;;;;::`-、:::;;;;;メ.,;;;;;;;;;;_,,、
, `;;・.,;::::::::::`'\=~;;;;;;;;;;;ヾツ/
w     |シp}  ,   ミツ/
V     ミン/     ノツ/
::::::::::::::::: \ ::::::::::::::::::::

139100/140:2013/09/14(土) 02:00:59 ID:BxExUQ.Y0
産声を上げる異形に、ミセリは身体の芯を震わせる寒気を感じた。

その新たな身体を為すのは、もはや親和無しでもはっきりと視認できる程の、濃密な『呪』。
全身から瘴気を噴きだしながら、数十もの捩れ青褪めた手足を突き出し、それは巨体を持ち上げた。


,(:::::゚:;;;;)(::::::゚:;;;;), 「ふしゅううううううう……」

ミセ*;゚−)リ「……何それ、流石に聞いてないッスけど」


高さだけで自身の二倍を容易く超える、凶悪な芋虫。
その身体に粗雑に開けられた幾十の瞳が、やたら滅法に突き出された白い手足が、一斉にミセリを見る。


,(:;:::゚:>;;;)(:::・::゚。:;;;),「そりゃアそうだす。この姿を見て生き残った奴なんぞ居ないだすからね」

ミセ*;゚−)リ「ッ!」

,(:;:。:=;;)(l・::。;:;;;),「人間の、生物の脆い身体を捨てたおいどんに、敵うものなどはどこにも居ないィ!」


身体をくねらせ、奇妙な芋虫はミセリへと突進した。

140100/140:2013/09/14(土) 02:03:29 ID:BxExUQ.Y0
外見に惑わされるな、努めて冷静に剣を振るえ。
ミセリは己を奮い立たせた。

鈍重な巨体、その動きは、それが人型を取っていた時と比べても決して速くはない。
巨大な『呪』の突撃を、ミセリは余裕を持って避ける。

しかし、その余裕を埋めるように、巨体の中心近くから、一際長く青白い腕が伸びる。


ミセ*;゚−゚)リ「な――」

,(:::::゚:;;;;)(::::::゚:;;;;),「死ね」


突然の、想定の枠をぶち抜いた不様な奇襲。
咄嗟に剣を盾にしたミセリを、細長い手指が捕え、突き飛ばした。

節くれだったシャーミンの指が、纏めて宙を舞う。ミセリを握り取ろうとして剣に阻まれたものだ。
一方で左腕を痛めていたミセリは、受け身すら取れずに地べたを転がる。

141100/140:2013/09/14(土) 02:04:56 ID:BxExUQ.Y0
ミセ*;-д)リ、「いっつつつ……割かし速くて力も有るのな」

,(:::::゚:;;;;)(::::::゚:;;;;),「あぁあぁ、そりゃあもう、おいどんは復活以来数十年、不敗を保ったナリだすからね」

ミセ*゚−゚)リ「……ほざけ、卑怯者。お前なんて『カロン』の足元にも――」
lw;´- _ ノv「ば、馬鹿、止せ!」


慌てて制止するシューの声は、しかし、既に遅かった。

理由も分からず眉根を寄せるミセリに、シャーミンは身体の正面の、大きく引き裂けた口を歪めた。


,(::::: :;;;;)(:::::: :;;;;),「へぇ、お前もあの雑魚ギルドの仇討ちナリけるだすか」
‘`l;;:::::;;;;;;;;;・`/「ちゃぁんと覚えてるぞ。男の前で俺に犯されてひぃひぃヨがってた女だとかなぁ?」

ミセ#゚−)リ「……ッ!」


意識が一瞬で吹き飛んだ、気がした。
「冷静になれ」、頭の指令を心が跳ね付ける。

"黒"の精霊が身体から噴出するのがわかった。
そして、それが罠だということも。

それでも、心の波を抑えることなど、到底できなかった。

142120/140:2013/09/14(土) 02:07:08 ID:BxExUQ.Y0
lw;´- _ ノv「落ち着け、感情を抑えろ!」

,(:::::。:;;;;)(::::::。:;;;;),「手遅れだすよ」


――シャーミンの持つ、向けられた憎悪を吸収して『呪』に取り込む能力。
気付くとほぼ同時に、左肩に激痛が走る。

左腕の呪毒が、一気に上腕を染め上げ、胸にまで達していた。

体内に直接熱した鉄を流されたような強烈な痛みに、ミセリはその場に膝をつく。


,(:::・:。:゚:;;;)(::^::^:;;;;),「ひゃはは、馬鹿が! 簡単に釣られけるだす! お前はカモなりだす!」

ミセ*; −)リ「あ……」


蹲るミセリの首を、青褪めた腕が掴みあげた。
苦しさ、悔しさ。ミセリの両目に、透明な涙の珠が浮かんだ。

143120/140:2013/09/14(土) 02:08:13 ID:BxExUQ.Y0
,(:::::。:;;;;)(::::::。:;;;;),「んー……その声、顔、良いだすねぇ。生前なら間違いなく射精してたナリだす」


五指の鋭い爪に傷つけられた柔らかい肌から、血の代わりに膿が漏れる。

喉元までもが呪に侵されてしまった。
右手から滑り落ちた剣が、吊り上げられた身体の下で、乾いた音を立てる。

必死に腕を振り解こうとして初めて、ミセリは精霊の加護が自分の身体に残っていないと気付いた。
その瞳には親和を示す"緑"の輝きは無く、本来の薄茶色に戻っている。


ミセ*; −)リ「な……んで……親和が……?」

,(:::::。:;;;;)(::::::。:;;;;),「なんで? 簡単だ、お前さんが弱っちいからナリだす」


指の千切れた青白い腕が振りあげられる。

戦う力は、もう残っていなかった。
目前に迫る死を、ミセリはただ虚ろに見つめた。

144120/140:2013/09/14(土) 02:10:28 ID:BxExUQ.Y0
ミセ*; −)リ"

ミセ*; −)リ「……なんで……あなたが……」

,(:::::。:;;;;)(::::::。:;;;;),「おっと……邪魔を」


振り下ろされた長腕は、剣士に届かずに止まる。

彼女の背中を、ミセリはただ眺めた。
命を刈り取るはずだった死神の鎌を、己の冒険に鐘を鳴らす手を掴み止めたのは。


lw  _ ノv「悪いね。私は健気に待ってたんだよ。お前が"その"姿に戻るのを」


その身の殆どを呪毒に侵された、一人の復讐者。

145120/140:2013/09/14(土) 02:11:17 ID:BxExUQ.Y0
lw;*~/._ ノv「……キミは少し、身体を酷使しすぎたんだ。もう精霊を受け入れる余地が無い。少し休め」

ミセ*; д)リ「その、顔……!」

lw;*~/._ ノv「……ああ。もう、本当に保たないね――『我が名において、命ずる』」
ミセ*; −)リ「ッ!」

『金色に輝く豊穣、此の地に息吹を満たせ』


燭台の炎が揺らめくように、儚く、弱弱しく、そして、仄かに温かく。
ミセリを、シューを、シャーミンを包み込むように、金色の輝きが広がる。

シャーミンは小さく呻き、ミセリを握っていた手をはなした。
崩れ落ちたミセリは、黄金の温かさの中、肩で息をした。


,(:::::。:;;;;)(::::::。:;;;;),「そんなに、先に死にたかったナリだすかぁ?」

lw;*~/._ ノv「死ぬのは、私一人だよ。そして、お前も消滅して、ハッピーエンドだ」

ミセ*; д)リ「何、を……?」

lw;*~/._ ノv「すまない。もう少しだけ、我慢してくれ」

146120/140:2013/09/14(土) 02:12:03 ID:BxExUQ.Y0
地に伏したミセリの左腕に、シューはそっと手を触れた。
呪毒をなぞるように、彼女の遺した"黒"の精霊がその身体を押し包む。


lw;*~/._ ノv「『我が名において』――『命ずる』……ッ!」ゲホッ

,(:::::。:;;;;)(::::::。:;;;;),「何をしている……おい、その詠唱を止めるだす」


シャーミンの歪な腕が、強かにシューを打つ。

ミセリには、何も出来なかった。
無造作に拳を振り下ろすシャーミンに剣を向けることも、身を捨てて盾となるシューを止めることも。

血を吐き、歯を食いしばって詠唱を続けるシューをただ見上げることしか出来なかった。


lw;*~/._ ノv「『八重八十重の、花――』」
,(:::::゚:;;;;)(::::::。:;;;;),「……止めろ。詠唱を止めろと言っているだす! 」


精霊が渦を為し、シューの手に集まる。
止める事は、もはや叶うまい。
シャーミンは忌々しげに彼女を殴りつけた。

目や口、耳鼻から血を流しつつも、彼女は自ら生み出した金色の野に不死の王を振り返る。
ミセリは呪毒に苦しむはずの彼女の、満足気な、勝ち誇ったような顔を見た。

147120/140:2013/09/14(土) 02:12:34 ID:BxExUQ.Y0
"黒"の親和は、魂に触れる忌まわしき力。
心を繰り、情を繰り、果ては命にすらその手を触れる、異端の力。

魔人は、その力を命に触れる術に注ぎ込んだ。
死せる身体を、消えゆく魂を、精霊の"黒"を持って補う、酷薄たる死の取引。
得たものは消し得ぬ呪いに満ちた、病める生命を樹海にもたらす。

呪式士は、その力を心に触れる術に注ぎ込んだ。
内なる記憶を、刻まれた意思を、精霊の"黒"を持って書き換える、強欲な闇の取引。
得たものは――


『八重八十重の花――灰折り重なる空に咲け』


その命は、柔らかく、優しい言葉。
精霊は主の意に従い、彼女の手の中に薄く温かな光を灯す。

その姿は、春の風に眠る幼子の如き。

148120/140:2013/09/14(土) 02:13:52 ID:BxExUQ.Y0
,(:::::。:;;;;)(::::::。:;;;;),「……枝、と、花?」

lw;*~/._ ノv「……ああ。理知的な私らしく、なかなか洒落が利いているだろう?」


この花は、私なんだ。

呪式士の言葉を理解する前に。
鮮やかに柔らかく色付いた、紅色の蕾が花開いた。


,(:::::。:;;;;)(::::::。:;;;;),「え」
ミセ*; −)リ「!」


穏やかな光に、ミセリは身体がスッと楽になるのを感じた。
腕と首に刻まれた呪毒の苦しみが、ゆっくりと引いてゆく。

赤子の柔肌の白、色付けるは血潮の深紅。
己の身体を抜けてゆく呪毒、その行く先を、ミセリは見上げた。


ミセ*; −)リ「……何が……?」


その手に捧げ持った一枝が花開くと共に、呪式士は淀んだ『呪』に黒く染め上げられてゆく。
……そして、八重に咲く花に『呪』を奪い取られているのは、ミセリだけではなかった。

149120/140:2013/09/14(土) 02:15:00 ID:BxExUQ.Y0
シャーミンが断末魔に喘ぐ一方で、『呪』の苦しみから解放されたミセリの身体には、僅かに力が戻っていた。

必死に剣に手を伸ばすミセリを振り返り、シューは穏やかに微笑む。
呪毒に命を侵され、身体を引き裂かれ、それでもその二本の足で立つ彼女は、美しかった。


ミセ*; −)リ「止めろよ……もう、あなたは……」

lw;*;;;~/::._ ノv「……流石に私の呪毒までは消せないのさ。せめて、最期まで出来る事をさせてくれ」

ミセ*; ‐)リ「そんな、そんなの、それじゃ、私――私は、あなたを助けたかったのに――」


彼女はゆっくりと首を振った。

魔人となった魔導師の、シャーミンの身体が、日差しの中の湿り土のようにボロボロと崩れてゆく。
再び剥き出しになった術式核が、削れた芋虫の胴の下で断末魔の悲鳴を上げ、"黒"に明滅していた。

呪式士の枝には次々と新たな蕾が芽吹き、咲き誇ってゆく。

150以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 04:15:58 ID:JZ.kedSU0
きてたー!乙

151以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 04:16:44 ID:rb7556EcO
いいところで……、朝起きてPC直ってたら続きを!

152以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 07:37:24 ID:H2SISWgY0
lw;*;;;~/::._ ノv「……充分だよ。キミは私の……私達の旅を、見届けてくれた」

ミセ* ‐)リ「!」


呪式士の手の中で、かつて生命の輝きを失った魂達が再び淡い薄紅に光り、咲き誇る。
闇に舞う花弁の儚い色は、彼らの、そして彼女自身の旅の、その終着点を飾るように。


,(:::::。:;;;;)(::::::。:;;;;),「ヤメロ、やメ――」

lw;*;;;~/::._ ノv「『我が名において、命ずる――八重八十重の花、吹き抜ける東風に舞え――』」


幾千にも散った薄紅色が稲穂の海の金色を照り返し、暗い湿林を引き裂いて天へと昇ってゆく。

陰を消し飛ばす淡い光の大渦の中で、ひび割れてゆく術式核の声が聞こえた気がした。
それは寂しげな、安堵するような、小さな言葉。

十数年にも及んだラウンジの長い夜が、終わりを迎えた。

153以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 07:39:18 ID:H2SISWgY0
……

役割を終えた薄紅の花と金色の野が、静かに光を失い、消えてゆく。
人型に戻ったシャーミンは、術式核から精霊を噴きだし、膝を突いていた。

戦うだけの力は無いだろうが、それでも、まだその核は生きている。

静かに見下ろす呪式士に、シャーミンは背を向けた。


,冫,,)( ,,;; ノ",「あ、あぎぃ……おいどん、の身体がぁ……!」
  A"  「こんな、所でっぇぇええぇ……!」


ボロボロの身体を引き摺って、魔人の残骸は樹海の奥へ逃げてゆく。

呪式士は、それをただ見送った。
彼女の全身を覆う『呪』は今も緩やかに主の命を蝕んでいる。


lw;*~/._ ノv「あれのことは放っておけば良いよ。どの道、すぐに消滅する」

ミセ* −)リ「……すぐに、森の外に」
lw;*~/._ ノv「それも要らない。どの道、私もすぐに消滅する」


根っこのところまで『呪』にやられていて、もうどうしようもないのさ。

呪式士はミセリのすぐ側に腰を下ろした。

154以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 07:40:27 ID:H2SISWgY0
ミセ* ‐)リ「じゃあ……それじゃあ……!」

lw;*~/._ ノv「何もしなくて良いよ。もう終わったんだ」

ミセ* ‐)リ「だって、私、何も……!」

lw;*~/._ ノv「気付いてるかい? 最後の術のとき、シャーミンが私の憎悪を糧にできなかったこと」


キミが居たからだよ。
キミが居たから、私は憎しみのまま終わらずに済んだ。

呪式士は、ミセリの左胸で熱を持つ痣に、そっと指を触れる。

――術式印。
ミセリが気付いたのは、その痣が身体を離れ、精霊となって呪式士の元に戻ってからだった。

自分を為していた大切な何かが、そのまま抜け落ちたような感触。


ミセ* −)リ「……ヨツマで既に付けてたの?」

lw;*~/._ ノv「そ。なに、預けていたものを返してもらっただけだよ」

155以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 07:41:15 ID:H2SISWgY0
ミセ* −)リ「私の記憶を消したのも、それ?」

lw;*~/._ ノv「ちょっとだけ違うな。コメとライスくらい絶妙に違う」


言うなれば、魂の表面に薄い膜を付けておいたようなものだ、呪式士は説明する。
ミセリの中の彼女の記憶を、または、ミセリの魂を侵す呪毒を、表面に留める為の膜。
後にそれらを剥ぎ取りやすくする為の、言うなればただの下準備だ。


lw;*~/._ ノv「つまり、あれは言うなれば田植えの前の開墾だ。こう言えばわかるかな?」

ミセ* ー)リ「分かりにくいよ……」


汗と泥にまみれたミセリの頭を、細い指が梳く。
呪式士の優しい指に、身体に溜まっていた疲れは眠気を為す。

そうして微睡むミセリを置いて、彼女はスッと立ち上がった。

156以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 07:41:59 ID:H2SISWgY0
「私ももう行くよ、ここに居たらキミも新しい『呪』に巻き込んでしまうから」

ミセ* −)リ「……あ」


彼女の袖へと伸ばした右手は、何も掴めなかった。

――大丈夫、目覚める頃には、すべて忘れてるから。
名を呼ぼうとして初めて、ミセリは彼女の名前が既に思い出せないことに気付いた。


「ああ忘れてた、その腕輪はキミにあげるよ。心ばかりの報酬だ」

ミセ* ‐)リ「待ってよ……待って」

「『悠久に座す静寂よ――』」

ミセ*;−)リ「お願い、待って――」

157以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 07:42:53 ID:H2SISWgY0
……


,冫,,)( ,,;; ノ",「あひぃ……『呪』、『呪』を吸収、いや、人の、人を――核を交換しなければ……ッ!」


破れた魔人の残骸は、樹海をふらふらと逃げていた。

信じ難い、有ってはならない敗北。
歩みを進めるシャーミンの"心"は、怒りと憎悪に震える。

しかし、今はそれよりも。
彼は体内で明滅する核に目を向けた。

傷つきひび割れた'それ'は、もはや崩壊を待つのみだった。

――この身体は、じきに"死"ぬ。
狡猾な魔導師は手にした不老不死に早々に見切りをつけ、"生き残る"手段を必死に探す。


( )


彼が樹海をさまよう小柄な人影を見つけたのは、その手段を『憑依』に定めた丁度その時だった。

158以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 07:43:46 ID:H2SISWgY0
,冫,,)( ,,;; ノ",「お、あ……あの、そこの、方――頼む、助けて――」

( )「……」


シャーミンは出来る限りの哀れさを装い、よろめく足取りで影に近付く。

影は、答えない。
シャーミンは内心で舌打ちしつつも、尚も必死な素振りで話しかけた。


,冫,,)( ,,;; ノ",「すまねぇ、ちょっとでいい、近くに来て、ぐれッ」


もはや、核は崩壊し始めている。
これは彼にとって、事実上の最後のチャンスだった。

……縋るような声に答えるように、人影は緩慢に振り返る。

159以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 07:44:31 ID:H2SISWgY0
(` )「……待ってろ」

,冫,,)( ,,;; ノ",「は、はぁぁああ、恩にき――!!」
「――そうやってオサム達も騙して、『呪』にしたんだな」


背中に、衝撃。
血も痛覚も無い身体は、ただ違和感だけを訴える。

――核、核を守らなければ。
無意識に伸ばした手は、腹から突き出した人の腕に触れて止まる。

どてっ腹を突き破った腕の、その指先には、小さな女物の髪留め――シャーミンの術式核が握られていた。


,冫,,)( ,,;; ノ",「え……あ……おぁ、お前ぁッ!」

「久しぶりだな。再会早々で申し訳ないが……もう歳なんだ、そろそろお休みの時間じゃないか?」

,冫,,)( ,,;; ノ",「ま、待で、やめてぐれ! お前は俺の息子だろ――」


胴体から引き抜かれる腕、シャーミンはその主を振り返ろうとして、しかし出来なかった。
膝が、腕が、腰が、身体中が、支えを失った糸繰り人形のように崩れ、土塊と化してゆく。

小さな術式核は、小柄な影の手の中で粉々に砕かれていた。

160以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 07:45:09 ID:H2SISWgY0
,冫,,)( ,,;; ノ",「――おのれ――ド――ク、オ――」


それが、呆気ない終わりを迎えた魔人もどきの、最後の言葉だった。
遺された土の塊には、呪砲を発明し、ラウンジを隆盛せしめた、偉大なる魔導師の面影は無い。


('A`)「気安く呼ぶんじゃねぇよ、クソ親父。……じゃあな」


別れの言葉は、たった一言ですんだ。
踵を返し、男は独り暗い樹海を歩む。

161以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 07:45:43 ID:H2SISWgY0
……

エピローグ2/3-1/3-1/3

……

162以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 07:52:34 ID:H2SISWgY0
('(゚∀゚∩「肩と肘が見事に砕けてるよ。手首もきっと折れてる。で、それぞれ炎症のおまけつきと来た」


温厚なナオルヨ先生が冒険者を叱り飛ばす様子は、この薬方院の名物だ。
私はつい気になって、脇腹の傷に響かないようにそっと寝返りを打った。

今朝隣のベッドに入ってきた患者さんは、女性だった。
女性というか、まだ少女と呼ぶ方が良い年齢の冒険者。

肌着から伸びる彼女の左腕には、芍薬の甘い香りが染み込んだ包帯。
伝承のミイラを思わせるその腕に、先生は木彫りの腕甲を当てがう。

彼女が昏睡から目覚めたのは、確か数刻前だったはず。
つまり、彼女は数刻にも渡って先生に説教されている。


('(゚∀゚#∩「ここまで酷いのはそうそう見ないよ! どんだけ長い間感覚を遮断してたのさ!」

ミセ ;-ー)リ「ご、ごめんなさい」

163以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 07:53:07 ID:H2SISWgY0
痛みは身体の大事な信号云々、先生の怒りの説教はゴリゴリ続く。

私は思わず目を背けた。
先生は本当に、本当に優しい人だ。冒険者が無茶をすると、決まってああして説教に入る。
今日ほど怒っているとなると、誰かが止めなければ、朝までだって延々と話し続けるだろう。

今日この場についてその役を請負ったのは、彼女に付き添っていたもう一人の少女だった。


(*‘ω‘ *)「……で、どれくらいで治るっぽ?」

('(∀゚∩「……うーん、薬漬けで絶対安静にしてれば、たぶん一月ないくらいで治るよ。自信無いけど」


付き添いの少女の問いに、ナオルヨ先生は顔を顰めた。

先生のそういう様子は珍しいから、私もつい身を乗り出してしまう。
もしかして、よっぽど症状が重いのだろうか。


(*‘ω‘ *)「怪我の割にはえらく早いな。自信無い、ってのは?」

('(゚∀゚∩「"緑"持ちは自然治癒が馬鹿みたいに速いからね。有る程度処置したら、あとはほぼこの子次第だよ」

(*‘ω‘ *)「成程」


成程。

164以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 07:53:30 ID:H2SISWgY0
('(∀-#∩「全く、今はアイシス局長も戻ってないのに……」


ナオルヨ先生は頭を掻きながら個室を出てゆく。

人出が足りないというだけの事はあって、それなりに忙しそうだ。
恒例のお説教が若干短いのもそのせいだろう。

傷だらけの少女が、その背中に声を掛けた。


ミセ ゚ー゚)リ「そだ、ナオルヨ先生。渡辺さんは元気?」

('(゚∀゚∩「……渡辺さんって誰?」


不思議そうに問い返す先生に、ベッドの少女は驚いた様子。
彼女はそれ以上深く追及せずに、言葉を濁して先生を見送った。

先生の姿が敷居の向こうに消えると、付き添いの少女も首を振って、もたれ掛かっていた壁から背を離した。


(*‘ω‘ *)「……あたしも先に用事を済ませて来るっぽ。一人でも寂しくないな?」

ミセ ゚ー゚)リ「大丈夫だよ……あ、ぽっぽちゃん、ちょっと待って」

(*‘ω‘ *)「あん?」

165以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 07:54:11 ID:H2SISWgY0
ミセ ゚ー゚)リっ∮「このブレスレット、知ってる? すごく良い増幅器みたいだけど……」

(*‘ω‘ *)「……それは、依頼人からお前への報酬だっぽ。大事にしてやれ」

ミセ ゚ー゚)リ「……? うん」


当然だけれど、ほとんど盗み聞きしているような私には、二人の話が全く分からない。
ところが、それは寝ている方の少女も同じだったらしく、少し困惑したように頷いた。

二、三言葉を交わして付き添いの少女が出てゆくと、ベッドの少女は窓の外を眺めた。


ミセ ゚ー)リ「……あのさ。そこの樹だけど、あれってなんて名前?」


私ははじめ、それが私に向けられた言葉だとは気付かなかった。

この病室には、他に誰も居ない。
どうしたものかと悩む私に、彼女はちらっと視線を寄こす。

あれは、桜っていう樹だよ。

私はなるべく平静を装って答えた。


ミセ -ー)リ「……そっか。ありがとう」

166以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 07:56:59 ID:H2SISWgY0
少女は起していた上体をベッドに寝かせ、天井を仰ぎ見た。

窓の外では、秋の風に桜花が静かに揺れている。


ミセ ー)リ「なんでかなぁ」


一人きりの病室に、呟きが漏れる。
遠くの足音、話し声。窓の外で風が草木を揺らす音。

私は静かにベッドを抜け出した。
そのまま壁をすり抜けようとする直前、彼女はもう一度、私に声を掛けた。


ミセ ∩ー)リ"「……ごめんね、気を遣わせちゃって」


私はただ何も言えず、静かに中庭へと降り立った。

いずれ彼女にも再び武器を取り、樹海へと挑む時が来る。
血や涙を、心を失った私には、そんな彼女が羨ましかった。

……

167以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 07:57:39 ID:H2SISWgY0
……

親和で強化した目を通しても、一寸先も見通せやしない。
彼女は諦めて親和を切り替え、嗅覚に神経を集中させた。

微かな花の香りが潮の磯香に交じり、道標のように漂う。

……螺旋階段を下りた先は、光片一つすら無い、真の暗闇だった。
彼女はゆっくりと磯を辿り、やがて一つの独房の前で足を止める。


从'ー'从 ノ「よっす。不様ですなぁ」

「……嫌味でも言いにお出でなさったのかな」

从'ー'从「そんなんじゃないよぉ、追加のお仕事」

「っと、何これ……マメノキ?」

从 'ー从「外区画の素直別邸、五刻後。どっくんが潜伏してるから、補佐して」

「補佐……って、親和も殆ど無いあたしに何をしろって?」

从'ー'从「呪毒の除染治療だって。ラウンジとの重要な情報管だから、何としても死なせられないんだ」


独房の闇の奥から、溜息が暗闇に漏れる。

168以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 07:59:02 ID:H2SISWgY0
「無茶言ってくれるよね。ま、ドクオさんが居るなら何とかなるか」

从'ー'从「うん。それじゃお願いね、局長」

リハ*゚−リ「……はいはい、サクッと行って来ますよ」


音と光、風の無い独房に、背を向ける。
巻き添えになるのも、疑われるのも避けなければならない。

数刻の後、巨大なマメノキの蔓が地下牢を貫き、ラウンジはシハサ牢獄の屋根をぶち破った。

……

169以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 08:00:31 ID:H2SISWgY0
……


飛び散った欠片を拾い集めるように。

物語は、続く。


……

170以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 08:03:50 ID:lDx7oePY0
長らくのご静聴、ご愛顧、ご支援、誠にありがとうございます。
長くて重くて筆の乗らない第二章はここまでとさせて頂きました。

例によって、何かありましたらこちらにお願いします

171以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 08:09:17 ID:lDx7oePY0
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/link.cgi?url=http://www.youtube.com/watch?v=neibvJHm55Y

172以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 08:10:34 ID:lDx7oePY0
おっと、誤送信。参考資料でhttp://www.youtube.com/watch?v=neibvJHm55Y

引き続き、ミセリ樹海をよろしくお願い申し上げます。

173以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 08:22:34 ID:gG6dZ6fI0
おつ!

174以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 11:57:58 ID:tmj2j0qg0
乙!
さっさと仕事終わらせよう

175以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 17:43:16 ID:rb7556EcO
痣はレズシーンのときだろうが記憶はいつ消したんだろう 
誰か教えて!

176以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/14(土) 20:27:07 ID:cjYADz8.0
……あれ、レズシーンなんてあったっけ?
記憶はシャーミン戦の最後の方、地の文からシューって文字が減りはじめたタイミングを裏設定してました

177以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/15(日) 01:12:59 ID:.S/qUy860
おおう、シュー…
ドクオも複雑な生まれだったんだね
乙!!!!

178以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/15(日) 02:07:44 ID:Hi8l056UO
>独房の闇の奥から、溜息が暗闇に漏れる。 
 
誰が幽閉されてるか気になるがこれはネタバレだからだめな質問だろうな

179以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/15(日) 05:43:04 ID:Cfzo/lqk0
>>178 アイシスじゃない?
渡辺さんってラウンジで工作してたって下り、確かどこかにあったよね。読み返して来るか……

180以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/16(月) 04:04:09 ID:FT/CcP6U0
何気にクーが天涯孤独になってしまったなあ

181以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/16(月) 21:56:55 ID:DeX6v6sA0
え?
シュー生きてるんじゃ無いの?
俺の勘違いなのか?

182以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/09/16(月) 22:55:54 ID:HCt7uo5U0
そもそもクーの実家は普通に健在……だよな?
しばらく待てば拳マスタリーLv10のヒートちゃんも出して来るはず


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