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月刊少女ξ ^ω^)ξちょwwwのようです

1以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16(土) 18:00:14 ID:k6RH/pE.0

        ┏━━┳┓┏┳━━┓
        ┃┏━┫┗┛┃┏┓┃
        ┃┗━┫┏┓┃┗┛┃wwwww
        ┗━━┻┛┗┻━━┛     
         __,ィ            ヽ. `ヽ. ☆四月号☆
      ,  '⌒Y  /     、ヽ    ヽ  ヽ.
     /    /  i   /l/|_ハ li  l i   li   ハ
.    // 〃 /l  i|j_,.//‐'/  lTト l、l   j N i |
   {イ  l  / l  li //     リ_lノ lル' lハ. ソ
    i| /レ/l l  l v' /\   /\イ  !| ll,ハ      春の新連載祭り! 豪華三本♪
    ハ| ll∧ハヽ ト、 ''''      '''' /l jハ| ll ll
   〃  ‖ レ'¨´ヽiへ. _ (_人_),.イ/|/ ノ ll l|        ( ・∀・)恋実れ!のようです
  ll    ll {   ⌒ヽ_/ } ー‐<.__  ′  l| ‖             それでも幸せなようです
  ‖    ‖ ヽ,   /、 〈   |:::::::| `ヽ      ‖               o川*゚ー゚)oとなりのとなりの王子様のようです
  ‖       {.  ハ ヽ Y`‐┴、::::v  l      ‖ 
  ‖      |iヽ{ ヽ_ゾノ‐一’::::ヽ. |      ‖もちろん読みきりも充実!?
  ‖      |i:::::`¨´-- :::......:...:.:.::.}|     ‖
  ‖      |i::::::ヽ._:::_:::::::::::::::::::_ノ |     ‖   (-_-)素晴らしい世界のようです
  ‖      |i::::::::::::i___:::::::::::/  |           ξ゚∀゚)ξ神風強盗ジョルジュのようです
           jj::::::::r┴-- `ー‐ '⌒ |
         〃:::::::マ二      _,ノ
       //::::::::::::i ー 一 '´ ̄::.
       ,','::::::::::::::i::::::::::::::::::::::i::::::ヽ  そして今月の応募者全員サービスは『ξ ^ω^)ξちょwwwの膣内完全再現TENGA』だよっ☆

66以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16(土) 18:56:06 ID:RPoHcvr2O
oh…

67以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16(土) 18:56:41 ID:6DaKlZakO
ハゲマッチョじゃねーかwww

68 ◆LgksaGRSG2:2011/04/16(土) 18:57:16 ID:kU5xDoIA0

ξ゚∀゚)ξ女神の指輪頂きにきたわ

|゚ノ ^∀^)撃て

警備 ドパパパ

ξ゚∀゚)ξふん

|゚ノ ^∀^)腹筋で跳ね返しただと

ξ゚∀゚)ξこんなちゃちな弾丸ではわたしの腹筋は通らない

( ´∀`)おそろしい女だ

69 ◆LgksaGRSG2:2011/04/16(土) 18:58:22 ID:kU5xDoIA0

ξ゚∀゚)ξべあああ

( ´∀`)まずい 警備のもの達がどんどん死んでいく

警官 たすけてくれええ

|゚ノ ^∀^)なんという強さこれは計算外 でもいっぱいいるし大丈夫

( ´∀`)あの指輪を奪う事はできない美術館に入る事は死を意味する

ξ゚∀゚)ξくったしかに指輪だけを奪う事はできないようね

|゚ノ ^∀^)観念のタイムか

ξ゚∀゚)ξここで諦めたら名がすたるぜ

70 ◆LgksaGRSG2:2011/04/16(土) 19:00:11 ID:kU5xDoIA0

|゚ノ ^∀^)諦めな お前にチャンスはない

ξ゚∀゚)ξそれはどうかしら


ばひょおおお


( ´∀`)なに 美術館が消えただと

ξ゚∀゚)ξ指輪が盗めないなら美術館ごと盗めばいい

|゚ノ ^∀^)いったいどういう事

ξ゚∀゚)ξこんなこともあろうかと細工しておいてよかったわ

( ´∀`)おい説明しろ

71 ◆LgksaGRSG2:2011/04/16(土) 19:06:24 ID:kU5xDoIA0

ξ゚∀゚)ξあらかじめ美術館の地下に巨大な穴を掘っておいた

ξ゚∀゚)ξそして昨日の実写版コナンの要領で美術館を浮かせた

ξ゚∀゚)ξ空中に飛ばした美術館を別働隊のヘリでキャッチして持ち去ったのよ

( ´∀`)こんなの絶対おかしいよ

|゚ノ ^∀^)実写版コナンひでえ

川 ゚ -゚)つーか昨日の見てない人には解りにくすぎるだろ不親切設計乙

俺 AAを用意しておいたのに何故か消えた

72 ◆LgksaGRSG2:2011/04/16(土) 19:07:09 ID:kU5xDoIA0

ξ゚∀゚)ξじゃあ約束通り女神の指輪は頂いていくわ

|゚ノ ^∀^)まて

( ´∀`)逃げたぞ 追え


ξ゚∀゚)ξここまでくれば大丈夫ね

【'A`】おい

ξ゚∀゚)ξなんだコイツ

【'A`】おれは怪盗シンドバッドクオ お前のヘリの美術館は俺が頂いた

ξ゚∀゚)ξなんですって ばかな AAが適当すぎる

73 ◆LgksaGRSG2:2011/04/16(土) 19:09:23 ID:kU5xDoIA0

【'A`】回収した指輪がこれだ

ξ゚∀゚)ξおい どうやって回収した トラップや毒ガスは

【'A`】

ξ゚∀゚)ξこのやろてめえ返せ

【'A`】指輪の穴オナニーきもちいよおお

ξ゚∀゚)ξドキン この感じ どこかで感じた事があるような

ξ゚∀゚)ξこの人 ドクオに似てるような まさかそんなね

74 ◆LgksaGRSG2:2011/04/16(土) 19:11:09 ID:kU5xDoIA0

そのとき ドクオのカリ首に引っかかっている指輪から悪しきオーラが発動した

【'A`】なんだこりゃ

ξ゚∀゚)ξ指輪に憑依していた悪魔よ 

ξ゚∀゚)ξあなたの恥垢に反応 融合して邪悪が解き放たれたのよ

( ^ω^)がるるる

ξ゚∀゚)ξあぶない 逃げて

( ^ω^)パンチ

【'A`】おっと ひらり

ξ゚∀゚)ξシンドバッドクオ!

75 ◆LgksaGRSG2:2011/04/16(土) 19:12:13 ID:kU5xDoIA0

【'A`】なんて事だ 君はこの悪魔を封印する為に盗もうとしたのか

ξ゚∀゚)ξそのとおり

( ^ω^)なにをごちゃごちゃいっている

( ^ω^)くらえ 伝説の膝十字固め

ξ゚∀゚)ξきゃああ

【'A`】あぶない

シンドバッドクオはジョルジュをかばって瀕死の怪我した

ξ゚∀゚)ξああああ

76 ◆LgksaGRSG2:2011/04/16(土) 19:13:06 ID:kU5xDoIA0

ξ゚∀゚)ξなぜわたしをかばって

【'A`】初めてみたときからずっと好きだったんだ

ξ゚∀゚)ξ涙が止まらない

ξ゚∀゚)ξもう ばかね

ジョルジュは彼の唇に、そっとディープキスをした 塩辛の味がした

【'A`】おまえ

ξ゚∀゚)ξあいつはわたしが封印してみせる

( ^ω^)ばかな 愛の力で戦闘力があがっていくだと

ξ゚∀゚)ξくらいなさい 愛のエメラルドスプラッシュ

77 ◆LgksaGRSG2:2011/04/16(土) 19:14:16 ID:kU5xDoIA0

( ^ω^)ぺろおおお

悪魔は煙ふしゅーって出して封印された

ξ゚∀゚)ξよっしゃ封印した

m9ξ゚∀゚)ξあなたの瞳に☆チェックメイトよ

【'A`】えらい適当だな

ξ゚∀゚)ξいいのよ もう時間がないから

【'A`】なんの時間だよ

ξ゚∀゚)ξそれよりあなたも泥棒という事は

【'A`】ああ これからはライバルだな

78 ◆LgksaGRSG2:2011/04/16(土) 19:15:30 ID:kU5xDoIA0

【'A`】今回はお前の勝ちだ この指輪はくれてやる

ξ゚∀゚)ξいいのか チンカスくせえし

【'A`】だが次あった時は容赦しないぜ

ξ゚∀゚)ξまって あなたの正体は

【'A`】お互い秘密は秘密にしとこうぜ


クックパッドはキンタマを広げムササビのようにして飛び去った


ξ゚∀゚)ξシンドバッドクオ か ジュン

79 ◆LgksaGRSG2:2011/04/16(土) 19:16:43 ID:kU5xDoIA0

次の日


|゚ノ ^∀^)おはようジョルジュ子

( ゚∀゚)おはよう 昨日は大変だったわね

|゚ノ ^∀^)また逃げられたけど次こそは捕まえて死刑台におくるわ

( ゚∀゚)頼もしいわ

('A`)よう

( ゚∀゚)ドクオ

|゚ノ ^∀^)ドクオ

80以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16(土) 19:16:54 ID:Ni2PGT/s0
ひたすらにシュールですww

81以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16(土) 19:17:36 ID:RPoHcvr2O
すごい少女漫画だ…

82 ◆LgksaGRSG2:2011/04/16(土) 19:17:51 ID:kU5xDoIA0

('A`)ジョルジュにシンドバッドクオか 強力な犯罪者が二人もいるとはな

|゚ノ ^∀^)マジでぶち殺したいわ

|゚ノ ^∀^)でもジョルジュがどことなくジョルジュ子に似てたわ

( ゚∀゚)偶然よ

('A`)おっと 石につまづいて

その瞬間 ドクオはジョルジュ子に倒れかかりディープキスの体勢になってしまった

('A`)ぶぢょおぬ

( ゚∀゚)きゃあ

( ゚∀゚)あれ でもこの塩辛みたいな味わいは

83以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16(土) 19:18:09 ID:6DaKlZakO
そっとじゃねーだろそっとじゃwww

84以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16(土) 19:18:31 ID:MLRghXU.0
キンタマでか過ぎワロチ

85 ◆LgksaGRSG2:2011/04/16(土) 19:19:43 ID:kU5xDoIA0

|゚ノ ^∀^)お二人さんみせつけるね

('A`)おいおい なにいってんだ くそ おれは先に学校にいくぜ


( ゚∀゚)今の味わい……






( ゚∀゚)飯くいてえな




FIN

86 ◆LgksaGRSG2:2011/04/16(土) 19:21:49 ID:kU5xDoIA0
終わりです 次の作者様投下をお願いします ラーメン

87以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16(土) 19:21:55 ID:51Zo.Um20
突っ込みどころが多すぎるwwwwwwwwwwwwwww乙wwwwwwwwww
実写版コナンが酷いことはよく分かった

88以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16(土) 19:22:50 ID:RPoHcvr2O
乙wwwもう何から突っ込んだらいいか分かんねーよwww

89以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16(土) 19:23:37 ID:Ni2PGT/s0
ぶっとぶなぁwwww
乙!!

90以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16(土) 19:24:16 ID:MLRghXU.0
       _('A`)_ 
       l (  )  l   乙
       ヽノω|..ノ

91以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16(土) 19:24:40 ID:6DaKlZakO
なんじゃこりゃwwwww乙

92 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:25:24 ID:RPoHcvr2O
とんでもねぇバトン受け取っちまったwww
投下しますよ

93 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:27:12 ID:RPoHcvr2O



生まれて来た意味、生きて行く理由。
それさえ持って生まれたら、幸せになれると思ったんだ。



(-_-)素晴らしい世界のようです



(-_-)「醜い羽だね。とてもこの世のものとは思えない」

本来蜘蛛の巣にかかった蝶は、それはそれは儚くも美しいものだろう。
そんな固定観念を打ち壊す程に色褪せて、ボロボロに傷付いて、模様の狂ったその羽は、ただただ滑稽だった。

蝶は絡まる糸に抵抗する事もなく、目を閉じたまま、顔を上げて。
微笑んだ。

(# ;;- )「こんにちは」

盲目なのだと分かったよ。
こんな時に挨拶なんてね、自分の置かれた立場を理解してないのかな。
ましてや先程の皮肉に対しての返事がそれとは。

94 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:28:06 ID:RPoHcvr2O
泣きながら助けを乞われると思った。
なのに、待てども彼女は柔らかい笑みを浮かべるばかり。

“生”を諦めているのか、“死”を望んでいるのか。

恐らくは後者だ。
目の前に一筋の光が射しているのに、何を諦める必要がある。

(-_-)「待ってなよ」

(-_-)「今、助けに行く」

思えば最初は至極簡単で残酷な動機だったかもしれない。
“死”を望む君に“生”を植え付けてやりたかった。
なんて幼稚な嫌がらせなんだろう。

巣の主の不在を確認した後その場を離れる。
背に罪を、胸に蝶を、抱えて。

95 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:29:17 ID:RPoHcvr2O
傷が付かないようにと、全身に絡み付いた透明な糸を丁寧に解いていく。
醜いと思った羽は近くで見てもやはり醜かった。

(-_-)「ねぇ君、死にたいの?」

(# ;;- )「死にたくないから助けを呼ばなかったんです」

(-_-)「何それ。声を出さないと誰も気付いてくれないよ」

(# ;;- )「でも、貴方は来てくれました」

(-_-)「…あのねぇ」

この出会いを偶然と捉えるか、運命と捉えるか、それは僕次第なのだろう。
ふいに伸ばされた細い手が、確かめる様に僕の背中の羽に触れる。
「ありがとう」と言った。何か勘違いしてるんだと思う。

(# ;;- )「見えなくとも羽に触れれば分かります」

(# ;;- )「貴方はとても美しく、優しい蝶なのでしょう」

(-_-)「そんな事…ないよ」

無性に悲しくなって、怒りが込み上げて、でも嬉しくて。
息が出来なくなった事を、君は知らない。

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96 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:30:27 ID:RPoHcvr2O
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夏が来るよと森が騒ぐ。
命を震わせて叫ぶ蝉達の声は、短い障害を愛に捧げる為らしい。
見るもの聞くもの何もかもが初めてで、全てが光り輝いていたけれど、やがて慣れと煩わしさを覚えた。

(-_-)「うー…蝉がうるさい」

(# ;;- )「私は羨ましいです。蝶は歌を知りませんから」

(-_-)「歌?」

(# ;;- )「はい。歌です」

いつしか隣にいる事が当たり前になっていたこの子には、あの叫びが歌に聞こえるそうだ。
この不協和音が歌…ねぇ。
求愛行為ならば蝉の歌より、蝶の舞の方が良いよ。絶対。

97 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:31:31 ID:RPoHcvr2O
(# ;;- )「お腹すきませんか?」

(-_-)「別に」

(# ;;- )「そろそろ御飯にしましょう」

(-_-)「勝手にすれば」

(# ;;- )「花の蜜はお嫌いですか?」

(-_-)「僕は行かないよ」

(# ;;- )「…分かりまし」グイッ

(# ;;- )「…どうしました?」

(-_-)「あー…」

(-_-)「やっぱり僕も行くよ」

(-_-)「一緒に行ってあげる。だって君、一人じゃ危なっかしいんだもん」

(# ;;- )「…ふふ。ありがとう」

98 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:32:20 ID:RPoHcvr2O
むせかえる様な花の香りが花につく。
舌に染み込む花の蜜は甘くて、甘くて、吐き気を誘った。

(# ;;- )「美味しいですね」

(-_-)「(おぇっ)…そうだね」

(# ;;- )「私達のいる桜の木。あの木が恋をしたら、蝶の森へ行きましょう」

(-_-)「恋?」

(# ;;- )「はい。恋です」

(-_-)(恋…?あー、なるほど)

秋が来たらと君が言う。
見上げた木の葉は青青として、気持ちよさそうに風にそよいでいた。
そのまま死んでしまえば良いのに。

それにしても、なんてうるさい沈黙だろう。
愛の為に下手くそな歌を叫ぶ彼等に会いたくなった。
じきに夏が終わる。

99 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:33:16 ID:RPoHcvr2O
飛ぶ事の出来ない二人の頭上を、鮮やかな彩りの蝶達が飛んで行く。
あんなにも焦がれた羽にすら、今では疑問符が浮かんで止まない。

同じ色彩、同じ模様、
あれは果たして“美しきもの”か。

複雑な極彩色であるだけのそれは、酷くつまらないものに感じた。
そこには個性など微塵もなく、器用な模造が顔を並べている。
全部同じなら、誰でも良いんじゃないか。

(-_-)「初めて会った時、僕は君の羽を醜いと言った」

(-_-)「今でもそう思う」

(-_-)「でも」

(-_-)「僕は君の羽が好きだ」

色が褪せているのも、傷付いているのも、君が生きた証。
世界で唯一、一つしかない色。
なんて醜く、それ故に愛しい。

100 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:34:26 ID:RPoHcvr2O
(-_-)「…なんで泣くの」

(#。;;- )「…ありがとう」

ぽたり。

(-_-)「…何言ってるの」

(#。;;- )「ありがとう…」

ぽたり。

(#。;;- )「私も貴方の形が大好きです」

(-_-)

涙を流した君以上に僕が泣きたかった事、気付かないままでいい。
頭を撫でたらくすぐったいと子供みたいに笑うから、つられて笑ってやった。

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101 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:35:07 ID:RPoHcvr2O
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願いは届かず葉は紅く染まり、木々の渇きは潤される事なく落ちて行く。
秋なんて大嫌いだ。

蝶は行くべき場所を知ってるらしい、そう作られた。
何も知らずはしゃぐ君を連れて行く。





蝶の森へ。

102 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:36:22 ID:RPoHcvr2O
そこは極彩色の楽園だった。
そこは平穏と笑顔で溢れていた。
君によく似た色をした、数え切れない程の蝶達がひらひらと空を舞う。

僕等が足を踏み入れた途端、しんと静まり返る蝶の森。
みんながこっちを見てる。
コソコソ、コソコソ、蝶達の囁く声がする。

川 ゚ -゚)「ご覧よ、あの異様に長い手足を。あちこち尖った体を。まがまがしい柄を」

ノパ⊿゚)「なんておぞましい姿だ!あれは蜘蛛じゃないか!!」

(*‘ω‘*)「盲目の蝶が楽園に蜘蛛を連れて来たよ」

lw´- _-ノv「食らった蝶の羽を背に縫い付けているよ、きっと我々の事も食らいに来たんだ」

みんながみんな、滑稽なこの姿を見ては逃げて行く。
木の陰から広場に立ち尽くす異端の二人を見下ろしてる。

103 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:37:05 ID:RPoHcvr2O
(# ;;- )「蜘蛛?」

後ろでぽつりと君が呟いた。
何かを探す様に空中を泳ぐ手が、こちらへ伸びて来る。
真実に触れる為に伸びて来る。

(# ;;- )「何をおかしな事を」

(-_-)(やめろ)

(# ;;- )「そんなはずないじゃないですか」

(-_-)(やめてくれ)

君の手が伸びて来る。
伸びて来る。
伸びて来る。

伸びて、来た。

104 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:38:30 ID:RPoHcvr2O
(# ;;- )「彼には確かに羽が」

指先が触れる。
腐り、乾き、脆くなっていた借り物の羽が、触れられた箇所から砂の様に崩れた。
驚きのあまり見開いた君の瞳、初めて見た。

(#゚;;-゚)

本来あるべき黒目はなく、全体が白く濁り、下手くそな御世辞すら飲み込ませた。

(-_-)(醜い、なぁ)

(-_-)(誰にも見られなくなかっただろうなぁ)

(# ;;- )

(-_-)「そんな顔しないでよ」

(# ;;- )

(-_-)「ごめんね」

(-_-)「やっぱり僕、蝶にはなれなかった…」

105 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:39:37 ID:RPoHcvr2O
生まれた時から空を見上げてはあの美しい羽に焦がれていた。
蝶が好きだったのか、蝶になりたかったのか、それは分からない。
でもただ一つ確かな事、僕は蜘蛛だ。

('A`)『ほうら、あれが糸を張らない風変わりな蜘蛛さ』

(´・ω・`)『この間花の蜜を吸って吐いてる姿を見たよ』

(`・ω・´)『馬鹿らしい。自分が蝶だとでも思っているのか』

(-_-)

始まりは春の終わりだった。
これは君と出会うほんの少し前の話。
主が不在の巣に一匹の蝶が捕らわれているのを見つけた。
絡まる糸に弱々しくもがく姿さえ、儚くも美しいと思った。
迷わず助けに向かった僕に蝶は最期の力を振り絞り、「来ないで」と、「助けて」と、「死にたくない」と、叫んだんだ。

しばらくもしない内に、蝶は死んだよ。
やがて降り出した雨に濡れた巣は、皮肉にもキラキラと光り輝いていた。
どうしてだろう。目の当たりにした死を悲しむより、憧れを捨てられない。
夢の為ならいくらでも残酷になれた。

この羽が欲しい。
欲しい。
欲しい。



気が付いたら、自分の背中に羽を縫い付けていた。

106 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:40:19 ID:RPoHcvr2O



(# ;;- )『貴方はとても美しく、優しい蝶なのでしょう』



悪意のない君の言葉が胸に突き刺さる。
様々な形の感情が産声をあげて、芽となり心に根を張り巡らす。

君の声で夢を見た。
そして、君の手で目が覚めた。
君といる間だけ、僕は蝶でした。



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107 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:41:12 ID:RPoHcvr2O
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冷たい風が命の枯れる季節を運んで来た。
秋に想いを寄せた桜の恋は破れ、散り散りになって飛んで行く。
誇らしく咲いていたあの頃の見る影もなく、花々が朽ち果てていく。

結局花の甘い香りは吐き気を誘うばかりで、飢えを満たしてはくれなかったな。
もう二度とあの味を口にせずに済むのかと思うと、安心感すら覚えた。

(-_-)(やっぱり僕は蜘蛛さ)

体のどこにあるかも分からない心にはどす黒いものだけが積み重なっていく。
悲しい、苦しい、切ない、寂しい、死にたい、消えたい、会いたい…いつもこの辺で分からなくなって考えるのをやめるんだ。
空腹のせいだ。

目の前が霞んで来た。もうしばらく何も食べていない。
あの色とあの羽を失ったあの瞬間から、二度と狩りをしないと心に誓ったんだ。
ふと光る粉を振り撒く蝶を下から眺めては無意識にこう思う、なんと美味しそうな御馳走だと。
窶(やつ)れた細く長い自分の手足は、より一層蜘蛛らしかった。

(-_-)(やっぱり僕は蜘蛛さ)

(-_-)(蜘蛛なのさ)

108 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:42:04 ID:RPoHcvr2O
体が動かない。瞼が重い。
このまま眠ってしまおうか。
それがいい。

「こんにちは」

(-_-)「……えっ」

(# ;;- )

瞳を開く。
ぼやけた視界の中心で、君だけが鮮明に映し出される。

(# ;;- )「良かった。あれからずっと貴方を探してたんですよ」

(# ;;- )「やっぱりこの桜の木にいたんですね」

(-_-)「どうして…」

(# ;;- )「だって貴方はここが好きでしたから」

(# ;;- )「春も、夏も、秋も。私達はいつもここにいましたね」

いつしか君は冬が好きだと言っていた。
見た事がないから憧れるのだと、知らないからこそ愛する事が出来るのだと。
もうすぐ君の愛した冬が来る。

109 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:43:02 ID:RPoHcvr2O
(# ;;- )「どうしても会いたかったんです」

(# ;;- )「冬が来る前に」

何を言えば良いのか、夢幻ではないのか。
考えがまとまる前に君の唇から漏れた言葉が耳を通り抜ける。
優しい母の様な微笑みが一変、責める様な口調に。

(# ;;- )「どうして嘘ついたんですか」

(# ;;- )「本当の事を言えば離れていくとでも?」

(# ;;- )「貴方は私を信じてないんですね」

(# ;;- )「私だけには、本当の事を話して欲しかったのに」

その手が。
僕の指に触れる。
腕に触れる。
背に触れる。

110 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:43:59 ID:RPoHcvr2O
(# ;;- )「…そんな事言えませんよね」

頬に触れて、

(;_;)

涙に触れた。

(# ;;- )「ごめんなさい。ごめんなさい」

(# ;;- )「私が悩んだ以上に、貴方はどれだけ悩んだことでしょう」

(# ;;- )「貴方の事何も知ろうとしなかった」

(# ;;- )「貴方に嘘を吐かせていたのは、私」

(# ;;- )「苦しかったでしょう、悲しかったでしょう、辛い思いをさせて本当にごめんなさい」

(-_-)「!!」

ゆらりと揺れる違和感に気付いてしまった。
真偽を確かめる為に細い腕を引き寄せる。
片羽が、ない。

(;-_-)「なんだよこれ!蝶達にやられたのか!?」

いいえと彼女は首を横に振り、凛と言ってみせた。
これは、これこそが、自分が望んだ結果だと。

111 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:44:55 ID:RPoHcvr2O
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『やっぱり僕、蝶にはなれなかった…』

(# ;;- )『待って下さい』

(# ;;- )『待って』

貴方の背中を追いかける足はあった。
引き止める手もあった。
あとは貴方を見失わない目さえあれば。

(# ;;- )『置いて行かないで下さい…』

貴方が去ったすぐ後、近くに足音を感じた。
蝶のみんなが木の上から降りて来たのだ。

『やれやれ、まさか醜い蝶が狡賢い蜘蛛に唆(そそのか)されて蝶の森へ連れて来るとは』

『美しく舞う事も子を残す事も出来ない上に、みんなを危険に晒したのか』

『蜘蛛が誰も殺さずいなくなって良かったぜ。あんな生き物早く死んじまえば良いのに』

みんな、笑ってた。

112 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:45:49 ID:RPoHcvr2O
私はそっと懐の中から、布で巻かれた物を取り出す。
もしもの時の為にと、今は亡き母に渡された物だ。
手の感覚で布を解いていく。風に吹かれて布が飛んでいく。

今このナイフは、太陽の光に反射して光っているのでしょうか。
それは綺麗なのでしょうか。

刃を背にあてがう。
誰にも邪魔されないよう、事は瞬く間に済ませた。
ざわめきがどよめきと悲鳴に変わる頃には、私の片羽は土の上。
地を紅く染め上げる。

(# ;;- )『貴方がたには見えなくても、私には見えます』

(# ;;- )『彼は誇り高き蝶です』

(# ;;- )『蝶の羽を持たぬ者を蝶ではないと言うなら、私は蝶をやめます!』

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113以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16(土) 19:46:18 ID:6DaKlZakO
この雰囲気好きだなあ

114 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:46:35 ID:RPoHcvr2O
(# ;;- )「本当は両羽を切り落とそうとしたんです」

(# ;;- )「でも」

思い出してしまったんです、そう彼女は続けた。
片方だけになってしまった傷だらけの羽を、大切そうにそっと撫でる。
星の色した粉がキラキラと宙を舞った。

(# ;;- )「生まれた時から盲目の私には、自分の羽の模様が分かりません」

(# ;;- )「けど、みんなが口を揃えて言いました」

(# ;;- )「醜い、と」

(# ;;- )「だからきっと、そうなのでしょう」

蝶はなおも話を続ける。

(# ;;- )「みんなと同じになりたいと、いつも願ってました」

(# ;;- )「人と違うこの羽が大嫌いでした」

(# ;;- )「醜いだけの羽なら、いっその事…」

115 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:47:22 ID:RPoHcvr2O
(# ;;- )「でも、貴方は言ってくれました」

(# ;;- )「醜いこの羽を、好きだと、言ってくれました」

(# ;;- )「私にはそれがとても嬉しかったんです」

(-_-)「…君は、馬鹿だね」

(# ;;- )「はい。馬鹿です」

ああこれは、救い様のない馬鹿なんだ。
永久に続くであろう平穏を脅かしてまで守りたいものだったのか。
群れからはぐれてどうなる、普通から離れてどうする。

なのに僕は今、嬉しくてたまらない。

(-_-)「いいの?あんなに蝶の森へ行きたがってたのに」

(-_-)「楽園なんでしょ?」

(# ;;- )「いいんです。あそこはあそこを楽園と呼んだ“誰か”にとっての楽園」

(# ;;- )「私はもう、私の楽園を見つけましたから」

116 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:48:13 ID:RPoHcvr2O
(-_-)「この裸になった桜の木の事?」

飾るもの全てを捨てた枯れ木は楽園と呼ぶには寂し過ぎるだろう。
君は口の端を上げて首を横に振る。
そして僕の左胸の鼓動にそっと触れて、言った。

(# ;;- )「私の楽園は、ここ」

めでたしめでたし、だろう。
御伽噺ならこれでお終いだろう。

安心した途端、糸の切れた人形の様に体の力が抜けて、倒れ込んだ。
思い出したかの様に襲いかかる空腹。
やせ衰えた足では、もう君と肩を並べる事すら叶なかった。
視覚のない分優れた彼女の触覚は、骨ばった体に触れてすぐに状況を理解したようだ。

(# ;;- )「こんなに痩せて…早く何か食べないとっ」

(-_-)「いいんだよ。もういいんだ…」

(# ;;- )「よくない!このままでは死んでしまう!」

目の前の存在が真実であると実感する度、不謹慎な歓喜に包まれた。
君は笑ってなんかいないのにね。

きっと、ただ側にいるだけで良かったんだ。
君がいて、僕がいる、それで良かったんだ。

117以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16(土) 19:48:37 ID:Ni2PGT/s0
鳥肌が立ってきた

118 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:49:06 ID:RPoHcvr2O
(-_-)(蝶と蜘蛛はいつまでも幸せに暮らしましたとさ)

(-_-)(めでたし、めでたし)

頭に酸素が回らなくて、悲しげな顔をした君の懐から出された銀を、ほんやりと眺めてた。
刃には羽を切り落とした時に拭いきれなかった血がまだ痛々しく付着してる。

何が起こったのか、よく分からなかった。
突き立てられた鋭利なナイフの先端が、彼女の胸に静かに埋まっていく。
両手を胸の前に重ねた姿はまるで祈ってるみたいだった。

何が起きてるのか、よく分からなかった。
嘘みたいな赤い色が、嘘みたいに溢れ出した。
下手くそな平然を装った君は、痛みに眉をひそめて笑う。

(# ;;- )「私を食べて下さい」

“死ね”よりも、“嫌い”よりも。
どんな心ない言葉の暴力よりも、何よりも。
出来れば永遠に、聞きたくなんかなかった。

(-_-)「何…を、してるんだ…」

誇らしげに突き刺さったままのナイフを引き抜きたいのに、ナイフを包み込む小さな二つの手がそうさせてくれない。
君は言った、「これで良いんです」。

119 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:50:11 ID:RPoHcvr2O
(# ;;- )「いずれにせよ、この体は冬を越す事が出来ません」

(# ;;- )「本来私の一族は春に生まれ、夏に終わるのです」

(# ;;- )「皮肉な事に、私は普通を失い異常を患う事で、短い命を長らえる事が許されたのです」

少しずつ、少しずつ。
赤い滴が流れては土に滲んでいく。

(# ;;- )「命は何の為に生まれると思いますか?」

(-_-)「何…?」

(# ;;- )「初めて会った時、貴方は私に、私は貴方に言いました」

(# ;;- )「『死にたいのか』と」

(# ;;- )「『死にたくないから助けを呼ばなかった』と」

(# ;;- )「私にとっての“死”とは、生まれた意味がないまま終わってしまう事」

(# ;;- )「命の生まれる意味が子孫を残す事だと言うなら、それが出来ない私には、自らの命に意味が見いだせません」

(# ;;- )「そんなの悲しいから、生まれて来ておめでとうって言われたいから」

(# ;;- )「捕食者に食われ、血となり肉となり、それを私の生まれて来た意味にしたかったんです」

120 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:51:14 ID:RPoHcvr2O
(# ;;- )「…ただのワガママなんです」

(# ;;- )「私が誰かの命になるなんて、素敵な事じゃないですか」

(# ;;ー )「神様みたい」

そう言って、笑った。
何かに導かれる様にナイフに添えられた手に手を重ね、血に汚れる事すら厭わずか細い体を強く抱き締めた。
ああ、頭の中で音もなく蜘蛛の本能が理性を蝕んで行くのを感じる。

( _ )(なんて)
悲しくて、悔しくて。
( _ )(なんて美味しそうな)
こんなのは嫌なのに。
( _ )(御馳走なんだろう)
涙が溢れて、零れて落ちた。

121 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:52:07 ID:RPoHcvr2O
(-_-)「ずっと一緒にいよう」

(# ;;- )「はい」

(-_-)「二人で生きるんだ」

(# ;;- )「はい」

今、君の願いを叶えよう。
楽園へ連れて行く。今度こそ。



(-_-)「“ここ”へおいで」



白い首に針を突き刺した。

泣かないでと、どうか泣かないでと、頬を伝う涙が赤い手に拭われ、色を持つ。
最期の最後まで、どうして君はそんなにも綺麗に笑うの。

(#゚;;ー゚)「私、幸せですよ」

開かれ閉じた瞳にほんの一瞬、僕の姿が映った。
…そんな気がした。

122 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:52:42 ID:RPoHcvr2O
手を、口を、紅に染めた僕の姿を見つけ、知らない誰かが恐怖に震える。
空に沈んだ白い月だけが歯を見せて笑っていた。
手にした歪な模様の蝶の羽が視界に入る度、君との再会の瞬間が脳裏を駆け巡る。

(# ;;- )『こんにちは』

なんとなく、分かってたさ。
色褪せて破れた羽の、その理由。認めたくなくて見ないふりした。
本当はきっと全部分かってたんだ。

命にはいつか終わりが来るなんて分かり切った事。
今日すれ違った全てがいずれかは消える命。

123 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:53:28 ID:RPoHcvr2O
世界に君の愛した冬が来た。
降り出した雪が桜の木を励ます様に飾り付ける。
まるで地獄みたいな季節だ。
僕は息を濁して凍えながら、小さな穴の中に逃げ込んだ。
そこは暗闇と静寂が支配する空間。
今僕に語りかけてくれるのは、自分の呼吸と鼓動だけだった。

トクトク、トクトク。
左胸の鼓動に呼びかける。

(-_-)「聞こえるかい」

トクトク、トクトク。
君が笑った気がした。

(-_-)「君が冬を見れなくて良かった」

(-_-)「冬は寒いよ」

(-_-)「草花は枯れてるしね、この世の終わりみたいだ」

(-_-)「きっと君でも愛せないよ」

かじかむ手と手を握り合わせ、温もりを思い浮かべる。
二つが一つになるなんて、これほど虚しいものはない。
もう話す事も出来ない。触れる事も、記憶と妄想の中でしか。

124 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:54:46 ID:RPoHcvr2O
( _。)「君が僕の命の理由だったのに…」

やっと見つけたのに、どうして君はいないんだ。
たった一つの命を失っただけなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
いくつもの無関心な命を見送って、死には慣れたつもりでいたのに。

自分が何の為に生まれて来たかって?
馬鹿だな。
君は、本当に、馬鹿だな。

生まれて来た意味なんて誰も持ってないんだから、そんなもの自分で決めれば良い。
必要なのは、生きて行く理由。

さぁ、僕は何の為に生きよう?
地獄の季節に耐えてまで、何を望む?
今生きてる、息をしてる。
きっとあるはずなんだ。

白い糸を体に巻き付けて、少しだけ眠ろうか。
瞼の裏に焼き付いた君の夢を見ながら。
次に目を覚ました時には世界が優しくなってる事を、願う。

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125 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:55:38 ID:RPoHcvr2O
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顔を照らし出す一筋の光に急かされ、瞳を開く。
随分と長い間眠っていたみたいだ。
もうじき果てるであろう衰えた四肢を引きずり、外の世界へと踏み出す。

大地を覆っていた雪はいつの間にか跡形もなく消えていた。
枯れた花の蒔いた種は新たな芽を育み、一度は命を亡くした桜も花を取り戻す。
ひらひら降り注ぐ鮮やかな彩りの波の中、僕はついに力尽きて倒れた。

(-_-)「……あ」

見上げた空には一面蝶の群れが飛んでいた。
とても懐かしいようで、知らない色。
虚ろな瞳に失いかけた光が返って来る。

(-_-)(そうか)

(-_-)(あったんだ)

(-_-)(地獄の季節を生き抜いた、理由)

126 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:56:22 ID:RPoHcvr2O
弱々しく伸ばした指と指のフレームに蝶の姿を捉える。
花びらと踊るその羽の、なんと美しい事だろう。
胸に熱いものが込み上げ、自然と表情が綻んだ。
なんてクソッタレで素晴らしい世界なんだろう。

(-_-)「ねぇ、幸せだったよ、でぃ」

(-_-)「僕は、満足だ……」

ぱたり、と。
何ものにも届く事なく落ちたちっぽけな掌。
一匹の蜘蛛を蝶達は指さしながら見下ろしていた。
「死んだ死んだ」と笑って。










満足だよ。また会えたんだ。

君とよく似た、あの色に―――

127 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:56:56 ID:RPoHcvr2O

(-_-)素晴らしい世界のようです 終

128 ◆IibhHOZgZo:2011/04/16(土) 19:58:05 ID:RPoHcvr2O
終わりです。
次の乙女に届け!俺の下心がこもったバトン!!

129 ◆LgksaGRSG2:2011/04/16(土) 19:58:54 ID:kU5xDoIA0
乙です 余韻が素晴らしい

130以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16(土) 19:59:29 ID:ALCQqgqo0
悲恋過ぎて生きるのが辛い……でも乙!!

131以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16(土) 20:00:23 ID:6DaKlZakO
このダークライトな感じたまらんな

132以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16(土) 20:00:31 ID:Ni2PGT/s0
うわあああああああ
乙!
これは悲しい

133 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:02:26 ID:Ni2PGT/s0
おっと 次俺か
え どうしようwwwwギャップがwwww


では次からいきます

134 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:03:02 ID:Ni2PGT/s0


( ・∀・)恋実れ!のようです

135 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:03:30 ID:Ni2PGT/s0

( ・∀・)「初めまして!レディース&ジェントルマン
      僕の名前はモララー
      しがない魔法使いです」

( ‐∀・)「って言っても、魔法らしい魔法は使いませんけど」

( ・∀・)「迷える皆様の恋を、僕が全力でサポートします!!」


136 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:04:03 ID:Ni2PGT/s0

Case 1:高岡ハイン

137 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:04:25 ID:Ni2PGT/s0

三月
さよならの季節
三年生が居なくなって あの人が居なくなって
あたしは意気消沈

先輩の妹はいつも活発で、
先輩が楽しそうにしていたバスケを
先輩と同じ癖で 先輩と同じように楽しんでいる
あの子の先輩である私としては、そろそろ練習に参加しなければならないのだが、
どうもそういう気にはなれなかった

从 ゚∀从「……はぁ…」

从’―’从「ふえぇ〜?ハインちゃん、どうしたの?」

同級生の渡辺
同じ二年生で、幼馴染
もうすぐ三年になる

138 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:05:16 ID:Ni2PGT/s0

从 ゚∀从「渡辺?……なんでもねーよ」

从’―’从「長岡先輩のこと〜?」

从 ゚∀从「……ッ」

从’―’从「ハインちゃんはわかりやすいね〜。ずぅーっとツーちゃんみてたよぉ?」

从 ゚∀从「……っせーよ」

从’―’从「だーから卒業式の時に告白しちゃえば?って言ったのに」

从 ゚∀从「出来るわけ、ねーだろ」

从’―’从「シャイなんだからぁ」

从 ゚∀从「あーうっせぇうっせぇうっせぇうっせぇ!!ほら、練習戻るぞ」

从’―’从「は〜い」

139 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:05:48 ID:Ni2PGT/s0

長岡先輩
長岡ジョルジュ
男バスの部長だった先輩
部活の後輩 ツーの兄で、二人は仲良しだ

( ゚∀゚)「つーぅー!そっち終わったかぁ?」

(*゚∀゚)「見りゃわかんだろクソ兄貴!むしろ手伝えよ」

( ゚∀゚)「しゃーねーなぁ ハイン、何かやることある?」

从;゚∀从「えっ……あ、いや、大丈夫ですよ?すぐに終わりますから」

( ゚∀゚)「俺もう超腹減ってるから早く帰りてーんだ」

从;゚∀从「はぁ……」

( ゚∀゚)「だからな、仕事っ☆」

140 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:06:36 ID:Ni2PGT/s0

気さくで、男バスでも親しまれている先輩
バスケ部は男女で分かれてはいるが、活動場所は同じ体育館
元々、よく見かけるし よくこっちのことも気にかけてくれていたせいか、接する機会は多かった
ツーが入部してからは、顔を出す機会が増えた
引退してからも毎日のように部活に来ていたし、女バスvs長岡先輩 なんて、無茶な相手もしてくれた

あたしが気持ちに気付いたのは先輩が引退してからで、
しかも、渡辺に気付かされた

从’―’从「ハインちゃん 好きなのはわかるけど、試合中に長岡先輩ばっかりを凝視するのは感心しないなぁ〜」

反射で殴りつけて、ボール攻めにあった
自覚していなかっただけに、動揺の気持ちが多かった

***

从 ゚∀从(先輩が卒業した今、もう悩むことなんか何もないんだ)

从#゚∀从「オラオラチンタラしてっとボール取れねぇぞぉぉっ!!」

从 ゚∀从(今は部活に打ち込む それでいいんだ)

从’―’从「…………」

141 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:07:03 ID:Ni2PGT/s0

从 ゚∀从「気を付けー 礼!」

『ありがとうございましたー』

部活を終え、着替えに行く
後ろから渡辺がついてきた

从’―’从「ハインちゃーん」

从 ゚∀从「ん?」

部室に入り、ドリンクを持って、部屋の隅にあるベンチに腰掛けた
渡辺もロッカーから制汗剤とペットボトルを出してから隣に腰掛けた

从 ゚∀从「……なんだよ」

从’―’从「……明日ね、来るみたいだよ?長岡先輩」

………ドリンクを噴出さなかったことを褒めてほしい

142 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:07:41 ID:Ni2PGT/s0

从;゚∀从「げふげふげふげふ……は?なんで来るんだよ てかなんでそれをあたしに言うんだよ」

从’―’从「ん?知りたいかなーと思って」

从;゚∀从「別にどーでもいいし てか来んなし」

从’―’从「素直じゃないなぁ」

从;゚∀从「いや、マジで」

从’―’从「ツーちゃんから聞いたんだけどね、長岡先輩、遠くの大学行くんだって」

从 ゚∀从「だからどうしたよ」

从’―’从「だからね、明日を逃すと、次会うのは四年後になっちゃうの」

从 ゚∀从「だからなんだよ」

从’―’从「ほっといたら、彼女出来ちゃうよ?ていうか大学なんて言ったら…」

从;゚∀从「みなまで言うな 聞きたくない」

从’―’从「じゃぁ」

从;゚∀从「ッ………」

143 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:08:05 ID:Ni2PGT/s0

そこまで純情な乙女じゃない
一人身の先輩が大学へ行ったら、どんな恋愛生活をするのか わからないわけがない
だがそれを考えるのは不快だった
知っている この感情が嫉妬であることくらい
見たこともない まだ何も起きていない しかし、いずれ先輩の隣を歩く 誰か が、妬ましくてならない
今目の前がどす黒い何かで染まるくらい 憎くてたまらない

知っている 甘酸っぱいとか言われる恋愛感情の裏側
所有欲と独占欲 嫉妬と羨望 情欲と下心
恋愛感情を構築するそれらの成分そのものが、それぞれの恋の形であることを
そして今自分が先輩に抱いている恋心も 例に洩れずそれらどす黒いものであることを
知っている
自分で不快感を感じる時すらある
気持ち悪いと思う
そんな気持ちを、先輩にぶつけたくない

でも、でも でも、でも ……

从 -∀从

144 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:08:29 ID:Ni2PGT/s0

从 ゚∀从「……でも、無理」

从’―’从「いいの?」

从 ゚∀从「仕方ない」

从’―’从「試してもいないのに?」

从 ゚∀从「いいの」

从’―’从「ふられるのが恐いの?」

从 ゚∀从「うっせ」

从’―’从「……そう」

目を見ないままの会話は終わる
立ちあがり、ドアを開ける渡辺  入ってくる部員
……部員にまで迷惑をかけていたみたいだ

145 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:09:03 ID:Ni2PGT/s0

( ・∀・)「おやおやおやおやこれはこれは……」

( ・∀・)「おっとお久しぶりです皆様。覚えてますか?魔法使いモララーです」

( ・∀・)「人の恋路を覗くとか変態? ……はは、ワロス」

( ・∀・)「これが今の僕の役割ですからね。ちゃんと仕事しないと
      さて、動くとしますか」


( ・∀・)「……ところで、皆様は『恋愛』について、どうお考えですか?
     ハインさんのように考えたことがありますか?
     それとも、あまぁい砂糖菓子と瑞々しい果物のようなものだとお考えですか?」

( ・∀・)「……思想は人それぞれですがね」

( ・∀・)「では、行ってきます」

146 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:09:24 ID:Ni2PGT/s0

此処は何処だろう
真っ暗な空間
でも生温かく、落ち着く空間

从 ゚∀从「……?」

なにもない
あたしと
あたしが身を投げているソファと 闇

……違う  闇の向こうに、何かが居る
闇にまぎれた 何かが居る




( ・∀・)「やあ、初めまして」

从 ゚∀从「!!」

違う 目と鼻の先に、漆黒のタキシードを着た男が居た

147 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:09:48 ID:Ni2PGT/s0

从;゚∀从「なっ」

( ・∀・)「おっと、これは失礼。 高岡ハインさん」

从;゚∀从「!?なんだてめぇ」

( ・∀・)「僕の名前はモララー しがない魔法使いです」

从;゚∀从「めっちゃ怪しい!!」

( ・∀・)「怪しくなんかありません。恋のお手伝いをするキューピッ魔法使いです」

从 ゚∀从「疑うなって方が無理あるよな」

( ・∀・)「そんなことはありません。僕はあなたの味方です」

从 ゚∀从「……」

信用しろという方が無理のある男が、目の前にいる
味方というのも意味が解らない

148 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:10:18 ID:Ni2PGT/s0

( ・∀・)「ところで」

ひょい と身を引いた男は、道化じみた仕草で姿勢を正し、にっこりと微笑んだ

( ・∀・)「貴方の認識で、『恋愛』とはなんですか?」

从 ゚∀从「……はぁ?」

( ・∀・)「いいから」

何を求めているのかはわからないが、理解してもらう気も更々ない
極端な持論をぶつけて話を終わりにしてしまおうと思った

从 ゚∀从「……所有欲と独占欲と嫉妬と羨望と情欲と下心」

( ・∀・)「それが恋する乙女の回答ですか」

从 ゚∀从「うっせーよ」

149 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:10:39 ID:Ni2PGT/s0

( ・∀・)「では、貴方の意見を肯定するところから始めましょう」

从;゚∀从「肯定すんのか」

いよいよ意味が解らない
なんなんだこいつ
何しに来たんだこいつ

( ・∀・)「では、『恋』と『愛』 の違いは、なんですか?」

从 ゚∀从「恋は片道で、愛は両側通行だろ」

( ・∀・)「ふぅむ……ではまず、『愛』を説いてみるとしましょうか」

男はにたり と笑って、大げさに上半身ごと傾げて見せた

150 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:11:59 ID:Ni2PGT/s0

( ・∀・)「愛にも種類があります。気になる異性に向けるものだけではありません。
     キリストの概念で簡単に例えてみましょう。
     『アガペー』 これはキリスト教での一般的な愛で『見返りを求めない、愛』です。
     『ストルゲー』 『従う愛・尊敬を含む愛』 親子や師弟関係の間などにある愛のことです。
     『フィーリア』 友愛のことです。
      そして『エロス』  肉体的な、あるいは自分本位の愛。そして『見返りを求める愛』もこれにあたります。」

从;゚∀从「……」

( ・∀・)「さて、恋愛の『愛』とは何か……  『エロス』にあたります。異性間の『愛』であり、貴方の概念で言う 情欲と下心。
     では、恋とは?これは僕の持論ですが、恋とは、貴方で言う『所有欲と独占欲と羨望』
     相手に対する尊敬・羨望(憧れ)、それを手に入れたいと思う『物欲』 これが恋だと思っています」

宗教観念の話か、哲学なのか  正直ちんぷんかんぷんだが、とりあえず丸呑みにしておく
後でググってみよう
……しかし

从;゚∀从「極論だなぁ」

( ・∀・)「貴方が捻くれた持論を提示してきたからですよ」

151 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:13:22 ID:Ni2PGT/s0

( ・∀・)「さて、散々脱線してきたわけですが」

男は顔の横で、また道化じみた仕草で 人差し指でくるくるっと円を描く

从 ゚∀从「?」

その指をピンと立て、一度小さく振った
漫画なんかで出て来る、女の子が何かをキメ顔で言う時のような仕草だ
正直 目障り

( ・∀・)「あなたが長岡先輩に抱いている気持ちは、何ですか?」

( ・∀・)「アガペー? ストルゲー? それとも、エロス?」

そして意味の解らないことを言い出す
さっきの簡易説明でそれらを把握しろというのは無理のある話で、あたし自身 こいつの話を解釈しきれていなかった

152 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:14:22 ID:Ni2PGT/s0

从;゚∀从「しっ、知るかよ!!」

故に、まともな反論が咄嗟には思いつかない

( ・∀-)「一般的な色恋沙汰は、『エロス』に分類されますけどね」

从#゚∀从「あたしの先輩に対する気持ちは『尊敬』だ!肉体的なものは求めてない!!」

( ・∀・)「ほぉ……
      さて、PN.MAD-Hちゃんよりお便りです」

男は右手をひらりと翻し、一枚のはがきを取り出した
待て、何処から出した

( ´・∀-)「あたしはそこまで純情な乙女じゃない
      一人身の先輩が大学へ行ったら、どんな恋愛生活をするのか わからないわけがない
      だがそれを考えるのは不快だった
      知っている この感情が嫉妬であることくらい
      見たこともない まだ何も起きていない しかし、いずれ先輩の隣を歩く 誰か が、妬ましくてならない
      今目の前がどす黒い何かで染まるくらい 憎くてたまらな……」

从;゚∀从「待っ!待!!なんなんだお前!意味わかんねぇ!!」

顔芸を交えつつ読み上げられるそれは、あたしの 口にしたことのない葛藤の一部だった

153 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:15:09 ID:Ni2PGT/s0
勢いでソファから立ち上がったあたしを、ニコ面の男が宥める

( ・∀・)「まぁま、落ち着きなさい。ココアに魔法でもかけてあげましょうか?」

从 ゚∀从「黙れ お前なんか嫌いだ」

( ・∀・)「結構です。貴方の好意は先輩にだけ向かえばいい」

从 ゚∀从「そういう好き嫌いじゃねぇ」

( ・∀・)「はいはい」

この男、嫌いだ
徹底的に嫌いな部類だ
もう帰ろう 早く帰ろう
…………どうやって帰るんだ?

154 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:15:44 ID:Ni2PGT/s0

从 ゚∀从「帰る」

( ・∀・)「困ります。貴方の恋を成就させるのが、僕の仕事ですから」

从 ゚∀从「お前の事情なんか知るか 帰せ」

( ・∀・)「ううん……怒らせてしまいましたね
      でも駄目です。僕にもやらなきゃいけないことがある」

从#゚∀从「だから知るかってー ―――」

( ・∀・)「仕方ない。貴方には特別に、これを差し上げましょう」

男がまた何処からともなく取り出したのは、装飾を施された小さな砂時計
もう何処から出したかなんて気にしない
気にするべきは砂時計
砂は 下から上に上がっていった

男はあたしの手を取り、ちょんと砂時計を乗せた

( ・∀・)「ちゃらーん モララーの砂時計―♪」

155 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:16:04 ID:Ni2PGT/s0

なんの捻りもない名前の砂時計を見つめる
砂は重力を無視し、さらさらと上に上がっていく

从 ゚∀从「……これ、は?」

( ・∀・)「僕の自信作です。さかさま砂時計
      砂が戻っているでしょう?これ今、時間を戻しているのです」

从 ゚∀从「時間を、戻す……?」

( ・∀・)「はい。この砂が戻りきれば、時間は卒業式の日まで戻ります。
      僕はその時間に貴方を落として、仕事は終わり。あとは貴方次第です」

从;゚∀从「いきなり意味わかんねーよ。なんであたしが卒業式の日まで……」

( ^∀^)「なんだかんだ屁理屈並べてきましたけど、この方が手っ取り早いなと思ったので」

男の顔が変化する
本当に気持ち悪いくらいも笑みで、あたしに砂時計を押し付けた

156 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:16:26 ID:Ni2PGT/s0

( ・∀・)「砂も戻りきったようですし、いきましょうか」

男があたしの襟首を掴みあげる
え いきなり何この扱い

( ・∀・)「卒業式 これを逃したら次はないですからね。頑張ってくださいよ?」

从;゚∀从「意味わかんねーよ!!離せ!!」

( ・∀・)「良い情報をあげます。忘れないでください?
      貴方は一人じゃない。一人にはならない。何故なら……―――」

囁かれた言葉を最後に、あたしは暗い何処かへ放り投げられた

157 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:17:06 ID:Ni2PGT/s0

***

三月某日       ― 卒業式 ―


从’―’从「ハインちゃんおはよぉ〜」

从 -∀从「んあ?渡辺か おはよう」

从’―’从「あれれ〜?ハインちゃん元気ないよぉ〜?」

从 ゚∀从「なーんか長い夢見てたみたいでさ、頭が重いんだよ」

从’―’从「どんな夢だったのぉ?」

从 ゚∀从「あんま覚えてねーんだよなぁ……
     ニヤけ面の自称魔法使い(笑)がなんか哲学垂れ流してた」

从’―’从「なにそれこわいwwww」

158 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:17:49 ID:Ni2PGT/s0

卒業式のイベントは、式典ではない
放課後、各部の部員は卒業生を連れて部室や活動場所へ集まる
そこで先輩達の進路や意気込みを聞き、みんなで応援する
全員からのメッセージを色紙に書き集めて、先輩達に贈る
文化部では、部の特色を活かした作品なんかを送るところもあるらしい

バスケ部が集まったのは、体育館だった
先輩の中には、編み込みや刈り込みなど 卒業式の為にハジケた頭髪をした者もいた
勿論説教は済んでいるらしい

みんなそわそわしている
暗黙の了解で、最後の部会が終わるまではボタンや花などを強請ってはいけないことになっているからだ
そしてあたし自身も、内心では落ち着きを欠いていた

从 ゚∀从(長岡先輩……)

先輩はまだ来ていない
呼びに行ったツーと渡辺も、まだ戻っていない

159 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:18:10 ID:Ni2PGT/s0

( ゚∀゚)「おまたせー みんな揃ってんなぁww」

(*゚∀゚)「お待たせしましたー!!」

体育館に飛び込んできた長岡兄妹
遅れて渡辺が入ってきた

从’―’从「遅くなりました〜」

从 ゚∀从「おせーぞ渡辺ww」

从’―’从「だって長岡先輩が囲まれてたんだもぉん」

( ゚∀゚)「俺ってモテモテだからよぉwwww」

(,,゚Д゚)「モテる男は辛ぇな」

(*゚∀゚)「そのわりに兄貴彼女いないけどなーwwww」

(;゚∀゚)「ツーてめっ!」

160 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:18:32 ID:Ni2PGT/s0

囲まれていたことになにやらふつふつと感じたものはあったが、無事到着し、彼女もいないという情報に安堵してしまう
我ながら嫌な性格だ

从 ゚∀从「んじゃ、一同せいれーつ!!」


新しい部長として、場を仕切る
全員がそろうのは、これで最後だ

161 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:18:56 ID:Ni2PGT/s0

例年 男バスの卒業生には男バスから、女バスの卒業生には女バスから 色紙を渡すのが通例だ
しかし今年は、長岡先輩を始め男バスの多くが、女バスから受け取りたいと駄々をこねた

( ゚∀゚)「ほぼ一緒に活動してきたんだ ヤローから受け取るより可愛い女バスの後輩から頬赤らめて渡してほしいだろ!!」

(;,,゚Д゚)「いや、おい……」
  _
( ゚∀゚)「いーよなぁギコは!彼女はマネージャーなんだからよっ!!」

(;;,,゚Д゚)「てめっ!」

(*゚―゚)「あはははは」

( ゚∀゚)「そーゆーわけで、ほらっ!交代交代!!」

(´・ω・`)「先輩に色紙渡すとき、さりげなくお手て握ってあげる予定だったのに」

(;゚∀゚)「お前は冗談にならんからマジやめろ」

162 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:19:57 ID:Ni2PGT/s0

( ゚∀゚)「はいはいチェーンジ!んでもってちょうだーい!!」

長岡先輩の独断で決まった交換会
男バス新部長のショボンから、色紙を受け取った
そしてその相手は当然…………



从 ゚∀从「はい、先輩」

(;゚∀゚)「……え?」



そんな意表を突かれた顔すんなよ

163 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:20:28 ID:Ni2PGT/s0

从 ゚∀从「失礼な先輩ですね
忘れましたか?部長には、新しい部長からって決まってたんですよ?」

(;゚∀゚)「……まじか…ああぁぁぁ…………」

从 ゚∀从「どんだけ落ち込むんですか」

(;゚∀゚)「いやそういうわけじゃ…いやもうそういう意味でいいや ほらよ」

投げやりに先輩が寄越してきたのは、卒業生が胸に飾る真っ赤なカーネーション

从 ゚∀从「は?」

( ゚∀゚)「だから、やるっつってんだよ。いいから受け取れ」

从 ゚∀从「あ……はい…ありがとう、ございます」

何故か照れくさそうな先輩
乙女フィルターを外せば、きっとうざったそうに見えるのだろう

164 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:21:06 ID:Ni2PGT/s0

解散後、その場に残る者と、そうでない者が居て、あたしは後者の予定だった
渡辺に、体育館裏へ連れて行かれるまでは

从;゚∀从「なっ、なんだ?早速部長いびりか?」

从’―’从「ハインちゃん……」

从^―^从「頑張ってね☆」

建物の角から、遠心力をつけて放り投げられた

从;゚∀从そ 「はぁ!?」

建物の角に消えていく渡辺 その隣に並ぶツーと




タキシードを着たニヤけ面

165 ◆zynqho4iRI:2011/04/16(土) 20:21:37 ID:Ni2PGT/s0

あれは誰だ
私は知っている
あいつはなんだ
夢に出てきた魔法使い
なんで此処にいる


从 ゚∀从


( ^∀^)『なんだかんだ屁理屈並べてきましたけど、この方が手っ取り早いなと思ったので』


あんにゃろおぉぉぉぉ!!!!
ふざけんな ふざけんな マジ後でブッコロ…………


「うおぁっ!!」




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