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('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです

1以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/16(水) 23:48:02 ID:cTbRlghg0
避難所の皆様、初めまして。このスレッドは元々vipに投下していたのですが、設定ミスや誤変換を修正するために
こちらで改正版を投下させていただくことに決めました。
各まとめ様には大変ご迷惑をお掛けする事になりましたがよろしくお願いします。

また今回の東日本大震災で被災された全ての方々に、心から御見舞い申し上げます。
今回、改訂ということでまとめ様に影響があるため、早めに投下させてもらいますが
2話までの投下が終わりましたら、次話の投下はしばらく自粛させていただきます。

----俺の財布から飛び立った番いの鶴が少しでも皆様のお役に立ちますように----

76再開します:2011/03/17(木) 17:59:43 ID:spErNWocO
【ハンター】

●('A`) ドクオ=ウェイツー
人間
26歳 【称号:???】
所属猟団:無所属
使用武器:???(双剣)
防具:???
現在地:ユクモ村


【オトモ】

●(*゚∀゚) ツー
獣人族(アイルー)
?歳 【称号:???】
使用武器:【旗本】ネコ合戦旗(剣斧)
兜:旗本ネコ【陣笠】覇
鎧:旗本ネコ【胴当て】覇現在地:ユクモ村

77以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:01:16 ID:spErNWocO

伝説というのは、その地域の特色を推し量る上で、このうえない物差しとなる。

その地域に根付いた文化、信仰によって形成された伝説。

例えば、ドンドルマにはこの様な伝説がある。

曰く、海を渡る山。

曰く、全てを呑む山。

最古龍と呼ばれる竜の記述。この記述は、実に的確に最古龍を表した言葉である。
古龍観測所に残されていた記録は、これだけだった。この事実から、如何に最古龍が謎に包まれているのかが、推察出来るだろう。


そして、この地【ユクモ】にもこのような伝説が存在する。

78以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:02:07 ID:spErNWocO

狩人達よ、喜ぼう
この出会いに歓喜しよう
稲光が辺りを照らし
例えその身が焼け落ちようとも
偉大な瞬間に立ち会えた
           それこそが最上の喜びである

―――とある狩人の手記 作者不明―――

79以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:04:08 ID:spErNWocO

賑やかな祭り囃子に、誰もが心躍らせる。辺りを見渡すと、アイルーやメラルーのお面を被った子供達がはしゃぎ回っている。

('A`)「どこでも、子供達は変わらないな」

ドンドルマにも祭りはあった。

【狩人ノ宴】と言われるその祭りをドクオは思い出していた。

子供達は、ここぞとばかりに走り回り
大人達は、それを暖かい目で見守っている。

急に、鼻を刺激するような独特な匂いを感じ取った。    それは、温泉地であるユクモ特有の硫黄臭だった。

80以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:04:51 ID:spErNWocO
(*゚∀゚)「あんた様、あっちにユクモ自慢の温泉群があるニャー」

ツーは、短い尻尾を振って興奮した様子でドクオに話しかける。

('A`)「温泉はギルドマスターに挨拶してからだぞ。もう少し我慢してくれ」

(*゚∀゚)「……ニャー、わかってるニャ。ユクモギルドはすぐそこだニャ!」

駆け出すツーにドクオは溜め息を吐く。

('A`)「……まったく」


ユクモ村のギルドは、変わった佇まいをしていた。 傍から見れば、銭湯にしか見えない。

ドンドルマのギルドと比べると、大きさだけでもかなりの違いがある。

(*゚∀゚)「ニャー!帰ったニャー!!」

元気一杯のツーの挨拶に祭りの進行で、てんてこ舞いしていたハンターやオトモ達が、手を止めて『おかえりニャー』や『遅かったのね』等と挨拶を返した。

81以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:05:20 ID:spErNWocO
('A`)「………」

ドクオは、想像以上に騒がしいギルドに目も向けず
ギルドの端の、とある場所に向かって歩いた。

その周辺には大量の酒ビンが転がっており、足の踏み場もない。

そしてその中心で寝転がる一人の竜人族。

('A`)「もし……」

/ ,' 3「うぃー、なんじゃいなー」

('A`)「ユクモのギルドマスターとお見受けしましたが、相違ありませんか?」

竜人族とは、人間より遥かに高い知識と寿命を持ち、アイルー達とはまた違った進化をした獣人族である。

ふぅむ、と竜人族の老人は顎髭を撫でながら男を観察する。

覇気のない目、細い手足、一見すれば、誰もこの男を狩人だとは思わないであろう。

しかし、竜人の目は誤魔化せない。

最低限まで絞られた身体。必要な箇所にしか付けられていない筋肉。

なるほど、と呟いた。

82以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:05:57 ID:spErNWocO
/ ,' 3「うぃー、よう来たのぉ、ドンドルマの英雄様よぉー」

('A`)「………」

気が付けば、あれだけ騒がしかったギルドは静まり返っていた。

見たことの無い風貌の男。一目でこの辺りの人間ではないと分かる。

そんな男が、自分達の主であるマスターと話している。
自然と二人の会話に、耳を傾けていた。

83以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:07:15 ID:spErNWocO
('A`)「……失礼ですが、俺は英雄などではありません」

/ ,' 3「ふぉほほ、そう謙遜召させるなー。ドンドルマのマスターとは義兄弟での。   チミの噂は耳にタコが出来るほど聞かされておるからのぉー」

('A`)「……あのクソじじいか」

ドクオは、眉間を押さえて呻く。しかし、その顔に嫌悪感はない。

『さて』、その一言で周囲を含む空気が一変した。

/ ,' 3「ドンドルマの英雄様が、こんなちっぽけなギルドになんの様かいな」

これが竜人の威圧感。

何百、何千という悠久の時を生きる竜人にしか醸し出せぬ空気。

しかし、それをドクオは軽く受け流す。

('A`)「まぁ、少し野暮用がありましてね。    しかし旅の途中で用意していた路銭も底をついて、今では明日の陽を見るのもままならぬ状況」

/ ,' 3「うぃー、そうそう回りくどい言い方をしなさんな。言えば良いじゃないか。『狩人』として雇ってほしい、となぁー」

やはり竜人の知能は、ヒトの及ぶところでは無かった。

全て、何もかも見通されている事に驚きを感じながらも、ドクオは平静を装って返す。

('A`)「奇遇ですね。ちょうど俺もそう言おうと思っていたんです」

84以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:07:56 ID:spErNWocO
ふぉほほ、と奇妙な笑い声をあげる竜人は

/ ,' 3「良いじゃろう。実力は折り紙付き、断る理由もなかろう。    優先的に上位の依頼を回す、それでも良いかの?」

と言った。

('A`)「是非もない」

/ ,' 3「ふぉほほ、ユクモ村へようこそ。英雄様」

それをお互いの了承と受け取り、ドクオは背を向けようとした。

空気が緩んだ、その瞬間だった。

('A`)「!!」

背中に当てられた瓢箪。これ以上緊縛する事の無いと思われた雰囲気が、まだ上昇した。

85以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:08:32 ID:spErNWocO
「ふぉほほ。そうそう、一つ聞き忘れておったわ」

「先程、数匹のジャギィとジャギノス。そして繁殖期に入ったアオアシラが、狩人らしき人物と交戦していたという連絡がギルドに入った。    なんというかのぉ、ギルド直轄地でギルドに所属していないハンターがモンスターを狩れば、それは“密猟”なんじゃよ」

('A`)「………」

ドクオは答えない。

それはドクオも重々承知していた、古来から続く狩人のしきたりだからだ。

見れば、今まで静観を決めていたギルドナイト達が各々の武器を構え、ドクオに向けて突き出していた。

('A`)「……なるほど」

/ ,' 3「余り手荒な事はしたくなかったんじゃがのぉー。しかし、その密猟を行ったのがお主だったら……」








/ ,' 3「儂はのぉ、英雄様。チミを拘束せねばならんのじゃ」

86以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:09:15 ID:spErNWocO
これを見ていたギルドのオトモ、ツーは堪らず飛び出した。

(;*゚∀゚)「じじい!!どうしてこんな真似をするのニャー!?」

/ ,' 3「ツー、これは護らねばならぬしきたりなんじゃ。これには如何に優れた者であろうと、如何に権力を持った者であろうとも逆らってはならぬ」

ギルドには、唯一絶対の掟がある。

『ギルドの依頼外で狩猟をしてはならない』

これは単独で、無謀な狩りを行おうとする馬鹿者を守る為の物でもあり

また同時に、ハンターによる乱獲からモンスターを守る為の物でもある。

('A`)「……良い、ツー。下がっていてくれ」

(;*゚∀゚)「ニャッ!?でも……」

大丈夫だから、とドクオは安心させるようにツーの頭を撫でた。

('A`)「マスター」

/ ,' 3「………」

('A`)「その目撃者が見た男は、間違いなく俺だ。それに対して言い訳するつもりは無い」

静寂の中、ドクオの声が淡々と紡がれる。

87以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:09:55 ID:spErNWocO
('A`)「しかし、ジャギィ達を討伐したのはこのオトモだ。俺じゃない」

/ ,' 3「……ほぉ。間違いないのか、ツー」

(*゚∀゚)「そうだニャー!オレっちが狩ったのニャー!!!」

('A`)「それに、アオアシラだったか?あれと戦ったのは確かに俺だが、討伐してはいない。
撃退しただけだ」

『嘘だッ!!!繁殖期に入ったアオアシラを討伐しないで退けるなんて!!』

大剣を構えていた青年が、叫んだ。
ギルドマスターはそれを目だけで制す。

しかし、この青年が言うのも最もだった。繁殖期に入ったモンスターは退く事をしない。したがらない。   もしそのままハンターに後を付けられ、巣にまで来られてしまえば、種の全滅すらあり得るからだ。

/ ,' 3「ツー、本当かのぉ?」

(*゚∀゚)「……確かに討伐してないニャー。ドクオと暫く戦ってから、足を引きずりながら北に逃げて行ったニャー」

ふぉほほ、とまたギルドマスターは笑った。

/ ,' 3「相分かった!戟を収めよ、子供達よ!!」

その言葉に、ツーは溜め息を吐いた。

88以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:10:47 ID:spErNWocO
/ ,' 3「……済まなかったのぉ、チミ。儂の勘違いだったようだのぉ」

('A`)「いや、こちらこそ申し訳ない。これは一番最初に俺から伝えるべき事でした」

大剣や太刀を向けられても、この男は全く顔色を変えなかった。

/ ,' 3(……やはり、この小僧。思った以上に図太い)

('A`)「じゃあ今度こそ失礼させて頂く。ツーとユクモの湯に浸かる約束もあるので」

何が嬉しかったのか、ドクオには分からなかったが。マスターは、それを聞くと盛大に笑いだした。

/ ,' 3「ふぉほほ、ツーとか?それはそれは、なんと喜ばしい事かな」

('A`)「……?」

ひとしきり笑った後、一度咳払いをして場を取り直した。

/ ,' 3「失礼したのぉー、少し嬉しかったのでのぉー」

('A`)「……はぁ」

/ ,' 3「チミは気にする必要の無いことじゃ。一人に案内をさせるから、チミは先に温泉で待ってるといいぞい。   ツー、ちゃんと報告していきなさい。ドクオくんとの湯浴みはそれからじゃ」

ニャー、と膨れっ面をするツー。

89以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:12:05 ID:spErNWocO
(*゚∀゚)「ニャー、仕方ないニャー。ドクオ、先に行ってて欲しいニャー。後で追いかけるニャッ!」

分かった、とだけ呟いてドクオはギルドを退出しようとする。

/ ,' 3「そうじゃ、チミ。もう一つ言い忘れておったわい」

その言葉にドクオは再び足を止める。

/ ,' 3「儂の名は、スカルチノフ。スカルチノフ=アラマキじゃ。ユクモの地を司る、ギルドマスター」

ドクオは、身体を返して真っ直ぐギルドマスター、スカルチノフを見た。

/ ,' 3「良い狩りを……」


('A`)「有り難く」

ドクオが歩く度に道が出来る。扉の手前にさしかかった時、今度はドクオがスカルチノフに言った、

('A`)「そうそう、ただの威嚇にしても弾は込めておいた方が良いと思いますよ。
大人しく引き下がる奴ばかりでは無いですからね」


/ ,' 3「………」


今度こそ、ドクオは背を向けギルドを出た。

90以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:13:29 ID:spErNWocO
『良いのですか?あの人を狩人として雇って』

/ ,' 3「ふぉほほ、良いに決まっとるじゃろうがぁ。チミには分からんだろうがなぁー」

『確かに。私には、あの男が優れた狩人に見えないです』

/ ,' 3「そういう次元にいる人間じゃないのじゃー。チミも覚えておくと良いのぉー」

『はい、マスター』

あの青年は、自分の瓢箪に弾が込められていないのを一瞬で見抜いた。

いや、恐らくあれは嗅ぎ取ったのだろう。
ボウガンを構えれば、微かに漂うはずの火薬の匂い。その有無を一瞬で見抜き
そして、その判断に絶対の自信を持っていた。





/ ,' 3「……“G級”は伊達ではない、という事かの」

91以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:14:22 ID:spErNWocO
/ ,' 3「彼には、とりあえずこの地方に住む竜を当てごうてやれ」

そうじゃ、と思い出したようにスカルチノフは従者である狩人に尋ねた。

/ ,' 3「それと、あの娘の様子はどうかのぉ?」

『はっ、あの娘というのはツー様の事ですか?  それとも監視にやったデレの方ですか?』

ふぉほほ、とまた愉快そうに笑って言う。

/ ,' 3「デレの方じゃー、あの娘はあの娘で難儀な性格をしとるからのぉー。  彼がどのように対応するのか楽しみじゃてー」

『……私には考えの及ぶ範疇ではありません』

アラマキは、そういって顔を顰める従者を見て人懐っこそうな笑顔を見せる。

/ ,' 3「狩りは、単純な物ではない。強者=勝者にはならんのじゃ。
如何に聡明な狩人であろうと、一人で出来る事には限界がある。   さぁ、どう立ち回る、英雄様よぉ」

それだけ言うと、また笑って手にしていた盃を一気に傾けた。

92以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:15:27 ID:spErNWocO

ドクオは困惑していた。
確かに、アラマキは案内を付けると言った。
しかし、自分の三歩後ろからついてくる影。

ζ(゚ー゚*ζ「………」

あれはもう案内ではなく尾行、もしくはそれに準ずる何か、ではないだろうか。

しかし、特に何も言う様子がないのでドクオも何も言わない。
温泉の場所は、ツーに教えてもらっていたので、特に迷う事もない。

道順を覚えるのも、狩猟生活で培われる技能の一つだ。

何も喋らない案内人は黙って自分の後ろを付いてくる。

('A`)(いつまで付いてくるんだろうか)

不意に頭に衝撃が走る。

(*゚∀゚)「どっくおー!!!!!」

発生源はオトモアイルー、ツーだった。

そしてさも当然のように、ドクオの頭に乗っかる。  ツーのゆったりとリラックスした顔を見るに、お気に入りの場所になったのだろう。

(*ー∀ー)ノホホーン

93以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:16:22 ID:spErNWocO

しかし、この行動に周辺にいた村人が驚きの声をあげる。

『おい!あのツー様が人に懐いているぞ!』

『なんと!?しかし、見たことの無い顔じゃな』

周囲の喧騒に、驚くドクオ。
この様子のどこが珍しいのだろうか、と首を傾げる。しかし、当のツーは

(*ー∀ー)「気にしなくていい良いニャー」と、周囲の反応もどこ吹く風と、ドクオの髪を弄って遊んでいる。

ユクモの温泉には不思議な力がある。 これは、ドンドルマ地方特有の『ネコ飯』と似ている部分がある。  狩人にもたらす、不思議な効能。

入った後は身体が軽く感じ、いつもより長く、そして早く、狩場を走る事が出来る。

この温泉の湯こそが、ユクモにギルドが作られた由縁であり、始まりと言える。

94以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:17:20 ID:spErNWocO

次の日、一夜を銭湯に併設されていた宿場で過ごしたドクオは、ギルドに向かった。

朝一番で、依頼したいクエストがあるとの連絡を受けたのだ。

('A`)「昨日、ギルドに所属願いを出していたドクオなんだが」

ミセ*゚ー゚)リ「はい、連絡を貰っていますよ。ギルドカードをお渡しするので少々お待ち下さいねっ!」

クセっ気のある髪をした、ハキハキとした女性が応対してくれた。

ミセ;*゚ー゚)リ「あれ?なんで?どうして……」

しかし、何かトラブルがあったようだ。
ギルドカードに何かしらの不具合があったのだろうか。

ミセ;*゚ー゚)リ「すいません!手違いで、ドクオさんのHRが6になっているんですよ!」

HRというのは、ギルドに所属するハンターの力量を表す、一つの物差しだ。

1〜6までの段階があり、小型モンスターや採集などのクエストを扱うHR1、HR2。

大量の小型モンスター、中型モンスターを相手にするHR3。

中型モンスター、時には飛竜種の狩猟の依頼を受けるHR4。

一般的にHRを一つ上げるには三年程掛かる、と言われている。 それに加え、ある程度の数のクエストをこなした実績。そしてギルドから依頼される緊急クエストを成功させて初めて昇級出来るのである。

95以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:18:03 ID:spErNWocO
それがHR6になっているのだ。

初めてギルドカードを作った新米ハンターがHR6という事は有り得ない。

普通は。

('A`)「……竜人ってのは皆こうなのか」

思い浮べるのは二人の竜人。

('A`)「……良い、多分それであっていると思う。ありがとう」

ミセ;*゚ー゚)リ「えっ、あっ、本当ですか!?
じゃあ、これを……」

そのままギルドからの依頼が、貼られている掲示板に向かう。

ハチミツの採集や、特産キノコの納品など、多種多様な依頼が貼られている。

('A`)「お、こいつか」

HR2以上〜、と書かれた依頼票を引きちぎる。 そこには

『腕利きの狩人を募集。【毒怪竜】ギギネブラの狩猟』

と書かれていた。

('A`)「……なるほど。もうこれはマスターからの嫌がらせとしか思えないな」

いきなりの飛竜種。それも一度も目にしたことが無い名前だ。 ギギネブラ、狩人大全で調べないとな、とドクオは次の行動の指針を立てる。

96以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:18:44 ID:spErNWocO

『おい、テメェ!!その依頼はオレ達が先に受けたもんだぞ!ゴルァ』

('A`)「ん?」

(,,゚Д゚)「……テメェは、昨日うちのじじいとやりあってた野郎だな」

依頼被りか、とドクオは溜め息を吐く。 人の手によって依頼の受注が行われるギルドでは、依頼被りは珍しい事ではない。

しかし、難しいのはそれの解決。

狩人とは誇り高くあらねばならない。
村民を護る盾として、常に高みを目指す生き物だ。

だから退けなくなる。

お互いが譲らず、限りなく殺し合いに近い喧嘩になる事も多々あるのだ。


(,,゚Д゚)「勝負だゴルァ!!」


だから、その為にギルドは一つのルールを設けた。

【腕相撲】

腕相撲とは、ただ単純に腕力を競うだけの物にあらず。
筋力、関節の力、そしてお互いの駆け引きを競う物である。

('A`)「……良いだろう」

97以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:19:27 ID:spErNWocO
まだ祭りの興奮醒めやらぬのか、ギルドを出て広場に行くと沢山の人が集まっていた。

ユクモの祭りというのは、何日も通して行われる。その間は昼も夜も関係ない。真っ昼間から酒を飲み、踊りだすような人もいる。

祭りの祭壇の前に置かれた、一脚の机。

(,,゚Д゚)「公衆の面前で、恥を晒す覚悟は出来ているのか?」

捲られた袖から見える男の腕は、いかにも狩人らしい屈強な物だ。

('A`)「ほぉ、なかなか良い鍛え方をしているな。   服の上からでも良く分かる」

周囲が騒めきだした。

『なんだ!なんだ!!腕相撲かっ!?』

『新米ハンターと【荒鷲団】のギコ様がやり合うらしいぞ!』

('A`)「……ふぅ」

(,,゚Д゚)「何してるんだ、さっさと腕を出せ。それとも何か?   テメェ、怖じけづいたのか?」

いや、と小さくドクオは笑った。

('A`)「お前、大剣使いだな」

(,,゚Д゚)「!!」

98以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:20:15 ID:spErNWocO
大剣、人間の身の丈以上の大きさを持つ剣。
大剣で特筆されるのは、剣特有の切れ味ではなく、その重さ。

如何な狩人であろうとも、身体全体を使い力を込めねば振り回せない。

大剣は『断ち斬る』ではなく『捻斬る』。大剣の、その重さ故の威力。

ただ、常人がそれを振り回そうと思えば、逆に大剣に振り回される事になる。

いや、振り回す事すら出来ない。持ち上げる事も叶わないだろう。

それ程までに、『重い』のだ。

故に、均等に鍛え上げられたその腕の筋肉こそが【大剣使いである証】。

('A`)「さて、じゃあ始めようか」

ドクオの腕を見て、周りから失笑が漏れる。 対面に座るあの男、そいつの腕と比較すれば差は一目瞭然だった。

『あんな牛蒡のような腕で、ギコ様に勝てるものか』

『やっちまえー!ギコ様!!!』

(,,゚Д゚)「……」

無言で構える男。目はギラ付いていて、隆々とした筋肉は何時でも全力を発揮出来るように、筋が浮く程に力が込められている。

99以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:21:40 ID:spErNWocO

('A`)「ふぅ、周りも喧しいしさっさと終わらせよう。ほら、手首を出しな」

(,,゚Д゚)「!!!」

それはハンデだった。

(,,゚Д゚)「……ふざけやがって」

ドクオは手首を取ろうとしたのだが、男は迷わずドクオの手を払い掌を握ってきた。

('A`)「はぁ……。まぁ良い、じゃあ始めようか。   せめてお前から仕掛けて来い」

ドクオは周囲に聞こえぬ様に、呟く。

(,,゚Д゚)「テメェ……オレに気を遣ってるつもりか?」

もう言葉はいらなかった。お互いの顔が接触する程に近くで睨み合う。

(,,゚Д゚)「ぐぉ……!」

('A`)「……!」

ギコは力押しで、ドクオの腕を倒そうとする。  倒す、というよりも腕をへし折ろうとしている。

それをドクオは器用に肘の位置を変える事で受け流す。

100以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:23:06 ID:spErNWocO
(,,゚Д゚)「……テメェ、力を入れなきゃ勝てねぇぞ!」

('A`)「いや、どれ程の筋力があるのか興味があってな」

男の顔は真っ赤だった。一方ドクオの表情に変化は無い。

『嘘だろ!?腕相撲で負け無しのギコ様が押し切れてないぞ!』

('A`)「……なる程な。道理で腕っぷしに自信がある訳だ」

(#,,゚Д゚)「おう!オレの誇りだぞゴルァ!!」

('A`)「そうか、言うだけの事はあるな」

ギコの腕がミシミシと音を立てる。骨と骨を繋ぐ関節が軋む音。

('A`)「……俺も腕相撲に一家言あってな。お前ほど大したものじゃないが。    俺は『全戦勝敗つかず』なんだ」

(#,,゚Д゚)「!!   野郎、狙って引き分けにするつもりか!!」

ギコは、もう一度腕に全身の力を込める。  もう出し惜しみはしない。ドクオが勝敗を付けたがらないのなら、自分はただの一回に全力を込めれば良い。

(#,,゚Д゚)「グオォォォオオ!!!!」

(;'A`)「!?」

ドクオは、ここにきて初めて表情を引きつらせる。
やはり、今までのは全力ではなかった。

アオアシラと対面しても、一切表情を変えなかった男が、焦ったのだ。

101以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:23:42 ID:spErNWocO

('A`)「……!!」

一瞬、ドクオの身体が赤く光った。

(;,,゚Д゚)「……!?」

男の頭の中に大量に浮かぶ疑問符。
この赤く鈍い発光。
まさか、この男、全く本気を出していなかったのか。  自分の全身全霊を練り込んだ力に、ようやく本気を出す気になったというのか。

なんという規格外だ。

それで一気に気が抜けた。腕に力が入らなくなった。  ドクオも、それに気が付いたのか腕から少しずつ力を抜いていく。


('A`)「ふぅ」

(,, Д )「ハァ……ハァ……」

二人の腕は、どちらに傾く事もなく机の中心の定位置から少しも動いていなかった。

102以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:24:37 ID:spErNWocO

(;,,゚Д゚)「お前、まさか『うおぉぉおお!!!!!!!!』ん、なんだ?」

男の言葉に割り込んで歓声が上がった。

『なんて奴だ!アイツ、あのギコ様に引き分けやがったぞぉ!!!』

(,,゚Д゚)「……ったく、なんだってんだ。こいつら」

('A`)「ギルドがある村は大抵こんなもんだ。お祭り好きで、騒がしい、気持ちの良い人ばかりだ」

(,,゚Д゚)「……」

もう一度落ち着いて、ドクオの事を観察する。
見慣れぬ風貌、一目で、ユクモの出身でないと分かる。

活力のない目、こんな細い身体で自分を圧倒したというのか。

('A`)「……ドクオだ、これから宜しく頼む」

(,,゚Д゚)「ギコだ。ユクモギルド所属の猟団【荒鷲団】の首領を務めている。  お前は、この辺りの出身ではないのか?」

('A`)「あぁ、元々ドンドルマという地でハンターをしていたが   故あって昨日からこのユクモギルドに身を置かせて頂く事となった」

(,,゚Д゚)「そうか。ドンドルマから。  道理で見知った格好ではない訳だ」

気持ち良い男、だとドクオは思った。

103以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:25:36 ID:spErNWocO
先程のやりとり。自分にも礼を逸した所があった。

(,,゚Д゚)「このギルドの所属となったのなら、また共に狩りに出る事もあるだろう。  よろしく頼む」

手を差し出された。腕相撲の時とは違い、力よりも歓迎の暖かみを感じさせる。

('A`)「あぁ、良い狩りをしよう」

握手を交わした。

歓声が再び巻き起こる。

その歓声に掻き消されて、その後の二人のやりとりは誰にも聞き取れなかっただろう。

『さっきのはオレの負けだったぞゴルァ』

『……いや、俺も勝っちゃいないさ。あれは引き分けだったさ』

『……すまねぇ』

そして、周囲の人混みに紛れて見ていた二人。いや、一人と一匹がいた。

104以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:26:13 ID:spErNWocO

(;*゚∀゚)「相変わらずの無茶苦茶っぷりだニャー」

ζ(゚、゚*ζ「……凄い、あのギコさんと互角に渡り合うなんて」

(*゚∀゚)「ニャ、それで感想はどうだったかニャ?デレ」

デレと呼ばれた少女は、唇に手を当て少し間を取った。

ζ(゚、゚*ζ「……確かにあれなら足手まといになる事もないでしょうね」

そして、また別の所では

(;^ω^)「ちょっ、あの人、本当にギコさんと引き分けちゃったお!」

ξ゚⊿゚)ξ「全く、アイツ油断しすぎなのよ。最初から全力を出せば分からなかったと思うわ。   あんな細腕、私でもなんとかなったわ」

少し小太りで、柔和な表情をした青年と巻き毛で勝気そうな釣り目をした少女がいた。

(;^ω^)「マジかお?あのドクオって人に本気で勝てると思ってるのかお?」

ξ゚ー゚)ξ「ふんっ、勝てるに決まってるじゃない!!    ……私の代わりにブーンが」

( ^ω^)「完全に他人任せじゃねーか」

105以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:46:49 ID:spErNWocO
2―1はこれで終わりです。続いて2―2を投下します。これを投下してひとまずの区切りとさせてもらいます。

106以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:47:25 ID:spErNWocO

【間幕】


『マスター、彼は予定通り【毒怪竜】の討伐依頼を受注したようです』

/ ,' 3「ふぉほほ、それは何よりじゃ」

『しかしマスターも、お人が悪い。あれはギコが先に受注していたはずです。わざわざ揉めるように仕向けたとしか……』

老荘の男は、静かに片目を瞑った。

まるで、悪戯した子供が内緒にして欲しい、と合図するかの様に。

『……はぁ、やはりマスターの思惑でしたか』

/ ,' 3「はて?なんの事かのぉー」

『しかし、ギコと引き分けた事で、彼も村人や他の狩人達からある程度認められたようです』

ふぉほほ、それは重畳とアラマキは言う。

『では、私も依頼を受けたクエストがあるので失礼します』

そう言って従者は、静かに退出していった。

/ ,' 3「……引き分け、のぉ」

107以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:47:58 ID:spErNWocO
ハンターにとって“G”という称号は特別な意味を持つものである。  類い稀な才能と血の滲むような努力。それを以てして辿り着けない領域。

それが“G”を持つ意味である。


―――伝説の英雄 ロマネスク=フェイト―――

108以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:48:38 ID:spErNWocO

【毒怪竜】ギギネブラ

凍土に生息する飛竜種。目が退化しており、視覚ではなく温度で敵を追跡する。   形状はドンドルマ地方のフルフルの似通っているが、フルフルより少し扁平になっている。

骨格はティがレックスのように四足歩行。飛竜としては珍しく繁殖期が存在しない。

ギギネブラの生殖器官については、未だにはっきりとした事は分かっていない。。

頭部、腹部、尾に毒線を持っており腹の中にその毒を溜めておく袋を持っている。   その毒は、非常に強く、大型のモンスターでも一時間も待たずに意識混濁に陥る。

また怒りだすと変色し、肉質を変える。


凍土。何人の侵入を許さない極寒の土地。起伏に富んだ地面に、複雑に入り組んだ氷壁。

また、凍土にしか存在出来ない種も多く   ユクモギルドが管理する【渓流】【孤島】【水没林】等の比較的気候の安定した場所と比較すると

特殊な生態系を保っている。

109以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:49:33 ID:spErNWocO
AM7:30 Quest Start


(*゚∀゚)「ドクオー!ドクオー!ホットドリンクは飲んだかニャ??」

('A`)「あぁ」

ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさん!解毒薬はお持ちですか?」

('A`)「……あぁ」

凍土を歩く三つの影。  黒い忍装束のような防具を着た男と、オレンジ色のカボチャのようなファンシーな装備を身に付けた女性。

二人ともその上から、ケルビの皮で作られたギルド公認のコートを着ていた。

その二人の後ろから、一匹のオトモが付いていく。

ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんの装備って、もしかしてナルガグルガの装備ですか?」

('A`)「あぁ、そうだが」

ζ(゚、゚*ζ「すごーい。やっぱりドクオさんって腕の良いハンターなんですね。  迅竜の装備なんて、並のハンターが身に付けられる物じゃないですよ」

【迅竜】ナルガクルガの貴重な素材を大量に使ったドクオの装備。

手鋼、腕鋼、胴当てなどの金属部は、身体を守るのに必要な最低限の部位にしか使用されていない。  迅竜という飛竜の特性を極限までに高める為に、削られた装甲。

そこから生み出される、疾風迅雷のスピードこそが、この防具の強みだ。

110以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:50:36 ID:spErNWocO

ζ(゚ー゚*ζ「でも、私の知っているナルガクルガの防具とは、少し違いますね。ドンドルマでは、そのような形状が一般的なんですか?」

('A`)「いや、俺のが少し違うだけだ」

正確に言うと、ドクオが身につけているのはナルガX。ナルガクルガの中でも“特異種”と呼ばれた存在。“疾風迅雷”の素材を用いて作られたG級とう称号を持った狩人にしか身に付けられない逸品である。

ζ(゚ー゚*ζ「へー」

しかし、デレは気が付かない。それは何もおかしい事ではない。

ユクモ地方には、未だ“G級”に分類されるモンスターが確認されていないからだ。

(*゚∀゚)「見えたニャ!あの洞窟だニャ!!」

オトモであるツーが、指指した先には洞窟があった。

('A`)「洞窟、か。また厄介な所にいるんだな。ギギネブラって奴は」

洞窟を住みかにするモンスターは少なくない。  しかし、如何に経験豊富な狩人であろうと、それは常に危険を孕む場所であるのだ。

111以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:51:08 ID:spErNWocO

まず問題となるのが視覚。洞窟の中では昼でも夜でも関係ない。

ただ暗闇があるだけなのだ。だから狩人は洞窟で狩りをしたがらない。

それはモンスター達にとっても同じである。しかし、それでも奴らは同じ土俵に立たない。

人間より遥かに優れた触覚と、聴力を持ってすれば、暗闇で動く人間など、手に取るように分かるのだ。


('A`)「ツー、準備をしといとくれ。俺達も出来る限り入り口付近に誘き寄せて戦うが、万が一という事態もあるからな」

(*゚∀゚)「ニャ!お任せニャ!!」

ドクオは、ツーに何かを頼むとツーは地面に潜り二人から離れていった。

('A`)「さて、俺達はこれからキャンプを張るぞ。出来るだけ高い場所で、歩いて辿り着けない場所が良いんだが……その辺りは君の方が詳しいだろ。  俺は、少しギギネブラという奴を見てこようと思う」

ζ(゚ー゚*ζ「了解でーす、テントの設営は任せてください!   それと、これ私のギルドカードです。色々と書いてあるので目を通しておいて下さい」

('A`)「分かった。では三時間後にここでな」

ζ(゚ー゚*ζ「はい!」

112以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:51:38 ID:spErNWocO
【間幕】

『姫さま、困ります!ギルドに内緒で凍土に赴いただけでも私の首が飛ぶ程の蛮行だというのに……』

o川*゚ー゚)o「別に付いてきて欲しいとは言ってませんわ」

凍土の一番奥、秘境と呼ばれる場所に二つの人影があった。

二人の関係は主従。  勝手に飛び出していった自分の主を追い掛けた従者。

その時は、こんな事になるとは思いもしなかった。

確かに彼女は、束縛されていた。何をするにも、そこに彼女自身の意志は介在しない。

だからこの行動は理解できる。だが納得出来ない。

モンスターが数多く存在する凍土に、狩人の護衛も付けずに、全く戦闘に対して素人の女二人で行くなんて。

この御方の従者になってから、何度腹を括った事か。しかし、それでも付いていこうと思える何かが彼女にはあるのだ。

o川*゚ー゚)o「ごめんね、まさか本当にここまで付いてきてくれるとは思わなかったの」

『……まったく、お転婆な姫様です。もうすぐ食料も尽きます。そろそろ引き返しますからね』

o川*゚ー゚)o「……うん」

113以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:52:48 ID:spErNWocO

洞窟の中を進んでいくと、何かを引きずるような音が聞こえた。

('A`)「……近いな」

飛竜種独特の気配を感じる。空気が一気に重たくなっていた。

視界が効かない洞窟の中で氷壁を左手で伝い、右手にもった木の棒で地盤を確かめながら奥へと進んでいく。

('A`)「!!」

ドクオは音源から60mのところで足を止めた。

それは絶妙なポジションだった。 実際それより数メートル進めば、この先にいた敵は鋭く侵入者の気配を感じ取り、襲い掛かって来ただろう。

ドクオは背後に納めていた銀の剣を抜き、手にしていた木の棒に軽く擦りつけた。

それだけで燃え上がる木。

これは、以前フルフルと戦った時に試した方法だった。

視覚が衰えた飛竜種は、総じて『温度』と『動き』に敏感だった。

最初から火を付けて歩けば、敏感な飛竜に気付かれる恐れがある。

だからこそ、ぎりぎりのポジションで火を付ける必要があった。

火を点けた瞬間に【毒怪竜】ギギネブラが、こちらを見た。  しかしドクオは焦らず、松明を動かす事なくじっとギギネブラを観察する。

114以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:53:16 ID:spErNWocO

('A`)(……なんてこった、フルフルの親戚か?)

それ程までに酷似していた。
骨格を感じさせない、軟体の身体。 退化して目。そして何より形。

出来れば鳴き声も聞いてみたいが、流石にそこまで欲張るのも良くない。

ドクオは、静かに松明を地面に置き靴で何度か踏んだ。

それだけで、炎は簡単に消えてしまう。





('A`)「……また来るぜ」

115以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:53:44 ID:spErNWocO

ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさん。ギギネブラはどうでしたか?」

デレがキャンプを設営した場所は、ドクオの出した条件に当て嵌まる、氷壁に出来た割れ目を抜けた先にある小さなスペースだった。


確かにここなら大型モンスターは入って来れない。
狩人の基本に則った、場所だ。

('A`)「動きは見れなかったが体付きを見れば大体想像は付いた」

ζ(゚ー゚*ζ「そうですか。狩りは明日になりそうですか?」

狩人の狩猟は、幾日に渡って行われる。ターゲットの行動を見極め、機を待ち、準備をする。

だからこそキャンプの設営というのは、狩人に取って一番基本のスキルであり、一番重要なスキルである。

('A`)「ツーの仕事の出来によるな。アイツが準備出来ているのなら、明日にでも仕掛けてみよう」

ζ(゚ー゚*ζ「……分かりました。私もこの子の準備をしておきますね」

デレが手にしていた『弓』を撫でながら言う。

116以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:54:20 ID:spErNWocO

('A`)「それは……見たことない形状の弓だな。どのモンスターの素材を用いた弓なんだ?」

ζ(゚、゚*ζ「……これですかー?」

デレの雰囲気が変わったのをドクオは見逃さなかった。

ζ(゚、゚*ζ「これはフロギィリボルバーと言います。フロギィというのはジャギィによく似た鳥竜種で、毒を撒き散らすモンスターです」

('A`)「……ほぉ」


『そして、私の大好きなお祖母ちゃんを殺したモンスターでもあります』

凍土に風が吹いた。
もう身体は寒風に慣れたと思っていたが、何故か身体は少し震えた。

('A`)「ハンターを志したのは私怨か?」

ドクオの問いに、デレは首を振る。

ζ(゚、゚*ζ「いいえ、お祖母ちゃんが死んだのは私がハンターになった後ですから」

('A`)「少し話してくれないか。君が良ければで良いんだが」

ζ(゚ー゚*ζ「……良いですよ。どこにでもある、つまらない話ですけどね」

117以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:55:02 ID:spErNWocO

ユクモの源泉に程近い、村の外れ。そこに私の家はあります。

父はユクモ村で鍛冶職人をしていて、母は村一番の食堂を営んでいました。

両親は、初めての子供という事もあり私の事を大変可愛がってくれて  私は、お姫さまの様に育ちました。

そして私が三歳の時、妹が出来ました。いつも泣いてばっかりの困った子で、よく隣の家に住んでいた同い年の男の子に泣かされていました。

そんな妹を、甘やかしたがりな両親は放っておく訳もなく

次第に両親の愛情は、私から妹に移っていきました。  いえ、私に一心に注がれていた愛情が、妹と私に平等に分け与えられるようになったのです。

私は嫉妬しました。

私の様に愛される妹に、我慢が出来ませんでした。

お祖母ちゃんの家に1人で通いだしたのは、その頃からでした。

お祖母ちゃんは、優しかった。本当に優しかったんです。

私が行く日には、必ず大好きなオッタマケーキを作ってくれていて

朝から晩まで、いつも私と一緒に居てくれました。

練る前には、私を膝に抱き子守唄を歌ってくれて  私は、その唄を聞きながらお祖母ちゃんの膝の上で眠るのが大好きでした。

私がハンターになった事を報告しに行った時の、不安と喜びが入り交じったお祖母ちゃんの瞳を、私は今でもそれを忘れる事が出来ません。

118以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:55:52 ID:spErNWocO
('A`)「………」

ζ(゚ー゚*ζ「……あれは数十年に一度のアプトノス大移動の年でした。  その日、お祖母ちゃんは、孤島まで特産キノコを採りに行ったそうです」

勿論ギルドが侵入を制限しているエリアには入らずですよ、とデレは付け加えた。

ζ(゚、゚*ζ「だから事故だったんです。仕方なかったんです。アプトノスを追っていたフロギィの群れにお祖母ちゃんが出会ってしまったのも」

('A`)「………」

ζ(゚、゚*ζ「お祖母ちゃんが死んだ、という話を聞かされた私は、お祖母ちゃんの亡骸を見に行くより先に孤島に向かいました。

フロギィの毒に犯され、緑色に変色してしまったお祖母ちゃんを見るのも

啄まれてグチャグチャになった、優しいお祖母ちゃんの顔を見るのも   なにより―――」


『お祖母ちゃんを殺したフロギィが、生きているという事実が許せなかった』

119以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:56:27 ID:spErNWocO
('A`)「……なるほどな」

ζ(゚、゚*ζ「これは、そのフロギィとドスフロギィの素材を使った弓なんですよ。  この弓が折れるまで、私の復讐は終わらないのです」


だから私は死ねない。今は、まだ死ねないのだ。


モンスターと生死を賭けて戦う狩人達にとって、因縁というのは常に付き纏う。

仲間や、愛する人を失った者も少なくない。  そして大なり小なり、そういった者は、その想いをモンスターにぶつける。


('A`)「……そうか」

ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさん、何も言わないんですか?」

('A`)「俺は、そういうハンターを見てきたからな。その心境を乗り越えた者もいれば、そこで腐っちまった奴もいる」

120以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:56:56 ID:spErNWocO

デレはドクオの言葉に耳を傾けた。  ドクオは、あの狩人の聖地、ドンドルマのハンターだ。

だからこそ、その言葉には重みがある。そして確かな暖かさがあるのだ。

('A`)「お前が、この先どっちに転ぶのかは俺には分からないがな」

俺には、一つ心に決めた事があるんだ。

('A`)「『全ての事には意味がある』  お前が生まれた事には意味があり、狩人になった事にも意味がある。
そしてそれはお前の祖母にも言える事なんだ」

それだけ言うと、ドクオは恥ずかしそうに頬を掻いて横になった。

('A`)「何も保証する物はないが、まだまだお前には時間がある。悩む時間も、戦う時間も。それだけは俺が保証してやる」

背を向けて、寝袋に包まるドクオ。

その姿を見たデレは、同じように横になった。

121以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:57:31 ID:spErNWocO

(*゚∀゚)「大体二百くらいは集まったニャー!」

次の日、ツーが成果を報告する。

('A`)「一日でそれだけ集めたか。流石だな」

(*゚∀゚)「ニャー、もっと褒めて良いニャ!頭撫でても良いニャ!!」

('A`)「準備は出来たな。デレ、そっちも良いか?」

自らの得物を確認しながら、後ろで調合を行っていたデレに声を掛ける。

ζ(゚ー゚*ζ「はい、私も大丈夫です」

息を大きく吐いて、昂ぶる心を落ち着けた。

飛竜と相対する時は、いつもこうだ。いつまでも慣れない。

慣れてはいけないのだと、狩人の血が教えてくれている。


('A`)「……行くぞ」

122以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:58:13 ID:spErNWocO

事前の確認を済ませていたため、道順は完璧だった。それに加えて今回は最初から松明を持っている。

急ぎ足で昨日通った道を、駆ける。

('A`)「!!」

ζ(゚ー゚*;ζ「!!」

ドクオとデレの視界の端に捉えた灰色の影。  【毒怪竜】ギギネブラがそこにいた。

洞窟に入ってから結構な距離を走った。陽の光が入る場所で戦うのは厳しい、とドクオは一瞬で判断した。


('A`)「デレ、俺はこのまま突っ込んでいく。   お前はここからサポートを頼む。ツーは戦闘に参加するな。この松明を持って出来る限り走り回るんだ」

ζ(゚ー゚*;ζ「でっ、でもっ!それじゃドクオさんが孤立しちゃいます!!」

余りにドクオ頼みの作戦に、デレは抗議する。

123以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 18:58:53 ID:spErNWocO

('A`)「俺とお前の武器を勘案した結果の作戦だ。それにツーの持っている松明。あれは俺達の命を繋ぐ綱だ。お前は俺とツーのサポートを同時に行わなければならない」

ζ(゚ー゚*;ζ「でもっ」

(*゚∀゚)「よすのニャー、デレ。それが最適なのニャー」

ζ(゚ー゚*ζ「ツー様……」


ドクオは、デレを安心させるように微笑んだ。

―――大丈夫だ、と

それに

('A`)「……その弓、飾りじゃないんだろ?」

ζ(゚、゚*ζ「………!」


背に携えた双剣を引き抜き、爆発的な加速と共に、ドクオは駆け出す。先程までの駆け足とは比べ物にならないスピード。

遅れてツーも駆け出した。命の綱を口にくわえて。

124以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:00:00 ID:spErNWocO
ギギネブラも、勿論その動きを察知している。

飛竜は、まず吠える。その圧倒的存在感を示す為に。そして、その叫びは人間の許容範囲を大幅に越えている。

人間は、飛竜の声だけで動けなくなるのだ。

狩人と飛竜の戦い、最初に主導権を握るのは飛竜である。これは絶対的な自然の摂理だ。


だが飛竜が狩人の姿を確認し、脊椎から『叫べ』と命令するのに0.5秒。実行するのに2秒。計2.5秒。

それは、飛竜が先に吠えることが出来るという前提の上に成り立っている。

だから

その間に、一撃を加えられれば―――

Gyaaaaaaaaaaaaa

('A`)「よぉ、昨日ぶりだな」

単純な一撃、振り上げて振り下ろす、という単純な動作。
しかし、その一撃は余りにも重い。

口から出かけた、叫びは痛みと共に消えた。

125以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:02:27 ID:spErNWocO
ζ(゚ー゚*;ζ「……早い!!  なに、今の……」

ツーも少し遅れてドクオに追い付いた。

(*゚∀゚)「まったく、少しくらいこっちのペースに合わせてくれても良いのにニャー」

ギギネブラも不意の一撃から立ち直り、透かさず自分の感覚を最大限に研ぎ澄まして乱入者の数を確認する。

熱源は二つ。

そう判断したギギネブラは、自分の首を振った。ただそれだけ。

広範囲に及ぶ尻尾の凪ぎ払い。感触はなかった。

('A`)(やはりな。この攻撃は予測済みだ)

ドクオが、昨日確認していたのはギギネブラの身体の構造だ。

余りにフルフルと似通ったその身体から、伸縮性のある首や尾を生かした攻撃は予測の範疇だった。

まず、ドクオは尻尾を狙った。
理由は二つ。まず一つ目は「尻尾は飛竜の死角になる」から。

太刀や大剣、斬撃を繰り出す武器を持つ狩人はまず尻尾を狙う。

しかし、これは視覚の退化したギギネブラには通用しない。

そして二つ目の理由は『一番堅そう』だから。
ギギネブラの最硬の肉質を確認するためだ。

126以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:03:15 ID:spErNWocO

『キーン』と甲高い音が響く。

('A`)(やはり弾かれるか……)

一度バックステップをして、距離を取る。奇襲が通用するのはここまでだ、と悟ったからだ。

ギギネブラには、目も無ければ耳もない。しかし、確かに嗤った。

『飛竜である我々に人間風情が生意気だ』と。

ドクオは、周囲を確認する。ギギネブラの注意がドクオに向いている今、ツーの危険度はそこまで高くないだろう。

後ろにいるデレは見えないが、機を伺っているに違いない。

もう一度凪ぎ払われた首を、ドクオは身体を回転させて躱した。

瞬間、紫の靄が飛んできた。これが聞いていたギギネブラの猛毒か。

ドクオは落ち着いて、前方に回避行動をする事で、また躱した。

127以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:04:26 ID:spErNWocO

ζ(゚、゚*;ζ「……凄い、これが伝説に聞くGの実力」

ドクオは止まらない。常に位置を代えて立ち回っていた。

ギギネブラの前方にいたと思えば後方にいる。  左方にいると思えば右方にいた。

そんな蝿の様に動き回るドクオに対して、ギギネブラは全身を使って潰しにいく。

頭を、首を、尾を、毒を使って全力を持って潰しにいく。

飛竜と狩人との戦いは、長い。古来から続く狩る、狩られるの関係。

ギギネブラを構成する遺伝子の一つ一つが、命令するのだ。

『狩人は全力で潰せ』と。

('A`)「のろま、そんな遅い攻撃で俺を捉えられると思うな」

その攻撃を全て躱す狩人に、ギギネブラは苛立つ。

『何故当たらない』『お前より何倍もの大きさを持つ、私の攻撃が』

128以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:05:41 ID:spErNWocO

だから、ギギネブラは突っ込んだ。その身体を生かし、突っ込んだ。

それこそが、飛竜、牙獣、全ての種、共通の広範囲攻撃だ。

初めて見る行動パターンを、ドクオは注意深く観察する。

('A`)(脇下は……無理だな)

そう判断すると、ドクオは双剣を納刀し、大人しく走った。

飛竜の突進は、その巨体故に絶大な威力を誇るが  その重量故に途中で方向を変える事が出来ない。

ギギネブラの思惑は、ドクオの前に又空振りで終わる。

('A`)「さて、そろそろ良いか。もう覚えた」

この一言が合図。狩人から飛竜に対する宣戦布告。

まず、ドクオは一番厄介なギギネブラの声帯を潰そうと決める。

重要なのはタイミング。

129以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:07:38 ID:spErNWocO
ドクオはギギネブラの左後方に立つ。あえて攻撃はしない。ここに立った時、必ずギギネブラは尾を振り回して攻撃してくるからだ。

そして、それは狙い通りやってきた。  それに加えてもう一つ。ギギネブラは首、または尻尾を凪ぎ払う時、必ず左右両方に二回振るうのだ。

そこがポイント。

左から右に切り替わるタイミング。そこで、ドクオは金の剣を突き出した。

遠心力の付いていない左右の切り返しのタイミング。そこを狙う。

('A`)「その堅い皮膚、裏側まで堅いのかな?」

そしてその思惑は見事に的中する。
金色の剣で、尾を抑えられたギギネブラは歯噛みする。

ギギネブラの裏側が均等に柔らかいと気が付いたドクオは、そのまま腹裏に潜り込む。

尾から頭へ。するするとギギネブラの巨大な体躯を伝うように。

目指すはただ一点。全ての飛竜が持つ生体武器。喉だ。

激痛。

ギギネブラ自身、視認する事は出来ないが自分の喉に何かが突き刺されたというのは直ぐに分かった。

これで、咆哮は潰された。

130以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:08:42 ID:spErNWocO
(;*゚∀゚)「なんというめちゃくちゃな戦い方だニャー。たった一撃で、あの厄介な咆哮を潰しちゃったニャー」

すぐさま、ステップを踏み前進するドクオ。狙いは脚部。

先程までの戦闘で、一番の安地がそこにあると見抜いたのだ。

凄まじい勢いで振り回される金銀の双剣。
着実にダメージを蓄積させていく。

('A`)「腹も柔らかいんだな」

切り払い、切り返し、突き、袈裟切り、様々な振りを組み合わせて繰り出されるドクオの斬撃。

傍から見れば、ただただ踊っているように見える。

これに息を呑んだのは、後ろで戦闘を見ていたデレだった。

ζ(゚、゚*;ζ「なんなの……あの動き。普通じゃないよ」

ギギネブラは、余りの痛みに堪らず飛び上がる。

飛ぶ、という能力がもたらす優位性は計り知れない。飛べる、というのは自分のタイミングで戦闘を仕掛ける事が出来るという事だ。   そして、自分のタイミングで戦闘を切り上げる事が出来る。

制空権は、飛竜にある。

ギギネブラは、その事実に安堵した。

―――しかし

131以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:09:38 ID:spErNWocO

('A`)「デレ、今だっ!!」

次の瞬間降り注いだ雨。それは、痛みを伴ってギギネブラに降り注いだ。

ζ(゚ー゚*ζ「空は任せて下さいっ!」

なんという事だ、もう1つ自分に脅威が迫っていたのか。

ギギネブラは、突き刺さった矢を身体を捻る事によって抜き出した。

そしてそのまま

('A`)「危ないぞっ!」

ζ(゚ー゚*;ζ「くっ……」

緊急回避で、辛うじて躱したデレ。

急に目の前に現れた飛竜。デレは息を呑む。何度か飛竜を狩りに行ったことはある。しかし、いきなり目の前に現れるというのは初めての経験だった。

思考がまとまらない。離れるか、反撃するか、迷ってしまった。

一瞬の間。自分の前を死神が通り過ぎたような気がした。

ギギネブラの毒線が怪しく光る。放出されるギギネブラの毒ガスに目の前が暗くなる。

132以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:10:13 ID:spErNWocO

(#*゚∀゚)「ニャアアアァァアアア!!!!!」

ζ(゚、゚*;ζ「!!」

身体が動いた。ツーに頭を小突かれて、反射的に動いたのだ。

ζ(゚ー゚*;ζ「ハァ……ハァ……。ありがとうございます、ツー様」

(*゚∀゚)「ニャー」

油断していた。ドクオの圧倒的な力量を見て、完全に気を抜いていた。

深呼吸して息を整える。追撃してこようとしたギギネブラは、ドクオによって抑えられていた。

出来る、やれる、私は勝てる、負けない、負けちゃいけない。

ζ(゚、゚*ζ「………」

毒ビンから用意していた毒矢を一気に十本取り出す。矢を地面に叩きつけ、もう一度息を吸う。全開まで吸ったところで、それを体内に留めた。

矢をつがえて、放つ。この間0.5秒。それを繰り返す。

的確に弱点の腹裏にそれを射る。

133以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:10:47 ID:spErNWocO
('A`)(……へー)

自分の脇を通して飛んでいく矢を見て、ドクオは唸った。

誤射を恐れぬ度胸と、正確性、そしてその連射速度。目を見張るものがある。

十本を射ち切ったところで、ギギネブラに変化が現れる。

('A`)「色が変わった」

そして変化は肉質にも現れる。  今まで平然と斬れていた頭が、堅くなった。

ドクオは、また距離を取る。色だけでなく肉質も変わるとなれば、もう一度様子をみた方が無難だろう。

それに呼応するように、ギギネブラも氷壁に張りついた。

('A`)(……なにかヤバいのが来るな)

ギギネブラは、氷壁に張りついたまま毒ガスを吐いてきた。

一度ではなく、三度。

('A`)「避けろ!」

だが、数は増えようと速度は速くない。   二人と一匹は難なくそれを躱す。
しかし、ギギネブラの狙いはそこに非ず。

(;*゚∀゚)「ニャー!?」

狙いは一番反応の小さいツー。奇しくも、飛竜の本能が、ドクオ達の一番のウィークポイントを突く形となった。

134以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:11:09 ID:spErNWocO







直後、明かりが消えた。

命の綱が掻き消えたのだ。

135以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:11:38 ID:spErNWocO
【間幕】

o川*゚ー゚)o「あれは……モンスター」

『なっ、なんですって!?姫様、お下がりください。危険です!』

o川*゚ー゚)o「いえ、どうやら狩人様と戦っているようです」

『……本当ですね』

辺りが一瞬暗くなった。どうしたのかは分からなかったか、それがハンターにとって良い事ではないとは、分かった。

『……姫様、どうするおつもりですか?』

姫様、と呼ばれた少女は首を振る。

o川*゚ー゚)o「……私はただ、歌うだけです」

136以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:12:36 ID:spErNWocO

松明が消えた。真っ暗になった洞窟の中で、デレの心に不安が過る。   闇に紛れ姿を消したギギネブラ。

非常に不味い状況だった。ギギネブラの本質は、暗闇でこそ発揮される。

ギギネブラも相当弱っている様だが、退くしかない。悔しいが、仕方がない。

('A`)「ツー、“あれ”の出番だぞ!」

(*゚∀゚)「ニャー!」

ツーは、自分の秘密のポーチをひっくり返し、中に入っているそれを排出する。

瞬間、洞窟は柔らかな光に包まれた。

ζ(゚、゚*ζ「これは……雷光虫」

ドクオがツーに準備させていたのは、これだった。

温かく発光する雷光虫の灯りで、ギギネブラの姿は丸見えとなる。

('A`)「そろそろ終わらせるぞ、デレ!」

ζ(゚ー゚*ζ「はいっ!」

137以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:13:18 ID:spErNWocO

ドクオが切り込む、腹部を重点的に万遍なく斬る。ドクオは先程までの戦闘では弱点である腹部を狙う事は極力しなかった。

弱点を的確に狙うデレの邪魔になってはいけないと思ったからだ。

だが、デレの力量を知った今、その遠慮は不要だった。 ただひたすらに斬り結ぶ。

後ろから飛来する矢は、ドクオの身体の隙間を縫ってギギネブラに突き刺さる。

そして、今まで戦闘に参加せず歯痒い想いをしていたツーも全力で剣斧を振るう事が出来るようになったのだ。

ドクオの背中を後ろから見ていたデレは、自分の胸の高鳴りを聞いた。

自分の実力以上の力が出せる。

あの背中に追い付きたい、そう思った。

不意に、お祖母ちゃんが歌ってくれた子守唄が聞こえてきた。


『生命は生まれ、生命は尽きる』

『生命は芽生え、生命は枯れる』

懐かしい歌。お祖母ちゃんが歌ってくれた【英雄の詩】。

138以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:13:55 ID:spErNWocO
『陽は昇り、陽は沈む』

『潮は満ち、潮は引く』

ζ(゚、゚*ζ「生きるという事が、死ぬという事   死ぬという事が、生きるという事」

弓を上に構え、そして放つ。数十本の矢を同時に空中に射出し、その全てが大きな放物線を描き吸い込まれる。

『曲射』   抜群の空間把握能力と、充分な筋力を持つ弓使いにしか扱えぬ技。


ζ(゚、゚*ζ「死の意味を知り、生の意味を知る」

『喰うモノ、喰われるモノ』

『火と水、空と大地』

(*゚∀゚)「世界の広がりは、己の意志の中に   全てに意味があり、全てに意味はない」

139以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:14:36 ID:spErNWocO




再びドクオを包む赤い発光。ドクオの目が輝きだす。これが双剣使いの本質。己の命を消費し繰り出す必殺の技。

('A`)「世界は巡り、世界に還る」

それは舞。乱れ舞う、一陣の風。

―――鬼人乱舞

140以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:14:56 ID:spErNWocO

【間幕】

o川*ーーー)o『―――全てに宿る、大いなる意志へ』

一人の少女が歌っていた。雷光虫の光が優しく照らす銀盤のステージで、少女はただ歌っていた。

141以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:15:41 ID:spErNWocO

('A`)「ふう、剥ぎ取りっつーのは、どのモンスターでも面倒だな」

(*゚∀゚)「ニャー、オレっちも少し持って帰るニャー!」

狩り終えたギギネブラからある程度自分に必要な分の素材を剥ぎ取る。

残りの素材は、ギルドに連絡して荷台にて持ちかえる手筈だ。

('A`)「ほら、君の分だ」

ドクオの手に握られていたのは、プロの解体屋も真っ青な程丁寧に剥ぎ取られたギギネブラの皮と毒袋だった。

('A`)「これで新しい弓を作るのも良い。そのまま売って金にするのも良いだろう。   これは、君の報酬だ。受け取ってくれ」

ζ(゚ー゚*ζ「でも、私……」

('A`)「大丈夫、保証するよ。君は腕利きの弓使いだ。誇りを持っていい。   だから強い心を持て。君が今、ここにいる事には“意味”があるんだ」

ζ(゚ー゚*ζ「……はい」


洞窟には、未だに暖かな光りを放つ雷光虫がフワフワと浮かんでいた。

142以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:17:37 ID:spErNWocO

('A`)「!!」

ピリピリと頬を刺激する風が横切った。

('A`)「……今のは」

それを見上げると、東の方に大きな積乱雲見える。

('A`)「嵐が来るな……」

先ほどまで、たゆたゆと浮かんでいた雷光虫は消えていた。

今の風に、巻き込まれたのだと分かった。

143以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:18:27 ID:spErNWocO


『アイツが……アイツが現れたんでさぁ!!!』

/ ,' 3「なんじゃい、騒がしいのぉ」

『奴が……【雷狼竜】の野郎が現れやした!!!!』

/ ,' 3「!!」



Quest:2 毒怪竜を追え

Quest Clear


To be Continue……

144以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 19:31:41 ID:spErNWocO
これで、('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです(修正版)の投下を終わります。

今回修正した点を、説明させていただくと

・『カーグァ』を『ガーグァ』に修正
・『ジャギノス』の性別を修正
・『腕相撲』における描写を修正
・『ギギネブラ』の致命的な設定ミスを修正、またそれに伴う描写の修正
・誤字脱字を出来るだけ修正

以上です。

これからは、一度第三者に先に見せて推敲してから投下する事にします。またこれらの修正点は、すべて投下していたスレ内で指摘していただいた物です。

その指摘があって、スムーズに修正する事が出来ました。この場をお借りして、お礼申し上げます。

また、まとめの皆様には本当にご迷惑をおかけしました。お詫びとお礼申し上げます。

質問などあれば、随時受け付けます。この点に関して非難所は非常に優秀ですね。

では、またお会いする日を楽しみにしています。

145以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 20:30:48 ID:XDHeQ51o0
乙!
設定がしっかりしてて面白かった

146以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 22:08:43 ID:7jJFM3KQO


147以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 23:03:31 ID:xKsiLeCUO
VIPで見てたので流し読みのつもりだったけど 
結局全文読んでしまった 
文章が読んでて疲れない、文章上手い 
久しぶりの投下だと言ってあったけど 
差し支えなければ前の投下のタイトルは?

148以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 23:26:42 ID:spErNWocO
>>147 今まで書いたものは、一応伏せさせてもらいます。深い理由は無いのですが、自分の中では悶えてしまう程の黒歴史なので。

vipのスレでも答えたように、バトル物は初めてで試行錯誤しながら書いています。

戦闘描写は、某作品に影響を受けている部分が多いと思いますね。
簡潔で想像力を掻き立てられるように書ければ良いな、と常々思い書いています。

149以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/17(木) 23:41:36 ID:xKsiLeCUO
>>148 
147です、了解です 
(でも気が変わったらカミングアウトよろ)

150以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/18(金) 12:09:46 ID:x0Oq412c0
次スレの予定があればおねがい

151以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/18(金) 14:30:35 ID:QBFc2ud.O
>>150 次回の投下は、このスレッドの冒頭に書きましたが四月に入ってからにしようかな、と思います。

出来れば避難所に投下するのも、もう少し時間を空けたかったのですが、まとめ様に迷惑が掛かると判断し投下しました。

大体一話を書くのに三日なので、多ければ三話くらい書き溜めれれば良いかな、と考えています。

152以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/18(金) 21:30:00 ID:x0Oq412c0
おk
VIPに投下するときにここにアドレス貼り付けてもらえると助かる

153以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/19(土) 12:51:10 ID:eLpcSOiUO
あれ

154以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/19(土) 12:53:44 ID:eLpcSOiUO
>>152 了解しました。vipのスレッドにも避難所のURLを書くようにします。

今vipに書き込みをしたところ、規制食らってました。
もしかしたら代理投稿やPCからの書き込みに替えるかもしれません。

155>>1:2011/03/25(金) 10:47:08 ID:1KwZP5wYO
書き溜めの状況報告です。只今三話を書き終えました。

三話は三部構成となっておりますが、そこまで二話と文量は変わらないのではないかと。

また余り時間が取れなかった為、五話までの書き溜めは厳しいな、と思います。

投下はvipに、4月頭にでも出来れば良いかな。

またモンハンの世界観が分からない人の為に、モンスターの画像を貼っておこう、と思います。

文章で想像出来るようにするのが一番なのですが、かなり厳しいです。

156以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/25(金) 12:42:31 ID:ygJg.WRM0
モンハンやったことないが雰囲気で伝わるから俺はなくてもかまわんがなぁ

157>>156:2011/03/25(金) 13:34:50 ID:1KwZP5wYO
そうですね。自分としても余り画像などに頼りたく無いのですが。

やはり元ネタを知らない人は、想像しづらい人もいるのではないかと思ってしまいます。

この件については、今度vipに立てるスレで聞いてみようと思います。それからでも遅くはないかな。

158以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 00:09:54 ID:MhpMhpOU0
凄くMHPな気がしたので来ました

159以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:20:05 ID:GjTGHSus0
楽しみにしています

160以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/28(月) 05:40:01 ID:6WZSMi0sO
>>1です。四月頭に投下すると言っていた三話ですが。今日、明日中に投下する事になるかもしれせん。

理由として、四月に時間が取れるかどうかが極めて不透明になってしまったからです。

宣言しておいて、日にちを替えるのは恐縮ですが、ご容赦下さい。

161以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/28(月) 12:13:24 ID:IWps5hrM0
投下してくれるだけでもありがたい
SSは完結せずに放置って流れが多いからね

162以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/28(月) 23:43:45 ID:6b.KmIlg0
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1301322880/

vipで投下を始めます。

163以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 01:37:40 ID:GkD/7Z4s0
すいません、バイ猿を食らってしまいました。もうすぐ投下も終わりなんですが
もし、今この書き込みを見ている人がいれば>>162のスレッドでその旨を報告していただけないでしょうか、よろしくお願いします。

164以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:18:44 ID:GkD/7Z4s0
ではではのんびり('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです 3話(改訂版)の投下を始めたいと思います。
内容はほとんど変わっていませんが、訂正と書き忘れていた3−?を挿入しつつ
テンプレに少し追記を加えていこうと思います。

165以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:21:33 ID:GkD/7Z4s0

※注意
・元ネタ有り
・モンスターや装備についての独自解釈満載
・登場人物をAAに無理矢理変更している場合があります

まとめ

即席ブーン様 http://eksr.blog115.fc2.com/blog-category-20.html

フェレット速報様 http://xn--hckwcp3c2c5ce5k.com/

かぎまとめ様 http://hookey.blog106.fc2.com/blog-entry-2217.html

避難所 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/37256/1300286882/

※漏れがある可能性小

166登場人物:2011/03/29(火) 16:22:17 ID:GkD/7Z4s0
【ハンター】

●('A`) ドクオ=ウェイツー
人間
26歳 【称号:ドンドルマの英雄】
HR:6 
所属猟団:無所属
使用武器:???(双剣)
防具:ナルガXシリーズ
現在地:ユクモ村へと帰還中

●(,,゚Д゚) ギコ=ストッドウッド
人間
26歳 【称号:???】
HR:5
所属猟団:荒鷲団
使用武器:???(大剣)
防具:???シリーズ
現在地:???

●ζ(゚ー゚*ζ デレ=ツンデレート
人間
21歳 【称号:無し】
HR:4
所属猟団:ユクモギルド
使用武器:フロギィリボルバーⅢ(弓)
防具:マギュルSシリーズ
現在地:ユクモ村へと帰還中

167オトモ:2011/03/29(火) 16:24:00 ID:GkD/7Z4s0
●(*゚∀゚) ツー
獣人族(アイルー)
?歳 【称号:???】
使用武器:【旗本】ネコ合戦旗(剣斧)
兜:旗本ネコ【陣笠】覇
鎧:旗本ネコ【胴当て】覇
現在地:ユクモ村へと帰還中

168以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:24:55 ID:GkD/7Z4s0

信頼というのは、実に厄介な物である。    目には見えず、人に確かめることも出来ない       そしてなにより、それは狩りに絶対に必要な物なのだから。


                   ―――ナイトリーダー 騎士長フォックス―――

1693−1:2011/03/29(火) 16:26:12 ID:GkD/7Z4s0

帰り道、いきなりの雨。ギギネブラの狩猟を終え、一日が経った。ユクモから凍土までは丸二日かかるのだが、ドクオ達はかなりゆったりとしたペースでその道を進んでいた。

というのもオトモであるツーが、大気の震えを感じてなかなか進みたがらないのだ。

そう言うツーに、ドクオは特に何も言わず歩幅を合わせて歩いていた。  デレは、そんなドクオとツーの少し後ろを歩いている。

これは特に位置取りを気にしての事ではなく、ただ単にデレがドクオに遠慮してしまっているからだ。

空には分厚い雲が現れ、昼間だというのに辺りは薄暗い。

といっても、時刻は午後三時。明かりが全く灯っていないこの辺りでは、安全を確保する為に、移動出来るのは精々午後六時まで。

ζ(゚ー゚*ζ(ギルドに着くのは明日になっちゃうなー)

特に急を要する案件もないし、寧ろ私に今課せられた依頼はドクオさんの監視だ。 私だけ先に帰るわけにもいかない。

しかし、帰ったらどうギルドに報告をすれば良いのだろうか。

あの驚くべき動き、経験に裏付けされた的確な判断。 今ならば最初に見た時、頼りないと思ったあの細い身体の意味も分かる。

彼の最大の武器であるスピードを生かす為の、あの身体なのだ。

不必要な部分を極限まで削り取った完成形が、彼なのだ。

このデレの予想は、半分当たっている。ドクオは、自分の武器である瞬発力を生かすのに必要のない筋肉は鍛えず、狩りに必要な部分のみを鍛え上げていた。

170以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:27:51 ID:GkD/7Z4s0
('A`)「―――♪」

ζ(゚、゚*ζ「………」

今も鼻歌を歌いながら、ツー様から借りたブーメランを投げて、見事に兎に命中させている。

ドクオさんと狩りに出て五日。 一度も食料を採集しに行っていない。勝手にドクオさんが、野兎やら猪やらを狩ってしまうのだ。

ギルドから配給されている携帯食料にも、まだ手を付けていない。

ドクオが、「ギルドの携帯食料は保存が効くので、本当に必要な時に食べれば良い」と言うからだ。

('A`)「……そういえば、君」

ζ(゚ー゚*;ζ「はっ、はいっ!」

いきなり、ドクオさんに呼ばれて声が裏返ってしまった。  ドクオさんについて考えていた所で本人に声を掛けられたからだ。

('A`)「ユクモ特有の飛竜は何種くらいいるんだ?この辺りには轟竜や迅竜も生息していると聞いたことがあるが」

ζ(゚ー゚*ζ「そうですね。ティガレックスやナルガクルガも居ますよ。他にユクモ村特有の飛竜種となるとベリオロスや先日狩ったギギネブラなどですね」

牙獣種や、鳥竜種は地方によってかなり多種多様な種類がいるが、飛竜はあまり多くの種類は存在しない。まず器がちがうからだ。前者は、歩行移動のため余り遠くには行けないが
飛竜は飛行移動するのでかなり広範囲の縄張りを持っている。だからこそ牙獣種などの生存競争はその地方でのみ行われるが、飛竜は文字通りこの世界すべててで行われている。

171以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:28:39 ID:GkD/7Z4s0
('A`)「成る程な。基本的にドンドルマとほとんど変らないわけだ。ここまできて迅竜や轟竜の顔は見たくなかったが、仕方ないな」

ζ(゚ー゚*ζ「でも、ユクモ独特のモンスターはまだ沢山いますし、それにこの地方独特の行動とかもあるみたいですよ。   私はユクモのモンスターしか見たことがありませんが」

('A`)「……そうか」

それを聞いたドクオさんの顔は、どこか嬉しそうでした。やはり狩人の血が騒ぐのでしょう。見たことの無い土地、見たことの無いモンスター。私はまだその境地に達することが出来ません。

飛竜と戦うのは、やはりいつも怖い。傷つくのも怖いし、死ぬのも絶対に嫌だ。でもやめられない。こんな中途半端な気持ちでこの先やっていけるのだろうか、と不安になることは間々あった。

ζ(゚ー゚*ζ「最近では“疾風緑迅”や“黒虎轟竜”と呼ばれているモンスターもいるそうです。本当かどうかは知りませんが。
ユクモでは亜種と呼ばれる存在なんてほとんど確認していませんでしたから」

('A`)「亜種か」

ζ(゚ー゚*ζ「亜種なんて、本当にいるんでしょうか……」

('A`)「亜種は確かにいる。ドンドルマで幾つか見たことがある。亜種とういよりもアレは別の進化をした何かだな。   肉質も弱点も、何もかもが違う。ただ形が似ているだけだ。
名を挙げようと何人もの狩人が挑んだが、凡そ返り討ちにあっていたよ」

でも、とドクオさんは少し間を置いて言った。

('A`)「俺達狩人は矛だ。ギルドの人達に危害が及ぶとなればそれを放って置くわけにはいかない。狩れと言われれば狩る。
というか、俺達は狩る事しか出来ない」

これが完成された狩人の姿、心持なんだな、と感じた。狩人に志願した以上、少しでも上を目指す。その姿勢はユクモの狩人だけのものではないんだ。

172以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:29:08 ID:GkD/7Z4s0
(*゚∀゚)「それに最後までオトモするのがオレっち達の役目にゃんだニャー」

さっきからずっとピリピリしていたツー様が、多少和らげながら言った。
ツー様はなかなか、いや結構、ううんかなりドクオさんに懐いていた。

(*-∀-)「楽チンだニャー」
('A`)「……」

長年付き従った主人とオトモのように、なんの違和感も無く、暖かな空気も醸し出している。

('A`)「そういえば、君の妹さんはどうしてる?」

ζ(゚ー゚*ζ「デレで良いですよ、ドクオさん。私の妹も狩人をしています。一昨日話した幼馴染の男の子と一緒によく狩りに出かけてます」

('A`)「そうか、妹もデレと同じような気持ちで狩人になったのか?」

いいえ、と私は首を振った。

ζ(゚ー゚*ζ「ツンは私と違って強い子ですから、お祖母ちゃんのため、というよりは皆のためですね」

それもなかなか難儀だな、とドクオさんは答えるというより呟くように言って黙った。

ζ(゚ー゚*ζ「まだまだ新米なので、今は村のためというより幼馴染の男の子と一緒にいるため、という感じですね!」

173以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:29:34 ID:GkD/7Z4s0
幼馴染、その言葉を聞いてドクオに懐かしい記憶が甦った。

自分にも確かにあった新米の頃。どの道を歩くのもビクビクしていた。モンスターを見れば最初に感じるのは恐怖。
あの時の自分は理由など無くただ“アイツ”に言われるがまま狩人をしていた。

川 ゚ -゚)『おい、ドクオ。どうして私の言ってることが出来ないのだ』

(;'A`)『おいおい……そんな事言われたって……』

川 ゚ -゚)『グイーンと引っ張って、バーってブチ破って、突き刺すんだ』

('A`)『はぁ、その理論を本当に自分のものにしちまってる所がクーの凄いところだよ』

川 ゚ -゚)『なんだと!?私は凄いのか……』

('A`)『あー、凄い凄い。だから俺には弓なんて使えないって。俺は近距離、クーが遠距離から弓で援護。
それが一番相性のいい形だよ』

川 ゚ -゚)『むぅ……しかし』

('A`)「俺はクーだからこそ、馬鹿みたいに突っ込んでいけるんだよ。だから今のままで良い」

川 ゚ -゚)『……なにか巧くのせられた気がするぞ』

174以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:29:55 ID:GkD/7Z4s0
('A`)「……」

ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさん?」

('A`)「あぁ、すまない。少し昔を思い出してた」

二人の会話を黙って聞いていたオトモがここぞとばかりに口を挟む。

(*゚∀゚)「ニャー!ドクオの昔の話気ににゃるニャー!」

デレやツーにとって、このユクモが全てなのだ。世界は確かに広けれども、二人はユクモ以外の世界を知らない。
外に興味を示すのも当然だった。目を輝かせる二人。

('A`)「うーん、大してここと変わらないぞ。ただ狩人の絶対数は確実にドンドルマの方が多かったな。
それに加えて、狩人のレベルは凄く高かった。中でもG級の狩人は一線を画していたな。なんというかモンスターより化け物じみた奴らがいた」

(*゚∀゚)「流石は狩人の聖地だニャー」

175以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:30:28 ID:GkD/7Z4s0
ζ(゚ー゚*ζ「G級というのは噂で聞いたことがありますが、先日のドクオさんを見て納得しました」

('A`)「……俺なんか大したものじゃない。ティガレックスの突進を素手で受け止めるような奴もいたからな」

ドクオの呟きに言葉を失う二人。あまりに異常。圧倒的身体能力とヒトの何十倍の体躯を誇る飛竜の、そのなかでも最凶のティガレックスの
突進を素手で受け止めるなんて。

その発想自体が正気の沙汰ではない。

『広い視野と大きな度量を持つこと』

それも狩人にとっては大事なことだと、ドクオはそこで区切って話を終えた。

時刻は夕方になる頃、そろそろ歩くのをやめキャンプを設営しようかという時間になっていた。




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