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( ^ω^)戦国を歩くギタリストのようです

1 ◆vVv3HGufzo:2011/02/20(日) 20:10:49 ID:xjlGxIHwO
***
 
この作品はフィクションです
作品の団体名、人名、地名などは一切関係ございません
 
***

46以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/20(日) 21:26:27 ID:V9wvEjDs0
乙乙 続きを期待している兄弟

47以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/20(日) 21:51:33 ID:JFi0YMIY0

次回に期待

48以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/20(日) 22:21:38 ID:ihJ43xzM0

なかなか新しいな

49以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/20(日) 22:58:26 ID:QbyKnqW60
ボキャ貧なので面白いとしか言えないのが残念んんん

50以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/21(月) 05:28:49 ID:CVu/iq0w0
乙だが、弦が切れたりしたらどうするの

51以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/21(月) 10:59:24 ID:vnzidJTs0
>>50
鯨のヒゲとか使うんじゃあないのか

52以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/21(月) 11:02:03 ID:ugINp2FI0
戦国エアギターのはじまりである

53 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 01:55:35 ID:a4mOl5pAO
皆さんありがとうございます!
やはりレスがあると嬉しいですな

>>50
弦が切れる?
ハハ、僕のギターは今んとこ3ヶ月くらい持ってますよ
だから大丈夫でしょう
ハハ…


…それでは投下します

54 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 01:58:40 ID:a4mOl5pAO
***
第三話 「歴史は何も裏切らない」

***
 

( ^ω^)「尾付の出麗?」

(´・ω・`)「ああ、その琴爪にはそう書いてある。当人に会えば元の時代へ戻る方法がわかるかもな」

( ^ω^)「なるほど…ちなみにこの人はどこにいるんですかお?」

(´・ω・`)「尾付家は代々、二茶根瑠一族の近習を務めている。根十城にいるはずだ」

( ^ω^)「あ、聞いたことあるかも二茶根瑠」 
 
 二子厨の庄から離れ、山道を上っている二人。

 渚本介が昨晩見つけた琴爪の名前の話をすると、ブーン水を得た魚のようにその話に飛びついてきた。
 しかし。
 
 
(;^ω^)「渚本介さん、嫌な予感がするんですけど」

(´・ω・`)「なんだ」

(;^ω^)「根十城って…めちゃくちゃ遠くないですかお…」

55 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 01:59:34 ID:a4mOl5pAO
 
 これでも日本史は得意だったので、何となく頭の中には入っている。
 根十城は、現在の静岡県と愛知県の間あたりにある大きな城だ。
 現代でもその形は残されており、指定文化財として観光名所となっている。
 
 
(´・ω・`)「そうだな。かなり時間はかかるぞ」

( ´ω`)「こりゃ無いお…」

(´・ω・`)「ははは、元気出せ。ほら、二子堂城が見えてきたぞ」

( ^ω^)「おっ?」
 
 
 山道の先に見えてきたのは、復興修理がなされた現代の城とは違い、かなり威圧感のあるものだった。
 歴史があるものなのに歴史を感じない。
 言葉でどう表現すればいいのかわからないほど、その城は威風堂々としていた。

56 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:00:36 ID:a4mOl5pAO
 
( ^ω^)「すげえお…」

(´・ω・`)「さ、行くぞ」

( ^ω^)「はいお。てゆうか渚本介さんはこの城に何の用があるんですかお?」

(´・ω・`)「ん、ちょっとした小用だ。すぐに終わるさ」

( ^ω^)「なるへそ…」
 
 
 城の目の前まで歩くと、城を囲むように流れる川と大きな架け橋が目に止まった。

 簡単に攻め入られないように、城の周りには堀を作ることが多い。
 この戦術的な建築アイディアは意外と世界共通で、外国の城にもこういった堀のあるものは数多く存在している。

57 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:01:08 ID:a4mOl5pAO
 
 教科書の中身だけであった「歴史」が目の前にあることに感動し、ブーンは暫し見とれていた。

(´・ω・`)「おい、いつまで見とれてるんだ。未来の日本に城はないのか?」

( ^ω^)「いやあるっちゃありますけど、今やただの見せ物ですお」

(´・ω・`)「そうなのか…悲しいもんだな」
 
 
 目に見えるもの全てにいちいち感動するブーンと、何食わぬ顔で歩く渚本介。
 架け橋を渡り、さらに城へ近付くと、立派な門の前に歩き着いた。
 途端、門番らしき二人の男が、ブーンと渚本介に近づいてきた。
 
 
("`Д´)「止まれ。何だお前、南蛮人か?」

(`∞´/)「入城許可証を見せろ」

( ^ω^)(どう見ても日本人だろjk…)

(´・ω・`)「ほら、確認してくれ」

58 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:02:16 ID:a4mOl5pAO
 
 渚本介は懐から綺麗に畳まれた文書を出し、門番に見せた。
 直後、門番の二人は驚いた顔で文書と渚本介を交互に見始めた。
 
 
(";`Д´)「太田渚本介…!?」

(`∞´;/)「お前、死んだはずじゃ…」

(´・ω・`)「もういいだろ?長話はしたくない」

(;^ω^)「……」
 
 
 死んだはず、なんて言葉が聞こえた気がしないでもないが、とりあえずブーンは黙っておくことにした。
 渚本介は門番から文書を取り上げると、ブーンに声をかけて門をくぐった。
 慌ててブーンも渚本介の後に続く。
 
 
(";`Д´)「なんてこった…奴は生きてたのか」

(`∞´;/)「野郎、まさかこの城を…」

(";`Д´)「そんなはずが無いだろう!…一応、隊長に言っておくか」
 
 
 
──

59 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:03:43 ID:a4mOl5pAO
──
 
 
(*^ω^)「おお…!」

 初めて体感する、"本物"の城。
 ブーンは興奮のあまり鼻息が荒くなった。ちょっと鼻水が出た。

(;´・ω・`)「落ち着けブーン。奇妙な顔になってるぞ」

(;^ω^)「あ、すいませんお…」
 
 
 何度も折り返されている階段を上り、二人は最上階に着いた。

 最上階は、階段から少し廊下が続き、その先に大きな襖の扉が一つあるだけだった。
 運動が続いたせいで呼吸が整わないブーン。その目の前で、涼しい顔の渚本介が扉へと進んでいく。
 ブーンはまたも慌ててその後を追った。

60 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:03:59 ID:a4mOl5pAO
 
(´・ω・`)「失礼致す」

(;^ω^)「あっ…僕も失礼しまーす…」
 
 
 一声かけて、渚本介は少し乱暴に扉を開けた。

 扉の向こうには、大きな和室が広がっていた。
 その奥に、何やら筆で字を書いている初老の男が一人。
 
 
ミ,,゚Д゚彡「…来たか」

 男は筆を止め、紙の傍に丁寧に置きながら、顔を上げた。
 威厳のある顔が、二人を向く。
 
 
ミ,,゚Д゚彡「いつかは来ると思っていた。久しいな、太田渚本介……して、その南蛮人は?」

( ^ω^)(もういいや南蛮人で…)

(´・ω・`)「こいつは俺の相棒だ。俺が何の用で此処まで来たのか、わかっているのか?」

61 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:05:12 ID:a4mOl5pAO
 
ミ,,゚Д゚彡「わかっておる。しかし、貴様の目的は儂ではない」

(´・ω・`)「なんだと?」

ミ,,゚Д゚彡「全ては儂の弟、天野擬古成(ぎこなり)の仕業だ」

(´・ω・`)「"剛拳の擬古"…」

(;^ω^)(え?何?何の話?)

(´・ω・`)「奴は今何処に?」

ミ,,゚Д゚彡「丹生捉城だ。しかし先日、妙な情報が届いた」

(´・ω・`)「妙な情報?」

ミ,,゚Д゚彡「擬古成の奴が、根十城攻めを企んでおる」

(´・ω・`)(;^ω^)「!!」

ミ,,゚Д゚彡「あの根十城が落とされては二子厨の庄の安全も危ない。奴はここら一帯を統治する気だ」
 
 
 一旦言葉を切ると、男は小姓を呼び、茶の用意を命じた。
 小姓が茶の用意に部屋を出ると、座ったらどうだ、と自ら座布団を用意してくれた。

62 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:06:33 ID:a4mOl5pAO
 
(´・ω・`)「お人好しは相変わらずか」

ミ,,゚Д゚彡「ハッハ、そう言いなさんな」

(´・ω・`)「では言葉に甘えて」

( ^ω^)「失礼しますお」

ミ,,゚Д゚彡「ん?南蛮人なのに言葉が通じるのか」

( ^ω^)「はい、話す程度ならできますお(はっ倒すぞジジイ)」

( ��)「房擬古様、茶を持って参りました」

ミ,,゚Д゚彡「うむ、儂とこの二人の分を頼む」

( ��)「はっ」

( ^ω^)(すげえ…本当に"はっ"て言うんだ)
 
 
 小姓が慣れた手つきで茶を淹れると、わざわざ小さな膳を用意し、三人の前に置いた。
 その上に茶を置くと、小姓はそそくさと退いていった。

63 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:07:27 ID:a4mOl5pAO
 
 房擬古は少し茶をすすると、話を続けた。

ミ,,゚Д゚彡「して、渚本介。貴様はやはり擬古成を追うのか」

(´・ω・`)「当然」

ミ,,゚Д゚彡「…なれば、儂が力を貸そう」
 
 
 渚本介が少し驚いたような目で房擬古を見た。
 しかし、房擬古の表情は至って真剣だ。
 
 
(´・ω・`)「…何故に?」

ミ,,゚Д゚彡「奴は強引なまでに天下統一を進めておる。もはや奴は只の暴将、手に負えん」

ミ,,゚Д゚彡「奴を止めて欲しいのだ渚本介。これからの平和の為にも」

ミ,,゚Д゚彡「これはお前にしか頼めん事だ。お前の旅にもちょうど都合がいいだろう。どうか聞き入れてくれ、"戦魔"よ」

( ^ω^)(せんま?)

(´・ω・`)「…くだらん名を……わかった、助力を頼む」

64 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:08:37 ID:a4mOl5pAO
 
 房擬古は口の端で笑い、また茶をすすった。
 しかし、房擬古の穏やかな雰囲気とは違い、渚本介は張り詰めた顔で房擬古を見ている。
 ブーンはただ二人のやりとりを見ているしかなかった。
 
 
ミ,,゚Д゚彡「城の守衛以外の兵を全員出そう。と言っても、数にして二百ほどしかおらぬが…」

(´・ω・`)「兵は結構だ。俺は兵力戦がしたいわけではない」

(´・ω・`)「俺が力添え願いたいのは二つ。旅の間にも腐れぬ食料と…」

 渚本介はブーンの方をちらりと見て、小さく笑った。
 
 
(´・ω・`)「こいつのぎたーが収まる荷袋がほしい」

ミ,,゚Д゚彡「ぎたー?」
 
 
 
──

65 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:09:45 ID:a4mOl5pAO
──
 
 
(*^ω^)「ハフッ、ハフッ」

ミ,,゚Д゚彡「ハッハ、ブーンは胃が大きいようだの」

(*^ω^)「だってすごく美味しいですお!城の料理わぅふぐっつ」

(;´・ω・`)「だからあまり無理に食うな」

ミ,,^Д^彡「ハッハッハ!」
 
 
 夜。
 大勢の小姓達が周りを囲むなか、三人は接客用の高級料理を食していた。
 擬古成の根十城攻めまではまだ時間がある。一晩泊まっていけという房擬古の好意に、二人は甘えることにした。

66 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:10:21 ID:a4mOl5pAO
 
( ��)「房擬古様。お二人方の旅の食料と、ぎ…ぎたー…?の荷袋の用意が済みました」

ミ,,゚Д゚彡「そうか、ご苦労だったな」

( ^ω^)「ありがとうございますお」

ミ,,゚Д゚彡「なーに、儂には何でも気軽に申してよい」

( ^ω^)「房擬古様は本当にお人好しなんですおね」

(´・ω・`)「一城の主がそんなんで大丈夫なのか」

ミ,,゚Д゚彡「ハッハ、儂はこれくらいしか取り柄の無い人間での」

( ^ω^)「いやそんなことないですおマジで!」

ミ,,゚Д゚彡「マジ?なんだそれは」

(;^ω^)「あっ…僕の国の言葉ですお。すみませんお」

ミ,,゚Д゚彡「ハッハ、そうかそうか」
 
 
 
──

67 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:11:31 ID:a4mOl5pAO
──
 
 
("`Д´)「あー…交代はまだかよチクショウ」

(`∞´/)「さっさと戻って晩酌でもしたいもんだぜ」

("`Д´)「まったくだ」
 
 
 ブーン達が料理を食べ終えた頃。
 門番の二人は、きちんと持ち場に立ったまま雑談をしていた。

 二人の立つ門を、月明かりが強く照らしている。
 門の前には架け橋、その向こうには暗い森。

 突然、その暗い森の中から、まるで浮き出てくるように一人の男が歩いてきた。
 
 
("`Д´)「おい…」

(`∞´/)「ああ。橋には近づけずにな」
 
 
 二人はそれぞれ槍を手にし、架け橋の向こうまで歩いた。
 歩いてくる男は動じる様子もなく、淡々と進んでくる。

68 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:12:40 ID:a4mOl5pAO
 
 二人が橋を渡りきったとき、ちょうど男が二人の目の前で止まった。
 
 
("`Д´)「おい、こんな夜分に何の用だ」

(`∞´/)「入城許可証を見せろ」

( ゚ ゚)「……」
 
 
 暗くてわからなかったが、よく見ると、男は顔を布で隠していた。
 返答も無い怪しい男に、二人は槍を向ける。
 
 
("`Д´)「入城許可証はどうした!さっさと出さないと引っ立てるぞ」

( ゚ ゚)「………だ」

(`∞´/)「あ?」
 
 
 顔を隠していた布を取り、冷たい目で二人を睨む。
 
 
(,,゚Д゚)「邪魔だっつってんだよ」

69 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:12:57 ID:a4mOl5pAO
 
 途端、男は向けられた二つの槍を、片手で一本ずつ掴んだ。

(`∞´;/)「!?…な、動かん…?」

(";`Д´)「クソ、離せ!」

(,,゚Д゚)「……」
 
 
 屈強な門番の持つ槍が、片手で封じられている。
 掴まれた槍は、いくら動かそうとしても微動だにしない。
 
 
(";`Д´)「貴様…まさか…!」

(`∞´;/)「"剛拳"…!?」

(,,゚Д゚)「ご名答だ」
 
 
 バキン、という鈍い音が辺りに響いた。
 男が掴んでいた槍の柄が折れてしまったのだ。
 男は折れた刃先を素早く指の間に挟み、門番の二人の喉を貫いた。

70 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:14:46 ID:a4mOl5pAO
 
 血を吹かせながら、静かに崩れ落ちる門番の二人。

(,,゚Д゚)「一城の門番がその程度とはな」

(,,゚Д゚)「全隊用意!!」
 
 
 "剛拳"が背後の暗い森に向かって声を上げた。
 直後、森からぞろぞろと兵が現れた。
 架け橋の前に並ぶ、鎧を纏った男達。
 その数、五百強。
 
 
(,,゚Д゚)「城内の兵は三百程度だ!すぐに終わらせる!」

(,,゚Д゚)「行くぞォォ!!!」

 地鳴りのような掛け声。
 五百強の兵は、雄叫びをあげながら城内へと突入した。
 
 
 
──

71 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:15:22 ID:a4mOl5pAO
──
 
 
 強く鐘を突く音が、城内に何度も鳴り響いた。
 途端、誰か大勢の怒号と悲鳴があがった。
 
 
(;^ω^)「え、何!?」

(;´・ω・`)「まさか…」

(;��)「敵襲です房擬古様!敵兵は五百程!」

ミ,,;゚Д゚彡「こんな時に敵襲だと!?どこの手の軍だ!!」

(;��)「旗印から見るに、天野の軍のようです!大将自ら率いているもよう!」

ミ,,;゚Д゚彡「なっ…擬古成自ら此処まで来たというのか!?一体何のつもりだ!」

(;´・ω・`)「そんなことより、あんた達は早く此処から逃げた方がいい!体制も整ってない状態で攻められたら此方は…」

(,,゚Д゚)「いや、もう遅せェ」

72 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:16:35 ID:a4mOl5pAO
 
ミ,,;゚Д゚彡(;´・ω・`)(;^ω^)「──!?」

( ��)「え」
 
 
 男の声が三人の耳に入った直後、今度は肉を綺麗に断つような音が聞こえた。
 見ると、房擬古の小姓は既に首を無くし、頭はブーンの足下を転がっていた。
 
 
 

( ^ω^)「あ…?」
 

 
 人が死んだ。自分の目の前で、人が首をはねられて死んだ。

 人が死ぬなんて、テレビの世界でしか存在しなかった。
 ましてや殺人なんて、恐らく一生体験しないものだと思っていた。

 なのに、これは何だ?
 人間の頭が、床を転がっている?
 
 
(;゚ω゚)「あ…あ…?」

(,,゚Д゚)「へっ、生首見んのは初めてかよ南蛮人」

73 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:18:08 ID:a4mOl5pAO
 
 体が固まったまま狼狽するブーンの横で、渚本介が前に出た。
 いつの間にか刀は鞘から抜かれ、右手に握られている。
 

(,,゚Д゚)「しかし驚いたぜ…まさかこんなチンケな城に、貴様がいるとは」

(,,゚Д゚)「まだ復讐の炎は貴様に残っていたのか。"戦魔"、太田渚本介よ」

(#´・ω・`)「……」
 
 
 冷たい目で真っ直ぐに擬古成を睨み、刀を抜いたまま動かない渚本介。
 その少し後ろで、今度は房擬古が声を上げた。

ミ,,;゚Д゚彡「擬古成…貴様一体どういうつもりだ」

(,,゚Д゚)「愚問。二子厨一族が滅びれば、根十城攻めが楽になる。武力は無くとも親しい交易のある二子厨は、先に潰すべきと判断した」

ミ,,;゚Д゚彡「貴様、生みの一族を裏切るつもりか!」

(,,゚Д゚)「裏切る?戯れ言を、天下統一に血の縛りは邪魔なものだ」

74 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:19:12 ID:a4mOl5pAO
 
(,,゚Д゚)「んなことより、さっさと逃げたらどうだ?さもなくば、俺は城と貴様の首を頂いてしまうぞ」

ミ,,;゚Д゚彡「下衆が…」

(#´・ω・`)「待て」
 
 
 右手を伸ばし、房擬古がこれ以上熱くなるのを止める渚本介。
 そして、渚本介はようやく刀を両手で握った。

 対する擬古成も、右肩の後ろから左膝の裏あたりまで伸びる巨大な鞘から、分厚い刀を抜いた。
 渚本介の構える日本刀、虎恍丸とは比べものにならない大きさだ。
 それを両手で持ち、ずっしりと構える。
 
 
(#´・ω・`)「"剛拳"の名は相変わらずか」

(,,゚Д゚)「この斬馬刀は一薙ぎで人間を甲冑ごと真っ二つにしちまう威力だ。貴様の復讐の魂ごと、この刃で潰してやる」

(#´・ω・`)「来い。貴様の野望は此処で潰えることとなろう」

(,,゚Д゚)「ハッ、威勢だけは強いもんだな」

75 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:20:05 ID:a4mOl5pAO
 
 次の瞬間。
 数十歩と離れていた互いの距離が、一瞬にして詰められた。
 虎恍丸は上から、斬馬刀は横から、それぞれの刃の軌道が重なる。
 途端、とても刀同士がぶつかったとは思えない轟音が辺りに響いた。

(;´・ω・`)「くっ……!」

(,,#゚Д゚)「ゴルァッ!!」

 斬馬刀の攻撃の重さに、体ごと弾かれた渚本介。
 その隙だらけの首に、斬馬刀の返すような横払いの攻撃が迫る。
 それを低い姿勢でかわすも、今度は突然、遠く離れた壁まで吹き飛ばされた。
 擬古成が渚本介の腹に拳を突き出したのだ。

ミ,,;゚Д゚彡「渚本介!」

(;´・ω・`)「かはッ…!」

(;゚ω゚)「あ…あう…」
 
 
 "剛拳"の拳をまともに喰らい、なかなか起き上がれない渚本介。
 その渚本介を横目に、擬古成がゆっくりと歩き出した。
 実兄、房擬古の元へと。

76 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:20:53 ID:a4mOl5pAO
 
ミ,,;゚Д゚彡「くっ…」

(,,゚Д゚)「悲しいもんだな、二子厨房擬古。まさかこの手で兄を殺める日が来るとは」

(;゚ω゚)「……」

(;´・ω・`)「や…やめ……」
 
 
 とうとう房擬古の目の前まで着いた擬古成。
 逃げも反撃もしようとしない相手に、斬馬刀を振り上げる。

(;´・ω・`)「やめ……」

(,,゚Д゚)「言い残す事は?」
 
 
 最後の情けをかけられる房擬古。
 その場にあぐらで座り、動けない渚本介と固まっているブーンを見据える。
 
 
ミ,,゚Д゚彡「…野心も夢も、魂を荒ぶらせる手の欠片に過ぎぬ」

(,,゚Д゚)「……」

ミ,,゚Д゚彡「強く生きろ。渚本介、ブーン」

(,,゚Д゚)「…さらばだ」

77 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:22:14 ID:a4mOl5pAO
 
 鈍い音が鳴り、赤黒い何かが飛び散った。
 二子堂城城主、二子厨房擬古。城を攻めてきた実の弟に斬られ、その生涯は幕を閉じた。
 
 
(#´・ω・`)「き…貴様ァァ!!」

(;゚ω゚)「うわ、ああああああああああ!!」
 
 
 恐怖と衝撃でただ叫び続けブーン。
 その横を、虎恍丸を持った渚本介が、物凄い速さで駆け抜けた。

(,,゚Д゚)「ムッ…!」

(#´・ω・`)「うおおおお!!!」

 渚本介が全体重をかけて振り下ろした虎恍丸の刃は、擬古成の斬馬刀に軽くあしらわれた。

 途端、今の一合だけで、大きく距離を取った渚本介。
 二人の重い睨み合いが、その場の空気を凍らせていく。

78 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:22:58 ID:a4mOl5pAO
 
 しかし、その均衡はすぐに終わった。
 渚本介が虎恍丸を鞘に戻したのだ。
 
 
(,,゚Д゚)「腰抜けが、逃げるつもりか」

(#´・ω・`)「何とでも言え。覚えていろ。貴様の首は、必ずこの太田渚本介が取って見せる」

(,,゚Д゚)「ふん」
 
 
 ブーンの手を無理やり引き、小姓が用意してくれた荷物を取り、渚本介は走り出した。
 すぐに見えなくなった二人の背中に、口の端を歪める擬古成。

 月明かり以上に辺りを強く照らす、二子堂城から上がる炎。
 すぐ下の二子厨の庄を焼き討ちで沈めるのには、何の時間もかからなかった。
 
 
 明応五年。
 二子堂城、二子厨の庄が、天野勢の手により陥落した。
 
 
 
第三話 終

79以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/23(水) 02:23:33 ID:PIrYs4lcO
俺の目を盗んで投下出来ると思ったか?

支援

80 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:25:04 ID:a4mOl5pAO
今回の投下はこれで終わりです!

それと音楽祭お疲れ様でした!
本当に楽しかったです!!

さてベース弾いて寝るか

81以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/23(水) 02:25:32 ID:PIrYs4lcO
5秒遅かったか………恥ずかしい///



82 ◆vVv3HGufzo:2011/02/23(水) 02:25:59 ID:a4mOl5pAO
>>79
なんという素早い手際…ッ!?
ありがとうございます

83以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/23(水) 08:13:17 ID:0P6NlnKIO
おらワクワクすっぞ!

84以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/23(水) 10:14:05 ID:Rar5LVWI0
はぁはぁ
ずっと待ってたんだよぉ///

85以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/23(水) 16:31:28 ID:/Vxmyu5w0
これは良作

86以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/24(木) 11:26:33 ID:NoaO4L5Q0
続きが気になるうううう

87以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/26(土) 22:58:37 ID:trn6Ybk60
そろそろじゃないかね

88 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:06:23 ID:IO2UyPh6O
皆さんありがとうございます!
第四話いくぞえ!

89 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:09:44 ID:IO2UyPh6O
***
第四話 「貧しくとも人」

***
 

( ;ω;)「オ゙ゥエッ!!ゲホッ!」

(´・ω・`)「しっかりするんだ、もう奴らも追っては来ない」

( ;ω;)「ハ、ハイ……」
 
 
 夜襲に遭った二子堂城を逃げ切り、暗い山の中を、二子厨の庄の反対側に駆け下りた二人。

 その山道の途中で、二人は少し休憩を取ることにした。
 そこでブーンは強烈な嘔吐感にみまわれた。先ほど見た光景が、あまりにも衝撃的だったのだ。
 道の傍らで胃の中味を戻すと、一気に鼻水と涙も流れてきた。

90 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:10:04 ID:IO2UyPh6O
 
 何もかもが、強烈な出来事だった。
 赤黒い人間の中味。強く籠もる鉄の臭い。
 そして、いとも簡単に失われる命と、いとも簡単に出来上がる人間の死体。

 平和な時代の平和な国で育ったブーンには、とても耐えられない体験だった。

 
( ;ω;)「けふっ、ヒック…」

(´・ω・`)「…悪かったなブーン」
 
 
 ブーンの背中をさする渚本介が、ぽつりと呟いた。
 予想外の台詞に、ブーンは思わず振り返った。
 

( ;ω;)「渚本介さん…?」

(´・ω・`)「その様子じゃ、人間が斬られるサマを見るのは初めてなのだろう?」

( ;ω;)「は、はい…」

(´・ω・`)「奴が現れた時に逃げるべきだった。しかし俺は至らん欲にかられて、あろうことか奴に刃向かってしまった」

91 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:11:28 ID:IO2UyPh6O
 
(´・ω・`)「その結に、お前に嫌なものを見せてしまった。申し訳ない」

 
 そこまで言うと、渚本介はブーンに頭を下げた。
 ブーンが慌てて顔を拭き、渚本介に声をかける。

(;^ω^)「ちょ、顔を上げてくださいお渚本介さん!渚本介さんは何も悪くないですお」

(´・ω・`)「申し訳ない…」

(;^ω^)「……」
 
 
 ブーンは渚本介が悪いなどとは全く思っていなかった。むしろ情けない姿を見せた自分を恥じていた。

 しかし、確かに渚本介に対して様々な疑問はあった。
 渚本介が"戦魔"と呼ばれていること。復讐の為に旅をしていること。そして何より、先程の天野擬古成に対する怒りのような憎しみのような顔。

92以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/26(土) 23:13:15 ID:trn6Ybk60
支援ぞ

93 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:13:31 ID:IO2UyPh6O
 
 だから、躊躇いなくこんなことが言えたのかもしれない。
 
 
( ^ω^)「僕、実は天野擬古成という名前には聞き覚えがあるんですお」

(´・ω・`)「?」

( ^ω^)「日本史で習ったんですお。確か、天下統一を目指して数々の国を攻め落としていた…って」

(´・ω・`)「ああ、その通りだ」

( ^ω^)「渚本介さん、聞かせてくださいお。渚本介さんは、もしかしてあの擬古成に何かされたんですかお?だから復讐に走っているのでは?」

(´・ω・`)「……」
 
 
 渚本介が擬古成に対する復讐心で旅をしている。
 ここまで想像するのは容易かった。

 だから、真実を知りたかった。
 渚本介に何があったのか、ということを。

94 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:14:36 ID:IO2UyPh6O
 
(´・ω・`)「…それを聞いてどうするつもりだ?」

 
 無表情で渚本介が尋ねる。
 ブーンは溢れ出てくる本心を渚本介に伝えた。
 
 
( ^ω^)「僕は渚本介ともっと仲良くなりたいんですお。でも、僕はまだ渚本介さんのことを何も知らないんですお」

( ^ω^)「絆を深めるには、やっぱり互いを知ることなんですお」

( ^ω^)「だから、聞かせて欲しいんですお。渚本介の過去を」

(´・ω・`)「……」
 

 相変わらず無表情を続ける渚本介。
 しばらくブーンの表情を見つめると、小さく笑った。

 
(´・ω・`)「お前は優しい人間なんだな」

( ^ω^)「…え?」

95 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:15:32 ID:IO2UyPh6O
 
(´・ω・`)「お前の言う通りさ。互いを知ることが、絆を深める初手だ」

(´・ω・`)「でも、世の中にはわからなくていいこともある。わからないほうがいいことがある。そうだろ?」
 
 
 上手くはぐらかされたな、と思った。
 しかし、ブーンは何の不快感も、疑念も起こらなかった。

 それは、過去を教えてくれない渚本介を無意識に受け入れてしまったせいか。
 それとも。
 
 
( ^ω^)「…その通りですお渚本介さん」

(´・ω・`)「ははは、すまないな。ほら、お前の荷物だ」

 
 この屈託のない優しい笑顔を見てしまったからか。
 ギターを背負い、食料の半分を持ち、ブーンは渚本介と共に歩き出した。
 
 
 
──

96 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:16:37 ID:IO2UyPh6O
──
 

 島川領三久紫井(みくしい)。
 二子堂城を挟んで、二子厨の庄とは反対側に位置する大きな国である。

 島川荒巻が治めるこの国では、交易面が弱腰であった分、貧困に悩まされている。
 その為、民衆の荒巻に対する態度は冷たくなっているのが現状だ。
 
 
 民の心が廃れてきている三久紫井に、ブーンと渚本介はたどり着いた。
 まだ昼を回った頃だ。陽気が包んでいるはずなのに、その町は目に見えてわかるほど白けていた。
 
 
(;^ω^)「…こんなことってあるんですかお」

(´・ω・`)「ん?」

(;^ω^)「だって島川荒巻と言えば、おおらかな人間で人々に好かれていて、治めた国は賑やかだったって…」

(´・ω・`)「…人は変わるもんさ。行こう」

97 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:17:57 ID:IO2UyPh6O
 
 人は変わる。良くも悪くも、一つのきっかけで人は変わっていく。

 三久紫井の町は、実に凄惨なものだった。
 活気のない店が並ぶ表通り。何か諦めきっているような、失望に満ちた人々の顔。ずっと遠くに見える、威厳の無い城。

 二人は前のように宿屋を探すことにした。
 案外すぐに宿屋は見つかったが、二子厨の庄にいたあの主人のような明るさも人の良さもなく、二人はぶっきらぼうに部屋に通された。
 
 
( ^ω^)「…酷いとこですお」

(´・ω・`)「はは、未来の日本はよっぽど平和なんだな。このくらい陰気な地なんて腐るほどあるぞ」

( ^ω^)「同じ日本に住んでるのに、どうしてこうなるんですかお」

(´・ω・`)「大地を同じくしても、国が違えば人が違う。人が違えば食う飯の味が違う」

98 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:19:26 ID:IO2UyPh6O
 
 つまり、と渚本介が続ける。

(´・ω・`)「人によって物の価値が違うもんなんだ。だから仲良くもなるし、争いもする」

(´・ω・`)「島川荒巻は他の領主と仲良くもなれず争いもできなかった。それが民衆の心を廃らす理由となったんだ」

( ^ω^)「そうなんですかお…」
 
 
 現代の日本と何も変わらない、とブーンは感じた。
 仲良くなる国もあれば、争いを起こす国もある。

 渚本介が未来の日本をどう想像しているかは知らないが、間違いなく渚本介は真実を知れば落胆するだろう。
 そして悟るはずだ。平和な時代なんて無いのだ、と。

 それならば、こうやって平和な未来を描きながら、争いの中を生きるほうが幸せなのかもしれない。
 ブーンはため息と共に窓の外に目をやった。

99以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/26(土) 23:19:53 ID:trn6Ybk60
ほう

100 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:20:47 ID:IO2UyPh6O
 
 その時だった。

(#・∀・)「ふざけんなコラァ!!」

(;´・_ゝ・`)「うっ…!」
 
 
 途端、向かいの酒屋から一人の若い男が転げ出てきた。
 その後から、鬼のような形相をした男がずんずんと姿を現した。
 喧嘩だ、喧嘩だぞ。と周りが騒ぎ立てる。

 少し歳のいった、怒っている方の男が声を上げた。
 
 
(#・∀・)「てめえ今何て言いやがった!?俺らを馬鹿にしてんのか!!」

(;´・_ゝ・`)「馬鹿になどしておりません!でも、こんなことは絶対間違ってる!」

(#・∀・)「てめえ!いい加減にしやがれ!!」
 
 
 若い男の方も負けじと声を張る。
 しかし、怒り狂った男に問答無用に殴られてしまった。

101 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:21:51 ID:IO2UyPh6O
 
(;^ω^)「あわ、わわわ、喧嘩ですお渚本介さん!」

(´・ω・`)「そうか」

(;^ω^)「そうかって…」
 
 
 他人の争いごとには興味を持たない性格なのか。
 とにかく、ブーンは窓枠にしがみついて喧嘩の様子をもう一度見た。

 怒り狂った男は既に殴るのを止めさせられていた。周りの屈強な男達に抑えられていたのだ。
 体にしがみつかれながらも、這いつくばる若い男を睨みつける。
 
 
(#・∀・)「今度あんなこと言ってみやがれ、次はぶっ殺してやらぁ!」

 怒りに満ちた言葉を吐き捨てると、男は周りの手を乱暴にほどき、店の中に戻っていった。
 野次馬達はあっという間に去り、膝をつきながら顔をさする男が、一人取り残された。

102 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:23:16 ID:IO2UyPh6O
 
(;^ω^)「…ちょっとあの人連れてきますお!」

(´・ω・`)「えっ」

(;^ω^)「渚本介さんは待っててくださいお」
 
 
 渚本介が反応する前に、ブーンは部屋を飛び出した。
 ちょうど入り口の辺りにいた男に、慌てながら話しかける。
 
 
(;^ω^)「大丈夫ですかお!?」

(メ´・_ゝ・`)「ありがとうございます。俺は無事……って南蛮人か?」

(;^ω^)「違いますけど、とにかく部屋に上がってくださいお!手当てしなきゃ!」

(メ´・_ゝ・`)「俺の心配なら無用ですよ」

(;^ω^)「いいから来てくださいお!」

(メ´・_ゝ・`)「強引なお方だ…では御言葉に甘えさせていただきます」
 
 
 
──

103 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:24:24 ID:IO2UyPh6O
──
 

 傷の治療をするつもりで部屋に上がらせたが、ブーンは手当てのできるものを持っていないことに気づいた。
 しかし、財布の中に絆創膏を入れていたのを思い出し、それを男の顔に貼った。

 男は何やら不思議そうに顔に貼られた絆創膏を触ったが、すぐに目の前のブーンと渚本介に頭を下げた。
 
 
(´・_ゝ・`)「御世話頂きありがとうございます、ブーン殿、渚本介殿」

(´・_ゝ・`)「俺は出見足(でみたす)といいます。よろしくお願い致します」

( ^ω^)「よろしくだお出見足。そう堅くならなくてもいいお」

(´・ω・`)「ふむ」
 
 
 改めて出見足の顔を見ると、随分と若い青年であることに気付いた。
 ブーンよりも年下に見えるが、性格はかなりしっかりとしている。

104 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:25:53 ID:IO2UyPh6O
 
 堅くならなくてもいいと言ったのにも関わらず、出見足は姿勢を崩そうとしない。
 そんな出見足に、ブーンは喧嘩の原因を尋ねてみた。
 出見足はバツが悪そうに目を背け、少し置いて語り出した。
 
 
(´・_ゝ・`)「ブーン殿は、この国が荒巻様のせいで貧しくなっているのは御存知でしょうか」

( ^ω^)「知ってるお。それがどうかしたのかお?」

(´・_ゝ・`)「……明日の朝なんです」

( ^ω^)「え?」

(´・ω・`)「……」
 
 
 何のことかさっぱりわからないブーン。その後ろで、渚本介が頭を掻いた。
 
 
(´・_ゝ・`)「今夜にも三久紫井中から農民らがここに集まって、明日の朝、向こうに見える枚未九城を攻めるつもりなんです」

105 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:27:01 ID:IO2UyPh6O
 
(;^ω^)「……まじかお…」

 枚未九城といえば、三久紫井を治めた島川荒巻の居城だ。
 ということは。
 
 
(;^ω^)「…一揆を起こすつもりなのかお!」

(´・_ゝ・`)「そういうことです」

(´・ω・`)「やはりな」

 渚本介がようやく声を出した。
 何がやはりなのか、とブーンが振り向く。
 
 
(´・ω・`)「民衆が妙に気が立っている様子だったから、まさかとは思っていた。恐らくお前に殴りかかったあの男が民衆をまとめ、一揆の案を出したのだろう」

(´・_ゝ・`)「…はい、その通りでございます」

106 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:28:47 ID:IO2UyPh6O
 
 少し意表を突かれたような顔で、丁寧に答える出見足。
 渚本介は更に続けた。
 
 
(´・ω・`)「お前は一揆を止めさせるべく、酒屋にいたあの男に話をしに行った。その結果がこれなんだな」

(´・_ゝ・`)「はい…」

(´・ω・`)「いいか、この乱世に国一揆の一つや二つは珍しくない。一揆というのは絶対無二の民意だ。止める必要はない」

(;^ω^)「渚本介さん…!」
 
 
 渚本介が一揆を肯定したのは意外だった。
 しかし、ブーンは何も反論の言葉が出てこなかった。

 日本史で習った限り、渚本介の言う通りなのだ。
 一揆は唯一の行動的な民意であり、良くも悪くも、必ず現状を変えることができる。

 ブーンが口を結んでいると、今度は出見足が口を開いた。

107以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/26(土) 23:29:07 ID:8Sih.ddc0
さるは居なくとも支援はしたい

108 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:29:57 ID:IO2UyPh6O
 
(´・_ゝ・`)「…俺は、そうは思いません」

( ^ω^)「!」

(´・ω・`)「……」

(´・_ゝ・`)「一揆なんて、人が死ぬだけです。泣きを見る人が増えるだけです。こんなのが民意だなんて、思いたくもありません」

(´・_ゝ・`)「それと…荒巻様は心優しいお方です。この国が貧しくなったのは、他に何か原因があるはずなのです」

(´・_ゝ・`)「荒巻様には御健在でいらして欲しい。荒巻様の治めるこの三久紫井で、争いなど見たくない」
 
 
 出見足の拳はいつの間にか握り締められ、少し震えていた。
 三人を包む空気が、着実に重くなっていく。

109以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/26(土) 23:32:04 ID:trn6Ybk60
死亡フラグ?

110 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:32:54 ID:IO2UyPh6O
 
(´・_ゝ・`)「今回の一揆の長…あの男、名を茂羅(もら)といいます」

(´・_ゝ・`)「茂羅殿は昔、幼き息子を山賊に殺されているのです」

(;^ω^)「……」

(´・_ゝ・`)「それなのに、争い事をやめようとしないのです。結局はまた誰かが泣くだけなのに」
 
 
 意外だった。
 一揆というものは民衆全員の意志であるというイメージを、ブーンは持っていたからだ。

 しかし、この戦国の世に、争い事を嫌う青年がいる。
 一揆を止めようとする男がいる。

 どう反応していいのかわからず固まるブーンの後ろで、渚本介が立ち上がった。
 
 
(´・ω・`)「お前の気持ちはわかる。しかし一揆というものは激情の塊だ。容易く止められるものじゃない」

(´・_ゝ・`)「……」

111 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:35:13 ID:IO2UyPh6O
 
 渚本介の台詞に、ブーンは少し違和感を覚えた。
 しかし、そんなことはお構いなしに渚本介が続ける。

(´・ω・`)「だが、島川荒巻は確かに心優しい領主だ。戦乱を好まない交易なら得意であるはずなのだが……何か引っかかるものがあるな」

(´・ω・`)「おい、今晩に一揆の面々が集まると言ったな。場所はどこだ」

(´・_ゝ・`)「はい。場所は山のふもとにある枚里州寺でございます」

(´・ω・`)「…わかった。ブーン、今晩には宿を出るぞ」

( ^ω^)「え?いいですけど…」

(´・ω・`)「それでは出見足。今晩枚里州寺にて会おう」

(´・_ゝ・`)「?…わかりました。失礼致しました」

112 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:36:16 ID:IO2UyPh6O
 
 丁寧に頭を下げ、部屋を出ていく出見足。
 その背中を見送ったあと、ブーンは渚本介に向き直った。
 
 
( ^ω^)「渚本介さん、一体どうしたんですかお?」

(´・ω・`)「何がだ」

( ^ω^)「この一揆や出見足のことなんてまるで興味ない様子だったのに、いきなり一揆を止めようと動くなんて」
 
 
 ブーンが渚本介の話に違和感を覚えたのは、まさにそこだった。
 喧嘩の時も、他人の争いに興味を持たずといった様子だった。

 しかし、渚本介と何の関係もないこの国一揆の話には、妙に積極的だ。
 渚本介は少しだけ声のトーンを落とし、話し出した。
 
 
(´・ω・`)「実は、茂羅という名には聞き覚えがあるのだ」

113 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:37:56 ID:IO2UyPh6O
 
 目を丸くするブーンに、渚本介は更に話を進める。

(´・ω・`)「俺の記憶が正しければ、あの擬古成の家臣の一人に、腕っぷしの強い茂羅という男がいた」

(´・ω・`)「出見足が茂羅の名を口にしたとき、俺はある疑念を浮かべた。もしやこの三久紫井の地は、あの擬古成が奪い取らんとしているのではないかと。それも、直接手を下さず、戦略的にな」

(;^ω^)「ど、どういうことですかお?」

(´・ω・`)「まず擬古成が何らかの圧力をかけて、三久紫井の交易を鈍らせて国を貧しくさせる。次に家臣の擬古成を町に繰り出し、民衆に対して一揆を企てる」

(´・ω・`)「するとどうだ。広大な土地を誇る国は廃れ、城は図らずも城主のいない状態になる。その城に天野勢が立ち入れば、三久紫井は天野領となる」
 
 
 つまり、擬古成が圧力をかけてある三久紫井にスパイを送り、国内で争わせ、後から擬古成が知らん顔で国の統率を図る。という筋書きだ。
 そのスパイが先ほど出見足と喧嘩をしていた男、茂羅であるというのだ。

114 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:38:55 ID:IO2UyPh6O
 
 完璧な戦略だ。擬古成も渚本介も、相当頭が切れるらしい。
 ブーンがやけに納得していると、渚本介は一息ついて話を続けた。
 
 
(´・ω・`)「だから、この一揆は阻止するべきだ。今晩にどうにかしないと、擬古成は天下統一をまた進めてしまうはめになる」

( ^ω^)「…わかりましたお。僕もできることは協力しますお」

(´・ω・`)「うむ」
 
 
 固い顔をしていた渚本介が、軽く笑った。
 
(´・ω・`)「ま、昼寝でもするか。あまり寝てないからな」

( ^ω^)「はいですお」
 
 
 
──

115以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/26(土) 23:39:24 ID:7lvVt10gO
支援

116 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:39:48 ID:IO2UyPh6O
──
 
 
 夜。
 月が雲間に見え隠れする夜空の下、渚本介は窓の外を眺めていた。
 
 
(´・ω・`)(そろそろだな)

 町の遠くで、何やらざわめきが聞こえる。
 一揆に備えた男達が、続々と集まってきているのだろう。
 
 
(´・ω・`)「ブーン起きろ。そろそろ行くぞ」

( ^ωー)「うーんあと5マイル…」

(;´・ω・`)「何を言ってるんだ。さあ荷物を持つんだ」

( ^ω^)「……あ、了解ですお」
 
 
 眠い目をこすり、ブーンは荷物を持った。
 宿屋にはもう誰も残っている様子はなく、町の中もやけに静かだった。

117 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:41:59 ID:IO2UyPh6O
 
(´・ω・`)「もう集まってるらしいな」

( ^ω^)「僕らも遅れちゃいけませんお」

(´・_ゝ・`)「ブーン殿、渚本介殿!」

( ^ω^)「おっ?」
 
 
 急に声をかけられ、後ろを振り向く。
 そこには、何やら複雑そうな顔する出見足が走ってくる姿があった。

 
(´・_ゝ・`)「お二方は、枚里州寺に行くつもりですか?」

(´・ω・`)「ああ」

( ^ω^)「その通りだお」

(´・_ゝ・`)「…俺もお供させてください。この一揆は、あってはならないことです」

( ^ω^)「もちろんだお。一緒に行くお!」

(´・_ゝ・`)「ありがとうございます」

118 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:43:11 ID:IO2UyPh6O
 
 枚未九城が佇む山のふもとに、その枚里州寺はある。
 境内はかなり広く、大人数が集まるには都合のいい場所だ。

 寺の前まで着くと、三人の目に飛び込んできたのは、想像していたそれよりも大人数の民衆。
 数にして五百ほどが、既に集まっていた。
 

(;´・_ゝ・`)「こんなにいるのか…」

(;^ω^)「……」

(´・ω・`)「茂羅が出てきたぞ。裏へ回ろう」
 
 
 広場に集まった民衆の前に、茂羅が現れた。
 本堂の少し高い位置にいるため、その姿はやけに目立っている。
 自然と、民衆が静まり返った。
 
 
( ・∀・)「…よくぞ集まってくれた。三久紫井の強き魂が、今、この目の前に広がっとる」

119 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:44:10 ID:IO2UyPh6O
 
 民衆は静かに、しかし力強く、茂羅を見つめる。
 
 
( ・∀・)「今回、我々が起こすのは戦ではない。伝言だ。至らん政を続けた、島川荒巻に対する伝言なのだ」

( ・∀・)「国の在り方を決めるのは上の連中じゃねえ、俺ら民衆だってな」

( ・∀・)「三久紫井の強き魂をもつ同志達よ、今こそ立ち上がるときだ!これ以上、あの腑抜けの荒巻に国を任せるわけにはいかん!」

(´・_ゝ・`)「やめるんだ茂羅殿!!」
 
 
 茂羅が、民衆が、一気に固まった。
 その視線の先には、本堂の裏からでてきた一人の若い男、出見足が立っていた。

120 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:45:01 ID:IO2UyPh6O
 
 唖然としていた茂羅。
 しかし、すぐにその額に青筋が浮かび上がってきた。
 
 
(#・∀・)「てめえ…殺されにきたのか?」

(´・_ゝ・`)「皆の衆、聞くがいい!!荒巻様は心優しい領主!国が貧しくなっていったのには、何かわけがあるのだ!!」

(#・∀・)「いい加減にしやがれ!」
 
 
 途端、茂羅は刀を抜いて出見足の首にあてがった。
 出見足は固まり、民衆が少しだけざわめき始める。
 
 
(#・∀・)「どうやら本当に殺されてェらしいな。童が、根も葉もないことを!」

(´・ω・`)「待て」

121 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:46:35 ID:IO2UyPh6O
 
 本堂の裏から、今度は二人の男が現れた。
 渚本介とブーンが民衆の前に出てきたのだ。
 混乱がますます大きくなった。
 
 
(#・∀・)「誰だてめえら!!」

(´・ω・`)「何故貴様に名乗る必要がある?民衆にずっと正体を隠していた貴様に」

(#・∀・)「んだと…!?」

(´・ω・`)「とぼけなくてもいい。思い出したよ。貴様の顔と名は覚えている」

(#・∀・)「何言ってやがる!!」

(´・ω・`)「久しいな。天野家家臣、柴原茂羅よ」
 
 
 ざわめいていた民衆が、一気に静まり返った。
 信じられない言葉が、急に耳に飛び込んできたからだ。

122 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:47:32 ID:IO2UyPh6O
 
(;・∀・)「な、何言ってやがる!俺は…」

(´・ω・`)「貴様は三久紫井の民などではない。恐らく擬古成の命で、町人になりすましていたのだろう?」

(;・∀・)「うるせェ!!クソッ!」
 
 
 明らかに狼狽した茂羅。突然、茂羅は刀を振りかざして渚本介に向かってきた。
 しかし渚本介は刀を軽くかわし、茂羅を床に押さえつけた。
 
 
(;・∀・)「クソったれ!!離しやがれ!!」

(;・∀・)「なんで…なんでこうなるんだよ畜生!!」

(´・ω・`)「言え。貴様はなぜ、三久紫井に来たのだ」

123 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:48:57 ID:IO2UyPh6O
 
 茂羅は暫く口をつぐんでいたが、やがて観念したかのようにポツポツと語り出した。
 
 
(; ∀ )「…復讐さ」

(´・ω・`)「復讐?」
 
 
 渚本介が聞き返すと、茂羅は小さく頷いた。
 ブーンも出見足も、大勢の民意も、静かに茂羅の声に耳を傾けた。
 
 
(; ∀ )「俺ぁ昔、一人息子を殺されてるんだ。俺がまだ擬古成様の家臣として丹生捉城にいた頃の話だ」

(; ∀ )「その日、俺は擬古成様の命で町を回っていたんだ。せっかくだから擬古成に頼んで、息子も一緒に町を歩き回った」

(; ∀ )「楽しかったさ。息子は町に下りるのは初めてで、ずっとはしゃぎ回っていた。ところが家臣である俺の息子に目をつけた山賊が、息子をさらって…」

(´・_ゝ・`)「……」

124 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:50:06 ID:IO2UyPh6O
 
(; ∀ )「……冷たくなった息子の横には、山賊の荷袋が忘れてあった。それに縫われていた印が、この三久紫井のものだったんだ」

(; ∀ )「当時から擬古成様はこの三久紫井を取るつもりで、島川荒巻に圧力をかけていた。だから俺は協力させてくれと頼み込んだ」

(; ∀ )「……息子を殺したこの国に、復讐を果たす為にな」

 
 
 静まり返る境内。
 抵抗もせず、押さえつけられたままの茂羅に、出見足が歩み寄った。

 
(´・_ゝ・`)「茂羅殿…」

(  ∀ )「……息子が生きてりゃ、てめえくらいの歳だった」

 顔を伏せたまま茂羅が口を開く。
 心なしか、茂羅は震えているようだった。
 

(  ∀ )「…だから、てめえくらいの若僧が憎たらしかったんだ」

(´・_ゝ・`)「……」

125 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:51:21 ID:IO2UyPh6O
 
(´・ω・`)「…それで」

 押さえつけたまま、渚本介が声をかける。

(´・ω・`)「お前はこれからどうしたいんだ」

(  ∀ )「殺してくれ。一揆は失敗だ。なれば俺に生きる道はない」

( ^ω^)「それは違いますお!」
 
 
 今まで黙っていたブーンが、声を上げた。
 その奇妙な人間に、全員の注目が集まる。
 
 
( ^ω^)「復讐なんかやめて、茂羅さんはこれから真っ当に生きるべきですお!息子さんの分も!」

(  ∀ )「……」

( ^ω^)「死んだ人間の為だけに生きるなんて、そんなの間違ってますお!茂羅さんは自分の為に、真っ当に生きるべきなんですお」

(´・_ゝ・`)「ブーン殿…」

(  ∀ )「………」

(´・ω・`)「……」

126 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:52:26 ID:IO2UyPh6O
 
( ^ω^)「親の復讐を望む子が、一体どの世界にいるんですかお。わかってくださいお」
 
 
 相変わらず静寂が続く。
 しかし、茂羅の体は目に見えてわかるほどに震えていた。
 
 
( ;∀;)「…ああ、わかってる」

( ;∀;)「わかってるよ……畜生…」

(´・_ゝ・`)「……」

(´・ω・`)「…ブーンの言う通りだ。好きにしろ」

( ;∀;)「ああ…」
 

 渚本介が茂羅の体を離した。
 しかし、茂羅はその場に倒れたまま動こうとしなかった。

127 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:53:31 ID:IO2UyPh6O
 
 誰もが声を出さずに茂羅を見つめるなか、渚本介はブーンにギターを渡した。
 少し驚いたが、ブーンは素直に受け取った。
 
 
(´・ω・`)「ブーン、ぎたーを弾いてくれ。曲は任せる」

( ^ω^)「はいですお」

(´・_ゝ・`)「ぎたー?」

 
 何が起こるんだ。と民衆が見つめるなか、ブーンはギターを構え、演奏を始めた。

 曲はエリック・クラプトンの「Tears in Heaven」のソロギターバージョン。
 悲しみ。愛しさ。後悔。哀願。全ての感情を、優しい音色に乗せて、境内に響かせていく。
 
 
(´・_ゝ・`)「……」

( ;∀;)「……」

(´・ω・`)「……」
 
 
 誰一人、一切の声も出さないまま、ブーンの奏でるギターを聞いていた。
 その日の夜はやけに静かで、やけに悲しかった。
 
 
──

128 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:54:50 ID:IO2UyPh6O
──
 

 翌朝。
 一揆の話なんてまるで無かったかのように、いつもの朝が三久紫井を迎えた。
 昨日までと違うのは、なんとなく町の人達の顔が、少し落ち着いたことくらいか。
 
 
 結局、昨日はそのまま解散となり、茂羅は一人一人に頭を下げて回った。
 後悔しながら、反省しながら、涙を流しながら。
 
 
 人は変わる。良くも悪くも、一つのきっかけで人は変わってしまう。
 

 旅の支度を終えたブーンと渚本介は、最後に出見足と会って話をした。

129以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/26(土) 23:55:20 ID:8Sih.ddc0
http://www.youtube.com/watch?v=ry23Xm1WNH4
良い曲だな

130 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:56:06 ID:IO2UyPh6O
 
(´・ω・`)「…これでこの町は暫く安泰だろう。一揆が失敗したと聞けば、擬古成の圧力もそのうち無くなる」

(´・_ゝ・`)「お二方には何と感謝すればいいのやら…本当にありがとうございました」

( ^ω^)「いいんだお、用事のついでなんだから。ねえ渚本介さん」

(´・ω・`)「はは、そうだな」
 
 
 相変わらず丁寧に頭を下げる出見足に、笑顔を送る二人。
 出見足はふと何かに気付くように顔を上げると、手に下げていた小さな荷物を二人に手渡した。
 
 
( ^ω^)「これは…?」

(´・_ゝ・`)「ウチで作ったおにぎりと漬け物です。これくらいしかお礼ができなくて…」

(´・ω・`)「はは、いいじゃないか。ちょうど腹が減ってたんだ」

( ^ω^)「ありがとう出見足。また会えるといいお」

(´・_ゝ・`)「はい!」

131 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:57:22 ID:IO2UyPh6O
 
 ブーンと渚本介は出見足に背を向け、町を後にした。
 出見足がくれたおにぎりは、コンビニで買っていたそれよりも、格段に美味しかった。
 
 
 
 人は変わる。
 良くも悪くも、一つのきっかけで人はこれまでの自分を忘れることができる。

 一揆に失敗した茂羅が擬古成の使いに殺されたことを二人が知るのは、それから少し後の話になる。
 
 
 
第四話 終

132以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/26(土) 23:57:56 ID:trn6Ybk60
おにぎりと漬け物くいたくなった…

133以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/26(土) 23:58:47 ID:trn6Ybk60
乙乙

134 ◆vVv3HGufzo:2011/02/26(土) 23:59:00 ID:IO2UyPh6O
今回の投下はこれで終わりです!
数々の支援、>>129さんの曲紹介、ありがとうございました!

135以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/27(日) 00:10:00 ID:tOOynGvA0
乙ー
音楽に時代の壁は関係ねぇ!

136以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/27(日) 14:56:19 ID:5A/dFtA.0
乙でした
擬古成容赦ねえな

137以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/27(日) 23:46:49 ID:N62PBn4A0
擬古成ェ

138以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/02/28(月) 21:30:42 ID:y5gEE83cO
面白い、避難所で予告してた作品ですね 
次の投下前に予告スレか総合で 
告知してくれると嬉しいお

139以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/02(水) 00:14:22 ID:032O9yh.0
選曲に泣いた…

140 ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 11:57:28 ID:Vx0gVzAYO
皆さんありがとうございます!
そうさ、音楽に時代の壁なんて関係ねえ!

それでは続きを投下します

141 ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 11:59:53 ID:Vx0gVzAYO
***
第五話 「愛と幸福は大きく違う」

***
 

(;´∀`)「…こ、ここまで来れば大丈夫だモナ」

(゚、゚;トソン「本当ですか?」

(;´∀`)「とにかく中に入るモナ」
 
 
 白昼にも関わらず、森の中は異様に薄暗かった。
 森には古い廃寺があり、薄暗い森の陰気な空気を更に助長している。

 その廃寺に、武士の格好をした男と、遊女のような格好をした女が駆け込んできた。
 

(;´∀`)「追っ手は…見当たらないモナ」

(゚、゚;トソン「良かった…」

142 ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:00:44 ID:Vx0gVzAYO
 
 武士の格好をした男、模那(もな)が本堂の扉を閉めた。

( ´∀`)「これで暫くは安心できるモナ」

(゚、゚トソン「……」
 

 笑顔をこぼす模那に対し、遊女の格好をした女──十遜(とそん)は、暗い顔を下に向けたままだ。

 どうした?と聞くまでも無かった。
 十遜が心配していることなど、模那はとっくにわかっているからだ。
 
 
( ´∀`)「…拙者は、何も後悔しておらんモナ」

(゚、゚トソン「私もです」

( ´∀`)「なれば顔を上げるモナ。他に何の心配があるんだモナ」

(゚、゚トソン「……怖いのです」

143 ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:01:35 ID:Vx0gVzAYO
 
 顔を下に向けたまま、十遜がぽつぽつと呟いた。
 

(゚、゚トソン「これからの生活が、果たしてまともにいくのか…貴方様が無事に生きていけるか」

(゚、゚トソン「そう考えると、怖くなってしまうのです」

( ´∀`)「……」
 

 なんて優しい、なんて人思いな女なんだ。
 そうとわかっているのに、何も答えられない。口が開かない。

 模那は十遜のもとに歩み寄り、そっと抱き締めた。
 

(゚、゚トソン「……」

( ´∀`)「お前が心配することなんて何もないモナ。拙者の傍らで、今を生きていてほしいモナ」

(゚、゚*トソン「…はい」

 
 甘い空気が二人を包む。
 このまま時間が止まればいい。甘美な時を二人だけで味わえていれば、それでいい。
 そう感じていた矢先、本堂の外から何か音が聞こえた。

144 ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:02:38 ID:Vx0gVzAYO
 
( ´∀`)(゚、゚トソン「!」
 

 一気に体を離し、刀に手をかける模那。
 その後ろで、怯えた目を音の方に向ける十遜。

 音の正体は、人間の話し声であることがわかった。
 男の声だ。恐らく二人の男が此方に向かってきている。
 

(;´∀`)「……」

(゚、゚;トソン「……」
 
 
 刀を握る手に力が入る。
 模那の真剣な眼差しの先で、本堂の扉が勢いよく開いた。
 
 
( ^ω^)「でも渚本介さん、こんな廃寺も意外と未来には残っているもんですお。復興修r」

(;´∀`)「でやァァァ!!」

(;^ω^)「うおおおお!!?」

145 ◆vVv3HGufzo:2011/03/02(水) 12:03:31 ID:Vx0gVzAYO
 
 扉が開いた途端、模那は刀を振り上げてきた。
 腰を抜かすブーンの横で、渚本介が素早く虎恍丸を抜き、模那の刀を止めた。

 力を込めて刃で押し合いを続けるなか、模那が口を開く。
 

(;´∀`)「き、貴様ら誰だモナ!!」

(´・ω・`)「こっちの台詞だ。見たところ武士のようだが、何故このような廃寺にいるのだ」

(;´∀`)「うるさいモナ!さっさと立ち去れモナ!!」

(´・ω・`)「…まあ、それは構わぬが」
 
 
 突然、渚本介が体を上手く使いながら刀を持つ手の力を極端に緩めた。
 刀に体重をかけていた模那が、一気に前へよろける。


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