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スタッカート!

511名無しのAA書きさん:2019/01/21(月) 16:57:54
ラーメンの歴史学――ホットな国民食からクールな世界食へ


著者が外国人だからライトでイーカゲンなものだと思っていたが、日本の食文化に真っ向から真摯にぶつかった力作。
平安時代、江戸、文明開花、戦時など、ラーメン以前、またはラーメンへとスポットが当たる前夜の景色にも筆は走り、日本史と共に食の時代を浮き彫りにしていく。
その反面、ラーメンの登場は本書の中では遅く、350ページほどの分量の中で、100ページほどは時代考察にやきもきするし、200ページ経ってもラーメンは出てこない夜明け前。
ラーメンが語られるのはそこからで、取り分け自分の興味関心が出てくるホットだったりクールだったりする箇所は、終章二つと後書きの、100ページちょっとに絞られる。
前菜中心で、ようやっとメインが来たと思ったら、あっという間に食べ終わってしまった感じ。

これはタイトルが悪い。
本題の「ラーメンの歴史《学》」は歴史ではなく、「歴史学」を語ろうとするその姿勢を反映するが、サブタイトルは本書全体を映さない。
「日本の食文化におけるラーメン」など、もう少し広いものを使って欲しかった。世界でのラーメンブームへの便乗感が、長い時代考証を交えた研究にどうも沿ったものではない。

しかし、本書におけるラーメンとは一見無関係な日本の食文化が、意外と知識として面白い。日本食文化論を知りたければ、これはかなり為になる。
分かりにくいものを分かりやすくしようとするその姿勢は、やはり外国人が外人に説明するものだからか、しっかりしている。
日本人が、近代以前はとても質素な食生活をしていた、肉食どころか魚でさえも、地方と都会の落差が大きかった、今でいう「ヘルシーな伝統的な日本食」が、正に現代の日本のお偉いさんの視点から造られたものだとする。
これは日本人はなかなか勇気をもって伝えられないような、鋭さが迫ってくる視点。

各地方が時代によって均一化していく、そうさせようとする圧力を描きながら、その一方でラーメンって凄く地方色を持っているよねっていうのを描く。
このパラドックスには考えさせられる。

やはり時代が現代に近づくにつれ面白さや興味関心が増していく感じ。
と同時に、ちょっと時によって客観化されていない情報の偏りや、視点の歪みみたいなのも増えていく。
だけど、いや、だからこそ面白い。
そしてその面白さを保証しているのは、やや冗長とも思える「それまで」をしっかり丁寧に描写しているから。
その連続性の上で、自然に繋がっていく個所やちょっと強引かなって箇所が分かるし、ここまで調べている本だからって身を任せれる信頼感もある。

漫画とラーメンの関係でNARUTOが出てこなかったり、「つけ麺」が全く除外されていたり、ラーメンチェーン店が視点に入ってなかったり、ラーメンパークみたいなのの比重に疑問が残ったり。
そういうのを間違いとするのではなく、愛の歪みとして楽しみたい。
喜久蔵ラーメンな、落語家喜久蔵へのインタビューはそれまでの研究的な視点とは明らかにバイアスが強すぎるものだけど、ここが読んでいて一番ダイナミズムがあった。




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