したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

スタッカート!

470名無しのAA書きさん:2018/11/28(水) 20:48:55



    猫は、暴れてはいませんでした。
    ただ、どういうことなのか分からず、きょとんとしているようでした。
    その恰好は、漫画の一場面のようにユーモラスなものでした。

    ――無理よ。

    と、お母さんは思いました。

    でも、さきちゃんは一途な顔をして、懸命になんとかしようとしていました。
    風がひゅうっと吹いて、さきちゃんの前髪を揺らしています。

    ――さき。

    お母さんの目からは、いつの間にか、涙がぽろぽろと溢れていました。


ここは、もうヤバい。

まず、猫のおかし気な格好を写す。
悲しい場面に一つ笑いを入れることで、心が緩み、涙腺を緩ませる。(泣け泣けモードがしつこく続くあざとい場面だと、構えちゃうじゃない?)
また主観的に極めて悲しい場面でも、一つ視点を遠く客観にすると滑稽にも思える場面だと示す、この現実感というか、この現実があるからこその主観の想いの儚い切なさと言うか。

それでさ、お母さんが(無理よ)と思う。これを「無理よ」とセリフで言えない。この言葉に出来ない想いのあや。
その言葉に出来ない想いは、(さき)という呼びかけも口に出来ないことで、いよいよぐぐっと迫ってくる。
泣いていて、喉がひくついて、形ある言葉に出来なかったとも取れますし。ここらへん、の語りの、絶妙さ。

泣いてしまう母。
さきちゃんの悲しみ、別れの切なさを、この母と言う視点、プリズムを通すことで、より引き出す視点の妙。
さきちゃんは悲しかった。とか、さきちゃんの涙やセリフを入れないことで、かえってその気持ちが大切なものとして、切実なものとして、伝わってくる、言葉のマジック。

そこで母の涙。で読者は心で共に泣いてしまうわけですけど。この対比となる、涙を書かない表現も上手く、またそれが伏線と対比となりラストの印象深さを高めている。




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板