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ギコ教授のなんでも講義・ギコ連合板2
1
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/22(金) 23:01:49
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 激動といわれるこの時代だからこそ、
| 先人の言葉に耳を傾けなければならないのです!
\__ ________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
鳴かぬなら コロッケ食べよう ホトトギス
織田信長
,__
iii■Λ /
━.(,, ゚Д゚) /━━━━━━ΛΛ ━━━━ΛΛ━
(| つ ∇ (゚Д゚;) (゚Д゚;)
| | ┌─┐ /⊂ ヽ /⊂ ヽ
〜| | |□| √ ̄ (___ノ〜 √ ̄ (___ノ〜
し' J │ │ || ━┳┛ || ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄! |====∧==========
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そこは「殺してしまえ」じゃないのか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| つーか、信長は「ホトトギス」の句なんか詠んでねぇ…
\_____________________
前スレ
ギコ教授のなんでも講義・ギコ連合板
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/3246/1305778297/
2
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/22(金) 23:02:21
1/17
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「ロケット開発史」講義第11回。
| 「M-3S」に続く「ミューロケット」の講義、心して受けるがよい!
| わしが東京ギコ大学教授、ギコ教授である!!
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
日本ロケット開発史・第11回
〜己の道を魁よ〜
,__
iii■∧ /
━ (# ゚Д゚)/━━━━━━∧∧━━━━∧∧━
| `つ ∇ (゚∀゚;) (ДT,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
〜| | | □ | √ ̄(___ノ〜 √ ̄(___ノ〜
. ∪∪ | | || ━┳┛ || ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄.| |====∧==========
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 東ギ大生の生き様は〜♪
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 色無し 恋無し 単位無し〜♪
\____________________
3
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/22(金) 23:02:57
2/17
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 1977年のこと。「M-3Hロケット」の打ち上げが始まった年です。
| 東京大学宇宙航空研究所(以下、宇航研)で「ABSOLUTE計画」という
| ロケットの研究計画が提案されました。
| 全長こそ「M-3H」より縮まりましたが、直径・重量とも2倍もの
| 大型ロケットを作ろうという豪華計画です。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
ABSOLUTE計画
宇宙航空研究所の秋葉鐐二郎教授が提唱した
ロケットの総合研究開発計画。
最終的に3段式、全長18.5m、直径3m、総重量100tという
大型・高性能ロケットの実現を目標とする。
,__
iii■∧ /
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
〜| | | □ | √ ̄(___ノ〜 √ ̄(___ノ〜
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 ̄ ̄ ̄ ̄.| |====∧==========
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そりゃすごいな。
| だけど「今後10年は直径1.4m超えのロケットはできない」とか
| 言ってなかったっけ?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 糸川教授がそれを言ったのは、1960年代半ば。
| それから10年以上経ってる。
\____________________
4
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/22(金) 23:03:30
3/17
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ところが、このABSOLUTE計画、なかなか実行に移されませんでした。
| 技術的な問題というより、この政治的な問題が大きかったんですよね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1966年5月12日 衆議院科学技術振興対策特別委員会にて
宇宙開発に関する小委員長報告提出
・東京大学は1967年度以後、直径1.4mを超えるロケットの開発は
行なわないものとする。
・直径1.4mを超えるロケット開発は、科学技術庁が中心となって推進する。
…以後、日本の宇宙開発は、この小委員長報告を基に進められることになる。
,__
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 国に直径1.4m超えのロケット作るなって言われたのか。
| でも何で?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ロケット開発の主導権争いとかアメリカの思惑とか、いろいろ…
| まあ、その辺は次回以降で。
\____________________
5
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/22(金) 23:04:03
4/17
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| それでも、宇航研には「『M-3S』よりもっともっと高性能なロケットを
| 打ち上げたい!」という強い願望がありました。
| それは、ひとえに「ハレー彗星」が地球に近づいていたから、なんです。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
ハレー彗星
短周期彗星の一つ。約76年の周期で太陽の周りを周回する。
名前の由来はイギリスの天文学者、エドモンド・ハレーが
この彗星が「周期彗星」であることを発見したことによる。
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ハレー彗星か。さすがに俺でもこれは知ってるぞ。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| おそらく、世界で一番有名な彗星だろうな。
| ともかく、この時点で1985〜6年にかけて
| 太陽に近づくことはわかっていた。
\____________________
6
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/22(金) 23:04:36
5/17
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「彗星の近くに探査機を飛ばして、直接観測しよう───」
| 宇航研の彗星探査構想は、それまでの地球周りの人工衛星とは
| まったく違う野心的なものでした。
| ですが、それだけに彼らの前には大きな難関がいくつも
| 待ち受けていました。
| その一つが地球の重力からの脱出──
| つまり「人工惑星」の打ち上げです。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
打ち上げ(1984年末〜1985年初頭)
↓
地球重力圏脱出、太陽周回軌道に投入
↓
ハレー彗星に最接近(1986年3月ごろ)
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 重力を振り切るのか。聞くからに大変そうだぞ。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 重力を振り切るには「脱出速度」というのを
| 超えないといけない。
| 「M-3S」でも、そこまで運べる荷物はせいぜい50kg。
| これでどうしろと?
\____________________
7
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/22(金) 23:05:10
6/17
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| せめて、「M-3S」の2.5倍の打ち上げ能力を!
| 1978年、宇航研は宇宙推進シンポジウムで
| 「M-3S改計画」というものを発表しました。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
M-3S改計画
1978年に提唱された「M-3Sロケット」の性能向上計画。
第1段の直径を1.4mに維持しつつ、上段の直径を
1.6mに拡大しようというもの。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 東大のロケットは、直径1.4mまでじゃなかったのか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| まあ、すんなり通るはずがないわな。
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8
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/22(金) 23:05:43
7/17
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 1979年、宇航研は「M-3S改計画」の推進を政府に働きかけます。
| しかし、いわゆる「1.4m制限」にこだわるお上が
| 首を縦に振るわけがありません。
| すったもんだのあげく、計画を二段階に分けることで
| 翌1980年にようやく承認、予算化されました。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
M-3S改 I
第1段・第2段の直径を1.4mとし、第3段のノーズフェアリング
(衛星収納部のカバー)のみを直径1.6mに拡大する案。
M-3S改 II
当初の「M-3S改」の通り、上段を直径1.6mに拡大する案。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| やっぱり揉めたか…でも3段目が1.6mなのはOKなのか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「エンジンが1.4mだからいいじゃん」というのが
| 宇航研の主張。苦肉の策だな。
\____________________
9
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/22(金) 23:06:13
8/17
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| で、この「M-3S改 I」が後の「M-3SII」となったわけです。
| 開発経緯からして、今までの「ミュー計画」に基づくロケットとは
| 一線を画するものなんですね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
M-3SIIロケット
「ミュー」シリーズ第4世代の人工衛星打ち上げロケット。
日本で初めて惑星間空間に探査機を到達させた機体。
第1段は「M-3S」からの流用だが、他は新規設計である。
機体の軽量化、推進剤の進歩とあいまって、打ち上げ能力が
大幅に向上した。
1985年1月8日〜1995年1月15日、計8機打ち上げ。(うち7機成功)
全長:27.8m 外径:1.41m(ノーズフェアリング径:1.5m) 重量:61t
構成:3段式 軌道投入能力:770kg
主な衛星:「さきがけ」、「すいせい」、「ひてん」他
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| なるほど、前回の「ミュー計画最後の…」って意味がやっとわかった。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 一応、これを「ミュー」の第2期開発計画と位置づける
| 見方もある。
\____________________
10
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/22(金) 23:06:46
9/17
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「M-3SII」は、外観もそれまでの「ミューロケット」とは一味違います。
| 下段より太い3段目という頭でっかちなフォルム、ドデカい補助ブースター、
| その補助ブースターの頭に付いた何やら怪しげな突起物…
| なにかとそそるスタイルですね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
外観の比較
ttp://wwwj.vsop.isas.ac.jp/general/images/rocket1.jpg
怪しげな突起物
ttp://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtrpcs/hayabusa/sagamiharatour/m3booster3.jpg
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 怪しげとか、そそるとか、もっとマシな言い方あるだろ…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 怪しげな突起は、少しでも空気抵抗を抑えるための工夫。
| 「ノーズスパイク」という。
\____________________
11
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/22(金) 23:07:20
10/17
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「M-3SII」の開発が始まったのは、1981年に入ってからでした。
| ちょうどこの年、それまで宇宙開発をリードし続けた
| 東京大学宇宙航空研究所が改組され、文部省(現・文部科学省)直轄の
| 研究機関として生まれ変わりました。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1981年4月14日 文部省宇宙科学研究所(ISAS)発足
,__
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| 東大から離れたのか。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| …というか、それまでの宇航研は東大の名を冠しては
| いたものの、本質は全国の大学の共同研究機関だった。
| この改組は、その共同研究機関という性格をもっと
| 強めようというものだ。
\____________________
12
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/22(金) 23:07:52
11/17
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 計画当初のゴタゴタもあって、「M-3SII」の開発スケジュールは
| 相当過密なものでした。
| さらに、1983年に発生した大地震が追い討ちをかけます。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
日本海中部地震
1983年5月26日、秋田県沖で発生したマグニチュード7.7の地震。
死者104名、負傷者163名。
能代ロケット実験場も津波の直撃を受け、約2ヶ月間
機能停止に陥った。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| こりゃあ、大変だ!!!
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 能代の実験場は、1962年からロケットエンジンの
| 燃焼実験に使われ続けてきた場所だ。
| もちろん、多くの死傷者が出たことは痛ましいし、
| 「M-3SII」の開発にとっても、これは痛い。
\____________________
13
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/22(金) 23:08:23
12/17
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| しかし地上で何が起ころうと、ハレー彗星は待ってはくれませんからね。
| スタッフは、必死の努力で実験場の修復とスケジュールの確保に奔走。
| 1号機の打ち上げは、何とか目標としていた1985年初頭に間に合いました。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
さきがけ(MS-T5)
「M-3SIIロケット」の性能試験、宇宙探査技術の習得などを
目的とした試験探査機。日本初の人工惑星でもある。
1985年1月8日、「M-3SII」1号機にて打ち上げ。
彗星探査機としての機能も備えており、
1986年3月、ハレー彗星に接近し観測にあたった。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| こいつが初めて地球の重力を振り切って…
| 文字通り、「魁」だな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 固体燃料ロケットでの人工惑星打ち上げは
| 無理だと考えられていた。
| そんな常識を覆したのが「M-3SII」だ。
\____________________
14
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/22(金) 23:08:53
13/17
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「さきがけ」に続いて「M-3SII」2号機で打ち上げられたのが
| この「すいせい」です。
| どちらかというと、試験機の意味合いが強い「さきがけ」に対して
| 「すいせい」は本命のハレー彗星探査機です。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
すいせい(PLANET-A)
宇宙科学研究所(ISAS)が打ち上げたハレー彗星探査機。
1985年8月19日、「M-3SII」2号機にて打ち上げ。
1986年3月、ハレー彗星に接近。「さきがけ」とともに観測にあたった。
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| 探査機2機がかりで観測したのか。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| それだけじゃない。
| このハレー彗星探査は外国の探査機と共同でやったんだ。
| この国際協力は世界でも画期的といわれた。
\____________________
15
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/22(金) 23:09:23
14/17
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さて、この「M-3SII」は何も「人工惑星」ばかりを
| 打ち上げていたわけじゃありません。
| 従来からの地球周回衛星も打ち上げて、それらは
| 天文学上大きな成果を上げてるんですよ。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
3号機(1987年2月5日):「ぎんが」…X線天文衛星
4号機(1989年2月22日):「あけぼの」…磁気圏観測衛星
5号機(1990年1月24日):「ひてん」…工学実験衛星
6号機(1991年8月30日):「ようこう」…太陽観測衛星
7号機(1993年2月20日):「あすか」…X線天文衛星
(注)「ひてん」は地球周回衛星ではない。
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| X線天文衛星も打ち上げたのか。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「M-3SII」では「M-3S」の2.5倍ものパワーを生かして、
| 衛星の大型化・高性能化が図られた。
| 同じX線天文衛星でも「はくちょう」と「ぎんが」じゃまるで違う。
\____________________
16
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/22(金) 23:09:56
15/17
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そんな華々しい活躍が続いた「M-3SII」。
| 8号機のミッションとして、ドイツとの共同研究の話が浮上します。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
EXPRESS
日独共同プロジェクトで開発された回収型人工衛星。
1995年1月15日、「M-3SII」8号機にて打ち上げ。
地球周回中、5日間に渡って微小重力を利用した実験を行い
その後大気圏に再突入、地上にて回収される予定だった。
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| 宇宙での実験に加えて、大気圏突入・回収か。
| これもなかなかの豪華計画じゃないか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 衛星の総重量770kgは、「M-3SII」の打ち上げ能力ギリギリ。
| あまりの余裕の無さに、「これヤバくね?」という
| 関係者もいたとか。
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17
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/22(金) 23:10:29
16/17
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 1月15日22時45分、余裕の無い「M-3SII」8号機が夜空に向かって
| 飛び立ちました。
| 1段目の切り離しまではうまくいきましたが、2段目の燃焼中に
| 異常な振動が発生。…多分、衛星の重さが響いたんでしょうね。
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第2段の誘導制御用燃料を使い果たした「M-3SII」8号機は
所定の軌道へ衛星を投入できなかった。
1月16日1時2分、通信途絶。ミッションは失敗した。
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| 無茶しやがって…
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| ところが、その後アフリカのガーナで再突入カプセルが
| 見つかった。
| 再突入の技術検証ができたという意味では、
| まったくの無駄じゃなかったんだが…
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18
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/22(金) 23:10:59
17/17
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| というわけで、「M-3SII」は優秀の美を飾ることはできませんでした。
| しかしハレー彗星探査の成功を受けて、日本では惑星探査の機運が
| 高まっていきます。
| それはやがて「のぞみ」「はやぶさ」へと繋がっていくのですが…
| これについては次回ということで。
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次回、明日の俺は今日よりもビッグ
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| おお!いよいよ「M-V」の登場か!
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| まあ、そういうこと。
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糸売く
19
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:12:32
1/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「ロケット開発史」講義第12回。
| 今回は「ペンシルロケット」から続いてきた
| 固体ロケットの系譜の末裔についてです。
| いよいよ、いわゆる「ISAS」系の最終回ですよ。
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日本ロケット開発史・第12回
〜DNA狂詩曲〜
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| だから、いわゆる「NASDA」系はどこに…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 時系列的には、とっくに登場してるはずなんだけど
| 一気に突っ走ったほうが、わかりやすいと思って。
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20
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:13:02
2/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| では、ここでちょっと前回の復習。
| 「M-3SIIロケット」を開発するに当たって、その原案となった
| 「M-3S改計画」が二段階に分けられた…と言いましたよね。
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M-3S改 I (後の「M-3SII」)
第1段・第2段の直径を1.4mとし、第3段のノーズフェアリング
(衛星収納部のカバー)のみを直径1.6mに拡大する案。
M-3S改 II (後の「M-3SIII」)
当初の「M-3S改」の通り、上段を直径1.6mに拡大する案。
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| 覚えてるぞ。
| 黒板の「M-3S改 I」が「M-3SIIロケット」になったんだよな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 下の「M-3S改 II」は後に「M-3SIII」と呼ばれる。
| これも板書の通り。
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21
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:13:34
3/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ところが1985年、「さきがけ」「すいせい」の打ち上げを
| 成功させたころから状況が変わります。
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「すいせい」打ち上げ成功から間もない1985年秋ごろから
宇宙科学研究所(ISAS)では月や火星・金星などの惑星、
小惑星を対象とした宇宙探査の機運が高まり始める。
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| 立て続けに成功させたんだから、そりゃ盛り上がるよな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そうなると当然、探査機に求められる性能も上がってくる。
| そしてロケットの性能も…
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22
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:14:07
4/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そんな空気を読んだのか、1989年に政府は「宇宙開発政策大綱」
| というものを改訂。
| それまでISASが開発するロケットに課せられていた「直径1.4mまで」
| という制約がなくなります。
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1989年6月28日 宇宙開発政策大綱を改訂
「科学ミッションの進展に対応するための
M系ロケットの大型化」が認められる。
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| 「1.4m制限」って、確か1966年に決まったんだよな。
| それから23年後か…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| こうなると、「1.4m制限」を意識して構想した「M-3SIII」が
| いらない子に。
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23
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:14:57
5/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ここで復活したのが「ABSOLUTE計画」です。
| これも復習しておきましょうか。
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ABSOLUTE計画
宇宙航空研究所の秋葉鐐二郎教授が提唱した
ロケットの総合研究開発計画。
最終的に3段式、全長18.5m、直径3m、総重量100tという
大型・高性能ロケットの実現を目標とする。
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| サイズで「M-3H」の2倍を目指す豪華計画だったな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「1.4m制限」で日の目を見なかった計画だったが、
| ここへきて現実味を帯びてきた。
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24
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:15:30
6/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そういうわけで、「ABSOLUTE計画」そのものを実現しようという
| 動きが出てきました。
| …その答えが「M-Vロケット」なんです。
| 「ミュー」シリーズ最大にして最終形態ですね。
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M-Vロケット
「ミュー」シリーズ第5世代の人工衛星打ち上げ用固体燃料ロケット。
直径の制限が撤廃されたことを受けて、全段が新設計された。
1997年2月12日〜2006年9月23日、計8機が製造された。
(うち6機成功、1機失敗、1機打ち上げ中止)
主な衛星:「はるか」、「のぞみ」、「はやぶさ」他
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| あれ?いつもスペックを書いてるのに、今回は無いの?
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| その辺の事情は、後で説明する。
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25
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:16:03
7/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| こうして1990年より「M-Vロケット」の開発がスタート。
| 最初は1995年1〜2月に1号機を打ち上げる、という目標を
| 立てていたんですが…
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
ところが1992年5月、ロケット本体に使う予定の新素材が
予想よりもはるかに「もろい」ことが判明。
結局、素材の開発からやり直すことになり、当初目標の
1995年打ち上げに間に合わなくなった。
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| なんと。
| でも、材料の欠陥なんてもっと早く分からなかったのか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 実物大のモデルでテストして初めてわかる、
| なんてケースはままあること。
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26
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:16:37
8/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そこでISASは完成予定を1996年夏に延期することにしました。
| 材料メーカーの懸命の努力と、実験方法の工夫で
| なんとか遅れを最小限に食い止めることに成功します。
| ところが!1996年5月、今度はテスト中に計器に問題発覚。
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「光ファイバージャイロ」と呼ばれる計器に問題が発生した。
この対応のためにソフトウェアを作り変えたため、
さらに半年、1号機の完成が遅れることになる。
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| 「M-V」って、こんなに難産だったのか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 今まで安産だったロケットがあったとも思えんが?
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27
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:17:11
9/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| こうして、当初の予定から遅れること2年。
| 「M-Vロケット」1号機が打ち上げられました。
| 1997年2月12日のことです。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
はるか(MUSES-B)
宇宙科学研究所(ISAS)が打ち上げた工学実験衛星。
1997年2月12日、「M-V」1号機にて打ち上げ。
最大径10mに及ぶ傘状の大型アンテナが特徴。
工学実験衛星でありながら、事実上「宇宙の電波望遠鏡」とでも
言うべき存在であり、2005年11月の運用終了まで数多くの
観測成果を得た。
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| この「はるか」が「M-V」で初めて打ち上げられた衛星ってわけだな。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 1995年に先代の「M-3SII」が引退したから、
| ISASの衛星に2年間の空白ができてしまった。
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28
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:17:45
10/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 続く2号機では日本初の月探査が予定されていましたが
| 肝心の探査機の開発が遅れて、計画そのものがお蔵入りに。
| 3号機では火星探査機「のぞみ」が打ち上げられました。
| 「のぞみ」については、前に講義しましたね。
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2号機(計画中止):「LUNAR-A」…月探査機
3号機(1998年7月4日):「のぞみ」…火星探査機
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| 「M-V」が遅れたから「のぞみ」の打ち上げ条件が厳しくなった…
| だったよな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「LUNAR-A」は、あの「はやぶさ」を押しのけて
| 先に承認されたプロジェクトだ。
| なのに計画そのものが無くなっちまった。
| 因果なもんだ。
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29
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:18:18
11/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| それから2年後の2000年。ISASは「M-V」4号機を打ち上げます。
| この4号機に積まれたのは「ASTRO-E」。
| 「はくちょう」から数えて、日本で5番目のX線天文衛星になるはずでした。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
2000年2月10日 「M-Vロケット」4号機打ち上げ失敗
打ち上げ後20分12秒以降、通信途絶
第1段のノズルが破損、速度不足により
所定の軌道への投入に失敗したと考えられている。
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| はずでした…って、失敗したみたいな言い方じゃん──って、
| 書いてるし!
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 実際失敗したんだってば。
| 「はやぶさ」講義でも言ったじゃない。
\____________________
30
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:18:53
12/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ところが今回は「はくちょう」のときのように、その日のうちに
| 「リベンジだ!」とはなりませんでした。
| 「ASTRO-E」の衛星主任、井上一教授とISASの松尾弘毅所長との間で
| こんなやり取りがあったといいます。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
松尾所長「X線グループはまさか(ASTRO-Eの)代替機を
考えていないということはないでしょうな」
井上教授「一応考えてはいますが…」
「ロケットはアメリカのやつかな…」
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| そんな…まるで「M-V」を見放したかのような言い方じゃないか…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そう受け取られても仕方のない言葉だ。
| それに、「M-V」の打ち上げ計画は他にも目白押しで
| 代わりのX線天文衛星が割り込めるのか?という問題もあった。
\____________________
31
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:21:05
13/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| すっかり落ち込んだX線天文学者たち。
| そんな彼らの前でISASロケット・グループの一人、
| 的川泰宣教授はこう言いました。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
「アメリカのロケットなんかやめようよ。『M-V』でやらなきゃ意味がないよ。
精一杯応援するからさ。よそのロケットなんかに頼るなよ」───
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| これ…いいのか?
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| 何せ「ロケット・グループ」の人の発言だもんな。
| 部外者が見れば「空気読んでない」発言に
| 受け取られかねない。
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:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:21:50
14/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ところが、的川教授の言葉を聞いた学者たちは
| 喜びの表情を浮かべたといいます。
| 彼らは別に「M-V」を見限ったわけじゃなかったんですよ。
| いや、むしろ「M-V」でのリベンジをやりたかったんですね。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
彼らは単にロケット・グループの真意を測りかねていた
だけだったのである。
その後、ロケット・グループの若手研究者たちは
「この雪辱戦は『M-V』でやりたい」と力説。
「CORSA」に続き、2度目の再挑戦が始まった。
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| イイハナシダナー
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| こうして、翌2001年4月に「ASTRO-EII計画」が
| スタートする。
\____________________
33
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:22:25
15/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「ASTRO-E」の失敗から5年後のこと。
| 生産中止となった部品の代替、半年近い打ち上げ延期などの
| 困難を乗り越え、ほとんど完璧と言ってもいいほどの順調さで
| 「M-V」6号機の打ち上げを成功させました。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
すざく(ASTRO-EII)
日本で5番目のX線天文衛星。
2005年7月10日、「M-V」6号機にて打ち上げ。
計6機のX線望遠鏡を搭載し、観測範囲・感度とも
世界最高レベルの能力を持つ。
宇宙の構造形成、ブラックホール直近領域の探査等
数多くの観測成果をあげ、2013年現在も運用中。
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| `つ ∇ (゚∀゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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| キタ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━!!
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| 余談だが、この6号機は計画中止となった2号機から
| 1段目と3段目が流用された。
\____________________
34
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:22:58
16/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そんなリベンジ物語と話が前後しますが、「M-V」は2006年まで
| 合計7機が打ち上げられました。
| 「はやぶさ」についても、過去に講義しましたよね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
5号機(2003年5月9日):「はやぶさ」…工学実験衛星
8号機(2006年2月22日):「あかり」…赤外線天文衛星
7号機(2006年9月23日):「ひので」…太陽観測衛星
7・8号機にはサブペイロードと呼ばれる小型衛星が
同時に搭載された。
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 7号機と8号機がひっくり返ってるぞ。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「M-V」の号数は打ち上げプロジェクトが決まった順番に
| 番号が振られる。
| 打ち上げ順で決まるわけじゃないんだよ。
\____________________
35
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:23:32
17/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| それでは、「M-V」の特徴について。
| やはり最初に触れないといけないのは、そのデカさですね。
| 一般に、固体燃料ロケットは大型化が難しいとされているんですが
| こいつは世界最大級。
| 「M-V」のMはモンスターの頭文字なんじゃないかと思っちゃいますね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
ペンシル M-V(1号機)
全長 230mm 30,700mm
外径 18mm 2,500mm
重量 0.2kg 139,000kg
ペイロード なし 1,800kg
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| `つ ∇ (゚Д゚;) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 板書の比較…極端すぎないか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 液体ロケットなら、もっとデカいのがあるけどな。
| 固体でこのレベルのデカさは世界的にも数が少ない。
\____________________
36
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:24:06
18/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「M-V」には、統一されたスペックというものがありません。
| これは、衛星に合わせて1機ずつロケットをカスタマイズしてきたこと、
| それと何度か大きく仕様変更をしてきたから、なんですね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
・1号機:最初期のタイプ。
・2〜4号機:第3段を120mm延長し、打ち上げ能力を向上させたタイプ。
・5〜6号機:下記の大幅改修を施したタイプ。
第2段の材料変更(鉄鋼→繊維強化プラスチック)に伴う軽量化
ノズルの小型化
姿勢制御方式の変更
継手(上段と下段の接続部)の単純化
・7〜8号機:指令破壊装置(一種の自爆装置)を改修したタイプ。
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「L-4S」も、1機ごとに改造してこなかったっけ?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 確かにそうだけど「M-V」5号機は、それまでとは別物と
| 言っていいレベル。
| 別の型番つけたほうがよくね?と思うくらい。
\____________________
37
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:24:40
19/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| しかし、この図体のデカさ、そして衛星ごとのカスタマイズが
| 「M-V」にとって仇となってしまいます。
| それは打ち上げ費用の高騰。
| 「構造が単純で安い」という固体ロケット本来のメリットが
| 失われてしまったんですよ。
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「M-V」の打ち上げ費用は1機当たり75億円なり。
年間予算約200億円のISASにとって、大きすぎる負担となった。
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| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 年に3機で足が出ちゃう計算じゃん。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 同じものをたくさん作った方が安上がり。
| これ、工業の常識なり。
\____________________
38
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:25:18
20/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そんな事情から、内部でも「小型の衛星やロケットをたくさん作って
| 打ち上げるべし」という声が強くなります。
| さらに、9号機を使う予定だった金星探査機「PLANET-C」が
| 2010年打ち上げと決まり、「M-V」の立場はさらに危うくなっていきます。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
7号機打ち上げから4年間、打ち上げ期間が空くこととなり
その間の発射場の維持費が問題となった。
結局「PLANET-C」は「H-IIAロケット」を使ったほうが安上がり、
との判断から「M-V」9号機は実現されなかった。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 金星探査機?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 今も太陽の周りをまわっている「あかつき」のこと。
| 「のぞみ」講義でちょっと触れたはずだが。
\____________________
39
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:25:51
21/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| こうして「M-Vロケット」は2006年度で廃止となりました。
| 「M-4S」から36年もの間、日本の科学衛星を打ち上げてきた
| 「ミューロケット」の系譜はここで終わったのです。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
2006年7月26日 「M-Vロケット」廃止決定
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| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ああ、ミューロケット…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 1段目を省略した「M-V Lite」など、「M-V」の
| コストダウン案は、いろいろ検討されてはいた。
| でも、それらは結局実現されなかった。
\____________________
40
:
名無しのAA書きさん
:2013/03/28(木) 22:26:24
22/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| しかし…「ペンシルロケット」から連綿と培われてきた
| 固体燃料ロケットの技術が無くなったわけじゃありません。
| 例えば「H-IIA」の補助ブースター、あるいは小型の観測ロケット…
| 糸川教授の「ロケット旅客機構想」から始まった日の丸ロケットのDNAは、
| 現役のロケットの中に確かに生きてるのですよ。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
次回、ロケットの作り方教えます
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| これで、いわゆる「ISAS」系は終わりか…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 今開発中の固体ロケットについては、今回は省略。
\____________________
糸売く
41
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 00:59:21
1/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「ロケット開発史」講義第13回。
| 今回は宇宙開発事業団、NASDAの登場です。
| ここからは現役の「H-IIAロケット」につながる流れになりますよ。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
日本ロケット開発史・第13回
〜Song for U.S.A.〜
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
〜| | | □ | √ ̄(___ノ〜 √ ̄(___ノ〜
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 ̄ ̄ ̄ ̄.| |====∧==========
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 3回分空いたから忘れちまったぞ。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| これの前に「ミューロケット」に触れとく必要が
| あったんだよ。
\____________________
42
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 00:59:53
2/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| まずは復習といきましょう。
| 東京大学の動きとは別に、政府として実用衛星とそのための
| 打ち上げロケットを開発しよう、という話でしたね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1956年5月19日 科学技術庁発足
1960年5月16日 総理府、宇宙開発審議会を設置
1964年7月1日 科学技術庁、宇宙開発推進本部を設置
1964年7月22日 「LS-Aロケット」1号機打ち上げ
1967年12月20日 宇宙開発審議会、「国の計画に沿って官、学、民が
一致、協力して開発を行う機関」の設置を提言
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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| 一番下の「機関」とかいうのが、NASDAなのか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そう。1969年10月1日、科学技術庁所属の特殊法人として
| 宇宙開発事業団、NSADAが発足した。
\____________________
43
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:01:53
3/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| NASDAが発足する前、科学技術庁のロケット開発は
| 宇宙開発推進本部…略して「推本」が主体となって進められていました。
| 1966年、推本は「LS-Cロケット」の開発をスタート。
| 1969年に1号機を打ち上げます。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
LS-Cロケット
宇宙開発推進本部が開発した2段式の試作ロケット。
「LS-A」と同様、第1段は固体ロケット、
第2段は液体ロケットである。
1969年2月6日〜1974年2月9日、計7機打ち上げ。
うち4機成功。
全長:10.3m 外径:600mm 重量:2338kg 構成:2段式
ペイロード:不明 最高到達高度:65km
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| 「LS-A」をそのまま大きくしたような感じ?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| いや、推進剤とエンジンが違うし、どちらかといえば新規開発。
\____________________
44
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:02:26
4/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| その「LS-C」と平行して、推本は「JCRロケット」というものを開発、
| 打ち上げ実験を行います。
| 「LS-C」が液体ロケットエンジンの実験機とすれば
| 「JCR」はロケットの誘導制御や電子機器の研究用ですね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
JCRロケット
宇宙開発推進本部が開発した2段式の固体燃料ロケット。
ロケットの誘導制御技術や電子機器の技術研究用と
位置づけられていた。
1969年9月15日〜1974年2月1日、計10機打ち上げ。
うち9機成功。
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| 2種類のロケットを作って、同じ時期に実験してたってわけだ。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「JCRロケット」には、統一されたスペックというものは無い。
| 3号機から大型化されたからだ。
\____________________
45
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:03:00
5/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ここでちょっと話を変えます。
| 実用衛星の中でも特に重要な「静止衛星」について説明しましょうか。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
静止衛星
赤道上の高度約35786kmの円軌道(静止軌道という)を周回する
人工衛星。
地球の自転と並行して移動するため、地上からは上空の一点で
止まっているように見える。
通信衛星や放送衛星、気象衛星によく用いられる。
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| 静止衛星って何がいいんだ?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 地上からは止まって見えるから、アンテナを動かして
| 衛星を追いかける必要が無い。
| BS見るのに、家のアンテナ動かしたりしないだろ?
\____________________
46
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:03:33
6/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ですが…この静止衛星、技術的に結構難しいシロモノなんですよね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
まず難しいのは高度。
約35786kmは科学衛星でよく用いられる低軌道
(一般に数百〜1000km)より高いため、
打ち上げロケットに大きなエネルギーが求められる。
さらに離心率ゼロ(つまり真円)、軌道傾斜角
(赤道と衛星軌道との間の傾き)もゼロと
高い軌道精度が要求される。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| なるほど、静止衛星を打ち上げたければデカいロケットが必要だと。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| それに高い誘導制御の技術も必要。
\____________________
47
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:04:07
7/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 実用衛星を目指すからには、推本の目標も静止衛星となるわけです。
| 1967年、推本は2段階からなる実用衛星ロケットの開発計画を立てました。
| それが「Q計画」と「N計画」です。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
LS-C JCR
├───┘
↓
Qロケット(1972年打ち上げ目標)
↓ 重量150kgの衛星を高度1000kmの軌道にのせることを
↓ 目標とした機体。
↓
Nロケット(1974年打ち上げ目標)
重量100kgの静止衛星を打ち上げることを目標とした機体。
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
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 ̄ ̄ ̄ ̄.| |====∧==========
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 5年で衛星打ち上げ…か。東大があれだけ苦労したのに
| どうにかなるものなのか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| どうにもならなかったのは、歴史が証明してる。
\____________________
48
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:04:58
8/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| それから2年後の1969年。
| 科学技術庁の宇宙開発は、推本からNASDAに移管されました。
| ところが、肝心の液体ロケットの開発については、
| まったくめどが立っていなかったのです。
| まあ、当時の日本の技術力からして「Q計画」自体がかなりの
| 無茶計画だったんですよね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1969年は「LS-C」、「JCR」といった小型実験ロケットの
打ち上げがようやく始まった年。
日本全体で見渡しても、衛星の打ち上げすら成功してません。
余談ですが、1969年は「アポロ11号」が月への有人着陸に
成功した年でもあります。
,__
iii■∧ /
━ (,, ゚Д゚)/ ━━━━━━∧∧━━━━∧∧━
| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
〜| | | □ | √ ̄(___ノ〜 √ ̄(___ノ〜
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| なんだか、アメリカとの差は歴然!って言いたげな板書だけど。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 実際そうだもん。
| 少なくともNASDAは自力で1972年打ち上げなんて
| 無理!と思ってた。
\____________________
49
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:05:41
9/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そんなピンピンチなNASDAに転機が。
| アメリカから「ウチが液体ロケットの技術を提供するけど、どう?」
| って申し入れがありました。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1967年11月14日 日米首脳会談(〜15日)
「宇宙開発に関する両国の協力の可能性を
検討する」との共同声明発表
1968年1月 駐日米国大使から「アメリカからのロケット
技術提供」の申し入れ
1969年7月31日 「宇宙開発に関する日本国とアメリカ合衆国との間の
協力に関する交換公文」交換
,__
iii■∧ /
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| `つ ∇ (゚∀゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さすが同盟国!やっぱ持つべきものは友達だな!!
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ……
\____________________
50
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:06:12
10/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| …浅野君。外交って、そんな甘いものじゃありませんよ。
| 基本はギブアンドテイク、さもなければドツキ合いの世界なんですから。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
アメリカは東京大学による「カッパロケット」の輸出を
危険視していたのである。
国家の統制がききにくい一研究機関が軍事転用可能な
ロケットを輸出して、それが共産圏に渡ったとしたら…?
アメリカは技術を提供するかわりに、日本のロケット開発に対し
「非軍事目的限定」「輸出禁止」という制限を加えた。
つまり、自国のコントロール下に置こうとしたのである。
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iii■∧ /
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| `つ ∇ (゚Д゚;) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| なんと。アメリカの手のひらで踊らされたのか!?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| それも一つの見方だし、これで液体ロケットの開発が
| 一気に加速したというのも別の見方。
\____________________
51
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:06:43
11/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| で、国内では、アメリカの援助の受け入れなどで
| 何かと揉めたようです。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
宇宙開発の主導権に関して…
科学技術庁「開発は科学技術庁に一元化すべし!」
文部省「後発のくせに偉そうなこと言うな!ボケェ!」
アメリカの技術供与に関して…
東大「日本の独自技術が育たないから反対!」
科学技術庁「んなこと言ったって、自前じゃ無理なんだから
しょーがねーだろクソッタレ!」
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| `つ ∇ (゚Д゚;) ( ゚д゚ )
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| こんなに口汚く罵りあったのか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| かなり脚色してます。
\____________________
52
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:07:15
12/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 時の佐藤栄作首相の考えは、東大・文部省寄りだったそうです。
| しかし、当時は1972年の沖縄返還を間近に控えていた時期。
| そんなときにアメリカとの関係を損ねたくない、との政治的判断も
| 働いたんですよね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
宇宙開発の主導権に関しては1966年5月12日の国会報告において
東京大学…直径1.4m以下の固体ロケット、科学衛星担当
科学技術庁…大型液体ロケット、実用衛星担当
…という住み分けが成立した。
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| これが、いわゆる「1.4m制限」だな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 第11回で登場したやつだ。
\____________________
53
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:07:49
13/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ということで、翌1970年にNASDAは開発計画を大転換。
| 自主開発をあきらめ、アメリカの技術をいただくことにしました。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1970年11月14日 「新N計画」決定
LS-C JCR
├───┘
↓
Q’ロケット:詳しくは後で。
↓
新Nロケット
重量100kgの静止衛星を打ち上げることを目標とした機体。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さっきの図とあまり変わってないような…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 一見すればな。
| 後で説明するけど、「Q」と「Q’」はまったくの別物だ。
\____________________
54
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:08:28
14/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そして、「新Nロケット」の開発にあたって技術提供を受けた
| ロケットというのが、この「デルタロケット」です。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
デルタロケット
アメリカ合衆国が開発、運用中の衛星打ち上げロケット。
1960年5月13日の1号機打ち上げ以来、改良を重ねながらも
50年以上使われ続け、今も現役。
日本に技術提供されたのは「ソー・デルタ」と呼ばれる
「デルタ」シリーズの最初期バージョンである。
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| よいものなのか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「ソー・デルタ」は当時ではすでに一昔前の型落ち品。
| それでも、日本側からすれば欲しい技術だったんだよな。
\____________________
55
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:08:58
15/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さて、「新Nロケット」は3段式なんですが、2段目だけはNASDAが
| 独自開発した液体ロケットエンジンが使われることになりました。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
LE-3
宇宙開発事業団が開発した液体ロケットエンジン。
四酸化二窒素とエアロジン-50を推進剤とする。
「LS-C」7号機の第2段に使用された後、「Qロケット」の
第3段に搭載される予定だった。
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| へぇ、てっきり全部アメリカ産で作るのかと思ってた。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| まさか。まあ、「LE-3」を「新Nロケット」に使うに当たっては
| アメリカから相等指導されたらしいけど。
\____________________
56
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:09:32
16/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そして「LE-3」のテスト用に開発されたのが、
| さっき書いた「Q’ロケット」。
| 後に「ETVロケット」に改名します。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
ETVロケット(Q’ロケット)
宇宙開発事業団が開発した技術試験用ロケット。
主に「LE-3」の性能試験を目的とする。
第1段に「M-4Sロケット」の第1段エンジンを流用し、
第2段に「LE-3」を搭載するという2段式の構成である。
1974年9月2日と1975年2月5日、計2機打ち上げ。(2機成功)
全長:21.8m 外径:1.4m 重量:39.2t 構成:2段式
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| なんと。「ミューロケット」のエンジンを使ったのか。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 東大印のロケットを拝借するのは「LS-A」で経験済み。
\____________________
57
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:10:05
17/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| こうして完成したのが「新Nロケット」改め「N-Iロケット」です。
| NASDAとしては初の人工衛星打ち上げロケットですね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
N-Iロケット
宇宙開発事業団が開発した人工衛星打ち上げロケット。
米国より提供された「デルタロケット」の技術を基に開発された。
第1段:「デルタ」第1段のライセンス生産品
第2段:「LE-3」(NASDA独自開発)
第3段:アメリカ製固体ロケットの輸入品
…という3段構成からなる。
1975年9月9日〜1982年9月3日、計7機打ち上げ。(うち6機成功)
全長:32.6m 外径:2.44m 重量:90.4t 構成:3段式
軌道投入能力:800kg(低軌道)/130kg(静止軌道)
主な衛星:「きく1号」、「うめ」、「あやめ」他
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 3段目は固体ロケットなんだな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「デルタ」だって、全段液体だったわけじゃないよ。
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58
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:10:35
18/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「N-I」で打ち上げられた衛星を、いくつか紹介しましょうか。
| まずはこの「うめ」。
| 日本で初めて実用目的で打ち上げられた衛星です。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
うめ(ISS)
宇宙開発事業団が打ち上げた電離層観測衛星。
1976年2月29日、「N-I」2号機にて打ち上げ。
日本初の実用衛星だが、打ち上げ1ヶ月後に
バッテリーの温度上昇により故障。
本格運用はできず、ミッションは後継の
「うめ2号」に引き継がれた。
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| これのどこが実用的なんだ?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「短波」という電波を使った通信は、電離層の変化に
| 影響される。
| 電離層を観測すれば、あらかじめ短波通信が
| うまくいくかどうかわかる。
| これを「電波予報」という。
\____________________
59
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:11:06
19/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 続いては、この「きく2号」。
| 日本待望の静止衛星ですよ。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
きく2号(ETS-II)
宇宙開発事業団が打ち上げた技術試験衛星。
1977年2月23日、「N-I」3号機にて打ち上げ。
同年3月5日、静止軌道に投入。日本初の静止衛星となった。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| これでやっと、日本も静止衛星を手に入れたってわけだ。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| まあ、これは実験用の衛星だけどな。
| それでも、初めて静止軌道にのせられたってのは意味がある。
\____________________
60
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:11:37
20/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 後は、列挙するだけにとどめておきましょう。
| 「あやめ」は2機とも軌道投入に失敗という
| 残念な結果に終わった衛星です。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1号機(1975年9月9日):「きく1号」…技術試験衛星
4号機(1978年2月16日):「うめ2号」…電離層観測衛星
5号機(1979年2月6日):「あやめ」…実験用静止通信衛星
6号機(1980年2月22日):「あやめ2号」…実験用静止通信衛星
7号機(1982年9月3日):「きく4号」…技術試験衛星
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
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| 衛星の名前、花の名前ばかりじゃないか。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| それはNASDAの理事長の趣味が園芸だったから。
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61
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/06(土) 01:12:16
21/21
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| アメリカの助けを借りながらも、日本初の実用衛星を打ち上げた
| 「N-Iロケット」。
| ですが、すぐに「N-I」は衛星の大型化についていけなくなります。
| そして次のロケット登場となるのですが…それについては次回で。
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次回、より速く、より高く、より強く
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| 純国産ロケットの登場マダー?
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| まだまだ、道は遠いぞ。
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糸売く
62
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 00:17:30
1/18
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「ロケット開発史」講義第14回。
| 今回は、宇宙開発事業団(NASDA)初の衛星打ち上げロケット
| 「N-Iロケット」がどのように進化していったかです。
\__ _________________
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日本ロケット開発史・第14回
〜パワー・イン・ザ・ワールド〜
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| 要するに大型化&パワーアップだろ?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ご名答。
\____________________
63
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 00:18:12
2/18
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さて、1975年に打ち上げが始まった「N-Iロケット」は
| 日本初の実用衛星を打ち上げるなどの功績を残しました。
| ですが、完成当初から能力不足であることは火を見るより明らか。
| そこで翌年の1976年、宇宙開発事業団(NASDA)は「N-I」に続く
| 「N改良型ロケット」の開発をスタートさせます。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1976年 「N改良型ロケット」の開発に着手
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| やっと完成したかと思ったら、もう能力不足かよ。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「N-I」の静止衛星打ち上げ能力は130kg。
| ところが、当時の静止衛星は300kgが標準。
| どう考えても足りない。
\____________________
64
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 00:18:49
3/18
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 一方NASDAは、ほぼ同じ時期に「次世代ロケット計画」の
| 研究を始めました。
| 後にさっきの「N改良型ロケット」は「N改良型1型ロケット」、
| この「次世代ロケット」は「N改良型2型ロケット」と呼ばれます。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
次世代ロケット計画
・500〜800kgの静止衛星を打ち上げる性能があること
・原則として自主開発によるものであること
・1980年代中盤から10年以上、日本の主力機種として使えること
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| ほぉ…ついに自主開発を目指そうとしたのか。
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| でも、これは10年後を見据えたもの。
| 「N改良型ロケット」は「次世代ロケット」までのつなぎ
| でもあった。
\____________________
65
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 00:19:31
4/18
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「N改良型1型」は「N-I」と同じく1段目と3段目は
| アメリカの「デルタロケット」を使い、2段目には「N-I」で
| 使われた「LE-3」エンジンの改良版を載せる予定でした。
| ところが、その改良版の開発が遅れに遅れ、
| さらには、目標の性能が出ないことが判明。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
LE-3
宇宙開発事業団が開発した液体ロケットエンジン。
四酸化二窒素とエアロジン-50を推進剤とする。
「LS-C」7号機の第2段に使用された後「Qロケット」の
第3段に搭載される予定だったが、開発計画の大幅な
変更に伴い、「N-I」の第2段に搭載された。
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| `つ ∇ (゚Д゚;) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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| なんてこったい。それじゃ、いつまでたっても完成しないじゃないか。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 仕方がないので、今回は2段目も自主開発をあきらめて
| アメリカのエンジンを積むことになった。
\____________________
66
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 00:20:26
5/18
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| こうして完成したのが「N改良型1型」改め「N-IIロケット」。
| NASDAで2番目の衛星打ち上げロケットです。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
N-IIロケット
宇宙開発事業団が開発した人工衛星打ち上げロケット。
第1〜3段すべてが「デルタロケット」のライセンス生産品
または輸入品である。
第1段の延長、補助ブースターの増設等で打ち上げ能力は
「N-I」の4倍弱にまで向上した。
1981年2月11日〜1987年2月19日、計8機打ち上げ。(8機成功)
全長:35.4m 外径:2.44m 重量:135.2t 構成:3段式
軌道投入能力:2000kg(低軌道)/350kg(静止軌道)
主な衛星:「きく3号」、「ひまわり2号」、「ゆり2号a」
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| 独自開発から後退しちゃったんだな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 実際、それを批判する声もある。
\____________________
67
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 00:21:11
6/18
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| では、「N-II」で打ち上げた衛星で代表的なものをひとつ。
| この「ひまわり」は、おそらく日本人に一番なじみ深い
| 衛星でしょうね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
ひまわり2号(GMS-2)
日本初の自力打ち上げによる静止気象衛星。
1981年8月11日、「N-II」2号機にて打ち上げ。
静止軌道投入には成功したものの、打ち上げ2年足らずで
機械トラブルが発生。
観測を一時期先代の「ひまわり1号」と交代するなど、
期待通り活躍したとはいえない衛星である。
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| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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| 「ひまわり1号」はどこから打ち上げたんだ?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| アメリカに打ち上げてもらった。
\____________________
68
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 00:21:54
7/18
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| あとは列挙しておきましょう。
| 「ゆり」はNHK-BSやWOWOWに使われた衛星ですよ。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1号機(1981年2月11日):「きく3号」…技術試験衛星
3号機(1983年2月4日):「さくら2号a」…通信衛星
4号機(1983年8月6日):「さくら2号b」…通信衛星
5号機(1984年1月23日):「ゆり2号a」…放送衛星
6号機(1984年8月10日):「ひまわり3号」…気象衛星
7号機(1986年2月12日):「ゆり2号b」…放送衛星
8号機(1987年2月19日):「もも1号」…海洋観測衛星
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「N-II」は8機とも成功したんだな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 国産化率が下がったという批判もあるけど、
| 信頼性はピカイチ。
| それに元はアメリカ産といっても、組み立てや打ち上げは
| 日本人がやったということを忘れちゃいけない。
\____________________
69
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 00:22:31
8/18
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| では続いて、「N改良型2型ロケット」に移りましょう。
| 「N改良型2型」の開発計画が政府から承認されたのは
| 1980年のこと。
| 名前も「H-I計画」に改めます。
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1981年 「H-Iロケット」開発着手
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| 名前に「H」がついたってことは、これが「H-IIA」直系の
| ご先祖なのか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「H-I」が「H-IIA」に近いのか、「N-II」に近いのか…
| 結構微妙。
\____________________
70
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 00:23:15
9/18
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 強力で、しかも長く使えるロケットを…
| ということで、NASDAの開発陣が選んだのは
| 推進剤を液体酸素と液体水素の組み合わせとすることでした。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
LE-5
宇宙開発事業団が開発した液体ロケットエンジン。
日本初の液体酸素と液体水素を推進剤とした
実用エンジン(LOX/LH2エンジン)である。
「H-Iロケット」の第2段用エンジンとして1975年から
開発が始まった。
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| 液体酸素と液体水素って何がいいんだ?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 液体酸素は純粋な酸素ということで、効率よく
| 燃料を燃やせる。
| 液体水素は比推力が非常に高い。
\____________________
71
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 00:23:56
10/18
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 比推力が高い推進剤を使えば到達速度を上げられる…
| よって、大きい衛星を打ち上げるのに有利、と第9回で
| 説明しました。
| ところが反面、液体水素には板書に書いた欠点があります。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
・製造コストが高い
・水素脆化(金属にしみこんで劣化させる現象)の原因になる
・発火性がガソリン並みに高い
・極低温(-252.6℃)で保管する必要がある
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| とにかく、扱いが難しいってことだな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 当然、エンジンの開発もそれだけ難しくなる。
\____________________
72
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 00:25:05
11/18
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 2段目に「LE-5」を使うのは決まりとして、ほかの段をどうするか…
| これについては、開発費用とロケットの性能との兼ね合いで
| いくつかの案が出ました。
| …代表的なものを2つ書いときますね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
・第1段に「N-II」の第1段を流用、第2段に「LE-5」、
第3段に独自開発の固体ロケットを搭載する案
メリット:既存の第1段を流用することで開発期間、費用を抑えられる
デメリット:静止衛星打ち上げ能力が500kg程度と限られる
・第1段を新規開発、第2段に「LE-5」、
第3段に独自開発のLOX/LH2エンジンを搭載する案
メリット:静止衛星打ち上げ能力が800kgまで上げられる
デメリット:新規開発の費用、期間がかかる
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 難しい問題だな。
| 安くて早い案だと性能がギリギリ…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ギリギリというか、このときすでに「500kgではぬるい!
| 800kgの打ち上げ能力を!」って声があったんだ。
\____________________
73
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 00:25:55
12/18
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 結局NASDAが採用したのは、上の1段目を流用して云々という案。
| 性能はさておき、早く安く作れる案を採ったってことですね。
| …しかし!肝心の国産エンジン「LE-5」の開発が遅れに遅れ…
| なんと、「N-II」がいつまでたっても引退できないという
| 事態になってしまいます。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
もともと「N-IIロケット」は「N改良型2型(=「H-I」)」までの
つなぎであり、3号機までで運用を終える予定だった。
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| おいおい、これって「N-II」の開発が遅れたって話と
| 同じじゃないか。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ところが、今回はアメリカのエンジンを
| …という話にはならなかった。
\____________________
74
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 00:27:10
13/18
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 苦労の末、ようやく1986年に「N改良型2型」改め「H-Iロケット」完成。
| その年の8月13日に1号機が打ち上げられました。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
H-Iロケット
宇宙開発事業団が開発した衛星打ち上げロケット。
日本の実用ロケットで初めて液体酸素と液体水素を推進剤に
使用したロケットである。
第1段:「N-II」第1段の流用(「デルタロケット」のライセンス生産品)
第2段:「LE-5」(NASDA独自開発)
第3段:国産の固体ロケットエンジン
…という3段構成からなる。
1986年8月13日〜1992年2月11日、計9機打ち上げ。(9機成功)
全長:40.3m 外径:2.44m 重量:139.9t 構成:2または3段式
軌道投入能力:2200kg(低軌道)/550kg(静止軌道)
主な衛星:「あじさい」、「ひまわり4号」、「ふよう1号」
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 2または3段式ってどういうこと?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 静止衛星を打ち上げるときだけ、3段目を使う。
| 低軌道なら、3段目を省略して2段で打ち上げるんだよ。
\____________________
75
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 00:27:58
14/18
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「H-I」1号機は日本で初めて「ピギーバック衛星」を打ち上げた
| ロケットでもあります。
| 同時に複数の衛星を打ち上げることは、打ち上げ費用を
| 安く抑えられるメリットがあるんですね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
ピギーバック衛星
大型ロケットの打ち上げ能力のうち、余剰分を活用して
主衛星と「相乗り」する形で打ち上げられる小型人工衛星。
「H-I」1号機では、主衛星である測地実験衛星「あじさい」と同時に
「ふじ」「じんだい」がピギーバック衛星として打ち上げられた。
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| 確か「M-Vロケット」でもサブペイロードって小型衛星を
| 打ち上げていたような…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| あれもピギーバック衛星の一種。
\____________________
76
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 00:28:50
15/18
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| あとは、例によって列挙ということで。
| 「H-I」も9機打ち上げて9機成功。
| パーフェクトゲームをやってくれました。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
2号機(1987年8月27日):「きく5号」…技術試験衛星
3号機(1988年2月19日):「さくら3号a」…通信衛星
4号機(1988年9月16日):「さくら3号b」…通信衛星
5号機(1989年9月6日):「ひまわり4号」…気象衛星
6号機(1990年2月7日):「もも1号b」…海洋観測衛星
7号機(1990年8月28日):「ゆり3号a」…放送衛星
8号機(1991年8月25日):「ゆり3号b」…放送衛星
9号機(1992年2月11日):「ふよう1号」…地球資源衛星
6号機ではピギーバック衛星「おりづる」「ふじ2号」が
同時に打ち上げられた。
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| よいものだったのか。
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| この連続成功は、NASDAや関係メーカーに
| 大きな自信を与えた。
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77
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 00:29:56
16/18
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| まあね…
| 「N-II」も「H-I」も、パーフェクトだったからよかったんですけどね。
| でも、もし打ち上げが失敗したとして、その原因がアメリカ産の
| 部分にあったとしたら…?
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
基本的に、原因究明はアメリカの手で行われる。
原因がわかっても、日本側に知らされない可能性もある。
原因究明も、それに基づく改良も自分の手でできない…
それが「純国産ではない」ということなのだ。
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| なるほど。
| 打ち上げが成功したからって、喜んでばかりもいられないな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 実際、「あやめ2号」の静止軌道への投入失敗は
| 衛星に載せられたアメリカ製エンジンの不良が
| 疑われた。
| しかし、アメリカメーカーは「企業秘密」の一点張り。
\____________________
78
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 00:30:55
17/18
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ところで、さっき黒板に書いた「3段とも独自開発で800kgの
| 静止衛星打ち上げ能力を目指す案」について。
| これは後に「H-IBロケット」と呼ばれ、結構細かいところまで
| プランが練られていたんですが…結局計画のままで
| 終わっちゃいました。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
H-IBロケット
「H-I計画」と同時期に立案された「800kgの静止衛星
打ち上げ能力を持つロケット」の開発計画。
1989年の1号機打ち上げを目標としていたが、1984年に
計画そのものが中止された。
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| これは予算が足りなかったのか?技術的に難しかったのか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| どちらでもない。
| 静止衛星の大型化についていけなくなったんだよ。
| 計画を進めてる間に、800kgじゃ足りなくなった。
\____________________
79
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 00:31:28
18/18
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| この時期の静止衛星の高性能化、大型化はすさまじく
| 1990年代には2トン、なんてものも登場します。
| この流れに対するNASDAの答えは、完全自主開発の
| 大型ロケットだったのですが…
| これに関しては次回ということで。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
次回、人は彼らをロケットの匠と呼ぶ
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| おお!やっと純国産ロケットの登場だな!
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そういうことになるな。
\____________________
糸売く
80
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/14(日) 07:27:24
>原因究明も、それに基づく改良も自分の手でできない…
>それが「純国産ではない」ということなのだ。
何気に自主開発に拘らなきゃいけない理由を始めて知った気がする。
いや、何となくは分かってたけど、ここまでちゃんとは分かってなかった。
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(゚Д゚,,) アッチハ キセイデカケナイノデココデ・・・
φ つ テカモウ(マダ?)イッカゲツハンニナルダヨ ママン・・・
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81
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:25:30
1/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「ロケット開発史」講義第15回。
| 「N-I」、「N-II」、「H-I」と三代に渡ってアメリカの技術を基に
| ロケットを開発してきた宇宙開発事業団。
| 今度こそ…今度こそ完全自前の技術でロケットを…!
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日本ロケット開発史・第15回
〜汗と涙とロッケンロール〜
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| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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| 「H-I」は2段目と3段目が国産だったよな。
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| ところが、1段目は予算と開発期間の関係で
| 独自開発ができなかった。
\____________________
82
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:26:19
2/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| その独自開発による新型ロケットの開発が始まったのは1986年。
| ちょうど「H-Iロケット」の1号機が打ち上げられた年です。
| 1990年代に増えるであろう、重量2トンの静止衛星を念頭において
| 1992年に初打ち上げ、というのが当初の目標でした。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1986年 「H-I」後継機開発に着手
開発目標
低軌道(高度約250km)…9t
静止軌道…2t
月・惑星探査用…2.5tの打ち上げ能力を持つこと
重量当たりの打上げコストを抑えること
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| 打ち上げ能力に関しちゃ、今までより細かく目標が決まってたんだな。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 単に「大きい静止衛星を!」だけじゃない。
| 他の打ち上げニーズに柔軟に対応できるように
| 考えられたんだ。
| ちなみに低軌道の9トン、ってのは宇宙ステーションへの
| 補給を念頭においてある。
\____________________
83
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:27:10
3/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「H-I」まではアメリカ生まれだった1段目も今回は独自開発で、
| ということで「LE-5」の経験を生かして新型の「LE-7」エンジンを
| 開発することになりました。
| この「LE-7」、1段目用のエンジンとしては世界的に見ても例の少ない
| 液体酸素と液体水素を推進剤に使ったエンジンです。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
LE-7
宇宙開発事業団(NASDA)が航空宇宙技術研究所、
三菱重工業、石川島播磨重工業と共同で開発した
液体ロケットエンジン。
「LE-5」と同様、液体酸素と液体水素を推進剤とする。
1986年、新型ロケットと同時期に開発が始まったが
開発過程でトラブルが続出。
完成予定が何度も延期され、ロケットの開発計画にも
大きく影響した。
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| エンジンの開発が遅れに遅れ…って、前にもあったじゃん。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| とんでもない。
| 「LE-7」の難産ぶりは他のエンジンが可愛く
| 見えてしまうほどだ。
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84
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:28:09
4/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| なぜ「LE-7」の開発が難航したのか?
| それは、そもそも推進剤の燃焼方式が「LE-5」とは違って
| 技術的に難しいものだったからです。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
二段燃焼サイクル
液体燃料ロケットエンジンの動作方式の一種。
推進剤の一部を予燃焼室(プリバーナー)で燃焼させ、
その燃焼ガスでターボポンプを駆動させる。
ターボポンプは、残りの推進剤を加圧して主燃焼室に
送り込み燃焼させる。
他の方式に比べて燃焼効率がよく、比推力が高いという
利点があるが、プリバーナーやターボポンプなど
超高温・高圧にさらされる部分が多く、開発は非常に難しい。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| え〜と…よくわかりません。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| エンジンの性能は高い、だけど作るのが難しい…
| そのくらいの認識で十分。
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85
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:29:31
5/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| はっきり言って、この新型ロケット開発の歴史は
| そのまま「LE-7」開発史と言い換えても差し支えないくらいですよ。
| まず、推進剤を燃焼室に送り込むターボポンプが
| 相等の難物でした。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
ターボポンプの羽根車は1分間あたり4万2000回という
超高速で回転する。
しかし、当初は回転数の上昇とともに振動が発生し、
所定の性能が出せなかった。
原因は羽根車の回転軸と重心のズレ。
わずか0.005mmの部品の誤差が膨大な遠心力を
生み出していた。
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| 数字がすごすぎて…やっぱりよくわかりません。
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| 開発陣は部品を手作業で削り込む、という
| 職人技で解決した。
| 少し削ってはズレを確認、また少し削って…
| 部品1個を仕上げるのに丸1日という
| 気の遠くなる作業…
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86
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:30:20
6/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| この振動問題の解決にめどが立ったのは、翌1987年のことでした。
| さらに翌年の1988年7月、秋田県の田代試験場というところに
| 「LE-7」の試作エンジンが持ち込まれ、燃焼試験が行われます。
|
| しかし!点火後わずか5秒で大爆発!!
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原因は液体酸素と液体水素がプリバーナーに送り込まれる
タイミングのズレだった。
このタイミングが少しでもズレると、安定して燃焼しなかったり
爆発を起こしたりするのである。
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| なんちゅうデリケートなエンジンなんだ…
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| 技術者たちが何度改良しても、5秒以上
| エンジンを動かすことはできなかった。
| やがてこれは「5秒の壁」と呼ばれることになる。
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87
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:31:08
7/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 開発陣が「5秒の壁」を乗り越えたのは2年後のこと。
| それからは着実に燃焼時間を延ばしていき、
| 1991年2月に一つの目安である350秒を達成しました。
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燃焼時間350秒は新型ロケットの第1段燃焼時間と
ほぼ同じ。
エンジン開発に光が見えたか…に思われた。
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| 「…に思われた」って、まるですんなりいかなかったって
| 言い方じゃん。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 実際そうだもん。
| 「5秒の壁」を乗り越えるために、開発陣はエンジンに
| 追加したセンサーを使って0.1秒単位で内部の圧力を
| 測ることで、絶妙のタイミングを捉えた。
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88
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:32:01
8/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| しかし…1991年8月8日。悲劇が起こります。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1991年8月8日
「LE-7」エンジン関係の試験にて死亡事故発生
三菱重工業・小牧北工場にてガスによる加圧試験中に
配管の一つが破裂。
高圧ガスによって破壊されたドアの下敷きになり
技術者1名が死亡した。
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| ああ、なんてことだ…
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| スペースシャトルの事故を引き合いに出すまでもなく
| 宇宙開発での尊い犠牲は数多い。
| その中には日本人もいるのだ…ということは
| 忘れちゃいけないことだろう。
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89
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:32:39
9/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| それでも、悲しみを乗り越えて人は強くなるもの。
| 「LE-7」の開発が止まることはありませんでした。
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直ちに原因究明と対策に着手。
配管が破損した原因は溶接部分の強度不足だった。
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| 人ひとりの命か…高い授業料だな。
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| その部分は溶接をやめて、一体成形で配管を作ることで
| 強度を上げることになった。
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90
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:33:47
10/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 1992年。すでにこの時点で打ち上げ予定は1年延期されていました。
| 「LE-7」は田代試験場で燃焼試験を繰り返し、そのころには
| 誰もが完成間近との手ごたえを感じていました。
|
| しかし!6月の燃焼試験で試作エンジンがわずか4.7秒で大・爆・発!!
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1992年6月18日 「LE-7」燃焼試験にて爆発事故発生
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| ひえぇぇぇぇ…
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| 「これでイケる!」と踏んでいた関係者のショックは
| 言葉にできないほどのものだった。
| そしてこれで、打ち上げ予定がさらに1年延期された。
\____________________
91
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:34:29
11/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「何故だ…何故だ…原因の追求だ」…
| 技術者たちは爆発の原因究明に当たります。
| 1000項目を超える徹底した検査の末に見つかった原因は…
| なんと、またもや溶接でした。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
溶接部分のわずかな凸凹に力や熱が集中、
亀裂が入り、破損につながったのだった。
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| まさかこれも、職人技で何とかしたとか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ご明察。
| 1ヶ所当たり40時間もかけて、まっ平らになるまで
| 溶接部を磨いたんだ。
| 直接見えない部分は鏡を使ってまで…
\____________________
92
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:35:22
12/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さっきからエンジンの話ばかりしてますけど、平行して他の部分の
| 開発も進められているんですよね。
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TR-Iロケット
宇宙開発事業団が開発した実験用固体燃料ロケット。
新型ロケット開発に必要とされる補助ブースター分離機構の試験、
飛行時の空力特性のデータ取得などを目的とする。
1988年9月8日〜1989年8月20日、計3機打ち上げ。
全長:14.3m 外径:1.1m 重量:11.9t 構成:単段式
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| 小型のロケットでテストしてって、「ETVロケット」みたいだな。
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| あれはエンジンのテスト用だったけどな。
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名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:36:50
13/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| こうして苦難の末に、待望の「H-IIロケット」が完成しました。
| 1号機打ち上げは1994年2月4日。
| 最初の予定から2年遅れのことでした。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
H-IIロケット
宇宙開発事業団(NASDA)が開発した人工衛星打ち上げロケット。
NASDAが運用した衛星用ロケットとしては、初めて主要技術の
全てが自主開発された機体である。
1994年2月4日〜1999年11月15日、計7機打ち上げ。(うち5機成功)
全長:49.9m 外径:4.0m 重量:264t 構成:2段式
軌道投入能力:
10000kg(低軌道)/3800kg(静止トランスファ軌道)
主な衛星:「りゅうせい」、「ひまわり5号」、「みどり」他
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| ほとんど「LE-7」に振り回されたって印象だぞ。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| もちろん他の部分だって、あっさり完成したわけじゃない。
| だけど「LE-7」の難航があまりにも大きすぎたんだよな。
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94
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名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:37:28
14/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そして、「H-II」は6号機まで5機連続で打ち上げに成功し
| 着実に実績を積み上げていきました。
| …ここまではね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1号機(1994年2月4日):「りゅうせい」…軌道再突入実験機
:「みょうじょう」…性能確認用ペイロード
2号機(1994年8月28日):「きく6号」…技術試験衛星
3号機(1995年3月18日):「ひまわり5号」…静止気象衛星
:「SFU」…宇宙実験・観測フリーフライヤ
4号機(1996年8月17日):「みどり」…地球観測プラットフォーム技術衛星
:「ふじ3号」…アマチュア衛星
6号機(1997年11月28日):「TRMM」…熱帯降雨観測衛星
:「きく7号」…技術試験衛星
※5号機が抜けているのは打ち上げ順が入れ替わったため
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| なんだか、含みのある言い方だな。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 後で説明するさ。
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95
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名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:38:38
15/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「H-II」の特徴を挙げていきましょう。
| まずは、日本製ロケットとしては過去最大の打ち上げ能力。
| これはもはや、「H-I」がお子ちゃまに見えてしまうほどのパワフルさです。
| 外国のロケットに比べてどうか…についてはなんとも言えませんが
| 欧米の背中も見えなかった「N-I」〜「H-I」の時代に比べると
| 隔世の感がありますね。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
打ち上げ能力の比較(静止トランスファ軌道)
アリアン4(欧州) 2,100〜4,720kg
プロトンK(ソ連/ロシア) 約4,800kg
デルタII(米国) 900〜2,170kg
アトラスII(米国) 2,810kg
タイタン34D(米国) 約5,000kg
H-II(日本) 3,800kg
H-I(日本) 1,100kg
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| 静止トランスファ軌道って何だ?
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| 静止衛星は、いきなり静止軌道に乗せるんじゃなくて
| いったん楕円軌道に乗せてから軌道修正したほうが
| 効率がいいんだよ。
| その楕円軌道を「静止トランスファ軌道」という。
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:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:39:37
16/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「H-II」は2段式…つまり、「H-I」から1段減ってます。
| それは2段目が「再着火機能」というものを持っていたから。
| 読んで字のごとく一度燃焼を止めて、もう一回点火する機能です。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
LE-5A
「H-II」の第2段に使用された液体ロケットエンジン。
「LE-5」の改良型であり、燃焼効率と信頼性が向上した。
再着火機能は先代「LE-5」から引き継がれたものであり
「H-Iロケット」で世界初の軌道上での再着火に成功した。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| …つまり、どういうこと?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 今まで2段目と3段目で分担してたのが、2段目だけで
| できるようになったということ。
\____________________
97
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:40:32
17/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 反面、「H-II」の欠点は打ち上げ費用にありました。
| 外国ロケットとの比較では、とてもお高いロケットに
| なってしまったんですよ。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
「H-II」の打ち上げ費用は1機当たり190億円なり。
「H-I」に比べると40億円のアップであり、実のところ
性能比でいえば、さほど値上がりしたというわけではない。
ところが当時の国際標準は100億円。
お世辞にも価格競争で勝てるシロモノではなかったのだ。
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| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 外国ロケットの約2倍か。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| これは、その当時急激に進んだ円高が大きい。
| ドル換算で「H-II」は一気に値上がりしちゃったんだよ。
\____________________
98
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:41:30
18/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さらに、頼みの綱の「信頼性」が揺らぐ出来事が起こってしまいます。
| 通信放送技術衛星「かけはし」を載せた5号機が、なんと予定より早く
| エンジンストップ。
| 静止トランスファ軌道への投入に失敗しました。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1998年2月21日 「H-IIロケット」5号機打ち上げ
第2段エンジンの早期停止により
静止トランスファ軌道投入失敗
配管の接合部が破断、高温の燃焼ガスが漏れ出し
エンジン制御機器の電源コードを焼き切ったことが
原因と考えられている。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| なんてこった。これで連続成功記録もストップか…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「かけはし」は別の軌道に乗ってミッションを続けた。
| 予定が大きく狂っちゃったけどな。
\____________________
99
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:42:26
19/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 悲劇はこれで終わりません。
| 翌年打ち上げられた8号機では、問題の2段目は
| 改良型の「LE-5B」を積んでいたため同じ事故は起こらないと
| 考えられていたのですが…
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1999年11月15日 「H-IIロケット」8号機打ち上げ失敗
発射後239秒で第1段エンジンが急停止
制御不能となった第2段に指令破壊(早い話が自爆)が
発信された。
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| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 今度は1段目が…!!
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 初期の実験機ならともかく、大型ロケットの
| 連続失敗は今までなかったことだ。
\____________________
100
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:43:20
20/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| この連続失敗は関係者のみならず、日本中に衝撃を与えました。
| 「巨額の血税が一瞬で消えた」「揺らぐ技術立国」…
| マスコミは批判記事を書きまくり、当然世間のNASDAを見る目も厳しくなり…
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
この連続失敗を受けて、次に打ち上げ予定だった
7号機はキャンセル。
「H-IIロケット」の運用が終了した。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ああ、「H-II」…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 余談だが、翌年の2000年に「M-V」4号機が失敗している。
| 20世紀末は日本の宇宙開発にとって試練の時期だった。
\____________________
101
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:44:31
21/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| しかし、NASDAの中の人に泣いてる暇はありません。
| 「とにかく現物が見たい…さもなくば、また同じ失敗をしてしまう…」
| NASDAの五代富文副理事長は「海底に沈んだエンジンを探して
| 引き上げる」という前代未聞の決断をします。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1999年11月19日 第1次調査開始、ロケットの残骸を発見
12月20日 第2次調査開始
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 原因を突き止めなきゃいけないのはわかるけどさ。
| 海に沈んだエンジンなんて見つかるものなのか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 簡単じゃないのは初めからわかってたことだ。
| 横浜市ほどの面積のエリアから3m四方のエンジンを
| 探すなんて想像できないだろ。
\____________________
102
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:45:32
22/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 海洋科学技術センターの協力を受けて奇跡的にエンジンが
| 見つかりました。
| 翌年には水深3000mからの引き上げに成功。
| 早速エンジンストップの原因が徹底的に調査されました。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1999年12月24日 エンジン本体を発見
2000年 1月23日 「LE-7」引き上げ成功
調査の結果、ターボポンプ内部に発生したキャビテーション
(平たく言えば泡のこと)に起因する振動が羽根車の羽の
疲労破壊を引き起こしたと判明した。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 泡でエンジンが壊れるなんて…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| キャビテーションなめるなよ。
| 2004年に起きた美浜原発の事故も、こいつが原因だ。
\____________________
103
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:47:00
23/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「H-IIロケット」とは、どんなロケットだったのか…?
| 見るべき視点が多すぎて、とても一言では言い表せませんね。
| あえて月並みな言葉を当てるとすれば、極めて日本的なロケット
| といったところでしょうか。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
・日本初の完全独自開発によるロケット
(衛星打ち上げ用の液体燃料ロケットとして)
・世界でも珍しい全段液体酸素・液体水素を推進剤とするロケット
・エンジン開発の困難をことごとく職人技で乗り越えたロケット
・打ち上げ能力でようやく世界レベルに追いついたロケット
・円高のあおりを受けて国際競争力を失ったロケット
・連続失敗で止めを刺されたロケット
・非常識なまでに安い開発費で完成したロケット
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| 「H-II」の開発費ってそんなに安かったのか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「H-II」の開発費は2700億円。
| 「エンジン単体の開発費だろHAHAHA!」と思ってた
| アメリカ人は「ロケット全体の額」と聞いて仰天したとか。
\____________________
104
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/19(金) 23:47:48
24/24
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 今回の「H-II」と以前の「M-V」を見てもわかる通り、1990年代以降の
| ロケットは性能に加えて「コスト」が求められていきます。
| その流れに対する回答の一つが「H-IIA」。
| そして、実は他にも答えになるはずのロケットがあったのですが…
| 次回は日本宇宙開発の黒歴史です。
| 君たちには現実と戦ってもらいますよ!
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次回、あなたと合体したい
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| `つ ∇ (゚Д゚;) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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 ̄ ̄ ̄ ̄.| |====∧==========
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| うわぁ…いやだな…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 戦わなきゃ、現実と。
\____________________
糸売く
105
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/26(金) 23:56:27
1/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「ロケット開発史」講義第16回。
| NASDA(宇宙開発事業団)とISAS(宇宙科学研究所)が
| ツルんでろくでもないロケットを作ったんですよ〜
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
日本ロケット開発史・第16回
〜ぼくたちの失敗〜
,__ ___
iii■∧ / |___|
━ (,, ゚Д゚)/ ━━━━━━━━━━━|| .∧∧━
| `つ ∇ ∧∧ Φ( ゚д゚ )
| | | ̄ ̄| ( ゚д゚ ) ||⊂ 〉
〜| | | □ | |つ つ) ̄ ̄ ̄ | | |〜
. ∪∪ | | 〜と_)__)│;;;;;;;;;;;;;;│ し`J
 ̄ ̄ ̄ ̄.| |====∧==========
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| な〜にぃ〜!?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| やっちまったなぁ!!
\____________________
106
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/26(金) 23:57:11
2/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| …さて、第14回のラストから何度か触れましたが、
| 「H-IIロケット」が登場した1990年代は実用衛星の大型化が
| 一気に進んだ時代でもあります。
| それまでは大型といっても、せいぜい800kg程度だったのが
| 1994年には2トンの静止衛星、なんてものも登場します。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
2トン級の静止衛星に対応するために
800kg級の「H-IBロケット」計画は凍結され
「H-IIロケット」計画に集約された。
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 一気に倍以上ってすごいな。
| それだけ衛星が一気に性能アップしたのか。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| まあ、性能アップで一応正解なんだけど…
\____________________
107
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/26(金) 23:57:42
3/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| もう少し、つっこんだ答えが欲しいところですね。
| この時代の静止衛星の大型化は、こんな要因が
| あったんですよ。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
衛星の多機能化
例えば、MTSAT(ひまわり6号・7号)は気象観測だけではなく
航空管制も担当する多目的衛星である。
衛星の長寿命化
静止衛星は定期的にエンジンを噴射して軌道修正を
行わなければならない。
衛星の寿命が延びれば、それだけ推進剤の搭載量が増える。
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| 静止衛星って、軌道に乗せたらそのままずっと
| 静止するもんだと思ってた。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| それは間違い。
| ほっといたら、軌道がどんどんずれていくんだよ。
\____________________
108
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/26(金) 23:58:21
4/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 言うまでもありませんが、とかく大きな衛星はお金がかかるもの。
| 黄金の国ジパングといえど、そうホイホイ作れるものじゃありません。
| 1トン以下の中小型衛星は今後も残る…いや、21世紀には
| むしろ需要が増えるんじゃないかと予想されていたんですね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
こうして2トン級の「H-II」とは別に、小型実用衛星に対応した
打ち上げロケットの開発が検討されることになる。
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| いつぞやのピギーバック衛星みたいに「H-II」に何機か
| 積んで同時打ち上げ、って手は使えないのか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| それも有効だけど、いつも都合よく相乗りできるとは
| 限らないだろ。
\____________________
109
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/26(金) 23:59:15
5/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| もう一つ、見逃せない情勢として「商業衛星の本格化」と
| いうのがあります。
| 国や大学が自前で打ち上げる時代から、企業がよその衛星を
| 打ち上げて儲ける時代に移りつつあったんですね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
商業衛星打ち上げ事業
通信会社などの民間企業や他国の宇宙関連機関から
人工衛星の打ち上げを請負い、収益を得る事業。
1980年代中盤から始まり、1990年代に本格化。
2012年現在、43億ドルの市場規模があるといわれる。
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| ロケット打ち上げて商売する時代か…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「H-II」は、この商売という観点では失敗作だった。
| まあ、今も成功してるとはいえないけど。
\____________________
110
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/26(金) 23:59:50
6/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「小型のロケットが欲しいなー、それで一山当てたいなー」
| …そんな発想から宇宙開発事業団(NASDA)は
| 1993年に新しいロケットの開発を始めた、というわけです。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1993年4月 宇宙開発事業団、小型衛星用ロケットの開発に着手
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| 「H-IIロケット」完成の前の年だな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| お察しの通り、これがろくでもないロケットになるわけだが。
\____________________
111
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/27(土) 00:00:44
7/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 開発費は安く抑えたい、そして早く作りたい…
| NASDAの中の人は考えました。
| 「今あるロケットをツギハギすれば安上がりじゃん!」
| …そんなノリで生まれたのが、この「J-Iロケット」です。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
J-Iロケット
宇宙開発事業団と宇宙科学研究所が共同開発した
衛星打ち上げ用全段固体燃料ロケット。
開発費および開発期間、打ち上げ費用の抑制を目的とし、
全段既存のロケットからの流用品で構成された。
第1段に「H-IIロケット」の補助ブースター「SRB」を流用し、
第2・3段に「M-3SIIロケット」の第2・3段を組み合わせる
3段式の構成である。
1996年2月21日、1機のみ打ち上げ。
全長:33.1m 外径:1.8m 重量:88.5t 構成:3段式
軌道投入能力:1000kg(低軌道)
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| 「ミューロケット」の流用って、前にもやってなかったか?
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「LS-A」や「ETV」は実験用だ。
| 実用ロケットの「J-I」とは意味が違う。
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112
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/27(土) 00:01:30
8/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ところがこの「J-I」、いろいろ「やっちまった」ロケットです。
| まず、「H-II」の補助ブースター(SRB)を流用した1段目ですが
| そもそも補助ブースターって、ロケット本体をひたすら上に
| 持ち上げるためのものなんですよね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
「SRB」のノズルは可動式なので、一応進路変更はできますが
単体での姿勢制御など考慮されていません。
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| え〜と…つまり?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そのまま飛ばしたんじゃ、どっちを向くかわからないってこと。
\____________________
113
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/27(土) 00:02:13
9/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 仕方がないので、「SRB」に姿勢制御のためのエンジンを
| 追加することになりました。
| 「流用でコストダウン」の目論みは早くも崩れちゃったんですよ〜
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
外部バーニアエンジン(EVE)
「J-I」第1段の姿勢制御機能を補完する目的で開発された
外付けの小型エンジン。
開発は石川島播磨重工業(現IHI)に委託されたが、
同社にとって未知の技術課題があり、完成までには
難航を極めたという。
,__ ___
iii■∧ / |___|
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| `つ ∇ ∧∧ Φ( ゚д゚ )
| | | ̄ ̄| ( ゚д゚ ) ||⊂ 〉
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| な〜にぃ〜!?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| やっちまったなぁ!!
\____________________
114
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/27(土) 00:02:54
10/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 次に「M-3SII」を流用した2段目と3段目なんですが…
| 第7回で登場した「無誘導重力ターン方式」って覚えてます?
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
第3段噴射__
\
_,,.. -─────────l二>
,. ‐''"´ \__第2段切り離し
l二>
,.‐´\__第2段姿勢変更(水平に向ける)
,.´
/
/
. /
/
/ \__第1段切り離し
/
__ /_______________
\
\__斜め上方に打ち上げ
,__
iii■∧ /
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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 ̄ ̄ ̄ ̄.| |====∧==========
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「L-4S」で誘導装置を載せられないからって考えられた
| 方法だろ?「風まかせロケット」とも呼ばれた…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「M-3SII」では誘導装置が追加されて、
| 進路の微調整くらいはできるようになった。
| いわば「誘導重力ターン方式」だな。
\____________________
115
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/27(土) 00:03:35
11/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ところが、NASDAが採っていた方式は真上に打ち上げて
| 慣性誘導で向きを変えるというポピュラーなもの。
| 飛び方の違うロケットをそのまま上に乗っけるなんて、
| できるはずがなかったんですよ〜
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
結局、各段の誘導制御装置に大幅な改造を施す
羽目になり、さらにコストアップ。
,__ ペタン
iii■∧ / ミ__ ペタン
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| `つ ∇ (;゚Д゚) | | (゚Д゚;)
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| 男は黙って、改造!
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 男は黙って、改造!
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116
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/27(土) 00:04:21
12/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そんなこんなで「J-I」1号機の打ち上げ予定は、1996年ということに
| 決まりました。
| …しかし、ここで問題発生!
| なんとその前年の1995年、「M-3SII」が引退しちゃったんですよ〜
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
ロケットに限らず、一度生産終了した工業製品というものは
製造ラインの再開に莫大な費用がかかります。
,__ ___
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| な〜にぃ〜!?
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| やっちまったなぁ!!
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117
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/27(土) 00:05:13
13/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 見通しの甘さによるコスト高騰という、別に乗り越えなくてもいい
| 困難を乗り越えて、へっぽこロケット「J-I」は完成しました。
| 「J-I」1機のお値段は43億円なり。
| 目標は20億円ですから、ざっと倍以上ですね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
極超音速飛行実験(HYFLEX)
宇宙開発事業団が実施した極超音速(マッハ数5以上)で
飛行する機体の設計・製作・飛行技術および大気圏再突入機の
飛行実証を目的とする実験。
実験機は1996年2月21日、「J-I」1号機によって打ち上げられ
打ち上げ、飛行実験、大気圏再突入までは成功したが
機体の回収には失敗した。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 一応、打ち上げには成功したんだな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「HYFLEX」は人工衛星じゃないということで
| 「J-I」1号機の3段目は省略された。
| 結局、3段式の「J-I」は実現していないんだよ。
\____________________
118
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/27(土) 00:06:16
14/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そしてこの「J-Iロケット」、お値段だけじゃなく性能もへっぽこでした。
| 搭載できる衛星の重量を、ロケット全体の重量で割った値を
| 「ペイロード比」といい、数字の大きいほうが性能がいいとされています。
| そこで、同じ時代の固体燃料ロケットのペイロード比を比べてみると…
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
ペイロード比の比較
M-3SII 1.26%
M-V 1.32%
トーラス 1.52〜1.82%
J-I 1.08%
※トーラス…アメリカの人工衛星打ち上げロケット。
1994〜2011年、計9機打ち上げ。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「J-I」の性能が低いのはわかったけど、0.2%の違いが
| そんなに大きいものなのか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 80トンのロケットなら、ペイロード比が0.2%上がれば
| 160kg余分に重い衛星が打ち上げられる。
| この差は大きい。
\____________________
119
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/27(土) 00:06:54
15/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「J-I」の「やっちまった」伝説はまだ終わりません。
| NASDAは2002年打ち上げの予定で2号機の準備を
| 始めちゃったんですよ〜
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
きらり(OICETS)
宇宙航空研究開発機構が開発した光衛星間通信実験衛星。
衛星同士、または地上局とのレーザー光による
通信実験を目的とする。
2002年、「J-I」2号機で打ち上げられる予定だった。
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| な〜にぃ〜!?
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| やっちまったなぁ!!
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120
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/27(土) 00:08:25
16/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「J-I」1号機が打ち上げられた1996年は、「H-IIAロケット」の
| 開発が始まった年でもあります。
| そして「H-IIA」の補助ブースターは「SRB」からまったく形の違う
| 「SRB-A」に変更となりました。
| 一方、「J-I」のコストダウンを模索していたNASDAの中の人は
| 何を思ったのか2号機の1段目に「SRB-A」を流用することにしました。
|
| …そう、2号機は1号機とはまるっきり別物になっちゃったんですよ〜
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
当然、姿勢制御装置の追加など、一から改造をやり直さないと
いけません。
ただでさえ開発費がかさんでるというのに、二重投資ということに…
,__ ペタン
iii■∧ / ミ__ ペタン
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| 男は黙って、流用!
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 男は黙って、流用!
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121
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/27(土) 00:09:15
17/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| しかし…いつまでもこんなグダグダを見逃すほど
| 日本政府は太っ腹ではありませんでした。
| 2001年、「J-Iロケット」開発は宇宙開発計画見直しによって中止。
| 結局、やっちまったロケットは1機打ち上げただけで終わったのです。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1998年4月 宇宙開発委員会、「J-I」の実用化に関して疑問を提起
2001年8月22日 宇宙開発委員会、「J-I」開発計画凍結を決定
なお、先述の「きらり」は2005年8月24日、ウクライナのロケットで
打ち上げられた。
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| やっちまったとか、へっぽことか、もう少しフォローできないの?
| 打ち上げは成功したんだしさ。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| まあ、打ち上げ成功率は100%だよな〜
\____________________
122
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/27(土) 00:09:59
18/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 打ち上げ成功?それがどうかしましたか?
| 前にも言いましたが、この講義で重視してるのは「目的が何で
| それが達成できたかどうか」。
| 「安いロケットを作ろう」という目的を達成できてない以上、
| 「J-I」は失敗作である、と断じているだけですよ。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
結局「J-I」が残したものは「安直な流用はろくな結果を
生まない」という教訓と、お高い授業料だった。
,__
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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 ̄ ̄ ̄ ̄.| |====∧==========
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| なんとも救いのない話だな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 別の視点から見たって、評価できるところは何もない。
| しいて言えば、こんなツギハギでもちゃんと
| 飛ばせたってことかな。
\____________________
123
:
名無しのAA書きさん
:2013/04/27(土) 00:10:39
19/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「J-I」のJは「Japan」ではなく「Joint」のJです。
| この「J-I」、NASDAとISASのロケットを機械的に繋ぎはしましたが、
| その結末はろくでもないものでした。
|
| さて、気を取り直して次回は現役ロケット「H-IIA」の登場ですよ!
| …って、もしもし?聞いてますか?
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
次回、たたけ!たたけ!たたけ!
,__ ペタン
iii■∧ / ミ__ ペタン
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| `つ ∇ (;゚Д゚) | | (゚Д゚;)
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| 男は黙って、講義!
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| 男は黙って、講義!
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糸売く
124
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/03(金) 23:46:39
1/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「ロケット開発史」講義第17回。
| 今回はいよいよ現役ロケット「H-IIA」の登場です。
| 今でこそ打ち上げ成功率95%、16回連続成功という
| 安定した成績を誇る機体ですが、実はフルボッコ状態からの
| 誕生だったんですよね。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
日本ロケット開発史・第17回
〜今ありて〜
,__
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| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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| フルボッコされたのは「H-II」じゃないの?
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| 「H-II」というよりNASDA(宇宙開発事業団)だけどな。
\____________________
125
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/03(金) 23:47:24
2/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| では、早速「H-IIAロケット」の解説といきましょう。
| 名実ともに、まさしく日本の主力ロケットといえるでしょうね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
H-IIAロケット
宇宙開発事業団(現・宇宙航空研究開発機構)が開発した
人工衛星打ち上げロケット。
打ち上げ費用の削減と信頼性の向上を目的に「H-II」を
全面的に再設計して開発された。
1号機打ち上げは2001年8月29日。
2013年現在、計22機打ち上げ。(うち21機成功)
全長:53m 外径:4.0m 重量:289〜445t 構成:2段式
軌道投入能力:
10000〜15000kg(低軌道)/4000〜6000kg(静止トランスファ軌道)
主な衛星:「ひまわり7号」、「きずな」、「しずく」他多数
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| スペックにやけに幅があるんだけど。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| それは、「H-IIA」には何種類かバリエーションがあるから
| …詳しくは後で。
\____________________
126
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/03(金) 23:48:10
3/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 前回言ったとおり、「H-IIA」の開発が始まったのは1996年です。
| この「H-IIA」、1段目には「LE-7A」という新型エンジンが
| 使われることになりました。
| 『 あ の 』苦心作「LE-7」から若干性能を落としてでも、
| お安く作ろうという目的で開発されたエンジンです。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
LE-7A
「LE-7」の後継機として開発された液体ロケットエンジン。
燃焼方式等、基本的には「LE-7」と同じだが、製造コスト削減と
信頼性の向上を目的に構造が大きく見直された。
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| 「LE-7」って職人技で作られたという、あの…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| その職人技を使わなくても済むように、
| 「LE-7A」では溶接部分が徹底的に減らされた。
\____________________
127
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/03(金) 23:49:06
4/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| しかし「LE-7」の経験があるといっても、すんなり新型エンジンが
| 作れたわけじゃありません。
| 1999年に「LE-7A」のエンジン認定試験が始まったんですが、
| ここで大きな問題が発生しました。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
「LE-7A」では基本形の「短ノズル仕様」と下部ノズルスカートを
継ぎ足して推進力を上げる「長ノズル仕様」の2種類が用意された。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| /|
|/| |/| |
|. | |. | |
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______| ______| \|
短ノズル仕様 長ノズル仕様
しかし、「長ノズル仕様」の試験では始動・停止時の振動が大きく
ノズル駆動部に負担をかけるという問題が発生した。
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| う〜む…うまくいかないものだな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| もともと「ノズルを継ぎ足す」ことに問題があった。
| そういうわけで、「H-IIA」は当面「短ノズル仕様」オンリーで
| 打ち上げることに。
\____________________
128
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/03(金) 23:49:46
5/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さらに「H-IIロケット」の連続失敗が追い打ちをかけました。
| これについては前々回に言いましたね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
1998年2月21日 「H-II」5号機打ち上げ失敗
1999年11月15日 「H-II」8号機打ち上げ失敗
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| この連続失敗で「H-II」が引退しちゃったんだよな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そしてマスコミはNASDAをフルボッコに。
| これも前に言ったな。
\____________________
129
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/03(金) 23:50:54
6/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「H-II」8号機の失敗の原因は、「LE-7」エンジンの内部で発生した
| キャビテーション(泡)で振動が起こり、それによって
| ターボポンプが壊れたことでした。
| その失敗の原因調査の結果を踏まえて、開発中の「LE-7A」の
| テスト条件を厳しくしてみたところ…
| なんと、「LE-7A」でも振動が発生したんですよ。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
「H-IIA」1号機打ち上げ予定(2000年)の年での
トラブル発生だけに、この一件は内外に衝撃を与えた。
「H-II」失敗の反省が活かされていない…
またもマスコミはNASDAをフルボッコに。
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| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| なんと。
| そのまま打ち上げたら、失敗したかもしれないのか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そこはなんとも。
| でも、失敗の可能性が見つかった以上、
| 放置しておくという選択肢はないだろう。
\____________________
130
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/03(金) 23:51:42
7/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ところが、NASDA内部の空気は「多少の不安要素は目をつぶってでも
| スケジュール通りに打ち上げを…」だったといいます。
|
| …しかし、そんな「臭いものに蓋」と言わんばかりの放置プレイに
| 待ったをかけた人がいました。
| 誰あろうNASDAのトップ、山之内秀一郎理事長です。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
山之内理事長は周囲の反対を押し切り「H-IIA」1号機の
打ち上げ延期を決定。
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 問題が見つかったのに、そのまま打ち上げようだなんて…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| この放置プレイに限らず、当時のNASDAには
| 組織的な問題が山積していた。
| そんなNASDAの改革を担ったのが、就任したばかりの
| 山之内理事長だ。
\____________________
131
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/03(金) 23:52:28
8/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 打ち上げ延期とともに、問題のターボポンプも設計変更されることに
| なりました。
| そんな紆余曲折の末に2001年、「H-IIA」1号機が打ち上げられた
| ということです。
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2001年8月29日 「H-IIA」1号機打ち上げ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| これでやっと、先代の教訓が生かされたってわけだ。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ところが厳密に言うと、キャビテーション対策が
| 施されたのは2号機から。
| 1号機には間に合わなかったので、エンジン出力を
| 落とすことで対応した。
\____________________
132
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/03(金) 23:53:12
9/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さて、気になる「H-IIA」の打ち上げ費用は
| 1機当たり約85億円〜120億円。
| 「H-II」の190億円に比べれば、グッとお安くなりました。
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お値段に幅があるのは打ち上げ能力に応じた
バリエーションがあるから。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 世界基準が確か100億円だろ?
| ものによってはそれより安いじゃないか。やったな!
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ところが、それからさらに円高が進んでしまい
| 結局、商売に結びついていないという悲しい話が。
\____________________
133
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/03(金) 23:54:31
10/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ところで、「H-IIA」が安くなったのは外国産の部品を使ったから…
| なんて話がやけに有名で、それをネタに「純国産じゃないじゃんwww」と
| 揶揄する向きもあります。
| 実際、確かにその通りなんですが、それは安くなった原因の
| 一部に過ぎないんですよね。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
・第1段エンジン配管系の簡素化および溶接箇所の削減
・第2段エンジン「LE-5B」も「LE-5A」に比べて簡略化
・第2段推進剤タンクの「デルタロケット」との共通化
・電子機器の配線・コネクタの削減
・補助ブースターの構造見直し(分割構造→一体成型)
エトセトラエトセトラ…
…と、「H-IIA」は「H-II」に比べて構造が大幅に変更されている。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| もう、全体に手を入れましたって感じだな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 安くなっただけじゃない。
| これらの簡略化は信頼性…つまり打ち上げ成功率の
| アップにつながるんだよ。
\____________________
134
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/03(金) 23:55:31
11/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| もう一つ、打ち上げ手順の変更というものも大きいです。
| 「H-IIA」はロケット本体だけでなく、打ち上げシステム全体で
| 安く、より確実になったと見るべきでしょうね。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
「H-II」では
1 ロケット組立棟でロケット本体を組み立て
2 射点(発射場)へ移動
3 射点で衛星の搭載・発射台とのケーブル接続
…と二ヶ所に分けて作業されていた。
これに対し、「H-IIA」では衛星搭載とケーブル接続もまとめて
ロケット組立棟で行うことに変更された。
この作業場所の集約は、打ち上げ準備期間の短縮につながった。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 準備期間が短くなることで安くなるの?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「時は金なり」って言葉通り、手間がかかるってことは
| お金がかかるってことと同じなんだよ。
\____________________
135
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/03(金) 23:56:26
12/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 続いて、さっきからチラチラ出ている「H-IIA」のバリエーションについて。
| 「H-IIA」の開発目的は、第一にお高くなりすぎた「H-II」のコストダウン
| なんですが、もう一つ「打ち上げニーズの多様化への対応」
| というのもありました。
| 要は「ダンナ、あっしが何でも打ち上げますぜ!」ってことですね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
「H-IIAロケット」で想定された打ち上げ需要
・2〜3トン級の静止衛星
・1.5トン級静止衛星の2機同時打ち上げ
・15トン級宇宙ステーション補給機
・惑星探査機
・再利用型宇宙船etc…
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 打ち上げの多様化って話、「H-II」のときもあったよな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「H-IIA」は、さらにそれを進化させたものと考えていい。
\____________________
136
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/03(金) 23:57:34
13/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そんな多様化に答えるために「H-IIA」では大小3種類の
| 補助ブースターが用意されました。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
・固体ロケットブースター「SRB-A」
「H-IIA」用に新規設計された大型の補助ブースター。
「H-II」の「SRB」に比べて大幅な性能アップとコストダウンが
両立されている。
・固体補助ロケット「SSB」
アメリカ製ロケットを基に「H-IIA」用に改造された小型ブースター。
・液体ロケットブースター「LRB」
「LE-7A」を2基まとめて構成される超大型ブースター。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「SRB-A」って、「J-Iロケット」2号機で流用されそうになったんだっけ。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「LRB」は計画だけで実現しなかったけどな。
\____________________
137
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/03(金) 23:58:30
14/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そして、計画段階では板書に書いた5種類のラインナップが設定されました。
| 一番シンプルな「H2A202」を基本として、打ち上げ能力が足りなければ
| 補助ブースターの追加で補う、というわけです。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
標準型
・H2A202…本体+「SRB-A」2基
・H2A2022…本体+「SRB-A」2基+「SSB」2基
・H2A2024…本体+「SRB-A」2基+「SSB」4基
増強型
・H2A212…本体+「SRB-A」2基+「LRB」1基
将来発展型
・H2A222…本体+「SRB-A」2基+「LRB」2基
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| でも、「LRB」が実現してないってことは…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そう、「H2A212」と「H2A222」も実現しなかったってこと。
\____________________
138
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/03(金) 23:59:40
15/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 増強型と将来発展型がボツになったのは、技術的に難しいこと、
| 費用がかかりすぎること、それと「H-II」の連続失敗を受けて
| 「とにかく開発を標準型に集中しよう!」という
| 宇宙開発事業団(NASDA)の方針転換があったからです。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
ところが、この増強型「H2A212」の開発中止で問題発生。
大型衛星「きく8号」は「H2A212」での打ち上げが前提であり、
標準型最強の「H2A2024」でも能力不足だったのだ。
そこで、本体+「SRB-A」4基の「H2A204」が新たに開発された。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| これで「H-IIA」のラインナップは4種類になったわけだ。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ところが「そこまで細かく分けることないんじゃない?」ってことで
| 「H2A2022」と「H2A2024」は廃止に。
| 結局、「H2A202」と「H2A204」の2種類だな。
\____________________
139
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/04(土) 00:00:23
16/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さて、「H-II」に比べて信頼性が上がったとされた「H-IIA」ですが
| 実はアキレス腱とも言うべき問題点がありました。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
「SRB-A」のエンジンから噴出される高温高圧の燃焼ガスにより
ノズル内部の断熱材が削られ、脱落するという現象が地上試験で
確認された。
放置すれば、飛行中ノズルに穴が開きかねない問題である。
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| まさか、そのまま放ったらかしにしてたわけじゃないんだろ?
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| もちろん。
| 弱い部分を補強したり、ノズルの形を見直したり
| それなりに対策は打っていた。
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140
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/04(土) 00:01:25
17/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| その対策が功を奏したのか、5号機までは無事成功しました。
| ところが2003年、ついに恐れていたことが起きてしまいます。
| 6号機の打ち上げが失敗してしまったんですよ!
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
2003年11月29日 「H-IIA」6号機打ち上げ失敗
「SRB-A」2基のうち1基が燃焼終了後の分離に失敗、
そのまま第1段のデッドウエイトとなってしまった。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は所定の高度・速度に
達しないと判断、6号機の指令破壊に踏み切った。
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| なんてこった…!せっかく対策したというのに…
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| これがJAXA発足後初のミッションだっただけに、
| この失敗は内外に大きな衝撃を与えた。
\____________________
141
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/04(土) 00:02:13
18/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 原因はやはり、燃焼ガスで「SRB-A」のノズルに穴が開いたからでした。
| ノズルから漏れ出したガスで、分離機構が壊れてしまったんですよ。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
2003年は環境観測技術衛星「みどりII」の全損、
火星探査機「のぞみ」の失敗等、発足したばかりのJAXAに
逆風が吹き荒れた年になった。
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| 少なくとも、「のぞみ」は「H-IIA」と関係無いんじゃ…?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 確かにそうだけど、世間ってヤツは十把一絡げで見るもんだろ。
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142
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/04(土) 00:03:28
19/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 原因がわかったならば、早速対策。
| 新たに「SRB-A改良型」が開発されました。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
SRB-A改良型
「H-IIA」6号機の失敗を受けて開発された固体ロケットブースター。
燃焼ガスの圧力を下げる代わりに、燃焼時間を延ばす、
ノズル形状を見直す、分離機構を改良するなど
随所に安全性を高める改良が施された。
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| 最初からこれを使ってれば…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 気持ちは分かるが、そいつは後出しジャンケンの発想だろう。
| それにこの改良型に替えたおかげで、「H-IIA」の
| 打ち上げ能力が下がっちゃったんだ。
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143
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/04(土) 00:04:17
20/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| とどのつまり、「SRB-A」のヤバさに対してNASDAの中の人の
| 認識が甘かったということにつきますね。
| …ともかく、1年以上の空白を経て「H-IIA」の打ち上げが再開され、
| 現在に至るというわけです。
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2005年2月26日 「H-IIA」7号機打ち上げ成功
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「SRB-A」の性能は落ちたままなの?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| いや、その後も改良が続けられ、今は三代目の
| 「SRB-A3」が使われている。
| こいつは初代の性能と、改良型の信頼性を両立した
| 優れものだ。
\____________________
144
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/04(土) 00:05:31
21/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 最初に言ったとおり、7号機以来「H-IIA」は16連続成功と着実に
| 実績を積み重ね、それとともにマスコミの批判も下火になりました。
| ですが、その信頼性の高さは奇跡もマジックでもなく、ひたすら
| 地味な努力と改善の積み上げで築き上げたものなのですよ。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
その一方で「H-II」「H-IIA」のシリーズは基本計画から
ほぼ30年が経過し、陳腐化してきている
…という厳しい見方がある。
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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| ところで、さっき言ってた「長ノズル仕様」ってどうなったの?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 結局ノズルの継ぎ足しはあきらめて、一体型の長ノズルが
| 8号機からデビューした。
\____________________
145
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/04(土) 00:06:09
22/22
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さて、延々と続いてきたこの講義も2013年現在まで到達しました。
| 次はいよいよ最終回。
| 日本最大ロケットとその他もろもろ…そして、まとめといきましょうか。
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次回、あしたは どっちだ
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| `つ ∇ (゚Д゚;) (゚∀゚,,) アヒャ
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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| ヤ
| まだ講義るってえのか?
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| まってくれよおっちゃん…
| おれは…まだまっ白になりきっていねえんだぜ。
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糸売く
146
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/10(金) 23:58:03
1/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「ロケット開発史」講義第18回。
| 約60年の歴史を語ってきたこの講義も、今回が最終回です。
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日本ロケット開発史・第18回
〜ロマンスロケット〜
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| `つ ∇ (゚Д゚;) (゚∀゚,,) アヒャヒャ
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
〜| | | □ | √ ̄(___ノ〜 √ ̄(___ノ〜
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 ̄ ̄ ̄ ̄.| |====∧==========
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 18回目でやっと最終回かよ…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| たのむや…まっ白な灰になるまでやらせてくれ…
| なんにもいわねえでよ…
\____________________
147
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/10(金) 23:58:48
2/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| では、まずは復習から。
| 「H-IIAロケット」の開発コンセプトは「H-II」のコストダウン、
| そして「打ち上げニーズの多様化への対応」でしたよね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
「H-IIAロケット」で想定された打ち上げ需要
・2〜3トン級の静止衛星
・1.5トン級静止衛星の2機同時打ち上げ
・15トン級宇宙ステーション補給機
・惑星探査機
・再利用型宇宙船etc…
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| だから、「H-IIA」ではいくつかバリエーションがある、だったよな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| それも整理されて、今では2種類だけどな。
\____________________
148
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/10(金) 23:59:42
3/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そのバリエーションとは、「H2A202」を基本として
| 必要な打ち上げ能力に応じて、補助ブースターを
| 追加しようというものでした。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
標準型
・H2A202…本体+「SRB-A」2基
・H2A2022…本体+「SRB-A」2基+「SSB」2基(廃止)
・H2A2024…本体+「SRB-A」2基+「SSB」4基(廃止)
・H2A204…本体+「SRB-A」4基
増強型(開発中止)
・H2A212…本体+「SRB-A」2基+「LRB」1基
将来発展型(開発中止)
・H2A222…本体+「SRB-A」2基+「LRB」2基
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「H2A204」は大型の「きく8号」用に後から開発された、だったな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 増強型と将来発展型が中止になったのは、費用の問題と
| 技術的なリスクが大きすぎたから。
\____________________
149
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/11(土) 00:00:52
4/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「きく8号」は「H2A204」の登場で打ち上げ可能となりました。
| で、残る問題は宇宙ステーション補給機の打ち上げ。
| さすがに標準型最強の「H2A204」でもパワー不足だったんですよね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
国際宇宙ステーション(ISS)
アメリカ、ロシア、日本、カナダおよび欧州宇宙機関が建設、
運用中の有人実験施設。
高度約400kmの軌道で地球を周回しながら実験・研究、
地球や天体の観測などを行う。
日本は実験棟「きぼう」の開発、宇宙飛行士の派遣および
宇宙ステーション補給機の打ち上げという形で参加している。
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 15トン級の補給機か…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ところがその後、補給機の重量は16.5トンに増えた。
\____________________
150
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/11(土) 00:02:01
5/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そこで、開発中止になった増強型の代替案として
| 浮上したのが、能力向上案「H-IIA+」です。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
H-IIA+
・第1段の直径を4mから5mに拡張し、「LE-7A」エンジンを2基搭載
・補助ブースターは「SRB-A」4基を標準とする
・その他は基本的に「H-IIA」標準型と共通とする
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「LRB」作るのやめて、なるべく今あるものを使おうって案だな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 一番のポイントは1段目に「LE-7A」を2基束ねて使った
| ということ。これを「クラスター化」という。
\____________________
151
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/11(土) 00:03:29
6/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| こうして2009年、「H-IIA+」を基に「H-IIBロケット」が完成しました。
| 今のところ、日本最大にして最強の打ち上げ能力を持つロケットです。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
H-IIBロケット
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した人工衛星打ち上げロケット。
宇宙ステーション補給機(HTV)の打ち上げを目的として開発され
エンジン等を「H-IIA」と共通化することで開発費用を抑えつつ、
打ち上げ能力の向上を達成した。
1号機打ち上げは2009年9月11日。
2013年現在、計3機打ち上げ。(3機とも成功)
全長:56.6m 外径:5.2m 重量:531t 構成:2段式
軌道投入能力:
19000kg(低軌道)/8000kg(静止トランスファ軌道)
打ち上げ実績:「HTV-1」、「こうのとり2号機・3号機」
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 1段目以外は「H-IIA」と同じなのか?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 積荷がデカいだけに2段目を補強したり、「HTV」用の
| 先端部を作ったりと、細かい点では違いがあるけどな。
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152
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/11(土) 00:05:09
7/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「H-IIB」は3機打ち上げて3機とも成功と、上々の滑り出しを見せています。
| これは「H-IIA」で着実に積み上げてきた成果の表れといえるでしょうね。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
こうのとり(HTV)
宇宙航空研究開発機構が開発、運用中の宇宙ステーション補給機。
宇宙飛行士の食料や衣類等の生活物資や実験装置などを運搬する。
「H-IIBロケット」で打ち上げられ、軌道上で国際宇宙ステーションに
ドッキング、補給物資を送り届けた後は不要になった実験装置や
衣類などを積み込み、大気圏に再突入し廃棄される。
2013年現在、技術実証機を含めて計3機が打ち上げられ
3機とも成功。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「H-IIB」で「HTV」以外は打ち上げないの?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 一応、静止衛星の打ち上げも想定されてるけど
| その予定はない。
| 実質「こうのとり」専用機と言っても差し支えないな。
\____________________
153
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/11(土) 00:06:15
8/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さて、ここまで「ペンシルロケット」から「H-IIB」までの歴史を
| 講義してきました。
| そして、この先日本のロケットがどのようになっていくのか…
| それは誰にもわかりません。
| もちろん、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の中の人も
| 考えているでしょうが、想定どおり物事が進むとは限りませんしね。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
「H-IIA改良型」だとか「H-III」だとかいう話がありますが
実現していないロケットを深く語ってもしょうがないですし。
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| まあ、俺たち予言者じゃないしな。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 糸川教授の「ロケット旅客機構想」だって
| 結局実現してないわけで。
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154
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/11(土) 00:07:00
9/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 一つ確実にいえることがあるとすれば、1990年代から顕著になってきた
| コスト重視の考え方。
| これは今後強くなりこそすれ、弱くなることはまず無いでしょうね。
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「M-V」も「J-I」も「H-II」もコスト高が廃止の一因だった。
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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| 結局金か。夢が無いな…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 「どうせ価格競争で勝てやしないんだから
| 徹底して性能を追求すべし」…なんて異論もあるけどな。
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155
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/11(土) 00:08:00
10/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| かつて学者や技術者といった一握りの人間のものだった
| 宇宙空間は、実用衛星の登場で地上で暮らす人々の生活と
| 密接につながるようになりました。
| そして、今や宇宙は学問の場であると同時にビジネスの場でも
| あるのですよ。
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ビジネスとなれば、コストが重視されるのは必然。
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| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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| 別に商売する必要はないんじゃないか?
| 国がもっと予算をつければ…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 仮にビジネスしないとしても、国の財布に厳しい
| ロケットを作っていいとは思わないぞ。
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156
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/11(土) 00:09:39
11/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そのコスト重視の思想を具体化しようとしたロケットが
| 「GXロケット」です。
| 最初から商売する気マンマンのロケットですね。
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GXロケット
ギャラクシーエクスプレス社とJAXAが共同開発していた
人工衛星打ち上げロケット。
第1段に外国製ロケットを流用、第2段に液体水素より安価で
取り扱いも容易なLNG(液化天然ガス)を燃料とする
新型エンジンを開発することで、開発費と打ち上げ費用を
抑えられる予定だった。
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| ギャラクシーエクスプレス?
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| 「GXロケット」打ち上げのために、日米の合計9社が
| 共同出資して運営していた企業だ。
| 今はもう無いけどな。
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157
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/11(土) 00:10:52
12/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| この「GXロケット」、仕様が二転三転したり政治的思惑が絡んだりと
| なかなか魑魅魍魎なロケットなんですが…
| まあ、飛んでもいないロケットの解説なんざ、この程度で十分でしょう。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
しかし推進剤タンクやエンジン等、肝心のLNG推進系の開発が難航。
開発スケジュールは当初の2001年冬打ち上げ予定から大幅に遅れ
開発費も当初予定の450億円から1500〜2100億円(見込み)へと
大きく膨らんだ。
結果、「『GX』による中小型衛星の打ち上げ受注」についても採算性が
疑問視され、2009年12月に開発が中止された。
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| 結局は失敗ってことか。
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| LNG推進系の開発は今も続いてるけどな。
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158
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/11(土) 00:11:56
13/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 続いて、今開発中の「イプシロンロケット」。
| これもコスト重視の考えが強いロケットです。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
イプシロンロケット
宇宙航空研究開発機構が開発中の全段固体燃料ロケット。
「M-Vロケット」の約2/3の打ち上げ能力を維持しつつ
打ち上げ費用が約1/3という高いコストパフォーマンスを
持つとされる。
第1段は「SRB-A」を流用、第2〜3段は「M-V」上段部の
改良型を使用した3段構成である。
2013年夏に1号機が打ち上げ予定。
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| 「M-V」の後継機なのか?
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 全段固体って意味で、そう位置づけられている。
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159
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/11(土) 00:12:56
14/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| で、「イプシロン」が安くなった理由としては、既存のロケットを流用したことに
| 加えて、板書に書いた要因が大きいです。
| まあ「H-IIA」同様、システム全体でコストダウンしてるってことですね。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
・製造工程の簡素化
・打ち上げシステムの革新
ロケットに自己診断機能を持たせることにより点検作業が
自動化された。
・組み立て工程の簡素化
工場と発射場に分かれていた組み立て作業ができるだけ
工場に集約された。
これにより、「M-V」では約2ヶ月かかっていた発射場での
作業期間が一週間に短縮されるという。
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| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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| 一週間で打ち上げか!そりゃすごいな!
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| 別に週一で打ち上げるってわけじゃないぞ。
| 勘違いするなよ。
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160
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/11(土) 00:14:08
15/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 最後に…これを言うと身も蓋もないんですが…
| ロケットってのは、基本的に人なり人工衛星なり
| 何かを宇宙に「運ぶための」機械なんです。
|
| 宇宙開発において重要なことは「何を運ぶか」であって
| 「何を使って運ぶか」は別に最重要じゃないんですよね。
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━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
打ち上げロケットは英語で「Launch vehicle」…
直訳すれば「打ち上げる乗り物」である。
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| `つ ∇ (゚Д゚#) (゚Д゚;)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 本当に身も蓋もないな…俺たちの夢はどこへいった!?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 落ち着けって。
\____________________
161
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/11(土) 00:15:28
16/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さらに突き詰めると、一番大事なことは運んだ物を使って
| 「宇宙で何をしたいか」…つまりは目的なんです。
| 目的は「夢」と言い換えてもいいと思いますね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
・惑星探査機で遠い宇宙の姿を捉えるか?
・サンプルリターンで宇宙の起源の謎にせまるか?
・月や火星に人類を送り込むか?
・実用衛星で暮らしの質を高めるか?
・打ち上げビジネスでお金を稼ぐか?
・情報収集衛星で安全保障のレベルを上げるか?
・人工衛星と称して弾道ミサイルを作るか?
,__
iii■∧ /
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| `つ ∇ (゚Д゚;) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ちょ…最後、北朝鮮…
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 漠然と「ロケット作りたい」だけじゃ、話は進まないってことだ。
| 問題はロケットを使って何をするかだ。
\____________________
162
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/11(土) 00:17:17
17/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| しかし、たとえ夢が無限であろうとも、資材や人材や予算は有限である…
| となれば、どの夢に力を入れてかなえていくか、つまり優先順位を
| はっきりさせることが大事なんですよ。
| ただ、この点について日本の状況は、お寒い限りと言わざるを得ませんがね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
2008年5月28日 宇宙基本法制定
2008年8月27日 宇宙開発戦略本部を内閣に設置、
宇宙政策の権限を内閣総理大臣に集約
…と、ようやく政府内部で統一された宇宙開発の推進体制が
確立されたが、総合的な国家戦略としての宇宙開発の取り組みは
まだまだ始まったばかりである。
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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| それまで宇宙開発はどこが仕切ってたんだ?
\____ ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 文部科学省所管のJAXAが中心だけど、ほかにも
| 総務省、経済産業省、国土交通省といった省庁が
| バラバラに動いていた。
\____________________
163
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/11(土) 00:18:50
18/19
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そして、宇宙に何を運ぶかが決まれば、どんなロケットが必要かが
| 決まる…基本的にはそういうことなんです。
| 日本の夢を運び続けた「日の丸ロケット」…それは今後も夢を運ぶ
| 存在であってほしいですね。
\__ _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━
「ロケットは運び屋ですが、でも夢という意味では、
やっぱり日本独自の有人飛行をやりたい。
それに尽きます。その気になれば取りかかれるはずです」
〜JAXA・遠藤守理事へのインタビュー記事より〜
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| `つ ∇ (゚Д゚,,) (゚Д゚,,)
| | | ̄ ̄| /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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| 日本独自の有人ロケットか…萌えるな。
\____ ∧
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| ロケットのペイロードとして究極の存在…
| それは、おそらく「人間」だろう。
| そんな有人ロケットの夢に日本で最初に手をつけたのが
| 糸川教授であり、今もその夢を胸に秘めている人が
| いるってことだよ。
\____________________
164
:
名無しのAA書きさん
:2013/05/11(土) 00:19:58
19/19
─我々もロケット機をやりましょう。
ジェット機と違って空気のない所でも安定して飛べるロケットで
宇宙を自由に飛び回りましょう ─ 〜糸川英夫〜
☆.。 .:* ゜☆. ::::::::::゜☆.。. *☆ ∧∧ ∫
,__ ⊂(゚Д゚;) ⌒⊃
:* ☆ iii■∧ *・゜☆.:::: ∪ /
(゚Д゚,,) :::::::::::::::: ∪
⊂ \ / ̄l
<二二( 、て〜二二< ≡3 ≡3 ≡3
∪ \_l
::::::::::::::: ::: :::::::::::::::::::: :::* ☆.。::::
。.: *・゜☆.。. :* ☆.。::::::::::::/ :::. ∩∩
::::::::::::::::: * ::::::::::::::::::::::::/:::::::::::::: ☆.。:::::::::::::::: :::::: ヽ ∧∧
:::::::::::::::::: :::::::::::::::.:*・゜☆ :::::::::::::::::::::::::. :*゜☆.:::: ⊂(;゚Д゚)っ
日本ロケット開発史 〜完〜
糸冬
165
:
名無しのAA書きさん
:2013/06/05(水) 01:47:25
乙!
日本はロケットの打ち上げ成功率が高いから有人ロケットとか作れないのかね
やぱっりコストがかかるのかな
166
:
蒼龍
◆gyWIGE4Uvg
:2014/10/27(月) 17:33:14
新版
ttp://jbbs.shitaraba.net/internet/21784/
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