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おもらし千夜一夜4

872事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。14:2022/06/11(土) 00:09:54
「あ、鞠亜お姉ちゃんと……っ! 綾菜お姉ちゃん!」

――うぅ、笑顔が眩しい……トイレに行きたいから早く鍵下さいって言いたいのにっ!

私は尿意を押し殺して、小さく手を振る。

「水無子、さっそくで悪いけど如月から鍵的なの預かってない?」『とりあえずトイレ優先、綾もトイレ行きたいくせに水無子に合わせてなくていいって……』

霜澤さんが早速本題を伝えてくれる。
――……ええ、まぁ、トイレ行きたいですよ、とっても行きたいです。

「鍵? 知らないけど?」
「……え? 嘘? 持ってないの?」

――え、如月さん、水無子ちゃんが持ってるっていうのすら罠なの? っトイレ……え、どうするのトイレ?

「み、水無子、他には何か貰ってたりとか、聞いてたりしてない?」『はぁ? 待って……トイレ……き、如月? 本気なの?』

流石の事態に私だけじゃなく霜澤さんも慌てている――……可愛い……可愛いけど、そんな場合じゃない!
もうすぐだと思っていたせいもあり、尿意が膨れ上がってくるのを感じて……。

「あー、うん、なんか箱は貰った」
「箱?」

椛さんが聞き返すと、水無子ちゃんは鞄から金属製の小さな宝箱的な箱を取り出す。
それを椛さんが受け取り、少し観察してから軽く振ってみると、カンカンとした音が鳴る。

「……そ、それ鍵が入ってるんじゃない?」

そんな感じの音のように聞こえ、期待が膨らむ。
早くそれを開けて、鍵を取り出して、手錠を外して……それからトイレに――

「鍵かも……だけど、えっとこれ……」

椛さん困った顔で、箱の正面が見えるようにして私と霜澤さんに箱を差し出す。

「っ! ……え、な、南京錠と……時間?」
「これ……えっとタイマー式南京錠って奴なんじゃ……」

箱には開かないように南京錠が取り付けられていて。
その南京錠には時間が表示されていて……。
その時間は――

「よ、49分? それまで開けられないってこと?」

霜澤さんによって読み上げられた数字は、今の私にとって長すぎる時間……。
心臓の鼓動が早く大きくなる。口の中が乾いていく。
不安を隠しきれず、茫然とその箱を眺めていると、霜澤さんの視線に気が付く。
何か取り繕うと思い口を――

「ねえ、この南京錠を切るための工具ってどこかにない?」

私が口を開く前に霜澤さんが椛さんに問いかける。
時間が来るまで開けられないという常識を早々に打ち破ってくれる。

「えっと――」
「っ! ダメ、この箱は時間になるまで開けちゃダメって櫻香に言われてるんだからっ!」

急に慌てた様子で水無子ちゃんが制止を呼びかける。
その剣幕に驚きつつも、霜澤さんは引き下がらず、鎖で繋がれた左手を見えるように持ち上げて説得を試みる。

「いや、水無子……ボクたち手錠で繋がれてて困ってて、緊急事態だから――」『これから50分近く我慢しないといけないとか――』
「ダメっ! 絶対にダメ!」

説明を最後まで聞く様子もなく、もの凄く食い下がる……。
それにはきっと理由がある。

「えっと……あのメイドになんか脅されてるんじゃない?」
「にゃっ!? な、なんのこと?」

椛さんの言葉に声を詰まらせ、必死に平静を装おうとする水無子ちゃん。
……メイドが主人を脅すってどうなの?

……。

冷静に考えれば、脅されているなら水無子ちゃんに非はないわけで……。
ここは私たちが引き下がるべき状況。
脅されている今の状況自体、私たちの事情に巻き込まれた感じも否めないわけで。
年下の子にこれ以上迷惑は掛けられない。

873事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。15:2022/06/11(土) 00:11:21
「……わ、私は大丈夫、なんとか我慢、出来ると思うし……」

「え、我慢?」

水無子ちゃんの言葉に、はっとなる――……え、私、我慢できるとか言っちゃった? ……え、なんで言っちゃった?
完全に自爆、追い詰められてきて、焦りと不安と動揺で冷静になり切れてない。

――……っ、というかっダメ、これ波っ!

動揺が大きすぎたのか何なのか、急に平静を装えないくらいの波で……尿意が膨れ上がる。
疑問符を上げる水無子ちゃんに我慢の仕草で返答するなんて絶対に出来ない。

私は視線を逸らしてどうにか平静を装おうとする、押さえたい左手がスカートの横の生地を握りしめる。
足踏みや、必死に擦り合わせたい足が、小さく震える。

「あ……(お、お手洗いですか?)」

――っ……。

結局、水無子ちゃんに図星を突かれる。
こんなに必死になってるのに全然隠せてない。

恥ずかしさでまた顔が熱くなる……だけど、同時に我慢してるのがバレたことで気持ちが楽になった気がする。
もう、無理に隠さなくていい、流石に押さえるのは無理だけど、開き直ってとりあえず我慢に集中すればいい。
引かない波に抗うため、足を交差させて我慢する。
大丈夫我慢できる、平気、さっきよりずっと――

「(ちょ、綾、ここ人目あるから!)」

――っ!

ここはバカンスカフェ。
人目があって、仕草を大っぴらに見せて良い場所ではない。
幸いにも右側には霜澤さん、左側には椛さん、正面には水無子ちゃんが居てくれたので
私の身体の大部分は陰になっていたはずで、恐らく恥ずかしい格好は近くにいるこの3人にしか見られていない。

波は引いた……まだ油断は出来ないけど、仕草を抑えることは何とかできる。
顔を上げると、皆が心配するようにこちらに視線を向けていて……居た堪れない。

「と、とりあえず……二人ともこっちに来てっ」

椛さんはそう言うと、私と霜澤さんの前を歩いて……どこかに案内するらしい。
凄く申し訳なさそうにしている水無子ちゃんを残して歩みを進めると、プールの更衣室の隣にある両開きの倉庫――――反対側の隣にはトイレがあるのだけど、意識しちゃダメ……――――へ足を踏み入れ、
椛さんは明かりをつけて、外に誰もいないことを確認して扉を閉める。

「えっと、ここならとりあえず人目はないから好きに使って」

――っ……そ、それって――

此処なら好きなだけ我慢の仕草をしても良い……椛さんの言いたいことはそういうこと?
私のあからさまな我慢を見て、もう取り繕う余裕がないと知ってる……。

「綾もだけど……鞠亜も結構我慢してるんじゃないの? 存分に我慢してよ?」
「――っ……ボクはっ…! ……まぁ、我慢してると言えば……そうだけど」
『き、気が付いてた? いや、違う? 綾のフォローのためにわざわざ鎌をかけてきた感じ?
だったら否定できないし……でも、なんにしても46分は……ボクも実際結構厳しい気がする……』

二人して気を使ってくれる……恥ずかしい。
そして、改めて『聞く』と46分とか途方もない時間……。
万全の状態ならいざ知らず、急に来る高い波をやり過ごすのも今の段階で既にギリギリ。
この手錠が外せない以上、おもらしにせよ放尿にせよ、この距離でしちゃうことになるのが現実味を帯びてきた……。
……鍵なしでどうにかする方法もある。さっき霜澤さんが言った南京錠を破壊するように手錠を破壊する方法。
だけど、南京錠以上に丈夫でペンチのようなものでは無理だし、切ることになるであろう鎖の長さも決して長くないため危険ではある。
それでも最悪の結果を避けるためには黙っているわけにはいかない。

「……ディスクグラインダーとか……借りれないかな?」
「箱の方じゃなくて手錠の鎖をってことよね……文化祭の準備で使ったとこあるかもだけど」
「難しいかもね、ここでもちょっと事故あったし、今は先生たち事故防止に凄く目を光らせてるみたいだから、先生が管理してるなら使用用途の説明や立ち合いとか必要になるかもだし」
「た、立ち合いはダメ……こんな本格的な手錠つけられて外せないからグラインダーでとか、如月が色々やばい……」

――……こんなことされても如月さんの心配をするんだ……。

ちゃんと考えれば当たり前の事ではあるんだけど。
霜澤さんと如月さんの付き合いはそれなりに長いみたいだし、警察沙汰にまで行かなくとも仕事を辞めさせるくらいの問題になっても不思議ではないわけで。
悔しくはあるけど、私自身そこまで望んではいない。

「まぁ、私はダメもとでもグラインダー借りれないか聞いてくる、二人はこのままここに――」
「あ、待って……」

私は椛さんを引き留める。
申し訳なさそうにしていた水無子ちゃん……。

「……えっと、水無子ちゃんには心配しなくても何とかなりそうって伝えておいて」

椛さんは私の言葉を聞いて、少し笑みを零しながら頷いてくれる。
そしてすぐにまた後でと言う感じで片手を上げ、扉を開けて出ていく。

874事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。16:2022/06/11(土) 00:12:17
「……」
「……」

二人して黙り込み、立ち尽くす。

プール独特の塩素の臭い。
閉じ込められているわけではないけど、倉庫で二人と言う共通点から朝見さんと体育倉庫に閉じ込められていた時のことを思い出す。

――……あの時、朝見さんは間に合わなくて……私も本当にギリギリで……っ…はぁ、本当にヤバい……我慢できなくなったら…私……。

体育倉庫の時とは違い、明確な開放時間はわかっている。
先の見えない我慢ではない……だけど――

「ね、ねぇ……立ってるのもアレだし、そこに座らない?」

霜澤さんの言葉に私の思考が中断される。
霜澤さんが指さしているのはビート板が丁度膝くらいまで積みあがった所。
私は頷き二人でそこまで行って、並んで座る。

座ってすぐ、しばらく落ち着いていたはずの尿意が再度膨らみだす気配を感じる。
右手は手錠が付いているため動かすことは出来ない。
左手で押さえることはできるけど……。

――……っ……我慢、我慢して……お願い落ち着いてっ……。

小さく足を擦り合わせて、左手は膝と膝の間でスカートの生地だけを握りしめる。
やっぱりあからさまな仕草はしたくない……尿意が限界まで差し迫ってるなんて知られたくない。

『んっ、結構、辛い……綾も辛そう……』

――っ……やめて、こんな時に……『聞きたくない』っ。

そう心の中で考えて、自己嫌悪する。
いつもは『聞きたくて』我慢してるくせして、都合が悪いときは『聞きたくない』だなんて……。

『我慢できるよね? ボクも……綾も……』

……。
我慢できないなんて思われたくない。
出来る限り、先延ばしにして、可能なら……ちゃんと手錠が外れてから……。

――……可能ならって…なに? ……まだ、諦めてるわけじゃ……ないのに。

仕草を抑えたい――抑えたいのに。
擦り合わせるのをやめると、尿意が膨らんできて……。
大きく動くのが嫌で、足首を絡めて……だけどそれだけじゃダメで、つま先立ちの足が小刻みに縦に揺れて……。

「綾……だ、大丈夫?」『ホントに辛そう……多分、ボクよりずっと……』
「っ……」

こっちに視線を向けられ、問いかけられて……。
言葉を返そうと思っても何を伝えればいいかわからない。
ただ、心が揺さぶられて……尿意が落ち着いてくれなくて……。

――あっ……え、手……。

不意に、右手に温もりを感じる。
視線を右手に向けると……霜澤さんの手が私の手を上から握っていて……。

「だ、大丈夫……あと40分なんてすぐだし……」
『全然進んでない……早く、時間……』

霜澤さんが励ましてくれる……。
そうは言っても40分は、ただ待つには長すぎる時間。
もちろん、『声』からして本音で言ってるわけじゃないのはわかっているのだけど。

875事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。17:2022/06/11(土) 00:13:24
尿意の波はどうにか落ち着いてくれる。
強張った身体を僅かに弛緩させて、小さく息を吐く。

『み、ミルクティーのせい? ボクも急に……じ、事情をちゃんと説明して如月に? いや、無理でしょ、あいつ絶対楽しむし……むしろ知っててこんなことしたんじゃ……』

今度は逆に霜澤さんの『声』に焦りが見られて……。
一瞬可愛いと思いかけて、頭の中で頭を振る。
本当最低……今だけほんの少し余裕が出来たからって……。

(〜〜〜♪)

――っ!

携帯が鳴る。
私は慌てて、携帯を取ると電話に応答する。

「も、もしもし」
  「ごめん、やっぱり駄目だった……」

心配と申し訳なさを含んだ椛さんの声……。

「……別に椛さんが謝るようなことじゃ……」
  「ううん、だとしてもごめん……水無子も見てあげなくちゃだし……」

私はその申し訳なさそうな声にお礼を言って、少し強引に通話を切る。
電話が続けば続くだけ、椛さんは謝罪を繰り返しそうな気がして。

「だ、ダメだったみたいね……」『これで、時間まで我慢しなきゃいけないことが確定したわけだ……』

時間まで……南京錠を確認するとあと37分……。
初め見た時は49分だった、着実に減っているその数字。
減ってるのに……。

「はぁ……っ……」

波も来ていないのに呼吸が少し乱れてきていることに気が付く。
隣に霜澤さんも居る……こんなの嫌なのに……。
足も小さく揺れる、下腹部が徐々に張り詰めてきているのがわかる。

――……っ、これ……我慢が効かないとかそんなんじゃなくて……普通に、我慢できなく……んっ……。

左手が膝の上で意味もなくスカートの生地を撫でる。
落ち着きがない、ちゃんと自覚してる……でも、抑えられない……無理に抑えたらまた波が来ちゃいそうで。

「はぁ……あと、35分か……」『だ、大丈夫かな、ボク……最後にミルクティー飲み干したの失敗だったかな?』

そう、私も全部飲んだ。
もうすぐって希望が見えて油断してた。
こんなことなら飲まなかったのに……。
体育館を出た時に250mlほど残っていたミルクティー。
飲んでしまったそれは、確実にこれから私を追い詰める。

――……っ! あ、あぁ……な、波っ……これ、来ちゃうっ……んっ!!

飲んだもの、それがどうなるかを意識した直後、下腹部が収縮して硬くなる。
閉めて、締めて……我慢しなきゃ……。
足を絡める、息が詰まるくらいの焦燥感、どうしようもない尿意に不規則に身体を捩る。
今までよりずっと大きな波――……我慢しなきゃ、しなきゃ……我慢っ……。
左手は迷った末にスカートに大きく谷を作り、中指をより深く沈みこませる。

876事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。18:2022/06/11(土) 00:14:49
「んっ……あ、あぁ……ふぅ……んっ!」

自身の口から溢れる恥ずかしい声……。
隣に、居るのに――……霜澤さんがいるのにっ!

――こ、これっ……もしかして私、このままっ……んっ……しちゃう? やだ、我慢っ……我慢なのにっ!

「ちょ、ちょっと綾? が、頑張って、ほら、もうすぐ――あ、えっと、30分……切るし」

遠い、遠すぎる。言った霜澤さん本人も「もうすぐ」に繋がる言葉として「30分」は無理があるとわかってるような言い方。

……。

仮に今すぐに手錠が外れても、この波はどうにか超えないとトイレまで間に合わない。
30分……あと何回こんな波が来る? 次からはもっと大きな波で……とても我慢できるような波じゃなくて……。

「っ……だめ、そんなに…はぁっ……我慢っ……で、できな……うぅ……」

口に出してしまった弱音。
どんなに押さえても、どんなに足を絡めても、どんなに息を荒くして力を入れても、どんなに願っても――
30分は無理……10分でさえ――もしかしたらこの波を越えることすら出来ないかもしれない。

額に浮かんだ汗が流れ、頬を伝いスカートに染みを作る。
背中も、スカートの中も汗塗れで気持ち悪い。
尿意を抑えなきゃ、我慢しなきゃ……そう思っているのに、尿意は増すばかりで……そして――

「っ……んっ!!」

下腹部が一際硬く収縮する。
膀胱が私の意志に反して全力で排尿するように促してる。
バタバタと落ち着かなかった足をきつく閉じて硬直させて、指先に目一杯の力を籠める。
息を詰めて、目を瞑り……その切迫した尿意に全力で抗う。

――だめ、だめっ、もれちゃうもれちゃう、ホントにっ……ダメだからっ、我慢、がまん、やだ、我慢だからっ!

どれだけの時間、呼吸もせずに我慢していたのかわからない。
だけど、硬く収縮していた下腹部は、僅かな弾力を取り戻しはじめて……。
どうにか波を越えたらしい……。
当然ではあるけど、下腹部は未だパンパンに膨らんでいて、油断が許されるような状態ではないけど。

「はぁっ…はぁ…はぁ…っ……ふぅ……」

震えるように零れる呼吸。信じられないくらい鼓動も大きく早い。
息をしていなかったというのもあるとは思うけど、全身に力を籠めすぎていて、全身が熱く、まるで短距離走を走った後みたいにも感じる。

――し、下着は……だ、大丈夫?

恐らく大丈夫だと思う。
断言できないのは、汗でいまいちわからないというか……。
でも、失敗したという感覚はなかったはず。

877事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。19:2022/06/11(土) 00:16:00
「あ、綾……?」

その声に右を向くと、私を心配するような表情に加えて少し気まずそうな様子を見せる霜澤さんがこちらを覗き込んでいて……。
さっきまでのなりふり構わない失態を見られていたと思うと……恥ずかしいというかもう消えてしまいたい。

「……だ、大丈夫」

辛うじて言葉を返したが、一体何が大丈夫なのか――……し、下着とか?
でも、ダメ……。大丈夫って言ったけど、このままじゃ絶対ダメ。今度こそ大丈夫じゃなくなる。
言わなくちゃいけない。ちゃんと言わなきゃ……そうでなければ、霜澤さんの前で二度目の失敗を晒してしまう。
そうなったら私は――

……。

あの時とは事情が違う……わかってる、わかってるけど……。
失敗をしたのを最後に、紫萌ちゃん――霜澤さんは私の前からいなくなったのは事実で。
でも、何度も書き直された手紙は、きっと私の事を思って書いてくれた手紙のはずで。
だから……違う。失敗を――おもらしをした私を軽蔑したり関わりたくないって思ったんじゃないって……わかってるのに。

――だったら、許してくれる? もし、我慢できなくても……。でも、そんなの……。

私から距離を置こうとする霜澤さんを感じる度に自信がなくなる。
本当は……軽蔑してたんじゃないかって。
トイレも言い出せない可哀そうな子って思われてて、ただ傷つけないために手紙の内容を吟味してたんじゃないかって……。
そして今、霜澤さんは心配はしてくれてる――……だけど、おもらししちゃったら? 見っとも無く、我慢できないを言えずにすぐ隣で……。

霜澤さんが私の右手に重ねてくれてる左手。そこから私は手を引き抜く。
少し驚くような顔をした霜澤さん……。そしてすぐにその顔は不安を含むものに変わる。

「ごめっ――……い、いやだった?」

――ち、違う私は……!

宙に浮いた霜澤さんの手……私はそれを掴み取る。
また驚いた顔を霜澤さんは見せる。
私は俯き手を強く握る――……言う、言わなくちゃ!

「……っ、霜澤さん……私もう、我慢できないから、トイレに……っ…付いてきて…欲しい」

もし、霜澤さんが本当に優しくて私が本来思っていたような人ならばおもらししても軽蔑なんてされないと思う。
だけど、結局はおもらしをして良い理由にはならない。それは私がさっき考えた通り、トイレも言い出せない可哀そうな子でしかない。
もちろん言ったところで、今度はあと30分も我慢できない恥ずかしい子で、その恥ずかしい姿を間近で披露したいとかいう子でしかないのだけど。

「え、え!? で、でも…あと29分……え? 綾……本当に、もう無理?」

困惑した返しに、私も困惑する。
本当は大丈夫、我慢できる――と強がりたい衝動に駆られる。
だけど、その結果どういう結末になるか想像したくないが、さっきのギリギリの我慢で理解してしまっている。
次は無理かもしれない……。たとえ次が良くてもその次は――……。

「……無理、もう限界……はっ、はぁ……んっ…だ、だからっ」

私は視線を霜澤さんにしっかりと向けて無理なことを伝える。
同時に、これ以上ここで時間を掛けるわけにも行かず、私はビート板から立ち上がる。

「う、うん……わかった」

霜澤さんにも私が本気であることが伝わったらしく、少し緊張した面持ちで立ち上がる。
私はそんな霜澤さんを急かすように手を引いて歩く。
扉を開けるために前を押さえていた手を離し、扉を開く。

……。

――え? 私、さっき話してる間もずっと前押さえてしてたの?

完全に色々麻痺してる。
倉庫を出た後、迷わず手をスカートの前に持って行ってしまうあたり、どうかしてると思う。

878事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。20:2022/06/11(土) 00:17:21
更衣室の横……トイレ。
中に入ると人は居らず、個室が空いているのが見える。
空いている個室と言うか、そもそも個室が一つしかないらしい。

――っ……早くっ、あぁ、波、またっ……来ちゃいそうっ! ふぅ……っ、早く、トイレ、おしっこ……っ。

私は逸る気持ちと尿意を抑えながら、個室に入る。
すると、右手が少し引かれているのに気が付く。

「え、えっと……一緒に入る…の?」
「え? だって、そうじゃないと手錠っ……あぁ、ダメ、は、早くっ」

尿意が膨れ上がっていくのを感じて、溢れそうになるのをどうにか先延ばしにしようと、足をバタバタとさせて足踏みを繰り返す。
僅かな時間、霜澤さんは躊躇っていたが、一度深呼吸をしてから個室に足を踏み入れる。
霜澤さんが鍵をかけて、私は和式の便器を跨ぐ。

「み、見ないようにするから……」

――っ……。

足を開いた事と、不意に投げかけられた言葉に今からする異常な行為を改めて自覚し、我慢の糸が切れそうになる。
それでもあと少し、おもらしはしたくない……どうにか堪えて、下着を手に掛け、下ろ――っ、え、右手っ、ちょっと!?

「っ! ちょ、手、下げっ、あ、あっ…あぁ――!」
「え、あ……ごめっ――」

想定していなかったトラブル。
左手側は問題なく下りたが、右手側が手錠に引かれて、中途半端になって――

<じゅっ、じゅっ……>

ガクガクと震える足。下がり切っていない下着に先走りが染みこむ。
下着を下ろしてすぐに、準備を終えてしてしまうはずだった。ほんの数秒のタイムラグ、その僅かな時間と動揺に気持ちが対応できなくて……。
いつの間にか手錠に引かれていないのを感じて、再度下着を下ろして、スカートを左手だけで手繰って――

「あっ、ぁんっ!」<じゅぅぃぃーー>

【挿絵:http://motenai.orz.hm/up/orz76231.png

我慢をやめたのは確り下着を下ろしきってスカートを手繰った後のつもり……。
実際には下着にはかなりの量が掛ってしまってるし、スカートの裏地にも多少被害が出てると思う。
だけど――……これは、間に合ったで良い……よね?

手錠のせいもあり、髪は持てず、中途半端な中腰で足が辛いけど……間に合った、ちゃんとトイレに……。

879事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。21:2022/06/11(土) 00:18:15
「はぁ……はぁっ……」<じゅうぅぅーーー><コツコツコツ>

……。

私の荒い呼吸と恥ずかしい音の中に床を鳴らす足踏みの音。
普段ならあり得ないこと。個室の中なのに自身以外が出す音がすぐそばにあるなんて……まるで現実味がない。
現実味を感じないのは、極度の我慢からの解放で頭が回っていないのもあるかもしれない。

……。

――……いやいや! 音消し!!

少し頭が回り出し、慌てる。
こんな至近距離から音を壁を挟まず聞かれるとか拷問と言っても差し支えないくらいの羞恥プレイ。
音消しするため、手錠が付いている右手の方にスカートを持ち直し、左手で水を流す。
ゆっくり首を回して霜澤さんの様子を伺うと――

「(っ……ふぅ…んっ……はぁ……)」

見えるのは斜め後ろ姿。
最初からかどうかはわからないけど、言った通り見ないでくれている。
少し安心したと同時に、霜澤さんの呼吸が荒いことと、足踏み音の理由を知ることが出来た。

――……そ、そっか……そうだよね、霜澤さんもしたかったんだから、当たり前だよね?

こっちを見ないと言った霜澤さんを、私が見てるなんて思ってもいないだろう。
霜澤さんは身体を背けてはいるが、右手で前を押さえているのが見て取れるし、足も控え目だけど落ち着きなく足踏みを繰り返していて。
……さっきまでそんなに『声』が聞こえていなかった。
それはきっと私の心配とか、目の前でこんな姿を見せる恥ずかしい私に意識を割いていたからで。尿意があるにもかかわらず、表層に『声』として溢れ出る余裕がなかったのだと思う。
仕草とかそういう部分で、その欲求を見せていたのかもしれない。ただ、私自身余裕がなかったせいで全然気が付かなかっただけ。
今の様子を見れば霜澤さんも十分に追い詰められてきているのがよくわかる……。

――えっと…………うん、ごめん……『声』が聞きたい……。

この様子の霜澤さんなら、間違いなく私よりも自身の尿意に精一杯のはず。
だけど、我慢していない私は『聞く』ことが出来ない。
なので、私は小さく息を吸って下腹部を引き締め、必要のない場面での我慢を試みる。

「(んっ……)」<じゅうぅぅぅーー…じょろっ…じゅうぅ……じゅぅぅぅ>

音消しの音が響く中、わずかに音色を変える恥ずかしい音。なんだかより一層恥ずかしい音になってる気がする。
それにしても止めるつもりで力を入れてるのに――……んっ、あぁ、これ……全然っ…無理っ、我慢が効かないっ。

『っ……我慢、我慢っ……あぁ、こんな時に、こんなの聞かされて、ヤバいっ……ボクはまだしないからっ……落ち着いてっ』

――っ……んっ、き、『聞こえた』……あぁ、でも、もうダメ、我慢無理っ……。

全然止めれてるわけじゃないのに、これ以上我慢しようとすることが出来なくなり、再び脱力してしまう。
もともと途中で止めるというのは私が苦手とする行為。

「んっ、はぁ……」<じゅうぅうぅぅぅぅぅーーー>

一応『聞こえた』。
その『声』はかなり切羽詰まった『声』で、私の恥ずかしい音とトイレと言う空間に当てられてかなり鋭い波を受けているみたいで。
波の真っ只中とは言え、その『声』は限界一歩手前と言う感じで……。

――って、あぁ、音消し終わってるしっ!

音消しの音がなくなり、また私の恥ずかしい音色の単独ライブになっていることに気が付き慌てて水を流す。
霜澤さんの事を考えていた私だけど、今の恥ずかしい私の状態を再認識して――……お、音消しとか言ってるレベルじゃない!
こっちを向いていないとは言え、私、目の前でこんな……っ、し、下着下ろして、恥ずかしい音を立てて、お、お……おしっこ……っ!
霜澤さんの尿意が膨れ上がるくらいには、私がしてることを意識されてるわけでっ……あぁ、本当に消えたい。

同じようなことを悠月さんの前でしたはずなのに、それ以上に頭が沸騰するくらいに恥ずかしい。
恥ずかしさを紛らわすようにその理由を考えて、一つは立場の違いだと気が付く。
悠月さんの時は我慢勝負的なことをしていて、二人とも限界で、尚且つ私が双方間に合わないと判断して、出来る場所に誘導した。私のがちょっと優位な立場だったと思う。
今回は私が我慢できなくて、霜澤さんにお願いしてトイレに来て貰って、全然対等の立場ですらない状態での……。
それともう一つはトイレであること……な気がする。
温泉や銭湯で裸を見られるのはそれほど恥ずかしくないけど、家のお風呂で裸を見られるのは恥ずかしい的な奴。
外で誰かといるのは普通なことだけど、トイレの個室で二人っていうのはそれだけで異常な事。

――……つまり……何やってるの私!?

結局自分の恥ずかしいを分析しただけで、恥ずかしいが収まるはずもなく。
だけど、思考に割いていた時間は思った以上に長く、恥ずかしい音がようやく終わりを告げる。
我慢が効かなかったから短かったというわけでもなく、普通に限界まで我慢したときくらい出てたと思う。それこそ昨日のくらい……。
私は顔が熱いままトイレットペーパーを片手で乱雑に取って後始末をして、立ち上がる。

880事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。22:2022/06/11(土) 00:19:21
「っ……お、終わった?」

後始末の音、立ち上がった気配から霜澤さんが声を掛ける。
振り向くと仕草を抑え込んだ霜澤さんがまだ向こうを向いていて……。

「……う、うん」

私の返事に「そう」とだけ答えて、外の様子を伺いながら扉を開ける。
よくよく考えたら、個室が一つとか誰か来たら順番待ちになって、確実に二人で出る所を見られたわけで。
……考えたくもない。

……。

「……霜澤さんは……しないの?」
「っ……しない、このくらい我慢できるし……」

私の言葉に静かに――でも力強く、自分に言い聞かせるように呟く。
私のを見て、こんなこと出来るわけがないと思ったのか、あるいは最初から絶対に時間まで我慢するつもりでいたのか。
先に楽になってしまった私は、少し後ろめたく思う一方、相反する気持ちも抱いている。
霜澤さんは恥ずかしい思いをしないかもしれない。
我慢出来て、一人で個室に入れるかもしれない。

――……最低じゃない、私? ――でも……あぁ、霜澤さん……とっても可愛い。

手を洗う中、霜澤さんが息を詰まらせて小さく足踏みする姿に心がときめくのを感じる。
こんなに近い、離れられない。
息遣いが聞こえる、足踏みを音じゃなく振動で感じることが出来る、顔がよく見える、身じろぎが手錠を通して伝わってくる、心臓の音さえ共有できそう。
……『声』は聞こえない。だけど、声は十分すぎるほど聞こえる。この距離で聞きたい――……声が聞きたい!

――……いやいや、テンションおかしくない私? もうちょっと冷静にならなくちゃ……。

手をゆっくり洗い終えて、ハンカチで手を拭いてトイレを出る。
戻る先は当然プールの倉庫。
これから私と一緒に、霜澤さんだけの我慢が始まる。

「んっ……ふぅ……あ、あと21分……」

残り時間を見て霜澤さんはどう思ったのかわからない。
あともう少し、あるいはまだ先は長いと思ったのか……。
二人でさっきいた場所、ビート板の上に再度座る。

私は携帯を取り出す。
理由は椛さんへメッセージを送るため。
倉庫へは来ないで欲しいという内容。見っとも無い我慢姿を見せたくないという表向きの理由。
本当は……誰にも見せたくない、霜澤さんの我慢姿――……それは私だけの……。

……。

こんな時でも独占欲が働くことに心底呆れる。
だけど、霜澤さんだって沢山の人、特に水無子ちゃんには見られたくないだろうし、水無子ちゃんに見せるようなものでもない。
だったら、私の邪な気持ちを差し引いても余りある気遣いと言える……言えるはず。

手錠の揺れ、ビート板の揺れ。近いからこそ感じる僅かな身じろぎの揺れ。
小さな波が来てるのか、仕草を抑えられず何度も小さく足を擦り合わせてる。
その様子に私は鼓動を早め、霜澤さんの左手を見下ろす。
震える手、何処か居心地が悪そうに指先が動く。
私はその手にそっと右手を乗せる。
霜澤さんの手が少し跳ねるのを感じて、でもそれを抑え込むようにして上から掴む。
今度は私の番……私が付いていてあげる――……違う、付いていてあげたい。それは私の願望。

「……だめ?」
「っ……」

答えてはくれなかったけど拒否はしてない?
私は手をそのままに、視線を前に向ける。
前に置かれた宝箱に付いた南京錠が示す時間は17分。
隣から霜澤さんの落ち着かない動きを感じる。
ちゃんと我慢できるのか、もしかしたら私のように音を上げてしまうのか、あるいは――

――……霜澤さん、聞かせてよ……どうしたいのか、どんな気持ちでいるのか。ちゃんと……声で。

881事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。23:2022/06/11(土) 00:20:52
眺める南京錠のタイマーは秒刻みで確りと減って行って、残り15分になる。
いつの間にか霜澤さんの動きは僅かに落ち着いていて、波を越えたのだと感じることが出来る。

――……こ、ここまで仕草を抑えてるのに波の有無に気が付けるって……私の時って……。

また恥ずかしくなってきた……。
私の時と比べれば霜澤さんの我慢の仕草はまだまだ小さい……つまり、まだ限界は遠い?
でも喫茶店の時の霜澤さんは、凄くギリギリだったのに落ち着いて我慢出来ていたように思う。
私も今回は我慢が効かなくていつも以上に仕草を見せてしまったけど、普段ならもう少し仕草を抑えることが出来たと思う。

――……そう考えると、思ってる以上に限界が近かったりする? 『声』で判断できないのはちょっと不便……。

「(はぁっ……ふぅ…んっ……はぁ……)」

呼吸は抑えているが、この距離なら荒く熱くなっていることが十分わかる。
少しだけ霜澤さんの顔を覗き込む……不安と恥ずかしさで一杯で、顔には汗が滲み出ていて。
『声』が聞こえない以上、それ以外の部分で確りと観察したい。

……後13分。

「んっ! あぁ、ふぅっ……んんっ……」

今まで以上に熱っぽい息遣い。
大きな波、大きく上下に擦り合わされる足。
だけど、その仕草は長く続けることなく、今度はぴったりと合わされて片方の足を細かく上下に揺する。
それもしばらくすると小さく両足を上下させて、私の握る手――霜澤さんの手を包むように掴んだ指が、震えた指で握られる。
私も返事を返すようにしてそれを握り返す。

「……だ、大丈夫? 頑張って……」

励ます言葉を発して気が付く。
何もできない……霜澤さんの力になる言葉なんて思いつかない。
そもそも、そんな言葉なんてない気がする。結局はどれだけ傍に居ようと、傍観者にしかなりえない。

――っ……。

それでも私の言葉を聞いてかどうかわからないけど、また手を握り返してくれた気がする。
全然気の利かない言葉に、ちゃんと答えてくれようとしてる?

しばらくすると、大きく息を吐いて――……波を越えた?
重ねてる手がじっとりとしてる。手の甲には殆ど汗を掻かないはずだから、殆ど私の手汗……。
このまま重ねてたら気持ち悪い? でも、放したくない……私だったら放して欲しくない。

……後10分。

長い……長いけど、ようやくもうちょっとと言えるくらいの時間になってきた気がする。
さっきの波の間も、手を最後まで使ってなかった。
今も右手は横に……スカートの生地だけを握っているように見える。
ちゃんと我慢できる……時間まで我慢してちゃんとトイレで――

882事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。24:2022/06/11(土) 00:21:41
「あ、綾……っ、んっ……あぁ、だ、ダメかも、また、波っ……待って、我慢っ……」

――っ……しも――……ま、鞠亜……。

「ま、鞠亜っ、大丈夫、あと10分切ってるっ! もうちょっとだよ!」

……。
鞠亜? しっくりくる……呼び方。
綾? どうして? 雛倉さんじゃなかったの?

……。

「っ……わ、わかってるっ……んっ、あぁ……頑張るしっ、我慢できるっ……」

――……っなんで私……鞠亜って……ううん、どうでもいい、今はそんなの……、それより、間に合う? 我慢できる?

私の言葉に素直に頑張るって言ってくれて……少し強がってる感じもするけど。
可愛い……必死に我慢してる姿、上気した表情が凄く魅力的で、艶っぽくて、可愛い。
だけど、それ以上に、健気な我慢姿は凄く応援したくなって……。私自身、気持ちの整理が追い付かない。
私は鞠亜の手を掴む右手に、さらに左手を重ねる。

「あと9……ううん、もうすぐ8分だからっ」
「はぁっ……はぁ、っあぁ、んっ」

ガクガクと揺れる足、鞠亜の右手がスカートの前を押さえる。
額から頬に幾筋もの汗が流れて……。

――……頑張って……頑張ってほしいけど……。

もうすでに、トイレに行こうとしていたあの時の私以上に辛いんじゃないかって思える。
――……こんなに汗かいてたっけ? こんなに息を荒げていたっけ?

「あ、あぁっ……だめ、ダメっ……あぁ、我慢っ……なの、ボクは……ちゃんと……」

確りと閉じ合わせた足に右手を挟み込んで小刻みに、プルプルと震えて……息を詰めて……。
今日一番の波に抗ってて……。

私は何も言えずに、手を握ることしかできない。

「んんっ! っあぁ……はぁっ、ふぅ、はぁっ……っ…ふぅっ…はぁ……」

溢れる呼吸……。
それと同時に殆ど動いていなかった足が、座りながら足踏みのように動く。
波を越えた? だけど、手は前を離れることなく何度も押さえなおすようにして忙しなく動いていて……。

「あ、あぁ……だめ……あと、あと何分? ねぇ、綾っ……はぁっ…お、教えてっ……あぁ」

波はきっと越えたのだと思う。
だけど、代わりに潮は満ちて、もう本当に限界で……。
波がなくても、もういつ溢れてもおかしくないくらい一杯で……。

「あ、あと……7分……」

もう少しのはずの時間。本当にもうちょっとなはずの時間
それなのに、残酷な宣告をしてしまったかのような気持ちになる。

883事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。25:2022/06/11(土) 00:22:41
「7分っ……あぁ、7分っ……早くっあぁ、早く、早くっトイレ、おしっこっ……っ……あぁ、あと、な、何分っ?」
「……まだ……まだ7分、だよ……」

――……もう、いいんじゃない? トイレに行かせて上げるべき……。

「やだ、っ……あぁ、我慢、おしっこ、トイレっ……綾っ、綾っ……ボク、もうっ……」
「……もう、限界? トイレに……行く?」

――……私、もしかして意地悪な事言ってる? もうこんなに見っとも無く、取り乱してるのに……まだ決定権を鞠亜に与えてる。
行こうで良かったんじゃない? トイレに行きたいって言葉をそんなに聞きたい? 私は――だめだ…うん、聞きたいんだ、私……。

直接声で聞きたい。
もう我慢できないって、トイレにって……そう、さっきの私のように……。

「っ……い、行かないっ、我慢して、じっ…時間までっ…あ、綾とは……違う……、ボクは我慢、するっ……しなきゃ」
「え……っ、え?」

想像していなかった言葉。
もう本当にギリギリで、誰の目で見ても限界なのは確かで、こんなに取り乱して……それなのに……。

――……それと……私とは違う? それって――

「あ、あとっ6分……っ、15秒……はぁ、あぁ……我慢、する、……できるっからっ……間に合うからっ」

――……できる? 間に合う? ……本当に?

「ま、鞠亜……」
「っ……やめてっ! ま、鞠亜って、呼ぶなっ! ぼ、ボクは……そんなのっ……んっ…望んでないっ、あぁ、っ……」

急に呼び方が否定される。
――こ、こんな時なのに、なんで今そんなっ! ……っ。

「っ……そ、そっちも! さ、さっきから綾、綾言って――……え、ちょっと!?」

手錠が引かれる。
霜澤さんの両手がスカートの前に添えられて、私の手もそれに引かれたらしい。

「あぁっ、もう、見ないでっ、喋んないでっ、優しくしないでっ! っうぅ……んっ、でちゃ……やだ、やだっ!!」

なぜか言いたい放題言われる……。
いつもと違う、ギリギリまで追い詰められ取り乱し、混乱してる鞠亜――……可愛い。凄く可愛い。
可愛いけど……。

――……後、5分30秒……ちゃんと我慢する気でいる……。出来るかどうかは別だけど……だけど――

私、応援したいって思ってる。
友達としては当然そう思うべきでそれが正しいから、可笑しなことではないはず。

……。

私は首を振る。
見ないでと言った、喋んないでと言った、優しくしないでと言った。
それはきっと鞠亜にとって私のそれが、揺さぶりになってるからだと思う。
動揺して、それが我慢することに影響して、我慢できなくなって……。

だから私の応援したいって気持ちは、きっと本心じゃない。
それをわかっていて、応援したいって思ってるのは……揺さぶりたいから? おもらしさせたいから?
……私は口を噤んだ。

――……応援したいから……嘘でもいい、ちゃんとした意味で……。

だけど、少しの前の鞠亜の言葉……。

――……私とは…違う。

「はぁっ……うぅ……あっ! あぁ! ま、待ってっ……んっ……!」

真っ赤な顔で、全身に力を入れて……。
見ないでとも言われたけど、それだけは譲れない。許してほしい。
それと触らないでとは言われてない。私の右手は鞠亜の左手首に添えて……。

――あっ……本当にもう、限界……なんだ。

押し込むようにスカートに谷を作って……僅かに見えてる谷の部分は濃く染まり始めていて……。
もう本当に限界で……ちゃんと我慢出来てなくて……。

――……っ、わ、私とは違うんでしょ?

いけない……そんな事思っちゃいけない。
たった一言……それが私の気持ちを別の方向へ傾けてる。

884事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。26:2022/06/11(土) 00:23:53
「あぁ、だめっだめっ!」

――っ……。

鞠亜は急に立ち上がる。
バタバタ足を踏み鳴らして……私も立ち上がり、我慢の邪魔をしないように手錠の付いた右手を鞠亜の動きに合わせる。

「いや、もうちょっと、なのっ……だめ、いや、来ないでっ……っ…………やぁ………」

コンクリートでできた床に僅かに雫が落ちて黒い斑を作る。

……。

私は鞠亜の正面に回る。
私に気付いて鞠亜の視線が上に上がり、私と目が合う。
涙で一杯の瞳、額の汗に髪の毛が濡れていて……。
そんな、見っとも無い姿の鞠亜を見ながら私は口を開く。

「……私とは、違うんでしょ? 私と違ってちゃんと時間まで我慢できるんでしょ? 誰かの前でしちゃうような私とは違うんでしょ?」

言って良かったのかわからない。
……いや、ダメだった気がする。
あの言葉は、取り乱し、つい口をついてしまっただけの言葉のはず。
そんな言葉に、冷静で居なきゃいけない私がこんな事……言うべきじゃない。

どうして、そう出来なかった?

……。

――「ま、鞠亜って、呼ぶなっ!」――
――「もう、見ないでっ、喋んないでっ、優しくしないでっ!」――

……。
私は拒絶された気がした。
嫌われてる気がして、ずっと不安で、鞠亜の本心がわからなくて。
どうして私を名字で呼ぶのか、どうして時折愛称で呼んだりするのか……全然鞠亜がわからない……。
一方的に仲良くしたいと思ってる私が馬鹿みたいで、情けなくて……別に鞠亜が悪いわけじゃないのに。

「え? っ……やぁ、あ、違っ……あぁ、ダメ、ダメ、あ、あぁ……や、やだぁ、やぁ……」

視線を下げると、見えるのは必死に抑え込まれたスカート。
少しずつ拡がる染み。再び視線を上げて表情を見ればわかる、まだ我慢を諦めてない。
だけど、その染みの拡がりは止まることなく、下の方へ伸びていって……

「あ、あぁ……見ないでっ、とまっ――」<じゅうぅぅ……じゅっ…じゅうぅ、じゅうぅぅぅ>

手錠で繋がれ、目と鼻の先にいる鞠亜のスカートの中から微かに断続的にくぐもった音がする。
スカートの生地を集めて、失敗が溢れないよう、失敗を隠すように……。
それでも、くしゃくしゃになったスカートの生地――最後に集めた上の方の生地まで濃い色に染まり始める。
さらに視線を下げると、足に幾筋もの流れが光って、そして少しずつ水溜りと言えるものを形成し始めていて……。

「や、やだ、やだやだっ見ないでっ……ぼ、ボクっ……我慢っ……だめ、もう……っ! あ、ぁぁ……」

涙を落としながら必死に我慢を続けて……、だけど最後は糸が切れたように、大きく震える息を吐きだして脱力したのがわかった。

「はぁ…っ、はぁ……んっ…はぁ……」<じゅううぅぅぅぅーーーー>

肩で息をして、斜め下を向いたまま、視線が定まっていない。
スカートの中で勢いを増してくぐもった音を響かせる。
ぴちゃぴちゃと音を立てて、水溜りを大きく拡げていく。
私は横目に南京錠のタイマーを見る。

――……あと1分30秒……、本当に、もう少しだったのに……。

もしかしたら、私があんなこと言わなければ、スカートに染みを作りながらも、トイレに行けたかもしれない。
決して間に合ったとはいえないかもしれない。それでもこんなに見っとも無い姿を晒すことはなかった。
私が動揺させて我慢できなくさせて、結果、おもらしをさせちゃった……。

885事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。27:2022/06/11(土) 00:24:31
「ち、違うの……綾とは違うって言ったのは……そういうっ……んっ……、意味じゃ、なくて……っ、うぅ」

まだ恥ずかしい失敗の音が響く中、荒い呼吸と嗚咽の混じる声が聞こえてきて。

「ぼ、ボク、出来なくてっ……見せたくなくて、言えなくて…勇気出せなくて……綾と違って言えないから、我慢しなきゃってっ……おもらしなんてしなくないからっ」

――……え?

意味が分からなかったわけじゃない。
理解もちゃんと追いついてる。
だけど、私がした勘違いを認めたくなくて……。

「ごめん、綾っ……トイレって、言ってくれたのにっ……意地張って、結局……こんなっ……」

私が現実から目を逸らしてる間に、鞠亜の方から謝られた……。
なんで、違う悪いのは全部――

「え、ちょっ――」

鞠亜の困惑する声。
私は飛びつくように鞠亜を押し倒しつつ抱きしめていて。
自分の不甲斐なさ、申し訳ない気持ち、ついでに鞠亜の可愛さ、全部抑えられなくなって。

「っ……先に済ませちゃってごめん、もっと強引にトイレにって言えばよかった、変な勘違いもして勝手にもやもやしてっ……
鞠亜がどうしようもなく可愛くてっ……全部ごめんっ」

「え、えぇ!? な、何、可愛いって?! って、んっ、待ってまだ、ボク出てっ……ちょっ…やぁ、汚いっ」<じゅうぅぅぅっ…じゅっ……>
「汚くないっ、尊い!」
「尊くはない! じゃなくて、ホントに、ま、待ってっ! あ、あぁっ! あ、綾も濡れちゃうからっ!」<じゅっ……じゅぅぅぅ――>

止めようと必死になって――でも止められなくて。抱き着く私にその音がはっきり聞こえて……。
私は後ろに回した左手により力を入れて、強く抱きしめる。
可愛い。尊い。絶対放してあげない。

886事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。28:2022/06/11(土) 00:25:17
――
  ――

<カチャン>

無事宝箱の中から鍵を取り出し手錠を外す。

「そ、それで可愛いとか尊いってなによ?」

「……ちょっと混乱してただけで、気にするようなことじゃない」

目を逸らしながら答える。
自分でもどうかしてたと思う。
鞠亜は納得いっていないよう様子を見せながらも、諦めたらしく小さく嘆息して見せる。

「そ、それよりどうするの……綾まで――あっ、えっと、雛倉さんまでそんな濡れちゃったら、服調達できないし(ってか、おもらししてる時に、お、押し倒して抱き着くとか、わけわかんないし……)」

――っ……え、呼び方……戻るの?

……。

「……えっと、“鞠亜”も私も一緒に出て、すぐそこの使ってない消毒用シャワーを浴びて誤魔化せばいいよ」
「事情知ってる人は無理な奴か……ボクは本当にしちゃってるし……しかたないけど、雛倉さんまで巻き込んじゃう――というか、雛倉さんの方がしちゃったみたいに思われない?」

――……思われそう。私の我慢がバレてたんだしね……。

「……まぁ、なんでもいいよ、何となく水を浴びて誤魔化すってよくあるし誤魔化したい気持ちが伝われば、追及してこないと思うし」

「水を浴びて誤魔化す……ふふっ、確かに、よくある事かも」

鞠亜は小さく笑みを零す。
何が面白かったのかいまいちわからないけど、笑ってくれて気持ちが少し軽くなる。

……。

「……鞠亜」
「何? あ、――んんっ、雛倉さん」

……。

「……私は鞠亜って呼ぶから、もう絶対拒否されても変えない」
「何その宣言……じゃあボクは…………雛倉さんって呼ぶ……これからも、ずっと……」
「えー……綾、綾、おしっこーって言ってたのに?」「い、言ってない! 絶対言ってない! 次同じような事言ったら蹴るからっ!」

どうして、私をたまに綾って呼ぶの? ……多分聞いても答えてくれない気がする。
きっと理由がある……紫萌ちゃんの事だけじゃなく、何か隠してることがある気がする。
もっと昔に会ってたとか?

……。

――……でももう、私からは聞かない、代わりに今を大事にする……拒否されても、拒否できないくらい、絡んでやる。
まぁ……いつかちゃんと言ってくれると嬉しいけど……。

887事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。-EX-:2022/06/11(土) 00:27:21
**********

「何を見ているんですか?」

「見ての通りです、皐様。後夜祭を上から眺めるのもいいものですよ」

わたくしは櫻香さんの隣に行って同じようにして後夜祭の様子を眺める。
ちょうど目に映ったのは、銀髪の子――綾菜さん。その髪の色はキャンプファイヤーの光を浴びてオレンジ色に光って見え、美しい。
その隣には真弓さんもいる。
しばらく眺めていると、真弓さんは綾菜さんから離れて――……喧嘩?

何となくそう感じたが、少し違うように感じる。
暗い上に遠目ではわかり辛いが雛倉さんも真弓さんも落ち込んでいるように見える。
つまり――……はい、全然わかりません。

「あ、今度は朝見様が雛倉様にアタックするみたいですよ?」
「アタックって死語じゃないですか?」

上から見てると確かに面白いかもしれない。
まず呉葉が後ろに立って、深呼吸してるのが見てて可笑しい。
意を決して隣に勢いよく腰を下ろすと綾菜さんはここから見ても分かるくらいに吃驚していて、とても可笑しい。
そのさらに結構後ろで、鞠亜とその友達が居て、鞠亜が別に気にしていません風を装って視線を向けてるのも、可笑しすぎる。

……。

「皐様も下に行き混ざってきては如何ですか?」

わたくしの気持ちを見透かすように櫻香さんは言う。
だけど、わたくしの中には同時に相反する別の気持ちもあって……。

「……いえ、わたくしにはもうちょっと整理する時間がほしいですね」

少し自嘲気味に言って嘆息して見せる。
余りこの話題を続けられるのも困るので、今度はわたくしが櫻香さんに声を掛ける。

「そういえば、お昼過ぎくらい? イヤホン付けて何聞いていらしたんですか? 盗聴か何かでしょうか?」

「流石、鋭いですね。とある宝箱に付けておいた盗聴器のテストをしていまして、……私の一番のお気に入りの様子を確認してたんです」
「一番とかお気に入りとか……鞠亜が聞いたらドン引きされるじゃありませんか?」
「本人には言わないので問題ありません。それにしてもあの二人には楽しませてもらいましたが……はぁ、とても世話が焼けますね」
「あの二人? 綾菜さんの事? もしかして櫻香さんなら知ってるんじゃありませんか、鞠亜と綾菜さんの間に何があったのか……」

わたくしは鞠亜の隠していることが気になり探りを入れてみる。

「ふふふ、私も詳しくは……ただ、鞠亜は雛倉様の記憶を自身の手で奪ってしまったと思っているのではないでしょうか?
恐らくそれがずっと正しい判断だったのか分からず足踏みをしているものと思います」

――奪う? 記憶を? 要するに失わせたという事になる?

記憶喪失。
事故による記憶の混濁、または損傷などによる後遺症。
そしてストレスやトラウマにより本能的に精神を守るために行われる自己防衛の結果――解離性健忘。
綾菜さんの記憶喪失は最後、おそらく解離性健忘に当たる。
誰かが意図的に狙って行えるようなことではない。
狙って行なったわけではないなら、記憶を失う切っ掛けを与えたということになる。
切っ掛けと言っても、ストレスやトラウマの原因である事故を起こしたのは別の人で、鞠亜は居合わせただけ。
居合わせた鞠亜が、綾菜さんとそのお父様の事故の間接的な原因になっていたという可能性もあるが
それだと櫻香さんの言う、記憶を失わせたことの説明は付くが、それが正しい判断だったのかどうかの下りには少し違和感が残る。

――途中まで合ってる気がするのですが、まだ見落としがある気がしますね……。
櫻香さんの推測が間違ってる可能性は……、いえ、そこは櫻香さんが言うことです間違いはないでしょうし――

「皐様、そこまで気になさらずとも良いのではないでしょうか? 鞠亜が頼ってきたときにお傍に居てあげれば……
それまでは、私も皐様も呉葉様も、好きにちょっかいを出して楽しんでいればいいのです」

――うーん、それは一理あるし、楽しそうかもしれません。
鞠亜が進んで話さないのならば、詮索はしない代わりに、わたくしも呉葉もある程度は好きにさせてもらえばいいわけですし。
本当に目に見えて思い詰めたりし始めたら話は別ですけど……。
あと、櫻香さんはちょっかい出さないでください。

「あらら? あちらの屋上にもどなたか居られますね、えっと……あれは斎様に五条様、それと、あれは……告宮潤様?」
「え、それ暗視双眼鏡ですか? それと、先ほどの聞きなれないお方たちはどなたなのですか?」

言ってから気が付いたが、斎さんって確か保健室の先生? それかその妹の神無さん?
結局、他の人の名前は聞いたことがないのでなんの集まりなのかはわかりませんけど。

「皆様、一部業界では有名な方ですね、告宮様だけは方向性が違いますが……ふむ」

「詳しくは言えませんって言い方ですね。まぁ、わたくしは興味ありません。
では……実は生徒会の仕事がまだ残ってるので……お先に失礼致します」

興味の無いものに割くほど暇ではない。
息抜きに来ていたけど、余り長居すると椛さんから一体何を言われるか……。

「はぁ……でも、来期、椛さんがいなくなるのは本当に困ります……」

おわり

888「霜澤 鞠亜」:2022/06/11(土) 00:31:42
★霜澤 鞠亜(しもざわ まりあ)
ツンデレでお嬢様でボクっ子。
山寺 瞳と仲が良く、同じ1年C組。
何となく新聞部を自分で立ち上げ部長をしているが、部員は自分だけで、実際は顧問が居ないため愛好会。
活動もほぼしていない。

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隱槫ーセ縺ォ縲後h縲阪′螟壹>縺ョ縺ッ螟画鋤繧ィ繝ゥ繝シ蟇セ遲悶〒縺吶h

綾菜と過去に出会っている。
くーちゃん、めーちゃんが綾菜と出会う以前からの友達であり、約二年間の付き合いがあった。
めーちゃんとはお金持ちの繋がりでもっと以前からの知り合い。

膀胱容量は平均より大きめではあるが、尿意を感じるタイミングがやや遅め。
何かに集中していない状態でも尿意を感じ難いが、トイレを連想させるようなものや緊張
または、過去の失敗から水に濡れたりすると尿意を意識しやすい。
容量自体は大きいため失敗することは少なく、限界まで我慢することもそれほどない。
また、プライドが高いため、我慢の仕草は限界まで表に出さない。

成績優秀、運動優秀。様々な事に対して多才。
性格はプライドがそれなりに高く、ツンデレで負けず嫌いで悪戯っぽい。それに加えて無自覚な軽度の中二病。
また、祭りを全力で楽しんで満喫していたり、勝負事には常に全力だったりと子供っぽさも持つ。
言動はきついことが多いが、根はそれなりに優しい。
家はお金持ちでありちょっとした屋敷で、お手伝いさんも数人いる。
ただ、それは自分で得たものではないという拘りからなるべく普通に過ごそうとしている。
その拘りのため、親が有名な先生を雇い勧めた習い事も大抵一度は突っぱねる。
ただ、親の期待にはなるべく答えたいとは思っており、後から自分で調べ、最低限以上の知識を独学で身につけてきた。
両親はその頑固な性格から、レールを敷いた上を歩かせるのは無理だと諦めてはいるが、ある意味で娘の将来性に期待もしている。
運動系は優秀でC組では山寺瞳についで成績が良い。
運動神経は良いが、身体能力自体は平均的で、マラソンなどの持久力を要求されるものは平均的な成績。

昔、鞠亜専属メイドとして3歳年上の如月櫻香を雇っていた。
ただし、鞠亜はメイドを必要としていなかったため、友達としてならそばに居て良いと条件を出し、如月はそれを受けたが
後にその関係が理由で如月櫻香は鞠亜のメイドを辞めさせられる。

綾菜の評価では、変なあだ名を付けた迷惑な人。ちょっと中二病で、言動はきついがどこか憎めず、悪い人ではないと感じていた。
自分でも不思議なくらい好いてしまっている相手。
過去に出会った紫萌ちゃんと同一人物であることが分かったが、未だに違和感を感じる人。

※文字化けは意図的です。

889名無しさんのおもらし:2022/06/14(火) 00:00:08
今回も更新ありがとうございます!
なんだかんだで綾菜が友人達と文化祭を楽しんでるところや、鞠亜との関係性が変わってきたところなど、前向きに進み始めてる感じがしますね。
それにしても、なぜ"ひとみん"ではなく"ひとりん"なのかまゆセンス。
最後はやっぱり縁さんに遭遇していまいました。残念。
次回から本編もPIXIVの方に移られるのですね。この先も楽しみにしています。

890名無しさんのおもらし:2022/06/15(水) 16:36:36
綾が限界まで我慢する展開好き
pixivに行かれるそうですが続きも楽しみにしてます

891名無しさんのおもらし:2022/06/15(水) 21:49:52
更新待ってました。
今回の話の綾菜が限界まで我慢して放尿する展開が一番好きです。
次回からpixivでも作品楽しみにしてます。

892名無しさんのおもらし:2022/06/25(土) 16:01:21
わくわく

893名無しさんのおもらし:2022/06/25(土) 21:11:07
>>888 更新ありがとうございます。pixivでの続き楽しみにしています。

894名無しさんのおもらし:2022/07/10(日) 08:56:04
「トイレへ行きたいのかね 」
 八木橋が歩きながら 、やっと声をかけてきた 。
 満里亜は大きく頷いてみせる 。
「そうだろうな 。グリセリンの源液を注入してやったんだから 」
 「 ! 」
 「公園まで我慢しろ 。まさか途中でチビったりするなよ 」
 そう言うと 、踵を返して 、わざと遠まわりをしながら 、公園に向かう 。それは完全な地獄と言ってよかった 。少しでも 、神経をヒップからそらせば 、崩壊が起こるに違いない 。が 、ヒップに神経を注ぐことによって 、疲れきった両脚が 、ハイヒールを穿いた不安定な状態で 、いつバランスを崩すかもしれなかった 。その結果 、躰が倒れ 、ショックで崩壊が起こるかもしれないのだ 。まさに 、針の上を綱渡りしているも同然だった 。
 公園が見えてきたとき 、満里亜はだから 、思わず涙を溢れさせていた 。すでに 、公園を出てから二十分以上が経っていた 。八木橋はしかし 、すぐにトイレに行かせてくれるほどヒュ ーマニストではなかった 。
 「その前にして欲しいことがあるんだろう 」そう言うと 、鉄棒の一番高いところへ連れていき 、両手をバンザイをする恰好に吊り上げた 。続いて 、猿轡が外される 。
 「ああっ … …は 、早く 、おトイレに … …ククッ ― ― 」
 「遠慮することはないさ 。オ × × ×が欲しくてたまらなくなっているんだろう 。眼がそう言っているぞ 。少しは奥さまにも愉しんでもらわないとな 、これはプレイなんだから 」
正面に立つと 、八木橋はブラウスをくつろげ 、ブラのフロントホックを外してくる 。
 「そ 、それより早く 、おトイレに ― ― 」言いかけたものの 、八木橋の手が豊乳を把み上げてくるなり 、 「ほおおっ 」目眩く愉悦に 、全身が溶け出すような感覚の拡がりを覚えて 、あられもない声を送らせていた 。ギュンッ 、ギュンッと力委せに揉まれるほどに 、満里亜の五体に歓喜のうねりが燃え拡がっていく 。
 が 、今の満里亜はその喜びに浸っているわけにはいかなかった 。腹部を襲う便意と痛みはそれ以上に大きい 。ピンクに染まった美しい貌が 、すぐに青ざめるのを見て 、八木橋はバイブレ ータ ーを持ち出して 、ハイレッグの黒いパンティの上から 、ムンッと盛り上がる頂きを押し上げてくる 。
 「ふうっ ! 」ブルッとガ ータ ー ・ストッキングをふくらませる豊かな太腿を慄わせたかと思うと 、満里亜の股間は待ちかねていたように左右に開かれ 、バイブの尖端へ自ら頂きを擦りつけていった 。
 数回なぞり返すと 、八木橋は濡れまみれたパンティを引き下ろし 、直接クレヴァスに当てがってくる 。
 「はうっ ! 」新たな刺戟に 、満里亜は股をあられもなく開いたまま 、たちまち昇りつめそうな快美感に襲われた 。実際 、じかにクレヴァスを擦られて 、便意と痛みがなければ達していたに違いない 。
 神経はヒップの一点に集中はしているが 、バイブによる官能の刺戟は 、一瞬ではあっても苦痛を忘れさせてくれる良薬だった 。濡れに濡れた熱い肉体は 、極太のバイブレ ータ ーを 、押し入れられるままに迎え入れていった 。
 八木橋が手をはなしても 、優秀な満里亜の躰は 、しっかりと咥え込んで落とすようなことは決してしない 。便意とバイブの振動によって 、満里亜は未知の歓喜の中で苦悶するように 、全身をのたうちまわらせていた 。
 いや 、すでにそれが歓びなのか 、苦痛なのかさえわからなくなっていた 。その証拠に 、八木橋が特製鞭の雨を見舞ってきても 、満里亜の躰は痺れきった神経によって 、陶酔に甘く酔いしれ 、洩れる悲鳴には喜悦の響きが混じっていた 。
 鞭 、バイブ 、便意のバランスをきわどく保つ責めにこれまで身悶えしながらも 、耐え続けてきた美しいスチュワ ーデスの躰にも 、ついに完全なる崩壊が近づいていた 。最初に 、肉体よりも意志が限界を迎えた 。ボロボロになっても 、やはり自らその瞬間の決断を下す恥辱感は残っていた 。
 鞭を浴びる度に身をよじり 、呻き声を放って 、貌をしかめていた満里亜は 、その刹那 、握りしめていた鉄棒から手の力を抜くと 、ほとんど穏やかな表情を浮かべて 、屈辱の安楽の中へ身を投じていった 。
 ヒップの方から崩壊がはじまると同時に 、バイブに貫かれた躰は 、四肢を打ち抜くばかりの喜悦の爆発に見舞われていた 。その二つがぶつかり合い 、それは恥辱も苦痛も歓喜も絡め合いながら 、凄まじい法悦の絶頂感となって 、麗しいスチュワ ーデスの五体に襲いかかってきた 。ガクガクガクッと下肢を慄わせ 、その上体は大きくのけ反りながら 、寄せ返す衝撃の荒波みに打ち上げられて 、烈しい痙攣をくり返した 。
 そして 、最後には 、なおも死者に鞭打つように 、満里亜自身の意志とは無関係に 、制服の下の白い豊かな股間はゆばりを放ち 、その前でズボンを下ろした八木橋の股間の持ち物から 、劣情の白液を誘発していった 。

895名無しさんのおもらし:2022/09/22(木) 11:41:03
事例の人の作品はpixivでは何て検索したら出てきますか?

896名無しさんのおもらし:2022/09/22(木) 21:19:58
僕もpixivで続きがあるなら読みたい

897名無しさんのおもらし:2022/10/18(火) 08:47:34
>>895-896
もう遅いかもしれんがじれーね

898名無しさんのおもらし:2022/11/25(金) 22:50:22
あげ

899あぼ〜ん:あぼ〜ん
あぼ〜ん

900あぼ〜ん:あぼ〜ん
あぼ〜ん


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