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おもらし千夜一夜4

839追憶6「雛倉 綾菜」と勝負の行方。2:2021/12/09(木) 00:43:26
「電話おわりましたか?」

後ろから聞こえる弥生ちゃんの声に振り返る。
上目遣いで可愛い。だけど、雛乃との約束の時間までの間、一緒に文化祭を回りたかったがそうもいかなくなった。
一緒に保健室へ――とも思ったが、紗がいる可能性がある以上、人見知りの気がある弥生ちゃんを連れて行っても気を悪くさせるだけ。

「?」

首を傾げる弥生ちゃん――いちいち可愛い。

「……ごめん、これから委員長の仕事的なの入っちゃって……雛乃との約束の時間までには切り上げてくるから」

「えっ…そ、そうですか………」

露骨にショックを受けシュンとする弥生ちゃん。
庇護欲が掻き立てられる一方で、微妙に加虐心が煽られるのは、私が悪いのか弥生ちゃんが悪いのか……。

弥生ちゃんの姿に若干後ろ髪を引かれるが、歩幅を大きくして、保健室へ急ぐ。
緊張は少ししてる。だけど、思っていたよりも会うことを恐れていない。
紗のしたこと、私がしたこと、紗の真意……何から話せばいいのかわからないけど
今はちゃんとお礼を言いたい。ちゃんと謝りたい。その気持ちが強い。
結果的に最後に手を差し伸べなかったのは私なのだから。

――って、紗もだけど、それよりも瑞希……プールに落ちて保健室って、熱でも出した?

保健室前、私は躊躇なく扉を開ける。

<ガラガラ>

「瑞希!」

「あ、綾……」

ベッドで寝ている瑞希に私は駆け寄る。
なぜか中学の時のジャージを着てるが……視界の端にいる紗の趣味な気がする。

「大丈夫、平気」

少し上気した頬を見るに熱はあるのかもしれないが、確りした物言いに安堵する。
私は瑞希から視線を外して、隣にいる紗に向き直る。

「久しぶり、綾ちゃん……」

紗の声……。
その声はとても懐かしくて。

「……うん、久しぶり紗……」

――……えっと、え、なんか今になって凄く緊張してきたんだけど……。

それは紗も一緒だったらしく視線を逸らして髪を弄っている。
ただ、演技にも見えなくない……。
その様子になぜか私の緊張が和らいでいくのを感じる。

「え? 何、綾はともかく纏衣さんまで緊張しちゃうの?」

私が声を再度かけようとすると、瑞希が言葉を挟む。
もう数秒だけ待ってもらえたら良かったんだけど……。

紗は瑞希の言葉に少し表情を変えて嘆息してから口を開く。

「一体私を何だと思ってるの……」

「血の通ってない人?」

「綾ちゃんといるときは可憐で可愛い女の子だから、ていうか空気読んで気配殺しといてよー」

「絶対嫌」

冗談ではなく両方本気の言葉だと思うが、思った以上に険悪なムードではないことに驚く。
瑞希なら掴みかかって行っても不思議に思わないくらいには心配してたんだけど。

「……ごめん紗、この調子だと瑞希が迷惑掛けてたんじゃない?」

なんとなく想像を裏切った瑞希を味方する気にならず、紗寄りの発言をしてみた。
視線の隅で瑞希が不満そうな顔を見せているのがわかる。
実際こういうことになってるんだから、瑞希も被害者なのは間違いないわけだけど。


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