グリシン受容体の排尿反射への関与の可能性については1985年にすでに報告がある.その後,報告は途絶えていたが,最近,外尿道括約筋の調節へのグリシン受容体の関与を示唆する報告がなされた(Shefchyk et al: Exp Brain Res 119, 297‐306, 1998).ストリキニーネは膀胱拡張による膀胱の反射性収縮には影響せず,外尿道括約筋支配神経を強く興奮させるという.また,この筋を支配する仙髄Onuf核運動ニューロンの細胞体とその突起部近位にグリシン受容体アンカーであるgephyrinの豊富な存在が証明された.
我々も,グリシンプロドラッグによる排尿反射の促進を見いだしている(Maruyama et al: Jpn J Pharmacol 85, Supp I, 240P, 2001).また,ごく最近,外尿道括約筋支配の陰部神経にグリシン作動性神経が投射しているという組織化学知見も報告された(Judith et al: J Com Neurol 429, 631‐637, 2001).これらの報告は,グリシン受容体が排尿反射,特に外尿道括約筋支配に関与する経路に関与している可能性を示しており,グリシン受容体の生理的機能はこれまであまり知られていないだけに,貴重な知見である.