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鈴扇霊 二つ目の物語
5
:
ピーチ
:2013/07/10(水) 06:00:30 HOST:em114-51-2-136.pool.e-mobile.ne.jp
「はい、じゃあ早速自己紹介始めましょうか! 昇くんからどうぞー!」
出席番号順のせいで俺が最初になる。本気でやりたくねぇ。
「飛鳥井昇です、よろしく」
「ずいぶんと早いねっ!?」
担任が絶句した。
「他に何も考えてないんで」
俺の言葉に、さすがに困ったように視線を彷徨わせ、やがて諦めたように息を吐いて。
「まったく…お友だちとは仲良くしてね?」
何がお友だちだよ冗談じゃねぇよ。
俺の心境なんて知りもしない担任が、次の奴を指定する。
「天神柊一です。……自分の身の安全を考えたら、あんまり近寄らない方がいいと思うので」
言葉少なにそう言って、あまり笑顔なんかも浮かべずに席に座る。
さすがに担任が驚いたように言った。
「し、柊一くん? どういうことかな?」
「……あとで、話します」
苦笑気味に笑った天神がそう言って。
「次が詰まるんじゃないですか?」
天神の言葉に、担任が仕方なく次を促した。
「井上京太(きょうた)です。よろしくお願いします」
結局、どいつもこいつも俺と変わんない自己紹介だった。
「じゃあみんな、これから一年間同じクラスのお友だちだからね。色んな人と仲良くするのよ」
「はーいっ!」
やっぱり三十六人は元気に答えるんだよな。
ただ、俺と天神が答えないだけ。
今までの天神とは打って変わって、そいつの表情は暗く沈んでいた。
「……」
別に、不審者なんかじゃないからな。分かってるよな自分?
そう言い聞かせながら、俺は天神の後を尾(つ)けていた。
「あれ、柊一くん?」
「あ、こんにちは」
にこにこと笑顔でしばらく通りかかった女の人と話して、その会話が済んだら学校のように無表情に戻る。
…ひょっとして、本気で誰ともかかわらないつもりか……?
と、そこにふわふわとした声が聞こえた。
「お兄ちゃん!」
「へ?」
思わず間抜けた声を出してしまい、慌てて建物の影に隠れる。
「ただいま。変なものに遭わなかったか?」
「また子ども扱いする! 一葉(かずは)だって……」
「ほら。また言った」
一葉と言った女の子がはっと口元を両手で押さえた。
「それに、いくら大人びてるって言っても、俺も一葉もまだ子供。子ども扱いするものされるのも、無理ないんだよ」
「でも……っ」
「大人になったら、きっと誰よりも強いんだろうな。一葉は」
本気でそう思っているように、天神は小さく目を細める。
と、女の子がこっちに視線をくれた。
「……お兄ちゃん」
「うん、分かってるよ。でも、俺は誰を巻き込むつもりもない」
「え?」
小さな笑みを返し、ふっとこっちに首を巡らせて。
「―――え?」
いきなり、周りに黒っぽい膜が張られた。
「ごめん飛鳥井。ちょっと我慢してて」
そう言って、天神が表情を険しくする。
………ちょっと待て、俺気付かれてたの?
いつの間に?
天神が苦笑気味に笑う。それを見た女の子が、不審げに俺を見た。
「お兄ちゃん? あの人……」
「俺のクラスメイト。今年のね」
「……そう」
「うん」
天神が答えた直後、女の子が言った。
「天音お姉ちゃん、呼んだら?」
「え?」
「お兄ちゃんばっかりが攻防やってても勝ち目ないよ。かず……わたしは、まだ不安定すぎるの」
そう言って今にも駆け出さん女の子を、天神が引き留める。
「大丈夫だよ。限界が来たら、飛鳥井を放り出すから」
薄い笑みを浮かべてそう言った天神に、女の子が表情を引き攣らせた。
「お、お兄ちゃんそれ……」
「徒人(ただびと)にそれやるほど、馬鹿なつもりもないよ」
そう言って、天神が黒っぽい“それ”を取り出した。
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