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鈴扇霊 二つ目の物語
43
:
ピーチ
:2013/07/29(月) 22:15:17 HOST:em114-51-149-36.pool.e-mobile.ne.jp
―――絶対的な―――
『ちょっ、やめ……!』
見ず知らずの高校生らしき男に声をかけられ、あろうことか逃げようとした矢先に腕を掴まれる始末。
友人とは先ほど離れた。完全に一人になった彼女に、男はなおも続ける。
『いいじゃん、ちょっとくらい遊ぼうよ』
『あたし、用事あるんです!』
『いいから、さ』
そう言った男が、そのまま少女の腕を引き寄せた。
『や………っ!』
『―――なにやってんの?』
突如聞こえた、冷徹な声音。
はっと、男が顔を上げた。
『明らかに嫌がってるよな、その人』
『な、に言って……』
『警察、行きてぇの?』
男がうっと言葉に詰まった。そのまましばらく押し黙り、何も言わずにその場を離れる。
男の姿が完全に消えてから、少年が小さく息を吐いた。
『大丈夫か?』
『え? あ、はい……』
そう答えるものの、みっともなく身体は震えていた。それを認めた少年が彼女の手を握る。
『……あ、の…?』
『初対面の男にこんなことされんの、嫌かもしれないけどさ。余計な力は抜いたほうがいい』
そのためには、誰かが握った方がいいだろ?
そう言って笑う少年が、震えの止まった手を見て満足そうに言った。
『止まったじゃん』
言って、そのまま少女の腕を引いて。
『あ、あの……?』
助けてくれたとはいえ、やはり彼もさっきの男と変わらないのか。
そう思ったとき、少年の声が聞こえた。
『家、どこ?』
『え?』
『近くまで送る』
また悪い虫が近寄らないように、と言って、少年が振り向く。
『教えたくないなら、別に言わなくてもいいけどさ。同じ方向だったら途中までは送れるぜ?』
『…………ありがとう、ございます』
呆けたように礼を述べた彼女に、少年は笑って答えた。
『どういたしまして』
きらきらした、眩しいほどの笑顔。
―――それが、初恋だった。
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