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鈴扇霊 二つ目の物語
42
:
ピーチ
:2013/07/29(月) 21:54:53 HOST:em114-51-149-36.pool.e-mobile.ne.jp
「天音ー! おっはよー!」
「おはよう」
後ろから走ってきた友人、漲紗湟(みなぎさほり)に応えた直後、小夜の姿が視界に入った。
向こうも気が付いたのだろう。天音を見るなり立ち止まり、悪戯をしたあとの子供のように縮こまる。
天音は努めてゆったりした足取りで、そんな彼女に歩み寄った。
そして、
「今日の放課後、神社に来てくれる?」
その言葉に驚いたのか、黒曜の瞳が大きく見開かれる。小夜がこくんと頷いたのを認めて、再び友人の後ろを歩き出した。
「天音? 小夜と仲悪くなかった?」
紗湟が驚いたように彼女に問う。
そんな少女に、天音が大人びた微笑を浮かべた。
「そうね。でも、私が一方的に誤解してただけだって分かったわ」
「………はぁ?」
胡乱げな声を発する友人をそのままに、少女は教室まで足を運んだ。
「あら」
深藍の着物が、微かな衣擦れの音を発した。
「早かったわね。……ま、いいか」
困ったような微苦笑が小夜に向けられる。天音以上の特別な能力など持ってはいないが、それでも正装で来るのは。
「やっぱり貴女も、飛鳥井の人間……ね」
そう言って彼女を本堂へと招き入れ、自分は中央より少し右側に腰を下ろす。
「ここ、ね。……お父さんたちの、最後の場所なの」
最後の。
言葉だけでも容易に想像できる光景を、まだ幼かった彼女は目の当たりにしたのか。
小さく息を吐いた天音が、柔らかく笑む。
「今までずっと、貴女の両親のせいだって思ってた。でも違ったの」
この前、彼が降ろした両親の言葉では。
「貴女の両親も、利用されただけだって分かった………」
そう言って、小夜に向かって。
「―――ごめんなさい」
「……え?」
「知らなかったとはいえ、今まで酷いことばかりしてた。ごめんなさい」
頭を下げた彼女が言い訳をする気配はない。それが、逆に小夜に違和感を抱かせた。
「…なんで、言いわけしないの?」
「え?」
「だって普通、ああだったからこういうことしてたとか、そういう言いわけしない?」
小夜の問いに、天音が目を瞬かせる。
混乱の渦が過ぎ去った後、彼女が薄く笑った。
「言いわけしても、事実は変わらないから」
「………?」
「どんなに上手い言いわけがあっても、事実は覆せないから」
それに、言霊を汚すつもりなど、天音には毛頭ない。
それを聞いた小夜が、小さく呟く。
「それだけ…?」
呟いて、その後で笑みを浮かべて。
「ま、いいや」
そう言った。
「神代さん、あのさ。……友だち、なれるかな?」
小夜の言葉に、天音が驚いたように彼女を凝視した。そして。
「本気………?」
あれだけ酷いことをしたのに、それを赦すのか、この少女は。
「うん。ずっと思ってたんだ」
答えながら、笑う。
それにつられるように、天音が小さく笑みを浮かべ。
「じゃ、これからよろしくね。天音!」
差し出された小夜の手に、天音が自分のそれを重ねた。
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