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鈴扇霊 二つ目の物語

29ピーチ:2013/07/25(木) 15:38:59 HOST:em114-51-41-26.pool.e-mobile.ne.jp







「力…か……」
 ひっそりと呟いた言葉を聞き止めた少年が振り返った。
「あ? 何か言ったか?」
「別に」
 冷たい氷を思わせる少女の面(おもて)がそ知らぬ方を見やる。
 それを見た飛鳥井昇が苦く笑った。
「んだよそれ。……そろそろ柊一も来ると思うぞ」
「…そうね」
 学校の記念碑に腰を下ろす天音に、昇がぼそりと呟く。
「……記念碑に座るのはどうかと思うぞ」
 神や仏はこの上なく大切にすると言うのに、学校の記念碑にはこの態度か。この少女は。
 と、そこに幼馴染の姿を認めた天音が立ち上がった。
「ごめん、遅くなって」
「いいわよ別に。……一葉(かずは)ちゃんは?」
「え? 先に天音たちの所に行ってるとだけ言ってそのまま出て行ったよ?」
 二人の表情が強張る。
「来て………ない、わよね?」
「……あぁ…」
 柊一がじゃあと呟いた。
「友だちと、先に帰ったかな」
 そう言って携帯を取り出し、妹の番号にかける。
「あ、もしもし一葉? 今どこに居る?」
『あ! 天音お姉ちゃんたちに言うの忘れてた! ごめん先に帰ってる』
「分かった。そう言っとくよ」
 苦笑気味に笑い、少年が通話を切った。そのまま二人に苦い笑みを向ける。
「やっぱり、先に帰ってた」
「なら良かった」
 昇の言葉に被せるように、どこからか元気な少女の声が聞こえた。
「神代さん天神さん昇ーっ!」
「え?」
 三人の声が重なる。
「や、やっと追いついた……っ! もう天神さん! 仕事済んだなら呼んでくださいよ! あたしだって一緒に帰ろうと思ってたのに!」
「え、そうなの? あ、ごめんね?」
 どうやらずっと天音を追いかけていたらしい。
「あれ? 一葉ちゃんは?」
「先に帰ったわよ」
「えーっ!」
「……随分とつまんなさそうだな」
 昇の言葉に、少女―――飛湘あおりがぴしっと人差し指を突き立てて。
「あったりまえじゃない! だって一葉ちゃんとにかく可愛いんだもん!」
「…それは言えてるけど」
 小学生と中学生で時間差が生じるのは致し方のないことだと思う天音である。
「とりあえず……話すなら、歩きながらにしてもらえる?」
 ぴくりと額に青筋を立てた少女の言葉にあ、と返し、あおりが歩き出す。
「そう言えば、天神さんはどこの高校行くとか決めたんですか?」
「ん? 俺?」
 あおりの問いに少年が振り返り、しばらく考えてからいいかと言うような表情で頷いた。
「とりあえず、北宮かな」
「は? あの学校滑り止めとか言ってなかったかお前」
「き………っ!?」
 北宮。県内一レベルの高い公立高校。それを滑り止めだと。
「うん。そのつもりだったんだけど、よく考えたら県外に出るつもりないからさ」
 さらりと言ってのける彼に、あおりが絶句する。
「き、ききき北宮って県内一ですよ!? 本気でそこに……っ」
「昇も第一志望じゃなかったっけ?」
「あぁ」
 さらに唖然とする彼女に、天音が励ますように言った。
「二人とも成績優秀なこと、忘れてた?」
「………自分の頭の悪さを忘れてた」
 あおりの言葉に、昇がえ、と呟いて。
「お前、成績上位だろ?」
「そんなのまぐれだもんっ」
 天音に敵うわけがない! と喚く彼女に、天音が顔をしかめた。
「ちょっと、私だってそんなに成績よくない……」
「よく一位取るくせに?」
 くすりと笑む柊一に、天音が嫌そうに首を振りながら。
「飛湘さんの言葉を借りるならまぐれよ。よっぽど他の人が勉強してなかったんでしょうね」
「いやそれありえねぇから」
 即答する昇にあおりが便乗。
「そーだよ! 大体あたしは元々頭良くないんだからね! 天音とか天神さんたちと脳の作りが同じわけじゃないんだからね!」
「いや、それもどうかと思うけど……」
 柊一が苦笑しながら呟く。
「二人が北宮なら、私もそうしようかしら」
「ええぇぇぇっ!?」
 天音の言葉に、あおりがさらに絶叫した。


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