したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

短編小説

5:2013/07/09(火) 00:38:07 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―愛憎―」 後編



「じゃ、また明日!」

那緒が大きく手を振る。子犬を連想して思わず吹き出した。

「うん、また明日ね」

私も小さく“右手”を振る。

那緒はちょっと悲しそうにそれを見るけど。




ねぇ、気にしないで。

だって仕方なかったじゃない?




大好きな那緒の後ろ姿にそう願った。

――私は、左手が使えない。


7ヵ月前まで、私と那緒はバスケ部だった。

その時はまだ友達で、仲良しの、オトモダチ。私だけが那緒を好きで。

ある日、那緒と帰りに古い公園でバスケをしたんだ。

那緒がダンク練習!って言うから、私はゴール下でボール拾いとパス出しをしてた。

ガコンッ、って音がするまでは。

那緒のダンクは成功した。

でも、古い公園の古いバスケットのゴール。

ゴールは衝撃に耐えられず私に落ちてきた。



…避け、きれなかった。



『ごめん―…ッ』



那緒の茶色が私の前で揺れた。

私の目からも那緒の目からも涙が流れてて。

私の気持ちは愛憎、ってのがいっぱいだった。

それから、責任を取るみたいに私の告白を受け入れた那緒。


『好きだよ、那緒の事』


絞り出すみたいに、左手の包帯を見つめながら言った私は。

少しの意地悪を含めて、そう言った。


『俺も…好き』


那緒も、左手を見てただそう言った。

そこには、責任感しかなかった。

今思うと私は、あの時断って欲しかったんだと思う。

すごい身勝手だけど。多分、きっと。


―――君が好きだから、断って欲しかった。

それでも、私は那緒を手放せないのだ。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板