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竜野 翔太
◆026KW/ll/c
:2013/02/24(日) 21:07:59 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp
5
歌蝶に付き合わされた霊介は、再びデパートの中に入る。その中で歌蝶が向かったのは食料品売り場だ。
大体何をするか分かったが、霊介は一応聞いてみることにした。
「一体食料品売り場で何をするんですか?」
歌蝶は振り返らずに答える。
何をくだらないことを、という風な口調である。
「夕飯の買い物だ。食料品で服を買う奴がいるか?」
いないだろうな、と霊介は答える。それを聞いた歌蝶はふん、と鼻を鳴らした。
歌蝶はカートの上にかごを置きながら、
「今日は鍋にしようと思ってな。材料選び、そして荷物持ちに丁度良いと思ったのだ」
鍋かいいなー、と霊介は漠然と思う。
しかし、ここで霊介はあることに気がつく。
確か歌蝶は一人暮らしだったはずだ。まさかこんな少し暑くなってきた時期に、一人で鍋を突付こうというのか。なんというか、哀しいを通り越してチャレンジャーだな、と霊介は思う。
もしかしたら誰か呼んでるかも、と思い霊介は歌蝶に訊ねる。
「……鍋って一人で?」
すると歌蝶はう、と声を漏らした。一人でらしい。
彼女は視線だけを霊介に向け、拗ねたような口調で言う。
「……悪いか」
「いや、悪いというか……寂しくない?」
霊介の問いに、歌蝶はふん、と鼻を鳴らして、
「寂しいと言えば君が付き合ってくれるのか? こんな寂しい独身女性の夕飯に」
霊介は答えない。
はっきり答えれば面倒なことになりそうだし、付き合うと言えば面倒なことになるのは確実だ。どっちを選んでも面倒なことになるのだったら、答えない方がマシだと考えた。
歌蝶は溜息をつきながら、
「君の家では鍋に何を入れる? 一般的な白菜とか肉とかきのこ以外で」
「変り種ってことか? だったら、たまーにソーセージ入れるけど」
なるほど、と歌蝶はソーセージの袋を両手に一つずつ掴む。
両方違う会社のもので、どっちがいいのか見極めているようだ。どうやら値段は同じで、重さも大差がないらしい。
真剣にどっちを買うか見極めて、二つを霊介に向ける。
「君の家ではどっちを使っている?」
「俺の家庭ではどっちも使ってません。ちょっと値段が張るこれです」
言いながら霊介は自分の家庭が使っているソーセージを見せる。
歌蝶はそれを取ると、まあいいか、と言いながらかごに入れる。どうやら値段が高くてもいいようだ。
鍋の材料を買い終わり、デパートから出たところで持たされた荷物を、歌蝶に取られた。
霊介が首を傾げていると、
「今日はすまなかったな。もういいぞ」
「え? でも、荷物持ちだって……」
ふっと歌蝶は笑いながら、
「なんだ、本気にしてたのか? 案外可愛らしいところもあるのだな」
からかわれたことに霊介は怒りを覚えるが、幼い顔立ちでの可愛らしい笑みを見ると、何も言えなくなる。
それに時間は五時半だ。そろそろ帰らないと、心配性の亜澄からひっきりなしに電話がかかってくる。それはそれで面倒だ。
歌蝶は背を向けながら、
「じゃあな。明日から一日ごとに漢字プリントを提出しろ。本当は明後日までに三枚提出なのだが、付き合ってくれた礼だ。大目に見てやる」
ありがとうございます、と霊介が頭を下げる。そして頭を上げると、歌蝶は既に姿を消していた。
「……漢字プリント、か……」
嫌なことを思い出したな、などと考えながら霊介は家へ向けて歩き出す。
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