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6竜野 翔太 ◆026KW/ll/c:2013/02/18(月) 14:08:31 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 ずかずかと霊介の目の前まで歩いていき、亜澄は鞄の中から弁当箱を取り出し、霊介の前に差し出した。
 そこで、霊介はようやく亜澄が高校にまでやって来た理由を理解した。
「はい、おにーちゃん。朝忘れてったでしょ? だから出かける前ちゃんと確認したじゃない」
「……お前、わざわざ届けに来てくれたのか……?」
 霊介が驚いたように亜澄に問いかける。
 亜澄はむっとしたような表情で腕を組みながら、
「それ以外に用事ないよ。まったく、感謝してよね!」
 そういうと霊介は泣きながら亜澄を抱きしめる。
 驚いたように亜澄が悲鳴を上げるが、大して抵抗もせず困ったような表情のまま、感謝の言葉を述べ続ける霊介の頭をぽんぽん、と撫でていた。
 もうどっちが上か分からなくなるような状況だが、それを見ていた涼花と明日香はどこか微笑ましい気分になってくる。
 ようやく兄妹の抱擁が終わり、亜澄は思い出したようにもう一度鞄の中を漁りだす。彼女が中から取り出したのは飲みかけのお茶が入ったペットボトルだ。彼女はそれを霊介の机に置いた。
 今度は意味が分からず首を傾げる霊介。どうせ分からないだろう、と思っていたのか亜澄が霊介の心の疑問に答える。
「どうせ飲み物もないでしょ? 私の飲みかけのやつだけどあげる」
「いいって。それだったらお前のがなくなるだろ?」
「いいよ、途中自販機さんで何か買うし。多分お財布さんも持ってきてないでしょ?」
 図星を突かれて霊介は表情を引きつらせる。
 じゃあまたね、と手を振って亜澄が慌ただしく去っていった。ただ走っただけなのに、その動作さえも可愛らしく見えてしまう。
 去った後、霊介を見ながら涼花がぽつりと呟く。
「いやー、相変わらず可愛いね亜澄ちゃん。去年まで髪下ろしてなかったっけ?」
「何で霊介みたいな普通の兄貴の下にあんな可愛い妹がいるんだろうな。まったく、世の中は不公平で不条理だ」
「おい待て刀坂。今のはさすがに失礼じゃないか、特に俺に」
 言いながらも霊介は弁当箱を開ける。
 中学生が作ったとは思えないくらい、きちんとしたお弁当だ。毎日霊介は、亜澄の愛情が篭った弁当を食べているのだ。
 霊介は喉を潤そうとペットボトルに口をつけようとしたところで、ピタリとその手が止まる。
 これは亜澄の飲みかけだ。
 つまり、霊介は妹と間接キスしてしまうことになる。兄妹なんだから気にすることないのだろうが、そういう細かいところを気にしてしまうのが、澤木霊介という男だ。亜澄もきっと、渡す時は無意識だろうが、よくよく考えたら顔を赤くしそうだ、と霊介は思う。そういうところで二人は似ているのだ。
 あれこれと霊介が悩んでいる間に、明日香が霊介の弁当から玉子焼きを一つ攫っていく。それを口に運びながら、
「しかし本当に可愛いよな、亜澄ちゃん。私の妹にほしいぐらいだ。……しかも美味い」
「多分学校でもモテモテなんじゃないかなぁ? 現にこのクラスでも惚れちゃった人少なくないと思うよ?」
 涼花も玉子焼きを一つ攫いながら言う。
 確かにクラスの男子の霊介を見る目が少し怖くなっている。涼花と明日香はそれなりにモテるため、二人といるだけでも結構羨ましがられるのに、その上亜澄という可愛い妹の登場でクラスメートの嫉妬はマックスだ。
 結局ペットボトルには口をつけられず、弁当を食べることにした霊介は、
「……まあ、去年のホワイトデーにいっぱいもらったとは言ってたな。あげてない奴からももらったらしいし。大体モテモテとかお前が言うな」
「兄としてはどうなの? 例えば亜澄ちゃんが連れて来た彼氏が自分のクラスメートだったら」
 それを聞いた瞬間霊介は立ち上がって、
「そんなもん認めるかぁ!! 大体、亜澄に彼氏なんて……っ! いやでも、アイツももう中学三年生だしな……!」
 勢いよく否定はするものの、妹の彼氏について本気で悩みだす霊介。
 それを冷ややかに眺めていた明日香が、
「どうすんだよ、涼花。アイツのシスコンが目覚めたぞ。責任持ってお前が何とかしろよ」
「えー、面倒くさいよ。ああなるとは思ってなかったし」
 霊介の心配をよそに、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響く。


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