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竜野 翔太
◆026KW/ll/c
:2013/03/16(土) 13:54:38 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp
――凪。
彼女の名前を聞いた時、霊介は正直に美しい名前だと思った。長い黒髪に大きな瞳、端整な顔立ちの少女にふさわしい名前だと思った。字が表すとおり、風も彼女を吹き晒そうとは思わないだろう。
霊介は無意識に凪を見つめていた。視線に気付いた凪が霊介に可愛い顔を向けてくる。不意に二人の視線が重なり、同時に顔を逸らす。
その間にも亜澄は自分の部屋に戻って財布を捜しに行っていた。そう分かったのは彼女の部屋がある方向から『あっれー? お財布さん、どこだー?』とか叫んでいるからだ。
彼女がドタバタしながら財布を手にリビングに戻ってくると、未だに座っていた霊介と凪に立つように促す。
「はいはい、ほら立った! そろそろセールやる時間帯だから、急がなきゃ売り切れちゃうよ!」
妹のそのテンションに、霊介と凪は椅子から立ち上がり、亜澄の後について家を出る。
三人が向かったのは、家から十分ほど歩いたところにある大きなデパートだ。
食料品だけじゃなく洗剤や日用品、さらには調理器具まであったりと、品揃えのいいお店である。澤木家、主に亜澄が利用するのだが、ほぼ毎日行っているため、デパートのおばちゃん店員からは顔を覚えられている。
亜澄は慣れた手つきで買い物カートの上に籠を載せ、カートを押していく。
「ねーねー、晩御飯何がいい? 私何でも作っちゃうよー!」
彼女の言葉は強ち間違ってはいない。
亜澄は家事歴が長いためか、大抵の料理は作れる。さすがにフレンチやイタリアンの店で出される芸術的な料理は不可能だが。
「別に何でもいいよ」
霊介が返すと、亜澄は頬を膨らませながら反抗してくる。
「むー、そういうのが一番困ったさんなんだよ。じゃあ凪ちゃんは? 何か希望ある?」
指名された凪は困ったような表情を浮かべて沈黙してしまう。
彼女も特に希望はないようだ。元々、食べさせてもらう身なので遠慮しているのかもしれない。
亜澄は困ったように腕を組んで考え込む。
自分が作れるもので、三人が食べられるものといえば……。
亜澄は閃いたような表情をしてから、カートを野菜の方へと走らせていった。彼女が見ているのは白菜である。ついでに近くにある大根やきのこにも目を通している。どうやらメニューは鍋に決まったらしい。そういえば蝶ちゃんも今日は鍋って言ってたなー、と思いながら霊介は食材とにらめっこしている亜澄を遠目から見ていた。
彼の傍らで楽しそうに動き回る亜澄を見ながら、くすっと凪が笑っていた。
「……なんだか、楽しそうだね……」
凪がそっと呟く。
今までこっちが話しかけなければ話さなそうな彼女から、口を開いた。
「まあな。アイツは昔から人が大好きだし」
「ううん、彼女じゃなくて――君だよ」
凪が霊介に視線を向ける。
はにかむような笑みを見せながら、凪は霊介を見つめている。その凪の表情に、霊介は思わずドキッとしてしまう。
「君――霊介でいいよね? 霊介は亜澄を見てると、とても楽しそうな顔をしてる。彼女と一緒にいるのが楽しいような、一番落ちついているような、そんな感じ。……上手く言えないけど、君には彼女が必要で、彼女には君が必要みたいな」
霊介は心の中で頷いていた。
確かに、今の自分には亜澄の存在が必要だ。彼女がいないと自分はきっと生活もままならないだろう。亜澄と一緒にいると楽しいし、一番落ち着くというのも事実だ。
霊介は凪の手を引く。その彼の行為に凪が僅かに驚いたようだった。
「行こうぜ。アイツ忙(せわ)しないから、追いかけないと見失っちまうぞ」
二人は先々と食材をカートに入れていく彼女を、駆け足気味で追いかけて行った。
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