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竜野 翔太
◆026KW/ll/c
:2013/03/10(日) 13:46:36 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp
結局霊介は亜澄に馬乗りになられて、顔面に脅威の六十九ヒットを叩き込まれた。
したたか顔を殴られた後に、リビングに戻り霊介は弁解のチャンスを得た。しかし、亜澄は腕を組みながら霊介を睨んでいる。霊介の隣に座っているゴスロリ少女(着ていた服は亜澄が洗濯しているため、今は亜澄のワンピースを身に着けている)も、ウサギのぬいぐるみを抱えながら、隣にいる霊介に怯えている。
正直、周りは敵だらけだ。
こんな完全アウェーな状況で弁解もクソもあるのだろうか、と霊介は考え込むが、このまま誤解され続けられるのも御免だ。
霊介は未だ痛みが残る右頬を押さえながら、口を開いた。
「まず最初に言っとくが、俺はこの娘に手を出したわけじゃない。そこからまず納得してくれ。つーか、お前もそれくらい分かるだろ。俺が寝ている女の子に手を挙げるような奴かどうかくらい」
霊介は目の前にいる亜澄にそう言う。
しかし、尚も亜澄はじとっとした瞳を霊介に浴びせている。彼女は兄の言葉を全く信じていないようだ。昼休みの彼女に帰ってきてほしいところだが、誤解が解ければいつもどおりの亜澄に戻るだろう、と霊介は信じ、必死に弁解を試みる。
亜澄はうんうん、と頷いて数秒黙り込む。
「……じゃあ何でその娘は泣いていたんですか? そして何で全裸だったんですか?」
彼女の敬語モードは解かれていない。
霊介は慎重に言葉を選びながら、口を開いた。
「全裸だったからって、何かしたことにならないだろ」
霊介は溜息をつきながらそう言った。
そして彼は説明を始める。
ベッドに彼女を寝かし、そのまま自分もうたた寝してしまったことを。目が覚めると彼女の姿が見当たらなかったことを。靴があるのでまだ家にいるだろう、と色々探し回ったことを。何処にもいないので、とりあえず一旦部屋に戻ったことを。そしたら例の場面に出くわし、今に至ることを。
亜澄はその言葉を静かに聞いていた。霊介の隣のゴスロリ少女も、霊介に対して徐々に警戒心を解いているようだった。
「……分かってくれたか? つまり、お前の解釈は間違いだらけなんだよ」
「……私の解釈が間違っていたのは分かったよ、ごめんなさい」
亜澄の口調が元に戻ったような気がした。亜澄は素直に頭を下げる。
霊介は思いが通じたことに喜び、心の中でガッツポーズを決める。
――が、
「でも、その娘の裸を見ちゃったことは、おにーちゃんの過失にならないのかなあ?」
亜澄が嫌な表情をした。
草食動物を見つけた時の肉食動物のようだ。目がきらんと光り、霊介をしっかりと見据えている。
その言葉に、霊介は思わずうろたえる。確かに、裸を見たことは確かだ。それは弁解のしようがない。
「……そ、それは俺も悪かったよ……。ごめんな」
霊介は隣のゴスロリ少女に謝る。
ゴスロリ少女は小さくこくり、と頷くと、霊介に顔を向けて言う。
「……大丈夫、私も勝手に部屋に入って着替えちゃってたし……。あなたには色々迷惑掛けちゃったから……」
少女は快く許してくれた。
霊介はほっと胸を撫で下ろすと、亜澄が勢いよく立ち上がる。霊介とゴスロリ少女は同じタイミングで肩をびくっと震わせる。
亜澄の瞳がきらきらと輝いている。
「よっしゃあ、おにーちゃんの変態さん疑惑も晴れたことだし、今日はその子をおもてなししてあげようじゃないか!」
霊介は溜息をつかざるを得なかった。彼女は家に友達が来ただけですぐにパーティーを開きたがる。
中学の頃、何度か霊介の家で勉強会をした時、家にやって来た涼花と明日香も相当に驚いていた。最終的に翌日のテストでは憶えたところを完全に忘れてしまっていたのだが。
こうなるともう誰も彼女を止められない。
亜澄の異様とまでいえる高いテンションに、ゴスロリ少女は大いに戸惑っていた。そんな少女に霊介は優しく語り掛ける。
「悪いな、うちの妹騒がしくて」
「ううん。とっても楽しそうだよ、妹さん」
「あ、そーだ! あなた名前はなんて言うの? 呼ぶとき困っちゃうからさ! 私は澤木亜澄! こっちはおにーちゃんの霊介!」
霊介は亜澄に紹介されると『よろしく』と短く言う。
ゴスロリ少女は、小さく二人の名前を復唱しながら、ウサギのぬいぐるみを抱きしめる。
それから、自分の名前を伝えようと小さな口を開いた。
「わたしは……凪(なぎ)。……人乃宮凪(ひとのみやなぎ)。それが、わたしの名前……」
16
:
竜野 翔太
◆026KW/ll/c
:2013/03/16(土) 13:54:38 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp
――凪。
彼女の名前を聞いた時、霊介は正直に美しい名前だと思った。長い黒髪に大きな瞳、端整な顔立ちの少女にふさわしい名前だと思った。字が表すとおり、風も彼女を吹き晒そうとは思わないだろう。
霊介は無意識に凪を見つめていた。視線に気付いた凪が霊介に可愛い顔を向けてくる。不意に二人の視線が重なり、同時に顔を逸らす。
その間にも亜澄は自分の部屋に戻って財布を捜しに行っていた。そう分かったのは彼女の部屋がある方向から『あっれー? お財布さん、どこだー?』とか叫んでいるからだ。
彼女がドタバタしながら財布を手にリビングに戻ってくると、未だに座っていた霊介と凪に立つように促す。
「はいはい、ほら立った! そろそろセールやる時間帯だから、急がなきゃ売り切れちゃうよ!」
妹のそのテンションに、霊介と凪は椅子から立ち上がり、亜澄の後について家を出る。
三人が向かったのは、家から十分ほど歩いたところにある大きなデパートだ。
食料品だけじゃなく洗剤や日用品、さらには調理器具まであったりと、品揃えのいいお店である。澤木家、主に亜澄が利用するのだが、ほぼ毎日行っているため、デパートのおばちゃん店員からは顔を覚えられている。
亜澄は慣れた手つきで買い物カートの上に籠を載せ、カートを押していく。
「ねーねー、晩御飯何がいい? 私何でも作っちゃうよー!」
彼女の言葉は強ち間違ってはいない。
亜澄は家事歴が長いためか、大抵の料理は作れる。さすがにフレンチやイタリアンの店で出される芸術的な料理は不可能だが。
「別に何でもいいよ」
霊介が返すと、亜澄は頬を膨らませながら反抗してくる。
「むー、そういうのが一番困ったさんなんだよ。じゃあ凪ちゃんは? 何か希望ある?」
指名された凪は困ったような表情を浮かべて沈黙してしまう。
彼女も特に希望はないようだ。元々、食べさせてもらう身なので遠慮しているのかもしれない。
亜澄は困ったように腕を組んで考え込む。
自分が作れるもので、三人が食べられるものといえば……。
亜澄は閃いたような表情をしてから、カートを野菜の方へと走らせていった。彼女が見ているのは白菜である。ついでに近くにある大根やきのこにも目を通している。どうやらメニューは鍋に決まったらしい。そういえば蝶ちゃんも今日は鍋って言ってたなー、と思いながら霊介は食材とにらめっこしている亜澄を遠目から見ていた。
彼の傍らで楽しそうに動き回る亜澄を見ながら、くすっと凪が笑っていた。
「……なんだか、楽しそうだね……」
凪がそっと呟く。
今までこっちが話しかけなければ話さなそうな彼女から、口を開いた。
「まあな。アイツは昔から人が大好きだし」
「ううん、彼女じゃなくて――君だよ」
凪が霊介に視線を向ける。
はにかむような笑みを見せながら、凪は霊介を見つめている。その凪の表情に、霊介は思わずドキッとしてしまう。
「君――霊介でいいよね? 霊介は亜澄を見てると、とても楽しそうな顔をしてる。彼女と一緒にいるのが楽しいような、一番落ちついているような、そんな感じ。……上手く言えないけど、君には彼女が必要で、彼女には君が必要みたいな」
霊介は心の中で頷いていた。
確かに、今の自分には亜澄の存在が必要だ。彼女がいないと自分はきっと生活もままならないだろう。亜澄と一緒にいると楽しいし、一番落ち着くというのも事実だ。
霊介は凪の手を引く。その彼の行為に凪が僅かに驚いたようだった。
「行こうぜ。アイツ忙(せわ)しないから、追いかけないと見失っちまうぞ」
二人は先々と食材をカートに入れていく彼女を、駆け足気味で追いかけて行った。
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