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負ケ戌共 −マケイヌドモ−
29
:
ムツ
:2013/01/03(木) 23:10:44 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
負ケ戌共 −マケイヌドモ− 【二十六】
『バチィィィィィンッ!!!』
『!!!?』
竹刀の床を叩く高々しい音と皆の驚いた反応がいっぺんに重なる。
驚いて誰も声が出なかった。
何故なら。男の竹刀が東の頭に降り下ろされるその瞬間、間一髪なのか計算通りなのか、東は道場の空宙に飛んだ。
空中で柔らかい体を丸めて、男の頭上を飛び越えると東は即座に竹刀を男の後頭部目掛けて突き放った。
「―――…しまっ……!」
驚いた時にはもう遅く、その時には既に竹刀は男の頭部ギリギリまで来ていた。当たる…、そう思った時だ――
――竹刀は振り返った男の顔面寸前で停まった。
それにも驚いたが、まず今の竹刀の位置とさっきまでの勢いから止められたことに驚きがあった。
「………っな…ぁ…」
「……フゥ――――」
深く息を吐いて竹刀を下ろすと、東はすぐに体制を整える。
「………こんな感じ……お兄さ」
『ウオォォォォォォォォォ!!!?(熱』
「へ?」
息を整えて東が清玄に顔を向けると、見物人たちが歓声の声を上げた。
驚いて東が目を‘・(てん)’にしていると、周りに次々と人たちが集まってきた。
「すごいな新入りぃ!!」
「次手合わせしてくれ!」
「誰に稽古して貰ったんだよ?!」
「何なんだよその身のこなし!!」
集まってきた者たちが口々に東を質問攻めする。驚きと焦りと気持ち悪さから立ち眩みさえしてくる。
人見知り、ではなく、人間恐怖症の東がこれ程の人に囲まれるのは、まさにヤバイ。
何がヤバイか。もし、ここにいる者が一人でも東の肩などに当たってみろ…。
しかし、その最悪のケースは起こった。一人の男が何気にポンと東の肩に手を置いてしまった。
そして、東はその男の腕を取りそのままお馴染みの
『僕に触るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?』
と激怒しながら男を投げ飛ばした。
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