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負ケ戌共 −マケイヌドモ−

19ムツ:2013/01/03(木) 15:24:44 HOST:softbank220024115211.bbtec.net

 負ケ戌共 −マケイヌドモ− 【十八】


 村長の頭部に向かって勢い良く振り落とされた少年の一太刀。
 だが。あと少しで、刀が村長の頭部にぶつかろうとしたその瞬間。
 少年は手を止めた。それも刀の刃が頭についているか微妙な所で。
 少年は少しの間、刀を村長の頭につけていたが突然何の前触れもなく刀を離した。
 「……良いのか?」そう聞いてくる鋼獅郎に何も返さず少年は床に落ちた鞘を拾い上げ、その中に刀をしまう。
 そして、三人に背を向けたまま「そいつは…腐ってもこの村の村長だ。殺すかどうかは村民が決めるべきだよ」と言い捨てて、屋敷を出ようとした。
 そして、廊下に出た瞬間失神状態になり、また三人の宿に来るハメになった。

 「…どうだ?一緒に来ないか?」
 何分ほど考え込んだだろうか。少年はハッと我に帰り、鋼獅郎と目を合わせた。
 「………あの……僕…。人見知り……半端ない……です…っよ………?……いつ…切り掛るか……分かんない…っし……それに…」
 「人見知り?テメェのはそんなもんじゃねぇだろ?」
 「それは僕を侮辱してるの?お兄さん……」
 少年の押しつぶされそうな目つきに鋼獅郎は苦笑しながら黙り込んだ。
 「………っで、どうすんだよ、テメェ……来ないんだったらキッチリ来ないって言えよ」
 鋼獅郎が黙り込んだせいで、偉三郎がぶっきらぼうに訊く。
 「……僕は………別に……行きたい…訳じゃ…………………っぅ―――」
 言葉が詰まる。同時に頭の中に走馬灯のよなものが浮かんできた。
 名前も瞳の光も無かった自分に振り落とされる無責任な大人たちの大きな手。その度に泣きじゃくったわけでも、悲しかったわけでもない。ただ、強くなりたいと思っていた自分。
 「ぁ―――…もう……!行かねぇんだな!?行かねぇんだろ!だったらハッキリ言えよ!」
 ムキになって怒鳴る偉三郎を清玄は静かに制す。「やめろ」そう言われて眉をハの字にして偉三郎は座った。
 いつまでたっても返ってこない返答に、鋼獅郎は苛立ちを覚えもしたかもしれない。だが、何も言わず、ずっと黙っていた。
 そして、とうとう立ち上がり「来ないなら、頑張って生きろよ?」と言った時、少年は「待って下さい」と呟いた。


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