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ヴァンパイア・ブラッド

37竜野 翔太 ◆026KW/ll/c:2013/03/23(土) 00:48:36 HOST:p4092-ipbfp3303osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 ――探す、といっても実際は難しいものである。
 手を注視するという方法があるが、人によって常に外に出している人と、ポケットの中に入れている人といる。男性は大抵後者だ。他にも手は常に止まっているわけではない。身振り手振りを交えて話したり、角度によっては見えないこともあるだろう。
 つまり、簡単に『校内にいる「ヴァンパイア」と契血者(バディー)を見つける』と言っても、難易度は高めなのだ。
 授業中ぐらいしか、人の手の隙もないのでその時間に注視しているが、角度によって見えない人がほとんどである。ちらっと真冬を見ると、彼女も夏樹の隣の席なので、状況は芳しくないようだ。
 一時間目、二時間目と終わり、彼は休み時間にトイレに行くことにした。授業中にトイレで抜け出すなど、少し恥ずかしい。
 夏樹は途中ですれ違った女子が何か落としたことに気付き、落としたものを拾いながら落としたと思われる女子に声を掛ける。
「おーい、これお前のか?」
 呼ばれたと思った女子は足を止め、振り返る。
 真冬よりも小柄な少女だった。肩口まで伸びた綺麗な白髪に、大きめな青色の瞳。雪国のお姫様のような印象を与えるほど、その少女の容姿は愛らしかった。
 少女は夏樹の持っている淡いピンク色のハンカチを見ると、『おお』と声を上げて近づいていく。
「ありがとねー! これお気に入りの奴なんだー! 失くしたら大騒ぎだよ」
 薫と並ぶくらい元気な少女だった。いや、薫よりはマシか。
 夏樹はお礼を言う少女に対して、どういたしまて、と軽く言葉を返した。
 少女は受け取ったハンカチをポケットに直すと、走り去りながら夏樹に言葉を掛けた。
「じゃあね、君とはまた会いそうな気がするよ、夏樹くん!」
「お、おう……じゃあな」
 同じ学校なんだから、会わないというのも不自然だろう、と思いながら戸惑う夏樹。
 だが彼はここで、彼女の言葉の可笑しな部分に気がつく。気がついてしまう。

 ――何故彼女は、夏樹の名前を知っていたのだろうか。

 名乗った覚えは無いし、今まで出会った記憶もない。
 さっきだって、ハンカチを拾ってそれを渡し、お礼を言ってくるので返事をしただけだ。名前を名乗ろうなど、ましてや相手の名前を聞こうなどとも思っていない。
 彼女はどうやって夏樹の名前をしったのか? そして、彼女は一体何者なのか?
 まあ中学時代色々やってたし、それで名前を知る機会もあったのだろう、と適当に結論付け、夏樹は教室に戻っていく。

 次の授業中、トイレが耐え切れなくなり、途中で席を立ったのは想像に難くない。


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