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天界の王子-Heavens of Prince-

9竜野 翔太 ◆026KW/ll/c:2012/12/24(月) 21:32:21 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 翌朝、魁斗は学校へと向かっていた。
 六月に差し掛かる時分、ブレザーを着るのは暑くて、生徒の数人は既に制服を夏服に変えている生徒もいる。一方の魁斗は未だ長袖のカッターシャツだが、袖を捲って着ている。
 朝起きたらレナの姿は見当たらなかった。『死を司る人形(デスパペット)』の刺客を退けた後、傷を癒すために天界へ戻る、と言っていた。また戻ってくるのだろうが、それがいつになるかは分からない。彼女が使っていた双刀の『剣(つるぎ)』も、魁斗に渡し、天界へと戻っていった。これは使え、という意味なのかもしれない。
 一応ブレスレットに戻った『剣(つるぎ)』も鞄の中に入れている。
 魁斗は低く呻きながら、右肩を叩いている。
「あー、右肩痛ぇ……。絶対昨日のが原因だよなぁ……。日ごろ運動してないツケが回ってきやがった……!」
 魁斗は右腕を回しながらそう言う。
 ザンザの巨大な刀の攻撃を防いだり、思い切り刀を振り回したりと、通常はしない運動ばかりを行っていたので、筋肉痛のようなものを起こしたのかもしれない。ついでに右ほどではないが、左肩も少し痛い。
 そんな彼の横から、一人の少女が声を掛ける。
「おはよう、カイトくん」
 声を掛けてきたのは、魁斗と同じ学校の制服を着た女の子。彼女は既に夏服に衣替えをしている。
 肩より少し長い栗色の髪に、黄色のカチューシャを付けた少女だ。瞳は大きめで、目立たないがかなりの美少女である。
 彼女の名前は沢野叶絵(さわのかなえ)。魁斗と同じクラスの少女で、中学からの知り合いだ。魁斗の数少ない友達の一人である。
 何かと世話を焼いてくれる少女で、礼儀正しい娘だ。
「……ずっと肩叩いてるけど、痛いの?」
「昨日ちょっとあってな。大丈夫、明日には治ってる」
 魁斗の返事を聞いても叶絵は心配そうな表情をしていた。
 すると、彼女は急に思い出したように話題を振ってきた。
「そうだ! 今日転校生がくるんだよ!」
「転校生?」
 学校に着き、上履きに履き替えながら二人はそんな会話をしていた。
 教室に向かいながらもその話題は続いていた。彼女が手にした情報も、その転校生が女子だ、という以外にはなく、どんな女子かも分かっていないのだ。
 教室に入り、二人は隣同士の席に座った。
「仲良くできるといいね!」
「……まあ、そうかもな……」
 程なくして担任の教師が入ってきた。眼鏡をかけた三十代前半の男性教師だ。
 教師は転校生が来ることを生徒に伝え、教室の前で待機させている転校生に入るように促した。
 その時、魁斗は驚愕した。
 もっと考慮すべきだった。あの女が、

 自分を守るためだ、などと言ってこっちの世界に来た女が、学校に紛れ込むという可能性を。

 銀色の髪を揺らしながら、転校生の少女は教室に入っていく。チョークを手にし、黒板に綺麗な文字で名前を書いていく。
 魁斗が知っている彼女の本名ではなく、日本人らしい名前を黒板につづった。
 名前は長谷川麗奈(はせがわれな)。エルミントはどこいった、という変わりぶりである。
 転校生の長谷川麗奈、改めレナ・エルミントはにっこりと笑いながら告げる。
「転校生の長谷川麗奈です。皆さん、仲良くしてくださいね!」

 勘弁してくれ。
 魁斗は漠然とそう思った。


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