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天界の王子-Heavens of Prince-

6竜野 翔太 ◆026KW/ll/c:2012/12/23(日) 20:32:26 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 ザンザの『剣(つるぎ)』、『大宝の御剣(だいほうのみつるぎ)』は光の斬撃を、相手に向かって射出する刀。
 故に威力は大きいが隙が出来やすい。しかも刀身が長いため、相手が近寄ってくると対処しにくい。近接戦には向かない。ただしそれは、一般的な話だ。
 ザンザはレナに向かって巨大な斬撃を撃ち放つ。レナはそれを紙一重でかわすが、動いただけでわき腹が容赦なく痛みを訴える。彼女は膝をついて苦しみだす。
 そこにザンザは畳み掛けるように、巨大な刀を掲げながら突っ込んでくる。
 咄嗟に反応できたレナが、彼の攻撃を二本の刀で防ぐ。が、男女の腕力の差。そして両者の刀の大きさの差。その二つの差が合わさり、レナは後方へと吹っ飛ばされる。彼女の身体は電柱に激突し、彼女の口の端から一筋の血が垂れる。
「レナ!」
 魁斗は思わず叫んでいた。
 自分のために怪我を負ってまで戦っている女性が、窮地に追いやられている。飛ばされた時に離れたのか、彼女の手から二本の刀が消えており、地面に無造作に転がっている。
 魁斗は自分の無力さに歯噛みする。何も出来ない、という自分の無力さに腹が立ってくる。だが、自分が出て行ったところで、あの男に何か出来るわけでもない。
 ザンザは溜息をつきながら、ただ息を切らしているだけのレナに近づいていく。
「傷の分がマイナスになったなァ。お前が無傷で万全の状態なら、もうちっといい勝負になってたかもしれねェが……このザンザ・ドルギーニを相手にするには、怪我を負った状態じゃ不可能だってことだ」
 ザンザは巨大な刀を上に掲げる。
 これからレナにトドメを刺そうとしているのか、彼の笑みがいっそう深くなる。
「やめろ! もう勝負はついてるだろ! お前の目的は俺なんだろ!? だったら俺だけ狙えばいいじゃねぇか!!」
 魁斗は叫ぶ。
 自分のために誰かが死んでいいわけがない。しかし、彼の叫びはザンザの耳には届いても、心には響かない。
 彼は子供の自慢話を聞かされているかのような、そんな呆れた溜息をついて、
「お前の都合なんざ知るかよ。やめてほしけりゃ、お前が何とかしたらどうだ? 出来るんなら、の話だがなァ」
 引き裂かれた笑みを浮かべザンザが言う。
 何も言い返せなくなった魁斗をつまらなそうに見つめ、ザンザは再びレナへと視線を向ける。
 最後に手向けの言葉と共に、刀を振り下ろす。
「じゃあな、養育係。恨むなら、自分を死なせた原因を作ったあのガキを恨めよ!!」
 ザンザが刀を振り下ろす。
 レナは最後まで魁斗のことを考えていた。彼女は血が垂れる口を、無理矢理に笑わせて、
「……世迷言を。私が、カイト様を……恨むわけがありません……! 私は、カイト様の養育係だということに、誇りを持っているのですから……。さようなら、カイト様」
 彼女の瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
 そんな彼女を、ザンザの巨大な刀が真っ二つに引き裂いた。

 が、ザンザの刀がそれを現実にすることはなかった。
 彼の目の前には、今まで何も出来なかった黒髪の少年が、地面に転がっていた二本の刀を手にし、ザンザの巨剣を防いでいた。

 普通では二階から階段を使って降り、地面に転がっている刀を拾ってからザンザの斬撃を防ぐなど不可能だ。
 だが、彼は天子。ずば抜けて高い脚力を持っている。
 彼は、階段など使わず窓から降りて、五〇メートルを四秒で駆け抜ける脚力をフルに使い、途中で刀を拾いながら、ザンザの攻撃に間に合ったのだ。
 ありえない、とザンザは思う。養育係より、彼の方がよっぽど脅威だとも思う。
 レナは自分を助けてくれた魁斗に、先ほどとは違う意味の涙を零していた。
「……カイト様……」
 魁斗はレナの方を振り向かず、ただ言葉だけを告げる。
「泣いてんじゃねぇよ、勝手に死のうとしやがって」
 彼は目の前のザンザを睨みつけながら、力強く宣言する。

「お前は休んでろ。あとは、俺がカタをつける!!」


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