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天界の王子-Heavens of Prince-

4竜野 翔太 ◆026KW/ll/c:2012/12/21(金) 21:26:10 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 結論を言われるまでもなく、魁斗はレナがこっちまで来た理由を理解できた。
 今までは身体も未成熟で、『シャイン』も不完全だった。そのため、自分をこっちの世界に送ることで守ることが出来ていた。しかし、成長につれ『シャイン』が完全な形になってしまった。賊軍から魁斗を守るためにレナはこっちに来たのだ。
 つまり、レナは迫る賊軍と魁斗を守るために戦うことになるかもしれない。一対一かもしれないし、二対一、もしくはもっと大勢の人数と戦うことになるかもしれない。
 彼女は、本当に命を懸けて戦おうとしているのだ。
「……お前」
「私は貴方を守るために生まれてきた。そう思っています」
 魁斗の言葉に、レナが自分の言葉を重ねる。
 きっと彼女も命を落とすのは怖いだろう。もっとも信頼し、大事に思っている魁斗から『死ぬな』と言われれば決意が揺らぐと考えたのか、彼女は魁斗に優しい言葉をかけられる前に、自分の言葉で遮った。
 魁斗は、俯いているレナの肩が小刻みに震えているのに気付く。
 そんなに怖いのなら戦わなくてもいい、などという無責任なことは言えない。そもそも誰のために戦っているのか、それを考えた魁斗は彼女に何の言葉もかけることが出来ない。
 レナの肩に優しく触れようと、魁斗が手を伸ばした瞬間、
「伏せてください!」
 レナが途端に顔を上げ、魁斗に覆いかぶさるようにして彼を押し倒す。レナと密着している状態だが、状況の把握も間に合わず、それを楽しむ余裕などない。
 レナが叫んだ後、部屋の窓が勢いよく割れる。割れた勢いこそ強かったものの、破片はそのまま落ちていったので、二人に怪我はなかった。
 二人は身体を起こし、窓から下を覗き込む。
 そこには一人の男がこちらを見つめ、笑っていた。闘争心をむき出しにした、獰猛な笑みだ。
 色素が濃い茶髪で、右目が長い前髪で隠れている。服は黒のコートで背中には身の丈より少し大きい刀が帯刀されている。
 男は魁斗達を見上げながら、
「おォい、来てやったぜ、養育係さんよォ。わざわざこんなトコまで追いかけさせやがって、こっちの都合も考えろってんだよ」
 男が呆れた口調で言う。
 レナは窓から飛ぼうとしている。魁斗も外へ出ようと部屋のドアへ向かうが、
「ここにいてください」
 レナの言葉に、魁斗の動きが止まる。
 彼女は明らかに無理している笑顔で魁斗を見ながら、
「すぐに済ませてきますよ」
 窓から飛び降りる。
 彼女は上手く着地し、目の前の茶髪の男を睨みつける。
 男は引き裂いた笑みを刻みながら、
「始めようか、養育係さんよ」
「レナ、レナ・エルミント」
 彼女は小さく自分の名前を相手に伝える。
「しっかりと、名前を覚えてください」


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