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天界の王子-Heavens of Prince-
2
:
竜野 翔太
◆026KW/ll/c
:2012/12/15(土) 23:33:10 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第1話「天界の王子」
一人の少年が夕日で赤く染まる街を全力で走っていた。
黒い髪をツンツンにさせた少年で年齢は十五、六歳程度。恐らくは高校生だろう。その少年は後ろから迫る五人組の不良集団から逃げていた。しかし、少年と不良の距離は一向に縮まらない。
そう、『離れていく』ではなく『縮まらない』。
追われている少年が、一定の距離を保ったまま逃げているからだ。それに、追われてる側はあまり息を切らしていないにも関わらず、追っている側はぜーはーと肩で息をしている。追われている少年は相手に思わず同情してしまう。
少年の名前は切原魁斗(きりはらかいと)。高校一年生だ。彼は生まれつき足が速く、厳密に言えば脚力が非常に高い。五〇メートルのタイムは四秒台だ。しかし、そのタイムを普通に出してしまうと異常に目立つので、大体七秒台になるように加減している。目立つのが、あまり好きではないからだ。
少年、切原魁斗はちらっと後ろを見る。息を切らしながら追いかけてくる不良ご一行を眺めながら、『ごくろーさん』と小さく呟き、
「ここらで給水タイム入るかー?」
「ざけんなコラァ!!」
ちょっとしたジョークのつもりだったが、思い切りキレられてしまった。
きっかけといえば、彼らに絡まれている女子中学生二人組を助けたところからだ。勿論、魁斗としてはその中学生と知り合いではなかったのだが、どうも見捨てる気にはなれなかったらしい。
で、結果がこれだ。
魁斗は脚力は高いが腕力は平均程度しかない。一対一ならまだしも、一度に五人を相手には出来ない。
格好つけて助けたりするんじゃなかった、と逃げてばかりいる自分を哀れに思っていると、目の前にぼーっと佇む少女が目に入る。
彼女はこちらに気付いておらず、ぼんやりと赤い空を眺めていた。
「わわっ!?」
いきなりなので、魁斗もスピードを殺せない。
こっちに気付いた少女が驚いたように目を見開くと同時、
魁斗と少年が勢いよくぶつかった。
お互いに短い悲鳴を上げながら尻餅をつく。
「いてて……あ、おい。大丈夫か?」
魁斗は急いで立ち上がると、ぶつかった少女に声を掛ける。
少女、というには少し大人びた雰囲気の―――『女性』という表現が正しいような人物だ。腰の辺りまで伸びた綺麗な銀髪に、澄み渡った空を連想させるような碧眼。肌は白く、ほっそりとした身体つきの女性だ。年は、魁斗より少し上くらいに見える。
「いえ、大丈夫です。ご心配なく―――」
そこで彼女の言葉が止まる。
魁斗と目が合い、『あなたは』と彼女が新たな言葉を紡ごうとしたその時だった。
倒れた女性を立ち上がらせると、追いかけてきた不良ご一行様に追いつかれてしまった。
うっ、と魁斗が肩をびくっと揺らした。
彼はぎこちない動きで振り返る。不良ご一行様はかなり不機嫌なご様子だ。
魁斗はどうしたもんか、と後ずさりしていると、一人の不良の拳が襲い掛かった。
だが、その拳が魁斗の頬を殴りつけるより早く、銀髪の少女がその拳を受け止めていた。
「―――え?」
声を漏らしたのは魁斗だ。
何故彼女が自分を助けたのか。それが理解出来ていないのだ。
銀髪の少女は、夕方の風に長い銀髪を靡かせながら、
「……この方に殴りかかるとは、いい度胸ですね」
彼女の透き通るような声が響いた直後、男が大きな音を立てて地面に叩き伏せられていた。恐らく背負い投げでもしたのだろうが、魁斗も、他の不良達も全く見えていなかった。
彼女が只者じゃない、と思った不良集団はやられた一人を抱えてそのまま逃げ去っていった。
魁斗がその光景に唖然としていると、ふっと銀髪の女性が彼の目の前に立った。
「あ、ありがとな……えっと、アンタは……?」
彼女は僅かに寂しげな表情を一瞬見せた後、元の締まった表情を浮かべ、
「私はレナと申します。貴方は、切原魁斗……ですよね?」
そうだけど、と魁斗が返す。
直後、レナと名乗った銀髪の女性は驚きの言葉を口にした。
「貴方はこの世界とは別の世界―――天界(てんかい)で生まれた、天界の王の子。―――つまりは、天子(てんし)なのです」
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