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天界の王子-Heavens of Prince-
16
:
竜野 翔太
◆026KW/ll/c
:2013/01/12(土) 15:02:39 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
レナは全てを話した。
魁斗が天界と呼ばれる異世界の住人であったこと。天界の王と妃の間に生まれた天子であること。自分は彼の養育係だということ。彼の中に正体不明の物質『シャイン』という神具(しんぐ)が宿っていること。それを『死を司る人形(デスパペット)』という組織が狙っていること。自分は魁斗を彼らから守るため人間界にやって来たこと。
由魅はレナの言葉を静かに頷いて聞いていた。時たま寂しそうな表情を見せながら由魅はずっと頷いていた。
話し終わったレナが小さく息を吐くと、由魅は小さくそうですか、と返した。
由魅は優しく微笑みながら、レナを真っ直ぐと見つめる。
「ありがとうございます。あの子のために来てくれて」
その言葉にレナは面食らう。
礼を言うべきはこっちのはずなのに。十五年間ずっと魁斗を側で守ってくれたことに、頭を下げるべきなのに。
由魅は続けて言う。
「あの子もきっと嬉しいんだと思います。ずっと兄か姉が欲しいと言ってたから」
「ですが、私は……彼の、カイト様の姉になる資格などありません。……私とカイト様は主従の関係ですから……」
レナの言葉に由魅は笑みを浮かべながら言う。
「その言葉、あの子の前では言わないであげてください。せめて家にいると時だけでいいです。あの子の姉として振舞ってくれませんか?」
「……」
レナは答えることが出来なかった。果たしてそんなことをしていいのだろうか。
だが、彼女は由魅の表情を見て断ることが出来なかった。
そっちの方が魁斗の幸せになるのなら、そっちの方がいいとレナも考えたのだ。
「分かりました。ですが、呼び方は変えませんから」
「ふふ。そうだろうと思いました」
由魅は口元に手を当てて笑った。
レナもつられて笑ってしまう。
その日の夜。
「だから、風呂くらい一人で入るつってんだろ! 何でお前までついてくんだよ!」
「いいじゃないですか。お背中を流すくらいさせてもらっても!」
そういう問題じゃねぇんdなよ、と魁斗はまとわりついてくるレナを引き剥がそうと必死になっている。
多分一緒に入る、と言わなければ離れてくれないだろう。
健全な男子高校生な魁斗としては、年上の女性と一緒に風呂に入るというシチュエーションは耐えられないものなのだ。
いい加減しつこいと思ったのか、魁斗は最終手段として由魅に助けを求めた。
「母さん、何とか言ってくれよ!」
「二人ともちゃんとタオル巻くのよ」
「そこじゃねぇ!!」
切原家の夜は更けていく。
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