したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

CONTROL-コントロール-

20竜野 翔太 ◆026KW/ll/c:2012/12/22(土) 01:55:36 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 4

 てなことがあったわけで、霊介は朝も食べておらず、昼も食堂まで買いに行かなければいけないことになった。遅刻しなかったのは奇跡とでも言うべきか。
 しかし、家に凪一人置いて大丈夫だろうか。流石に非常識な子ではないと思うのだが、なんだかんだで一人にしたらそれなりに危なっかしい気がする。今日は寄り道せずに帰ろう、と霊介は決めた。
 とりあえず、昨夜と今朝のことは涼花と明日香には黙っておこう。涼花はともかくとして、明日香に言ったら都市伝説少女というだけあって、家に押しかけてきそうだ。凪も驚くだろう。日本刀を持った少女が自分に詰め寄ってきたら、凪じゃなくても驚くだろう。
 空腹のまま朝の四時間を乗り切った頃には霊介は机に顔を突っ伏し、食堂まで行く気力もないぐらい憔悴していた。
 そんな霊介を心配そうに見つめ、涼花は彼の頭を優しく撫でる。見かねた明日香が溜息をつきながら、
「金渡せ。買ってきてやる」
 明日香の言葉に、霊介は財布から千円札を取り出しおにぎりを三つ要求した。特に嫌いな食べ物もないので、おにぎりの具は何でもいいのだ。よく嫌われる梅や明太子が三つでもいい。
 お金を受け取った明日香が小走りで教室を出て行くのを見ていた霊介が、再び顔を机に突っ伏せる。
 明日香が帰ってくるまでは食べないでおこう、と弁当のふたを開けず待っている涼花。彼女の視界には、霊介しか映っていない。
 周りには気付かれておらず、明日香だけしか知らないことだが、涼花は霊介に密かに想いを寄せている。中学の頃、霊介と涼花が知り合ったきっかけになったことが原因なのだが。勿論、当の霊介は鈍いので気付くはずもない。涼花にとっては、霊介と二人でいれるこのちょっとした間にも幸せを感じていた。
 程なくして明日香が戻ってきた。彼女が買ってきたのは、昆布、シーチキン、鮭といった霊介の好物の具ばかりだ。さすがに三つ同じものを買ってくる、というのはなかったようだ。
「お前の好みが分からないから好きそうなものを選んできた。不満はないか?」
「ねーよ。ありがとな、刀坂」
 霊介の感謝に、気にするな、と明日香は短く答える。
 ようやく自分の弁当のふたを開けた涼花が、思い出したように口を開いた。
「そういえば霊介。朝校門で待ってる時にさ、蝶(ちょう)ちゃんが霊介に話があるって言ってたよ。放課後職員室に来いだって」
 その名前を聞いたとき、霊介は『げっ』という声を漏らした。
 萩原歌蝶(はぎわらかちょう)。霊介が通う学校の現代文担当の教師だ。背は一五〇センチ前後と小柄で、簡素なシャツに短パン、さらには白衣といったミスマッチな衣装の女教師だ。比較的話しやすい先生で、生徒からは主に『蝶ちゃん』という愛称で呼ばれている。
 それだけ聞けば普通にいい先生なのだが、同僚の先生達でも知らない裏の職業があるらしく、その実態を知っている霊介としてはあまり関わりたくない教師だ。
 今日は現代文の授業がないため、涼花が言伝を頼まれたのだろう。
「……蝶ちゃんからか……嫌な予感がする」
「呼び出されると毎回言ってるよね、その台詞」
「大体合ってるんだもんな。でも、あの人はそんなに悪くないだろ」
 それはそうなんだけど、と曖昧な返事を返す。
 悪い先生ではないし、嫌いな先生でもない。
 ただあの人は少し苦手だ、と霊介は思うのだった。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板