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1竜野 翔太 ◆026KW/ll/c:2012/12/07(金) 22:36:30 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

こんにちは、もしくは初めまして。
いや、ここまで来て初めましてはあるのだろうか、竜野 翔太です。
今回、苗字と名前の間にスペースを空けて、トリップも変更いたしましたのは、心機一転してみようかと。
いやですねぇ、今アップしてるものも、もう一回一からやり直そうかと。そう思った次第でございます(更新を待ってくれていた人はごめんなさい)。

しかし、リメイクするからには、以前よりも良い作品に仕上げていきたいと思います!
ちなみに、これはそれとは別の作品です。
リメイクするのも、四つのうちの三作という形で。

相も変わらず英語なタイトルですが、楽しんでいただければ幸いです!

2竜野 翔太 ◆026KW/ll/c:2012/12/07(金) 23:05:18 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
Prologue -started...-

 東京都。
 人口数日本一を誇る都道府県。そこのある街で、ある話題が持ち上げられていた。学生達の間で。あるいは会社の昼休みの中で。あるいは昼時の主婦達の会話の中で。その噂はどんどんと広まっていき、一種の都市伝説のようなものとなっていっていた。
 その話題を切り出す者が最初に言う言葉は決まっていた。
 『ねえ、繰々師(くくりし)少女って知ってる?』
 その都市伝説の名称は『繰々師少女』。
 まず容姿が目立つらしい。人形を思わせる愛らしい顔立ちに、腰くらいまである黒髪のストレート。前髪はまぶた辺りで切り揃えられている。いわゆるパッツンだ。服装も奇抜で、現在の季節は五月中旬。丁度春の爽やかな暖かさが、梅雨の時期特有のじめっとした蒸し暑い季節に変わる頃。にも関わらず、その少女は首から上の肌を全て隠したようなゴスロリの衣装を身に纏っているらしい。そして、いつも大事そうに、大きなウサギのぬいぐるみを抱えているようだ。
 確かに、そんな少女がいたら都市伝説はともかくとして、十分な噂にはなるだろう。街に人気俳優が歩いていることと同じくらい目を引く。
 しかし、その少女の不思議さは全体の容姿だけではなかった。
 見た目十四歳程度、中学生くらいの少女が昼間に街に出没するのだ。嫌でも目を引く。そのため、大人に声を掛けられることもあるようだ。しかし、その少女は決まって同じ返事をする。
 君は誰、と聞かれれば『私は繰々師』と。
 何を聞いても、その返事以外は返ってこない。それ以外は答える気が無いようだ。
 その少女は何かを探しているように辺りをきょろきょろと見回している。物か、人か、何を探しているかまではわからないが、何かを探している様子だけは伝わっている。
 何を探しているの、と聞かれれば『大切な、物』と答える。
 都市伝説『繰々師少女』はゴスロリ衣装を身に纏い、昼間に現れる。
 少しだけ暑い日差しに照らされながらその少女は何かを探し続ける。

 だが、今回は昼間だけに留まらず、深夜にも現れた。
 『繰々師少女』は夜の街を闊歩している。未成年がこんな深夜に街をうろついていいわけがない。警官達の目を盗みながら、彼女は大きなウサギのぬいぐるみを抱えながら夜の街を走り回る。
 夜の街を彼女は駆け抜けながら、ぽつりと小さく呟く。
 鈴のような高く、幼い女の子らしい可愛らしい声だ。
「―――何処にいるの?」
 彼女のその声は夜空に溶けた。
 夜が明ける。
 走り回って疲れた彼女は、公園のベンチで横になりながら眠ってしまっていた。
 大きなウサギのぬいぐるみを両腕で大切そうに抱えながら、小さな寝息を立てて、心地よさそうに眠っている。

 彼女の、そして街全体の朝が始まる。

3竜野 翔太 ◆026KW/ll/c:2012/12/07(金) 23:37:34 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第一章 噂の少女との邂逅 -boy and girl-

 1
 
 朝だ。
 漠然と少年はそう思った。カーテンを閉めているため、ほんのりと部屋の中に差し込む朝日。その朝を告げる日差しが丁度少年の目を照らしている。はた迷惑な朝日だ、と少年は思いながら目をごしごしと擦る。
 すると部屋のドアの前で中学生らしき少女の声が響く。
「おにーちゃん、朝だよ! 早く起きないと遅刻さんになっちゃうよー! ほら、起きた起きた!」
 言いながら少女はドアを開けてずかずかと上がりこんできた。
 ベッドから上体を起こしたままの少年は、欠伸混じりに返事を返す。お玉を持ったままの少女は、起き立ての少年の服の袖をぐいっと引っ張りながら下の階へと連行していく。そんな強引に連れて行かんでも、という少年の思いは彼女には届いていない。
 リビングのテーブルには二人分の朝食が用意されていた。目玉焼きが乗ったトーストに、小さな器に入った緑色の野菜の中にプチトマトが入ったサラダ。そして白いマグカップにはコーヒーが淹れられている。マグカップの側面に『R』と書かれているが、恐らくは少年のイニシャルだろう。一方で、妹である少女のマグカップの側面には『A』が記されている。
 彼女の名前は澤木亜澄(さわきあすみ)。黒髪を肩にかかるツインテールにしたあどけなさを顔に残した少女だ。縛っている髪を束ねているのはピンク色のゴム。彼女が小学六年生の頃に、少年が誕生日に買ったプレゼントである。意識はしてなかったものの、こうやって自分があげたものをちゃんと使っているのを見ると嬉しい。彼女は黒基調のセーラー服を着ている。恐らく彼女の学校の制服だろう、現在の彼女は中学三年生である。
 一方で、そろそろ暑い季節になってきたためブレザーを着ずに、制服の長い袖を二の腕辺りまで捲っているのが、彼女の兄である澤木霊介(さわきりょうすけ)だ。二人の両親は離婚しており、母方に引き取られた。しかし、二人の生活のために母は仕事で忙しいため、家には二人しかいない時がほとんどである。
 霊介はトーストを食べながらテレビに視線を移す。やっているのは政治系の話題ばかりで、そういうのに疎く、興味の無い彼にはさっぱりの内容だ。
「目玉焼きの黄身ってさ、ぎりぎりまで潰したくないよね! たっぷりの黄身に包まれた白身がおいいくって―――って聞いてる、おにーちゃん?」
「お前はちょっと黙れ。朝くらいゆっくりさせろよ」
「ぶー、おにーちゃんの意地悪。でもさ、そんなにゆっくりさんでいいのかな?」
「は?」
 彼の疑問を解消するように、亜澄が壁に掛けてある時計を、ココアを飲みながら指差す。
 時刻は八時十分。学校の始業時間は八時三十五分。家から学校までは、もうダッシュして十五分前後。
 完全にまずい。
「―――ッ、早く言えよッ!!」
「気付きなよー。もう高校生になって一ヶ月近く経つのにさー。あ、玄関のとこのゴミおねがーい」
 ふざけんな、と叫びながらもしっかりとゴミを持って家を飛び出す霊介。あんなに急いで出かけたくせに朝ごはんをきっちりと食べて行ってくれている。空になった器ににんまりする亜澄。しかし、彼女がふと視線を移した先にあったのは霊介の弁当箱だ。
 お昼ごはんを持って行き忘れた兄に、新婚のサラリーマンか、と思いながら亜澄は肩をすくめ、
「……もう、おにーちゃんってば。仕方ないなあ」
 彼女は彼の弁当箱も鞄の中に入れて登校する。彼女の学校は自転車通学オーケーなので、亜澄は自転車で通っている。彼女の学校から霊介の学校まで、自転車で約二十分。先生にわけを話したら外出させてくれるだろう、こういうときに成績優秀でよかったと思う亜澄であった。
 どうせ昼休みになって弁当がないことに気付くんだろうなー、と思いながら亜澄は学校へと向かう。


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