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朧の光、空の青

4よう魔:2012/12/02(日) 17:58:49 HOST:218.185.141.59.eo.eaccess.ne.jp
 上った先は、いつもの平坦な畳の床ではなかった。
 その部屋に一つだけある窓から見える景色は、いつもと変わらない。この部屋だけが異様な異質さを放っていた。
 白、白、白――城で埋め尽くされたその部屋は、まるで無色の監獄のようだと、亘は感じた。
「なんだよ……ここ」

 右手に握られた御神刀を思わず握りしめる。憎らしさしか抱かなかったはずの刀をもしも持っていなかったら、もしかしたら今自分は恐れをなして逃げていたかもしれない――そう思えるほど、今の亘にとってはこの場所は異様だった。
 ――その時。
「おはようございます。瞬さんの息子さん」
「!?」

 父親の名前をいい当てられ、亘は驚きに伏せていた顔を上げる。
 その視線の先には――少女が居た。
 年恰好は亘と同程度だろうか。彼女は制服の上に、黒いマントのようなものを羽織っていた。恐ろしいほどの美人で、滝のように腰へと流れる黒髪と、高価なサファイアのように青く澄んだ印象的な瞳には、亘だけが映し出されている。
「誰だよお前……?」
「申し遅れました。私はここの当主だった、瓜生木涼葉(うりゅうぎすずは)と申します」
「……当主?当主は父さんじゃないのか?」
「あなたのお父様には魔術は扱えませんでした。ただ、この吉柳家は落ちぶれるには惜しすぎます。だから、私が派遣された」

 淡々と涼しい声で語る美貌の少女に、亘は静かな威圧感を感じた。
「それで?君が居ながらなぜ俺は当主になるんだ?」
「正確には、私と一緒に当主になるのです」
「……え?」
「あなたは私の後釜に据えられたに過ぎないのです」


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