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彷徨い人

11日陰:2012/11/12(月) 12:40:42 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  【第弐話】【思い】

 「――…ウ〜ン………」
 東の家、正式には「灯雷寺(とうらいじ)」。そこの本館で玲羅は唸っていた。目の前には何とも言えぬ大きさの大仏が備えられている。
 「…どうしたのだ、玲羅?」
 本館の麩を開けて、鋼が入ってきた、緑色の着物と、茶色の短い髪は、なんとも似合っている。
 「…ん?…あ、いやぁ、先日、東ちゃんに巫女22代目を継ぐ気はないのかと聞いたら、全くないと言い返されてなぁ。元慶殿からは、無理に東ちゃんを22代目にしなくても、私が22代目になればいいと言っていたのだが、どうもシックリこなくてな…」
 玲羅の長い不満タレタレ文句に、鋼も同じような思いだった。
 「東殿には、巫女の血も陰陽師の血も流れている、男女の差別をなくし、陰陽師と巫女の両を継いでくれれば、我々も万媒材だ。……だが、東殿には全くその気がない。元慶殿からのお言葉でもあれば、場は変わるやもしれぬが………あのセクハラ爺さんは、全くその気がない…」
 「東ちゃんに怪我させたくないんでしょう?生命様と美琴様が他界して、東ちゃんのことを動かせるのはあの人だけだから、無駄に気ぃ使ってんのよ……。だからこそ…」
 玲羅は正座して、少々しびれた足を立たせる。
 「私達をそばに置いてるのよ……いつでも、倒れてこれるように…」
 玲羅はずっと麩のそばにいた鋼と向き合った。鋼も「……承知している」と答えた――。


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