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鈴扇霊

128ピーチ:2013/07/14(日) 07:46:57 HOST:em114-51-10-247.pool.e-mobile.ne.jp







「光陰」
 異界に戻ったばかりの光陰に、鋭い声が突き刺さる。
「なんで、余計なことを言ったの?」
 水月の問いに、光陰は僅かに首を傾け。
 しばらくしてから、あぁと呟いた。
「天音様が、水月のことを勘違いしていたから」
「いいのよ。わざわざ訂正するでもないわ」
 自分の主は彼女だけ。何度その言葉を吐いただろう。
 初めて自分たちを使役と成した初代の時音から、何度も主が代わった。
 そして、それは自分たちにとっての屈辱でもあった。
 ―――あんたの配下に下るくらいなら、私は約定を違(たが)える。
 何度もそう言い、何度もその人間を主としてきた。
 だが、他の同胞とて思っているはずだ。こんな不甲斐ない主があるか、と。
 表に出しているのはごく僅かだが、それでも。
「……大体、光陰は何でこんなにあっさりと主を捨てることができるの?」
 思い入れが強ければ強いほど、困難なことを。
 水月の問いに、光陰が薄く微笑んだ。
「…だって、それが主の願いでしょう?」
 主の願いは自分たちの願でもある。それくらい、水月とて分かっているのだ。
「……でも」
「私は、時音様の仰ったことも夜空様が仰ったことも、同じだと思うわ」
 ただ、言い回しが違うだけ。
「時音様は、ずっと神代に仕えて欲しいって仰ったでしょう?」
 その願いが彼女の口から洩れた瞬間、それは十六将の願いにもなった。
「そして、夜空様だって同じことを仰った」
 孫の天音に仕えてあげて欲しい。娘に仕えてもらうことはできなかったが、せめて未来のある彼女を護って欲しい。
「…………私だって、分かってるわよ」
 どれだけ反発しても、結局は主たる夜空の命に従ってしまうのだ。そして、天音が同じことを言って同じように反発をして、でもやっぱり従って。
 今までどれだけ嫌だといっても、彼女たちは口を揃えて言ったのだ。
 先の短い自分よりも、未来のある彼女を護れ。
 初めのうちは、走った衝撃がなかなか静まらなかった。でも、ひとりふたりと従っていくうちに、反発するのは自分だけになってしまった。
 透き通る薄青(うすあお)の瞳が伏せられる。やはり、自分にできることは主に従い、彼女以上の実力のある術者に、天音を育てること。
「水月」
 水月が視線を投げる。光陰が微笑んだ。
「貴方の心はもう、決まっているでしょう……?」
「……心が決まっていても、簡単には認められないわよ」
 小さく息を吐いて、水月が立ち上がる。
 そのまま、彼女はふっと姿をくらませた。


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