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闇色

28ピーチ:2013/01/03(木) 12:26:05 HOST:EM114-51-137-117.pool.e-mobile.ne.jp
櫻の相談所




「じゃあねー」
「明日なー」
 二つ分の足音が聞こえ、それを聞いた少女が僅かに笑みを浮かべた。
「うん。また明日」
 そう答え、少女が家の中へと入っていく。
「ただいまー」
「おかえりー、早速だけど」
「分かった。着替えてくる」
 彩織(さおり)の言葉に、彼女の母が苦笑した。




「おはよー」
「おはよう」
 そのやり取りを終えてから、いつものように学校までの道を歩き出す。
 そこに。
「ちょっとごめん………っと、待て!?」
 突如として聞こえた声に、彩織たちがぴくっと反応した。そして、条件反射で飛び退く。
「え……?」
「ごめん! ほんとにごめんねっ!?」
 そう言って走り去った少女―――彼女らからすれば先輩だろうが―――は、勢いを止めることなく綺麗に左カーブ。そのまま通常以上の速度で走り去って行った。
「だ、誰? あの人?」
「…確か、先輩じゃ……?」
「……朝っぱらから元気な先輩が居たもんだなー…」
 苦笑気味の沙希(さき)と冬樹(ふゆき)の言葉に。彩織が同じく苦笑する。
「まぁ、色んな人が居るんだよ」




「じゃ、彩織」
「先帰っとくなー」
「うん、ごめんね」
 沙希たちにそう返し、彩織が日直の仕事を終わらせる。
「じゃあ、気を付けて帰ってね」
「はい」
 担任の所まで日誌を届け、そのまま家まで真っ直ぐ帰る。
 ………はず、だったのだが。
「あれ? ひょっとして朝の子?」
「え?」
 振り返ると、そこに朝っぱらから元気に全力疾走していた少女が居た。
「あ…」
「朝はごめんねー、ちょっと急いでて。怪我した子居なかった?」
「あ、はい……」
 彼女のペースに乗せられ、思わず聞かれたことに答えてしまった彩織が、はっと我に返って言った。
「あ、すみません。私急いでるんで……」
 急いで帰らなければ、旅館を手伝えなくなる。
 そんな彩織を引き留め、少女―――神依葉月(かみよりはづき)が言った。
「……急いでるからって、道を聞かれたりしたら気を付けてね?」
「…え?」
「じゃあ、引き留めてごめんねっ! また明日ー」
 そう言ってたっと駆け出した葉月の言葉に疑問を残しつつ、急いでいた彩織はそのまま帰途についた。




「すみません」
「え?」
 唐突に聞こえた声に、彩織が辺りを見回す。
「すみません。道が分からなくなってしまって、少々お時間いただけないでしょうか?」
「あ、はい…」
 どうやら、道に迷ったらしい男が彩織に問う。
「弘道館(こうどうかん)まで行きたいんですけど…」
「あぁ、それなら……」
 彩織が言いかけたとき、ふっと口元に何かが押し当てられた。
 ―――え………っ?
「ん………っ!」
 ―――急いでるからって、道を聞かれたりしたら気を付けてね?
 あの時の彼女の言葉は、こういう意味か。
 でも、なぜあんなことを。
「……………っ…」
 考えるよりも、彩織の意識が遠退く方が、僅かに早かった。


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