したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

邪気眼少女の攻略法。

122心愛:2012/11/04(日) 11:43:08 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
>>ピーチ


生きてるよー!(涙)


素敵な反応をありがとうっ←
そう、夕紀は「自分も男らしくなりたいのになー」って意味で言ってたんです。
前からの発言も、可愛いって言われて嫌がらせたりとか、一人称出さずにしゃべらせたりとか、仕込むのに大変だった( ´∀`)

この手のキャラって最近増えてるし、柚木園くんはちょっとわざとらしすぎるかなーと思ってたんだけどね←


次からは夕紀のターンだぜ!

123ピーチ:2012/11/04(日) 12:23:53 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

生きてたよー!((泣←

素敵な反応なんだねあれが!?

……どーりでくまなく探しても姫宮さんの一人称がわかんなかったわけだ←おい

124心愛:2012/11/04(日) 14:41:29 HOST:proxy10057.docomo.ne.jp
>>ピーチ

探してくれちゃいましたか←

ごめんね(^-^;


日常編、これが最初の山場なんで頑張ります!

性別誤解したまま日常に突入させるわけにはいかぬ←

125ピーチ:2012/11/04(日) 17:22:40 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

探しましたよ←

確かに性別間違えたままだと面倒だw

126心愛:2012/11/04(日) 18:43:17 HOST:proxyag089.docomo.ne.jp




姫宮を安心させるように優しい笑みを浮かべた柚木園、

理解はしたらしいけど微妙にうろたえている美羽、

しっかり聞き耳を立てていて、柚木園を新しい目で、それでも温かく見ていたクラスメイトたちが、


ピシッと氷のように凍りついた。



「……姫、宮?」



「なにー?」



にこにこと屈託なく笑いながら、姫宮はこてんっと首を傾げる。……可愛い。



「うん、大したことじゃないんだ。多分、いや絶対、俺の聞き間違いだと思うんだけど」



俺は『彼女』に、口元をひくつかせた精一杯の笑みをもって問いかける。



「お前、今……自分のこと、男っつったよな?」



「え? うん」



当然のことのように、姫宮。



「それがどうかした?」



「姫宮さん」



フリーズ状態を解除した美羽が腕を伸ばし―――がしっと姫宮の肩を掴んだ。


「ひゃっ……ゆいのん? どうしたの」


「君は正気か?」


「ええっ?」


赤い瞳に異様な迫力を漂わせた美羽に、姫宮はきょとんとした眼差しを向ける。


「しょ、しょーき? だよ?」


「……ふう。失望した。君が冗談なんて高度なテクニックが使えるとは最初から思ってはいなかったが、これはセンスがなさすぎるだろう」


「え、……?」


ぽかんと口を開ける姫宮に、柚木園もふうっとため息をついた。


「美羽の言う通りだよ姫宮さん。ジョークにしても無理があるって」


「ま、待って」


姫宮はサラサラのショートヘアを揺らし、



「ま、まさかみんな、僕のこと女の子だと思ってたのっ!?」



「事実だろ」



「違うもん!」



大きな紅茶色の瞳をうるうるっとさせて。



「僕は男だよっ!」



ぐっと両の拳を握って主張する。

その表情は真剣そのもので、教室中がにわかにざわめき出す。



「……姫、なに言ってんの」


「姫宮男の娘(こ)説……? や、ないってどっからどう見ても女子だって」


「でもマジっぽくね」


「じゃああれじゃん、性同一性障――」


『それだ』



「ちーがーうー! 僕は正真正銘男なんだってばー!」



腕をぶんぶん振り回す姫宮。


「にしてもクラスに二人も僕っ娘(こ)って……。漫画でもないだろ、世も末だな」


「良く分かんないけどヒナが僕のこと信じてないってことだけは分かったよ!」


姫宮は憤慨した様子で、自分の鞄を漁って生徒手帳を取り出し、俺たちに突きつけた。



「ほら! ちゃんと男ってなってるでしょっ」



生徒手帳に付いたビニールカバーの中に、学生証が挟んである。

学校名や名前、生年月日などが記されたそれには姫宮の言葉通り、性別の欄に『男』とマルが付いていて。

柚木園が眉を寄せた。



「これは……ひどい間違いだね。先生に言った方がいいんじゃない?」



「確かにひどいな。嫌がらせとしか思えない」



「早く直してもらえよ」



「ひどいのはみんなだよ―――っ!」



姫宮の絶叫に、みんなして耳を押さえた。



「ひ、姫宮? 落ち着けって、落ち着いて話し合おう。な?」



「変に優しい目で見ないでっ! ……あーもう! 分かったよ!」



目にいっぱいの涙を溜め、姫宮はふるっと震えながら長袖のTシャツに手を掛ける。



「……恥ずかしいけど……今から証拠、見せるからっ」



「姫宮さんっ? なにをっ」



ぐっと瞼を閉じ、頬を火照らせた姫宮が、柚木園の声も聞かずにシャツの裾を上へ引っ張り上げた。



『きゃ――――――!!?』


男女関係なく上がった本気のスクリームが教室に響き渡ると同時、



「わ、分かった! 認める、認めるからやめろ!」



「……ほんとに?」



白い腹が見えた瞬間、俺は心からの恐怖を覚えて叫んだ。


姫宮は疑わしげながらも一応手を止めてくれる。



「ほ、ほんとだって! なあ柚木園っ」



「そ、そうだね! そこまで言うのならそうなんじゃないかな! そうだよね、美羽っ」



「あ、ああ! 何の躊躇もないということは、やはり姫宮さんはお………おと…………」



「やっぱり疑ってるぅー!」



言いかけながら視線を泳がせた美羽を見て、姫宮がだばーっと涙を流した。

127ピーチ:2012/11/05(月) 18:21:58 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

嘘だろおい―――!?

まさかのゆきちゃん(君?)信じてもらえてない!?

…………うん、フツーに女だと思うよね、普通は←

128心愛:2012/11/05(月) 19:16:11 HOST:proxy10046.docomo.ne.jp
>>ピーチ

夕紀は、まだ『ゆうき』だったら男っぽかったのにねw

なんとでも呼んでやって\(^o^)/

129心愛:2012/11/05(月) 19:17:56 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp






「……う……僕がもっと男らしかったら、こんなことにならないのに……」



落ち込んだようにしょんぼりとうなだれ、すんすん鼻をすする姫宮を見ていたら、なんだか罪悪感が込み上げてくる。

それは美羽も同じみたいで、



「わ、悪かった。人は見た目よりも中身だと言うしな。容姿だけで判断するのは少々軽率だった、反省するよ」



「分かってくれるの? ゆいのんっ」



「……う、うん……まあ……」



「良かったー」



うるうる潤んだ瞳で見つめられ、美羽が早速言葉に詰まっていた。


見た目だけじゃなくて中身だって女子っぽいんじゃ……。


毒々しい美羽とは対照的な正統派美少女だと思っていた姫宮がまさか男だったなんて、やっぱりすぐには信じられない。


でも、美羽も言ってたように、恥ずかしそうにしながらも躊躇なく上を脱ごうとするんだから、本人の言い分通り、男、なんだろう。
……信じられないけど。



「はー。こんなに女の子っぽいから“姫”とか呼ばれちゃうんだよねー……。こっそり筋トレとか頑張ってるんだけど、全然筋肉つかないんだよなぁ……」


「多分一生む……じゃなくて。ひ、姫宮さん、無理は良くないよ。お願いだからずっと可愛いままでいて、ね?」


「柚木園くんひどい! 可愛くなんかないもん!」


「しかし、“姫”というあだ名がぴったりくる男子というのもすごいものだな……」


「全然ぴったりこないよ! あれは同中の子が面白がって言ってるだけだし。それに柚木園くんだって、ほんとは女の子なのに“王子”って呼ばれ、て………あ、あれ、もしかして、あの取り巻きの子たちは……」


「そういや、まさか女だって知らなかったりしないよな?」


「ううん、中学のときからの友達だから。違うクラスなんだけどね。みんな知ってるよ、安心して」


「あ、あれは友達だったのか……」



ようやく話が和やかになってきたところで、



「そうだ! 柚木園くんのこと、これからなんて呼べばいいかな? くん付けはやだよね?」



姫宮が笑顔で、こう切り出した。



「え? いつもそうだし、私は別に」



「んー、柚木園さん、もなんか今更やだなぁ」



柚木園の声も聞かず、姫宮が『んー』と考え込む。



「じゃあ……下の名前、なんて言うの?」



そこで柚木園は、何故かピシーンッと硬直した。



「……あ、あのね? えーと、名前はちょっと、あんまり気に入ってないというか、嫌いというかだから、その、困るというか……」



しどろもどろに言葉尻を濁す柚木園。


「そういえば知らないな」


「君はただの人間の分際でぼくの高貴なる名を呼んでいるのだから、これは不公平というものだろう」


「え、ええ……っと」


「格好いい系だろ、男でも女でも通用しそうなやつ」


「あのー……」


「? どうかしたのか」



美羽に聞かれ、柚木園は困り切ったように。



「わ、私の名前って、ちょっと変だから。名前で呼んでほしくはないかな」



……名前が変……って、DQNネームみたいなのだろうか。



「そんなの気にすんなって、良いから言ってみろよ」



「そうだよー! どうしても嫌なら無理には呼ばないから! でも隠すことはないと思うなー」



「……そ、そう……か、な」



それでも柚木園は迷うみたいに下を向いてたっぷり時間をかけてから、諦めたみたいに消え入りそうな声音で、小さく囁くように言った。




「…………………まいか」




『……へ?』



「だっ……だから『まいか』だよっ! 苺の花って書いて『苺花』! ……ぜ、絶対呼ばないでよ、似合わないの気にしてるんだからっ」

130心愛:2012/11/05(月) 19:19:20 HOST:proxy10007.docomo.ne.jp






まいか。

柚木園、苺花。



……な、なんていうか……。



「『苺花』? わぁ、すっごく可愛い名前だねっ!」



「………………」



「姫宮さん! 余計なことを言うんじゃない!」



一瞬で真っ赤に茹で上がり、ふらふらとよろめいた柚木園を、足をぷるぷる踏ん張って支えながら美羽が怒鳴る。


……確かにイケメンバージョンでは似合わないことこの上ないけど。



「や、やめて姫宮さん……! ほんとにコンプレックスなんだよその名前……っ」



こうやって赤面して顔を片手で覆い、弱り切ってるとこなんかは……その名前通り、ちょっと可愛い、かもしれない。



「わ、私の顔を見てからこんな名前を付けた両親の気が知れない……。可愛く女の子らしく育ってほしかったからっていう軽い気持ちだったらしいけど、こんな風になっちゃった今ではただのイジメだよこれは……」



ずーんと暗い表情でぶつぶつ呟く柚木園に、姫宮は小首を傾げ、にっこりと笑った。




「―――じゃあ、『まいちゃん』って呼ぶね?」




「かはっ」



「柚木園ぉお―――ッ!?」



可愛すぎる笑顔と可愛すぎる呼称にザックリ見事な袈裟(けさ)切りを見舞われ、ダメージを受けた柚木園が血を吐くように膝から崩れ落ちた。



「む、むごい……っ」



「人の心を抉る天才かもしれないな……」



戦慄の表情の俺たちと、床にうずくまった柚木園を見て、姫宮が不思議そうに瞬く。



「どうしたの? まいちゃん」



「ぅ……うく……っ」



柚木園は壁に手を付いてよろよろと立ち上がり、眦(まなじり)にうっすら涙を残したまま、びしっと姫宮を指差した。




「あ……あああもうっ! こうなったら私だって、……私だって姫宮さんのこと、『夕紀』って呼んでやるから!」




「わーい!」



まるでなんの解決にもなっていない台詞を苦しげに柚木園が吐き捨て、それに姫宮が心から楽しそうににこにこしている。



そんな応酬を見ていたら、



「嗚呼……風が……泣いている……」



「現実逃避すんな!」



ずるい!



一人遠い目で窓の外を見つめていた美羽が、ふっと力なく笑う。



「なあヒナ。これは夢なんじゃないか? 目が覚めれば何もなかったことに」



「ならないよ。現実見ろよ」



「それとも、ぼくたちが騙されていて、彼らに揃ってからかわれているだけだったりしないか?」



……そうだったらどんだけ良いことか。




「ねーねーまいちゃん! 今日の四時間目の授業って何だったっけ」



「知らないよ! 自分で調べなよ!」



「だってまいちゃんしっかりしてるんだもん」



「……ね、ねえ、やっぱりやめない? それ」



「やだよー。可愛いからいいじゃん」



「………っ、…………数学」



「数学かー! ありがとまいちゃん!」



耳まで赤くなって無駄な色香を撒き散らしているイケメンの“王子”が女で、



邪気0パーセントの笑顔がどうしようもなく可愛い完全美少女の“姫”が男で。



「なあ美羽、性別ってなんだっけ……?」



「ぼくだって訊きたいよ……」



俺と美羽は、揃って苦々しく嘆息した。

131ピーチ:2012/11/05(月) 19:39:57 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

性別……確かにこれ見てると聞きたくなる気がする…←

ヒナさん&美羽ちゃんの言うことも納得できるよ安心して!←何の?

132心愛:2012/11/05(月) 21:02:36 HOST:proxyag070.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、ありがとう!(笑)


…そんなわけで苺花さん←
苺花はちゃんと女っぽい格好すればすごい美人さんになるだろう、残念なイケメンガールでございます(≧∀≦)
いつか、苺花と夕紀主役の話を書きたいんだけどいつになることか…。


どこからどこまでが天然なのかよく分からん夕紀と、意外と打たれ弱いとこがある苺花。

実はヒナと美羽よりも歴史がある二人ですので、末永くお付き合いください!

少しでも好きになってもらえるように頑張ります!



もうちょいしたらキャラ紹介まとめとかやろうと思います←

133ピーチ:2012/11/06(火) 06:42:09 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

苺花ちゃん……ちょっと女の子らしくしてみたら?

絶対可愛くなるから!←

……夕紀君は……ショートカットでも女の子に見えるわけだから………

134心愛:2012/11/06(火) 17:57:15 HOST:proxyag083.docomo.ne.jp
>>ピーチ

苺花の女装(ぇ)回はそのうちw
でも自分からは絶対やらないだろうから、今後の周りからの焚き付けに期待?←

夕紀は無理だね、うん。
あきらめてもらおう☆




それから、とりあえず自分のやつは置いといて、なっがっらっくっお待たせしまくったコラボに手を付けようと思います!

…ほんとごめんごめんなさい許して下さい(土下座

お詫びとも言えませんが、今までのぶん集中して更新頑張るから…!

135ピーチ:2012/11/06(火) 22:47:51 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

まさかの女装!?

………夕紀君、諦めるの?

こっらぼー!←

いやいや、全然いいよ! ここにゃんの小説だったらどれでも面白いし!←

136心愛:2012/11/06(火) 23:14:04 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ


夕紀は見た目は女の子のままだろうだけど、かっこいいとこもちゃんと作れたらいいな…←


ピーチ優しすぐる…っ(;O;)
ありがとう、でもコラボの方すぐに更新しますので!

137ピーチ:2012/11/07(水) 20:06:22 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

夕紀君、ちゃーんとかっこいいとこあるよね! ね!←催促するな

全然優しくないよー!

あ、最初だけだけど鈴扇霊の方も新しいの更新したから参考になるかも←

138心愛:2012/11/07(水) 21:15:20 HOST:proxy10041.docomo.ne.jp
>>ピーチ

夕紀がかっこよくなってくれるのはいつになることやらw

鈴扇霊、リニューアルバージョンかあ←
参考にさせてもらいます(*´д`*)

139心愛:2012/11/16(金) 21:16:22 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp
夕紀と苺花のネタばらしが終わったところで、とりあえず悪ノリに乗りまくったキャラ紹介をば。
これからもキャラはいっぱい増えていきますが、ここまで詳しくやるかは分からないです←

というか、このペースで話がちゃんと終わるか心配だ…( ̄〜 ̄)

140心愛:2012/11/16(金) 21:17:25 HOST:proxy10059.docomo.ne.jp
☆*:;;;;;:*☆*:;;;;;:*☆




Character File No.1


日永圭(ひなが けい)


♂* 15old
173㎝



11組所属

小、中学校とあまり良い思い出がなく、高校デビューを目指して南高に入学。

幼い頃に美羽と出会い、一目惚れするが再会した彼女は末期中二病患者になっていたという哀れすぎる運命を背負ってしまった。

結構ヲタが入っていて、必死に隠してはいるがちょいエロラブコメが好き。

一人称俺、通称ヒナ。

中学生の妹がいる。



looks*
くしゃっとした感じの色素が薄い猫っ毛以外は至って普通。
中肉中背で、顔はすごく良いわけでもないが悪くもない。
『良く見たら結構イケる?』みたいな典型的主人公フェイス。


character*
基本は穏和で常識人なお人好し。
争い事は好まないが、周りの人間が人間なのでツッコミと気苦労が絶えないご様子。
何事もこつこつ少しずつやる努力家。
あんまり特徴がないのでモブキャラ扱いされることもしばしば。


like*
カレー、ポテチ、漫画、ラノベ、ゲーム、小動物、寝ること、英語、ロングヘアの清楚系美少女、ツンデレキャラ、美羽


dislike*
数学、無視、クソゲー、表紙買いで失敗すること、ヤンデレキャラ、ケンカ、納豆


data*
高校入学後、「王子にラブレター渡して!」と頼まれた回数 13回(日々更新中)

高校入学後、「姫に本当に彼氏いないか確かめてくれ!」と頼まれた回数 34回(日々更新中、夕紀の事情を知らない人には毎回律儀に誤解を解いてやっている)

中学時代クラスメイトと会話した回数 5回

所持している漫画及びラノベの数 517冊


sample voice*

「……なあ、俺の高校生活ってこれでいいの? そこんとこどうなの?」

「天パ言うな!」




☆*:;;;;;:*☆*:;;;;;:*☆




Character File No.2


結野美羽(ゆいの みう)


♀* 15old
145㎝



11組所属

絶賛邪気眼発症中の貧弱お嬢様。

魔術組織《純血の薔薇(Crimson)》の一級魔女で吸血姫(ヴァンパイア)、ミウ=黎(ローデシア)=リルフィーユ、という設定らしい。

意思が強く、“理想の自分”であるためには努力を欠かさないという一面も。

ヒナを眷属とし、それを理由に何かにつけてこき使っている。

一人称ぼく。

一学年上に姉がいる。


looks*
腰までの黒髪ストレートの美少女。
黒い瞳だが赤のカラコンを愛用。
ほぼいつもゴスロリ姿。
スリーサイズは子供体型。


character*
痛々しい設定になりきり、クールにカッコよく振る舞うよう努力しているが、単純なためすぐに作ったキャラが崩壊する。
独特の優しさを持つが、他人に指摘されるとキレる。

色々と不器用で、常に空回りしがち。

負けず嫌いで低血圧、偏食家。


like*
邪気眼系のアニメとか漫画や小説、ゴスロリ、フリル、レース、ネサフ、甘いもの、猫、国語、黒


dislike*
リア充、スイーツ(笑)、ビッチ、荒らし、数学、体育、早起き、食事、誰かから強制されること全般、苦いもの、辛いもの、しょっぱいもの、酸っぱいもの、炭酸飲料


data*
一日のネット利用時間 約5時間

持っているゴスロリの数 部屋ひとつ分

マンガ喫茶に一人で入ろうとして「小学生が入っちゃダメでしょ」と止められた回数 7回
(顔を上げて無言で店員を睨みつけることで全て解決)



sample voice*

「く……紅き月の光を浴びると、ぼくの血が生贄を欲して騒ぎ出す……っ」

「こ、こ、恋? いや、ぼくはそんな、わ、分かっ……」




☆*:;;;;;:*☆*:;;;;;:*☆

141ピーチ:2012/11/16(金) 22:07:40 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

ヒナさん、色んな意味でパシリだね……

美羽ちゃんかっわいいー!! …小学生と間違われるって、よっぽどだよね…

142心愛:2012/11/16(金) 23:39:25 HOST:proxy10032.docomo.ne.jp
>>ピーチ

…うん。ヒナは良いようにパシられる子なんだ…(´ー`)

美羽は身長・体格は完全小学生だけど別に童顔ではないつもり←
小学生だったらゴスロリも許され……る、か?(~_~;)
非行少女っぽいなw

143ピーチ:2012/11/17(土) 08:16:31 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

…哀れだねヒナさん…

あ、てっきり童顔だと思ってた…美羽ちゃんに怒られそー←おい

144心愛:2012/11/17(土) 15:30:37 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
>>ピーチ

「こっ……子供扱いするんじゃないっ! ぼくはれっきとした高校せ……じ、じゃなくて偉大なる吸血姫(ヴァンパイア)だ!」

みたいな?←
美羽は子供っぽいけどね( ´∀`)

145ピーチ:2012/11/17(土) 18:34:03 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

やっぱり高校生だー! 自分で言いかけたー!←うるさい

でもそれが可愛いw

146心愛:2012/11/17(土) 20:20:58 HOST:proxyag072.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとう!
中二病で空回ってる女の子は可愛いんだ!と信じてるここあなんで嬉しいです←

ここあのキャラは結構暗い過去があったりなので、空牙しかりミレーユしかり、ソフィアしかり暗殺者組しかりでヒナを始めとして美羽と苺花もそれなりに傷抱えちゃってます(/_・、)
でもそれを乗り越えてこそだぜ!

というわけで、こっちもそろそろ更新再開するかも?←
ピーチも無理せず見守っててください!テストは大事だよ人のこと言えた義理じゃないけど!

147ピーチ:2012/11/17(土) 22:02:14 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

可愛いーw←

よくよく考えてみれば確かに凄かった!

……今思ったんだけど、ミレーユちゃんと天音が毒舌勝負ってなったらどっちが勝つと思う?

いや別にスルーおっけだよ!←

148心愛:2012/11/18(日) 11:03:33 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp
>>ピーチ

…そんな恐ろしいことになったら空牙が疲労で死にそうだな……。


んー、罵倒のバリエーションとしてはミレーユ、容赦のなさでは天音ちゃんに軍配が上がりそうw

149ピーチ:2012/11/18(日) 11:15:24 HOST:nptka204.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

確かに! でも何気にやってみたいかも←おい

空牙君のことだけが心配だけどね!

150心愛:2012/11/18(日) 15:20:41 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
>>ピーチ

地獄絵図だね☆
そのときは頑張ってくれw

151心愛:2012/11/18(日) 15:21:28 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
☆*:;;;;;:*☆*:;;;;;:*☆




Character File No.3


姫宮夕紀(ひめみや ゆき)


♂* 15old
165㎝



11組所属

本人は嫌がっているが、そのあまりの可愛さ、優しさから“姫”と呼ばれる。
会員オール男のファンクラブがあるとかないとか。

男らしくなれるよう日々筋トレを欠かさないが、趣味が手芸という時点で色々無理だと思う。


将来の夢は看護師。ナースナース。

一人称僕。



looks*
栗色の髪に紅茶色の瞳の清純系美少女……ではなく非常に残念ながら美少年。
私服通学だが、たとえ学ランを着たとしても「男装した恐ろしく可愛い女子」にしか見えない。


character*
今時珍しいほどのピュアっ子。
心根は極めて純粋で優しい。
気配りはできる方だが、たまに空気読まない天然発言をぶちかます。

何故か特に苺花を気に入っており、悪気はないものの「可愛い」発言を繰り返しては怒られている。

信条は『みんな友達』。


like*
友達、ホットケーキ、手芸、ミルクティー、うさぎ、甘いもの、数学、映画鑑賞、苺花


dislike*
可愛いと言われること、女の子に間違えられること、にんじん、セロリ


data*

中学時代、男に告白された回数 217回 (同じ相手も含む、大抵は気づかずスルー)

裏で密かに取引が成立され、校内で出回っている丸秘写真の枚数 44枚(着替え中のものなど完全に盗撮。レアなため超高値で売れる)


sample voice*

「姫って呼ばないで! ねえ、僕は男なんだよっ? 分かってるよね、ね?」

「まいちゃんって可愛いよねー」





☆*:;;;;;:*☆*:;;;;;:*☆




Character File No.4


柚木園苺花(ゆきぞの まいか)


♀* 16old
172㎝


11組所属



勉強全般、家事全般得意で運動神経抜群。

女の子大好きでナチュラルに口説く。

アホかというくらいモテまくり(女に)で、通称王子。

家では親に代わって弟妹の世話に明け暮れる面倒見の良いお姉さんだったり。

一人称私。


looks*
黒髪ショート、黒い瞳で長身。
モデルかホストかという危険な香りのするパーフェクトイケメン、でも女子。


character*
困っている女の子は放っておけないフェミニスト(ただし本人も女)。むしろ困ってなくても放っておけない。
信条は『可愛いは正義』。
他人に優しく、自分に厳しい完璧主義者。

意外と打たれ弱く、自分の容姿に合わない名前を気にしている。
涙もろいところもあり、そういう面ではこの作品で一番乙女かもしれない。


like*
友達、女の子、家族、可愛いもの、パスタ、コーヒー、節約、料理、世界史、体育、格好良いと褒められること


dislike*
自分の名前、浪費、グリーンピース、虫、怪談、ライバル視されること


data*

中学時代、ラブレターの入れられすぎで靴箱が壊れた回数 6回

去年のバレンタインチョコの獲得数 164個(学校中の女子がこぞって押し掛けるのでちょっとしたお祭り状態に)

男に「弟子にしてください」と頼まれた回数 9回


sample voice*

「どうしたの、可愛い君。そうだね……キスしたら、泣きやんでくれるかな」

「はあっ!? 私がっ? 全然これっぽっちも可愛い要素なんかないしってちょっと聞いてる!?」



☆*:;;;;;:*☆*:;;;;;:*☆

152心愛:2012/11/18(日) 20:13:28 HOST:proxyag113.docomo.ne.jp

※この作品は徹頭徹尾完全にフィクションです。

「こんな奴いねーよ!」というツッコミはなしでお願い致します(キリッ


……今時ラブレター書く人なんているのかな……?




整理がつきましたところで、次から本編に戻ります(´ー`)
ヒナの妹が初登場ですー(・∀・)

153ピーチ:2012/11/18(日) 20:33:48 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

ヒナさんの妹ー!!

ここにゃんのキャラってさ、居そうで居ない人達だよね←

……ラブレター、どーなんだろ…

154心愛:2012/11/18(日) 21:31:32 HOST:proxy10062.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、それ狙ってるんだw
フツーじゃ物足りないからついキャラ濃くしちゃうんだよねー…


ヒナの妹もなかなかすごいぞ!↓

155心愛:2012/11/18(日) 21:32:12 HOST:proxy10061.docomo.ne.jp

『妹』






「……ただいまー」



玄関で靴を脱ぎ、そのまま二階にある自分の部屋に向かう。


階段を上りながらぶつぶつと独り言を漏らした。



「先生が言うまで気づかなかった俺も俺だけど。美羽の奴、勝手に上靴の代わりに自分の靴持ち込んでんじゃねーよ……。当然のごとく俺まで巻き込まれたし」



南高は私服通学だが、もちろん学校の中で履く上靴は指定のもの。

そういや確かに、入学式の日から教室で堂々と黒い靴履いてたような気もするけど、気づいた人はどれだけいるのだろう。

何故か「ヒナ! 眷属たる者、主の危機に立ち会わないでどうするというんだ、こっちに来い!」なんて言われて、なにが危機だ完っ全にお前の自業自得だろうがぁああああああと突っ込みたいのも必死に我慢して、放課後担任の説教に付き合わされること早一時間。


……こんなときは漫画なりラノベなりゲームなり、二次元の世界に籠もるのが一番だ。

ビバ現実逃避。




「はー……あ?」




「おかえりー」




部屋のドアを開けると、ベッドに寝転がっていた少女が振り返ってひらひらと手を振った。



―――……俺のエロ本を読みながら。



「ぎゃあああああああ!? ちょ、待てそれは女子供が読んでいいブツじゃない! 返せ! 返せこのバカ! 変態!」



「んー、お兄ちゃんちょっと趣味変わった? 同人誌ばっかなのは相変わらずだけど、SMに強姦モノにー……でも妹萌えも近親相姦モノもないのかーつまんなーい」



「申し訳御座いませんでした誠にお手数ながらそちらの本を返して戴けませんでしょうか彩(あや)様」



俺、土下座。

それは健全な女子中学生が発する台詞として大いに間違っているぞ我が妹よ……!



んーしょーがないなー、とにまにま笑う彼女。


色素が薄めの柔らかな猫っ毛に同色の瞳、そこそこ整った造作。


可憐な容姿もさることか、至る所に隠した俺の秘蔵コレクションを勝手に発掘するのが趣味の逆セクハラ女。


非常に残念ながら、これが俺の妹です……。



「そうそう、これは学習机の上から二番目の引き出しにある歴史の資料集に挟んであったやつなんだけど、この前お母さんも『あれはちょっと圭には早いんじゃないかしら』って言ってたよ。
………………お兄ちゃん、自殺するのはいいけどお兄ちゃんが死んだら彩がエロ漫画もエロゲーもタイトル全部リストアップしていろんな人に情報提供しちゃうからね?」



はっ!


あ、危ない、身体的にも精神的にも社会的にも死ぬところだった……!


今にも窓枠に足を掛けて爽やかな青空にダイブしようとしていた俺はその寸前で我に返り、俺のベッドでぐでーんとしている彩の前の床に正座する。



「お兄ちゃんほんとツンデレ好きだよねー。彩も好きだよ」



「男のだろ」



「まあねー。ツンデレ最高。鬼畜攻め×ツンデレ受けマジ王道」



「黙れ汚女」



「さあってと、お兄ちゃんをBLに目覚めさせる第一段階として、コレを使ってより詳しい性癖のチェックを」



「腐海に帰れ!」



「それともこっちの漫画のセリフ朗読してあげよか」



「結構ですやめろやめて下さい」



「そこは喜んでよー」



「嫌だよ!」



俺の心休まる時間は自分の家にもないのかっ?

156心愛:2012/11/18(日) 21:33:51 HOST:proxy10059.docomo.ne.jp






当然のように居座る気満々の彩はごろんごろんと左右に寝転がりながら、



「それでー? 今日は学校でなんかあった?」



「スカートでごろごろすんなパンツ見える。……なんかってなんだよ」



「決まってるじゃーん。柚木園さんとか姫宮さんとかー、あとは愛しの“ミウ”さんとのことだよ」



「……うぜー」



顔をしかめる俺にも構わず、彩は頬杖をついてにこにこする。



「あー会ってみたいなー! お兄ちゃんの初恋・リアル僕っ娘(こ)中二病美少女美羽さん! しかも姫宮さんは男の娘で、柚木園さんはイケメンの女の人なんでしょーっ? 彩的にはお兄ちゃんは受けだと思うんだけど姫宮さんとだったら攻めでも全然アリだしっ、柚木園さんは男体化すればイケるイケる」



「イケねーよ。話でしか聞いたことない人のダチで妄想すんな腐女子」



「ふっ、甘いな。いくら妄想しようが陵辱しようが、それが脳内での出来事である限り罪には問われないのだよ!」



「開き直んな!」



ものすごくイイ笑顔でビシッと親指を立てる彩。



「ほれほれ、そんな可愛い妹の妄想材料提供タイムだぞ? ムフフなエピソード期待! さあ吐け」



「お前のどこが可愛い妹なんだよ図々しい!」



「かっ勘違いしないでよね! 別にお兄ちゃんのことなんて好きじゃないんだからねっ!」



「ツンデレなら可愛いってもんじゃないからな!?」



「かっ勘違いしないでよね! 別にお兄ちゃんのこの本をリビングのテーブルに置いて来たりなんてしないんだからねっ!」



「脅迫やめろ!」



「ところでイケるってよく考えるとエロくない?」



「いきなり真顔で何言い出しちゃってんですかこの子はぁ―――!?」



連続ツッコミに疲れてぜーぜーと肩で息をする俺を見て、彩は「にゃはは」と変な声で笑う。



「お兄ちゃんは楽しーなー」



「俺はまったく楽しくないんですがねえ!?」



「あはは」



「笑い事じゃないし!」



「それでー? 今日の話、いーかげんこの彩ちゃんに大人しく教えなさいな」



「………はぁ」



俺はなんかもう色々諦めて。


彩の言う通り、ゆっくりと今日の出来事を話し始める。


もともと、分かりやすく説明することは得意じゃない。


俺の下手な話を第三者が聞いたって楽しいはずもないんだけど。


たどたどしく言葉を選んでいくその間中、彩は俺の枕に顎を乗っけて嬉しそうに目を細め、ハイソックスに包まれた足をぱたぱたさせていた。



「――……はい終わり。これで満足?」



「ん!」



こくんっと頷いて。



それから彩は―――ひどく優しくて、淡い微笑みを浮かべた。




「……ほんとに良かったね、お兄ちゃん」




くすっと笑う。



「…………」



「お兄ちゃん、高校入ってから毎日すっごく楽しそうで……。今までと全然違うんだもん。彩、お兄ちゃんの『友達』に……皆さんに、お礼言いたいくらい」



……分かってる。


彩がふざけながらも、こんなにもしつこく俺の話を聞きたがるのは―――俺のことを、本当に心配しているからだってことも。


小学校、中学校のとき、毎日暗い顔で帰宅していた俺を、こいつはずっと、ずっと……見てきていて。



―――俺に『友達』と呼べる人間ができたことを、心から喜んでいるからだってことも。



「……ブラコン」



「へっへーん」



照れ隠しにぼそっと憎まれ口を叩いたら、彩はいつも通りのへらへらした笑みで、得意げに胸を反らした。

157ピーチ:2012/11/20(火) 06:48:27 HOST:nptka201.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

彩ちゃん可愛い←

可愛いだけじゃなくて優しい!

158心愛:2012/11/20(火) 12:19:31 HOST:proxyag062.docomo.ne.jp
>>ピーチ

彩は動かしやすいわw


ありがとうー!
ここあキャラの特徴をばっちり押さえちゃってる彩さんです←
そしてヒナは妹にまでいじめられてますw
でも愛ゆえなんだ!がんばれヒナ!

159名無しさん:2012/11/20(火) 21:31:55 HOST:EM114-51-219-252.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

動かしやすいんだ彩ちゃんww

ヒナさん…妹にまでって←

まぁ、愛があるからだけどね!←

160心愛:2012/11/21(水) 22:40:11 HOST:proxyag088.docomo.ne.jp
>>ピーチ

彩はここあの趣味丸出しだからね…。むしろ分身?

ちなみにヒナは彩の前だとヲタっぽさに磨きがかかるよ←

161心愛:2012/11/21(水) 22:49:00 HOST:proxyag088.docomo.ne.jp





と、寝転がっていた彩が、急に「あれっ?」と跳ね起きた。



「今何時?」



「六時ちょい」



「あ、なんだぁ。じゃあレンオー始まるまでには余裕あるなー。暇ー」



「またアニメかよ。勉強すれば?」



「やだー」



……だから成績悪いんだよこの愚妹は……。



「今のうちから頑張っとかないと来年泣くぞ。受験だろ」



「彩勉強嫌いだもん。どーせ頭良いお兄ちゃんには分からないですー」



ぷーっと頬を膨らませる彩。



「そりゃ俺だって嫌いだって、でも」



「そうそう、レンオーってね」



「話逸らすなっての」




「―――美羽さんの設定にかなり似てるキャラがいるんだよ?」




「そこんとこkwsk」



「……お兄ちゃんって分かりやすいよね……」



ほっとけ。



にししっと彩は意味不明な声を立ててから、



「レンオーっていうのは『煉獄のAurora(オーロラ)』の略ね。異能バトル中心のいわゆる邪気眼アニメ」



邪気眼……。



「魔力とかヴァンパイアとか出てくる?」



「出てくる出てくる」



部屋にあったノートパソコンをひょいと立ち上げ、カチカチ操作する彩。



「そのヒロインがー……んーと、これこれ」



しばらくして、画面に表示されたのはゴスロリ姿の美少女キャラの画像だった。


銀髪に紅(あか)い瞳、つんと澄ました顔。



「シルヴィア=ファローズ。吸血姫(ヴァンパイア)で、冥界最強の異能《赫き煉獄の宴(ローゼン・クランツ)》の所持者。一人称は『ぼく』ね」



「……ほ、ほう……」



髪の色は違うものの……やべえ、超そっくり。


小さそうな背丈も細っこい体つきも、目の色も服装も、雰囲気も。美羽をそのままアニメキャラにしたみたいに生き写しだ。


……否定してたけど、あの格好はやっぱりコスプレなんじゃ。



「……で、何してんの」



「んー?」



考えているうちに、彩はそのままカーソルを動かし、ゴスロリ娘の画像から、黒髪のイケメンと金髪の美青年のイラストに変えて「はふぅ」と満足そうに息をついた。



「でも彩はやっぱり悪魔×ダークエルフの思わせぶりな関係がBLすぎてwktkだからそっち目当てなんだけどね!」



「日本語でおk」



「鬼畜攻めには健気受けもいーよねー。誰か公式でアレユリのBLゲー作ってくんないかなぁ」



「聞けや」



「ま、そんなわけで美羽さんに聞いてみたら?」



「超話飛びましたね」



「ごーいんぐまいうぇいな性格なもので」



「分かってんなら直せよ。誰が被害被ってると思ってんだよ」



「ちなみに『ごーいん』は漢字の『強引』って書きます」



「知るか」



「そんじゃ彩はこのへんで。あでゅー!」



「話の飛び方ぱねぇなおい。暇なんじゃなかったのかよ」



ドアに手をかけた彩は『にぱっ』と笑ってピースサイン。




「ちょっくら一階行って洗濯機×洗剤×服で萌えてくるわ!」



「うん、病院行け」



「ついでに服の汚れを参加させることで夢の4Pを実現」



「ボケの大渋滞でどこからどう突っ込めばいいのか分かんなくなってきたけどとりあえず無機物萌えはやめろ」



「安心して! ちゃんと擬人化するから!」



「その台詞のどこに安心しろと!?」



俺がある程度美羽の中二病発言に耐性あるのって、絶対この変態の影響だよね!



「あ、情報代は美羽さんをお家デートに誘うことでいいよ? 彩やさしー」



「……な、何でだよ!」



「このままじゃ一生彼女なんかできないだろう非モテでヘタレなお兄ちゃんの背中をそっと押す健気な彩。……泣けるねぇ」



「お前の暴言に泣けるよ! それと一生は余計だ!」



「じゃあ柚木園さんと姫宮さんも呼べばいいじゃん」



「だから話の腰を折りまくんなよ! なんかもう原形留めてないレベルにベッキベキだよ!」



「はっ! 洗濯機の前にホコリ×空気があるじゃん! こうしちゃおれん、まずは彩の部屋に行って来まーす!」



「二度と帰って来んなゴキ腐リがぁああああ―――!」

162心愛:2012/11/22(木) 11:49:36 HOST:proxyag107.docomo.ne.jp






《ブーッブーッ》



「おわっ」



ポケットに入れていた、マナーモードのスマホの振動に驚いて、慌てて取り出してそれを落としかける。



「メール一件……美羽じゃん」



開く。




『嗚呼……紅蓮に霞む月夜は、吸血姫(ヴァンパイア)としての本能が疼く……。

……君を此方へと誘(いざな)う運命の歯車は廻り始めた……。

さあ……血誓の宴の刻。
今宵、君に凍てつく闇の冷たさを教えてやろう……』




【訳‖暇だ】




「………………」



ぐんにょり。


メールなのに点々多用すんな読みにくいだろとか、カッコ使ってまで無理矢理ルビふらなくてもとか、いやその前に常人なら正気を疑うような文章送りつけてくんじゃねぇよ迷惑メールかと思うじゃんかとか、なんかもう突っ込みどころ満載だった。



「……あーもー……とりあえず」



顔をしかめながらも、電波メールを保護しておく。



い、いいじゃん。好きな子からのメール保護したっていいじゃん! 純情少年なの俺は!

たとえそれが『俺……マジであれのこと好きなんだよね?』って一瞬思っちゃうような代物でもさっ!


……ちょっと泣きそうになった。


端っこに鍵マークがついたのを確認してから、無駄だというのは百も承知で文面をもう一回読み直す。


……この文章見て、即座に訳がつけられる俺もすごいよね。



「んー……」



向こうのテンション完全無視で、これだけ打って返信。




『レンオーって知ってる?』




「………」




《ブーッブーッブーッ》




「返信早っ!」



メールを開く。




『なぬがあった!?』




「いやお前に何があった!」



……どうやらかなりテンパってるらしい。


どう返せばいいんだか迷っていると、さらにもう一通届いた。




『今のは間違いだ。
一体何があった? 君からその血と戦慄に彩られた名を聞くことになるとは思いもしなかったぞ』




微妙に落ち着きを取り戻したようにも見えるが、それは多分メールだからだろう。

今頃本人は相当パニクってるに違いない。




『別に。妹が今から見るっていうアニメ。美羽も見てんの?』




『……ふっ……何のことだか分からんな……』




嘘つけ。



さっき彩から聞いたことを元に、鎌をかけてみることにする。




『そん中にシルビア? とかいうのがいるらしいけど。美羽にそっくりな』




『シルヴィアだ!! 間違えるな、一番好きなキャラなのに!』




駄目じゃん。



どんだけ単純だよ。こんなにも綺麗に引っかかるとかこっちがびっくりだよ。




『い、今のはなしだ。忘れろ』




『無理だし。で、そのシルヴィアのコスプレなの? 美羽のあれは』




『だから違うと言っている! 確かに似ている箇所はあるがぼくの衣装は自分でデザインしているものなんだからな! 完全にオリジナルだ! それに口調も昔から』




……と、毎回毎回面白いくらいぼろを出してくれる美羽とやり取りを続けることしばらく、



美羽はそのシルヴィアとかいうキャラのファンだが、決してコスプレをしているわけではないこと。


今まで通してきた自分の設定や背格好がキャラのそれと類似していることから最近ハマっただけだということ。


でも元となる世界観などは、『レンオー』を“一部参考にして”拝借した部分もあるということ。



以上のことが判明した。
情報提供しすぎだろ。




『……そろそろ、《咎人(アウフルーフ)》との決戦の時間だから落ちる』




ここまできたら素直にアニメ始まるからって言え。

163名無しさん:2012/11/22(木) 20:02:56 HOST:EM114-51-202-35.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

………彩ちゃん、の影響ね……

凄い偶然があった!美羽ちゃんが彩ちゃんと同じアニメ見てたんだ!

…凄い言い訳考えつくもんだね、美羽ちゃん…

164心愛:2012/11/22(木) 22:28:18 HOST:proxyag113.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美羽超必死です←


シルヴィアって、『ソラの波紋』に一回名前だけ出てきてたんだけど気づいた?←
『煉獄のAurora』はここあが昔書こうとして断念した小説を改変して、美羽が好きなアニメってことにしちゃったやつなんだな。
で、『ソラの波紋』は『煉獄のAurora』の世界観とキャラを乗っ取って、新しい主役の空牙とミレーユをつけたしたものです(´ー`)

美羽のモデルのシルヴィアもいずれ『ソラの波紋』に登場させる予定w


長文スマソ(^-^;

165名無しさん:2012/11/23(金) 14:12:45 HOST:EM114-51-192-34.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

まじか! どっかで見た記憶あるくらいしか分かんなかった!

美羽ちゃん超必死w←

まさかの断念した小説がアニメにw

あたしも似たよーなのあるよー←

166心愛:2012/11/23(金) 15:29:45 HOST:proxyag084.docomo.ne.jp
>>ピーチ

痛いのは十分承知ですがね…(~_~;)
コラボも終わりが見えてきたし、『ソラの波紋』も進めないと←


次からまた新キャラ登場です!
こいつとあと一人出したら一段落かな?

こいつは名前出してなかったけど、今までちょこちょこ出てきてたんだよ。


ここあキャラの中で一番の変態度を誇る男ですが嫌いにならないでやってね! ……むしろ喜ぶか……?

167心愛:2012/11/23(金) 15:30:30 HOST:proxyag083.docomo.ne.jp

『春山慎太郎』






さて、突然ですが問題です。



朝登校したら、前の席に座っている奴の頭が普通の黒から綺麗な金髪になっていた場合、どんなリアクションをとるべきなのでしょう。



……週明けの朝、俺は期せずしてその大ピンチに直面していた。



「お、おま……その頭どしたの」



「んー?」



振り向いたのは一人の男子生徒。

脱色された髪に、不自然なほど細い眉毛。
柚木園みたくずば抜けてはいないものの、それでも俺からしてみれば十分すぎるくらいに整った目鼻立ち。


そいつは歯を剥き出して嬉しそうに笑い、



「おー、なんだヒナか!」



「だからヒナ言うな」



着崩したシャツに腰パン、開きまくった胸元にはじゃらじゃらしているシルバーアクセサリー。
何故か棒付きキャンディーをくわえている。


確か、春山……そう、春山慎太郎(はるやま しんたろう)とかいう名前だったはずだ。


元々なんかチャラそうなワイルド系の美形で、そんな格好も正直ばっちり似合っちゃったりなんかしてますけど!


驚愕している俺に、春山は舐め終わったらしいキャンディーの棒を片手で弄びながらニカッと笑って言う。




「不良始めたからねー」




………いや。
いやいやいやいや。


そんな『かき氷始めました』みたいなノリで言われましても。



「……な、なんで?」



ここは南高の教室である。

真面目で勉強第一な校風の学校の教室に、ザ・金髪頭の男が急に光臨したらそりゃあ浮きまくるのは当然のことで。

校則ゆるっゆるとはいえ、美羽みたいな例外を除き、何も言われなくてもほとんどの生徒が良識的な範囲内での服装で登校してくるわけで。

もちろん、不良さんルックスの生徒なんか一人だっているわけがないわけで。


クラスの皆さんも、遠巻きに春山を見てはひそひそと小声で何か言い合っている。

俺だって、こういう人種とはできれば関わり合いにはなりたくないくらいなんだけど……。


それでも、なんか事情でもあんの? という疑問を持つことは、美羽のときもそうだったけど至極当然のことと言えるだろう。むしろ持たない方がおかしい。



「………」



隣では、机を壁にくっつくくらいにできる限り遠ざけた美羽も、警戒の色を赤い瞳に滲ませて春山を睨んでいる。



「あーそれは……ってちょ、そんな睨まないでよ結野ちゃん! 俺不審者じゃないからね? 怖くないよーほらほら」



「……そんな格好で堂々と学校に来るなんて、不審者以外の何だと言うんだ。高校は学業に励む場所だろう」



お前もだろ。



「あーでもその蔑んだ目いいわぁ。そのまま罵倒プリーズ」



「何を言っているんだ君はっ!」



チッチッチッと猫を手懐けるみたいに舌を鳴らす春山に、「き、気持ち悪いっ」と涙目になった美羽がガタンッと席を立ち、俺の背後に隠れる。


……こいつ、こんなキャラだったっけか……。



「いーねいーねー、結野ちゃんに気持ち悪いって言われるとゾクゾクくるわぁあ」




「……は、春山くんにヒナに……ゆいのん? どうしたのっ?」




奇妙な光景に、登校してきた姫宮が目を丸くしていた。



「姫宮ちゃーん! よっ、今日も可愛いねぇっ」



「か、可愛くないもん!」



「一回でいーから今度デートしてよ、なんかおごるから」



「男と一緒に出掛けることをデートって言うの!? 少しは反省しようよっ」




「―――ちょっと、夕紀をいじめないでくれる?」




姫宮に続いて入ってきた柚木園が、腕を組んで冷たく言った。



「まいちゃん! おはよっ」



「おおう柚木園っ! 遅いじゃんかっ」



柚木園を認めるなり、春山は顔をキラキラと輝かせた。



「……ゆ、柚木園? お前まさか、春山と仲良いの?」



「失礼なこと言わないでよ。誰がこんな変態と」



「へ」



柚木園らしくない言い草に美羽と二人して呆ける。

対照的に、春山は鼻息を荒くして。



「おっほう! その冷たい声がたまらんっ! もっとなじってくれていーんだぜ! むしろ思いっきり足蹴にして!」



「ほんとお前どんなキャラなんだよ!」



ドン引きだよ!

168心愛:2012/11/23(金) 15:32:30 HOST:proxyag066.docomo.ne.jp






何の躊躇もなく、柚木園の前の床に身を投げ出した春山は歯をキラーン。




「ただのドMキャラですが何か問題でも」



「大有りですよ! むしろ問題しかねぇよ!」



何なのこの人! 何なの!?



「なーなーゆーきーぞーのー!」



「……っ気持ち悪い!」



その長くすらりとした足にすがりつかれた柚木園は、顔を引き攣らせると乱暴に春山を振りほどく。


当然、春山はまるでゴミのように、ベシッと固い床に投げ出された。



「い、今すごく嫌な音がしたぞっ?」



少しでも距離を取るように美羽が後ずさり、




「……はぁはぁ」




『本物だぁあああ―――――!!!』




クラスが一丸となって叫ぶ!



怖い! ドM怖い!!




気色悪く頬を染め、春山はうっとりした目でまくしたてる。



「でもまだ足りないっ! 柚木園、貴様の本気はそんなものじゃなかったはずだ! さあ昨日のように! 遠慮容赦一切ゼロの一撃を俺にくれっ!」



「……? 昨日もそうだったけど……春山くんは蹴られても平気なの? 痛くないの?」



「夕紀は何も知らなくていいんだよ」



さっきから一人きょとんとしている姫宮に柚木園が力なく微笑みながら、金髪を振り乱して迫る春山をゲシッと蹴り飛ばす。

教室の隅で「あふんっ」という声が上がった。



「き、昨日って?」



「それがね……」



柚木園はげっそりしながらも説明してくれる。



「……昨日は日曜だったでしょう? 買い物に行ったんだよ」



「うん」



「そうしたら、金髪の男にナンパされてる子がいて。しつこく絡まれてたから、その子の顔も見ずに、いつもの癖で助けちゃったのね。……夕紀だったんだけど」



「へえ。偉いな」



「『へえ』じゃないよ! 男が男をナンパだよっ? そこは疑問を持とうよヒナ!」



や……だって……ねぇ?



「その男が、髪染めた春山くんだったってわけ。ちょっとやりすぎちゃったかなとは思ってたんだけど……。気に入られたみたいだね、迷惑なことに」



何をどうやりすぎたのか気になるところだ。



「それは、その……ご愁傷様なことだな」



「ありがとう……」



美羽に困ったように言われ、ふっと笑う柚木園。


……哀れだ……。


と、



「……そんで結局、春山はなんでそんな頭にしたんだよ」



まだ質問に答えてもらってないことに気づき、自分がぶつかったことによってずれた机をきちんと直しながら(律儀だ)立ち上がっている春山を見る。


「あ、悪い悪い」と金髪頭を掻いて。



「だってさぁ、不良っつったら喧嘩だろ?」



「あー、そう……かもな」



そこで春山は、なかなかに魅力的な満面の笑みを浮かべて。




「じゃあ同じ不良になったら、そこらへん歩いてるだけで絡まれて、本職の方々にボコボコに痛めつけてもらえるじゃん!」




『この変態がぁ―――――!』




想像を絶する変態ぶりだった!



「やー、親に『もしも南高に入れたら、何でも好きにしていい。お前の頭じゃ絶対無理だろうから』って言われて猛勉強したんだよね。連続満点を叩き出しこうして晴れて不良に! これで白昼堂々殴ってもらえるぜやっほい!」



「そのためだけに!?」



「君のご両親が可哀想で仕方ないんだけど!」



「天職ってこーいうことを言うんだよなー」



「さっさとクビになっちまえそんな職業!」



「かっこいーだろー? 結野ちゃん、惚れてもいーよ?」



「誰が惚れるか!」



「もっと吐き捨てるように!」



「リクエストするんじゃないドMがぁ―――!」



「ねーまいちゃん、そういえば、……どえ・む? ど・えむ? ……って何なの? 春山くんのことだよね?」



「夕紀は黙ってて!」



「えええっ!?」




―――入学から約二週間。


俺にも好意を向けてきてくれるクラスメイトに対して、初めて心からの恐怖を覚えました。

169ピーチ:2012/11/23(金) 19:14:39 HOST:nptka302.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

………やだ。こーゆー人絶対やだ。

湯きぞの君だけねの気持ちよく分かる

170心愛:2012/11/29(木) 18:19:33 HOST:proxyag072.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ご、誤字りまくってるけど大丈夫っ?



テスト終わったー!
2つの意味で終わったー!


…う、うん、チャラくてキモくてウザいけど悪い奴じゃないから!
ここあキャラの特徴もちゃんとあるし、クライマックスでまともな見せ場用意してるから!

ソフィアとシェーラ殺しかけたオスヴァルトとジルとユーリエみたく、あら不思議、気づいてみれば印象が変わ…ら…ない、か?←

まあここあだって、こいつが現実にいたら絶対やだけどね、うん。



そんなわけで、主要クラスメイトがそろったとこで日常編再開!
コラボはもうちょいお待ちを(´ー`)

171心愛:2012/11/29(木) 18:20:38 HOST:proxyag072.docomo.ne.jp

『体育』






「……ヒナ? なんで後ろ向いてるの?」




「……………」




頑と顔を壁に向け続ける俺。

額にはダラダラと汗。



「ひーなー! なんでなんでなんでーっ?」




「お前が着替えてるからだよ!」




クラスの約三分の一を占める女子全員が更衣室に行ってしまった後の教室。

ひどい話だが、この学校には男子更衣室がないので自然と男子はここで着替えることになる。

そんなことになったら当然。



「姫、いーから大人しく女子更衣室行って来いって!」



「絶対バレないから俺が保証するから!」



「や―――だ―――!」



とても直視できずに目を背けつつ説得を始める男子諸君に続いて、春山も赤い顔でわめく。



「じゃあ姫宮ちゃん、更衣室じゃなくていーから! こっちの身がもたねーからせめて違うとこで着替えてくんね? 本気で頼む!」



「なんでーっ!?」



「だっ……からこっち向いちゃだめだって! せめてカーテンで隠……せねーわ窓から丸見えだわっ」



おたおたしながら、机の上にあった姫宮の体操着を後ろへ向けて投げてやる春山。



「わ、顔に掛かっ……」



「とにかくハダカでうろちょろしない! 上着て早く!」



「い、意外。お前絶対、修学旅行で女子風呂覗きに行こうぜ! とか言い出すようなキャラかと思ってたのに……。ガン見しないんだ」



「や、さすがの俺も無理これは。ガチで無理」



変態の中の変態・春山の素を引き出すほどの美少女ぶりを発揮する姫宮は、紅茶色の瞳をうるうるさせている様子がよく分かる声で。



「う、ううう……こうなったら女子もいないことだし、一度ちゃんと僕が男だって証拠を」



「まっ待て早まるな! 落ち着け! ズボンから手を離せ!」



「この年で警察の世話にはなりたくないんだよ!」



「……え? なんでみんながおまわりさんのお世話になるの?」



『(お前が可愛すぎるからだよちくしょぉぉおおおおおお!!)』



お巡りさんって! この年でお巡りさんって!

きゅるん、って感じに目ぇ潤ませて、不思議そうに小首傾げて可愛い声でさぁっ!

おまけに胸元に当てた体操着の間から、日に焼けてないまっさらな肌が所々覗いちゃってるしっ!


もうどうしてくれるこの可愛さ! なんなのこれ! おかしい! 頭おかしい絶対!



くそ、健全な教室が犯罪現場と化すのは時間の問題だ……!



『(……ごくり)』



ツッコミを入れるためについ爆弾の方を向いてしまった俺らはぎゅいんっと勢いよく首を元の位置に戻し、込み上げる何かを耐えるように鼻をつまみながら、唾を飲み込む。


くっ……一刻も早くこの危険地帯から抜けなければ全員の命と理性と世間体が危な―――



…………あ。




「姫宮、ちょーっと待ってろ。そのままそのまま、そうそう。……ほらみんな着替える! 急げ!」




『!』




声を張った俺の意を汲んだ男子が一斉に頷き―――


それはまさに神業だった。


全員が残像が見えそうな速度で一斉に脱衣、ジャージを着込んで脱いだ服はしっかりぴっしり綺麗に畳み、俺がばーんっと開け放ったドアから訓練された軍隊のごとく整列して飛び出す。


この間わずか三秒弱。



「え、え、えっ?」



「っつーわけで俺ら先行ってるから!」



「ゆっくり着替えていいよ、あ、カーテンちゃんと閉めて!」



「ま、待ってよみんなぁー!」



……後で姫宮専用更衣室を設置するように先生に言ってみよう、そうしよう。


とっても紳士な俺らはさっきちらっとだけ見えた光景を大汗かいて必死に脳内メモリに叩き込みながら、引きまくっている他の生徒たちを蹴散らすようにズダダダダッと廊下を全力疾走したのだった。

172ピーチ:2012/11/29(木) 20:33:18 HOST:EM49-252-130-126.pool.e-mobile.ne.jp
大丈夫だよ! ちょっと混乱してただけで!←

二つの意味で終わらんでくれーあたしと一緒にならんでくれぇー!!!

……ゆきちゃん、確かにバレなさそう←おい

173心愛:2012/12/02(日) 18:52:06 HOST:proxyag111.docomo.ne.jp
>>ピーチ

テスト終わってもまだ忙しいここあです。……げふぅ。


うん、夕紀は完璧バレないと思う←
そんじょそこらの美少女よかよっぽど美少女の……男っていう(´ー`)

174ピーチ:2012/12/02(日) 19:10:33 HOST:EM114-51-189-14.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

点数悪すぎて訂正も溜まりまくってる時に小説書くという馬鹿女です←

絶対ばれないね。小中学校で間違われなかったか夕紀ちゃん?

175心愛:2012/12/02(日) 20:07:24 HOST:proxyag118.docomo.ne.jp
>>ピーチ

小学校とかなら、まだ女の子みたいな男子っていうのも結構いるだろうからそんなに目立たなかったかもね(^-^;


ピーチがんばれ!
ここあもがんばるよサボる方向に全力で!(こら

176ピーチ:2012/12/03(月) 20:26:17 HOST:EM114-51-83-65.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

あ、なるほど

うん頑張る! サボる方向で全力に!←おい

177心愛:2012/12/25(火) 09:05:18 HOST:proxy10017.docomo.ne.jp






「体育と言えばーっ!?」



『揺れる胸! 透ける下着!』



「よっしゃあ! どさくさに紛れて女体をじっくり観察するぜ野郎共!」



『うおおおおおおー!』




「こいつら最低だっ!」




11組から13組までの男女合同で行う体力測定。
春山のコールに合わせて血走った目で絶叫する一部の男子に、あからさまに他の皆さんが距離を置いている。


み、認めない……! あのバカの塊が俺の所属する集団だなんて絶対に認めない……!



「今時ムッツリはモテないぞ、ヒナ。欲望に忠実に生きろ」



「誰がムッツリだ!」



そのトップオブザバカ・春山にぽんっと肩に手を置かれ、鳥肌を立てながらそれを瞬時に叩き落とす。


そんな俺たちの傍らでは、むさい集団の中で異彩を放つほわほわした美少女が癒しオーラを放出していた。



「ねーねー、むっつりってかたつむりに似てない?」



『(………ほわぁ)』



……ちょっと和んだ。不覚にも。


俺だけじゃなく全員が目を横線にして、視線でこの奇跡的に可愛い生物を愛でまくっている。


ま、奴らのテンションを妙な方向にフルスロットルさせた原因も姫宮なんだけどね。




『きゃー!』




と、空気を突き破って体育館中に響き渡る黄色い悲鳴。
なんだなんだと出所を探すと、すぐにシャトルランの順番待ちでだべっている女子が目に留まる。


……どうでもいいけど20メートルシャトルランって鬼畜すぎだよね。
見られてる感と徐々に余裕なくなってく感とか、テンポ上がるときのティレレ♪って音が最高に嫌。
最後の方まで残って女子に声援送られてる奴とか見ると、もうほんと―――



「―――……くんかっこよすぎー! やばいっしょ!」


「顔も頭も運動神経もいいって完璧だよね!」


「性格だって超いーじゃん! あーもう彼氏にほしー」



は? ふざけんなよ誰だよその野郎。
ちょっとモテるからっていい気になってんじゃねーし。


口には一切出さずに暗く毒づいていると、隣に立つ姫宮がパッと顔を輝かせた。




「あー! まいちゃんだー!」




……野郎じゃありませんでした。



「王子がんばってぇー!」


「かっこいー! 男子よりずっとかっこいいー!」



きゃいきゃい手を打ち鳴らして騒ぐ女子たちの目線の先に、髪を颯爽と靡かせるイケメン女の姿。
今やトップ独走状態、ほぼ全員がギブアップする中で息一つ乱れさせずに涼しげな顔。
無駄に長い脚を見せつけるようにきゅっとシューズを鳴らして足首を返し、



『っっきゃぁあ―――!』



ついでにバチっとウインクを返すことも忘れない。



「ジャージなのにイケメンって……! ジャージなのにイケメンってぇ……!」



この差はなんだって言うんだよちくしょう!



思いっきり地団駄を踏みたい衝動に駆られていると、



「あー柚木園に蹴られてー。踏まれてー」



「来世は床にでもなれば?」



「……いーかも」



「真面目に考えんなよきめぇ!」



むむっと真剣な表情をする春山。



「でもさーヒナ。あの柚木園の脚はしょーじき芸術的なレベルで見事じゃね? 俺以外にも男の信者って結構いるんだぜ」



「………え゙」



羨ましさが一気に薄れた。


美形に生まれても色々大変なんだな、うん。
普通で良かった。……マジで。

178心愛:2012/12/25(火) 17:56:01 HOST:proxy10056.docomo.ne.jp






「ヒナ、春山くん! あっちで握力だって! やろーよ!」



「姫宮……っ」



いつの間に離れていたらしく、ちょっと袖が余ったジャージの袖をぶかぶかさせてこっちに走ってくる姫宮。
……あれだな、絶対「僕は男だもん! だから大丈夫なんだもん!」ってちょっと無理して大きめのやつ買ったんだな。そんなとこまで抜け目なく可愛くて、今の俺の疲れ果てたハートの清涼剤になってくれる。



「姫宮ちゃんのお願いなら俺なんでも聞くよ無条件でー!」



輝く笑顔でカエルみたいにぴょーん! と気持ち悪く飛び跳ねる春山からできる限り離れながら、姫宮について歩く。



「あれ? 美羽は?」



「結野ちゃん?」



お前には訊いてねぇよ。



「ゆいのんならあそこだよ」



あそこあそこ、と姫宮が指差す先には、いつものゴスロリ娘……では、もちろんなく。


細っこく頼りない身体を黒に薄ピンクのラインが入ったジャージで包んだ美羽が、顔を真っ赤にしてぷるぷる震えながら「むぐぐぐぐ」と握力計を握っているところだった。
体育バージョンなのか、長い髪をポニーテールにしている。



「み、みうみう……? それ、壊れてるんじゃ……」



「わ、悪かっ……た、な……! これ、がぼくのっ、全りょ、っは、くだ!」



頬を火照らせ、汗だくでぜーはーしている美羽。



「ちょ、息めっちゃ上がってるけど!?」



「ふ、ふん……問題ない。ぼくはミウ=黎(ローデシア)=リルフィーユ……この程度で倒れるな……ど、……ぜぇ、ぜぇ」



「無理して喋んなくてもっ」



「たとえこの仮の肉体が死することがあろうとも、……魂は、不滅……っ」



「結野さーんっ!?」




「……握力計握っただけだよね?」



「そのはずなんだけど……」



コメントに困って突っ立っていると、クラスメイトの女子に目をつけられた。



「あーヒナじゃん! ちょうど良かった、美羽っちどうにかしてよ」



「俺は保護者か」



ため息をついて、美羽の前にしゃがみ込む。



「……ヒナ?」



「えー、と……保健室行く?」



「君はぼくを馬鹿にしているのか!?」



「体力測定くらいで倒れるわけがないだろう!」と憤慨する美羽だけど……あながちそうでもないんじゃ……?



「結野ちゃん大丈夫ー?」



「寄るな! 来るな! 近づくな!」



「もー、ひどいなぁ結野ちゃん。俺だって傷つくときくらいあるんだよ?」



「嘘つけめっちゃ嬉しそうだろお前」



「君たちは黙って握力でも計っていろ!」



春山と同列扱いされたことに心底へこみつつ、「はい!」と姫宮に手渡されたそれを右手で素直に握る。
どうせこの時間中に計っちゃわないとダメだしね。



「……あー、去年とほとんど変わんなかったわ」



「どれどれ? …………ヒナって……とことん平均的だよね」



失礼な。



「ちなみに俺はそこそこ伸びた」



「お、……おかしい! 君たちの腕はどういう構造をしているんだっ!」



俺と春山の記録を見て美羽が青ざめていた。



「そう? 春山はともかく、男子の平均ぴったしくらいじゃね? 俺の」



「……そうか、まずこの国自体が化け物の巣窟だったのか……」



問題発言やめろ。



「僕もやるー!」



元気いっぱいに挙手する細い腕。



「あはは、姫はねー」



「ひめみー、男子と張り合って無理しないでよー?」



「?」



頭の上におっきなハテナマークを乗っけながら、姫宮がぐぐっと力を入れ。
それからちょっとだけ得意そうに、数字が刻まれた画面を見せてくる。




「僕、握力だけは凄いんだよ?」




『え』




……握力と見た目は関係ないことが分かった。

179ピーチ:2012/12/25(火) 23:21:33 HOST:EM1-114-215-92.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

まさかの握力だけで疲れる!?

どんだけだって思うけどそこが可愛いw←

180チェリー:2012/12/26(水) 10:51:07 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
厨坊w

181心愛:2012/12/26(水) 15:30:47 HOST:proxyag104.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美羽は貧弱なのでw
よく生きてこれたね…って感じなんだけど、その美羽を今まで支えてきた人物が次から登場します!

この子も曲者だけど!

182名無しさん:2012/12/26(水) 21:20:24 HOST:EM114-51-172-214.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

美羽ちゃん! 貧弱もほどほどに!←

曲者か! でも美羽ちゃん支えてたのか!

183心愛:2012/12/26(水) 23:13:50 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、美羽の、ある意味理解者かな(o^_^o)
ヒナとの違いを書けたらなーと←


この子を最後にキャラは大体揃うけど、色々複雑な美羽の攻略の鍵を握ってるっていう意味では最重要人物かも。

深い話はまた後から。とにかく登場させるぞー!

184ピーチ:2012/12/27(木) 13:59:48 HOST:nptka407.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

そのある意味ってどーゆーこと!?

……てっきり、ヒナさんが最重要人物かと思った…

185心愛:2012/12/27(木) 18:55:15 HOST:proxy10012.docomo.ne.jp

『結野美空』





「嗚呼……。断罪の使徒を悼む鎮魂歌(レクイエム)の調べが聞こえる……」



「これのどこがレクイエムだ」



今日も美羽は絶好調。
ふふんと何故か胸を張り、



「葬送曲と迷うところだがな。《純血の薔薇(Crimson)》の本部に魔獣の大群が侵入し多数の死者が出たときには」



「はいはい」



「聞いてるのか!」



しつこい美羽をあしらうのにも妙にこなれてきた今日この頃です。



「今から一階のホールで、ダンス同好会が新入生歓迎ライブをやるんだって」



鞄に教科書を詰め込む柚木園が、さっきから流れている軽快なポップスの正体をあっさり看板してしまう。



「ダンスって華やかな子が多いんだよねー。特に部長やってる人、それはもう美人で―――」



「なんだってっ!?」



ガタンッと急に立ち上がり、ぺらぺら語り始めた柚木園を遮る美羽。
顔が青い。



「ダンス同好会が、ライブ……!? 聞いていないぞ、そんなことっ」



「え? ゆいのん、ダンス興味あるの? ちょっと意外」



「美羽が、ダンス……。絶対可愛いけど体力的にちょっと無理があるんじゃ」



「大きなお世話だ!」



姫宮と柚木園に一喝を飛ばし、美羽が長い髪を翻す。



「ヒナ、行くぞ!」



「まるで当然のように!?」



愕然。



「それは当然だろう、眷属なんだから!」



「いい加減眷属イコール俺イコール便利屋みたいな認識改めようよ!?」



……でも眷属になる宣言しちゃったのは他でもない俺自身なので文句は言えない。



「柚木園と姫宮は?」



「私は無理かな。校舎裏で女の子が待ってるから」



「……行ってらっしゃいませ……」



可愛い封筒に入った手紙らしきものを片手に苦笑する柚木園。

今日だけで何人目だおい。



「あ、僕も行くよー」



……というわけで、姫宮も連れて三人で廊下に出る。


一年生の教室があるのは一階なので、すぐにホールを取り囲む人混みまで辿り着いた。



「すごい人だねー」



ほへーっと感心したような姫宮の言う通り、二階や三階からもわんさか身を乗り出している先輩方。
軽くアイドルのライブ状態だ。


まだ始まっていないらしく、テストの音楽とざわめきが耳に届く。



ダンス同好会は美人が多い。
だいたいダンスなんて「見せる」ものなわけで、容姿にそこそこ自信がある人じゃないと入らないし入れないんだとか。
この学校では真面目に恋愛したい、言っちゃえばモテたい女子が入る部活っていうのは、運動部のマネージャーかダンス同好会のニ択っていう暗黙の了解があるんだけど。

噂通り、確かに可愛い娘(こ)ばかりだ。
はきはきと指示を飛ばしたり振り付けの最終確認をしたり、マイクの準備に奔走したり。
髪を巻いている娘やメイクばっちりな娘、皆どこか垢抜けていて、華やかオーラが半端ない。
クラスのカーストでは確実に最上位に位置する女子たちばかりだろう。



「……………」



美羽が一番嫌う人種のはずなのに、何をそんなに熱心に見ているのかと思えば―――



一際目立つ美人がいた。



ふとももの辺りまで伸ばした、長く艶のある黒髪を高い位置で二つに結んだ髪型―――いわゆるツインテール。

南高女子の定番ファッションである「なんちゃって制服」の赤いチェックのスカートに黒のニーソックス、さらに部活のオリジナルだろう、ロゴが入ったカラフルなTシャツを合わせている。
全体的に小柄で華奢、なのに腰のくびれや出るべきところの主張はばっちり。
あどけなく輝く大きな瞳、幼げな印象を与えるのに適度に大人っぽく、そして恐ろしいバランスで整った顔立ち。
ファッション雑誌の表紙を飾っていても何ら違和感のない、どこを取っても文句なしのぴかぴかな美少女だった。



そのうち隣の娘と何事か言葉を交わしてから、遠目にもよく分かるくらいほっそりした綺麗な手でマイクを持ち、その美少女が一歩前へ進み出る。

186心愛:2012/12/27(木) 18:56:47 HOST:proxy10008.docomo.ne.jp






「みなさん、今日はお集まりいただいてありがとうございます! ダンス同好会でーす!」




『フォオオヲオヲヲオオオオオ―――――――!!!』




可愛いアニメ声と共に彼女がにっこり笑えば、全く可愛くない低音の奇声とひゅうひゅーう! という口笛の音(百パーセント男子の)が嵐のように巻き起こる。




『MI・KUッ! MI・KUッ! フォォォオオオウウウ―――――!!』




「日本オワタ」



「だ、だめだよヒナ! 事実でも言っちゃいけないことがあるんだよ!」



慌てたように全然たしなめになってないことを言う姫宮。



「二年生とか三年生は、日頃の勉強で溜まったストレスをこういうイベントで無駄に騒いで晴らすらしいよ。学園祭なんかはもう地獄絵図だって」



「こんな風にだけはなりたくないな……」



向こう側のウェーブの中に何か見覚えのある金髪チャラ男がいたような気もするけどおそらく気のせいだろう。




「一年生のみなさん、南高へようこそ! 一年生だけじゃなくてっ、もちろん二年生も三年生も! 今日はいっぱい楽しんでねー!」



『ヒャッホォオオオオオォォオオウッ』




「でもごめんなさい、もう時間なのにまだ準備ができてないみたいです。みんな、もうちょっとだけ待てるかなー?」



『は―――――い!』



幼稚園児か。



俺はまだ待たせるんかい、とか思っちゃう派なんだけど、皆特に不満はないようだ。



美羽の格好に気づいてか周りにいた人が徐々に引いていくので、ありがたく開いたスペースにお邪魔することにする。



「あの人が部長かな。ってことは三年生?」




「―――あれの名前は結野美空(ゆいの みく)、二年」




突然ぽつりと呟いたのは美羽。


しっかりあの美少女を見つめながら、




「ぼくの姉だ」




「嘘、ゆいのんのお姉さん!?」



「一人っ子かと思ってた」とびっくりしている姫宮。

俺はもう一度、彼女を見る。



「……あー……確かに」



似てる。


お人形みたいに整った容貌も、珍しいくらいに綺麗な黒髪も、体型も全て。

なのに全然気づかなかったのは―――きっと、二人の雰囲気が真逆に等しいから。


美羽が闇なら、あれは―――光。


暗い影を照らして輝く力に恵まれた、特別な光だ。



と、彼女が美羽に気づいてこっちを見た。

嬉しそうに、にこっと笑い小さく手を振る。


……目立つ服装はしているものの、身長的にちっこい美羽は遠くからは見えないわけで、




『(……………………)』




「(俺じゃないですよ!)」



一斉に射殺さんばかりの目を向けてくる先輩方。


やめて全身に穴が開きそう!


針のむしろに立たされている隣の俺にも構わず、美羽はちょっと照れたように赤くなりつつも、彼女の笑顔をぷいっと横を向いて一蹴。



「良いお姉さんだね」



「ふん……全く、あんなスイーツ(笑)とこのぼくの血が繋がっているだなんて屈辱以外の何物でもな―――」



そこで何故か美羽は言葉を止めた。
目の前のホールを凝視し、ひくっとなめらかな頬を引き攣らせる。



「美羽?」



「来るぞ……」



明らかに深刻なトーンに戸惑っていると、あの美少女―――美羽のお姉さんが再びステージ中央へ登場。
場が一気に盛り上がる。



「ふーっ、大変お待たせしっ」



ぺこっと頭を下げた、と、同時に。

187心愛:2012/12/27(木) 19:00:27 HOST:proxyag093.docomo.ne.jp







《ごちんッッ!》




―――マイクを額にぶつけた。



「………」



美羽が黙って目を閉じる。



「〜〜〜〜………っぅ」



い、痛そー!


一年生全体がざわめき、姫宮が「今すごい音したよねっ?」と青くなる中。


額を手で押さえ、俯いてぷるぷる震える彼女に、綺麗に揃った先輩方の声が掛けられる。



『だいじょーぶー?』



「……大変お待たせしましたー! ミュージック、スタート!」



流した!



美少女スマイル完全復活、さも「何もありませんでしたよ?」という風に顔を上げて普通にてくてく歩き出す。


そのままマイクを係の生徒に預け、所定の位置、円の中心についた。


するとすぐに、とことんそっちの文化には疎い俺でも「あ、聞いたことある」と思えるくらいには有名な、ノリの良いアイドルのヒット曲が流れ始め、



『ヒョッホォォォオ!』



十人のビシッと決まったポージングに観客が沸き立つ。


その中で、やはり彼女は誰よりも目立っていた。


動くたびに、零れ落ちる髪がふわりと広がり可愛らしく跳ねる。


軽やかで元気いっぱいに、そして時には艶っぽく魅せる彼女のダンスは圧倒的に―――



「上手い、ね」



思わず、といったように漏れた姫宮の言葉に頷く。



生き生きと動く表情は本当に楽しそうで、自分の好きなことをしている人に特有な、一種の輝かしさに溢れていた。



彼女の、熱狂的なまでの人気のわけも分かる気がする。



しかし最後のサビで、大歓声を浴びながら片足を軸にしてくるくる鮮やかに回った彼女は音楽が止まった瞬間に―――




びったぁ―――――んっっッ!




……コケ、た。


それもどうしたらこんなに綺麗にコケられるのかと本気で不思議に思うくらいに、美しく、スムーズに、芸術的で、自然な流れで、……顔面を床に、思いっきり、打ちつけた。


それでいて捲れ上がったスカートは、パンツが見えないギリギリのラインで留まっている。……え、なにこれ計算? わざとやってんの? いやまさか。



「……我が姉ながら」



時が止まったような感覚、美羽の小さな声だけが耳に届く。



「容姿端麗成績優秀運動神経抜群。教師からの信頼も厚く誰にでも親しみやすい性格から人望もある完璧超人、真のリア充」



美羽がすっかり全てを諦めたような無気力な眼差しで、静かに告げた。




「ただし……空前絶後の、ドジなんだ」




「ぅぅううう」と涙目になってしまっており、わらわら集まってきた同級生らしき娘たちに介抱されている彼女。



……あは、は。


……よりにもよって、この美羽のお姉さんがまともだって期待した俺が間違ってたよ。うん。



―――ちなみに彼女は周囲の熱い声援により何とか持ち直したが、残り二曲の出番とアンコールでも素敵なコケっぷりを披露した。

188心愛:2012/12/27(木) 19:10:23 HOST:proxyag094.docomo.ne.jp
>>ピーチ

あ、ヒナ視点っていう意味ね! 当人たち除いてね!


というわけで残念な美羽の残念なお姉さん、美空(みく)登場です!

うん、美空はただ残念なドジっ娘なだけじゃないんだぜ……?
その「ある意味」っていうのは、次からの話で明かしていこうかなーと。
美羽の秘密に迫っちゃうよ(*^-^)ノ

189ピーチ:2012/12/27(木) 23:04:37 HOST:EM49-252-69-209.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

美空ちゃん登場ー!

……て思ったらあれ!? 何か最初から可愛い!

ごちんッッ! ってところめっちゃ笑ってたw

190心愛:2012/12/28(金) 16:09:57 HOST:proxy10050.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美羽とはまた違う可愛さを出したいw

キーパーソンのはずがギャグ回で登場という。


結野姉妹の名前は結構すぐに思いつきました!
美しい空に舞う羽根って感じ(・∀・)


マイクにごちんッッは痛いよねうん。

191ピーチ:2012/12/28(金) 17:34:35 HOST:EM1-115-30-179.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

言われてみれば確かに美羽ちゃんとは違う可愛さだよね←

確かに! あたし一回間違えて「みそら」って呼んでた!

マイクにごちんッッもいたそーだけど床にびったぁーんっっッも痛そう…

192心愛:2012/12/29(土) 16:03:50 HOST:proxy10009.docomo.ne.jp
>>ピーチ

「よくここまで生きてこれたよね」系姉妹、みくみうw


美空のドジは本人が一番痛いことになってるから一番可哀想な特徴かも←

193ピーチ:2012/12/29(土) 16:10:49 HOST:EM49-252-63-97.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ほんとだよね!?

……どんなに完璧に見える人にも、どっか一つは欠点あるもんだね…

194心愛:2012/12/30(日) 17:57:37 HOST:proxyag106.docomo.ne.jp

『彼女の想いは』






「―――待ってたよ」



「ぎゃあっ!?」



放課後の昇降口、ザッという足音と共に現れた黒い影が俺の進路を阻んだ。



「んー、出会い頭に『ぎゃあっ』はちょっと傷つくなぁ」



さらさらと素直に流れる長い黒髪を二つに結わえた美しい少女が、悪戯っぽい笑みで俺を見上げてくる。

見覚えがありまくるその姿は、



「……結野……美空、先輩?」



「そそ。美羽ちゃんがお世話になってます」



にこにこ全開の明るい笑顔が俺だけに向けられている、というこの状況がまだ信じられない。



「……成績も身体能力も抜群、人気度から言えば校内美少女ランキングトップは確実って柚木園が言ってた、結野先輩?」



「やだぁ王子が? 恥ずかしいじゃんー」



照れくさそうに頬を染める先輩。

否定も卑下もせず、当たり前のように讃辞を受け取れる―――並みの人間にはなかなかできないことなんじゃないだろうか。

それにしても柚木園の知名度ぱねぇ。新入生なのに。



と思いつつさらに確認。




「―――この前ダンス同好会の新入生歓迎ライブでコケまくってた究極ドジの、結野先輩?」




「いやあああわーすーれーてー!」



ぴょんっ! と二つの髪束が同時に跳ね上がった。



「ドジじゃないもん! ちょっと運が悪いだけだもん!」



あー、……やっぱ姉妹だわ。
顔真っ赤にしての涙目とかもう超そっくり。


……あんまりいじめても可哀想だし、とりあえずそういうことにしておこう。



「こほん。……あ、そうそう、ヒナくんって、『ひな』っていう名前なの? 可愛いね」



「違いますよ! それはただのあだ名です!」



おのれ美羽……!
いつ喋ったんだか知らないけどいらん誤解招いてんじゃねぇ……っ!



「へー。本当の名前は?」



「日永、ですけど」



「下の名前だってば」



「? 圭です」



「圭くん、圭くんねー。りょーかいっと」



い、いきなり異性の名前を呼び捨てだと……?

なんたるコミュ力……!



……って、愕然としてる場合じゃない。



「で、結野先輩は、」



「美空でいーよ」



「いやいーよじゃなく」



「だって『結野』じゃ美羽ちゃんとかぶるじゃん。『先輩』だけも物足りないし……はいリピートアフターミー『美空先輩』」



え、なんか言わなくちゃだめな空気なんですけどどうすればいいのこれ。



「み、美空……先輩?」



「うん合格! ってわけでおめでとう圭くん! 君は結野美空の『可愛い後輩ポジション』を手に入れた! わーい!」



「おめでたいのはお前の頭だっ!」



はっ!


か、仮にも年上相手に俺は何ということを……!



「……ほう、噂通りなかなかのツッコミスキル」



「いいの!?」



うむうむと満足そうに頷く……えー……美空先輩。


きらきら輝く大きな漆黒の瞳も、人形のようにつんと尖った鼻先も、薔薇色をした幼げな唇も。
黙っていれば妖精の国のお姫様みたいに儚げで可憐な美貌は見れば見るほど美羽にそっくりだ。
違うところといえば、端正な顔立ちをさらに嫌みじゃない程度のメイクで華やかに磨き上げているところや、センスの良さが伺える私服を着ているところ、



「こらこら、変なとこ見ないの」



「みみ見てませんよっ? 何言ってるんですか?」



細いのにちゃんとある膨らみとかね。見てないけど。



「んじゃ、圭くんは今から時間ある?」



「え、……ま、まぁ。先輩は部活は」



「今日はないから大丈夫。ね、ちょっと付き合って。色々話したいことあるし」



「はい!?」



良く分からないものの、美空先輩がわざわざ俺を待ち伏せしていた理由はそれらしい。



「もー、早く早く! 美羽ちゃんに見つかったらまずいから!」



「えっ待っ意味分かっ」



「行っくよー!」



腕をがっしり掴まれてしまった。
意外と力が強いことに驚きつつ、色々あきらめてなすがままになっていた俺だったけれど、



「ちょ先輩、そっち壁じゃ」



「え?」



ゴチンッッ



「……ぅ、うううう」



運が悪いじゃとても済まないだろそれ。

195心愛:2012/12/30(日) 18:02:10 HOST:proxyag105.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そうなんだよー。
完璧キャラって結構いても、絶対どこかは抜けてるという(笑)

196ピーチ:2012/12/30(日) 18:32:15 HOST:EM114-51-44-25.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

かーわいー未空先輩!

可愛いけど、壁に突進はちょっと……

197心愛:2012/12/31(月) 11:31:49 HOST:proxy10019.docomo.ne.jp





「疲れた……」



「え? 十五分くらいしか歩いてないのに? そんな美羽ちゃんみたいな」



「……ここに来る間、先輩のファンにもっのすごい睨まれてたからですよ……っ!」



美空先輩が良く行くという駅前の喫茶店。
二人掛けのテーブル席に落ち着くと同時、気疲れした俺はぐったりと倒れ込む。



「あはは、ごめんごめん」



これも全部、俺の対面でけらけら笑っている美人先輩のせいだ。



「女版柚木園ですか先輩」



「王子は女の子じゃん。……あー、でもそれ最高の褒め言葉かも。圭くんってばやるなぁ」



「知りませんよ……。まずカップル成立率県最低の南高で男女一緒に歩いてるだけで殺生沙汰決定なのに相手がこの先輩とか……。っつーかなんで女子校より低いんだよおかしいだろ」



「女子校だったら他の学校の子と付き合うんじゃない? まぁ、あたしたちは自分よりレベル低いよーな男は願い下げだけどねー」



「……サラッと黒いこと言わないで下さいよ……」



「みんな言ってるよ? ……ってゆーと南高の中で彼氏作るしかないわけだけど。そんなことにうつつ抜かして受験失敗して後悔するのもねー。高校の恋愛なんかお互い足引っ張りあって終わりでしょ?」



……南高女子マジ怖ぇ。



「と、夢見る一年生の幻想を早めの段階でぶち壊すのが先輩の仕事です」



「辞めちまえそんな仕事」



そこで美空先輩はソーダフロート、俺はレモンスカッシュをオーダーしてまた一息。



「でもさー、女の子でモテすぎるって大変なんだから」



「そういうもんですか」



「そういうもんなんです」



もの憂げに頬杖を付いて窓の外を見る様子も、モデルがポーズを取っているみたいにばっちり決まっていて。



「小学校のときから道歩いてるだけで許可なく写真撮られたりするし危ないアングルのやつがネットに流出して大変なことになったときもあるし、『お嬢ちゃん、おじさんといいとこに行かない?』とかしょっちゅうだったし、毎回持ち帰らないとロッカーに入れておいた体操着を盗まれたりリコーダーがなんか湿ってたりするし。……あは、圭くんは普通で良かったね」



最後に付け足された、あんまりなその言いように、突っかかる気にはなれなかった。

まだ会ったばかりだけど、この危なっかしい先輩が心配になってくる。



「もう大丈夫なんですか」



「うん。できるだけ一人になるのは避けてるから」



にこっと笑う。



「それにね。そういう人は、うちの学校には一人もいないでしょう?」



「確かに」



「ある意味変人の巣窟だけど、変なだけで、身の危険はないからね」



「……それも、確かに」



ウェイトレスが運んできたグラスを受け取り、はむっとストローをくわえた先輩は、苦笑するように綺麗な眉を寄せる。




「今までね。できる限り、そういう汚いものは美羽ちゃんには見せないようにしてきたから……。美羽ちゃんが南高に入ってくれて本当に良かった」




……美羽のことが本当に大好きなんだって、良く分かるあたたかな声だった。


……なんだよ、美羽。


こんなに近くに、お前のことを心配して、守って、……理解してくれる人がいたんじゃないか。



「あたしは、美羽ちゃんのお姉さんだからね」



ふ、とほんの一瞬だけ、先輩は何故か、寂しげに睫を伏せた。




「……優しくて綺麗なままの美羽ちゃんを誰にも、傷つけられないようにしなくちゃいけないの」




―――……これ以上。




先輩が小さく呟いたような気がしたのは―――多分、俺の気のせいだったのだろう。


とにかく、急に重くなった空気を変えようと俺は必死に口を開いた。



「……でも、今の美羽は中二病じゃないですか。あの格好と喋り方じゃ顔目当ての奴だってあんまり寄って来ないし、そういう意味ではいいかもですね」



よっぽどの物好き以外は。と、ふざけたように笑って続けようとしたとき。




「―――……本当に、そうかな」




ストローから唇を離し。


美空先輩はまるで別人のように冷めた―――闇夜の色に澄み渡る瞳で俺を射た。




「あたしは、美羽ちゃんの『病気』は良くないことだって……やめさせるべきことだって、思ってる」

198心愛:2012/12/31(月) 11:39:39 HOST:proxyag105.docomo.ne.jp
>>ピーチ

「美空」ね!

と、「ある意味」理解者、って言ってたわけをそろそろ出し始めるよー。
美空はドジらせなければシリアス要員なので!

こういうシリアスは書いてて楽しいw

199ピーチ:2012/12/31(月) 15:17:18 HOST:EM114-51-4-198.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ヒナさんがんばっ!←

「ある意味」理解者ね!

シリアス要員………? なぜに…?

200心愛:2013/01/01(火) 10:08:08 HOST:proxy10044.docomo.ne.jp






「……な……」



予想外の台詞に、一瞬固まってしまう。
美空先輩はその反応にぱちぱちと瞬きしてから、「ごめん、驚かせるつもりじゃなかったんだ」と安心させるように手を振って。



「んーと。圭くん、『眷属』……だっけ? 美羽ちゃんに付き合ってくれてるって話だからさ」



今日話したかったのはそれ、と笑う。



「他人が大の苦手なあの美羽ちゃんがだよ。ヒナがヒナがーって愚痴りながらだけど、自分からクラスの子の話をしてくれるなんて初めてだからびっくりしちゃった」



「は、はぁ」



俺も彩に同じようなことを言われるなぁ、といまいち働かない頭でぼんやり考える。



「でね、その『ヒナ』くんっていう男の子がなんでそんなに、美羽ちゃんに優しくしてくれるのかなーって不思議だったのよ」



テーブルに両肘を付き、手のひらに顎を乗せて上目遣い気味に首を傾げた美空先輩の、大きな瞳がまっすぐに俺を映す。




「――――圭くん、美羽ちゃんのこと好きでしょう」




カラン、と氷が涼やかな音を立てた。



「…………」



取り繕う言葉は、強い眼差しにあっさりと封じられてしまう。

この人相手に、誤魔化しは利かない。

思わず唾を飲み込んだ。



「分かっちゃうんだよねー。たまにいる、あたしじゃなくてその後ろに隠れてる美羽ちゃんの方を狙う子……あ、もちろん美羽ちゃんには言わないから安心してね」



……こちらの考えはお見通しらしい。

俺は諦めて肩の力を抜いた。



「だったら……何なんですか」



「それでさっきの話。好きなんだったらなおさらさ、美羽ちゃんにまともになってほしいと思わない?」



試すような視線。
動揺でバクバク鳴る心臓を必死に静めながら、俺は迷いつつも口を開く。



「……そりゃ肉親からしたらやめさせたいだろうけど……。俺は、美羽が満足してるならそれが一番じゃないかなって思います」



「……へぇ」



面白いものを見つけたときのように、黒瞳がきらきらっと煌めいた。



「なるほどね……。圭くんは、そう来るか……。やっぱり『あの子』とは違うなぁ……」



「……あの子?」



「……なんでもない! 忘れて」



小さな呟きは、にこっという可愛い笑顔でたやすく流されてしまう。



「じゃあさ、圭くんはどうしてそう思ってるのか教えてくれる?」



釈然とはしないものの、追及しても答えてくれなさそうなので、ここは素直に先輩の問いかけに応じることにする。




「……“理想の自分”を追いかけてる美羽は、最高に格好良いって……俺は思いますから」




ちゅー、と俺をしっかり見つめながら、先輩がソーダを吸う。



「無意味だって分かってても、屈せずに何度でも立ち上がれる、っていう……。方向は完全に間違ってるけど、美羽の、自分の在り方―――“理想”に懸ける思いは本物です」



「……そうだね。美羽ちゃんの覚悟は固い。だから困ってるんだ」



ふうっと息をつく先輩。



「でもね。親は甘いから許しちゃってるけど、あたしは賛成できない。他でもない、美羽ちゃんのために、だよ」



身内があんな調子じゃ迷惑だから……なんて、軽い理由じゃない。



「あたしはずっと、美羽ちゃんの一番近くで、美羽ちゃんを見てきた」



美羽のことを完全に理解し、大切に想うゆえに、先輩は言う。




「ねぇ圭くん。美羽ちゃんはどうして、あんな格好で、あんな喋り方をして、人を寄せ付けないようにしてると思う?」




「格好良いから……“理想の自分”になりたいから」




ヒーローごっこの延長だと、自嘲するように笑った美羽。


公園で見せた無邪気な笑顔……―――




「―――本当に、それだけだと思ってるの?」




美空先輩は。




「それだけの理由で、『あれ』を、何年も貫き通せると思ってる?」




確信に満ちた、美羽にそっくりな表情(かお)で。




「……美羽ちゃんはね。演技をして、そうして自ら孤立することで―――無意識のうちに、弱い自分を守ってるんだよ」

201心愛:2013/01/01(火) 10:14:13 HOST:proxyag103.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美空は、ヒナに美羽の一面とか事情とかを伝える大事な役なのでw





あけましておめでとうございますヽ(≧▽≦)/

こんなダメダメ作者ですが、何とか完結できるように頑張りたいと思います(^-^;

今年もよろしくお願いします!

202ピーチ:2013/01/01(火) 16:38:10 HOST:nptka203.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

おめでとうございます!

ここにゃんだったら絶対完結できるよー!

203心愛:2013/01/02(水) 17:14:56 HOST:proxy10058.docomo.ne.jp







「…………」



美羽が、弱い自分を守ろうとしてる?
そのために、演技をしている?



「んー、長いし、ちょっとややこしい話になるけど」



混乱している俺を気遣うように微笑み。



「……あたしたちのお父さん、そこそこ大きい会社の社長やってるの」



……なんで、今、そんな話を?
あまりに唐突な話題に、先輩の真意を伺いきれずに、探るみたいに彼女を見る。



「昔、お父さん、このへんに新しい工場を造ろうって言い出したことがあってね。あたしが小学校の二年生、美羽ちゃんがまだ入学ばっかりの頃だよ。……でも、地元の人たちの反対運動に遭った」



淡々と、ただ事実を並べるように話す先輩。



「それで、その人たちは自分の子供に言い聞かせたのね。『結野さんのとこのお子さんとは仲良くしないように』って。……今までは普通に友好的だったんだけど、その計画の話を聞いてから急に」



まだ、理解は曖昧なままだけど。


なんとなく、先輩が次に言うであろう内容だけは容易に予想がついた。



「今まで仲良くしてた子たちみんなが、あたしを避けるようになって、クラス全体も変によそよそしくなっちゃって……」



今や、学校のアイドル的存在となっている少女は懐かしむように笑う。



「直接的には危害もなかったんだけど、なんだろう。空気っていうか……『いないこと』にされちゃったって言うのかな。あれは結構つらかった」



「…………」



どくん、と胸の中が重く脈打つ。



「あたしは平気だった。一年生からの友達なんかには、親に内緒だよって、こっそり仲良くしてくれる子もいたから。……でもね」



そこで美空先輩は小さく俯いて、自分の剥き出しの脚を見た。
するり、と長い髪が滑り落ちる。




「……美羽ちゃんは、だめだったんだ」




“ミウ”。
遊び相手がいてもおかしくない年頃だったのに、俺と同じで、たった一人で公園に来ていた。
……俺の目から見ても、純真な彼女はすごく魅力的だったのに。
不自然なくらい、同年代の子―――友達の影が、全くなかったんだ。



「それはそうだよね。入学したばっかりで、完全にゼロからのスタートだったんだから。知り合いも誰もいない状況で、周りはみんな敵ってことだもんね」



無邪気で好奇心が旺盛で、感受性が強い。
ちょっと浮き世離れしていて、でもそんな、どこにでもいる普通の女の子。


あの―――眩しい微笑み。



「一年生の教室に行けば、その様子が良く分かったよ。美羽ちゃん、最初は友達を作ろうって張り切ってたのに……全然、受け入れてもらえなくて。いつも一人ぼっちで」



明るい“ミウ”が、一生懸命に笑顔で話しかける光景が目に浮かぶ。
一方的に避けられ、無視されては、背を向けられる。
やがて、ぽつん、と一人残される“ミウ”。


美羽が人間嫌いになった、理由。




「今の美羽ちゃんだったら大したことないだろうけど、小さいときって些細なことでもショックになっちゃうものなんだよね。……美羽ちゃんは繊細なところがあるから、なおさらだと思う」




俺と同じような境遇に、あのときの“ミウ”も置かれていた?

いや、俺は自分から、グループの輪から離れていったんだから自業自得とも言えるけど。

でも、彼女自身は何も悪くなかった。
向こうの事情で勝手に、仲良くしたいと思っていた人間たちから弾かれてしまった。




「そのときからだった。美羽ちゃんが“理想”に入れ込むようになったのは」




重苦しい口調と共に、美空先輩は嘆息を零す。




「自分の呼び方も、喋り方もだんだん変えていって。美羽ちゃんは“理想の自分”になりきることで、自分は特別だって無理矢理思い込もうとして―――自分が傷つかないように、心に殻を作った。強い強い、壁」




それが、あの仮面?
すぐに剥がれるくらいに薄っぺらで、なのに驚くほど強い意志で固められた―――




「美羽ちゃん自身は多分、分かってない。無意識にやってることだと思うんだ。本当に、ただ格好良いからっていう理由だけで、自分が動いてると思ってる」

204心愛:2013/01/02(水) 17:17:58 HOST:proxy10058.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うーん…そう信じたいw

美空がなんか難しいこと言ってるけど、最後のシーンに向けて伏線張りまくってるだけなんで、そんなに気にしなくていいからね!
とりあえずこれを終わらせないと進めないから…(~_~;)

205ピーチ:2013/01/02(水) 18:10:44 HOST:nptka301.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

美羽ちゃん可哀想だよね……

美空先輩優しい………!

206心愛:2013/01/02(水) 22:13:46 HOST:proxy10044.docomo.ne.jp






俺は、一人でひっそりと生きることを選んだ。
息を潜めて、誰の目にも留まらないように。
味気なくて、つまらなくて。それでも酷く安全な道に逃げ込んだ。


でも、美羽は。




「ゴタゴタが大きくなったのもあって、あたしたちを心配したお父さんが計画を諦めて。思い切って家族で引っ越して、転校した後も、美羽ちゃんの“理想”はどんどんエスカレートしていったんだ」



―――理解されなくてもいい。


常識と、同級生たちと敵対する方向へと突き進んだ。

美羽の追い求める“理想”はいつの間にか、人を寄せ付けない、鉄壁となって美羽を守るようになって。


だけど、皮肉にも。
あからさまな無関心の代わりに、もっとはっきりした嫌悪を向けられるようになったってわけだ。




「……美羽ちゃんはまた、自分が傷つくことになる道に進もうとしてる」




いや―――暗い顔で先輩が言う“傷つく”には、もっと深い意味があるような気がするけど。
でも、だいたいは合っているだろう。


美空先輩は、美羽がその奇異な言動ゆえに、周囲から孤立して―――それによって、多かれ少なかれ、彼女自身が“傷つく”ことを懼(おそ)れている。




「美羽ちゃんが望むなら、いくらそれがおかしくて、他人様に胸を張れないことだとしても、応援したいって思うよ」




本当に……良いお姉さんだなと思う。
妹が可愛くて大切で仕方なくて、たった一つしか違わないのに、必死に守ろうとしていて。



「でも、それだけじゃ美羽ちゃんを守れない。……守れなかった」



ぎゅ、と強く唇を噛み締める先輩。




「あたしは……この機会にこんなことはやめて、普通に、美羽ちゃんに幸せになってほしい」




こんなことやめたら、とは俺も言ったことだ。

自分が望んでやっていることでも、蔑まれ貶められる美羽が見たくなかったから。


でも。




「だからお願い、圭くん。美羽ちゃんの『病気』をやめさせること、協力して」




美空先輩が澄んだ、真摯な瞳を向けてくる。

……多分、俺を呼び出した本当の目的はこれだろう。


可愛い妹を正しい道に導くために、そこそこ仲がいいクラスメイトの俺に、年下だというのに真剣になって頼み込む先輩。


本当、美羽にそっくりだ。


どんだけ強くて、優しいんだよと思う。


彼女の熱意に負けて、つい頷いてしまいそうになる。


それでも。




「……すみません」




それでも俺は、美羽の気持ちに反することはしたくないんだ。




「俺は美羽の味方です。美羽が自分で考えを改めない限り、その立ち位置を変える気はありません」




「圭くん……っ」




ガタンと音を立て、先輩が身を乗り出す。




「あたしは美羽ちゃんに、誰かを好きになれるようになってもらいたいの!」




悲痛な声。
今にも涙を浮かべそうなくらいに、綺麗に整った顔を歪める。




「このままじゃ、美羽ちゃんは誰も―――圭くんのことだって、好きになれないんだよ!?」




「……先輩」



美空先輩はやっぱり、まだ美羽に関する何かを隠しているようで。

でも、美空先輩が故意に沈黙を守っている、それを無理に問い詰めてしまったら―――多分、俺も先輩も、後悔すると思う。
ただの予感、だけど。


先輩は声量を落とし、でも痛みの滲む表情で言う。



「……それは、圭くんだって嫌でしょう? でももし、美羽ちゃんが変わったら、」




「―――それじゃ意味ないんですよ」




俺はあの日の“ミウ”―――美羽に、かけがえのない、大切な何かをもらった。

彼女のまっすぐさ、まばゆいまでのひたむきさ。

それが俺を勇気づけて、俺をここまで支えてくれた。

恥ずかしくて誰にも言えないような話だけど。


……美羽があのときどんな状況に置かれていて、どんな気持ちで言った言葉だとしても。
どんなことがあって、彼女が“理想”に焦がれるようになったとしても。


美羽の情熱は本物なんだ。

207心愛:2013/01/02(水) 22:21:06 HOST:proxy10044.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美羽が中二病に走った理由なのでした←
さて、明らかに正論の美空を説得するためにヒナにひとがんばりしてもらわないと…

ありがとう! 姉妹の絆的なものと、ヒナと美空の優しさが出せたらなーと思ってます!

208ピーチ:2013/01/02(水) 23:41:24 HOST:EM114-51-61-171.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

お互い正論っぽく聞こえるのはなぜだ←

でもまぁお互い美羽ちゃんのこと考えてのことだからねー

209心愛:2013/01/03(木) 10:18:08 HOST:proxy10027.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そこに気づいてもらえたらもうここあの目的超達成してるわw

そう、二人とも完全に美羽のためなの!
正論ぽく思えたならそれもまた良かった←



そしてヒナが主人公らしくバシッとかっこよく決めてくれるはず多分!
あとやっとのことでタイトル登場!

210心愛:2013/01/03(木) 10:19:50 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp







「好きとか嫌いとか、正直良く分かりませんけど」




恩返し、なんて大層なものじゃない。

ただ、俺は美羽に報いたいし、美羽の“理想”をこれからも応援したいって思う。




「痛くて、単純で、一生懸命で、強情で、バカみたいにまっすぐで。絶対に、自分の意見を譲らない」




『だから、ぼくは逃げない。諦めない。誤魔化さない。絶対に、ぼくの信念を曲げない』




「―――誰にどう言われようと、俺が好きなのは、そういう美羽ですから」




だから。




「あいつが満足するまで、俺は美羽にとことん付き合いますよ」




―――『これがぼくなんだから』




凛とした、決意を秘めた赤い瞳。

ずっとずっと、美羽は自分に正直なままで。
いくら外見が変わっても、強くて純粋な心は、少しも変わってなんかいないんだ。

それを変えてしまったら、美羽の『今まで』を否定することになる。



「でもっ」




「それに、あのヴァンパイアがどうとかどや顔で言う真性邪気眼女のビョーキを治した上に、なんの取り柄もない俺なんかを今すぐ好きになってほしいなんて、いくらなんでも高望みすぎですよ」




なに先輩に釣られて熱くなってるんだ俺。ここ喫茶店だろ―――なんて、冷静な考えが頭をよぎるけどあえて無視。



そう、俺は多くは望まない。
望みたいとも思わない。


俺が隣にいても構わないって、楽しいって思ってくれるなら、それでいい。十分すぎるくらいだ。


……そりゃ、いつかは好きになってもらえたらいいなーとは思うけどさ!



「安心して任せて下さい、美空先輩。……今はまだだけど、いつか」



今はただ、美羽が安らげる、そんな居心地のいい場所でありたい。
まだ、それでいいんだ。



……初恋舐めんなっての!


俺は呆れるほど気が長くて、美羽の『眷属』で、現在進行形でもっのすごい面倒な電波女に惚れてる筋金入りのバカなんだよ!



だから、俺は笑って―――目を見開いている美空先輩へ向けて、高らかに宣言する。





「―――俺は俺なりの方法で、ありのままの美羽を攻略してやりますから!」





長い長い、沈黙。


「……あ、あれ、もしかして俺スベった?」と急に正気に戻って居たたまれなくなり、座り直してとりあえずすっかり氷が溶けてしまったレモンスカッシュを飲んでみたりする。

……味、薄っ。

思わず渋面を作っていると、くすっ、という小さな笑い声が微かに聞こえてきた。
顔を上げれば、



「……そっか……だから、美羽ちゃんは……」



唇を綻ばせ、優しげに微笑む美空先輩。
その表情は、今まで見せたどんなものよりも魅力的で―――ちょっとだけ、見惚れてしまった。



「圭くん」



美空先輩が、俺の名前を呼ぶ。
慌てて背筋を伸ばした。



「あたしの代わりに、美羽ちゃんを助けてくれる?」



強い、眼差し。
こちらを試し、見透かすような視線。




「美羽ちゃんを、守ってくれる?」




先輩はずっと何かと葛藤していて、それでも、今日会ったばかりの俺を信じて、その何かを俺に託そうとしてくれている。


その「何か」が分からなくたって。
それが美羽に繋がることなんだったら。

返事なんか、最初から決まっていた。




「はい」




「分かった」




ふわっと黒い瞳の光が和らぐ。



「その言葉が本当だって、期待してもいいって……あたしは信じるよ」



一度確かめるように瞼を閉じ、そしてまた、俺を見据える。



「圭くん。美羽ちゃんは臆病で、今も色んなことが怖くて逃げてる。だから、圭くんがいっぱい、当たり前のことを経験させて、教えてあげて」



そうしたら、と美空先輩はとびきりの笑顔で。




「君の恋路、あたしが全力でサポートしてあげる」




「……頼りにしてます」



「任せて!」



誰よりも妹思いの少女は、俺を見上げて晴れやかに笑った。

211ピーチ:2013/01/03(木) 10:44:35 HOST:EM114-51-25-253.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

未空先輩優しいいいいいいい!←

でもヒナさんも優しいんだよねほんと。これでこそここにゃんキャラだって感じ?

212心愛:2013/01/03(木) 18:57:11 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp







年上の意地と男の見栄が対立し、奢(おご)る奢らないで揉めた後。



「先輩は電車ですか?」



「や、迎えが来てるはずなんだけど……」



店を出れば、空はもう赤とオレンジ色の綺麗なグラデーションに染まっていた。


きょろきょろ辺りを見回す美空先輩が、やがて。



「あ、いたいた」



彼女の視線の先に、いかにも高級そうな黒塗りの外国車。

小市民の俺はつい気後れして後ずさる。



「え、あれですか本気で……なんか誰か出てきたんですけど!?」



運転席から降り立ったスーツ姿の若い男(イケメンだ)が扉を開けるのを見た先輩は平然と言う。




「執事だから気にしないでいいよ」




「執事ぃ!?」



どこの大富豪だそれってそりゃ結野家でしょうけど!




「うん、運転手兼あたし専属の執事。別名人間目覚まし時計」




社長令嬢ってみんなこんな待遇なのっ!?



「……はは……格差社会、か……」



なんかもう驚くどころじゃなくなってくるよ。
あれか、美羽のワガママが許されるのも高そうなのに毎日違う服着てるのもみんな金持ちだからか。はは、次元が違うわ。さすがブルジョア。




「じゃーね圭くん! 今日はありがとう!」




いつの間にか数歩離れていた美空先輩の声に、一人黄昏ていた俺はやっとのことで立ち直る。



「美羽ちゃんのこと、頼んだよ!」



「……はい!」



夕焼け空。
赤い光の乱舞を背景に、きらきら艶めく二房の黒い髪が軽やかに踊る。

小さく華奢な背中を向け、ゆっくりと歩を進めるその姿はまるで映画のワンシーンのように美しく、胸に迫る光景で―――




びったぁぁぁん!




……見たらだめだ見たらだめだ見たらだめだ。


せっかくのいいムードが台無しになりそうな、背後からの何かと何かの激突音を精一杯の努力をもって聞かなかったことにし、ダラダラ汗を滴らせながらも俺は反対方向へ早歩きで立ち去ったのだった。







☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜







「美羽、美空先輩のことどう思う?」



「な、なんだ急にっ」



次の日の休み時間。

もはや言うまでもなくゴスロリの美羽は、急な話に戸惑っていた。


黒い薔薇と羽根、レースをふんだんに使ったヘッドドレスのリボンが、主の動揺を表すようにひらりと揺れる。


「いいから」と押し切ると、渋々ながらも一応答えてくれた。



「……美空は……ぼくとは真逆にある存在だな」



唇に丸めた指を当て、



「ぼくが《闇》ならあれは《光》。正しくて、ぼくなんかが見るには眩しすぎる、圧倒的な……光」



でも、と前置きしてから。



「月が太陽に照らされて初めて輝くように、光があって初めて闇が生まれる。……なんとなく、そんな感じだな」



いつもの中二台詞だけど、言っていることはあながち嘘じゃないような気がした。



「でもその真逆の位置から、必死にぼくのために色々考えている。……たとえば、美空が勉強や運動を頑張って、やりすぎなくらいに目立つことは……半分くらいはぼくのためなんだ」



「美羽の?」



「ああ。潜在的な才能だって大きいけれど、それを日々努力して磨いているのは美空自身で―――『あの結野先輩の妹』という肩書きだけで、ぼくはいくぶん、周りから肯定的に見られてきたから」



美羽の言うとおり、きっとそれは美空先輩の計算のうちなんだろう。

自分は美羽に、ずっとつきまとうことはできない。
だから、少なからず間接的に、美羽を守ってきたんだ。

先輩が活躍していろんな人から注目と尊敬を集めれば自然と、その妹である美羽も一目置いてもらえる。
異質な存在である美羽への風当たりを、緩和することができる。


……先輩はやっぱり頭がいい。
その才と優しさを惜しみなく注ぎ込まれ、愛されている妹の方は。



「何をするにも派手で、なのにドジで、肝心なところで抜けているが」

213心愛:2013/01/03(木) 18:58:01 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp






ちょっとだけ恥ずかしそうに、はにかんだ。




「……たった一人の、ぼくの自慢の姉だよ」




多分、自覚はないんだろう。
顔を逸らすことも忘れて、小さく笑う美羽の柔らかな表情。


ああ、美空先輩に見せてあげたかったな―――と思った、
その瞬間。

俺のポケットで、ブーッブーッとバイブの音が鳴り響いた。


「電話か?」と怪訝な顔をする美羽に断って画面を確認。




「あ、美空先輩だ」




「…………は?」



通話、っと。



『もしもし圭くーん? 美羽ちゃん元気? 倒れてない? もーどんなに言っても朝ご飯食べてくれないからいつも心配で居ても立ってもいられなくてさー! 圭くんの電話番号聞いといてよかったよもー!』



「シスコンもいい加減にして下さいよ!」



繋がった途端にものすごい勢いで喋り出す美空先輩に心底げんなりする。



『だって美羽ちゃんに聞いたらうるさいって言われちゃうし』



「知りませんからそんなの……」



『大事なことだよ!』



電話口の向こうでぎゃんぎゃん騒いでいる先輩に嘆息し、それからふと思いついて、いくぶん息を潜めて言う。



「そういえば先輩、一つ聞きたいことがあったんですけど」



『んー?』



「昨日『高校生の恋愛反対』みたいなこと言ってたのって……もしかしてわざと俺を試してたんですか?」



美空先輩が一瞬だけ黙り込み。



『……さぁ?』



どうだろうね、と笑った。


『圭くんの判断に任せるよ。とにかく、今のあたしは圭くんを信用して、期待してるってこと』



「はぁ……」



上手くかわされた俺の隣では、美羽がさっきから必死な顔で何事か言っている。



「……ま、待てヒナ、君はいつ美空と知り合いに!? そういえば名前で呼んでるし……っ」



『あっ忘れてた! あとお昼も言わないと摂らないから無理矢理にでも食べさせて! 甘いもので釣るのもいいんだけど栄養的に考えて徐々に』



「先輩まで俺を美羽の保護者扱いするのやめて下さいませんかね!」



食事は大切だけど!



「だからなんの話だ!? 主に隠し事をするんじゃないっ」



「ヒナ、もしかして相手美空先輩? いいなー、私にも代わってよ」



「? みくせんぱい?」



「あー、夕紀は知らないか。美羽のお姉さんでダンス同好会の」



「うっそ結野センパイ!? あの!? ちょ、抜け駆けしてんじゃねーよヒナ!」



「お前ら全員黙ってろ!」



これだから人気者は……!



『なんか賑やかだねー。こっちは廊下出て歩いててさ、静かだからよく聞こえるー』



「転ばないで下さいよ……?」



ただでさえ絶望的なまでにドジなのに、電話に気を取られて不注意な状態はことさらに危険すぎる。



『あはは、やだなぁだーいじょうぶだっ《ゴンッッ》』



「言わんこっちゃねぇ!」



お約束だなおい!



『……う、……うぅ………こ、転んではないもん! 足滑らせて転びそうになったけど目の前にあった壁にぶつかってちゃんと止まったからセーフだもんっ』



「余計救いようないですよ!」



「救いようって……美空がまたなにかしでかしたのかっ? そうなんだな!?」



俺のツッコミ生活に、個性派すぎるメンバーがまた一人追加された。
……やっぱりサポートも当てにしない方が良さそうだ。うん。

214心愛:2013/01/03(木) 19:05:39 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そんなわけで美空の話でした!

ここあキャラの基本ステータス「優しい」を備えつつ、頭良いからちょっと人より冷めたところもあれどドジのせいで全然決まらない・究極シスコン美少女美空先輩をこれからもどうぞよろしくヽ(≧▽≦)/


ちなみに美空はちゃんとヒナに協力していくよ!ドジなりに!

215ピーチ:2013/01/03(木) 19:11:25 HOST:EM49-252-66-115.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

みーくせーんぱーいっ!?

何をどうやったらそこまで綺麗にドジれる!?

……美羽ちゃーん、お姉様を呼び捨てはちょっと………

216心愛:2013/01/04(金) 18:05:25 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美空のアレはむしろ才能の一種w


まぁ、一つしか年離れてない姉妹なら、呼び方も含めて結構遠慮ないんじゃないかなっと。
美空は溺愛しすぎ?

217ピーチ:2013/01/04(金) 20:33:28 HOST:EM1-114-144-142.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

あ、そう考えたら自然か←おい

なるほどねー、分かるかもw

でもそーいうのが未空先輩の長所の一つw

218心愛:2013/01/04(金) 21:32:16 HOST:proxy10046.docomo.ne.jp
>>ピーチ

「美空」ね!
美空の「み」は「美しい」ね!
と細かいとこにうるさくこだわるここあでしたごめんなさい。


「未空」も可愛いけどw

219ピーチ:2013/01/04(金) 22:49:13 HOST:EM1-114-144-142.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

間違えたー!?

ごめんなさいここにゃんごめんなさい美空先輩!!

何か最近ちょー適当に変換してたので気を付けねば!←

220心愛:2013/01/05(土) 17:15:01 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いやいや大丈夫だよ!
細かくてごめんね!

間違って変換しちゃっててずっと気づかなかったことここあもよくあるよ(・∀・)


邪気眼少女も、苺花&夕紀の話とか美空の話とか書きたいから番外編やりたいんだけどなかなか余裕が←
とりあえず日常編を巻き気味にしてイベント多く入れることで対処っ(´・ω・`)

221心愛:2013/01/05(土) 17:16:45 HOST:proxy10027.docomo.ne.jp

『王子のお悩み』






「……わ」



「ラブレターですかはいはい良かったですねー」



靴箱の扉を開いて停止しているイケメン女に半眼で言う。
柚木園はこちらを向き、困ったように苦笑して、



「……ええと……果たし状とかもあるかもしれないよ?」



「ねーよ! 下手な慰めいらないから逆に傷つくから!」



相変わらずのアホみたいなモテっぷりで羨ましいことですねぇ!


予想通り、正方形の空洞の中に紙がみっちりぎっしり綺麗に詰まっていた。
漫画みたいにズザザザザッとは落ちないだろうけど地味に嫌だなこれ。
入れるのも大変なら取り出すのも大変だろ。
ってか今は放課後なんだから、朝から今にかけてこんなにたまったってこと? 怖くね?



「あはは、圧力で靴の形が変わりそう」



にこやかに笑いながら丁寧に封筒を抜き取って回収している柚木園。



「……にしてもいまどきラブレターって……」



しかも女が女に。



「気持ちは手紙で伝えてくれても嬉しいなー、ていつも言ってるからね。可愛い女の子たちが一生懸命私のために綴ってくれた手紙なんて最高でしょう?」



「犯人お前か! 毎回橋渡しさせられるこっちの身にもなれよ!」



「ごめんごめん」



黒糖みたいに甘い瞳を細めるだけで、さらさら爽やかなハーブ色の風が吹き抜ける。



「はー……。で、これからデートですか?」



「そう怒らないでってば。今日は大丈夫なんだけど、放課後はだいたい忙しいから、お誘いは全部断ってる」



「あれ、部活やってたっけ」



「やってないよ」



「へー。キャラ的には部活の助っ人に引っ張りだこ、みたいな感じだけど」



「なにそれ」



笑って肩を竦める彼女。



「確かに色々勧誘されたけどね。今は演劇部に、文化祭で手伝ってくれないかって言われてる」



「あー。王子役を?」



「うん」



やっぱりか。



「でも劇にはあんまり良い思い出がなくて」



「……それは意外。喜んでやりそうなのに」



「いや、楽しいよ? 楽しいんだけど」



柚木園は無駄に麗しい微苦笑で、



「私が参加するって決まった途端に、お姫様役を巡って女の子の血で血を洗う熱戦が展開されちゃうから」



「どんだけ!?」



「私としては、そういう女の子がみんなハッピーで終わる話がいいんだけどね―――そう、」



それからふっと遠い目をして。




「懐かしいなぁ、『王子様と27人のシンデレラ』」




「無茶苦茶すぎる!」



それ話として成り立つの!?



「王子との結婚条件である一足のガラスの靴を巡って女同士の陰険バトルが繰り広げられる」



「ドロドロだ!」



「最終的にはシンデレラは全員王子と結婚するんだけどね」



「まさかのハーレムエンド!?」



完結後の凄惨な修羅場を予感させるエンディングだった!


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板