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Love the square

12ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/08/18(土) 19:21:24 HOST:EM117-55-68-147.emobile.ad.jp


 ――新着メール15件
 携帯に表示されるその文字に俺はため息をついた。

 あのあとやっとの思いで奈々をなだめ、翔を連れて三人で帰ったのだが……
 知らないうちに溜まるメールに正直圧倒されている。
 何も知らない母さんがキッチンで料理をしていてカレーの匂いが漂ったが、俺は食べる気も失せて自室へと向かった。
 なんだか家の中を歩くのでさえも嫌になってくる。


 女なんて母さんと妹と奈々みたいなのしか知らないから、どんな風に返信すればいいのかがよくわからない。
 嫌な思いをさせたらどうしようとか変な心配をしながら俺は顔と名前が一致しない女子に返信を送っていた。
 どんどんメールを返していくうちに、すぐまた次のメールがくる。
 どこまで返信したのかがわからなくなって、またさっき返信したばかりの人に返信してしまう。
 先にメールした人のメールがどんどん埋もれていく、魔の無限ループだ。

 俺はメールだけでどっと疲れが溜まって、自然と深い眠りに落ちていった。

     ×

 時刻は午後8時。
 ちょうど暗くなってくる時間帯だ。
 さっきまでは晴れていたはずなのに、今は雨が降っている。
 俺はふいに思い出した路地裏の猫のことが気になって、散歩に行くついでに様子をみてくることにした。


 実際外に出てみるとけっこう土砂降りだぞこれ。
 俺はなんとなく少し焦ってしまっていた。
 路地裏がみえてきて、思わず走るとそこには俺が一目惚れしたあの人の姿があってちょっと安心する。
 傘を持ってきていないのか、ぎゅっと猫を抱きしめているその姿でさえもドキンと胸が鳴った。
 雨に濡れないように、自分が傘のかわりになっているのだろうか。

 そんなとこを好きになったんだなあ、俺。

 心の中でポツリとつぶやいて、俺は覚悟を決めた。
 そっと、彼女に傘をさす。


「これ、どうぞ」
「……で、でもあなたが」


 鈴のような、綺麗な声。
 こんなに近くでみたのは初めてで、改めて惚れ直してしまったような気がする。


「俺、毎日ここに来て猫のお世話してあげてるところ――ずっと、みてました」


 なんて、変態っぽいけど。
 俺なりに精一杯、言葉で伝えてみた。


「優しい人だなって、ずっと話してみたいなって思ってたんです」


 「だから、今こうして会えてうれしいです」
 そう伝えてからぎこちなく微笑むと、彼女はふわりと笑顔をうかべた。
 俺の、大好きな彼女の笑顔。


「……傘、もう一つ持ってきてるんで。猫用に」
「えっ」
「俺もいっしょに、猫の面倒みれたらなって思うんですけど……ダメですかね?」


 羞恥に耐える俺って一体。
 とにかく、俺は思いのままに言葉を並べた。


「――毎日」


 彼女が、ちいさく口を開く。


「毎日8時くらいにここに来てるの」
「来て、いいんですか?」
「わたしは、君がいてくれたほうが楽しいから」


 やべえ、可愛い。
 俺はもう、本当にこの人のことが好きなんだと感じた。


「――名前」
「え?」
「なんていうんですか?」


 思いきってきいてみた。
 多分俺今すげえ顔真っ赤だ。


「わたしは莉乃(りの)」
「俺は健人です」
「よろしくね」
「よろしくお願いします!」


 これが、俺たちの出会いだった。


     ‐


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