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生命ノ在処<イノチノアリカ>

5bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/06/06(水) 18:07:23 HOST:p4239-ipbf2501sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp

見遣った先は少女の手元――しっかりと握られているだろう刀が、カタカタと小さな音を立てて揺れているのだ。
それはつまり、少女の身体自体が振動しているという事。
――しかし、覚えている限りここまでの短い流れで少女が怯えるような要素は全く無い。
「おい、お前何で震えて――」
「私に触れるなッ、!!」
一瞬で、少女に鬼のような気迫が甦った。
不思議に思い伸ばしただけの腕を払われた昌は、訳が分からず少女を見つめる。
「触れるな、触れたら…………」

「……、触れたら?」
実際は掠りもしなかった指先を引っ込め、言葉の先を促す。
――が、少女はそれを拒絶するようにくるりと背を向けてしまった。
「お――」
「何もしていなかったのなら、もう貴様に用は無い。何処へでも去れ……今すぐ去れ!」
今度は〝おい〟と言う事も出来ず、遮られた言葉。
結局何をしたかったのかよく分からないまま、少女の声は表立って〝拒絶〟を示した。
白い袖を翻し、走り出したその姿は瞬く間に小さくなる。
やがて少女は生い茂った草むらに身を投じ、その場には昌一人だけが残された。
やはり言いたい事は色々あったが、最も重要だろう事を口にする。


「まだ名前、聞いてねぇんだけど……」




◆◇◆




「――――なるほど。ていうか昌、あんたそれ本気で言ってる訳じゃないだろう?」
その日の夕方。
慌しく帰ってきたと思えば〝聞いて欲しいことがある〟と詰め寄られ、一部始終を聞かされた昌の姉――珠南(しゅな)は、最後にそう問い掛けた。
それに対し昌は、今まで何を聞いていたんだとばかりに食って掛かる。
「本気に決まってるだろ馬鹿っ! 全部事実だ!」
「馬鹿とは失敬な。そうはいっても……はっきり言って、現実味がないんだよ」
冷静に零された珠南の言い分は最もだ。
いつもの様に日の出を拝んでいたら銀髪の巫女が現れて、何故か物凄い剣幕で刀を向けられて――よく分からないまま、その巫女は何処かへ消えてしまった。
――こんな説明をされれば、珠南でなくとも同じ反応を返すだろう。
理解不能、浮かぶのは精々その四文字だけだ。
しかし、その出来事を身を以って体験した張本人である昌は、諦めきれずに言葉を続けた。
「とにかく俺は確かに見たんだよ、あれは巫女だった! ……と思う」
言っている途中少女の袴の藍色と銀の髪を思い出し、中途半端に締めくくる。
それは、巫女といえば白い着物に緋色の袴、艶やかな漆黒の髪――というこれまでのイメージに引き摺られた結果に他ならない。
そんな昌の様子に、珠南は小さく――だがはっきりと溜息を零した。
「……で、会ったのはその巫女〝モドキ〟だけなのかい?」
「ああ。……他には誰もいなかった」
「そ。まぁそうだろうさ、あの神社は……〝もう何年も人の手が入ってない〟んだからね」

一瞬、流れる沈黙。

「…………姉貴、今何て言った?」


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