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生命ノ在処<イノチノアリカ>
14
:
bitter
◆Uh25qYNDh6
:2012/06/17(日) 11:47:10 HOST:p4239-ipbf2501sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
時は流れ、正午に差し掛かる二時間前。
「っ……何か、妙に人多くないか?」
目的地――城下町に着いてすぐにざわざわと騒ぐ人混みに飲まれ、振り返った清吾がそう問い掛ける。
問われた昌は同時に向けられた栗色の瞳と視線を合わせ、「ああ」と短い返事と共に頷いた。
その僅かな間にも人々が押し寄せ、我先にといった様子で一定の方向へ流れていく。
一体何を目指しているのか、その様はまるで荒波のようだ。
風に乗って微かに聞こえる甲高い泣き声は、恐らくこの状況で親とはぐれた幼子のものだろう。
今日は祭日か何かだっただろうか。
明らかにいつもと異なる町の様子に、昌はふとそう考えたが、特にこれといった行事は思い当たらない。
「なぁ、今日祭りか何かあったか?」
「いんや、何もなかった筈だぜ」
「……だよな」
最初に見せた人混みへの反応からして分かり切ってはいたが、一応問い掛けてみるも清吾から返されたのは予想通りの答え。
いよいよ分からなくなった目の前の状況に二人で顔を見合わせるが、何か浮かぶでもなく揃って首を傾げるだけだった。
取り敢えずこの場に留まっていても仕方がないと踏み出し、人波に流されないよう注意しながら先を急ぐ。
が、
「うわっ!」
ひたすらに人を掻き分けて進んでいる途中、何かに正面から衝突し、二人の口から同時に悲鳴が零れた。
昌は立ち塞がった〝何か〟に当たった鼻を押さえ、その後ろを歩いていた清吾は昌の後頭部に打ち付けた額を擦る。
「痛っ、ててて……何だよもう」
「ヒヒッ、ごめんごめん。でも前方不注意だった君達も悪いンだよ?」
「!?」
痛みに耐えながら小さく呟いた瞬間頭上から響いた声に、昌はびくりと肩を揺らした。
恐る恐る顔を上げ、声の主を見上げる。
「弥麗(ビレイ)さん……、おどかすなよ」
「だから御免ってば。わざわざ迎えに来てあげたっていうのに、つれないねェ」
「……迎え?」
白い長髪を揺らし、若干不満げに紡がれた言葉。
その内容に首を傾げ、昌は目の前の男を見上げた。
紅の双眸で此方を見つめる彼の名は朱 弥麗(シュウ ビレイ)。昌と清吾、二人をまとめて雇用してくれている甘味屋の主人だ。
腰を余裕で過ぎる白髪(はくはつ)に濃紅の瞳、そして独特な物腰という妖しさ満載の容姿と人柄の影響で周囲の人々とは若干距離があるが、店はそれなりに繁盛している。
改めて考えると不思議な事だが、この人の場合気にしたら負けだと大分昔に諦めていた。
此処。天照(アマテラス)大国内で唯一苗字を持つ人物であり、噂では異国からの流れ者らしいが、自宅を兼ねる店の奥にはこの国の歴史や伝説……その他あらゆる情報を綴った資料が溢れていたりと、まさに謎の塊と言える人物だ。
そんな弥麗がわざわざ自分達二人を迎えに来る理由が分からず、改めて見上げた昌の視線が紅の瞳と交わる。
「そ、お迎え。びっくりしたかイ?」
「いや、吃驚は……したけど。何でわざわざ」
「まじビックリしましたよ弥麗さん! いつもはお店で待ってるのに」
弥麗に対する昌の言葉を遮り、結果二人の会話に乱入した清吾がそう言って大きな瞳を瞬かせた。
「嗚呼、そうだねェ。でも今日はホラ……町がこんなに混雑しているだろう? 大事な働き手が迷っちゃ大変だからサ」
弥麗はゆっくりと告げ、やはりヒヒッと妖しげな笑みを零した。
同時に幾つもの指輪が光る指先を少年二人の頭に乗せ、ぽんぽん、と軽く叩くように撫でる。
青年が少年の頭を撫でる――本来微笑ましい光景なのだが、弥麗という男が実行すると奇妙なだけなのは言うまでもない。
「…………」
それを分かっている上でなんとも微妙な表情を浮かべている昌と、感銘を受けたように瞳を輝かせている清吾とを交互に見遣り、弥麗はもう一言続けた。
頭を撫でていた手は改めて伸ばされ、
「さ、行こうカ。着くまでしっかり握ってるんだよ?」
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