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鈴扇霊

11ピーチ:2012/06/10(日) 16:19:54 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第五話・上司』

「あっまねー!!」
そう叫んで、あきなり天音に飛び掛ってきたのは、金築 梓(きんちく あずさ)だ。
「・・・どーしました?」
「いや、ただ見つけたから」
にこにこしながら、本音をはっきりと答える。天音ははぁ・・・と小さく息を吐き、そのまま梓に引きずられるようにしてその場を後にした。
「あ、そーだ天音」
「ん?」
「今度さ、天音の家に泊まっていい?」
梓の言葉に、天音の行動、思考が一旦停止をする。
「・・・えーと、今何と?」
「だから、天音の家泊まっていい?って」
天音は、梓の顔を見て小さくため息を吐きながら、前置きにこう言った。
「・・・・・・あのさ、一つ言っておくけど・・・」
「うん」
「私の家に来るのは構わないけど、神社よ?いいの?」
天音の質問に、梓は少し考えてから答えた。
「うん、いいよ」
「夜に、知り合いやちょっとした用がある人も少なくないわよ?」
「いいよー」
梓の見事とも言える即答に舌を巻き、しばらく考え込んでから言った。
「・・・分かった。いつ?」
「別に、あたしはいつでもいいよー」
「じゃあ・・・来る気があるなら、都合的には土曜辺りが一番いいかもね」
「うん、分かったー」
じゃあ明日だねー、と答え、そのまま教室に一目散に駆けて行く梓を見て、やれやれと肩を竦めた。そう。今日は週の終わり。
その直後、天音の携帯が鳴った。何の飾り気もない、ただの着信音が。
「―――もしもし?」
その声に呼応するかのように、少し低めの男の声が聞こえてきた。
『今、大丈夫か?』
「・・・大丈夫なわけないでしょう?今、何時だと思ってるんですか?奥平さん?」
『ははっ、学生らしく、学校行ってる・・・』
「当たり前です。一応、これでも柊達よりはましなつもりですから」
『・・・まぁいい。本命、見つかったか?』
奥平、と呼ばれた電話の主が、受話器の向こう側で未だに笑っている光景が、手に取るように想像できることに、天音が思わず苦笑を洩らした。が、「本命」の一言を聞いて、すぐに天音の表情が戻る。
「・・・いえ、まだ見つかってません」
『・・・まぁ、無理もないだろうな。天音、来週の月曜辺りから出かけてくれるか?』
「は?」
上司の突然の言葉に、天音の思考が一瞬停止する。しかし、奥平は天音の上司でもある。上司の言葉には逆らわない方が良いと言うことを、飛鳥井 昇と言う人間がしっかりと教えてくれた。
「・・・分かりました。月曜からですね?」
『あぁ、なるべく早くな』
明日から、と言わないことを考えると、日曜までに準備を済ませて行けと言うことだろう。
「で、場所はどこですか?」
『あー・・・っと、六原神社って言う所だけど』
「って・・・それ、鹿児島を出ろってことですか!?」
『あぁ。だから、なるべく早く』
「―――あぁもう!分かりました、行きますよ!」
そう言った直後、時計を確認した天音はあっと呟き、奥平にこう告げた。
「すいません。そろそろ授業始まるんで、続きは後から話してください」
『・・・忙しいな、分かった』
電話を切った後、天音は小走りになりながら教室へと向かった。


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