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Loveletter

112:2012/03/20(火) 20:27:39 HOST:zaqdb739ec8.zaq.ne.jp
ねこっぴ>>

妹の友達のあだ名に皆っぴってついてんねんw

113神目まどか:2012/03/20(火) 22:17:13 HOST:ntfkok190145.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
>>111
コイツ、指名手配犯ですよ。

114名無しさん:2012/03/20(火) 23:04:29 HOST:wb92proxy08.ezweb.ne.jp
かおりんまじでおらんの?

115名無しさん:2012/03/20(火) 23:05:56 HOST:wb92proxy08.ezweb.ne.jp
頭おかしなったんか?こいつってどの男

116ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/21(水) 13:37:36 HOST:e0109-49-132-14-61.uqwimax.jp

>燐

かわいーw
ねここは大体名前呼びだ…!

117:2012/03/21(水) 13:53:19 HOST:zaqdadc2a8b.zaq.ne.jp
ねこっぴ>>

何かさ…凝ってる名前の方がエエやん?

と、私は思ってるw

118ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/21(水) 16:04:36 HOST:e0109-49-132-14-61.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / めぐ 梨花side



「……………と、」
「え?」


 抱きしめられたままの状況に動揺を隠せないでいたけれど、レオ先輩が何か小さな声で呟いたのに気づき先輩の顔が見えるようにと上を見上げ首を傾げる。
 すると先輩は、呟きなんかじゃなくちゃんとあたしに伝えるように大きな声で言った。じっと目を合わせ、恥ずかしくて逸らしたくなっても逸らせないこの感じがさらに緊張感を生み出す。


「おめでとう……っ!」
「わたしからも!梨花ちゃん、おめでと!」


 レオ先輩に続き未花先輩も、可愛らしく微笑を浮かべてあたしに告げた。すごくすごく嬉しくて、泣きたくなってくる。


「ありがとうございますっ……」


 あたしからもレオ先輩の背中に腕を回して抱きしめた。離れたくなくて、嬉しくて。
 そしてその瞬間、不思議そうな表情をした今一番会いづらい人に会ってしまったのだ。


「梨花……?」
「め、ぐ……」


     -

119ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/21(水) 16:19:07 HOST:e0109-49-132-14-61.uqwimax.jp

>燐

そっか!
凝った名前とか特別な呼び方で呼ばれるとうれしいよねー

120:2012/03/21(水) 16:48:55 HOST:zaqdadc2a8b.zaq.ne.jp
ねこっぴ>>だよね(*^_^*)

更新頑張れノン

121ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/21(水) 23:16:29 HOST:e0109-49-132-14-61.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / めぐ 梨花side



「……っ廊下で何やってるんですか」


 めぐが反抗的なまるで睨むような目線であたしたちを見てきた。レオ先輩は何があったのかわからないから、きょとんとしたままあたしから離れる。でも怖くて、めぐに立ち向かえなくてぎゅっとレオ先輩の服の袖を掴んだ。


「……今先輩と仲良くしたって青春高校に受かるとは限らないのに、夢見がちだよね」
「っ、あたし推薦もらったから!」


 あたしを馬鹿にするのはよかった。なのに先輩たちのことまで見下すように見つめるめぐが許せなくて、つい推薦のことを口走ってしまう。
 その瞬間、めぐの目付きが変わったような気がした。見下すようなのが、許せないって言ってるような感じ。


「何で梨花がっ……どうして?!」
「……ピアノで、偶然吹奏楽部顧問の先生に聴かれてて。夏のピアノコンクールにも出るの」


 ピアノって言ったら怒るかな、と少し心配になった。ちょっと強ばったような表情でめぐを見つめる。
 だってめぐはピアノには凄く力入れてて、夏のコンクールも出たいと話していたくらいだから。


「……なん、で……りかばっかりえらばれて、」
「梨花、めぐ」


 狂いかけてきためぐとそれに対抗するあたしに落ち着けというようにレオ先輩が話しかけた。
 そしてそっと背中に触れ未花先輩もつれて場所を移動する。



「ちゃんと話し合えよ?」
「はーい」


 先輩の言葉に少しでも余裕だと思わせるためにふふっと微笑んだ。無理に、きごちなく。

122ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/23(金) 11:44:12 HOST:e0109-49-132-14-61.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / めぐ 梨花side



「……めぐにとってのピアノって何?」


 ふいに思い浮かんだ疑問をぼそりと口に述べる。めぐから睨みつけるような表情で見られると怖くて逃げたくなる気持ちもあったけど、負けないように真剣な表情を浮かべ尋ねた。


「……人生だよ、あたしにとってピアノは生き甲斐でもあった」
「そっか」


 ピアノが生き甲斐だなんてそんな気持ち、あたしにはわからなかった。でもコンクールで金賞を受賞するにはそれくらいの勢いで練習しなきゃだめなんだと思う。
 先生に言ってめぐを出場者に変えてもらうという案が思い浮かんだけれど、それはそれで惜しい。そして平等に公平に審査してもらいたいと思った。


「先生に頼んで二人で同じ曲を弾こう。そして良いと思った方が推薦でコンクールにも出場できるっていうので――――」
「そしたら梨花、推薦なくなっちゃうよ?」
「うん、でも一番納得しやすいし。曲は猫踏んじゃったでもいい?音取りは大体できてるから、コンクールの楽譜で」
「わかった」


 めぐが納得したところであたしはレオ先輩と未花先輩にその話しをしに行った。先輩たちはオッケーしてくれたから、あとは先生だ。
 期間は三日。三日後にまたこの高校の音楽室に集合する予定だ。緊張するけど楽しみだな!


     -

123ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/23(金) 12:01:39 HOST:e0109-49-132-14-61.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / ピアノ 梨花side



 あの日から三日が経った今日、ついにめぐと勝負する日になった。先生には許可をもらい、休日だというのにわざわざ学校まで来てくれた。
 音楽室に着くともうめぐは自信たっぷりのオーラを漂わせながら勝負する気満々でいた。後から先生も来て、応援でレオ先輩と未花先輩も駆けつけてくれたらしい。


「……じゃ、どっちから弾く?」
「あたしからいきます!」


 先生のダルそうな面倒臭そうな声を消すくらいの勢いでめぐが手を挙げた。よっぽど自信があるのか、寧ろ弾きたくてわくわくしているようにも見える。
 音楽室がしんと静まり返った瞬間、ピアノの音が鳴った。正確な指遣いに軽やかな響き。先生もゆっくりと一回頷いていたのが見えた。でも何か物足りないのか、レオ先輩や未花先輩はあまり良い表情をしていない。


「……じゃあ次、お前」
「お前じゃなく梨花ですよ」


 先生がお前と言った瞬間レオ先輩が苦笑しながらツッコミをいれ、ぷっとあたしも吹き出してしまう。緊張の糸がほどけたような気がした。
 軽やかな響きと正確な指使い指遣いだけでなく、思いっきり感情も込めてみる。楽しそうに聴いてる人が笑顔を浮かべちゃうような感じで。最後は切なく残念そうに。

 ピアノを弾き終えて、心臓がばくばく鳴ってるのが感じられた。いよいよ結果発表だ。


 めぐに譲ってもいいと思ってた推薦やコンクールだけど、やっぱりピアノを弾くのは楽しい。そんなピアノが生き甲斐で、めぐが羨ましく感じられた。
 そんなことを考えていると、先生が口を開いた。まず褒めてくれるのかと予想したら、結構当たっていたような当たっていないような。


「萌美――だっけ?お前は指遣いは正確だけど何か物足りない。パソコンで音を打ち込んだような真っ直ぐすぎる音。正直ずっと聴いていたいとは思わなかった。このままコンクールに出たら銅賞だな。
 梨花は前聴いたときより上手くなってる、ピアノ習ったことないくせによくやったと思うよ。感情もこもってて聴いてて飽きなかった。強弱もそれなりについてきたんじゃないか?コンクールで銀賞とれるくらいまではきたな」


 厳しすぎる言葉にめぐが呆然としているのを見て、内心やった!と思ってしまった。
 そして先生が最後に言い放つ。




「推薦もコンクールも梨花。もう変えようなんて無謀なことは考えるなよ、面倒臭いから。
 めぐは残念だけどちゃんと受験して吹奏楽部入んな。入ったとしてもその実力ではコンクールに出れない。じゃあな」


 更に厳しい言葉を吐き捨てて音楽室を去っていくのだった。


     -

124ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/24(土) 10:56:58 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 楽譜 梨花side



「なん、で……あたしじゃなく梨花なの……?」


 めぐが泣きながらそう呟いた。推薦をもらってピアノのコンクールにも出れるのに、あまり嬉しい気持ちにもならない。
 ピアノの技術とか、そういうのはやっぱり大切だと思う。でもそれはめぐみたいに長年ピアノやってる人じゃなきゃ手に入れられないし。でも、ね。


「あたしが言えることではないんだけど、いくらピアノが上手くても感情がこもってなきゃ正直聴いてて楽しくないよ」
「梨花に何が分かるの?! あたしは楽しさなんて求めてない!」


 そりゃ、あたしは音楽苦手だしピアノが生き甲斐なわけじゃないけどさ。
 そう言ってやりたくなったけれどぐっと飲み込んで冷静に一言言い放った。


「あたしは音楽は人の感情だと思ってる」


 人の心を左右する、不思議なもの。
 初めて音楽を聴いたとき思ったの。まだ小さい頃だったけど、明るい曲を聴いて楽しいなって笑ったのを覚えてる。


「明るい音楽を聴くと楽しくなるし、切ない曲は聴いてて泣いちゃうときだってある。それほど人の心を動かせるものなんだよ、音楽っていうのは」


 不安そうにレオ先輩と未花先輩を見つめると、大丈夫だというように微笑まれ恥ずかしくなった。今かなりサムイこと言ってるよ、あたし。
 めぐに一歩近付いて猫踏んじゃったの楽譜を見せた。聴いてて簡単そうに見えて結構難しい曲っていうのはこういうのなんだろうな。


「めぐはこの楽譜を見てどんな曲だと思った?」
「……考えてなかった、そんなこと」


 めぐの表情は緩む。その瞬間ほっとしたようにあたしも微笑を浮かべた。


「もう一回いっしょに練習しようよ!」



     -

125ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/26(月) 10:31:31 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 楽譜 side梨花



 こういう風に弾きたい、聴いてる人にこんな風に思ってもらいたい。そんな願いを込めながら、あたしとめぐ二人で楽譜を自分たちだけのものに変えていった。

126ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/26(月) 10:37:37 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

>>125は突然半角英数字でしか入力できなくなってしまったのでいったん投稿しました!
別タブで開くと直っているようなので解決なのかな?

今パソコン重いので更新率下がります!

127ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/27(火) 15:37:34 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 楽譜 梨花side



「できたー!」
「ふはー!」


 もう既に楽譜にはたくさんのことが書き込まれていた。自分たちがどう弾きたいか、聴いてる人にどんな感情になってほしいか、そしてあたしはよくわからなかったけど音楽の法則に違反しないように弾きやすくしたものだ。


「なんか自分たちだけの曲って感じだよね!」
「世界に一つだけのあたしたちだけの猫踏んじゃっただよっ」


 あたしとめぐと二人で喜び合うその姿はもうまさに青春のように思えた。そしてこれからが本番だとでもいうようにめぐがピアノの蓋を開けてあたしを手招きする。
 にこりと微笑みながらあたしをピアノの椅子に座らせると、楽譜を置いて至極楽しそうに話し出す。


「梨花、早速弾いてみてよ!」


 めぐの声に頷き、ふうと大きく深呼吸をした。静まり返る音楽室にピアノの軽やかな音をそっと響かせる。気持ちいいような恥ずかしいような、そんな感覚にどきんと手が固まりそうだった。
 でもこの猫踏んじゃったを弾き終えた瞬間その緊張はどこへやら、椅子から勢いよく立ち上がりめぐと手を合わせる。感情の込め方や弾き方一つでこんなに変わるなんて、音楽って凄い。


「すごーい! 梨花はやっぱピアノの才能あるねっ」
「て、ていうか……さっきよりすごい感情が込めやすくできてた」


 猫踏んじゃったは簡単そうに見えて軽やかに弾かなきゃいけなかったりちょっと難しいところがあって、コンクール用の楽譜だとちょっと突っかかるところもあったのに。
 めぐの言う通りに進めて変えていった楽譜は感情を込めたいタイミングでちょうど弾きやすく感情を込めやすくしてあって、さらりと弾けたような気がした。


「それ、きっとめぐちゃんの楽譜構成が上手いからだよ」
「え……?」


 にこにことあたしたちを見守るように眺めていたレオ先輩と未花先輩だったけど、未花先輩が前に出て楽譜を覗き込むようにしながらあたしたちに微笑んだ。
 きょとんとするあたしとめぐに未花先輩が苦笑するけれど、未花先輩も詳しいことはよくわからないので無言で引っ込む。そしてレオ先輩にバトンタッチした。


「音楽の法則に違反しないように此処まで楽譜作るっていうのは本当に凄いことなんだよ。あー……この学校に欲しいなめぐ梨花コンビ」


 何だかあたしにはよくわからない話しをしているけど、めぐが嬉しそうに微笑んだのを見てあたしも嬉しくなった。
 くそー、と小さく呟いたレオ先輩にめぐが真剣な目付きで断言する。


「あたし、絶対青春高校入ります! そして梨花と、レオ先輩と未花先輩と……吹奏楽部のみなさんと一緒に音楽続けます!」


 やる気に満ちためぐにあたしは思わずぎゅーっと抱きついた。そしてよろめくめぐに支えられながら叫ぶように言う。


「だいじょうぶ! めぐは絶対受かるよーっ!」


 めぐもあたしをきゅっと抱きしめてくれて、二人が親友になったような気がした。
 そして先輩の方をちらりと見ると、未花先輩が両手で顔を隠している。けれど、指と指の間から様子は見えるようだ。


「未花先輩、何やってるんですか?」


 呆れたような様子であたしがめぐから離れて言うと、顔を赤くしながら言う。


「ああああ続けて続けて……わたしのことは気にしないでー」
「おい未花ー」


 レオ先輩が未花先輩をぶんぶん揺らすけど、未花先輩はずっと顔を隠したままだった。ていうかぷしゅーって音が聞こえてきたような気もする。
 するとレオ先輩が未花先輩を支え苦笑を浮かべた。


「だめだな、未花ワールドに入っていったからもうしばらく起動しねえよ」


 え、じゃあどうするの? あたしたちはもう帰るけど、と思いながら上着を着てバックを持つ。
 するとレオ先輩は未花先輩の荷物と自分の荷物を持って、未花先輩を抱きかかえた。


  本文ながすぎエラーでたので次にかくー

128ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/27(火) 15:37:47 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp
「ごめん、音楽室の電気消してくんね? あと鍵閉めてくれると助かる―――って、あ……鍵職員室に戻すんだけど、場所とかわかる?」
「ごめんなさい先輩、電気は消せるし鍵も閉めたけど職員室は……」


 未花先輩で両手、更に抱きかかえたまま荷物を持っている先輩は最早鍵を持つことすらできなかったようでお役に立てずすみませんという気持ちになってしまう。


「あ、じゃあ鍵持ってついてきてくんね?」
「はーいっ」


 先輩についていって職員室についたあと、鍵を戻して帰ることになった。
 まだ未花先輩は目が覚めないようで、レオ先輩に抱きかかえられたままだ。

 なんかあんまり嬉しくないかも。そう思いながら俯きめぐを見ると、めぐもしゅんとした様子でうつむいていた。



 もしかしてめぐもレオ先輩のこと好きなのかな。
 そしたらライバルになるけど、だれでもいいからこの切なさを語り合いたかった。


「よし、めぐっ! あたしたちはなんかたべてこ!」
「え? あ……うん!」


 その話しをした途端、あたしたちの前を歩いていたレオ先輩が振り返った。


「どっか寄ってくの?」
「はいー、レオ先輩は未花先輩どうするんですか?」
「俺の家つれてって目覚めるまで待つしかないかなー……未花の家今多分誰もいないだろうし。で、起きたら家まで送るかな」
「そ、ですか……」


 あたしもめぐも俯きながら、とりあえず挨拶をした。


「じゃ、さようなら先輩!いつか会おうねー!」
「ん!いつかっていうか梨花は確実に会うけど……めぐも頑張れよ!絶対一緒に音楽続けような!」
「はーいっ!がんばってきまーす!」


 まるで永遠の別れのように最後まで手を振り続けた。


     -

129ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/28(水) 21:00:18 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 推薦 side梨花



「えーと、推薦の発表しまーす」


 皆ざわついてる朝の教室で、学級委員の琴吹さんが一枚の紙を手に教卓の前に立った。


「桜ヶ丘高校は朝乃さん、緑高校は妃奈さん――――青春高校は」


 少しずつ発表されていく。名前を呼ばれた人はやった、と嬉しそうに微笑んでいた。そして青春高校の名前が呼ばれた瞬間皆ざわついた。


「え、青春高校推薦あるの?」
「マジでー? 俺かな(笑)」

「ちょっと、皆静かに!青春高校の推薦は二人います」

 琴吹さんが騒がしい皆を静める。けど、二人いるっていうのはあたしも気になった。あたし以外に誰がいるんだろう?


「青春高校は――――」








「梨花さんと萌美さんです」




 あたし、と……萌美……めぐ?
 いやでも萌美はめぐの本名だし、めぐは実際めぐみって名前だし。



「なんで、あたしも……?」
「あ、それについては手紙が来てるのであとで渡しますね」


 にこりと微笑む琴吹さんに、とりあえずよかったと思った。めぐも一緒だ!


     ×


「ええと……お二人でピアノの楽譜を変えたようで、その様子は見ていなかったらしいんですけど、そのあと梨花さんが弾いたピアノの音が職員室のスパルタな先生の耳まで届いていたようで、レオ先輩と美未花先輩が情報聴取されていたそうなんです」


 つまりは……認められたってこと?あたしたちの楽譜。
 やったあ、とあたしが微笑むと、めぐも嬉しそうな表情をしていた。


「伝言ありがと琴吹さん!ちなみに琴吹さんはどこの高校行くの?」
「わ、わたしは……岡野高校へ」


 岡野高校、といえば秀才で有名な頭いい人しか入れない高校じゃないか。


「推薦っ?!」
「はい、推薦もらえるなんて思ってなかったので……凄く嬉しいです」


 推薦って、かなり頭良いってことですよね。
 すごいなあと思いながら微笑んだ。


「おめでとう琴吹さん!がんばってね……っ!」


 そう言って、あたしとめぐはその場を去った。
 

     -

130ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/29(木) 13:57:15 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 青春高校 梨花side



 あたしとめぐは何も話し合ってなんかいないのに、二人して急いで青春高校へと向かっていた。中学は部活をするより遊ぶ方が優先だったから帰宅部で、この時間帯は多分やっと部活が始まったか始まってないかくらいだと思う。


「……あ、入っちゃだめかもしれないね」
「そう、だね……とりあえず行ってみようか!」


 あたしが校門の前でぴたりと動きを止めそう呟くと、めぐもこくりと頷き共感してくれた。のに、早く報告をしたいのか容赦無く帰宅部の高校生や野球部員、サッカー部員、テニス部員などの群れの中を進んでいった。
 あたしもそれに追いつくように小走りでめぐに駆け寄る。でもじろっと睨まれるような気がして目線が痛くて、そっと俯いた。


     ×


「校舎内には入れたねー」
「う、うん……めぐ好奇心旺盛すぎ……」


 嬉しそうな表情を浮かべるめぐにあたしははあと溜め息を吐き小さな声で言った。その瞬間、後ろから怖い声が飛んでくる。


「おい、お前ら」


 う、この声は……。そう思いながらそっと振り向くと、そこには予想通りスパルタ先生の姿があった。相変わらず睨まれるような目付きにびくんと怯える。
 けど、その後ろにレオ先輩がいるのを見つけた。よく見るとその隣には二つ結びを揺らす未花先輩も微笑んでいる。レオ先輩は驚いているようだけど、未花先輩はそんなこと考えずにふふっと微笑み手を振ってくれた。


「何でいんの?」
「見学とかさせてもらえませんか?」


 面倒臭いと言うようなむっとした表情のスパルタ先生にめぐが満面の笑みを浮かべて尋ねた。スパルタ先生は更に面倒臭そうな顔をして、それでも頷いてくれた。


「好きにすれば」
「やったー! ありがとうございます」


 めぐはそう言ってお辞儀をし、レオ先輩と未花先輩の方に駆け寄る。あたしも急いでめぐについて行った。
 レオ先輩は相変わらず驚いたような不思議そうな表情をして尋ねてきた。


「え、どうして? 本当は見学目当てじゃないだろ」


 スパルタ先生に聞こえないように小さな声で言う。図星だったけれど、めぐは小声で言った。


「あたしも、この高校の推薦もらいました!」
「え、マジで?!」


 更に驚いたような表情をするレオ先輩。そしてその隣で未花先輩がぱちぱちと拍手をした。
 めぐは嬉しそうに「ね、梨花!」と言いながらあたしに抱き着く。あたしもぎゅっとめぐに抱き着いた。さっき言えなかったおめでとうの気持ちを込めて。


「え、あ……未花の前でそんなことすると!」
「「え?」」


 あ、そういえば未花先輩!
 前もこんなことしたときにフリーズしちゃったような。あああ今日も両手で顔を隠してる、ばっちり見えてるけど。


「未花、先輩……?」
「きき気にしないで気にしないで!」


 そう未花先輩が行ったあと、ぷしゅーという音を鳴らして後ろに倒れそうになってしまった。
 まあ予想通りレオ先輩がそれを支えるけど。その瞬間スパルタ先生も振り返った。


「……お前ら何やってんの?つうか未花どうした?」
「フリーズしました、暫く未花起きませんよ」


 レオ先輩のがっかりしたような表情にスパルタ先生も考え込んだ。


「せっかく木管の指導押し付けようと思ってたのに……まあいいや、とりあえず未花は保健室にでも寝かせといて」
「はいっ」


 さすが吹奏楽部!レオ先輩はどんなときでもしっかりとした返事をしていた。
 そしてまた未花先輩を抱きかかえていく。いいなあ、お姫様抱っこあたしもされてみたい。……ていうのは恥ずかしいからオフレコオフレコ!


     -

131ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/29(木) 14:04:23 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 吹奏楽部 梨花side



「今日はレオが木管と金管の指導をする」
「えっ」


 先生が吹奏楽部員の前でそう告げた瞬間、レオ先輩が驚きの表情を浮かべた。実際レオ先輩が金管、未花先輩が木管を指導する予定だったけどあたしたちのせいで未花先輩が倒れてしまったからレオ先輩がどっちも指導することになったのか。


「いや先生……ちょ、冗談でしょ?え、いや……」
「あははっ、レオ先輩かわいー」


 パニック状態のレオ先輩に笑いながら可愛いと言ったのはあたしたちの間ではぶりっこという噂で有名な莉子先輩。
 茶色い髪はすっごくくるくるしてて、ツインテールにしてピンクのふりふりのリボンで結んでいる。これ校則違反にならないのかな、よくわかんないけど。


「がんばれよ、レオ」
「えっ、あ……はいっ!……え?」


 どんなときでもやっぱりレオ先輩は返事が良いのでした。


     -

132ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/29(木) 14:16:06 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 吹奏楽部 梨花side



「あと今日は音楽関係の推薦でこの青春高校に入学する奴が二人来てるから」


 入学する「奴」ってお前らの次は奴かよ!、と思いながら吹奏楽部の先輩たちに挨拶する。


「如月梨花です! 今日はよろしくお願いします!」
「萌美です! よろしくお願いしますっ」


 そしてスパルタ先生が音楽室を出て行った瞬間、練習は始まった。
 あんなに焦ってパニックだったレオ先輩が急に真剣な表情になって指示し始める。


「今日は合唱部が第二音楽室使ってるから、三年一組の教室にフルートピッコロオーボエ、三年二組にクラリネット、三年三組にサックス系で二年一組にトランペット、二年二組にホルン、二年三組にトロンボーンが行ってください。音楽室はチューバとユーフォと打楽器です」


 ぱぱっと指示をしたあとみんな大きな声で返事をする。凄いなあと改めて思った。
 そしてそのあと、レオ先輩があたしたちのところにくる。


「パー練させながら指導して回るんだけど、一緒に来る?」
「はいっ、行きます!」


 どうやらそれぞれの教室でレオ先輩が来るまでパートリーダーの指示でパート練習や個人練習をして待ってて、レオ先輩が来たら確認や指導をパートごとにしていくらしい。
 なんだかおもしろそうと好奇心混じりについていくことにした。


     -

133ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/30(金) 11:29:34 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / パート練習 梨花side



 最初にレオ先輩が向かったのは三年一組だった。その教室からはフルートの綺麗な音色やピッコロの目立つ音、オーボエの小鳥のような音が聴こえる。
 レオ先輩とあたしたちが教室に入った瞬間、皆楽器を吹くのをやめて椅子から立ち上がる。そしてフルートを持っているあのぶりっ子っぽい莉子先輩が言った。


「よろしくお願いしますっ!」


 そのあとに続いて他の部員たちも挨拶する。そんな状況にあたしたちはドキドキしているというのに、レオ先輩は何事もなかったかのように皆の前に立った。
 一人一人にドの音らしきものを吹かせていった。なのに三番目に吹かせた人のところでレオ先輩が止まる。


「友紀、チューニングやり直し」
「はいっ」


 友紀と呼ばれる先輩が小さな機械のようなものを持って教室を出た。確かチューナーっていうんだっけ?吹部の友達から教えてもらったような気がする。
 全員がチューニングの確認を終えて友紀先輩も戻ってきたところで、レオ先輩が一人の女の子を立たせた。上靴の色からして一年生だ。


「紗里奈が一番チューニングの音合ってるから合わせて」
「はいっ」


 そんなことを繰り返して合奏曲の練習もしたあと、三年一組の教室を去って行った。
 でもこれが終わったころに思った。


 先輩一人じゃ時間が足りないよ、と。


     -

134:2012/03/30(金) 11:30:40 HOST:zaq7a66ffb2.zaq.ne.jp
ねここ>>今まで読めなくてごめんm(__)m

今から?一気読みするので、読み終わったら感想書くわw

135ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/30(金) 11:52:54 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / パート 梨花side グロいというかなんかあれ。予想外の展開にねここも吃驚だ。



「あたしっ、一回未花先輩の様子見に行ってきますね!」
「え?ああ……」


 早く未花先輩を起こしてレオ先輩を少しでも楽にしてあげなきゃ、そう思いながら走りその場を去って行った。
 あわててめぐもついてきたのが見えて、めぐも同じ考えなんだなと思った。


「未花先輩っ!」
「…………んぅ、」


 保健室のドアを開けて未花先輩をぐわんぐわん揺らすと迷惑そうな声で唸ってきた。それを気にせずに無理やり起こす。


「……ふぇっ! あ、えと?」
「もう、未花先輩! 今レオ先輩が一人で全部のパート指導しに行かなきゃいけないんですよ! 未花先輩は木管の指導でしょ?」


 ようやく目が覚めた未花先輩に叫ぶように言う。すると未花先輩は行かなきゃ、と呟きながらとりあえずフルートパートたちがいる教室に向かった。
 あわてて三年一組に入ると皆しいんと静まり返る。皆の前に出てきて未花先輩が頭を下げた。


「ごめんなさいっ、遅れちゃって……!」
「本当だよお、パートリーダーが遅れてぇ……」


 嫌味ったらしくそれでもぶりぶりしながら言い放ったのは予想通り莉子先輩だった。


「ご、ごめんなさっ、」
「未花ちゃんはいいよねぇ、先生からの信頼もあついし遅れても怒られないしぃ……レオ先輩と仲良いしね」


 今関係ないだろ、そんな言葉があたしの口から出てきそうで必死にそれを飲み込んだ。
 そしてあたしが莉子先輩にむかって言う。


「未花先輩は倒れちゃったんですよ。なのに遅れて怒られたりするんですか?」
「り、梨花ちゃんっ……仕方無いよ、体調管理ができてないのは自分の責任だから……ね?」


 キッと莉子先輩を睨みつけると、未花先輩があわててあたしを止めた。
 でもどうやら、莉子先輩はもっと調子に乗ってしまったようだ。


「そうよねぇ、わかってるじゃない。体調管理ができてないパートリーダーなんてそんなの認めないから」
「……ごめんなさい」


 莉子先輩が未花先輩に近づく。二人の間に何かあったのか未花先輩はびくんと怯えているようだった。


「……もう一回倒れちゃえばいいんだわ、今度は永遠にね」


 にやりと不適に微笑む莉子先輩に未花先輩が震え始めたのがわかった。
 そして莉子先輩の腕が未花先輩の首に伸びる。


「本当にキライッ! あんたなんて……」


 だめだ、これじゃ未花先輩が本当に殺されちゃう。


「り、こちゃ……や、めっ」


 苦しそうな未花先輩の表情を見てどうしようかと思った。
 そして思わずその場で叫ぶ。


「だれか助けて! 未花先輩が!」


 その瞬間、レオ先輩が三年一組の教室に入ってきた。
 よっぽど走ったのか、息切れしている。


「り、こ……?どうして、」
「……っ、レオ先輩」


 未花先輩の首を絞める力が弱まったのか、未花先輩が咳をしているのがわかり心配になる。
 でもまだ首に手は添えられたままだ。


「……どうしてこんなこと、」
「未花ちゃんが憎いからだよぉ、それじゃだめ?」


 またぶりっこの口調になって手にそっと力をいれはじめた。
 未花先輩が目から涙をこぼす。


「やめろ、」
「やめてあげてもいいけど……交換条件付きだよ?」
「なんでも言うこと聞くからやめろよ!」
「うん、じゃあ―――莉子と付き合って!」


 莉子先輩がかわいらしい笑みを浮かべた。
 レオ先輩が悩み始める。未花先輩をとるか自分をとるか。


「……早く決めなきゃ本当に殺しちゃうよ? 3、2……」
「付き合うからっ……!」


 残り二秒あたりでかなりキツく絞めたのか、もう未花先輩の意識はなかった。
 息してるかな、と少し不安になる。


「未花、先輩……」
「………………」


 返事をしてくれない。
 レオ先輩があわてて未花先輩のところに駆け寄った。


「未花っ、未花!」
「………………」


 死ん、だ?
 ちがうよね?死んでないよね?


「未花先輩!」
「未花っ!」




「………………」



     -


 こんなつもりじゃなかったんだ!

136ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/30(金) 11:53:53 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

>燐

いやいや全然大丈夫!
>>135あたりがちょっとあれかも。
うん、本当に吃驚した←

137:2012/03/30(金) 12:59:17 HOST:zaq7a66ffb2.zaq.ne.jp
ねこっぴ>>読んだぞw

つか、莉子むかつくなw

138ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/30(金) 17:05:08 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

>燐

おつかれ!
うざキャラ登場ですw

139ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/30(金) 19:14:18 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 病院 side梨花



「…………未花先輩」


 屋上にぽつんと一人でいた。


 未花先輩のことはめぐが先生に報告してくれたようで救急車で運ばれていった。
 屋上で未花先輩の名前をぽつんと呟くあたしの声は孤独で一人ぼっちで、虚しく消えていってしまった。


 専門的なことがわかっていれば未花先輩を助けられたかもしれない。
 めぐみたいに冷静な判断が出来たら未花先輩が気を失ってしまう前に止められたかもしれない。

 レオ先輩は他のパートのことで忙しかったんだし、めぐは冷静に行動だってしたし……
 あたしが一番行動できたはずなのに、何にも出来なかった。迷惑ばっかりかけちゃった。


「あたしのせいだ……」


 あたしのせいで未花先輩が気を失ってしまった。
 あたしのせいでレオ先輩に迷惑をかけてしまった。

 あたしのせいで――、あたしのせいで――。


「未花先輩いぃっ……!」


 いくら泣け叫んだって泣き崩れたって、その声は誰もいない屋上に虚しく消えていくしかない。
 両手で顔を覆って泣き始めたその瞬間に、屋上のドアがキイ、と音を立てて開いた。


「梨花……」
「め、ぐぅ……」


 声と足音でわかった。柔らかくて優しい声にそっと包まれていくような気がする。


「先生が付き添いでついて行ったよ……レオ先輩も行きたかったみたいだけど、指導があるからね」
「……この状況で続けるの?」
「…………うん、そうらしいね」


 レオ先輩だって顔隠してたし絶対泣いてたよ、無理だよ絶対。
 そう思いながらあわてて屋上を飛び出ていった。


    ×


 レオ先輩は今トランペットの指導をしていた。
 教室のドアからそっと覗いてみるけれど、レオ先輩はいつも通りのように見えた。


 パー、と、トランペットの真っ直ぐした音が響いた。
 ただ微かに音にうねりがあるのを感じて、音程がちがうということにあたしでさえも気づいた、のに。


「…………」
「……レオ、先輩?」


 レオ先輩は何も指摘せずぼーっと病院が建っている方を見ていた。
 やっぱり気になるのか。よくよく見ると手が微かに震えてるのがわかった。


「……っ、レオ先輩!」
「……梨花」


 泣きじゃくった顔のあたしが先輩の前に現れると先輩は驚いている様子を見せた。
 

「……そのっ、個人練習……じゃ、だめなんですか?」


 あたしが口出ししてもいいなんて思ってない。
 でも、それでもレオ先輩に無理させたくなかった。


「……ん、そうだね」


 そうふっと微笑むレオ先輩は何処か寂しげな表情をしていた。


     -

140ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/30(金) 19:45:56 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 病院 side梨花



 突然先輩が左手に握っていた携帯からバイブ音が聞こえてきた。そして先輩が三秒もしないうちに携帯を耳にあてる。


「先生っ?!」


 どうやら先生から未花先輩の様子を伝えてもらっているらしい。
 先輩はあたしたちに背を向けてしまっているからどんな状況なのか、良い報告なのか悪い報告なのかが全然わからない。


「……そう、ですか…………はい、わかりました」


 深刻そうな声に聞こえたけど、どうなんだろ。
 先輩が携帯をおろす。




「…………未花、命に別条はないって……」


 安心しているのか、レオ先輩が微かに涙を流しているのがわかった。
 一旦トランペットをパートリーダーの指導に任せてレオ先輩が別室にあたしたちを呼ぶ。



「梨花とめぐとか部員たちには本人の希望で隠してたんだけど、未花って元々身体普通よりちょっぴり弱くてさ」


 未花先輩、が?
 いっつも元気そうなのに。


「でも俺たちの演奏を聴いて吹奏楽部に入りたいって思ってくれたらしくて、病気のこと俺に打ち明けてくれてさ。最初はピアノとか打楽器進めたんだけど、フルートが良いって興味持ち始めて」


 何だか先輩らしいなあと聞いてて微笑ましく感じた。


「さっきは首絞められたこともだけどみんなに迷惑掛けたって考え込んじゃってパニックになって発作起こしちゃったみたいだけど、点滴もしたし大丈夫だって」
「よ、かったあ…………」


 ふうと安心の溜め息を零した。
 そしてめぐが微笑む。


「じゃあ、帰りお見舞い行きましょうよ!」
「だな!」
「うんっ!………て、いうかさ……莉子先輩って殺人未遂とかの容疑にならないの?」


 あたしが一言、気になって聞いてみた。
 すると先輩は苦笑して答える。


「それは被害者の未花が希望しないみたいでさ」


 殺されかけたのに、
 死にそうだったのに、


 未花先輩はやっぱりいい人だと思った。


     -

141ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/30(金) 20:25:48 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 病院 side梨花



 無事に部活が終わり、電車に乗ってあたしとめぐとレオ先輩の三人で未花先輩のいる病院に向かった。
 先生もまだ病院に残ってくれてるみたいで、何だかんだ言って本当に未花先輩は愛されてるな、と思う。

 何か、未花先輩がいないだけであたしたち全然レオ先輩と溶け込めないな。
 そう思いながら無言で電車を乗り終えたのだった。


     ×


 この病院はお姉ちゃんの記憶がなくなったときに来たことがあったけど、相変わらず真っ白だなーと少し呆れたくなってきた。
 まあ、清潔そうに見えるし汚れとかもわかりやすいって面で病院で使ってるのはわかるけどさ。


「……未花?」
「あ、どうぞー」


 未花先輩の名前が書かれたプレートがはってあるドアにコンコン、とレオ先輩がノックした。
 中から未花先輩の声が聞こえてきて、少しほっとする。


「未花っ……お前無茶すんなよっ!」


 レオ先輩があたしたちには見せない表情で未花先輩を見つめたのを見てどきんとした。
 愛おしそうな、大好きだって言ってるような表情。すごく格好良い。


「へへ、ごめんなさーい」
「……親は?」


 へらりと笑う未花先輩の顔色はそこまで良くはなくて、ちょっと心配にはなった。
 けれどレオ先輩の一言に未花先輩の表情から一瞬笑顔が消えてしまった。


「連絡はしたけど来れないって……で、でも別に気にしないでね!」


 お母さんもお父さんも、仕事忙しいのかな?、と思いながら無理に微笑む未花先輩を見て胸がズキリと傷んだ。
 本当は寂しいはずだとは思うけど何も出来ないあたしが何だか虚しくなってくる――――そのとき、ふわりとレオ先輩が未花先輩を抱きしめた。


「……俺が守る」


 か、格好良すぎる!
 でも目の前でそんなことされたらあたしたち俯くことしかできないよ。


「……ありがと先輩」


 未花先輩が頬を赤らめているのがわかった。
 何かもう本当にこの二人付き合ってんじゃないかな。


「……明日には退院できるって」
「そっか、よかった」


 よかった、と安心したあとあたしたちも未花先輩に駆け寄った。


「大丈夫ですか? 先輩……」
「うん、大丈夫ー」


 元気だよ、と微笑む未花先輩の裏にはたくさん大変なことがあるんだとわかった今、何故かもっと親しくなれたような気がして嬉しくなる。


「……先輩大好き」
「え、えと……うん! わたしも大好きだよ、梨花ちゃんもめぐちゃんも。あ、レオ先輩もね!」


 ふふっと微笑む未花先輩の好きの気持ちにん?と不自然さを感じた。
 それに対しあたしより先にめぐが突っ込む。


「いやいや、未花先輩のレオ先輩に対する好きはあたしたちへの好きとはちがうでしょ?」



     -

142ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/30(金) 20:53:41 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 恋愛 side梨花



「……そうなのかな?」


 不思議そうな表情をして未花先輩が首を傾げる。天然なのか鈍感なのか……あ、どっちもか。
 そしてくかーと眠るスパルタ先生とレオ先輩もいるというのに未花先輩が恋バナらしきものを始める。


「正直よくわからないんだ、レオ先輩への気持ち」


 あ、ちょっと興味あるかもその話し。
 そう思いながら身を乗り出してわくわくと聞く。


「前ね、友達に未花はレオ先輩のこと好きなんでしょ?って聞かれて……でもやっぱりよくわからなかったの」


 その友達ナイスだけど未花先輩やっぱり鈍感なんだなあ。
 めぐの方をちらりと見るとめぐも興味があるのか身を乗り出していた。


「たしかにレオ先輩のことは好きだよ、優しいし格好良いとも思うしおもしろいし……何よりこんなわたしのことを助けてくれた。
 発作とか起こしちゃうし、両親は全然帰ってこないし……こんな面倒臭いわたしの存在を認めてくれた」


 俯きながら話す未花先輩は泣いているようにも思えて、がんばれ、と思ってしまった。


「だからわたしの中でレオ先輩はお母さんよりもお父さんよりも大切で信頼できる存在で……これを好きっていうのかがよくわからなくて」


 初めて未花先輩があたしたちに心を開いてくれたようで嬉しかった。
 そしてめぐが未花先輩に言い放つ。


「未花先輩って案外面倒臭い人ですよね」
「……うん、そう言われると思ってた」
「悪い意味じゃないですから! あとその気持ちは好きなんかじゃないですよ」


 好き、じゃないの?
 ていうかばっさり言うなめぐ!




「もうそれ、言葉じゃ表せないくらい未花先輩はレオ先輩のこと大好きなんですよ」


 そういうことか。
 でもそっちの方がしっくりくる……ていうか未花先輩の告白を代わりにめぐが言っちゃってるってどういうこと!


「ささ、じゃああとはレオ先輩と未花先輩でごゆっくり!……と言いたいところだけど見させてもらうよ最後まで!」


 テンションマックスなめぐが病室の椅子に座った。
 でもレオ先輩が頬を赤らめて言う。


「未花の体調よくなったら今度二人で遊びに行こうよ、その時に伝えたいこと伝えるから、さ」
「は、はいっ……」


 なんだー、この場で告白じゃないのかー
 ちぇっ、つまんなーい、と呟いたけど、幸せそうな二人の笑顔を見てまあいっか、と思った。


     -

143ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/01(日) 15:01:12 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 告白 side梨花



 お大事に、と言いながら未花先輩と別れを告げ病室を出た。もう時刻は八時を回っていて、いい加減帰らなきゃお姉ちゃんやお母さんに心配されるなと思い小さく溜め息を吐く。


「……あの、さ」


 怒られたらどうしよ、と考えているとレオ先輩が恥ずかしそうに少し頬を赤らめてあたしたちに話し掛けてきた。
 何の話しだろうかと興味を示すと、めぐが面倒臭そうに欠伸をする。


「告白って、やっぱ直接が嬉しい?」
「は?」


 予想外の質問に思わず声を漏らす。けどめぐは一気に興味を示しぶんぶんと上下に首を振った。
 こういう恋バナになるといきいきするよね、めぐって。という言葉を飲み込んであたし的な意見を呟くように言う。


「あたしは……好きな人に告白されるって経験はないからよくわからないけど、気持ちがこもってれば苦手な人からの告白も嬉しいですよ。
 でも直接っていうのは本当勇気いりますよね。その場で告白されても反応に困るっていうか――――ふぐ、」


 結論的に直接はあまり好きじゃないという話しだったのだけど、突然めぐがあたしの口を塞いできた。
 そして耳元で凄く小さな声の低音ボイスで囁くように怒られる。


「二人は両思いなんだから直接ラブラブになった方がおもしろいだろばあか」


 怖っ、と小さく呟くとこれ以上あたしの話しをしたらレオ先輩が自信喪失しちゃうなと思い苦笑して適当に話しを終わらせた。
 でもレオ先輩だってモテるんだし、そういうのは得意そうに見えたんだけどなあ。


「……未花ってさ、結構モテるんだよ。だから告白されたこともいっぱいあるだろ? でも、そういう他の人の告白になかったような印象の強い告白をしたいなーって考えてて」


 未花先輩は結構どころじゃなくモテますよー、とツッコミをいれたくもなったけど、先輩の真剣な考えにぐっと飲み込む。
 実際告白したことないくせに恋愛に詳しいめぐがキラリと目を輝かせて言った。


「じゃあ告白と一緒に一生残るものをプレゼントしたらどうですか? プロポーズみたいだけど指輪とか、ネックレスとか!」
「おー、それいいかも! どっか寄ってこうかなー」
「え、あたしも行く! 梨花はー?」


 こ、これからまた何処かに行くのか……。
 でも気になるしめぐとレオ先輩二人っきりだと何かあったら危ないしな、と考え帰ったら怒られることを覚悟して二人についていくことにした。


「あたしも行くよー」
「つき合わせちゃってごめ、」
「謝るのは振られてからにしてよ、先輩」
「え? 俺振られんの?」
「さあねー」


 めぐが何故か振られる前提の話しをし始めたので自信喪失させてるのはめぐじゃないかと言いたくなったがこの二人面白いなー、と思いながら流してしまった。
 …………あ、お母さんとお姉ちゃんからメールたくさんきてる。連絡だけでもしとくか。


「やっぱアクセサリーですよねー」
「俺ネックレスがいいと思うんだけど」
「いいんじゃないですか?」


 二人の会話に入らずに眺めているだけで十分楽しめたので後ろでぷっと笑いながらついていった。


     ×

 長すぎエラーでたのでいったんきる!

144名無しさん:2012/04/01(日) 15:01:31 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp
「これ未花に似合いそう」
「え? どれどれー?」


 アクセサリーショップ内を三人で見て回っていたけど、先輩が突然ガラスケースの前で止まりそれを眺め始めたのであたしたちも駆け寄った。

 金色のハートの輪っかになっていて、真ん中にピンク色のダイヤのようなものが飾ってあるもの。
 あまり着飾ってないのに誰もが憧れちゃうような可愛らしさを持っているところが未花先輩にそっくりだと思った。


「……値段結構高めだよ先輩、大丈夫?」
「バイト頑張んなきゃな! とりあえずこれ欲しい」


 店員さんを呼びそのネックレスを買おうとしていると、人懐っこいレオ先輩だからか店員さんと話しが弾み始めた。


「告白するんですかー!」
「そうなんですよ、一つ年下の子に」
「あれ? 今大学生とか?」
「や、高校二年です」
「そうなの? じゃあ……」


 小さくきこえる会話にレオ先輩は凄いなあと思った。
 そしてレオ先輩がお金を出すけれど、それは少し少ないようにも思える。


「ありがとうございましたー」


 ネックレスを買い終えた先輩に尋ねた。


「値引きしてもらったんですか?」
「ああ、店員さんと高校生だって話ししたら内緒で結構値引きしてくれたよ」


 すごいなあ、先輩。
 そう思った瞬間、先輩の携帯が鳴り出した。電話だ。


「先生からだー……はい、…………え?」


 突然先輩の表情が曇る。


「はい、すぐ行きます」


 携帯を切ったあと、先輩が深刻そうに一言告げて走り出した。




「未花、容態が急変したって。発作が酷くなったのかもしんない……とりあえず病院行ってくる」


     -

145ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/01(日) 15:23:38 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 病院 side梨花



「未花は?」


 レオ先輩は電車に乗ってるときに帰った方がいいって言ってくれたけど、やっぱり未花先輩が心配でついていくことにした。
 病院について未花先輩がさっきまでいた病室に入るけど、そこには先生がいるだけだ。


「緊急治療室に行った」
「……どうして」


 無言になるレオ先輩の気持ちを代弁するようにぽつんとあたしが呟いた。

 どうして未花先輩がこんな目に遭わなきゃいけないの?
 どうして未花先輩が苦しい思いをしなきゃいけないの?

 あたしがこんなこと考えちゃだめなんだろうけど。
 一番苦しくて辛くて、どうしてって思ってるのは未花先輩なんだろうけど。


「……未花の両親はさ、未花が中学二年のときに事故で死んだんだよ」
「…………え?」


 レオ先輩でさえそのことを知らなかったのか、先生の言葉に凄く驚いているようだった。


「だから今未花の世話してんのは親戚らしいよ。でも親戚の家には幼稚園年中くらいの子がいたらしくてさ、未花はいらないってよく言われてたんだって」


 ひど、い。
 何で未花先輩がそんな目に。


「さっきレオに仕事でこれないって言ったのも嘘だよ。小学一年生の子がいんのに夜まで仕事するわけないだろ?」
「じゃあどうして来なかったんですか?」


 レオ先輩が怒りに満ち溢れた表情を浮かべてそれでも冷静に尋ねた。


「勝手に未花の携帯見ちゃったんだけどさ、「迷惑かけるな、自分でどうにかしろ」だとさ。……仕方無いから金はあたしが払っといてやったよ、未花に不安な思いさせたくないし」


 先生は未花先輩のお母さんような存在だったのかとノンキなことを考えていると、レオ先輩が小さく呟いた。



「未花、どうして……」


 どうして自分に話してくれなかったんだろう。
 きっとレオ先輩はそう思ってる。


「…………俺、やっぱり告白するのやめるよ」




 どう、して?



     -

146ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/01(日) 15:42:05 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 未花のこと 梨花side



「……レオ、本当に告白しないのか?」


 特に何にも興味を示さないはずの先生が、厳しい声でレオ先輩に問い掛けた。
 レオ先輩が小さく震えながら、それでも告白はしないと言うように頷く。


「大事な話しもできないような頼れない男、未花の彼氏になんかなれないですよ」


 無理に苦笑するレオ先輩の表情に胸がズキリと痛んだ。
 レオ先輩と未花先輩の幸せそうな顔にどれだけ救われただろうか、そんなことを思うと、やっぱり二人には幸せでいてほしいと思ってしまう。


「……未花はお前に頼れなかったんじゃない。余計な心配してほしくなかったんだよ、大切な人だったから」
「え…………?」


 そういえば、未花先輩はレオ先輩のことが好きかどうかはわからないだけで大切な人だとは言っていたし。
 あたしも好きな人がいたらこんな心配な話ししないと思う。


「あたしと未花は結構放課後とか話して帰るんだけどさ、いっつもレオの話しが出てきたよ。本当にレオと出会えてよかったって何度も言ってた」


 ていうかそんなに親しい関係だったのかその二人は。
 でも、こんな嬉しい話しをされているレオ先輩は俯いて泣いているように思えた。


「でも……守ってやれなかった」


 レオ先輩は未花先輩のことを大切な後輩じゃなくてずっと好きな人として見ていたのか、とても悔しそうだった。
 やっぱりこんな奴が彼氏じゃだめだと思ってしまうのか、まだ告白することをためらっている。


「そうだよ、お前は未花を守ってやれなかった。その事実はどんなに自分を責めたって変えられねえんだよ馬鹿」


 う、先生スパルタすぎる。
 そう思いながらも、そこまできつく言ってもらえるのがむしろレオ先輩はよかったのかもしれない。



「今まで守ってやれなかったけど、この話し聞いたんだからちゃんと未花のこと守れよ、彼氏として」


 先生の厳しい目線がレオ先輩を睨みつける。
 それでもレオ先輩は決心したのか、大きな声で返事をした。


「はいっ……!」



 突然ガラガラ、と音を立てて看護師さんが入ってくる。


「未花さん、まだ目を覚ましません……お連れの方々も見守っててあげてください」


 真っ先に病室を飛び出たのはレオ先輩だった。
 それにつられてあたしたちも行く。



「未花っ……」


 苦しそうな未花先輩の様子に思わず目をつむってしまった。


「未花、未花っ……!」


 また笑ってよ、先輩!
 あたしたちのことも笑わせてよ!




「未花――――っ!!!」








「………っ、れ、お……せんぱ、っ……」



 未花、先輩。
 苦しそうなのにあたしたちを安心させるようにふわりと微笑んだ。


 段々落ち着いてきてるのがわかる。



「未花……っ、好きだよ」
「うん、わたしも……レオ先輩大好き!」




     -

147ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/02(月) 16:05:31 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 先輩 梨花side



「迷惑かけて本当にごめんなさい!」


 未花先輩の声が病室に響いた。
 あのあと段々落ち着いてきた未花先輩は一度眠ってしまい、起きるまであたしたちは待っていたのだ。目の前でペコリと頭を下げる未花先輩に真っ先にレオ先輩が言った。


「本当迷惑だったよ」
「っ……ご、ごめんなさい!」


 レオ先輩の冷たい表情を見てわあ、珍しいとふざけ半分に思ってみたけど、これからレオ先輩が何を言うかなんてちゃんと分かっていたからにこにこ微笑んでいた。
 でも鈍感な未花先輩はそこらへんのことを上手く考えられなくてただひたすらと涙目になり謝り続ける。


「本当に……辛いんならちゃんと辛いって伝えろよ!」
「え……?」


 レオ先輩がぎゅっと未花先輩を抱きしめた。抱きしめたその手は安心しているのか小さく震えているようにも思える。
 そりゃあ、好きな子が死にそうになったんだもん。怖かったよね、レオ先輩でも。


「もっと俺を頼れよ!」
「……レオ、せんぱっ……」


 「頼る」という言葉をずっと求め続けていたのか、自分の居場所を求め続けていたのか。
 未花先輩はその言葉を告げられた瞬間泣き出してしまっていた。

 それに続いてあたしたちも微笑む。


「そうだよ未花先輩! あたしだって後輩だけど未花先輩の話しくらいなら聞けるし、もっと頼っていいんだよ?」
「あたしだって……レオ先輩や梨花に比べれば全然頼りないかもしれないけど、でも頼ってほしいよ!」



 未花先輩を受け入れてくれる居場所はもう此処にあったのに。
 ちょっと見失っちゃっただけで、ちょっと道に迷っちゃっただけで。


 でもね、やっとの思いで見つけた居場所はこんなにも暖かくて優しい――――



     -


 梨花編おわりかなー?
 おわらせたかったけどまだ続くかもw

 ちなみに百花(だっけ?おねえちゃん/名前わすれt((
 視点だったときは百花編だったんです!

 今は超長い梨花編なんです!

 詳しくは次レスで!

148ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/02(月) 16:25:12 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

 ▼Loveletterの設定について

 ようし、お姉さんが詳しく説明してあげよう!的なノリでいきますねここのような何かです、どうも(ry
 
 最近書いているのはside梨花、つまり梨花視点のお話です。
 で、前まで書いてたのが梨花のお姉ちゃんの百花視点のお話。

 それぞれのお話でメインキャラとサブキャラが違います!
 ではそこからまとめていこう★(ry


 [百花編のキャラクター]

 メインキャラ:百花、俊太
 サブキャラ:芽衣、妃芽、梨花、海斗、中村先生

 >>2->>63の途中までが百花編です!

 このお話では百花×俊太、妃芽×海斗でくっつきましたね。


 [梨花編のキャラクター]

 メインキャラ:梨花、めぐ、レオ、未花
 サブキャラ:百花、俊太、中村先生、スパルタ先生


 こんなもんかな★(ry
 以上!……短いw


 うぇい!
 さよなら!

149ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/02(月) 22:55:23 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp

   Loveletter きみのおくる愛の手紙 / デート side梨花



「……あ、ていうかレオ先輩」
「ん?」


 泣き出す未花先輩に釣られてあたしもつい泣いてしまった。
 それでふいに思い出したことがあり、涙を拭いながらレオ先輩にこそりと話し掛ける。


「ネックレス、渡さないんですか?」
「…………あ! 忘れてた!」


 レオ先輩がごそごそとバックの中からお洒落な袋を取り出す。
 どうやら此処で告白するようで、何だか告白を目の前にするのも気まずいなと思ったけれど動こうとはしなかった。


「未花」
「なあに? 先輩」


 未花先輩はレオ先輩に名前を呼ばれてやっと涙を止めて手で拭う。
 そしてレオ先輩が真剣な表情で告げた。


「未花のこと、好きだよ。友達じゃなく後輩じゃなく、恋愛感情でずっと大好きだった」


 レオ先輩が差し出した袋を未花先輩は泣きながらそっと受け取った。
 そしてそのままレオ先輩に告げる。


「わたし馬鹿だから……ずっとレオ先輩の気持ちにも気づけなくてっ……」


 拭っても拭っても溢れ出す未花先輩の涙はすごく綺麗に思えた。
 一生懸命話す未花先輩にあたしも思わず泣きたくなる。


「でもね、もう気づいたよ。この気持ちが何なのか、ちゃんとわかったよ」


 未花先輩が涙を拭っていた顔を上げて告げる。


「わたし、レオ先輩のことが恋愛感情で好きです」


 抱きしめ合う二人を見て幸せそうでいいなって思った。
 あたしも一時期レオ先輩を見ていたけど、あれはきっと憧れだったのかもね。



 辛くて悲しくて、それを心の奥底に押しつぶして笑いつづけて。
 でもね、もうそんな無理しなくていいんだよ。

 どんな貴方でも受け入れてくれる大切な仲間が出来たから――――



     -

150ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/04(水) 09:19:22 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / のーたいとる side梨花



「た、ただいま〜……」


 未花先輩とレオ先輩がめでたくくっついたあと、あたしとめぐは親に怒られること覚悟で家に帰った。
 けど未花先輩もレオ先輩も自分のせいだと言って譲らなくて、未花先輩も外出許可をもらってあたしたちを家まで送ってくれた。


「梨花! どこに行ってたの?! もう夜中の二時よ?!」


 お母さんの怒鳴り声が夜中の街に響いたけれど、未花先輩が突然あたしの前に出てきてお母さんに頭を下げた。


「ごめんなさいっ! わたし、部活の途中に発作で倒れちゃって……病院まで付き添ってもらってたんです」
「え……?」


 そんな未花先輩に戸惑うお母さんだけど、レオ先輩も未花先輩の隣に出てきて頭を下げる。


「俺が部員の危険を考えずに行動したせいです。梨花を巻き込んでしまって本当にすみませんでした」


 流石青春高校の吹奏楽部だ、と思った。
 返事もよくて挨拶もよくて、謝るのだって何でこんなに立派なんだろう、と。

 でもよくよく考えたらあたしお母さんにもお姉ちゃんにもお父さんにも推薦の話ししてないんだよなー。
 今日言うか、と小さく心の中で思ったあと、あたしもお母さんに謝った。


「先輩たちは悪くないの! わたしがもっとちゃんとしてれば先輩たちに迷惑かけなかったしお母さんたちを心配させずに済んだから……本当にごめんなさい!」


 頭を下げたあと、そっとお母さんがあたしの頭を撫でたような気がした。
 そして驚いて頭を上げると、そこにはふっと優しく微笑んだお母さんがいる。


「……素敵な先輩に出会えたのね」
「え……?」
「そういう理由なら許す! ずっと先輩たちも一緒だったんでしょ?」
「うん!」


 優しく話し始めるお母さんに、あたしもレオ先輩も未花先輩もすごく驚いた様子を見せていた。


「こんな立派な先輩たちが一緒なら夜遅くまで外出してても安心だもの」


 レオ先輩と未花先輩もよかった、と微笑む。
 そしてお母さんが未花先輩に告げた。


「発作ってひどいの?」
「え? ……うーん、どうなんでしょうね」


 へへっと微笑む未花先輩はどこか寂しげな表情をしていた、ような気がした。
 そしてここまで送ってくれたレオ先輩たちに手を振る。その瞬間、未花先輩が小さく呟いていた言葉があたしにはハッキリと聞こえた。


「……家族っていいな」
「未花?」


 レオ先輩も聞こえたのかさらりと未花先輩の頭を撫でる。
 そしてこっそり盗聴したから聞こえたけど、レオ先輩が未花先輩に告げていた言葉がすごく羨ましいと思った。




「俺が未花の家族になるよ」
「え……?」




     -

151:2012/04/04(水) 09:52:32 HOST:zaq7a66ffb2.zaq.ne.jp
ねこっぴ>>また一気読みしたw

つか、未花さん…鈍感ですね〜w

152ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/04(水) 18:01:21 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

>燐

ねここの好みが未花みたいな子なんだよ!←
レオも好みだけd((

153ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/04(水) 18:48:58 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 告白と推薦 梨花side



「そ、それってぷろぽむぐ」


 「ぷろぽむぐ」ってなんだ?、と思いながら突然止まった未花先輩の言葉を不思議に感じちらりと二人の様子を覗く。
 するとまさかまさかのキス中で、レオ先輩から未花先輩に不意打ちでキスした様子が頭の中で浮かび上がった。


「……れ、れおせんぱい…………?」


 レオ先輩の顔が未花先輩から離れると、未花先輩はきょとんとしてそれでも頬を赤らめながらレオ先輩の名前を呼んだ。
 そしてレオ先輩が真剣な表情で未花先輩に告げる。


「俺は未花を一生大事にするつもりで付き合ってるから、いずれ家族になれるかなって……ていうか、俺には未花以外いないし」
「……レオ、先輩……わたしなんかでいいの? だってわたし迷惑ばっかりかけるし、レオ先輩の足ばっかりひっぱっちゃう」


 しゅんとした表情で未花先輩が呟くのが聞こえたけど、あたし自身感じた。
 レオ先輩には未花先輩しかいないし、未花先輩にもレオ先輩以外いないって。


「未花がどう思っていようと、俺は未花じゃなきゃ嫌なの!」


 ああもう、と照れ臭そうな表情をしながらくしゃりと乱暴にそれでも優しく未花先輩の頭を撫でるレオ先輩はやっぱり格好良いと思った。
 たしかにレオ先輩のことは一時期恋愛感情で好きだと思ってたけど、やっぱりそれは憧れだったし。何より未花先輩も大好きだから、二人にはくっついてほしい。


「お幸せにね」


 そう一言小さく呟いて家の中に入ろうと思った瞬間、


「おおおお母さんっ?! お姉ちゃんも!」
「しーっ、良い雰囲気のところ邪魔しちゃだめでしょ!」


 お母さんがえへ、と悪戯っぽく微笑むけれど、あたしは溜め息を吐いて家の中へと入っていった。
 まあ結局お母さんとお姉ちゃんもあたしに連れられて家に入ったんだけど。


「……あの二人、お似合いだったねー」
「ん、まあ……でもお姉ちゃんには俊太サンがいるじゃん、あたしは認めてないけど」
「なんか梨花、レオ先輩と未花ちゃんに会ってからすごい高校生っぽいっていうか……大人っぽくなったよね」
「え、そう? あ、そうそう……二人に話しておかなきゃいけないことがあるんだけど」


 お姉ちゃんとの会話で流れに任せて推薦のことを話そうと思った。
 え?と、興味を持ち出したお姉ちゃんとお母さんににこりと適当に微笑みながらさらりと話す。


「あたし、青春高校の推薦もらったから。ピアノが吹奏楽の顧問の先生に評価されて、夏のピアノのコンクールも出ることになったの」


 お姉ちゃんもお母さんも固まってる、けどあたしはそんなことより疲れていたからリビングに行こうとする。
 それなのにぐいっと腕を引っ張られる。



「ええぇぇええぇえぇえっ?! なんで梨花が? ピアノ習ってないでしょ?!」
「いやまあ、ね……」
「じゃあ最近高校に来てたのも見学とか?」
「うん! めぐと二人でコンクール用の楽譜仕上げたから、それも評価されてめぐも推薦になったんだー」


 さらりと告げるあたしにお母さんもお姉ちゃんも驚いていたけれど、お母さんはにこりと微笑んで言った。



「おめでとう、梨花!」
「ふふ、ありがとー」



 推薦入学してよかった!



     -

154ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/04(水) 20:48:12 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 恋の相談役 side梨花



「りいぃかあぁぁぁ」
「ちょ、何? お姉ちゃん……俊太サンと何かあったの?」



 推薦のことを話した日から暫く経ち、もう春休みになってしまった。
 あたしは早く高校に行きたくて、わくわくな気分で青春高校の制服を来てみたというのに暗い雰囲気を漂わせたお姉ちゃんがあたしに抱きついてくる。


「そうなの、俊太これから高校三年生じゃない? 受験生になるからって会える日少なくなっちゃうんだってえぇえ……」
「ふーん……よかったじゃん」


 あたし的には俊太サンとお姉ちゃんはくっついてほしくないし。
 別に俊太サンがほしいわけでもどうでもいいけどね。

 そう心でキツく吐き捨てるが、「ちゃんと聞いてよおぉ」とぐだってくるお姉ちゃんにふうと呆れたような溜め息を吐き言い放った。


「それなら俊太サンの家でも行って一緒に勉強すればいいじゃん、お姉ちゃんだって好きな人と一緒に勉強できるんだから満足でしょ」
「あ、その手があったか! ありがとー、俊太に電話してこよ!」


 メールじゃなくて直接電話しちゃうんかい、と脳内でツッコミをいれてから制服を着ている自分を見て何だか恥ずかしくなった。
 前にお姉ちゃんに言われた言葉、「大人っぽくなった」っていうのがじんわりと感じられるようで自分のことだけど成長したなあって思っちゃったから。


「……めぐの家行こうかなー」


 暇だし、なんて呟きながら制服姿のまま携帯を持ちめぐにメールした。
 すると返信とともに制服姿のめぐの写メが送られてきて、「コイツ相当痛いな」と呟きながらじゃあそっち行く、とメールした。

 流石に制服姿で出歩くのはあたしまで痛くなるな、と思いしゅるりとネクタイ(※詳しくはこの続きの小説の主コメ参考)をとる。
 そして私服に着替えめぐの家までゆったりと歩きながら行くのだった。


     ×


「梨花ああぁあぁあぁぁ」


 う、コイツもか、と思いながらぐだあっとあたしに抱きついてくるめぐをぐいっと押し放した。
 そして呆れた表情をしながらも聞く。


「何? お前はどーした! っていうかまだ制服着てんのかよ相当痛いな!」


 「ひどいよお」と呟くめぐに早く話せよ、と思いながらとりあえずめぐの部屋に行った。
 そしてめぐが話し始めてまたくだらなっ、と思う。


「あのね、あたし……結局のところレオ先輩に恋しちゃってたわけじゃない? だから未花先輩とくっつくのはやっぱキツイなあって……」
「あたしは結局憧れでおわったけどね」
「あたしは本気だったの!」


 そしてそんなめぐにあたしが真剣な表情をして言う。


「まあ一種の失恋に入るだろうから諦めきれなければまだ好きでいていいと思うよ。でもいつかきっともっと良い人が現れるし、今回無理だったってことはレオ先輩はもう未花先輩しかいなくて縁がなかったってことでしょ? せっかくなんだし、未花先輩とレオ先輩の幸せも考えてあげようよ」


     本文長すぎエラーがでたのでいったんきる!

155ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/04(水) 20:48:30 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp
 めぐはめぐなりに辛いんだろうけど、と小さく呟いたあとまるで自分に言い聞かせるように言った。
 そして二階にあるめぐの部屋から見える外の景色を見ながら見覚えのある人を見つけてぶんぶん手を振る。


「妃芽せんぱーいっ! と……だれちゃんとなにくん?」
「久し振りー、梨花ちゃんっ! あ、ここが例のめぐちゃんの家ー?」
「そうですよー、ひまなら上がってってー」


 いいの?、と尋ねる妃芽先輩にうんと頷いた。めぐも嫌がってはないみたいだし。
 だれちゃんとなにくんも上がるみたいだけど。


「えーと、はじめまして! 今年から一年の梨花です」
「めぐでーす」


 めぐはぶーたれながら適当な挨拶をするけど、だれちゃんは可愛くてなにくんは結構格好良い方だったのに気づいて急にぴかりんと可愛い笑顔を浮かべ始める。


「わたし、花です!」
「俺は翔です、今年から一年なんで一緒ですねー」
「わたしたち幼馴染なんですよー! で、翔は妃芽ちゃんと弟! 生意気だけど仲良くしてあげてねっ」
「いやいやいや、生意気ってお前の方が強暴だろ」
「生意気と強暴はちがうっつーの!」


 いやたしかに生意気と強暴はちがいますが。
 妃芽先輩に弟なんていたんだーと微笑ましく見つめ一言告げる。


「ねえねえ、花ちゃんと翔くんってもしやできてる?」
「「え?」」


 声を合わせて驚き同じタイミングで顔を赤らめる花ちゃんと翔くんにぷっと吹き出した。
 二人ともあわててタイミングよく否定する。


「「いやいやいや、それはない!」」
「大体わたし好きな人いるし!」
「大体俺好きな人いるし!」


 こんなところまでタイミングピッタリだなんて。
 お似合いだと思うのになあ、と思いながら話しは続いた。


     -


 青春高校は男子はネクタイだけだけど、女子はリボンとネクタイどっちもあるのだ!
 なんかネクタイもいいけどリボンもいいから無理矢理つけた設定w

156:2012/04/04(水) 21:57:23 HOST:zaq7a66ffb2.zaq.ne.jp
ねこっぴ>>はろはろw

結構進んでるやん^^v

あ、暇さえあれば私の短編小説も読んでみてね。

ただ少しグロいのでよろピクw

157ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/04(水) 23:15:32 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

>燐

地味に進んでるよーう!

燐の短編も見させてもらってるんだけど、ホラーとかグロということで毎回こそこそどきどきしながら読んでた!←
燐はいろんなジャンルかけるよねー、いいなorz

158ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/04(水) 23:34:43 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 恋の相談役 side梨花



「で? 花ちゃんと翔くんは誰が好きなのかな?」
「いや何その強制っぽい雰囲気」


 にこにこと思いっきり怪しい笑顔を浮かべて花ちゃんと翔くんに尋ねると、素早くそれでもちょっと遠慮気味にツッコミをいれる翔くんに中々やるなと呟いた。
 もちろん翔くんには何が?、と返されてしまったけれど、花ちゃんがふっと鼻で笑いながら翔くんの情報を漏らす。


「翔はね、未花先輩が好きなんだよ! あ、未花先輩知ってる?」
「知ってるもなにも同じ部活なんですよー」
「え? なんで部活決まってるの?」
「いや、あたしとめぐ吹奏楽部からの推薦だからさ! 中学帰宅部だったけど」


 花ちゃんと話が弾み始めすごーいと花ちゃんが拍手するのに釣られ妃芽先輩もおー、と拍手をしてくれた。
 けれどそれどころじゃないことに気がつき身を乗り出して翔くんに尋ねる。


「え?! 未花先輩のこと好きなの?」
「え、あ……そうだけどちょっと近いかな」


 ばらされては仕方無いというように冷静に好きなことを認める翔くんにきょとんとしながら告げる。いったん元の位置に戻って離れてから。


「でも未花先輩彼氏いるよね」
「え? できたの?」
「うん、これ最新情報だよー! 聞く?」


 手でマネーのポーズをしながらきらんと目を輝かせる。まあそんな趣味ないけどさっ
 そして花ちゃんがそれに興味を持ち出した。この子好奇心旺盛で好きだな!


「それ聞きたーい! お金いくら?」
「や、お金はとんないけど交換条件で花ちゃんの好きな人教えて!」


 財布を出し始めた花ちゃんに冷静になれと思いながら話すけれど、花ちゃんの好きな人はどうやら本人は教えてくれないようだ。
 それでも翔くんは自分の好きな人の彼氏をフルボッコにしてやるつもりなのか呆気なく花ちゃんの情報をバラす。


「花の好きな人レオ先輩だよ」
「あっ、ちょっと翔! あとで覚えてろよ!」


 あちゃーと捕まった哀れな翔くんを見つめながらそれでもこの展開を期待して花ちゃんの話しを出したあたしは鈍感ではないけど今気づいた。
 翔くんの好きな人と花ちゃんの好きな人が付き合ってるんですよってことに。まあここはストレートに言おう。


「あのー……そのレオ先輩と未花先輩なんだけど、付き合ってるよ?」
「「は?」」


 固まる二人に少し悪いなと思った。
 なんか可哀想だよね。でも、現実は知ってほしい。


「レオ先輩は昔からずっと未花先輩が好きだったらしいしさ。詳しいことは未花先輩から聞いた方がいいと思うけど、未花先輩病気かなんかの発作あるんだよね」
「「え?」」


 未花先輩にめぐが素早くメールを送ったらしい。
 病気のことと家のことを翔くんたちに話していいかってことを。翔くんたちは普通に仲が良いみたいで、自分から話しづらいからぜひ話してくださいだそうで。


「未花先輩この前発作で倒れて死にかけちゃったわけなんだよ、助かったけど。あと、未花先輩が中学二年生のときに両親が事故で死んじゃって今は親戚の家にいるわけ。でもその親戚さんには今小学一年生の子供がいて、未花先輩の発作のこと連絡しても迷惑かけんなっていう返事しかこなかったらしいの」


 これがすべてだ、という感じでむんっと胸を張るけれどそのあと一言付け足した。


「レオ先輩が未花先輩の家族になるって宣言してたよ。一生大事にするってさ」


 ごめんね、花ちゃん翔くん。
 キツいこと言っちゃうようだけど、先輩たちの仲は壊さないでほしい。



     -

159:2012/04/05(木) 12:21:25 HOST:zaq7a66ffb2.zaq.ne.jp
ねこっぴ>>おーそれならよかたw

基本ホラー好きなもんで;

でも小説中でのグロさやったらまだいけるw

映像とか画像とかになってくるとね…ry

ねこっぴは恋愛一筋って感じだよね(*^_^*)

エエよね〜恋愛って経験積んでないと書かれないもんだから結構難しい。

160ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/05(木) 13:42:36 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 恋の相談役 side梨花



「そんな……」
「未花先輩、が?」


 花ちゃんも翔くんも、更に妃芽先輩でさえも動揺を隠せない様子でぽかんと口を開けていた。
 恋愛相談なら乗ってあげますんで、としれっとした表情をして呟くとめぐがあたしに抱きつきながらうだあってしてくる。


「じゃあレオ先輩を諦めるにはどうしたらいい?」
「あ、それわたしも聞きたい」


 めぐに釣られて花ちゃんも身を乗り出す。
 対して傷ついてないという面を強がって出してるっぽいけどあたしが花ちゃんに対し出来る限り優しく言った。


「レオ先輩には幸せになってほしいけど、やっぱり寂しいよね」
「……うぅっ」


 さらり、と。精一杯優しくして花ちゃんの頭を撫でた。さらさらな花ちゃんの髪の毛が絡まることなく透き通っていって、すごく心地よく感じる。
 好きだからレオ先輩が未花先輩と付き合ってても諦めたくないっていうのも一つの意見だけど、好きな人だからこそ幸せになってほしいっていうのもあって複雑な心境なのはよくわかるし。


「……花」


 翔くんがいつも強気で泣いたりしない花ちゃんがあたしに抱きつき顔を埋めて泣き出したことにかなり驚いていた。
 自分だって傷ついてるくせに花ちゃんの心配ばっかりしてる。この二人はいずれくっつくと思うんだけどなあ。


「翔くん。あのね、未花先輩は翔くんが頼りなくて本当のこと話さなかったわけではないんだよ? 大切な後輩だったから、心配かけたくなかっただけで」
「…………っ、それでも! やっぱり俺はレオ先輩には敵わなかったし」


 必死に泣くのを堪えてるような翔くんだけど、やっぱり悲しい気持ちはあるみたいで自分を責め始める。
 そんな翔くんに今まで顔を埋めて泣いていた花ちゃんが泣き顔を見せて翔くんに怒鳴った。


「翔だってレオ先輩より良いとこいっぱいあるもんっ……!」


 ずっと傍で見てきたから。
 本人たちは好きじゃないって言ってるけど、やっぱり何だかんだいって仲良いんだなと思った。
 そしてあたしもにこっと笑みを浮かべ驚いた表情をした翔くんに言う。


「レオ先輩だって翔くんに敵わないところたくさんあるよ」
「……でも未花先輩はやっぱりレオ先輩がよくて」
「あー、あの二人は運命みたいなものだもん! だれも止められないし、今回付き合えなかったってことは未花先輩やレオ先輩より良い相手が翔くんと花ちゃんにはいるってことだよ!」


 たとえば今傍にいる幼馴染の人とかね、という言葉はそっと心の中に閉まっておいた。
 そしてそれでも気が済まなさそうなめぐを見てはあと溜め息を吐く。


「じゃあ今からでも告白しにいったら? 告白できずにおわるより告白して終わった方がスッキリするでしょ!」
「あ、それ賛成ー! わたしレオ先輩に告白したい!」
「俺も、未花先輩に気持ちだけでも伝えたい」
「……あ、あたしも……」


 賛成する三人にふふっと微笑んで公園で待つようにレオ先輩と未花先輩にメールした。
 ちょうど近くにいたようでそっちに向かっているようなので、あたしたちも外に出る。


「あ、妃芽先輩もいっしょにきてー!」
「うん、楽しそうだから行く行く!」


     -

161ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/05(木) 13:44:06 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

>燐

小説でも映像でも画像でも無理w
恋愛一筋なのは恋愛しかかけないからなんだよ!←

162:2012/04/05(木) 14:06:23 HOST:zaq7a66ffb2.zaq.ne.jp
ねこっぴ>>何ィ!?

そうやったんか…ほほうw

でも私の小説読んでるんやからいける系じゃね?

いいやんwそれでもw

小説を書けるだけでも凄いしねw

163:2012/04/05(木) 14:06:35 HOST:zaq7a66ffb2.zaq.ne.jp
ねこっぴ>>何ィ!?

そうやったんか…ほほうw

でも私の小説読んでるんやからいける系じゃね?

いいやんwそれでもw

小説を書けるだけでも凄いしねw

164ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/05(木) 14:14:18 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 初恋? side梨花



「あれ? 花ちゃんと翔くんと妃芽ちゃんも? めぐちゃんは来るだろうと思ったけど……」


 公園に到着するともう既に未花先輩とレオ先輩が来ていて、不思議そうに花ちゃんたちを見つめた。
 レオ先輩がにこりと微笑んであたしたちに向かって手を振ったから、つい振り返してしまう。


「……で、どうした?」
「実はね、めぐと花ちゃんがレオ先輩に、翔くんが未花先輩に伝えたいことがあるんだって!」


 何かあったのかと少し心配そうな表情をするレオ先輩に深刻なことじゃないですよ、と呟いてから告げた。
 そしてまずめぐからレオ先輩に告げる。


「あたし、レオ先輩がずっと好きでした! 返事とかいらないんで! ただレオ先輩のことさっぱり諦めるために告白したんで気にしないでくださいっ」


 さっきまで張り切ってたくせに急にうだうだするめぐにあちゃー、と呟いた。
 そして驚くレオ先輩をスルーして花ちゃんも言う。


「わたしも、先輩にとってはただの後輩くらいでしかなかったと思うけどレオ先輩が大好きでした。その……未花先輩とお幸せに!」


 最後はかわいらしい笑顔で終わらせた花ちゃんにこの子中々やるなと呟く。
 次に未花先輩に翔くんが告げた。


「俺、未花先輩のことがずっと好きでした。見返りとか返事を求めたわけじゃないですけど……レオ先輩が何かしたら俺にも頼ってくださいね」


 愛される女の子っていいなあ、と思いながら驚く先輩たちを見て微笑んだ。
 そしてレオ先輩と未花先輩が話す。


「めぐと花の気持ちに気づけなくてごめん。でも、俺にとって二人は大切な後輩だよ。俺なんかより全然いい奴いっぱいいるからさ! がんばれよ」
「わたしも、翔くんは大切な後輩だよ! でも翔くんと将来結ばれる子はきっと身近にいるからその子とお幸せにね」


 きっと未花先輩は花ちゃんのことを言ってるんだろうなと思った。
 そのとき何故か未花先輩はあたしに微笑みかけたんだけど、どうしてあたしを見る?とにこやかに疑問符を浮かべた。

 そしてそろそろ帰るかと思いみんな自分の家に帰ることにした。未花先輩とレオ先輩はわからないけれど。


     ×


「はあ………」


 ぽつんと溜め息をこぼした。
 ダウンを着てても寒いこの時期にこぼす溜め息は白くてもわっとしていて、それがおもしろくてふうとまた息をもらす。

 やっぱり、レオ先輩と未花先輩が結ばれたことはそれなりに寂しかったのかも。
 そう思いながら冷え切った水が流れる河原にしゃがみこんだ。

 ぴゅうっと勢いよく吹く風にさむっ、と呟く。
 その瞬間、ふわりと誰かに抱きしめられたような気がした。暖かくて安心する。


「……本当は梨花もレオ先輩好きだったんでしょ?」


 ああ、この声は……
 優しくて、初めて会ったときどきんと胸が揺れてしまった人だ。


「翔、くん……」
「梨花も泣いていいんだよ」


 後ろから抱きしめてたのに、突然正面から翔くんが抱きしめてきた。
 そして優しくされてやっとあたしも泣き出す。


 何でこんなに優しくするの?
 好きになっちゃうじゃん、


     -


 まさかの翔くんと梨花パターン!
 あ、ここからネタバレ含むのでいやな人は見ないでね!










 花と翔は元々双子設定だったのですが幼馴染に変更したので
 くっつくことは多分ないかもしれません←

165ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/05(木) 14:42:10 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

>燐

まあ怖い系はあとから怖くなるってわかってるのに見たくなっちゃうっていうね!←
好奇心旺盛なんだy((

166ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/05(木) 18:17:09 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / きゅん、って。 side梨花



「……ごめんね翔くん、迷惑かけて」
「翔でいいよ。それに迷惑かかってないし、俺迷惑だって思うことは基本やんないからさ」


 にこりと微笑む翔くんはすごく暖かくてあたしまであったかくなったような気がして、でも泣き止んだあと別の意味で熱くなってきてしまった。
 赤くなった顔は何とか泣いたせいにして誤魔化して小さく名前を呟く。


「しょ、翔……」
「ん、じゃあそろそろ帰ろうか? 家まで送るよ」


 小さく頷きながら立ち上がり翔から離れると、何だか少し寂しくなって手を伸ばしてしまった。
 その瞬間、そっと翔の手があたしの手を包む。やっぱりあったかい。


「……いや、じゃない?」
「嫌なわけないじゃんっ……」


 いつもどおりのあたしでいれないことに動揺を隠せないでいる。
 何でこんな気持ちになるの? 今まで付き合ってきた人とはならなかったこの気持ちがよくわからない。


「……なんかきんちょーする」
「はは、俺もだよ」


 あたしが呟いた言葉に優しい笑顔を浮かべながら翔が頷く。
 なんかもうあたし、翔のことが好きでいいんじゃないかな。


「……あのさ、翔は恋愛経験済みなわけじゃない?」
「え、あー……まあ」
「未花先輩のことが好きっていつ気づいた? ていうかどうして気づいたの?」
「……気づいたら、かな。俺未花先輩のこと好きだったはずなんだけど」


 そう言って一度言葉を止めてから、あたしの耳元で囁くように言った。
 翔の低音が耳元で響き顔が真っ赤になる、もうだめだー。


「梨花といると未花先輩といたとき以上にドキドキするんだよね」


 あたしも、レオ先輩といたときより今の方がドキドキしてるよ。
 そう言いたくなったけど恥ずかしくて言えなさそうになくて、そっと心の中に閉まったままばたんきゅーした。


「え、ちょっ……梨花?!」


 ふわりと意識が遠ざかっていく。
 それでもね、翔がお姫様抱っこしてくれたことだけはわかったよ。


     -


 あまあまてんかーい!
 翔がかっこよすぎる何か。

167:2012/04/05(木) 20:05:17 HOST:zaq7a66ffb2.zaq.ne.jp
ねこっぴ>>分かる分かるw

私もそーゆう好奇心で見ちゃう系だわw

ねこっぴも好奇心旺盛かw

私はどちらかと言うとそっち系よりも…関係なく見てるしよw

168ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/05(木) 20:14:57 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 恋愛 side梨花



「――――か、りか……梨花!」


 お母さんとお姉ちゃんに名前を呼ばれてやっと目が覚めた。
 凄く心配そうな表情をする二人に疑問符を浮かべる。


「あたしどうしたんだっけ……」
「翔くんって子にお姫様抱っこで運ばれたのよ!」


 お母さんがその言葉を言った瞬間、さっきまでのことを思い出して顔が真っ赤になるのが自分でもわかった。


「梨花、もしかして翔くんのこと好きなのっ?!」


 お姉ちゃんが楽しそうに悪戯っぽく聞く。
 それに対して素直にあたしは頷いた。


「な、なんかそれ……っぽい」
「何あったのー? 教えて教えてっ」


 しつこいお姉ちゃんとお母さんに対してさっきまであったことを説明した。
 すると皆顔を赤くしたまま黙り込む。


「…………な、なんかしゃべってよ」


 あたしは真っ赤な顔のまま小さな声で言う。
 そして恋愛に対して詳しくないくせにお姉ちゃんが言った。


「い、いやそれ両思いでしょぜったい……ていうか告白したようなもんだよお互い」
「お母さん翔くんがいいと思うな〜、お姫様抱っこで運んでくれるし滅多に泣かない梨花を泣かせちゃうのよ!」


 言い方悪いよお母さん、とツッコミをいれたあとあたしのふふっと微笑んだ。


「でもね、本当に翔といるとどきどきするんだ」


 もう既にあたしは翔が大好きになってるんだな、と心の底から感じた。



     -

169:2012/04/05(木) 20:16:58 HOST:zaq7a66ffb2.zaq.ne.jp
ねこっぴ>>ちょー待ってくれw

梨花さんは俊ryさんが好きじゃなかったっけ?

まさかの乗り換えたんか!!?

170ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/05(木) 22:48:40 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

>燐

好奇心だけで見て怖い思いをしてブラウザバックするのにも時間がかかるっていうね!←

んーとね、梨花が俊太を百花から奪おうとしたのは、百花が好きだから俊太にとられないようにしたみたいな!
梨花は実際俊太のこと嫌いだよー、途中扱い超悪かったしw

ていう話しがどっかにあったりなかったり!←

171ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/05(木) 23:13:27 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 好き side梨花



 あたしが翔のことを好きだと自覚し始めてから春休み中どうしても翔に会いたくなってしまったけど我慢し続けた。
 そして月日は流れ今日はもう入学式。クラス発表もするし少し緊張してる。

 とりあえず入学式には女子生徒はリボン登校と指示されたから、あまり似合わないと自分で思っているリボンをきゅっと結んだ。


「梨花ー、先行っちゃうよー?」
「わわ、待ってー!」


 下の階できっともう靴を履いて待ってるであろうお姉ちゃんの声が聞こえてきて、乱暴に携帯を鞄の中にいれて階段を走りおりた。
 予想通り靴を履き終わってるお姉ちゃんに早いよー、と呟きながらあたしも靴を履いた。


「だって新学期早々遅れたら嫌でしょ?」


 嘘吐け、本当は俊太さんと一緒に登校できるのが楽しみだから準備早いくせに。という言葉は心の中にしまっておいてドアを開けた。


「いってきまーす!」


 あたしとお姉ちゃんの声が響く。
 そして家の門の前には予想通りあのイラつく方が立っていてむっと表情を歪めた。


「あたし明日から一人で登校しようかな」
「めぐちゃんいるじゃん」
「うん、でも朝から抱きつかれるのはキツいし」


 お姉ちゃんと話している途中、突然後ろからかなり痛い目線が刺さってくるのがわかった。
 もしやと思い嫌そうな顔で振り向くとそこには予想通りめぐがいて笑顔で抱きつかれる。


「キツい? きついの? ならもっとやってあげようか〜」
「いやいやいや、ごめんってばー!」


 ぐてえっと体重をかけてくるめぐから逃げ回る。
 離れそうにないめぐにふうと溜め息を吐いたその瞬間、見覚えのある後ろ姿を五つ見つけた。


「レオ先輩と未花せんぱーい! あ、妃芽先輩と花ちゃんもいるー」
「何であえて翔くんの名前だけ呼ばないのー?」


 ぶんぶんとできるだけ翔のことを気にしないで手を振った。
 何も知らないめぐは怪しそうな表情であたしを見つめるけれど、顔が真っ赤にならないように必死にセーブする。


「梨花、おはよ」
「お、おはよ……あれ? 高校同じだったの?」
「ん、前話さなかったけど同じだよ。花も俺も受験だけどね」
「やった、翔と一緒の学校だ……って、」


 何あたし恥ずかしいこと言っちゃってんの!
 もう我慢できなくて自然と顔は真っ赤になっていた。

 まずさり気無く隣にきちゃうような翔が格好良すぎるんだよー
 それに何故か皆あたしたちから遠ざかってにやにやしながら見てくるし。

 レオ先輩も未花先輩も花ちゃんまでもあたしたちをにやにやしながら見てる。


 触れたり離れたりする手が少しずつ近づいていくような気がした。
 そしてもう一度そっと触れた手をお互いにきゅっと握りしめる。


 まるで「触れてもいいですか? つないでもいいですか?」って言いながら控えめに繋ぐような感じ。
 でもこんな焦らした感じの甘いプレイも嫌いじゃない。



「……好きだよ」
「……え?」


 翔がにこりと微笑んで一言告げた。
 それに動揺しつつも更にぼっと顔を赤くする。

 それでもあたしも恥ずかしさ紛れに言った。


「あたしも翔のこと好きだよ」



 単純でお互い好きで好きで。
 そんな関係がいいなって憧れてたけど今まさにそうなんじゃないかと思う。



 繋がれた手は学校につくまで暫く離れることはなかった。
 かなり冷やかされたけど(ぼそ)



     -


 あまあまとかみてて恥ずかしいよね
 ねここは書いててはずかしいわ!

172ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/06(金) 10:13:13 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / クラス side梨花



「あたし何組だろー」


 これが一番ドキドキする時間、というか。
 まずクラス発表自体あまり好きではない。心臓に悪いし何より一年間の自分の人生が決まるようなものだから。

 クラス発表の紙が昇降口に張り出されていて、めぐは緊張した様子も見せずわくわくとそれを見つめていた。その能天気さがちょっと羨ましく感じる。
 そして百五十名近くの名前が書かれた紙の中からやっと自分の名前を見つけた。

 きさらぎりか、だから出席番号は毎年最初の方で、今回も予想通り前半の方ではあった。
 そしてそのクラスのメンバーを見ていくと、途中めぐの名前があるのを見つけた。


「……あ、めぐ同じクラスじゃん」


 ぽつんと小さく呟く。そしてめぐはあれだけわくわくしていたというのに未だに自分がどこのクラスか把握していなかったようでえ?、と声をもらす。
 そして花ちゃんも一組の列に名前がのっていて、今年は良い年になりそうだと思った瞬間ピタリと固まった。

 たしか妃芽先輩の苗字は桜羽で、翔も桜羽って苗字になるわけで。
 あたしの名前から少し下にいったところに桜羽翔の文字が。


「翔も同じクラスだね」
「ん、そーだね」


 何かもう彼カノって感じで。
 すっごい恥ずかしいんだけど嬉しいというか……

 とにかく顔が真っ赤になってしまったのは言うまでもない。


     ×


 入学式の前に一度クラスに席順で座ることになった。
 縦列で出席番号順に座るらしいからあたしが座った席は真ん中らへんだった。先生にも見にくい列だーと少し安心する。

 そして隣を見た瞬間、相手も相手ですごく驚いていた。


「え? 翔隣?」
「え、梨花隣?」


 まるで重なるように言う。
 それでも翔が微笑んでくれたのであたしも微笑んだ。


「やった、」
「あたしも嬉しい!」


 どうやら今年は最高の一年になりそうです。



     -



 もうしばらくは梨花編かも。
 ていうか詳しくは梨花の学校編なんだけど!

 最終話は見えてきませんがきっとあれです、おわりも梨花視点になるかと。

173ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/06(金) 14:04:44 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 担任紹介 side梨花



「あうー、疲れたー」


 入学式を終えてあとは担任発表のみになった。一度教室に戻って待機することになる。
 隣で唸りながら疲れたと呟くめぐに苦笑を浮かべた。あたしはそれどころじゃないんだよ、さっきからこそこそ見てくる超意地悪そうな女子が怖くて仕方無いんだよ。


「また梨花は女子に嫌われてんだね」
「いやまたってそんな悲しいこと言わないでよ」


 めぐは毎年あたしと同じクラスのようなものだから、新学期からある一定の女子には暫く嫌われ続けるあたしをずっと見てきた。
 まあ別に気にしてないけど、って言ったら嘘になるような気もするんだけど。それでもめぐが一緒にいてくれたから出来るだけ視線から外すことくらいなら出来た。


「まあ可愛い子は嫉妬とかもされちゃうよねえ」
「ていうかあたし結構前からカップル破滅させちゃってたからね」


 あたしが破滅させた、というより彼氏の方が彼女いるっていうのに近づいてくるんだけどね。
 でもそんなこと嫉妬し始めた女子に言ったって無駄だから自分から近づいたって疑われても否定はしないんだけど。


「ていうか担任誰だろうなー、親身になってくれる先生がいいのに」


 あたしがぽつんと呟くと、めぐはむっと表情を歪めながら言った。


「梨花の成績と笑顔だったらどんな教師もイチコロでしょ」
「あ、男の教師だったらやだなあ」


 先生の前で面倒ごとにならないように笑顔で誤魔化すあたしにとって、男の教師の一年間は辛い。
 笑顔なんて見せて変態化されたら困るし。


 教室についたあとそっと自分の席につく。
 あんまり戯れるのが好きじゃないのか、ただ入学式で疲れただけなのか隣の席で眠る翔を起こさないようにそっと座った。


「……ねえ見てー、翔くん寝てるよー」
「普段かっこいいけど、寝てるときとか超かわいいよねー」


 周りからこそこそ聞こえてくる会話に何だかむっときた。
 一応あたしたちは両思いなわけで、他の人に可愛いだとか格好良いだとか言われてるのは情けないけどちょっと妬く。


「……梨花梨花」
「あれ、花ちゃん」


 嫉妬するあたしに気づいたのか、花ちゃんがそっとあたしの机にきた。
 そしてこっそりと翔のことを話す。その瞬間また顔が赤くなったような気がした。


「翔は格好良くてモテるらしいけど、梨花に会った瞬間から梨花のことにしか興味無いみたいだよ」
「え、あ……う」


 そんな嬉しいこと伝えられたらあたし何にも言えないよ。


 そして花ちゃんが席に戻った瞬間、教室に誰か入ってきた。
 きっと担任紹介かな、と思い気持ちよく眠っているところ悪いけど翔を起こす。


「しょ、翔! 起きて、先生来たよ」
「ん……あ、梨花? ってことはまだ学校か」


 ふあ、と欠伸をする翔の姿にきゅんときた。
 あたしだったら寝起きで好きな人が隣にいて固まって動けなくなるのに。翔は本当に自然で格好良いと思う。


「一年一組の担任の有希だ、よろしく」


 担任の先生の声にびくんとあたしの肩が揺れた。
 それはめぐも同じようだ。

 だってこのクラスの担任になったのは、


「す、スパルタ先生……?」



     -

174ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/06(金) 14:42:28 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 自己紹介 side梨花



「えー、実際は午前中ずっと配布物などの説明で授業があるけれど、わたしはそんな暇人じゃない。ということでプリントは帰り際に各自持っていくように」


 ちょ、このクラスかなりラッキーなんじゃないですか。
 プリントの説明ないだけでかなり帰るの早くなりますよいいんですかスパルタ先生ー!

 っていう馬鹿馬鹿しい言葉は心の中だけで叫んでおいて、とにかくファイルを鞄の中から出しておいた。


「……じゃあとりあえず自己紹介。出席番号順に名前と一言言っていけ」


 命令口調ではあったけれど、先生のオーラからして誰も文句を言わない。むしろ言えない。
 ていうか楽しいです先生のノリとか嫌いじゃないしむしろ好きだし。

 とかいう馬鹿馬鹿しいことを言ったら「面倒」の一言にも満たない言葉で流されてしまうから言わない。どちらかというと言えない。


「出席番号一番の朝乃くるみです! 去年から吹奏楽部でピアノやってたんで今年も頑張るつもりです、よろしくー」


 ピアノ仲間じゃないかと油断したあたしが馬鹿だった。
 去年からピアノ経験済みということはライバルになるわけでしょ? スパルタ先生何だかんだいって優しいけど差別とか贔屓とか全然しないから実力で勝たなきゃ。

 このクラスにはどうやら個性豊かなメンバーが見事に揃ってしまったようで、一言が面白かったり真面目だったりと様々だった。
 でもみんな同じっていうよりこっちの方が面白いんだよね。とにかくあたしまで真面目な印象つけられたら嫌だなあとは思ってしまった。真面目っ子には悪いけど。

 こういうのは簡単でほんの一瞬って言っていいくらいすぐ終わるのに、その短い時間がすごく重要になるわけで。
 順番が近づいてきて次あたしだってところでもうすっごくドキドキしてた。

 ああ、前の人が終わった。


「え、と……如月梨花です。よろしくね!」


 よしもう何とか笑顔で誤魔化した! だって特に言うことありません!
 「推薦で入学しました(キリッ)」とかじゃ嫌味っぽいし「夏のピアノコンクール出ます(どや)」とかだと悪印象与えそう。

 どちらにせよ悪印象になってしまうのでそれを防ぐために笑顔で押し切った。
 そして隣の翔の番になる。


「えー、桜羽翔です。よろしくお願いします」


 翔くんスマイルにやられた。殺られてしまった。
 何なのその笑顔! 女子の皆さんきゅんってきちゃってるよあたしもだけど。


「……翔のばーか」
「え? や、え?」


 馬鹿と言われて戸惑いを隠せない翔にむっと表情を歪めながら言った。あーあ、あたし可愛くない。


「あたし以外の女の子にそんな笑顔見せちゃイヤ」


 独占欲丸出しの女の子にはなりたくなかったのに。ならないだろうと思ってたのに。
 何か翔といるといつものあたしらしくできなくて、変なの。


「……梨花が男子にあんな可愛い笑顔見せたから仕返ししようと思って」


 ほら、いくら恋愛に敏感なあたしでも、翔がそんな風に思ってくれてるのを見抜けなかった。
 恋愛で計算高い女の子じゃなかったのか! なんか未花先輩のうつったのかな? 鈍感さが増したような気がする。


 本文長すぎエラーでたんでいったんきります

175ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/06(金) 14:42:50 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp
 顔を真っ赤にしているうちに、あっという間に自己紹介が終わった。
 そしてプリントの説明を面倒臭くて省いちゃった先生が遊び心たっぷりで提案する。


「じゃあ第一印象ゲームしようか。プリントの説明なんかより楽しいだろ?
 ルールも適当ね。第一印象だけで彼氏にしたい奴とか彼女にしたい奴とか、頭良さそうな奴のアンケートとってランキングにするだけ」


 いぇーい!とクラスの人たちが喜んだ。
 先生はこういう人だってわかってたけど、最初からやるつもりでいたのかもうアンケート用紙が全員分コピーしてあったのには驚いた。

 前の人から後ろの人へと配られたその紙にはかなりたくさんのアンケートが書かれている。
 彼氏にしたい人、かあ……やっぱ翔だな、と呟くように考えながら書き込んでいった。

 そして全員が書き終わり紙を先生が集める。
 まずは真面目そうな人ランキングだった。

 先生が黒板に書いていく。
 同時に名前も呼んでいくから立てということだそうだ。

 男女別でわかれていて、それはどんどん発表されていった。
 先生の遊び心により面白いアンケートがたくさんあったから発表しながらうおー!なんていちいち盛り上がってるし。


 そして溜めて溜めて溜めまくったようにラストスパートに近づいてきた。
 可愛い人と格好良い人と、彼氏にしたい人と彼女にしたい人のランキングだ。


「なんか先生狙ったようにそれ残してるよね」
「何か言ったか? 梨花」
「いえいえ特に何も言ってないです」


 あたしが翔に話し掛けつつ言うと、それがばっちり先生に聞こえてしまったようで笑顔で誤魔化した。
 きらんと光る先生の目が怖い。親身になってくれるっていうのの真逆で目つけられてるんじゃないかあたし。

 そして先生が発表しだした。
 そこは一位だけ発表するようだ。


「格好良い人一位、桜羽翔」
「え」


 翔が固まった。そしてうおー!と盛り上がるクラスの皆にきょとんとしている。
 先生がにやつきながら翔に立て、と言った。


「可愛い人一位、如月梨花」
「え?」


 いやいやいや、女子立たせちゃだめでしょこれまでそういうルールだったけど。
 他の女子の目線が痛くなるのを楽しんでいるのか先生は。あ、そっか。それを楽しんでいるのか。


「で、非常につまらないことに彼氏彼女にしたい人もコイツらが一位にランクインしてしまった」
「いやつまらなくないでしょおもしろくもないけど」


 先生に素早くツッコミをいれた。
 けれど先生はあたしをいじめるように聞く。


「お前らって付き合ってんの?」
「「え」」


 あたしと翔は何も言えなくなった。
 付き合ってるのかもしれないけど好きって言い合っただけだし。

 そして決心して言った言葉が見事に翔と重なった。


「「ノーコメントで」」


 翔もあたしも、きっと付き合ってるって自覚してるのはわかってる。お互いも付き合ってるって思ってるってわかってる。
 けどあたしは面倒ごとになるのがいやでノーコメにしたんだけど


 きっと翔はあたしが女子に絡まれることを避けようとしてノーコメントにしてくれたんだろうなあ。



 まあこれはこれで付き合ってんのか迫られると思うけど。



     -

176ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/06(金) 20:43:48 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 迫られる、女子に。 side梨花



「如月さん、ちょっと来て?」


 早速明らかに目つきが悪くて怖そうな女子に捕まってしまった。
 新学期早々、しかも先生が面倒臭がりで本当ならあと一、二時間つづくはずの授業がめでたくもすぐ終わって幸せな気分だというのに。


「……あ、あたし今日用事あるんだよね」
「いいから来て!」


 苦笑を浮かべて遠回しに行きたくないことを主張するけれど、その女子たちはこれまでになくしつこくて怖く無理矢理引っ張ってきた。
 まだ新品とも言えるほど綺麗なトイレの壁に押しつけられる。新品とはいえど少し不愉快な気持ちにはなった。わざわざトイレに押しつけるか?


「なんですかー……」


 少しかちんときたあたしは嫌味ったらしく面倒臭そうに聞いた。
 もうこの際コイツらからの印象は悪くなったって仕方無い、嫌われてしまえあたし!


「翔くんと付き合ってるの?」
「ないしょ、かな」


 なんだ嫉妬か、と思いながら馬鹿馬鹿しいというように溜め息を吐く。
 そしてにこっと作り笑顔を浮かべて言った。どうせこういう女子に笑顔なんで通じないんだろうけど。


「あたしの彼氏、誰か知ってる?」
「さあ、人の彼氏に興味無いし」


 また誰かの彼氏絡みなのかと思い笑顔のまま答えた。
 あたしだって好きで人の彼氏とってるわけじゃないんですよーだ!


「あたしたちと同じクラスの小林健太っつうの」
「うーん……ごめん、それだれ?」


 たしかこのクラスに小林さん数名ほどいたような、と思いながら考えるのは無駄だと感じ首を傾げる。
 その瞬間、予想通り女子たちの怒りが露わになってしまった。あたし生きて帰れないかもなー。


「健太さ、アンタのこと好きになったからあたしと別れるって言ってきたの。酷くない?」
「だから! 人の彼氏なんて知らないよ、別れる原因になったのだってあたしのこと好きになっちゃった小林くんか彼氏のこと大事にできなかったあなたが悪いんじゃないの?」


 ばちん、と。
 叩かれるかと思った。っつうか叩かれた。

 まあ新学期早々目が覚めるビンタだったわ、と苦笑を浮かべる。


「……彼氏さん大切にしなよ? あたしは小林くん好きにはならないからさ」
「そ、そんなのわかってるっつーの!」


 あたしがそっとその場を去っていく。
 どうやら笑顔と共に捧げたその言葉にはきゅんときてくれたようだ。

     ×


「梨花、どこいってたの――ってほっぺどしたの?!」


 あたしが戻ってくるのをずっと待っててくれためぐがあたしの頬を見て驚く。
 そりゃあ、力強く一発いただきましたし、と何事もなかったかのように微笑んだ。


「あ、翔と花ちゃんもいっしょ帰る?」


 二人で待っててくれたのか、話していた二人に微笑んで話しかけた。
 でもやっぱり頬の傷が強調されてしまって、翔も花ちゃんもあわてる。


「ど、どうしたの?!」


 花ちゃんがそっと傷にふれた。
 その瞬間ズキリと痛んだ傷にまるで花ちゃんを避けるようにはなれてしまった。


「ご、ごめんね……!」




 ちがう



 痛んだのは頬の傷だけじゃない。
 きっとまた嫌われたって泣いている心も痛いよって言ってる。


     -


 この回では女子の怖さを強調したかった!

177ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/06(金) 22:57:46 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 泣いていいよ、って。 side梨花



「……梨花」
「翔」


 翔があたしを包むようにそっと抱きしめてくれたのがわかった。
 ラブラブな雰囲気を察したのかめぐと花ちゃんは此処でやんなよ、という痛い目線をぶつけてくるけれど翔は気にしない。


「痛いでしょ? 傷も、心も」
「……っ、なんでわかるの」


 そうだよ、頬の傷も心も痛い。何であたしばっかり嫌われなきゃいけないの?
 ずっと心の奥底に秘めてきたことを翔はあっさりと見抜いてしまい、ぎゅ、と少し力を入れて抱きしめてから優しく言った。


「大好きな梨花のことだからわかるよ」


 顔はよく見えないけど、翔はきっと頬を赤らめながら微笑んでいるだろう。
 そして最後に一言、またあたしがほろりときちゃうような一言を告げた。


「泣いていいよ」


 翔はあたしを泣かせたいの?
 そんなことを思わせるくらい、あたしは最近になって凄い泣くようになってきた。

 翔の前でだけだけど。

 心の中でそんな甘ったるい言葉を吐いたあと、涙を流し始めて翔にぎゅっと抱きついた瞬間ガラリと教室のドアが開いた。
 そしてこのあまぁい雰囲気が少し恐怖を味合わせる影にイラつきを与えたのかその影の人物は持っていた指揮棒らしきものを投げ捨てながら怒鳴る。


「てめぇら外でやれ!」


 どうやらスパ……有希先生のようで、あたしたちはばっとお互いを放した。
 少し寂しいような気がすると心の中で呟くと、誰にもバレないようにこそりと小指だけ絡める。


「指揮棒折れちまったじゃねえかよ」
「い、いや……それは先生が投げたからで」
「口答えすんじゃねぇ!」


 有希先生の言葉に苦笑しながら反論すると本気で言っているようではないけれど口答えするなと厳しい声を浴びさせられた。
 翔と花ちゃんはそんな先生に驚いているようだけど、あたしとめぐはもう慣れたから呆れたような表情を浮かべ流したけれど。


「て、ていうか吹部の指導はいいんですか?」
「あ? スコア忘れたから教室に戻ってきたらおめぇらがイチャついてたんだろ」
「べっ、別にいちゃついてなんかないですし」
「じゃあ何してたっつうんだよ?」


 先生とあたしの会話にぷっ、と翔が吹き出した。
 そして翔が先生に睨まれる。


「あ?」
「や、何かおもしろい先生だなーと思って」
「てめぇらのせいだろーが」
「まあ、気にしないでください」
「てめぇらを隣の席にしたのが間違いだったわ」


 先生が珍しく溜め息を吐きながらそう呟いた。
 そしてえ、とあたしたちは疑問符を浮かべる。


「あれって出席番号順なんじゃ、」
「や、一個ずらすクラスもあるみたいでさー……まああたしは何でずらすのか理解できなかったからやめたけど」
「つまり先生の頭にはおミソが足りないとふげっ」


 めぐが和みながら笑顔でそう吐き捨てると、すぐに先生にチョークをぶつけられてた。
 そこらへんにあるものを投げるのが好きなのか、その白い新品のチョークはめぐの頬に直撃する。


「せ、せんせ……たいばつは、だめ、ですよ……?」


 ぴくぴくとまだわずかにめぐが動きながらそう一言残した。
 そしてふっ、と鼻で先生が笑ったあと、そっと教室を出ていく。最後に甘い一言をとびっきりの笑顔を浮かべて残してから。


「ま、見逃してやるよ」


 そんな先生に対して先生が出ていったあと一言呟く。


「もうめぐは見逃されてないようですけど」


 今年一年、本当に楽しいクラスになりそうだ。


     -


 先生のキャラが好きすぎるうぅうう!
 有希ってなんか気強そうっていうか、先生のイメージの名前だったのよ!

 なんだかんだいって女子キャラでいちばん好きなのは梨花とめぐと未花だわ!
 男キャラは百花編で俊太さああぁぁぁ(ryとか海斗さああぁあ(ryとかおもってたけど今は翔とレオにきゅんきゅんしてるな!


 やっぱ小説書くことで大切なのは
 そのキャラを好きになることだとねここは思った


 なんて言ってみる
 まあ好きなキャラが悪役に回るのが辛すぎてついつい悪役設定のはずが味方設定にかえちゃうねここがいるんだけどね☆てへぺろ(ry


 なんかもうだまってろみたいな。
 だまってます。

178ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/07(土) 11:10:21 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 彼女<幼馴染 side梨花



「ねー、このあとどっか出掛けない?」


 まだ教室に残ったまま、このあとどうするかを花ちゃんが提案してきた。
 いいねえと頬をおさえながら共感するめぐにあたしは苦笑して言う。


「でも翔だけ一人男の子になっちゃうよ」
「……じゃあ翔なしでいいんじゃね」
「おい、それはないだろ!」


 花ちゃんが冷たい目線で翔を見つめる。
 翔も意外にそういうのは一緒に行きたかったのか珍しく必死になっていた。


「……んー、じゃあ……レオ先輩と未花先輩も誘う?」
「えー、ラブラブカップル二人いる中であたしと花浮いちゃうじゃん」


 めぐの反論にそっかあ、と小さく溜め息をこぼした。
 そして翔が我侭なめぐに苦笑して提案する。


「じゃあ俺の友達誘う?」


 その言葉にめぐと花ちゃんは神様!、というように翔に拝んだ。
 そして翔が携帯を弄り出すと、ちょうど二人暇人がいるようで呼び出してくれた。わざわざ学校に。


「じゃあ先輩たちは部活忙しいだろうしいっか」
「だねー」


 あたしがレオ先輩たちといても失恋したばっかでちょっと辛い子もいるだろうからと思いながら話すと、めぐと花ちゃんがうんうんと頷く。
 最初から近くにいたのか翔の友達は案外早くきて自己紹介をした。


「俺、同じクラスの水野ハルです!」
「俺は小林健太です、よろしく!」


 こばやし、けんた……って!
 さっきの女の子の元彼じゃないかと思考を巡らせるとそっと翔の方に擦り寄った。

 だって小林くんはあたしのことが好きとか言ってその女子と別れたわけだし、此処で一緒にいたのバレたらまた呼び出されるよね。


「……翔」


 ぽつんと翔の名前を呟いた。
 翔に助けを求めるように。こんなに甘えちゃいけないってわかってるんだけど、でも。


「じゃあさ、二人ずつのペアつくって適当に回ったら?」
「いいねえ、彼カノっぽーい!」


 翔が笑顔で提案するのに対し花ちゃんもめぐも楽しそうに提案にのった。
 その瞬間、小林くんの手があたしの肩に触れかけたそのとき、翔がそっとあたしを後ろに引っ張った。


「俺は梨花とね」


 翔がまるで小林くんに笑顔で告げるように、あたしを後ろから抱きしめた。
 人前でそんなことされてもあたし赤くなるだけなんですけど。


「小林くんはあたしとね」


 花ちゃんが小林くんに駆け寄る。
 え、と小林くんが声を漏らすのがわかった。



 そして翔がその二人に一瞬手を伸ばしかけたのがわかってしまった。





 彼女は幼馴染以上の存在にはなれないのだろうか。
 そう思いながらそっと翔の背中を押す。


「いいよ、あたし小林くんにするから翔は花ちゃんと一緒に行ってあげて?」


 あたしの恋愛なんてどうせすぐに崩れてしまうものなんだ。
 初恋だって思ったけど、いつもとちがう自分にドキドキしてみたけど。


 結局あたしはあたしのままだったね。



     -


 うああああああああああああああ(ry
 ぐだぐだ展開になってきた。

 まあ簡単にまとめると


 翔は小林くんが梨花のこと好きだってわかってて
 でもそんな小林くんを花が狙っちゃって
 花に辛い思いしてほしくなかったから翔は花に手を伸ばしかけたわけだけど
 結局それに梨花が気づいちゃって自分を犠牲にしてでも花を守って翔とペアを組ませたみたいな


 梨花をいい役にしようと思ったら
 いい役になりすぎて梨花が傷つく役になってしまった!

 まあもとから梨花は大切な人のためなら自分を犠牲にしちゃうような設定だったんですけど。

179ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/07(土) 11:44:42 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 彼女じゃなくて友達だったのかな side梨花



「え? ちょっと梨花っ」


 花ちゃんもめぐも驚きを隠せない様子であたしの名前を呼ぶ。
 だけど何も動いてくれない翔を見つめそっと一言呟いてから教室を飛び出した。


「彼女じゃなくてきっと友達だったんだよ、あたしたち」


 いつものあたしと違う様子に動揺したり顔を真っ赤にしたり。
 けどあたしらしくないなんてことはなかったんだよ。あたしは所詮あたしでそれ以上の存在にもそれ以下の存在にもなれないの。


「翔なんてきらいだ馬鹿」


 ぽつりと小さく呟いたところでしゃがみこんだ。
 生温い風でさえも寒く感じるところ。それでもあたしが大好きな場所――――屋上だ。

 やっぱりあたしは長年付き合ってきた幼馴染以上の存在にはなれなかった。
 もういや、と泣き出した瞬間に屋上のドアが開いた。


「如月さん……」
「こ、ばやし……くん」


 泣いているところを見られてしまった。
 そしてそっと近寄ってくる小林くんに泣きながら謝りつづける。それくらいしかできなかったから。


「ごめん、ね……ごめんなさっ……」
「こんなときに聞くのもあれだけど……如月さんと翔って付き合ってた?」


 小林くんの優しい笑みにあたしは素直に答えた。


「よくわかんない……お互い好きだったんだけど、でも結局あたしは幼馴染以上の存在にはなれてなかったもん……きっと翔はあたしのこときらいだよ」
「……俺さ、彼女いたけど別れたんだよね、今日」


 小林くんがははっと苦笑しながら言った。
 それに対してこくこく頷きながら相槌を打ったりする。


「うん、それは知ってる。小林くんの元カノさんに叩かれちゃった」
「……ごめん、如月さん」


 小林くんの表情が曇った。
 最初は何であたしを優先しちゃったんだろうと思ったし、彼女さんも何でそこまで小林くんを大事にするんだろうと思ったけど今ならわかる気がする。


「……ううん、気にしないで」


 そう言った瞬間、小林くんはそっとあたしを抱きしめた。
 暖かかった。生温い風でさえ寒いと感じるあたしにはすごくちょうどいい暖かさだった。


「……俺、如月さんに一目惚れしたんだ」
「あたし、小林くんが思ってるような人じゃない」
「自分を犠牲にしてでも大切な人を守れるようなところ、俺の予想通りだったよ」
「ちがう、あたしは……」


 あたしの嫌なところでさえも良いところとして受け取ってくれちゃう小林くんにドキンと胸が揺れた。


「あたしそんないい人じゃないよ……」
「それでも、如月さんが自分のことどう思ってようと俺は如月さんが好きだよ」


 こんなあたしをこれでもかってくらい愛してくれて、でもその気持ちにすぐ答えることはできなかった。


「……こわい」
「え……?」
「人を好きになるのが怖い、また裏切られるんじゃないかって……ごめんね、小林くんを疑ってるわけじゃないんだけど……」


 小さく震えるあたしを小林くんはもっと強く抱きしめて言った。


「じゃあ俺で試せばいいよ。俺は絶対如月さんを裏切らない」


 力強くそう言う小林くんに不覚にもあたしは頷いてしまった。


     -

180ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/07(土) 14:59:19 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 大嫌い side梨花



「……あ、電話だ」


 良い雰囲気にそれでも少し恥ずかしくなってきたとき、タイミングが良いのか悪いのか携帯が鳴り出した。
 そっと呟き携帯の画面を見るとその電話が翔からのだと気づき、出ようか出ないか迷ったあとそっと耳元に携帯を当てた。


『梨花? 梨花、今何処に』
「やっぱりもう翔はあたしのこと好きじゃないんだよ」


 ぽつりとその言葉を述べた瞬間、え?、と驚いた翔の声が聞こえた。
 それにふふっと苦笑してぽつぽつと寂しそうに言う。こんな風に言うの、卑怯だっていうのはわかってるんだけど。


「あたしのことを好きになってくれた翔はあたしが何処にいてもすぐ駆けつけてくれた」
『……梨花は何処にいてもすぐ見つけ出してくれる俺じゃなきゃ嫌だった?』
「ちがう……けど」
『今からでも行くからさ、場所教えて?』
「……やだ、だってあたしにはこばや、え?」


 あたしには小林くんがいる、と言おうとした瞬間、携帯があたしから取り上げられた。
 携帯をとった人物は予想通り小林くんで、いつになく冷たい声で翔に話し掛ける。


「残念だけど、梨花を先に見つけたのは俺だったからさ」
『……そうかよ』


 ぷちんと、相手から電話が切れたのがわかった。
 どうしよう、嫌われちゃったかな。でも元々あっちはそんなに好きじゃなかったんだし、でもどうしよう。


「……きらい、翔なんてきらい」
「ん……どっか出掛けようか?」


 あたしをそっと抱きしめてくれた小林くんの提案にあたしは自然に頷いてしまっていた。


「何処でも良いから連れてって」


 もう、翔なんて嫌いだ。


     ×


「……ごめんね、今日は」
「いやいや、気にしないで」


 あのあと適当に街をぶらぶらした。気分転換にでもと小林くんが気を遣ってくれて。
 そして小林くんが送るよ、と微笑んだ瞬間に見えたのは――――



「しょ、う?」



 翔が花ちゃんを抱きしめている姿だった。


     -

 翔くん浮気? 浮気なのか!

181ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/07(土) 15:12:40 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / その言葉が本当だとしても side梨花



「……どう、して?」


 そっと呟いた言葉が騒めく街の中に溶け込んでいった。
 でも翔は人混みの中でもまだあたしを見つけてくれて、思わず涙を流すあたしにあわてて手を伸ばした。

 やだ、言い訳なんて聞きたくない。……本当は、自分が傷つくのが怖いだけなんだけど。

 そんなことを思いながら、人混みの中に隠れていった。
 小林くんもそっとついてきてくれる。


「梨花!」


 翔があたしの名前を呼んだような気がして思わず止まってしまった。
 その瞬間、押さえつけるように肩を掴まれる。


「しょ、う……やだ、はなして」


 強く掴まれる肩を小さく震わせた。
 やだなんて、本当は思ってないけど怖いんだよ。自分が傷つくのが嫌なんだよ。


「あれは……」
「あれはわたしが抱きしめてなんて我侭言っちゃっただけなんだよ!」


 説明しずらそうな翔にもういい、と思いかけた瞬間花ちゃんが代わりに言う。
 その言葉にえ、と驚いたような表情を浮かべた。


「わたし……本当はずっと一緒にいた翔が梨花にとられて離れていくんじゃないかってこわかったの。そのこと話して……でも翔は梨花が好きって言っててね、だから最後に抱きしめてって我侭言っちゃったの」


 その言葉が本当だとしたら……
 本当だとしたら?

 きっと花ちゃんは嘘つかないしそれが本当なんだろうけど。
 本当のことを知ってあたしはどうすればいいの?

 だから翔とよりもどるの?


「……あたしもうわからない」
「え……?」


 ぼそりと言った言葉に翔も小林くんも花ちゃんも首を傾げる。


「翔が大好きだったくせに、ちょっと嫌なことがあっただけでそのときに優しくされて小林くんも好きになっちゃうんだよ……」


 もういや、恋ってむずかしい。



「あたしの気持ちって、こんなに軽いものだったのかな」


     -

182ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/07(土) 15:34:40 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 愛が重くて、重すぎて side梨花



「梨花の愛は軽くなんかないよ」


 翔があたしの肩を掴む手から力を抜いて言った。
 その言葉にえ?、と声をもらす。


「だって俺、梨花と話すだけで毎回ドキドキしてたし。梨花もそうじゃなかった? ドキドキして顔真っ赤になりながら、俺の愛重いなーとか思わなかった?」
「おも、った……」


 一生懸命にあたしを元気づけようとする翔に呆然としながら頷いた。
 そして翔がいつもの優しい笑顔を浮かべてあたしを抱きしめる。


「俺だって同じだよ、俺もドキドキしたし顔真っ赤になんのおさえるので必死だった。愛が重すぎた分、嫉妬だっていっぱいしちゃうんだよ」


 小林くんには悪いけど、だけど。


「あたし、翔がいい……」
「ん、俺は多分これからもずっと梨花が好きだと思うから……また何かあったら頼って、な? 応援してるよ!」


 小林くんがあたしの頭を乱暴に撫でて微笑んだ。
 そしてその瞬間、小林くんと花ちゃんの目がぴぴっと合う。


「ねえ、付き合わない?」
「なあ、付き合わない?」


 花ちゃんと小林くんの声が被さった。
 付き合うっていうのは遊びに付き合うのかそれともカップル的なものなのかあたしにはよくわからなかったけど、解決したようでよかった。



「だいすきだよ、翔」
「うん、俺も大好きだよ、梨花」



     -


 うだうだしゅうりょーう!



 と、思いきや!
 レオと未花に何かが!



 ……みたいな展開をねここは希望している。

183ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/07(土) 23:53:20 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

※こっから3つにわけます! 長くかきすぎたー



   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / ※なんというか、アレです。無理矢理系とか苦手な方見ないでください。ていうかこれ公開するか迷った! side梨花



 今日は疲れた、と溜め息を吐いてから家に入った。
 最後まで翔が送ってくれて、甘い気分だったあたしたちは玄関前でキスをして別れた。


「……そういえば、めぐどうなったんだろ」


 速野くんとめぐがペアだったはずだと考え携帯を見ると、そこには新着メール20件と不在着信30件の文字。
 不思議に思い新着メールを見ていくと、どれもめぐからだった。

 そしてその内容が全て「助けて」「早く来て」「こわいよ」など、助けを求めるものばかりだ。
 今更だと思いながらそれでもめぐに電話した。するとめぐはすぐに電話に出る。


『梨花あぁっ……』
「め、めぐ? どうしたの……?」
『ハルくんが……怪我してっ』
「ハルくんって……速野くん? 今何処?」
『街のあの一番陰薄い路地裏!』


 めぐの情報だけですぐ何のことかわかり、一応包帯や絆創膏などの応急処置ができるものを一通りバックに詰め込んで家を出た。


「帰り遅くなるかも!」
「え? 梨花ったら……気をつけるのよー!」


 戸惑うお母さんの声も無視して街へ走った。
 切符を買って帰宅ラッシュで込み始めた満員電車に乗って街へ向かう。

 真後ろに明らかにさり気無くボディータッチしてくる奴がいたからそっと睨んでやめてくださいと吐き捨てるように言った。
 そして駅についた途端人混みをわけて走り出す。早くいかなくちゃ!

 切符をいれて改札を通ったあと、例の陰の薄い路地裏に辿りついた。


「めぐっ……ハルくんは?」


 カタカタと小さく震えるめぐに声を掛けた。
 するとめぐがぎゅうっとあたしを抱きしめて言う。


「あのねっ……あたしが明らかに悪そうな奴らにナンパされて、それをハルくんが守ってくれたんだけど殴り合いになっちゃってっ……」
「わ、わかったから落ち着いて、ね? ハルくんは……」
「こっち、だよ」

184ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/07(土) 23:54:19 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

 ハルくんは気を失っているのか傷だらけの顔を無防備にさらけ出していた。
 そしてある程度の応急処置をしたあと、目が覚めるのを待つ。

 その瞬間、後ろからそっと人が腕を引っ張ってきたのがわかった。


「だ、れっ?」
「お、またかわいー子増えてんじゃーん」


 この人たちの様子からしてハルくんを殴ったのはコイツらかとすぐにわかった。
 そして相手が女子だからって軽く掴まれた腕を無理矢理振り払おうとする。


「っ、やめてください! 放して!」


 突然あたしが反抗してきたことに相手も予想外だったのか思わず腕を放す。
 そしてキッと睨みつけたままあたしが言い放った。


「何で此処まで殴るの? めぐが可愛いのはわかるけどナンパして失敗したからって人に当たるのって相当幼稚だと思うんだけど」


 怖いって気持ちもあった。
 それよりこんなことをする相手が許せなかった。

 その瞬間相手がくくっと怪しげに笑う。


「……元々なあ、あの女をナンパできなかったからじゃなくコイツが気に入らなかったんだよ」
「気に入らないから殴るっていう考えもナンパして失敗して殴るのと同じくらい幼稚だけど」


 応急処置を終えたハルくんの髪を掴みぐいっと持ち上げる相手たちに怖いと本当に思った。
 それでもこれ以上傷つけるわけにはいかないと相手の腕を掴み力の抜けたハルくんを片手で支える。


「もう手出さないで」
「怖いのか?」
「……ち、がう……」


 ハルくんの髪を掴んだままそっとあたしの顎に手が添えられた。
 顔を近づけてくる相手に後退りながらも首を振る。


「じゃあ何で逃げんの?」
「……触らないでっ……」


 あたしの顎に手を添えたままの相手の質問に答えずキツく言い放った。
 その瞬間、ハルくんを殴るような素振りを見せる。


「だめっ!」


 こわかったけど反射的に体が動いた。
 自然とハルくんをかばうよう自分が前に出る。殴られると思ったけど、相手はすん止めしてくくっと笑った。


「殴らねえよ、お前がキスさせてくれんなら」
「……え?」


 キスはやだ。
 そんな思いがあたしの頭の中をめぐった、けど。


「じゃあコイツ殴ってもいいんだ?」
「だ、だめ……キスしていいからっ……手出さないで」
「や……梨花!」


 キスしていい、と言った瞬間めぐがふるふると首を横に振った。
 それでももう言ってしまったからだめだと思い、めぐに大丈夫だと言うような笑みを見せる。

 無理矢理腕を引っ張られて、あたしの手で支えられてたハルくんが地面に崩れ落ちた。
 逃げられないようにと両腕を強く握られ相手の顔が近付いてくる。

185ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/07(土) 23:58:12 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp

3つにわけると書きましたが
4つにわけなきゃ書けなかった!



いやちょっと本当にごめんなさい。
苦手じゃない人も見ない方がいいね。そしたら意味ないんだけどさ。


     -



「……やっ」
「口開けよ」


 口開くって、
 でも無理矢理開かされて相手の唇が重なった瞬間もうどうでもよくなった。

 相手の舌が口内に入ってきて気持ち悪い。
 これが翔とだったら少しでも快楽に変わっていただろうかと思いつつ、もうあたし自身に力は入らなくてぐったりと相手に身を任せてしまっていた。


「……ん、ぅ」


 息ができなくなってくる。
 吸いたくない、コイツと同じ空気でさえも吸いたくない。

 それでも息が苦しくて、いっそのこともう死にたいと考えたその瞬間、相手の顔が離れる。

 同時にぱっとあたしを支えるように掴んでいた相手の手も放される。
 バタリとその場に倒れ込んだ。


「……っ、う」


 ひゅうひゅうと少しずつ息をする音が聞こえた。
 そして次の瞬間に、めぐの悲鳴が響く。


「きゃあっ!」
「め、ぐ……? っ、」


 涙目で見るとさっきあたしにキスをしてきた奴の取り巻きみたいなのがめぐの両腕を掴んでいた。
 そしてあたしもぐいっとキスしてきた奴に無理矢理立ち上がらされる。


「なあ……あの女お前のダチだろ? あいつぐちゃぐちゃにしてやってもいいならお前は逃がしてやるけど……」
「だ、め……」


 あたしが即答した瞬間、相手がニヤついたのがわかった。
 その瞬間めぐは放されて、それでもあたしはぐいっと掴まれたまだ。


「じゃあ代わりにお前ぐちゃぐちゃにしてやろうか……顔もいいし飽きても気晴らしにとっておくぐらいしようかな」


 つ、まり
 あたしはもう帰れないと。


 もう希望なんてないと思い、またかぶりつくようにキスしてくる相手にもう何の抵抗もしなかった。
 コートを脱がされ服も脱がされていく自分になんともおもわなかった。

 さらけ出した肩に風があたり冷たいと感じることさえもできなかった。


 その瞬間、あたしの名前を呼ぶ声がきこえた。

186ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/07(土) 23:58:49 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp
「梨花っ……! っ、お前……何やって」


 翔の声だ。
 よくよく見てみると小林くんもレオ先輩も来てくれてる。


「あ? ハルとかいうやつとめぐとかいう奴逃がす代わりにコイツは俺のものになるって決まったんだよ、無駄なことすんじゃねえぞ?」
「……っ、りか」


 そっと呟く翔の声に微笑むことでさえできなくて、ただ何であたしがこんな目に遭っているんだろうと朦朧とした意識で必死に考えることしかできなかった。
 その瞬間、レオ先輩の冷静な声が聞こえた。


「警察呼ぶか。俺らが出ても犠牲者増やしたりするだけだろうし」
「でも先輩っ……」
「大丈夫、此処街だから交番いっぱいあるしよー」


 レオ先輩が微笑んだ瞬間、あたしがまた突然キスをされたのがわかった。
 また口内に相手の舌が入りこんできて気持ち悪い、もうやだ。

 その瞬間、早くも警察は駆けつけた。


「おい、やめろ」
「……最後までやらせろよ」


 相手が告げた瞬間、もう終わりだと思った。
 のに、レオ先輩が無理矢理その男の腕を掴みすんなりと警察に渡す。

 あたしを支えてた相手の手がなくなって、ふらりとその場に倒れそうになった瞬間レオ先輩があたしを支える。


「……れお、せんぱ……」
「とりあえず服直そうな」


 乱れた服をそっと直していくレオ先輩にふらりと体重をあずけてしまった。


「……くちのなか、きもちわるい……」


 隅々まで舐め回されたようで嫌だ。
 そしてレオ先輩が優しく聞く。


「うがいとかしにいく?」
「ん……」


 歩けるか?、とあたしに気を遣う先輩に本当に優しいなと思った。
 そしてふらりとよろめきながら歩こうとしたが力が入らなくその場に倒れ込んでしまいそうになった。

 その瞬間、レオ先輩がそっとあたしを抱き上げる。
 未花先輩を抱き上げてたときと同じようだお姫様抱っこ。


 一つ疑問に思ったのは、何で翔が助けてくれないんだろうって。
 精神的にキツかったんだろうけど、それでも今はレオ先輩に任せていたかった。


 近くのお店で気持ち悪くなったと言いうがいさせてもらったりした。
 そして気持ち悪さも消えたと思ったけど、やっぱり少し嫌だ。

 そう思った瞬間、つい体が動いちゃったの。



 あたしが立ち上がり、レオ先輩の唇にあたしの唇を重ねた。



     -


 はいごめんなさい。
 本当にごめんなさい。

 それしかいうことがない。
 というかそれ以外の言葉が出てこない。

187神野計画:2012/04/08(日) 05:07:48 HOST:ntfkok190145.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
今のところ、クソスレのクソレスだらけ。
ボク以外。

188ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/08(日) 11:18:56 HOST:w0109-49-135-21-29.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 覚えてはないけれど side梨花



「……り、か?」


 不意打ちでキスされたレオ先輩はとても驚いた表情をしていたけれど、今のあたしにはそんなことどうでもよかった。
 さっきキスしてきた人に染まってて気持ち悪かったのが消えていくようで安心したあたしはふらりと前に倒れそうになる。


「れ、おせんぱい……すき」


 動揺してそれでもあたしを支えてくれたレオ先輩に思わず言った一言。
 でも戸惑う気もないあたしはにこっとレオ先輩の顔を見つめた。顔が真っ赤なレオ先輩が小さな声で一言呟くように言う。


「梨花って本当わかってないよな……」


 もう一回不意打ちでキスしてやろうかとも思ったけどもう少し様子を見ていようと思った。
 でも真っ赤な顔をしたまま俯くレオ先輩に思わず顔を近づける。


「すきだよ、れおせんぱい」


 そっと唇を重ねたあとレオ先輩に体重をあずけて深い眠りに落ちていった。


     ×


「りーかー……先輩きてるよ、もう」
「……んぅ、」


 お姉ちゃんの声がして目が覚めた。
 先輩? 誰だろう、と思いながら重い体を起こす。


「れ、お先輩……?」


 さっきまで自分が何をしていたのか。
 それがよく思い出せなくて何でレオ先輩がいるの?、と思いながら見つめる。


「梨花、さっきのこと覚えてねえの?」
「……なんにも」


 レオ先輩が寂しそうなほっとしたような笑顔を浮かべていた。
 よくわからなくなってレオ先輩に尋ねる。


「ねえ、教えてよー」
「全部はだめ、途中までな」


 そしてレオ先輩があたしのお母さんとお姉ちゃんにも話した。
 あたしがハルくんとめぐを庇って代わりに知らない人たちに襲われかけたこと、だけ?

 そのあととっても幸せな気分になったような気がしたんだけど。


「つづき、あるんでしょ?」
「……それは話せないよ、」
「やだ、教えて!」


 何であたしこんな我侭言ってるんだろう。
 そんなことを思いながらそっとレオ先輩を見つめる。するとレオ先輩は溜め息を吐いて話し始めた。


 あたしがレオ先輩にキスしたこと、とか。
 それともう一つ。



「俺さ、未花と付き合ってるはずなのに……梨花にキスされて梨花のこと好きなんじゃないかって思っちゃった」



 レオ先輩があたしに振り向いてくれるかもしれないということ。




     -


 何かいろいろと雰囲気的に下げて書いておく。
 本当はガツンと言いたい気持ちもあったけど触れると荒らしと同類になりそうでやだorz


 複雑ね(´・ω・`)!

189ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/08(日) 14:51:44 HOST:w0109-49-135-21-29.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / もし好きでいてくれるなら side梨花



「……ごめん、こんな話ししても困るだけだよな」
「ううん、あたし……あたしは」


 あたしには翔がいて、小林くんもあたしを好きだって言ってくれて。
 でもきっと小林くんはあたしの相手が翔だから諦めてくれたわけで、レオ先輩になると話しが違うかもしれない。


「……あたしは好きな人にしかキスしないよ」


 そう微笑んで言った瞬間、レオ先輩が頬を赤らめたのがわかった。
 まあ、遠回しに好きって言ったようなものだしね。


「俺もう未花のこと好きじゃないのかなあ……一生大事にするって決めたのに」
「一生大事にするなんてそんなの無理だよ。お互いただ愛し合っていくだけの関係は深まらないだけだし」


 そっと呟いたあと、にこりと微笑んで先輩に告げた。


「……あたしやっぱり先輩好きかも」


 優柔不断っていうのかな。
 翔が好きで小林くんも好きになって、また翔を好きになって。

 次にレオ先輩だなんて都合が良すぎると思う。


 でもそれでも
 自分の我侭を突き通してでも幸せな恋をしたい



     -

190ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/10(火) 17:48:28 HOST:w0109-49-135-27-63.uqwimax.jp

 ▼なんかおしらせっぽいの

 パソコン一回壊れちゃって(昨日)
 すぐ直したんですけどやっぱりこれから書く時間なさそうです;

 なのでまあちょこまか短め更新多めになると思いますがまったーりしてってね!←

 今日は更新できないかもです、かもだけど。

191ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/11(水) 18:38:28 HOST:w0109-49-135-27-146.uqwimax.jp

 ▼さらにまたおしらせ

 パソコン確実に直りましたー!
 普通に更新できると思いますがやっぱり更新率は減るかなorz

192:2012/04/11(水) 20:06:08 HOST:zaq77195e4e.zaq.ne.jp
ねここ>>再開やなw

応援してるわノシ

193ピーチ:2012/04/11(水) 21:11:12 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

わー!!・0・再開だー!!*^0^*

楽しみにしてるねー♪ww

194ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/14(土) 14:18:47 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp

>燐

やっぱり更新率はさがっちゃうけど再開だよ!
応援ありがとー!燐もがんばれっ

>ピーチ

ありがとー><*
がんばる!

195ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/14(土) 17:25:52 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 我侭ではありますが、 side梨花



「……でも」


 まだレオ先輩の心には迷いがあるのか、表情を曇らせながらあたしを見つめていた。まるで答えを求めるような目線で、まるであたしに助けてというような目線で。
 じっとあたしを見つめるその瞳がいつしか自分のものになれば良いのにとどれだけ願ったことだろうか。


「あたしはレオ先輩の好きな選択肢を選んで良いと思うよ」


 人を選ぶのって、周りの人は簡単そうに見てるけど実際選ぶ立場になったらかなり迷うと思う。
 でもあたしは翔も小林くんも裏切ってしまった。レオ先輩が好きで、それに気づいて向き合える自分が嬉しくて、つい。


「未花先輩とあたし、どっちが大事?」
「……俺は」


 質問を変えて、それでも難しいような内容になってしまったことに少し後悔したけれどもご、と小さく口を動かすレオ先輩の言葉に耳を傾けた。


「俺は梨花が好きなんだと思う、けど……でも、そしたら誰が未花を守るんだろうって考えると結局俺は未花の傍にいなきゃってなって」


 初めて聞いたような気がした。
 レオ先輩の素直な気持ちを。


「……未花先輩はきっと、レオ先輩じゃなくても大丈夫だよ」


 この言葉を言った瞬間、あたしを愛してくれた翔を手放すような気持ちになった。
 遠回しに未花先輩には翔がいるって言っているようなもので、少し罪悪感が生まれた。


「俺、梨花が好きだよ」
「あたしも先輩が好き」


 きっとレオ先輩の心の中も罪悪感でいっぱいなんだろうな。
 こんなことなら未花先輩の「レオ先輩が好き」って気持ちに気づかせなきゃよかったって、あたしもちょっとだけ思ってる。


 でもあたしは、やっと結ばれたレオ先輩との時間を大切にしたいなと思った。
 ごめんね。未花先輩、小林くん――――







 ――――翔。




     −




 さあどうなる!みたいな←
 久々更新ですわっほい☆((

196ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/14(土) 18:06:30 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 大好きだったよ side梨花



 ――――大好きだったよ
 あたしの我侭だと思うけど別れよう
 こんなあたしに優しくしてくれて
 こんなあたしを好きでいてくれて
 こんなあたしを愛してくれて、ありがとう
 どんなときでもあたしの傍にいてくれた翔はいつまでもあたしの大切な人です
 また頼るかもしれない
 また慰めてもらうこともあるかもしれない
 きっと翔は嫌だと思うけど、でもあたしは翔も大切だよ
 あと、未花先輩と仲良くしてね
 これからは翔が未花先輩を守ってあげてください


 携帯に打ち込んだ文章を何度も何度も見直して、でも勇気が出なくて送信せずにそのまま携帯をパタンと閉じてから溜め息を吐いた。

 絵文字も顔文字もない素っ気無いメール。
 終止符が一つもないのはきっと、あたし自身は翔との関係を終わらせたくないからなのかもしれない。

 いや、終わらせたくないというより手放したくないっていうのの方が正しいかな。
 あたしの家からレオ先輩が帰ったあと、暫くメールの内容を考えていた。


 レオ先輩にあたしか未花先輩選んでって言ったわりにはまず自分がレオ先輩か翔か選べてなかった。
 うーんと唸りながら考えていると、家のチャイムが鳴り出す。


「しょ、う……?」
「梨花っ、さっきは何もできなくて……ごめん!」


 ドアを開けた瞬間すぐに頭を下げた翔に戸惑いながら、それでも玄関からふいた風に寒さを覚えて小さな声で尋ねた。


「上がってく?」
「梨花がいいのなら」


 いつもならお互いに話題を出すあたしたちだったけど、今日はあまり話さなかった。
 そして翔がそっとあたしに尋ねる。


「俺のこと、もう好きじゃない?」
「……好き、だけど……でもごめん! これ読んで!」


 勢いに任せて、さっき携帯に打ったメールを見せた。
 送信しなかったそのメールを見て翔が驚いていた。そしてにへらとあたしを安心させるようにと微笑を見せる。


「うん、わかった――――梨花もレオ先輩となかよ、く……」


 途中で翔の言葉が途切れた。
 涙を流しているのか、そっとあたしに抱き着いて顔が見えないようにした。


「……ごめ、ん……さい、ごだから…………」
「……っ、あたしわかんない……どうしたらいいの?」



 大好きだよ、二人とも。
 でも、どっちが恋愛感情なのかわかんないよ。


     -

197ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/14(土) 21:49:21 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 君の好きな人は誰ですか? side梨花



「……え?」
「あたし、レオ先輩が好きなのかなって思ったけど……わかんないよ、翔も好きだもん……」


 あたしは誰が好きなのだろうか?、と今まで何度も自問自答を繰り返してきた。
 答えはその時によって様々だったりして、無理矢理納得させてるんだって心の何処かでは気づいていたけれど。


「……好きな人って、なんだろうね」


 今のあたしは無理矢理納得することでさえ出来ない。
 もう自分の気持ちに嘘は吐けなくて、吐きたくなくて。でも、わからなくて。


「翔の好きな人はだれ?」


 なんだか恋愛っていうこと自体わからなくなってきた。
 翔に馬鹿馬鹿しい質問を問いかけてみるけど、やっぱりあたしは人に頼ってばかりなんだなって改めて感じた。


「俺は……梨花が好きって言ったらやっぱ困る?」
「……あたしはね、よくわからない、の……」


 翔があたしを好きでいてくれることは嬉しい。
 でもあたしの愛情ってちょっとおかしいような気がする。


「……愛されるから好きになるのかな?」


 あたしの問い掛けに翔はにこりと微笑んで答えた。


「愛っていうのは人によってそれぞれだと思うけど、俺の愛は違うかな。愛されるから好きになるんじゃなくて、俺が愛したいから愛してるんだよ」


 大好きな翔は、










 いつでもあたしに優しくしてくれたね。





     -



 大好きな翔は、のあとの隙間はとくに意味がない!
 けどまあ雰囲気というかなんかね!

198:2012/04/14(土) 22:12:16 HOST:zaq7a66c598.zaq.ne.jp
何やこれえええ!!!

まさかの二股パターンかw

199ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/14(土) 22:29:42 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp

>燐

どうだろうね!
梨花に限って二股はないと思うけどどうなんだろう、このあとの展開まったくわからない←

200ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/14(土) 22:30:15 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp

 ▼200レス突破!

 Loveletterもついに200レス突破しました!
 今梨花ちゃん編でうだうだしてますがきっと大丈夫です←
 記念に何かと思ったけどねここの文章力とアイデアの無さのせいで何もできませんでした、はい((
 そのかわりというのもあれですけどしあんいろの一周年記念でフェチお題書いてるんでよろしくね(`・ω・´)!

 宣伝になってきたので短いけどおわろうかな!


 これからもがんばっていきます!

201ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/16(月) 16:49:43 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 幸せになればいいなって side梨花



「あと梨花、もう一ついいかな」
「……うん、なあに?」


 あたしを不安な気持ちにさせないためか優しげな笑みを浮かべて話す翔だけど、ちょっとだけ嫌な予感がした。
 少し間をあけてから頷くと、翔は残念そうに言い放つ。


「悪いけど、俺は未花先輩を守れない」


 この言葉のあと、動揺しつつもあたしが尋ねる。


「どう、して?」
「俺は梨花が好きで、未花先輩はレオ先輩が好きで……お互い好きじゃないのに梨花とレオ先輩の都合て俺たちがくっつかなきゃいけないのはおかしいと思うんだ」


 あたしは、ただ未花先輩にも翔にも幸せになってほしくて。
 あたしとレオ先輩が付き合うことになったら、きっと未花先輩は一人になっちゃうから翔とくっつけばいいなって思って。


「……なん、で……」
「未花先輩は何て言うかわからないけど、俺は梨花がレオ先輩と付き合いたいんなら諦めるよ。大好きで大事な人のことだから、応援してあげたいし。でもさ、仮に未花先輩がレオ先輩と別れたとしても俺と未花先輩が付き合う必要はないと思うし、俺たちが付き合っても俺も未花先輩も全然幸せなんかじゃないよ」


 翔の厳しい言葉に、それでもその現実を受け入れたくないあたしは翔に聞く。


「じゃあ、どうしたら翔と未花先輩が幸せになれる……?」
「俺にとっての幸せは梨花と一緒にいることだよ。正直に言うと、俺も未花先輩も梨花やレオ先輩とわかれたらまず幸せにはなれない。それくらい、大事に思ってるんだよ……自分で言うのもなんだけど、ね」


 あたし、どうしよう。


     -

202:2012/04/16(月) 17:41:16 HOST:zaq7a66c598.zaq.ne.jp
ねこっぴ>>そかそかw

てか、梨花ちゃん…大丈夫かね?

思ってた事が思いっきり裏目に出ちゃったけどw

203ねむねむ:2012/04/16(月) 18:28:32 HOST:S010600222dda046f.vc.shawcable.net
私には大好きな彼氏がいた。

だが私は他の女の子と仲良しでそれにみんなから人気だった

それが怖かった。

なぜなら父親が浮気をしたからだ。

気が狂いそうになった。身近でしかも一番信頼していたから。

だから彼氏もそうなのかなと思った。そしたら急に怖くなった。

束縛をしてしまったおかげで自分は彼氏に別れを告げられた。

仕方なかった。怖かったから…

そのあと元彼氏は言い続けた

(ただ胸が大きいから、遊ぶには丁度よかった)

それから何年かが立ち、もうトラウマも少しずつ減った。

まいくに会って、自分は変われると思った。

204ねむねむ:2012/04/16(月) 18:30:03 HOST:S010600222dda046f.vc.shawcable.net
わあああああ、すみませんf^_^;)

自分、違うところに書いていまいました…

ねこねこさん本当に申し訳ないです…

205ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/16(月) 22:16:04 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp

>燐

正直梨花とレオをどうすればいいかまったくわからない(`・ω・´)←
まあ、なんとなるよね!←

>ねむねむさん

大丈夫ですよー!
気にしないでください^^

206ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/16(月) 22:33:42 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 本当の気持ち side梨花



「……あたし、わかんないや……」


 どうすれば翔が幸せになるんだろう、どうすれば未花先輩が幸せになるんだろう。
 どうすれば、レオ先輩の気持ちを変えられるの?

 いっぱいいっぱい、ぐるぐる考えたりもしてみた。でもやっぱり何も思いつかなくて――――でもあたし、気づいちゃったんだよね。



 「どうすればあたしが傷つかずに済むんだろう」って、自分のことばっかり考えてたから翔や未花先輩の幸せを手放そうとしてたんだ。
 自分が傷つかないように、って。もう傷つきたくない、って。そんなの無理に決まってるのに。


「あたし、翔と一緒にいるよ。未花先輩にはレオ先輩が必要だもん」
「……俺、梨花といなきゃ幸せになれないって言ったけど、梨花が傷つくと俺も傷つくよ」


 翔の言葉と同時にそっと抱きしめられた。
 包み込まれていくその感じが暖かくて心地よくて、でも甘えていいのかなって思っちゃう。


「……好きだよ、翔のこと」
「俺も大好きだよ、梨花」


 これが本当の気持ちならいいのになって思う。
 思うけど、今のあたしにはまだよくわからなかった。


     ×



「レオ先輩っ」
「梨花っ」


 次の日の朝、学校に着いてすぐレオ先輩を探した。
 廊下でバッタリ会ったところでお互いの名前を呼び合う。

 どうやら二人とも、話したいことは同じのようだ。


「あたし……よくわからないんです」
「俺も、考えても何も思いつかなかった」


 レオ先輩も、あたしも。
 考え方がそっくりで、レオ先輩の苦労はしっかりと伝わってきた。


「あたしね、正直レオ先輩には未花先輩しかいないと思うんです」
「俺も、正直に言うと梨花には翔しかありえない」


 ふっと、レオ先輩の表情に今日初めて笑みがこぼれた。


「俺、未花を一生守っていきたい」
「あたしも、翔と一緒がいいな」


 レオ先輩も大好きだったけど。
 でもきっと、それはちょっと気持ちが揺らいじゃっただけなんだと思う。

 そう、思わなきゃ。



「梨花のこと、大好きだったよ……きっと本当に恋愛感情だった」
「あたしも、レオ先輩のことが大好きでした」



 そう告げて、レオ先輩と別れる。
 レオ先輩に背を向けたところで、思わず涙があふれてきた。


 失恋したわけじゃないのに。
 お互い大事にしたいものを見つけただけなのに。




 レオ先輩を手放したって考えるとこんなにも辛くて悲しい。
 これは翔を手放しても同じことだったのかな。




 レオ先輩




 ほんとは、ずっとすきだった
 いまも、きっとこれからも




     -


 う だ う だ !
 この回をレオ視点で書くときっとレオも寂しい気持ちでいっぱいでちょっとくらい泣いてるんじゃないのかなとか。

207ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/18(水) 20:17:48 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / ずっと大好きだったのに side梨花



 本当はこれからもレオ先輩を好きでいたくて、でもあたしはもう好きでいることさえも許されないような気がしていた。
 レオ先輩には未花先輩がいて、あたしには翔がいるんだから――と、自分に言い聞かせるように溢れ出す涙を拭いながら思う。

 あたしが泣いてるとき。
 きっとレオ先輩は必死にあたしを慰めてくれて、きっと恥ずかしさ紛れに抱きしめてくれたりしただろうな。

 そうやって慰めてくれるなら誰でもいいんじゃないかって思ってたけど、今はそんなの嫌。
 レオ先輩がいい、レオ先輩じゃなきゃ嫌だった。


 でも、こんなに悲しい気持ちでいるあたしを慰めてくれる人はレオ先輩ではないんだと分かっていたからこそ更にあたしを辛い気持ちにさせた。

 大好きなんて、言わなきゃよかった。
 確かにそれは伝えたかった大事な言葉だったけれど、この言葉を伝えた所為でもうレオ先輩とお別れしてしまうような気持ちになって。


 どうしてあたしが、なんてもう思わないって決めたのに。
 どうしてあたしがこんな辛い思いをしなきゃいけないんだろうって、ついには怒りまで込み上げてきたような気がした。

 でもそんな怒りもすぐに消えて、それがまた涙に変わって溢れ出てくる。


 一人泣き崩れていた使われていない会議室に、突然聞きなれた声が聞こえてきた。


「……梨花、ちゃん?」
「っ、未花……先輩」


 未花先輩は何も悪くない、悪くないのに……
 あたしきっと未花先輩のこと睨んじゃってる。自分を制御できなくなってきて、あたしに駆け寄り触れた未花先輩にキツく言い放った。


「今は一人にしてください!」
「っ、……どう、したの?」


 何も知らない未花先輩に対して罪悪感の気持ちでいっぱいになって、それがまた涙になって溢れ出てくる。
 その瞬間、ガチャリと嫌な予感をさせる効果音がした。

 鍵が閉まるような感じの。

 そっとドアに駆け寄って開けようとするけれどドアは鍵がなきゃ内側からも外側からも開(あ)けられないので開(ひら)かない。
 その場にヘタリと座り込んだ。未花先輩まで危ない目に遭わせてしまうなんて。


「ごめんなさい未花先輩……っ」


 涙を必死に止めて頭を下げた。
 未花先輩は小さな間をあけたあとあたしに優しく微笑みかける。きっと驚いてるよね、この状況。


「大丈夫だよ、梨花ちゃん。それと、ね」


 未花先輩の不安そうな表情に小さく首を傾げる。



「梨花ちゃんが何で泣いてたのか、教えてくれないかな? 全部、正直に」


 未花先輩は鈍感だけど、きっと話さなくても内容は分かっているだろう。
 諦めてあたしは全てを話すことにした。


     -

208ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/18(水) 20:33:39 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 幸せになってね side梨花



 あたしは未花先輩に今まであったこと、これまでのことの全てを話した。

 あたしがずっとレオ先輩のことを好きだったこととか、事情があったとしてもとにかくあたしからレオ先輩にキスしたこととか。
 あたしとレオ先輩は両思いだったこととかも、全部。

 それを話している間、未花先輩は真剣に、でもちょっと寂しそうな表情で相槌を打ちながら聞いてくれた。


「……あたし、翔といるっては言ったけどやっぱりレオ先輩が好きなんです」
「うん、梨花ちゃんの気持ちだもん。そこはわたしは何も口出しできないね」


 未花先輩はやっぱり優しくて、可愛くて。
 こんな女の子がレオ先輩と並ぶには相応しいと思うんだけどね、


「もうレオ先輩を先輩として見ることができないんです……好きって感情を手放そうとするとどうしても辛くなってきて」
「……梨花ちゃんはもう、我慢しなくていいと思うよ」


 未花先輩の言葉にえ?、と声を漏らした。


「梨花ちゃんいっぱい我慢してるじゃん、好きでいるってことくらい良いと思うな。ここから先のことはレオ先輩もいなきゃ話せないけどね」


 自分がレオ先輩と別れてもいいのだろうか。
 未花先輩は余裕そうな、いや、きっと未花先輩のことだから自分が不幸になる道を見ているようで少し罪悪感がうまれた。


「未花先輩も我慢しなくて――――」
「我慢してるんじゃなくてね、幸せなみんなを見るのが楽しいんだよ」


 未花先輩が辛そうな、それでも優しい笑みを浮かべてあたしに言った。


「まだ先生以外誰にも話してないんだけど……わたし、これからいつまで生きれるかよくわからないんだよね」


 未花先輩の言葉に目を見開いた。
 そして未花先輩が言葉をつづける。


「いつ死ぬかもわからなくて、でも発作が酷くなったら手術も危なくてあんまりできないみたいで……みんなと同じくらい生きるのは難しいって」
「そん、な……」


 そっと呟いたあと、未花先輩が辛いと思うのに無理矢理微笑んで言った。


「だから梨花ちゃんはわたしを気にしないで幸せになってね」


 幸せになってねって、すごく嬉しい言葉のはずなのに。
 未花先輩の幸せなってねはこんなにも辛くて寂しい――――



     -

209ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/19(木) 20:40:08 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp

   Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 余命一年 side梨花



「未花先輩、死んじゃうんですか……?」


 未花先輩の言葉が嘘なんじゃないかと、あたしとレオ先輩を付き合わせるために言った言葉なんじゃないかと思い疑うように未花先輩に尋ねた。
 でも未花先輩は残念そうに、それでもあたしを不安にさせないようにと無理に微笑を浮かべる。


「うん……で、でもね! まだ余命が決まったわけでもないし、ね?」


 未花先輩が誤魔化すように言った言葉なんてどうでもよかった。
 あたしがレオ先輩とどうこう言ってる暇なんてない。


「未花先輩が幸せになんなきゃだめです……あたしが幸せになっても意味ないですよ」


 自分が傷つかないための決断っていうのも時には必要だと思う。
 だからこそ、あたし自身が傷つかないために未花先輩には幸せになってほしい。


「未花先輩が幸せにならなきゃあたし全然嬉しくない……あたしも辛いよ」


 それでも未花先輩は自分のために遠慮してるんじゃないかと感じてしまったのか、苦笑して首を左右に振る。


「わたしのことは気にしないで――」
「未花先輩、あたしたちに幸せになってほしいとか言っておいてあたしを傷つける行為をしようとしてるんですよ? やめてくれないんですか?」


 遠慮がちな未花先輩に対してキツく言い放った。
 確かに言い方は悪かったと思うけれど、やっぱり未花先輩は泣き出してしまう。


「……っ、未花先輩……キツく言ってすみません」
「ちがう、ちがうの……」


 あたしが謝ると、未花先輩はふるふると首を左右に振りながらちがうと何かを否定し始めた。
 そして少し落ち着いてからあたしに向き直って言う。


「キツく言われたなんて思ってないしそのことに泣いたわけじゃないよ……梨花ちゃんが、わたしのことを思ってくれてて嬉しくて……もうわたし、死んでもいいかも」


 えへ、と可愛らしく微笑む未花先輩に胸がズキリと痛んだ。
 死なないでほしいっていうのが一番の願いなのに。


「……手術、そんなに危ないんですか?」
「発作が酷くなると死んじゃうらしいけど、手術も死んじゃう確率高いんだって」


 つまり、何もできることはないということだ。
 あたしが思わず涙をこぼした瞬間、ガチャリという音と共にドアがそっと開く。


「未花、梨花……っ」


 あたしたちの名前を呼ぶ大好きなレオ先輩の姿に思わず立ち上がる。
 けれどレオ先輩にちゃんとさっきまでのことを話してあげなきゃと思いとんっと未花先輩の背中を押した。

 おっと、とよろけそうになった未花先輩をレオ先輩が軽々と支えたあと、未花先輩はそっと上目遣いでレオ先輩を見つめ聞く。


「レオ先輩、ずっと聞いてましたよね……?」
「……ん、聞いてた」


 少し間をあけたあと、レオ先輩がごめんと謝った。
 そして未花先輩がいいんです、と首を振り謝る。


「わたしこそ先輩に言えなくて本当にごめんなさいっ……」


 泣きながらごめんなさいと言い続ける未花先輩の頭をレオ先輩がそっと撫でた。
 ――そのあと、レオ先輩が未花先輩を震えた手で包み込む。


「……余命とか、本当にわかんねえの?」
「…………ほんと、は……」


 長い間をあけたあと、未花先輩も震えた声で言った。


「本当は、あと一年しか生きられないって……」



 なんで、未花先輩が――


     ‐

210ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/20(金) 19:55:03 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp

   Empty heart



 わたしの心は「     」気持ちでいっぱいだ。


 ――ぼんやりと、その言葉を眺めていた。
 まだ新品の教科書には「」の中の言葉を埋めなさいなんて命令口調の黒字が書かれている。

 相変わらずの命令口調に何も思うことはなかった。
 友達はいい加減命令口調やめてほしい、飽きてきたと愚痴を吐いてきたけれどわたしにとってはどうでもいいことだし。


 ていうか、高校生にもなってこんな問題を出すか?
 そう半ば呆れながら、それでもその空欄にどんな言葉が入るのかと真面目に考え出した。

 わかった人から手挙げて発表してー、なんて中学生や小学生っぽいことをやらせる国語の先生を溜め息混じりに見つめた。

 こんなのわたしにはわからない、と心の中で諦めたけれど、周りをよくよく見てみるとほぼ全員手を挙げている。
 その生徒たちの瞳はまるで先生に馬鹿にしてんじゃねえよ、と言っているようだった。


「じゃー……空」


 まだクラスの人の名前をよく覚えられてない先生は席順ではない出席番号順の名簿を手に、ふいにわたしの名前を呼ぶ。
 わたしはえ、あ、と何も言えなくなって戸惑ったあと、冷静にびしりと言い放った。


「わたし手挙げてませんけど」
「ああ、名簿席順じゃないからよくわからなくてねー」


 ごめんごめん、と苦笑する先生に何とか逃れられただろうかと思う。
 そんなことを思ったわたしが馬鹿だったのかな。


「でもこれは答えられるんじゃないの? 空、答えてね」


 無理無理!、と両手を胸の前で振ったけれどもう逃れられそうにはなくて、溜め息を吐いたあと言った。


「わかりません」
「……マジで?」


 少し間をあけたあと、まさかと言ったような目で先生がわたしを見つめた。
 それに反抗して呆れた表情で見つめ返す。


「わからないし答えたくもありません、代わりに誰かどうぞ」
「ん、んー……納得しちゃいけないような気もするけど、まあいいや……じゃあ綾、答えてー」


 綾はわたしがそう思っていいのかわからないけど友達で、代わりにさされて大丈夫かな、と思った。


「はい、わたしの心は幸せな気持ちでいっぱいだ、です」


 綾も戸惑い恥ずかしさ紛れではあったけれどハッキリと自分の考えを述べていた。
 これが正しいとわかっていながら、それでもわたしには無理だと諦める。


「はいはい、その心は?」


 国語の先生はよくわからないけどその心を問い掛けていて、綾はにこりと可愛らしい笑みを浮かべてからわたしを見つめ言った。


「大好きな友達と学校生活を送れていることが幸せで、感謝しても感謝しきれないくらい幸せだーって気持ちでいっぱいなんです」


 綾がわたしのことをこんな風に思ってくれてるなんて思わなかった。
 でもわたしの心は幸せな気持ちでいっぱいになるっていうのは、ちょっと違うような気がする。

 違うというか、わたしはそういう感情になったりはしない。


「……幸せってなんだろうね」


 ペンケースについている綾と御揃いの兎のストラップを見つめながら、そう独り言を呟いた。


     ‐


 つづきます!
 一周年記念の息抜きと思いましたがこれも一周年記念です←
 ていうかもうぜんぶ一周年きねn((

211ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/20(金) 19:56:13 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp

はい、すみません!
上の小説はしあんいろに投稿する予定だったものですorz

しあんいろにも投稿しておきますm(_ _)m


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