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蝶が舞う時…。 ―永遠―
1
:
燐
:2012/01/13(金) 17:04:47 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
こんです!!!
暢気で馬鹿がモットーの燐です。
蝶が舞う時…。の第2期が終わり…いよいよ第3期です!!
此処で全てが完結します!
今までの謎も全て完結です!!
此処で注意事項は少々。↓
・荒らし・悪口はNG
・感想・評価は大歓迎。
・一部ショッキング・残酷シーンが入ると思うんで苦手な人は退散してください。
これぐらいですが・・また追加するかもです。
ジャンルは、恋愛×感動です!!
後、私の小説を真似・パクリなどはお控えください。
初心者丸出しですが宜しくお願いします!!!
24
:
燐
:2012/01/15(日) 15:29:38 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
今の私じゃ誠に何も言われない…。
私じゃ誠を守れない…。
惨めで臆病な私でごめんね…。
私は泣きながら誠の部屋を飛び出した。
誠の部屋を飛び出して自分の部屋に駆け込んだ。
「いやぁぁぁぁ!!!!」
私は喉の奥から大声で泣き叫んだ。
左手に握り締めたままのハートのペンダントがするりと地面に落ちる。
私はそう叫んだ途端、身体の力が抜けて地面に倒れ込んだ。
「私じゃ…駄目なんだ…。憐…ごめんね?私…駄目だったみたい…。」
そこで私の意識は途切れた。
25
:
燐
:2012/01/15(日) 15:56:32 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
――――…
「ん…此処は…?」
私はうつ伏せ状態になっていた。
首だけを左右に動かし、辺りを見回す。
真っ黒な空間。
真っ黒な世界。
見覚えがある…。
此処は2ヶ月前…影となる存在が居た世界。
どうして?
崩れたというか…無くなったんじゃなかったの?
私はゆっくりと立ち上がり、上を見上げた。
天井も黒に塗られていて見えない。
「夜那。」
その声に私は振り返った。
「れ…ん…。」
私は思わず憐に近づき、抱き締めた。
「ずっと逢いたかった…。」
私は憐の服に涙を零しながら呟いた。
「僕もだよ…夜那。」
憐は優しい口調で言った。
「でも何でこの世界があるの?消滅したはずじゃ…。」
「それがね…夜那達のお陰で助かったんだよ。」
憐は笑顔で言った。
「えっ…。どう言う事?」
「ま…簡単に言えば、2ヶ月前のあの時…きっと夜那と誠の言葉がこの世界の運命を変えたんだよ。
それに…現実世界の僕は死んじゃったけど…影の僕は大丈夫だったみたいなんだ。
何故かは謎だけど…。」
「じゃ…此処に来れば憐に何時でも逢えるの!?」
「毎回じゃないよ。時々だけどね…。もうこの世界の役目も終わったから僕達は解放されたんだ。
これからは自由なんだよ。」
憐は嬉しそうに言った。
「自由か…。じゃこれからは人間として生きれるね。」
私は憐の身体から離れて言った。
「何でそうなるの?相変わらず夜那の発想は面白いね。」
憐はクスクスを笑いながら言った。
「笑わないでよ!!」
26
:
燐
:2012/01/15(日) 16:40:03 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
「ごめんね。そう言えば誠は?今日は居ないみたいだけど…。」
憐に言われ私は黙り込んだ。
「…ちょっと喧嘩したから居ないだけだよ…。大した喧嘩でもないから安心して?」
私はつい誤魔化した。
「じゃ何でそんな悲しそうな顔をするの?」
憐の真剣な顔をしながら言った。
「えっ…それは…その……。。」
私は俯きながら呟く。
「誠の事で何かあったの?良ければ相談乗るよ?」
憐は何時でも優しい。
「……。」
私はいつの間にか憐の唇に自分の唇を重ねていた。
「…ごめん。そんな事するつもりじゃなかったの…。」
私は憐からすかさず唇を離した。
「それは悲しみが積もったキスなんでしょ?きっと誠が夜那に何かしたんでしょ?
それぐらい僕にも分かる。」
憐は目を瞑りながら言った。
「…だって誠は自分の過去について何も話してくれない。過去に踏み込もうとすると脅すし…。
もうどうしたらいいか分からないの…。」
「僕が思うにはきっと夜那に知られて欲しくないんじゃないかな?
きっと誠は夜那に言ったら離れていくんじゃないかって思ってると思う。
誠はそんな人でしょ?それにその行為が夜那を守る為だとしたら?
考えられるのは一つ。全ては全部夜那の為。誠はきっと自分を犠牲にしてまで夜那を守りたいと
思うよ。」
27
:
燐
:2012/01/15(日) 17:12:31 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
憐は私の頭を優しく撫でながら言った。
「何か凄い推測だね…。でもそう考えれば辻褄が合う気がする。」
私は地面に座り込んで体育座りした。
「…そんな中途半端な気持ちじゃ、また誠に追い返されるよ。」
憐は笑いながら言った。
「…じゃどうすればいいの?」
私は訊く。
「それは自分で考えた方がいいと思うよ。自分で考えてそれを実行に移してみて。
後ね…半年前のあの時…僕変な物を見ちゃったんだよね…。」
「変な物って?」
28
:
燐
:2012/01/15(日) 19:49:15 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
私がそう訊くと憐は悲しい表情をしながら口を開いた。
「半年前のあの時…誠が夜那の所に駆けつけて、夜那を抱き締めた時に見ちゃったんだよね…。
誠の左手首に包帯がしてあったんだよね…。まさかとは思うけど…。」
憐は深刻そうな表情をした。
「思うけど?何…?」
「此処からは僕の憶測だけど…もし今までやって来た事が全て夜那の為だったとしたら
きっと誠は精神面で凄く悩んでいたと思うよ。夜那にもう二度とあんな運命に合わせない為に…。
誠は誠なりに夜那を守ろうとしてた。でも時々気が狂ってしまってあんな事になったと思うよ。」
「あんな事って…どう言う事…。」
私は唇を噛み締めながら呟いた。
「リストカットだよ…。僕も昔…そんな事しちゃったんだけどね…。
でも夜那に出会ってからもう止めたけどね…。現実世界の憐は…。」
憐は穏やかな口調で言った。
「リストカットって何?」
「手首をカッターか何かで切っちゃう事だよ。だから今も誠は自分の気を静める為にやってるんじゃないかな。
誠はきっと夜那に助けを求めている。誠を救えるのはきっと夜那。ただ君だけかもね。」
憐は上を見上げて言った。
29
:
燐
:2012/01/15(日) 21:13:07 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
救えるのは私だけ?
もしそうだとしたらあまり時間はないって事なの?
「憐…ありがとう。私ちゃんと誠と向き合って解決してくる。
いつも誠に助けてもらってるしその分恩返ししないとね。」
私は左手に持っていたハートのペンダントを首につけた。
「力になれたみたいで嬉しいよ。また悩んだら時々だけど此処に来てね。」
憐は私に手を振った。
「…うん。ねぇ…憐。」
「何?」
「今度此処に来る時は…誠も連れて来ていい?」
すると憐は笑顔で頷く。
「いいよ。大歓迎だし。」
「じゃ…そろそろ行くね。」
私は憐に背を向けて歩き出した。
「うん…。」
憐のその言葉はとても儚く聞こえた。
30
:
燐
:2012/01/15(日) 21:33:13 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
第2章 過去
――――…
「…此処は…。」
私はいつの間にかベッドに寝かされていた。
きっと誠のお母さんが気がついて私をベッドに寝かせてくれたんだ。
憐…。私頑張るね。
私は枕元に置いてあるハートのペンダントを右手で握り締め、ベッドから下りた。
私は首を動かして窓を見る。
辺りはもう真っ暗。
永遠の闇が続いていた。
私は窓から視線を離して、部屋の扉に駆け寄り、静かに扉を開いた。
扉を開くと同時に隣の部屋の扉も開いた。
「誠…。」
誠は私の存在を無視するかのように階段を下りて行った。
私は意を決して階段を下りて1階に下りた。
1階に下りるとリビングから誠のお母さんの声が聞こえてきた。
31
:
燐
:2012/01/15(日) 21:47:04 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
「誠。熱は大丈夫なの?」
誠のお母さんの心配そうな声が聞こえて来る。
「あぁ…これぐらい大丈夫だ。」
誠の声も聞こえて来る。
私は気づかれないように階段の段に腰をかけて息を殺した。
「それにしても…浮かない顔ね。夜那ちゃんと何かあったの?」
誠のお母さんは言った。
「大した事じゃねーから大丈夫だ。ただ…もう少しで夜那に感づかれる所だった。」
「…そう。やっぱりまだあの時の事を気にしてるの?もう気にしなくていいのよ?
あれからもう5年も立つのに…。まだ憎んでいるの?」
誠のお母さんの言葉が微かに震えていた。
「…憎んでるさ。許せないんだ…あの傷を見ると頭の中で映像が蘇って来るんだよ…。
それが怖くてな…。でもこんな事夜那には知らせられないしな。自分で解決するしか手段はないんだよ。
だからきっと…。」
その言葉を訊いた瞬間、私の足は無意識にリビングに向かっていた。
「夜那ちゃん…!!?」
誠のお母さんは思わず席を立ち上がった。
その声に誠も振り返る。
「…今の話聞いてたのか…。」
誠は冷静な口調で言った。
32
:
燐
:2012/01/15(日) 22:28:41 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
「…うん。盗み聞きみたいでごめんなさい…。」
私は深く頭を下げた。
「…いいよ。何時か気づかれるって思ってたしな。」
誠は頭を掻きながら答える。
私は頭を上げて、立ち去ろうと後ずさりしようとした。
「でも今なら夜那に全て話せる…。包み隠さずお前に話すよ。」
誠は私の腕を引いてリビングのソファに座らせる。
「母さんは席を外して。母さんにまで迷惑かけたくないから…。」
「…迷惑だなんて…全然迷惑じゃないわよ!!でも誠がそう言うなら席を外すわ。
でもね誠…。夜那ちゃんはきっと分かってくれる。誠と同じ人生を生きてきた人間だもの。
絶対気持ち伝わるわよ。」
誠のお母さんはそう言って出て行った。
「…俺さ…半年前、お前が初めて俺の家に来た時、里親の話しただろ?
たしかに俺の今の両親は里親だ。俺の実の両親は数年前に交通事故で死んだ。
でも…実の両親は俺の事を嫌っていた…。」
誠は突然私を強く抱き締めた。
私は黙って誠の話を静かに聞いていた。
「…俺、心臓病だったから幼い頃から両親に虐待されてたんだ。純も同じさ。
純は…少ししてから俺の家を出て行ったからそのまま助かったけどな…。
俺は一人取り残されてずっと親から仕打ちを受けてたんだ…。それが3年も続いたんだ…。
だから過去に大きな手術を2回受けたんだ。その傷が今も身体に残っててな…。
その傷を触るとその当時の映像が頭の中でフラッシュバックする。」
誠はそう言って私の身体から離れ、上半身のシャツを脱いだ。
「…っ…。」
私は誠の身体を見た瞬間、涙が溢れ出した。
誠の身体には手術の痕が2つ残っていた。
誠は私に傷を見せるとすぐさまにシャツを着た。
33
:
燐
:2012/01/15(日) 22:39:17 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
「…っ……。」
私は蹲って啜り泣いた。
「一応今日は此処まで。また明日な…。」
誠はそう言って席を立ち上がって立ち去ろうとした。
「待って!上に戻らないで…。戻ったらまた自分を傷つけるの?」
「何言って…。」
誠は左手首を触りながら言った。
「左手首…見せて。確認したい事があるの…。」
私は俯きながら呟く。
「…ごめんだけど無理…。」
「何で無理なの?何もなかったら普通に見せられるじゃない!!」
私は口を尖らせて言うと誠は黙り込んだ。
私はその隙に誠の服の袖を無理やり捲り上げた。
「やっぱり…。」
左手首には包帯がきっちりと巻かれていた。
34
:
燐
:2012/01/16(月) 13:34:38 HOST:zaqdadc2a18.zaq.ne.jp
「…っ…。」
誠は顔を逸らした。
私はゆっくりと手首に巻きついてる包帯を外した。
包帯を全部取ると、私の目に涙が滲んだ。
たしかに誠の左手首にはカッターで切られた痕があった。
傷口は塞がっている。
「…何でこんな事したの…。」
私は泣きながら言った。
「……。」
誠は顔を逸らしたまま答えない。
35
:
燐
:2012/01/16(月) 14:14:32 HOST:zaqdadc2a18.zaq.ne.jp
「俺だって…俺だってなァ…辛いの我慢して来たんだよ…。毎日毎日親に暴行されて
必死に耐えて来たんだよ…。何時か俺に飽きて止めてくれるかもってずっと思ってた…。
思っていたのに…なのに…俺の親は飽きる所か日に日に俺への暴行は悪化してきく一方だった。
お前の義理の母親はこれと同じケースだったかもしんねぇ…。俺だけ何時も何時も辛い思いしてきたのにな…。
数年前からずっと…ずっと…親や純を憎んできた…。許せないかった…。」
誠は泣きながら途切れ途切れに言った。
「…ずっと辛かったのは分かるよ…。でも…何時までも親や純さんを憎んでたら何も進まない!
何時までも憎んでたら…何も変わらない!心も自分自身も…何も変わらない!!」
私は誠の両肩を手で揺すりながら言った。
すると誠は服のポケットからカッターを取り出した。
36
:
燐
:2012/01/16(月) 14:36:55 HOST:zaqdadc2a18.zaq.ne.jp
「夜那に俺の何が分かるんだよ…。知ったような口聞いてんじゃねぇ…。」
誠は私を脅しながら右手に持っていたカッターで左手首を切った。
スッーと手首から赤い血が流れて地面を赤く染めていく。
誠はその血を見て薄く笑っていた。
「へへっ…。」
誠は手首から出ている赤い血をじっと見つめながら笑っている。
誠の左手の薬指に嵌めてある指輪まで銀色から薄い赤に染まっていく。
「そうやってまた自分を傷つけていくんだ…。過去から遠ざけようとする為に…。」
私はふと呟いた。
「お前に何が分かるんだ!!俺の気持ちなんて誰も分かってくれねぇ!!」
誠は私にカッターの刃を向けた。
「たしかに私は誠の気持ちは分からないよ!!だから何時まで立ってもそんな後ろ向き
なんじゃないの!!」
そう言うと誠は口を尖らせて言った。
「黙れ…。大体お前は何時も甘え過ぎなんだよ!!人の気持ちなんてろくに考えた事のないお前が
俺の気持ちなんて分かるかァ!!」
誠は地面にカッターを落とし、リビングを飛び出した。
37
:
燐
:2012/01/16(月) 16:03:18 HOST:zaqdadc2a18.zaq.ne.jp
今日の更新は此処までです。
何か展開早くて・・すみません。
これから2月の上旬まで小説の更新は遅くなる予定です。
コメされても返せないと思うので・・その辺はご了承ください。
38
:
燐
:2012/01/16(月) 18:25:49 HOST:zaqdadc2a18.zaq.ne.jp
甘え過ぎ…。
誠に言われた言葉は深く私の心に傷ついた。
私は地面に落ちた誠の赤い血を呆然と見つめていた。
「……。」
私は地面にしゃがみ込んで左手の人差し指で赤い血を指で触る。
「ごめんね…ごめんね…。」
私は何度も地面に呟きながら血を触り続けた。
ポタポタと私の涙は血だまりに落ちて血と融合された。
「夜那ちゃん…。誠と何かあったの?」
「いえ…何でもありません。」
私はつい誤魔化した。
「そう…。じゃ如何して誠は家を出て行ったのかしら…。」
えっ…。
家を出て行った…?
私はゆっくり地面から立ち上がって足を走らせた。
「ちょっと夜那ちゃんまで何処行くのよ…!!」
誠のお母さんは私の右手首を握った。
「離して下さい…。私が誠を傷つけたんです…。だから私が解決しなきゃ…。」
私は誠のお母さんの手を振り解き、リビングを出て玄関に向かった。
39
:
燐
:2012/01/16(月) 20:36:01 HOST:zaqdadc2a18.zaq.ne.jp
玄関に向かって白のスニーカーを履き、家を飛び出した。
家を飛び出すと外は雨が降っていた。
私は傘を差して外に足を踏み入れた。
家を出て、私は左右確認した。
何処まで行っても深い闇。
ただ此処は住宅街なので家の光が明かり変わりだった。
私はとりあえず病院方向に向かった。
あまり深く考えると迷子になってしまうかもしれないから直感で行く事にした。
病院方面に行くとある店が目に止まった。
そこは半年前胡蝶蘭を買った花屋さんだった。
半年前から変わってないお店。
40
:
燐
:2012/01/16(月) 21:26:44 HOST:zaqdadc2a18.zaq.ne.jp
その店の窓際越しに誠は居た。
「…誠。。」
私はしばらくその場で立ち尽くしていた。
遭遇したら気まずい空気に呑まれる…。
でも何時までも消極的じゃ…解決出来ない。
私は腹をくくって店の中に足を運んだ。
店の中に入ると店員さんが声をかけてきてくれた。
「いらっしゃいませ。」
店員さんに声をかけられて私は一瞬戸惑った。
誠は私に気づいてない。
私は一安心した。
「あら?貴方もしかして夜那ちゃん?」
そう言われ私は耳を疑った。
「私の事憶えてない?」
その人はニコニコ笑顔で言った。
「…もしかして南さん?お、お久しぶりです!!」
私は軽く頭を下げた。
41
:
燐
:2012/01/17(火) 13:34:22 HOST:zaqdadc2a18.zaq.ne.jp
「私の事憶えてるみたいで安心したわ。そう言えば此処カフェになったのよ。
花屋とカフェの両方だから客も増えるんじゃないかって思ってね。」
南さんは言った。
「そ、そうなんですか…。」
そう言って私は誠の方を一瞥した。
誠は窓から遠目越しに窓から風景を見ていた。
その表情は何処か悲しくて切なかった。
でも私は話しかけられない。
もし話しかけたらまた何か言われる…。
「とりあえずカウンターに座って何か飲む?」
南さんに言われて私は小さく頷いた。
私はゆっくりとカウンターの席に座った。
「何か悩み事?」
南さんは私の前にホットココアを差し出した。
「あっ…いえ…。」
私は俯きながら言った。
「まさかあの窓際に座ってるあの子の事?」
南さんはクスッと笑いながら小声で言った。
私は黙り込んだ。
「…2階に案内するわ。着いて来て。」
南さんはそう言って私を2階に案内する。
42
:
燐
:2012/01/17(火) 15:04:12 HOST:zaqdadc2a18.zaq.ne.jp
カウンターの横に2階へ続く階段があり、私はスニーカーを脱いで、階段を駆け上がった。
「この部屋に入ってて待っていて。」
南さんはそう言って出て行ってしまった。
私は南さんに案内された小さな部屋の端っこに蹲った。
しばらくして誰かが2階へ上がってくる足音が聞こえてきた。
その足音は私が居る部屋の前で止まった。
すると突然扉が静かに開いた。
私は蹲っている足の隙間から相手の様子を伺っていた。
相手の足元しか見る事は出来なかったが間違いなく誠の足だった。
誠は静かに私の頭を撫でる。
その行為に私の身体は震えていた。
「…夜那。」
誠のその声はとても弱々しく感じた。
「…何で今までそんな事言ってくれなかったの!?」
私は誠に問い詰める。
「…怖かったんだよ…。俺の過去を話したら夜那が何処かに行ってしまいそうで怖かった。」
誠は泣きながら呟いた。
43
:
燐
:2012/01/17(火) 15:51:54 HOST:zaqdadc2a18.zaq.ne.jp
「…最初から信じてなかったの…?私の事…。」
私がそう言っても誠は答えない。
「…私はずっと信じてた。誠が居れば何も要らないって思ってたのに…。
誠は初めから私を信じてなかったんだね…。」
私は口を尖らせながら言った。
「…俺ら少し距離置かね?」
誠は悲しそうな表情をしながら言った。
「…どっちでもいいよ。ならこのまま別れてもいいんだよ…。」
私はつい心にも無い事を言った。
「…ごめん…。こんな愛せ方しか出来なくて…。後…指輪は外しても構わねーから。じゃあな。」
誠はそう言って私を軽く抱き締めた。
「……。」
私は静かに啜り泣いていた。
44
:
燐
:2012/01/17(火) 17:03:36 HOST:zaqdadc2a18.zaq.ne.jp
「…俺はもう行くわ…。あまり長居しちゃ迷惑だしな…。」
誠は私の身体から離れて部屋を立ち去ろうとした。
「…待って!」
私は立ち上がって思わず誠の身体に抱きつく。
「後少しだけ傍に居て…。私の我儘かもしれないけど…。」
私は泣きながら誠の身体に縋り付いた。
「…分かったよ。朝まで一緒に居てやるから泣くな。」
誠はそう言って私の左手をそっと絡める。
「うっ…。」
「…怖い?」
誠の優しい問いかけに私は首を左右に振る。
「ううん。大丈夫…。」
私は泣きながら呟く。
「…本当にごめんな…。本当は俺だってお前と離れたくねーんだ。…でもお前をどうしても傷つけたくねー…。
俺の問題が解決するまで待っててくれないか?」
「うん…分かった。幾らでも待つから…。だから…。」
私がそう言った途端、私の唇がそっと重なった。
私はその時思った。
誠が私をどれだけ好きかってきっと言葉以上に表せない。
誠はそっと唇を離して、強く私を抱き締めた。
「…ずっと好きだから。それだけは忘れないでくれ…。」
誠は私の腰に手を回した。
「うん…。それまで我慢だね…。」
私は作り笑顔で笑った。
45
:
燐
:2012/01/17(火) 18:02:25 HOST:zaqdadc2a18.zaq.ne.jp
「…夜那は本当に強いな…。過去に囚われないで進んで行くんだもんな…。」
誠は俯きながら呟いた。
「これはそう見せてるだけだよ。人って弱い所は隠していつも強がっちゃう。
それは自分を守ろうとしているだけ。それだけじゃ何も変わってない。」
私は天井を見上げて言った。
「守る…か。俺は弱い人間だから何も変われねー…。だからあの頃のように戻ってしまうだろうな…。」
46
:
燐
:2012/01/18(水) 13:07:56 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
あの頃…。
それはきっと誠の幼い時の事だろう。
誠の為に何か出来る事はないだろうか。
でも誠には“待っていて”なんて言われたし…。
うぅ…。悩むよ…。
「夜那。」
いきなり誠に呼ばれ私は我に返る。
「は、はい!?」
私は驚きながら答える。
「俺さ…いつかお前を裏切るかもしんねー…。」
ふと出た誠の言葉。
「裏切る…。そっか…。」
私は誠の肩に顔を埋める。
「…驚かないんだな。」
誠は深い息を吐いて言った。
「…うん。人は必ずしも1回は裏切るもんだよ。裏切らない人間なんて居ない。
だから別に裏切っても構わないよ…。その内裏切った分だけ傷が増えていくだけだから。」
私は天井を見上げながら言った。
「…夜那も変わったな。」
誠は私の身体から離れてそっと右手で私の頭を撫でる。
「…変わってないよ。何も変わってない…。」
私は平然として答える。
その時。扉が勢いよく開いた。
「貴方達もラブラブね〜。今日はこの部屋貸すから泊まりなよ。
お風呂は部屋を出て突き当たりにあるから。じゃ。」
南さんはそう言って扉を閉めた。
「じゃ俺は風呂入って来るわ。」
誠はそう言うと携帯を地面に置いて部屋を立ち去った。
ふと誠の携帯が気になった。
誠の携帯を見たのは久しぶりだった。
最後に見たのが去年の夏頃だった。
あれ以来誠の携帯を見ていなかった。
私は少し戸惑いながら誠の携帯を手に取った。
47
:
名無しさん
:2012/01/18(水) 14:09:59 HOST:wb92proxy01.ezweb.ne.jp
また賢そうな小説期待してます
48
:
燐
:2012/01/18(水) 14:39:29 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
私は小さく深呼吸をして携帯を開く。
私は携帯の画面を見ると“新着Eメール”が1件入っていた。
私はそのメールを開くと、相手が男でほっとした。
Eメールの差出人は“亮介”と書かれていた。
メールの内容は“久しぶり。元気にしてるか?”だった。
と言うか亮介って誰だろう…。
誠の友達だろうか…。
でもメールの文章からして温厚で優しい人に見える。
「何人の携帯見てんの。」
扉の方を見ると誠が凝視越しに私を見ていた。
明らかに怒っている。
「…亮介って人からメール来てたよ。はい。」
私は立ち上がって誠に携帯を渡して、部屋を出た。
部屋を出た私は階段を下りて1階に向かった。
階段を下りてスニーカーを履いてると南さんに声を掛けられた。
「あら帰るんですか?」
「はい…。あの…誠、さんには先に帰りました。とでもお伝えください。」
私は軽く頭を下げ、傘を持って店を出た。
49
:
燐
:2012/01/18(水) 15:44:52 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
外に出ると雨は止んでいて地面には水溜りが所々にある。
今…何時ぐらいだろう…。
空をふと見上げると真っ暗な闇に幾つかの星屑。
プラネタリウムみたいで綺麗。
雨が降ったのに空は曇っていない。
不思議だった。
私はそう思って前を見て歩き出そうとした時だった。
「きゃっ…。」
誰かの身体に当たって私は床に尻餅をついた。
「あっ…ごめん。大丈夫?」
そう言ってその人は私に手を差し出す。
「…はい大丈夫です。」
私はその人の手を握り、地面から立ち上がった。
「これ落としたよ。はい。」
その人は私の手元にハートのペンダントを落とす。
「…ありがとうございます。では…。」
私は一目散にその場から立ち去った。
如何しても男の人は苦手…。
女の人も苦手…。
そう思うのは私が人間恐怖症だからだろうか。
私は走って家の前まで来た。
家のインターホンを鳴らすと、誠のお母さんが扉を開けて外に出て来てくれた。
「夜那ちゃんっ!!何処行ってたのよ…!!心配したのよ!?でも無事で良かったわ…。」
誠のお母さんが私を強く抱き締める。
「…誠探してたの…。でも居なくて…。」
私はつい嘯く事を言ってしまった。
「そう…。とりあえず中に入って…。3月でも夜は冷えるからね。」
誠のお母さんは私の身体に緋色の肩掛けを掛けてくれた。
「ありがとうございます…。」
私は小さくため息を吐いて家の中に入った。
50
:
燐
:2012/01/18(水) 15:46:53 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
何か・・変な展開且つ早い展開ですが・・・ご了承ください。
ここでもう一人人物が出てきます。
ま・・もう気づいていると思いますが・・・。
この後は結構ヤバイ展開ですかね・・・・。
少し涙アリ、笑いアリの展開にしたいと思うのでこれからも応援してください!!
51
:
燐
:2012/01/18(水) 17:25:37 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
家の中に入ると温かくて心地よい風が入って来た。
私はスニーカーを脱ぎ、リビングに足を運んだ。
身体が震えてる。
私はハートのペンダントを両手で握り締めた。
「夜那ちゃん。座って?」
誠のお母さんに誘導されて私はリビングのソファに横倒れになった。
傍にあった正方形の白のクッションを手に抱え込んだ。
私は握っていた両手をゆっくりと広げる。
2ヶ月前、誠から渡された憐の形見のハートのペンダント――…。
憐…。
私ね…もう誠と別れる事にしたんだ。
誠ね…少し距離を置かないかって言われちゃった…。
きっとそれが誠の優しさなんだよね。
そう分かっているのに素直に受け止められない私って…。
はぁ……。
「夜那ちゃん。」
誠のお母さんに言われて私はゆっくりとソファから起き上がる。
「…ごめんなさい。私…もう誠と別れて来ました…。」
私は泣きながらクッションに涙を落とす。
「…何で?」
誠のお母さんは冷静な口調で言った。
「…少し距離を置かないかって言われました…。でもその時の私は素っ気なく
もう別れてもいいよ…。なんて心にも無い事を言ってしまったんです…。
それで後で後悔してる。って変ですよね…。身勝手過ぎますよね。。」
私はクッションを強く抱えたまま言った。
52
:
燐
:2012/01/18(水) 17:53:10 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…距離を置くって言うのは夜那ちゃんを守ろうとしてると思うの。
誠から訊いたと思うけど…あの子の実の両親は誠に虐待をしていたの。
当時の誠にはそれが一番の苦痛じゃなかったわ…。」
「えっ?どう言う事ですか…?」
私は思わず聞き返した。
「あの子…実は小学校と中学校でクラスの人達からイジメを受けていたの。
心臓病が悪い事を餌にクラスメートから暴言、暴力をされていたの。
でも当時の担任はそれに対処してくれなかった…。だから誠はその人達を憎んでいるわ…。
今現在も…。」
誠のお母さんは泣きながら言った。
「…誠の実の両親は誠が13歳の時に交通事故で死んだの。当時の誠には親戚や身寄りもない。
だから私とお父さんが誠を引き取ったの。その時の純は音信不振になっていたから行方が分からなくなっていたわ。
でも…引き取ったのは良かったけど…私とお父さんは両方共働きで家を空ける事が多かったわ。
でもね…たまに誠の家に亮介って男の子が遊びに来てたわ。他校の友達だけど…2日に1回は遊んでたわね…。」
53
:
燐
:2012/01/18(水) 18:08:30 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「亮介…。」
私はふと誠の携帯が頭に浮かんだ。
これでやっとあの亮介って言う人の謎が解けた。
誠の友達か…。
そう思った直後、家の中にインターホンの音が鳴り響いた。
「あら。こんな時間に…。誰かしら?夜那ちゃんはちょっと待っていてね。」
誠のお母さんはソファから立ち上がり玄関に向かった。
「はーい。今向かいま〜す!」
誠のお母さんはそう言いながら玄関の扉を開ける。
「あら亮介君じゃない!!何年ぶりかしら?」
54
:
燐
:2012/01/18(水) 19:36:48 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「おばさん。お久しぶりです。」
その声を聞いて私は一瞬疑った。
何処かで聞いた事のある声…。
何処だっけ?
つい最近かな…。
「そう言えば亮介君。紹介したい子が居るの。」
誠のお母さんはそう言って後ろに手招きした。
私は立ち上がって玄関の方に足を進める。
何か妙な緊張が襲ってきて私は思わず俯いてしまった。
「紹介するわ。月隠夜那ちゃん。事情があって今私が預かってるの。」
誠のお母さんがは笑顔で私を紹介する。
「あれ?君はさっきの…。」
そう言われ私は思わず顔を上げた。
「あっ…さっきぶつかった人…。」
私がそう言うと亮介と言う人は目を輝かせた。
「夜那ちゃんって言うのか。俺の事は気軽に亮介って呼んでくれればいいからさ。」
亮介は手を差し出す。
「は、はい…。」
私は男の人があまり好きではなかった。
苦手意識もあった。
55
:
燐
:2012/01/18(水) 20:00:20 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
なのに…不思議と亮介は苦手じゃなかった。
どうして?
分からない問題だった。
「とりあえず亮介君。上がって。」
誠のお母さんは亮介を家の中に招き入れる。
「迷惑じゃないですか?」
「迷惑じゃないわよ。大歓迎よ!」
誠のお母さんはニコニコ笑顔で言った。
「じゃ上がらせてもらいます。」
亮介は靴を脱いで私と共にリビングに入った。
「後、夜那ちゃん。私はそろそろ寝てもいいかしら。もう11時だし…。」
「もう11時なんですか!?あっ…どうぞ。寝てください。」
私がそう言うと誠のお母さんは欠伸をして行ってしまった。
56
:
燐
:2012/01/18(水) 20:15:40 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「夜那ちゃん。こっち来て。」
振り返ると亮介がソファに座っていて私に手招きする。
「…うん。」
私はゆっくりと亮介の隣に座る。
「そう言えば夜那ちゃんって誠知ってんだろ?」
亮介の言葉に私は一瞬戸惑った。
「えっ…。ま、まぁ…知ってますけど…。」
「アイツ…結構秘密主義だよ?自分に関する事はあまり喋らないし…。
俺みたいに開放的じゃねーし。」
亮介は笑いながら言った。
「亮介は開放的なの?」
私は訊く。
「まぁね。友達にもよく言われる事だし…。」
亮介は頭を掻きながら言った。
「そうなんだ…。でもそんな人って悩みも少なそうでいいと思うよ。」
私は笑みを浮かべて言った。
57
:
燐
:2012/01/18(水) 21:23:27 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「夜那ちゃんって笑顔が似合うよね。」
亮介は笑顔で言う。
「誠と同じ事言うね。誠にも言われたよ?」
私も笑顔で言う。
「そうなのか?てか、夜那ちゃんって彼氏とか居る?」
亮介は笑いながら言った。
「…居ないよ。私みたいな人が彼氏なんて出来る訳ないよ。」
私はつい誤魔化した。
「俺さ…ガチで夜那ちゃんの事気に入ったんだけど。」
「えっ…。」
これって告白って奴なのかな?
よく分からない…。
「今の告白なの?」
私は恐る恐る訊く。
「うん。もちろんだよ。」
亮介はさらりと言った。
そういう人ってたしかサバサバしてるって言うんだよね?
私とは正反対の性格だよ…。
「突然こんな事言って悪かったな。忘れてくれ。」
亮介は私に背を向けた。
この人は本気なのだろうか…。
今、私が亮介を選べば誠を裏切った事になる。
でも亮介とは今回が初対面だし…。
うぅ……。
「亮介…。」
私はふと呟く。
「何?」
亮介は甘い声で私に囁く。
「もし…私と付き合ったら私…亮介を裏切っちゃうかもしれないよ?
それでもいいの?」
私は泣きながら言った。
「それでも構わないよ。俺はそんな夜那ちゃんを好きになっちゃったんだから。」
亮介はニコニコ笑顔で言った。
初対面なのに…どうしてこんなに優しいの?親切なの?
そう思うとまた涙が出てくる…。
58
:
燐
:2012/01/18(水) 21:34:49 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
ねぇ…憐。。
私はこの人に付いて行ってもいいのかな?
その人なら私の心に空いた穴を埋めてくれる気がする。
そんな気がするんだよ?
「泣いてる?」
亮介に言われて私は両手で涙が拭う。
「半分だけ…。でも何で亮介はそんなに優しいの?」
「…夜那だから優しいだけ。」
亮介はそう言って私を強く抱き寄せた。
59
:
燐
:2012/01/19(木) 11:20:10 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…意味分からないよ。。」
私は泣きながら呟く。
「…てかさ、さっきから気になってるんだけどその指輪何?」
亮介は私の左手を握る。
「…何でもないよ。こんなのもういらないから…。」
私は左手の薬指から指輪を抜き取って地面に投げ捨てた。
「ふーん。夜那ちゃんって何かに悩んでるだろ?顔にそう書いてある。」
亮介は笑いながら言う。
「えっ…。そんな事ないよ。。」
「じゃ何で顔逸らすの?辛いんだろ?」
亮介には私の事が全て分かっているかのようだった。
「…辛くなんかない…。私が悪いんだよ?誠があんな風になったのも全部私のせいなんだもん…。」
「……。」
私がそう言うと亮介は黙り込んだ。
「夜那ちゃんってさ…誠と付き合ってんの?」
亮介に指摘され私は躊躇った。
60
:
燐
:2012/01/19(木) 13:46:23 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…付き合ってたけど…別れたの…。少し距離を置かないか。なんて言われたから。」
私は自分自身の身体を抱えて蹲った。
「誠が?ふーん。そんな事言うんだ。アイツさ…俺と初めて会った時、全然口聞いてくれなかったんだぜ?
何かさ…帰ってくれ!って感じだったんだよな…。」
亮介は未だに笑いながら言った。
それって私と同じ…。
半年前…誠と初めて会った私もそうだった。
人と関わるのが怖くてずっと脅えていた。
誠と私は何処か接点が似ていてまるで対になる関係。
「でもアイツは半年前ぐらいから変わった。引越しして変わったんだ…。
それはきっと誠にとって大切な存在が出来たからだと思った。」
亮介は上を見上げながら呟く。
「そうだったんだ…。」
そう言うと亮介は私を優しく抱き締めた。
「ちょっと…。」
私は亮介の身体を引き離そうとしたが、女の力ではどうする事も出来なかった。
「…夜那ちゃんが今でも誠を好きでも構わない。俺と付き合ってくれない?」
亮介の言葉に私は黙り込んだ。
61
:
燐
:2012/01/19(木) 14:34:22 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…いいの?さっきも言ったけど私と付き合ったら何時か絶対裏切るよ?」
私は目線を逸らして言った。
「いいよ。覚悟は出来てるし。」
亮介は私の背中を擦りながら言った。
あぁ…この人は何処まで優しいんだろう…。
如何してこんなに優しくしてくれるの?
“甘え過ぎ”
頭に誠のあの言葉が過る。
もう甘えちゃ駄目なんだ…。
此処最近…ずっと誠に甘えてたからあんな事言われたんだ…。。
そう思うと涙が溢れてくる。
「Don't cry.」
亮介はそう呟くと私の唇を塞いだ。
亮介…。
その時瞬時に私はハートのペンダントを握った。
自分を見失わないように。
「あっ…ごめん…。」
亮介は私から静かに唇を離した。
「…どうして…。どうしてなの…!!」
私は亮介の身体にしがみ付いた。
亮介は黙って私の身体を包み込む。
亮介のキスは誠の物と変わらなくて思わず涙を流してしまった。
「亮介…。お願いがあるの。」
「何?」
亮介は優しく問い掛ける。
「誠の変わりになって欲しいの…。」
62
:
燐
:2012/01/19(木) 15:28:55 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
その言葉に亮介は驚いた顔を見せた。
「本気なの?夜那ちゃんは。」
亮介は訊く。
「…本気です。」
私は答える。
「ふーん。そんな童顔で言われても困るんだけどね。」
亮介は笑いながら言う。
「童顔って何?」
私は首を傾げて言った。
「子供のような顔をしてるって事。分かった?」
亮介は私の額にデコピンを一発した。
「痛いよ…。」
そう言った瞬間、玄関方面でガタンと言う音がした。
瞬時に私と亮介の身体は離れた。
「何で亮介が此処に居んだよ。」
誠は部屋の扉越しで頭を掻きながら言った。
「おっ!誠いい所に来たな。今日は此処に止まらせてもらうからな。」
亮介は誠に駆け寄り、ニコニコ笑顔で言った。
「不用意によく言うぜ。ま、いいけどな。」
誠はそう言うと私を一瞥せず2階に行ってしまった。
63
:
燐
:2012/01/19(木) 16:15:26 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
私の存在は誠の眼中には映っていない。
そう思った。
「アイツ…何であんな怒ってんだ?意味分からん。」
亮介は不機嫌な様子で階段を見つめていた。
怒ってた?
行かなきゃ…誠の所に。
でも足が竦んで進まれない。
「夜那ちゃん?」
亮介が心配そうに私に問い掛ける。
両手が震えていた。
私は誠に脅えているの?
今はきっと誠の所に行かない方がいい。
またあの時のように追い返されるだけだ。
「大丈夫か?手震えてるけど…。」
亮介が私の両手を優しく握り締めてくれた。
亮介の雰囲気は何処か誠に似ていた。
笑った顔も心配してくれる顔も誠に似ていた。
「亮介は誠に似てるね…。誠が二人居るみたいで面白い。」
私は泣き笑いながら言った。
64
:
燐
:2012/01/19(木) 18:05:04 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「それって褒めてんの?」
亮介には理解が出来なかったようだった。
「褒めてるとかそんなんじゃない。きっと亮介が居れば悲しくても笑える。
そう思っただけ。」
私は笑顔で言った。
いつの間にか涙は止まっていた。
「俺が居れば笑える…か。そんな事言われたの夜那ちゃんが初めてだ。
サンキューな。」
亮介はそう言って私の頭を撫でる。
その仕草が如何しても誠と被った。
「誠…。」
65
:
燐
:2012/01/19(木) 22:33:19 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
私は思わず亮介の身体に抱きつく。
改めて亮介に抱きつくと誠と同じ温度を感じた。
「夜那ちゃん?」
亮介は心配そうに抱きつく私の頭を撫でる。
誠じゃないって分かってる。
分かっているけど…似てるんだよ?こんなに。
誠の温度や仕草までもが似ているんだよ?
誠はもう以前の頃の誠じゃない。
狂ってるんだ…。何もかも…。
だから私の存在なんて無視した。
絆…。そんな物は私と誠の間にはない。
もう縁なんて切れたんだ…。
だから赤の他人になる。
なのに涙は無償に溢れてくる。
「大丈夫?さっきから泣いてばっかだけど…。」
亮介は私の顔を覗き込んだ。
もう誠の事は忘れなくちゃ…亮介に悪い。
「うん。大丈夫。あのね亮介…。」
私は静かに呟いた。
「ん?」
亮介は訊く。
「…誠の事はもう忘れたいの。忘れるにはどうすればいいかな?」
「そっか…。それで後悔しない?」
亮介の言ってる意味が分からない。
でも私は言ってしまったんだ。
「うん。後悔しないよ。もう決めたから。」
「分かった。」
亮介はそう言うと私の頬に手を添えてそっと私の唇を塞いだ。
66
:
燐
:2012/01/20(金) 12:00:11 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
――――…
「…な…夜那…。」
何処かで私を呼ぶ声がする。
“誰…?”
「う〜ん。。れ…ん?」
私はうっすらと目を覚ました。
「良かった。目を覚ましてくれて。」
憐は笑顔で私を抱き起こしてくれた。
「憐…。」
名前を呟いた瞬間、目に溜めていた涙が音を立てて溢れ出した。
「いやぁぁぁぁ!!!」
私は憐の身体がしがみ付いた。
ポタポタと大粒の涙を零しながら憐の身体に顔を埋める。
「大丈夫?」
憐は優しく問い掛ける。
「憐…。」
「あら夜那じゃない。久しぶりね。」
憐の後ろに誰かが居た。
姿を現したのは影の私だった。
「何勝手に出て来てるの?夜那が怖がってるよ。」
憐は言った。
「そうだったらごめんなさい。」
67
:
燐
:2012/01/20(金) 14:30:34 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
影の私は深く頭を下げた。
「滅相も無いよ。はは…。」
私は笑いながら言った。
「で、今日は陽の夜那に紹介したい人が居るの。きっとびっくりするわ。」
影の私はそう言うと奥の方から誰かがやって来るのが見えた。
「えっ…。」
その誰かはすぐに分かった。
「此処では初対面だな夜那。」
その誰かは誠だった。
現実世界とは全然変わらない誠の顔、容姿。
何もかもが現実世界の誠だった。
でも此処に居るのは影なんだ。
本物じゃない。
「…っ。」
私はゆっくりと立ち上がった。
唇が微かに震えていた。
「夜那。」
影の誠が私を優しく抱き締めた。
温かくないのは変わらなかった。
影と言う存在だから体温が無い事ぐらい分かっていた。
これが甘え過ぎとか…。
ずっと人に頼ってちゃ駄目なんだよね…。
誠は私にそう気づかせる為にあんな事言ったのかな?
私は静かに誠の身体から離れた。
68
:
燐
:2012/01/20(金) 16:03:19 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「私…行かなきゃ…。」
私は静かに後ずさりをした。
「陽の俺を止めに行くんだな。」
影の誠がふと呟いた。
「うん…。もし事件が解決したら誠と共に此処に来るよ。」
私は笑顔で言った。
「そうか…。じゃ気長に待ってるな。」
影の誠は私の頭を撫でてくれた。
「うん。」
「何だ。もう帰っちゃうの?」
影の私は何処か納得の行かないようだった。
「うん。ごめん…。」
「謝んないでよ。しょうがない事だし。」
影の私は笑いながら言った。
「ありがとう…。」
69
:
小説家の神児
:2012/01/20(金) 17:13:23 HOST:ntfkok250252.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
感想
書きたいものを書くだけじゃ、つまらない。
自慰小説であり、評価は低し。
読者への、意識足らず。
もっと、意識すべき。
趣味止まりなら、特に構わず。
70
:
燐
:2012/01/20(金) 17:18:29 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
69>>荒らしと見なします。
こっちは趣味で書いてるんですからほっといてください。
71
:
小説家の神児
:2012/01/20(金) 17:27:54 HOST:ntfkok250252.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
感想や評価は、大歓迎は、嘘なんだね。
過去の自分と今の自分は、違うもんね。
荒らしじゃないよ。
趣味ガンバんべ。
72
:
球磨川禊
:2012/01/20(金) 17:31:06 HOST:ntfkok250252.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
中二病って、病気があるらしい。
73
:
黒神めだか
:2012/01/20(金) 17:31:53 HOST:ntfkok250252.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
荒らしとみなされたから、荒らします。
法には触れないことだから、大丈夫。
74
:
黒神めだか
:2012/01/20(金) 17:32:26 HOST:ntfkok250252.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
将来大物になるよ、ある意味。
75
:
燐
:2012/01/20(金) 17:34:35 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
荒らさないでください。
76
:
僕
:2012/01/20(金) 17:35:22 HOST:ntfkok250252.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
昔、君に僕のスレ荒らされたから、仕返ししたんだよ。
君は、覚えてないだろうけど、これは、因果応報というんだ。
趣味でやってたのに、上から目線で感想禁止と書き込んだにもかかわらず、
君は、僕のスレに上から目線の感想を書き込んだ、反省してないようだから、やり返した。
77
:
僕空
:2012/01/20(金) 17:36:02 HOST:ntfkok250252.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
ごめんね、君も悪気なかったんだろうね。
応援してるよ。
78
:
燐
:2012/01/20(金) 17:36:03 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
そうだとしたらごめんなさい。
79
:
ルキフェル
:2012/01/20(金) 17:38:56 HOST:ntfkok250252.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
仲直りしよう。
僕は、君には、これから迷惑かけないから。
バイバイ。
僕の悪口は、言わないでね、どこのスレにも書き込まないでね。
バイバイ。
80
:
燐
:2012/01/20(金) 17:39:33 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
分かりました。
もし破った場合、この掲示板を去ります。
81
:
燐
:2012/01/20(金) 17:41:30 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
後・・どこのスレにも書き込まないと言う事は
人が書いた小説のコメントも駄目なんでしょうか。
82
:
計ちゃん
:2012/01/20(金) 17:42:07 HOST:ntfkok250252.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
小説の続き、どうぞ書きなんし。
83
:
玄野計
:2012/01/20(金) 17:44:36 HOST:ntfkok250252.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
悪口とか、誹謗中傷のこと。
少し前に、君に嫌な感想を書き込まれたから、君にも分かってほしかっただけ。
嫌な書き込みは、誰に対しても禁止ってことだよ。
ネットでの不快な感想はやめてほしいってだけだよ。
84
:
燐
:2012/01/20(金) 17:46:03 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
分かりました。
ご丁寧にありがとうございます。
85
:
燐
:2012/01/20(金) 18:22:40 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
――――…
「ありがとう…か。」
私はうっすらと目を開けた。
夢はそこで途切れていて、私は有耶無耶な記憶が辿っていく。
あの後…どうしたんだっけ?
あれ?思い出せない…。
86
:
燐
:2012/01/20(金) 18:59:13 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
何で?
理由が見つからない…。
それに私の手元にはいつの間にか小さな花束が置いてあった。
「何これ…。」
私は花束をじろじろ見ながら呟く。
誰が置いたんだろう…。
と言うよりこの花は何て名前なんだろう…。
花の見た目はアヤメと言う花に良く似ている。
でも何処か違う…。
花屋の南さんに聞けば何の話か分かるよね。
私はふと時計を見た。
「7時半か…。まだお店は開いてないよね。」
それでも私の足は玄関に向かっていた。
私は茶色のサンダルを履いて玄関の扉を開けた。
扉を開けると冷たい風が身体中に吹き抜ける。
朝方だからこんなに寒いのは当たり前。
でももう3月…。寒いけどもうすぐで春がやって来る。
私は花束を抱えて花屋さんに向かった。
87
:
燐
:2012/01/20(金) 20:11:01 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
第3章 憎愛
足が寒い…。
そりゃそうだ。
サンダルにパーカーで外に出て来たから寒いのは当たり前。
ズボンはショートパンツなので余計に寒い。
うぅ…。
今日に限って風はやたら強い。
私は花束が飛ばされないように両手でしっかりと抱え込んだ。
数歩歩いただけで身体が飛ばされそうだったが、進んだり、止まったりしながらやっとの思いで花屋に着いた。
窓越しに中の様子を伺うがやっぱり開いてない。
どうしよう…。
ここで一層待った方がいいのかな?
それとも引き返す?
そう迷っていると後ろから声を掛けられた。
「あら夜那さんじゃないですか。今日はどうしたんですか?
まだ開店前ですよ。」
その声に後ろを振り向くと南さんが紙袋を抱えて立っていた。
88
:
燐
:2012/01/20(金) 22:43:11 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「えっと…その…。」
私がモジモジしていると南さんは明るく呟いた。
「とりあえず中入って。朝は冷えるし。」
南さんはいきなりタメ口になる。
何かもう友達関係になっちゃってる…。
うぅ…年上なのに…。。
「夜那ちゃん。さぁさぁ入って。」
南さんは紙袋を地面に下ろして店の扉の鍵を解除して扉を開ける。
扉を開けた南さんは再び紙袋を抱えて、店内に入る。
私もそれに乗せられて店内に足を踏み込む。
店の中に入るとほんのり暖かい。
南さんはカウンターに抱えてた紙袋を置くと、店内の電気を付けた。
「あの…南さん。」
私は言った。
「何かしら。」
南さんは振り返る。
「あの…この花の名前を知りたくて此処に来たんですけど…。」
私はそう言って南さんの目の前に花束を差し出す。
「これね…。ジャーマンアイリスって言う花よ。花言葉は伝言よ。
あっ…そうだわ。少し待ってて。」
南さんはそう言うと店の奥に行ってしまった。
89
:
燐
:2012/01/21(土) 22:00:13 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
私は静かにカウンター席に座った。
ジャーマンアイリスの花言葉が伝言って事はどう言う意味だろう?
私にはさっぱり意味が分からなかった。
恐らくこの花束を私にくれたのは誠だろう。
でも何で?
私に伝えたい事でもあるのだろうか。
そんな事を考えていると南さんは何かを片手に戻って来た。
その何かを私の目の前に差し出す。
何かとは白い洋形封筒だった。
その封筒の真ん中には丁寧で小さな文字で“Dear夜那”と書かれていた。
私は封筒の封を丁寧に切って封筒の中身をそっと取り出す。
出てきたのは一枚の白い紙。
如何してかその白い紙に何となく重みを感じた。
私は紙を広げ、中の内容を静かに目で追って行った。
90
:
燐
:2012/01/21(土) 22:14:04 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
『夜那へ
いきなり手紙って言う形になってごめんな。びっくりしただろ。
でもどうしてもお前に伝えたい事があって、手紙と言う選択をした。
俺さ…昨日の夜那と亮介の光景を見て一瞬焦ったんだ。
その時亮介は密かに夜那に好意がある事ぐらいは見当がついていた。
でも今の俺にはどうする事も出来ないから…そのまま流したけどさ。
亮介は俺と似てて一途な奴だし、サバサバしてるし…俺にとっては最高のダチだ。
お前が亮介を選ぶなら俺は何も言わない。と言うかもう別れたんだし。気にする事ない。
あの頃は本当にお前が好きだった。でも付き合って行くうちに俺の気持ちに余裕が無くなって来て…。
一旦、俺はお前に距離を置かないか?と言う選択を選んだ。でも夜那には誤解を招くような感じになってしまってごめんな。
俺はいつの間にかこんな風に狂ってしまってさ…。本当に申し訳ないと思ってる。
俺の事はもう忘れてくれよな。 ただそれだけ言いたかっただけだから。
じゃあな。
神頼 誠。』
91
:
燐
:2012/01/21(土) 22:55:36 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
全部読み終えると私は手紙にポタポタと大粒の涙を零した。
気にする事ないって…自分が一番気にしてるじゃない…。
忘れる事なんて出来ないよ…。
嫌だよ…。
何で`簡単に忘れろ′なんて言えるの…?
それにあれが誠の本心なの?
普通に考えたら本当かもしれない。
でもそうじゃない気がする…。
私は紙を強く握り締めた。
「大丈夫?」
南さんが私にピンクのハンカチを差し出す。
私はそれを無言で受け取った。
「…南さん。」
「ん?何?」
南さんは私に紅茶の入ったカップを差し出しながら言った。
「…私ってこの世界に必要なんですかね。」
私は俯きながら呟いた。
「…何でそんな事言うの?」
南さんは優しい言葉で私に問い掛ける。
「だって…だって…私と居た人は皆不幸になっていくような気がするんです…。
私がこの世界に居た駄目なのかな?って…思ってしまって…。」
私は泣きながら言った。
「この世界に必要でも不必要でもそんなの関係ない。それに私が居たら皆不幸になるって事も
考えすぎよ。もしそう思うなら本当に今まで周りに居た人が不幸になったりした?
そう考えてみると実はそうでもない事もあるものよ。」
南さんはコーヒーを啜りながら言った。
南さんのその言葉は私の心に大きく響いた。
たしかに考えてみると…意外とそうでもないかもしれない。
単なる思い込みかもしれない。
「後ね…もう一つ預かっていたの。誠さんから。」
そう言うと南さんは私の前に赤いリボンで結ばれた小さな白い箱を置く。
92
:
燐
:2012/01/21(土) 23:01:23 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「開けていいんですか?」
私は訊くと南さんは頷いた。
私はゆっくりと赤いリボンを解いて箱を開けた。
「これ…。イヤリング?」
箱の中身は三日月型の可愛いイヤリングだった。
イヤリングの中心はステンドグラスのように少し色がついていた。
イヤリングとかつけるのは初めてだった。
今まであまりお洒落とかに興味はなかったが、何処かこのイヤリングに惹かれていた。
93
:
燐
:2012/01/22(日) 10:56:10 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「つけてあげよっか?」
南さんはニコニコ笑顔で言う。
「お願いします。」
私は南さんに三日月型のイヤリングを渡す。
「あら。これは穴開けなくても大丈夫なヤツね。」
南さんはイヤリングを持って私の隣まで来てくれた。
「イヤリングって穴開けるんですか?」
私は不思議そうに訊く。
「うん。普通はそうだけどね。」
南さんはそう言うと私の右耳と左耳にイヤリングをつけてくれた。
耳に冷たい温度が伝わる。
「よし出来た。」
南さんはそう言うと私の隣の席に腰を掛けた。
「ねぇ夜那ちゃん。少し聞きたい事があるんだけどいいかな?」
「はい。良いですけど…。」
私はキョトンとした顔で答える。
「夜那ちゃんって南亮介って子知ってる?」
その言葉を聞いた時、私は黙り込んでしまった。
亮介ってあの亮介…?
でも違うかもしれないし…。
「…ごめんなさい。知りません…。」
私はつい嘯く真似をした。
そう言った直後、店の扉が開き誰かが入って来た。
94
:
燐
:2012/01/22(日) 11:40:51 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「あら亮介じゃん。今日は何しに来たの?」
南さんはニコニコ笑顔で扉方面を見る。
「学校行くから荷物取りに来ただけだし…って夜那!?」
その声に私は振り返った。
「えっ…あっ…。」
私はつい戸惑ってしまった。
「あれ?二人とも知り合いなの?亮介の事聞いた時は知らないって言ったのに…。」
南さんは私を睨みながら言った。
「えっと…違う人なのかもって思ってしまって…。」
私はオドオドしながら答える。
「なるほど。そう言う事もあるしね。」
南さんは笑顔で言う。
この二人はやけに仲が良い。
以前から顔見知りのようだ。
この店の常連客と考えても可笑しくない。
95
:
燐
:2012/01/22(日) 11:59:14 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「てか、夜那ちゃんが姉ちゃんの客だったとはな。驚きだぜ!」
亮介は笑顔で私にグットサインを送る。
姉ちゃん?
どう言う事…?
「ちょっと亮介、夜那ちゃん困ってるじゃない。と言うかちゃんずけで呼んでるの?」
南さんはニヤニヤしながら言う。
「煩い。姉ちゃんは黙ってて。」
亮介は南さんと口論になる。
「あの…南さん。亮介とは知り合いなんですか?」
「知り合い?知り合いじゃないよ。あたしと亮介は実の姉弟なだけ。」
南さんは笑いながら言う。
「姉弟なんですか!?でも全然似てないですよ?」
私はつい失礼な事を言った。
「それ良く言われる。ま、いいんだけどね。」
南さんは言った。
96
:
燐
:2012/01/22(日) 12:22:47 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「姉ちゃん。今日は学校に連絡しておいて。」
亮介はだるそうに私の右隣の席に腰を掛ける。
「あら珍しいね。アンタが学校休むなんて。ま、いいわ。」
そう言うと南さんは奥に行ってしまった。
うぅ…。気まずい空気…。
私は紅茶のカップに手を掛けて紅茶を啜ろうとした。
「姉ちゃんてさ…あー見えて結構面倒見がいいんだ。だから子供ん時はアイツが母親変わりだったんだぜ?」
亮介は笑いながら言った。
「…母親変わりって…お母さん居ないの?」
「うん。俺と姉ちゃんは父子家庭なんだ。俺らが生まれた時にはもうすでに母親は居なくてさ。
ずっと父ちゃんに面倒見て貰って来た。だから姉ちゃんは父ちゃんと性格が被ってるんだ。
面倒見がいい所とかさ。」
そう話している亮介の顔は何処か寂しげだった。
97
:
燐
:2012/01/22(日) 13:17:20 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「いい家族なんだね。」
私は言う。
「まぁね。そういや夜那ちゃんの家族はどんな家族?」
亮介は笑顔で言う。
私は正直戸惑った。
本当の事を言えば亮介の期待を裏切るはめになっちゃうかもしれないし…。
「どんな家族って…何処にでもあるような普通の家族だよ。」
私はつい誤魔化した。
「…嘘吐きだな夜那ちゃんも。今誤魔化しただろ?」
亮介の図星に私は黙り込んだ。
「…お母さんは数年前に事故で無くなりました。お父さんは私を守ってそのまま犠牲になりました。」
私は涙声で言った。
「そうだったのか…。何か聞いてすまなかったな。」
亮介は気を悪くしたのか俯いた。
「…でも半年以上前…。正確には去年の6月ぐらいに…お父さんは私を守ってそのまま他界しちゃったけど…
私はお父さんが守ってくれたこの命を大事にしてこれからも前を向いて進んで行くんです。」
「そっか。いい父ちゃんなんだな。」
亮介は顔を上げて私の頭を優しく撫でてくれた。
98
:
燐
:2012/01/22(日) 13:41:41 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「うん。亮介のお父さんもそんな人だったりして。」
「いや…。面倒見がいいのを裏腹に実は適当だったり。
でも数年前に病死しちゃってさ…それっきり姉ちゃんがバイトとかで頑張ってお金貯めて
去年の4月にこの花屋をオープンして姉弟でかんばってる訳だ。姉ちゃん、昔から
“絶対二十歳になったら花屋を開くんだ”とか昔から言ってたし。」
亮介は笑いながら言う。
「そうなんだ…。って事は南さんは今二十歳かぁ〜。」
私は言うと横から亮介がすかさず指摘する。
「いや22歳だ。去年まで大学行ってたけど…花屋開くって決まってすっぽり辞めたんだよね。
それ以来此処でオーナーとして働いてる。俺はその接客係。毎日姉ちゃんに扱き使われててさ…。
疲れるぜ。」
亮介はため息を吐いて呟く。
99
:
燐
:2012/01/22(日) 14:27:49 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「でも姉弟愛でいいと思うよ。扱き使われるって…案外亮介ってMなんだね。」
私はクスッと笑って言った。
「Mって言うかドMだな。大体アイツは身勝手過ぎんだよ。頭ごなしに俺を奴隷扱いにしやがる。」
「誰が奴隷扱いだって?」
亮介を前を見た瞬間、頭上に拳が振ってきた。
「いてぇ…。本気で殴る事ねーじゃん…。」
亮介は両手で頭を押さえながら言った。
「本気で何が悪いの?それよりアンタ…夜那ちゃんと付き合ってるんだよね?」
南さんは再び私の左隣の席に座る。
「まぁな。それがどうかしたのかよ。」
「今のうちに別れた方がいいかもね。」
南さんは意地悪そうに言った。
「ちょっ…南さん…。」
私は予想外の言葉に躊躇ってしまった。
「知ってるよ。それぐらい…。夜那ちゃんが何時か俺を裏切る事ぐらい…。」
亮介は南さんに差し出されたオレンジジュースを飲みながら答える。
100
:
燐
:2012/01/22(日) 14:30:25 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
100行ったぜw
ひゃっはーw
101
:
燐
:2012/01/22(日) 15:13:09 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「その事なんだけど…やっぱ私と別れてくれないかな…。
誠の手紙見て分かったんだ。何時までも逃げてちゃ駄目だって…。
誠は…私の手で何とかしなくちゃって思っちゃって…。
だからごめん…!!」
私は席を立ち上がって亮介に向かって深く頭を下げた。
「いきなりかよ…。でもいいよ。じゃせめて友達って事で居させてよ。
誠の事で何かあったら俺や姉ちゃんが力になるからよ。遠慮せずに何でも言えよ。」
亮介は笑顔で言った。
「そうよ夜那ちゃん。あたし達友達でもあるんだし。」
南さんは笑顔で言う。
友達…。
その言葉は私の心を大きく動かした。
「亮介…南さん…ありがとうございます!!」
そう言った直後だった。
店に一本の電話が入って来た。
南さんは傍に置いてあった小型受話器を手にとって耳に当てた。
102
:
燐
:2012/01/22(日) 15:33:19 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「はい。fiore・giardinoの南です。はい。分かりました。少々お待ちください。」
南さんは受話器を耳から離して私に差し出した。
「夜那ちゃん。誠さんのお母様から。」
南さんはいつもの笑顔で言った。
私は受話器を耳にあて深呼吸してから一声を発した。
「もしもし。」
『あっ夜那ちゃん。朝から何処に行ってたの!?急に居なくなるから失踪かと思ったわ…。』
誠のお母さんは心配そうに言う。
「そうじゃないんです。詳しい事は帰ってから言うので。」
私は落ち着いた口調で言った。
『それより…誠が居なくなっちゃったのよ。』
えっ――…?
居なくなった?
その時私の手から誠から貰った手紙が地面に落ちた。
受話器を握り締め、ただ硬直していた。
地面に落ちた手紙は亮介が静かに拾い上げた。
103
:
燐
:2012/01/22(日) 15:53:14 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「何だこれ…。これって誠が書いたのかよ。つーか…この花ってアツモリソウじゃねーか?」
亮介は不思議ように紙をジロジロ見る。
『…と言う訳だから夜那ちゃんも今から誠を探してね。私も今から探してみるから。』
そこで会話は途切れた。
「おい夜那ちゃん!大丈夫か?」
亮介の声に私は我に返った。
「えっ…!?あっ…ごめん。聞いてなかった。。」
私は席を立ち上がって扉方面に向かった。
「夜那ちゃん…。きっと誠はもう限界なんだよ。だからアツモリソウなんて絵を描いたんだよ。」
亮介は冷たい口調で言った。
104
:
燐
:2012/01/22(日) 16:59:09 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「アツモリソウ…。花言葉は?」
私は訊く。
「…“君を忘れない”だよ。本当はこんな事言いたくないんだけど…。
きっと誠は今でも自分を責めている気がしてさ。もしかしたら夜那に幸せになって欲しくて
自分は死ぬ気なんじゃないかな…。」
えっ…。
死ぬ気?
誠が…?
私は唇を思いっきり噛み締めた。
「となれば早く探さなくちゃね。あたしも協力するね。今日はお店閉店にしておくから。」
南さんはそう言って私の紅茶のカップを下げて、奥の部屋に行ってしまった。
しばらくして南さんはお店用の服からラフな格好になった。
「鍵閉めるから二人とも外に出て。それと夜那ちゃん。これ履いて。」
南さんに渡されたのは黒のスニーカーだった。
「大丈夫。サイズは問題ないから。あたしのお古だけど…サンダルじゃ歩きにくいでしょ?
そう思って持って来たの。」
南さんは笑顔で言った。
105
:
燐
:2012/01/22(日) 17:14:51 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
南さんのその優しさに私は思わず泣いてしまった。
「何泣いてんだよ。夜那ちゃんって泣き虫なんだな。」
亮介は笑いながら言った。
「泣き虫…かもね。」
私はすぐに泣き止んで南さんから渡してくれた黒いスニーカーを履いた。
たしかにサイズはぴったり。
きつくもないしブカブカでもない。
ちょうどいいサイズだった。
「どう?」
「ちょうどピッタリです。ありがとうございます。」
106
:
燐
:2012/01/22(日) 20:17:13 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「さて、誠さんを探しに行きますか。」
南さんは陽気に言った。
「姉ちゃん…。本当に店休んでいいのかよ。最近なってまた店が繁盛して来たのにさ。」
「いいの。大切な友達の為に頑張らなくちゃならないしね。」
南さんは仁王立ちして言った。
「姉ちゃんは暢気でいいよな。俺とは大違いだな。」
亮介は呆れた表情をする。
「アンタは元気が有り余ってるだけ。さっさと行くのよ。」
南さんは亮介の背中を押して外に追い出した。
「南さん…ちょっとやり過ぎなんじゃないんですか?」
私は横から入る。
「いいの。亮介にとってはいい薬でもあるし。」
そう言うと南さんは指と首をポキポキと鳴らし始めた。
「…でも亮介が可哀想です。」
「そうだよ姉ちゃん。たまには弟の気持ちも分かってよ。」
亮介は私の後ろに隠れた。
「はいはい。さてと鍵も閉めたし、さっそく探しに行きますか。」
107
:
燐
:2012/01/22(日) 21:21:57 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「そうだな。こんな所で喧嘩してても埒が明かねー…。とりあえず俺は向こうの方面に当たってみる。」
亮介はそう言って行ってしまった。
「亮介もいい加減な奴よね。ま、あたしに似て面倒見いいし。」
南さんは嬉しそうに言う。
「いい加減じゃないです。私より頼りになる人で正義感もちゃんと持ってる人です。
あの顔じゃきっとモテますよ。」
私は冗談半分に言った。
「亮介が?ないない。だって告られた事ないって言ってたし。さ、話はこれぐらいにしてあたしはあっちの方を探してみるわ。」
南さんはそう言うとその場を立ち去ってしまった。
一人残された私はしばらくその場で佇んでいた。
私はパーカーのポケットに手を突っ込んで、ハートのペンダントを取り出した。
憐…。
この2ヶ月間ぐらい私の傍に居てくれてありがとう。
このペンダントがあったから辛い事も乗り越えられた。
でももう迷わないよ。
誠は私が助ける。
今までの全部を誠に恩返しする。
憐…この事が解決したらもう向こうに行って?
ずっと私の傍に居たら何かと辛いと思うし…。
私憐にだけは迷惑かけたくないから…。
私の我儘かもしれないけど…。
108
:
燐
:2012/01/23(月) 12:02:01 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
私…いつも誠に守られてたのかな…。
誠が傍に居てくれたから今まで生きられたんだ…。
きっと誠が居なかったら今の私は居ない。
今思えば今まで誠に何一つ借りなんていう物を返してない。
私も馬鹿だな…。
本当に馬鹿だよ…。
今まで生きてきて大切な存在に何一つお礼なんてしてない。
だから今回で全部…今まで分をちゃんと返す。
そう決めたんだ。
もしかしたら誠は…あそこに居るかもしれない。
一か八かと賭けに出てみるしかない。
いつの間にか私はその場所へと足が動いていた。
109
:
燐
:2012/01/23(月) 13:51:08 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
“あそこ”とは半年前誠が一時期入院した病院だった。
半年前のあの日…誠は私に指輪を渡してくれた。
あの時の誠の笑った顔…今でも忘れられない。。
私は病院の前に着くと、何の躊躇いもなく病院内に足を踏み込んだ。
病院内に入ると人盛りはなくてがらんどうだった。
ロビーの受付には誰も居なくて急に不安になった。
本当に大丈夫だろうか。
私は手に持っているハートのペンダントを首につけた。
ペンダントを首に身に付けた私は屋上を目指した。
階段を上って屋上に続く扉の前に着いた私は小さく深呼吸をした。
此処で怖気づいて逃げては駄目だ。
私は意を決して屋上の扉をゆっくりと開いた。
110
:
燐
:2012/01/23(月) 14:23:01 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
屋上の扉をゆっくりと開き、私は屋上に足を踏み込んだ。
屋上は冷たい風が吹き向けていた。
でも屋上には誰も居なかった。
「居ない…か。」
そう思った時、私の前方から青い蝶が青い燐粉を飛ばして私の目の前に来た。
「蝶さん…。」
蝶は私の前で一回転すると屋上の右側にあるこの病院の空調設備みたいな所で止まった。
私は蝶の所へ駆け寄ると誰かが蹲っていた。
「…誠?」
私はしゃがみ込んで誠の頭を撫でようとした。
「…何で此処に来たんだよ…。」
誠は威嚇するような声で言った。
111
:
燐
:2012/01/23(月) 15:33:52 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「誠を助ける為に来たの。誠を過去から救う為に。」
「うるせぇよ。お前なんかに俺の気持ちなんか分かるか。」
誠はそう言うと右手に握っていたカッターで左手首を切った。
スッーと赤い血が地面に滴り落ちる。
「止めて!」
私は誠の左手首を左手でそっと握った。
「お節介なんていらねぇから。もう帰れ。」
誠は私を睨みつけながら言った。
「帰らない!誠が立ち直ってくれるまで私は帰らないから!!」
私は強気に言った。
「…お前に分かる訳ねー…。俺がずっと耐えて来た苦しみなんて誰も分かってくれねぇ。」
誠は弱々しい声で呟く。
「たしかに分からないよ…。でも誠は私に言ったよね?救う事は出来なくても支える事は出来るって…。
だから今度は私が誠の盾になる。」
「分かったような口聞いてんじゃねぇ…。」
誠は私の左手を強引に振り解き、また左手首を切ろうとした。
「もう自分を傷つけるのは止めて…。」
私はカッターの刃を左手で握り締めた。
左手が微かに震えてる。
112
:
燐
:2012/01/23(月) 15:55:37 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
私の左手の指の間から血が流れ落ちる。
「…何でそこまでする必要がある。」
誠の声は怒りに満ちている。
「だって大切な存在の為に救いたいの。誠はずっと私を守ってきてくれた。
半年前のあの日から…私の人生は大きく変わった。誠が私の家の隣に引越して来てくれて
から全てが変わった。きっと誠が居なかったら永遠に死ぬまであんな事を繰り返してたかもしれない。
それに誠に出会えたから恋も出来たし、生きようと思えたんだ。今頃誠に会ってなかったら私は死んでた。
だから生きてて良かったって思ってるよ。辛い事や苦しい事があっても今まで2人で乗り越えて来たじゃない。
だからこの先も二人で頑張っていこうよ。」
私がそう言うと誠が握っていたカッターの力を緩めて地面に転がり落ちた。
113
:
燐
:2012/01/23(月) 19:15:24 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…でもお前は亮介を選んだ。亮介は俺よりお前を大切にしてくれるだろうな。」
誠はゆっくりと地面から立ち上がった。
「…選んでないよ。昨日はそう宣言されて渋々了承しちゃったけど…。
私には誠しか居ないし…。今日ちゃんと断ってきた。」
私が笑顔で言うと誠も薄笑いで呟く。
「断ってきたって…アイツがそう簡単に諦める訳ねーよ。俺に似て一途な奴だし。」
「…今笑ったね。」
私は誠の顔を覗きこみながら言った。
「……。」
誠は黙って手で顔を隠す。
「あれ?もしかして恥ずかしかった?」
私はクスクス笑いながら言う。
「見んな。」
誠はそう言い放つと私に背を向ける。
まだ怒ってるのかな?
私は心の中でそう思った。
「後…誠の手紙見たよ。誠は…死ぬ気なの?」
私は単刀直入に言った。
「…うん。って言ったらどうする?」
誠は上を見上げながら言った。
114
:
燐
:2012/01/23(月) 20:06:04 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「冗談は止めて。こっちは真剣なの!!」
「お前さ…変わったな。」
ぼそっと出た誠の言葉。
「変わったって何が?」
私は首を傾げる。
「惚けんな。自分が一番よく分かってるくせに。嘯く真似は止めろ。
それに俺が好きだった夜那はもう何処にも居ない。この2ヶ月間でお前は大分変わった。
性格も…全てが変わった。だから正式に別れてくれないか?」
誠の言葉に私は唇を噛み締めた。
本当は別れなくなんてない…。
でも誠がそれでいいなら私はそれで構わない。
「やっと見つけたぜ。お二人さん。」
その声に後ろを振り返ると亮介と南さんが立っていた。
「亮介…。」
私が呟くと亮介は私に近づき、私の左腕を強く引いた。
「ちょっと亮介。夜那ちゃんまた嫌がってるじゃない。」
南さんに注意され、亮介は手を離す。
115
:
燐
:2012/01/23(月) 20:40:34 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「わりぃ。てかよ…誠。お前また夜那ちゃんを泣かせるような真似しただろ!!
お前はどうしてそんな変になっちまったんだよ…。」
亮介の言葉に誠は急に笑い始めた。
「はは…お前も面白い事言うな。変じゃねーよ。寧ろ正常だぜ?」
「じゃその手首の傷は何だよ。」
亮介はすぐさま誠に指摘すると、誠は黙り込んだ。
「お前なぁ…いい加減にしとけ。過去の事もあるけどさ…何時までもそうやって引き摺って生きていくつもりか?」
「亮介に俺の何が分かんだよ。何も知らないくせに良く言うぜ。」
誠は鼻で笑って言った。
「たしかに俺はお前の何も知らねぇ。だけどよォお前だって今の今まで辛かっただろ?
一回さ…その辛かった分を俺に肩代わりさせてくれよ。そうすればお前の心の闇は少し晴れるかもしれねぇだろ?」
亮介は明るく言った。
「肩代わりだと?そんな事出来る訳でもねーのに何言ってんだよ。」
誠はそう言って再び地面に座り込んだ。
「ああ出来るさ!たぶんだけどな…。」
亮介は笑って誤魔化す。
116
:
燐
:2012/01/24(火) 15:11:10 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…お前の発想は相変わらず単純だな。」
誠は素っ気なく言った。
「単純で悪かったな。とりあえずさ…家に帰ろうぜ。朝方は寒いしさ。」
亮介は腕を擦りながら言う。
「…なぁ…亮介。」
誠はゆっくりと立ち上がった。
「ん?どした?」
亮介が訊く。
「…お前のお陰で少し頭が冷めた気がする。サンキューな。」
誠は亮介の肩に手を置く。
「夜那…。」
誠に呼ばれ私は振り向く。
「夜那にも迷惑かけたな。ごめんな…。」
誠はそう言って私を軽く抱擁した。
「ううん。誠が謝る事じゃないよ。」
私は言ったが、何か違和感があった。
妙な胸騒ぎがする。
何かがまだ終わってない。
そんな気がした。
117
:
燐
:2012/01/24(火) 18:30:16 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「さて一件落着したし。今からでも俺ん家に来いよ。」
亮介は私にグットポーズをした。
「一件落着じゃないでしょ!!今からでも帰って学校行ったらいいじゃない!!」
南さんは口を尖らせて言った。
「姉ちゃん。そんなに怒んなよ。そんなんだから姉ちゃんには何時まで経っても
彼氏が出来ないんだよ。」
亮介は呆れた表情で言った。
「アンタだって一回夜那ちゃんに振られてるくせに良く言うわね。」
南さんはクスクス笑いながら言った。
何かこの二人…漫才コンビみたい。
一緒に居るだけでこんなに笑えるんだから。
「亮介も止めとけ止めとけ。みっともねーよ。」
誠が笑いながら横から入り込む。
「みっともない訳ねーよ。姉ちゃんが悪いし…。」
「何でアンタはいつも人のせいにすんの!!まったく…懲りない弟だわ。」
南さんは亮介の頭に拳骨を入れる。
「いてぇ…。てか本当の事じゃんか。」
「煩い。アンタのその口引き破ってあげようか。」
南さんはそう言って亮介の口を左右に引き伸ばした。
118
:
燐
:2012/01/24(火) 23:18:23 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「姉しゃん…ちょっとおしょくっただけじゃん…。いたたたた。」
亮介は笑いながら抵抗する。
「今笑ったんじゃないの?姉を愚弄する気でしょ?」
南さんはさらに亮介の口を横に引っ張る。
「いだだだだぁぁぁ!!…破れる…さすがに破れるぞこれ…。」
亮介の声は涙声になっていた。
「南さん…もう止めたらどうでしょう。亮介が可哀想です…。」
「夜那ちゃんがそう言うなら止めるわ。」
南さんから解放された亮介は地面に尻餅をつく。
「ガチでいてーよ。もっとさ…弟には優しくしろよ。」
「何でそんな上から目線なの?まだ懲りないなら今度は腹に殴りこみよ。」
南さんは妙にワクワクしながら言った。
「もう良いですから…。」
私は止めに入る。
「はぁ…。夜那ちゃんが止めてくれなかったら今頃俺は姉ちゃんに殺されてたな。」
亮介は笑いながら言った。
「殺されてたって?なんなら今からでも瞬殺してあげるよ。」
南さんはそう言うと指をポキポキと鳴らし始めた。
「もう良いですってば…。」
「あっごめん。」
南さんは我に返った。
南さんってドS過ぎるよ…。
に引き変わって亮介は南さん相手にいじられキャラって言うか…。
「さっさと帰るぜ。こんな所に長居してたら日が暮れちまう。」
亮介は欠伸をしながら言う。
「日が暮れるってまだ朝方だぜ?」
誠が横から突っ込む。
「あ…そう言えばそうか。でもどっちでもいいじゃんか。ははは…。」
亮介は大笑いしながら歩き出した。
「アンタ何馬鹿笑いしてんの。笑われるよ?」
南さんは呆れた表情をしながら言った。
「笑われてもいいっすよ。俺はどうせ馬鹿ですから。」
「それ全然自慢になってないし。」
南さんは亮介の頭に拳骨を一発入れる。
「いてぇ…。何も拳骨する事ねーじゃんか。」
「いいの。アンタにとっては良い薬でしょ?」
南さんは笑いながら駆けて行く。
「馬鹿姉ちゃんは何時まで経っても成長しねーぞ!!」
亮介は大声で叫び、南さんの後を追いかけた。
119
:
燐
:2012/01/25(水) 16:12:25 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「あの二人って…面白いね。」
私は笑みを浮かべて言った。
「あの姉弟は昔からだ。亮介が居るだけで俺は過去の事を一瞬だけ忘れられた。
もし亮介が居なかったら俺はもうとっくに死んでた。もう生きてなかったかもしれない。」
「そっか…。じゃ亮介は誠の命の恩人なんだね。」
私は上の空で答える。
「そうだな。後さ…別れる件だけど…もう少し考えてみるわ。」
誠は笑顔で言った。
「えっ…。」
それってまだチャンスがあるって事?
誠とやり直すチャンスがあるって事?
もしそうだとしたらやり直したいよ…。
私達の絆を取り戻したい…。
散らばった私達の欠片を丁寧に拾い集めて欠片を繋ぎ合わせたらきっと私達の絆は戻る。
120
:
燐
:2012/01/25(水) 17:13:42 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
そう思っていた。
「何だよ…そんな固まっちまって。」
誠が私の顔を覗き込んだ。
「…何でもない。」
私はそう呟き、静かに歩き出した。
「夜那ちゃん〜!遅いよ。早く行くよ。」
亮介は屋上の扉からそっと顔を出して手招きする。
「…ほら誠も行くよ。」
私は誠の右腕を引っ張った。
「…夜那。」
誠は寂しげに言った。
「何?」
私は明るく言った。
「…アメリカに行く時は亮介も連れて行っていいか?」
誠は頬を赤く染めながら言った。
「…うん。大歓迎だよ。」
「だってさ亮介。良かったな。」
誠は手をズボンのポケットに入れながら亮介の方に首を動かせる。
「よっしゃ!サンキューな。夜那ちゃん。」
亮介は私に駆け寄り優しく私の身体を抱き締めた。
亮介は何処かご機嫌。
「痛いよ…。」
私が呟くと亮介は私の頭をポンポンと撫でて離れてくれた。
何か亮介って猫みたい。
そう思うのは気のせい?
121
:
燐
:2012/01/25(水) 17:46:46 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「で…誠はどうすんだよ…。夜那ちゃんの事。」
亮介は私の肩に手を回す。
「…少し考える事にした。決断が固まったら報告するからさ。」
誠は答える。
「ふーん。あんま長過ぎたら俺が夜那ちゃんを貰うからね。」
亮介はニコニコ笑顔で言った。
「何だよその勝手なルール…。意味分かんねー…。」
誠は不貞腐れた表情で言った。
「亮介…冗談は止めてよ…。」
「冗談じゃねぇよ。俺…夜那ちゃんに振られても本気だし。」
亮介は真剣な顔つきになる。
「…それって今でもなの?」
私は俯きながら言った。
「当たり前に決まってんじゃん。今でも好きだって事何が悪いんだ?」
「…っ。」
そう言われると私は黙り込んだ。
「誠に一応言っとくが…誠に夜那ちゃんは渡さない!!たとえ友達でも俺は容赦しねーから。」
亮介はそう言って私の身体をゆっくりと抱き寄せた。
「…それって宣戦布告のつもりか?」
誠は鼻で笑って言った。
122
:
燐
:2012/01/25(水) 18:02:09 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「せ、宣戦布告に決まってんだろ!!」
「じゃ何でそんなに焦ってる訳?」
誠は無愛想で言う。
「……。」
亮介は黙っている。
「…夜那を自分だけの物にしたいとか?」
誠のその言葉に亮介は唇を噛み締めた。
123
:
燐
:2012/01/25(水) 19:45:37 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…そうだよ。悪いかよ。」
亮介は私の肩からそっと手を離した。
私は亮介の言葉に言葉を失った。
えっ…?
どう言う意味?
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