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叫号〜Io ripeto un incubo〜

5霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2012/02/27(月) 19:45:23 HOST:i121-114-186-133.s04.a001.ap.plala.or.jp
 ふっと、湊の姿が空気に溶けた。心底面白そうな笑い声を残して、跡形もなく……。風雅が横目で刹の様子を伺えば、俯いて苦虫を噛み潰したような表情。……華奢とは言っても、刹は身長百八十五センチメートル……。生憎、風雅とは二十センチメートル程度の身長差がある。俯いてしまったら逆に表情は丸見だ。逆に言えば、上を向いてしまえば風雅から表情を伺うのはかなり困難になる。……ただ、あまりにも不自然な格好を取ることになりそうだが。
 ポンッと風雅が肩を叩くと、刹は少し驚いたようだった。何かを考えるかのように数秒間固まった後、薄く笑みを浮かべて首を傾げる。気に入らない、そう呟いて風雅はムニィーっと刹の頬を思いっきり引っ張る。慌てたように刹が風雅から逃れようと暴れるが、風雅も簡単には逃がす気はないようで、しつこくその頬を引っ張り続ける。

 「また、隠し事ですか? そんで不満、溜め込んでるんですか? 隠し事はするなとは言いませんが、不満についてはゲロっちゃった方が楽になると思いますよ?」

 奇声を上げてもがく刹に向けて風雅が言う。ムスッと頬を膨らませて執着に刹の頬を引っ張り続ける。

 「いだだだだだ!! こ、こんなことで能力(チカラ)を使わないでくだひゃあ!? と、いひゃう!? やめて、くすぐらないで!!」

 というか、手が届きましたね、そう刹が言おうとしたところで、風雅はより一層頬を膨らませた。刹の頬を引っ張るのをやめて、わき腹の辺りをくすぐり始める。……こうなってくるともう、じゃれあっているようにしか見えてこなくなるものだ。体育館を通って二棟へと移動する教師が、あいつ等は一体何をしているのだろうか? とでも言いた気な表情をしているが、風雅も刹も気にしない。いや、刹の場合には気にする余裕がない、というのが正しいのではあるが。

 「ぼ、僕にだって守秘義務があるんです。にゃ、なんでもかんでもつ、伝えることが出来るわけじゃないんですよ。こ、今回のは不満を言ってしまうと言っちゃいけない部分に触れるかもしれないんです!!」

 ようやく、という感じで笑いを堪えながら、刹が言う。その一気にまくし立てるような口調に、風雅は俯く。小さく謝罪の言葉を口にして、刹をくすぐるのをやめた。完全に乱れた呼吸を整えて、刹はため息一つ。そしてそっと、風雅の頭を撫でて微笑を浮べる。心配してくれて有難う、と言うかのように……。
 そんな二人の様子をぼんやりと眺める二つの影があった。一つは肩位までの銀髪をサイドテールにして、右目を隠すかのように包帯を巻いた女。左目の色は透き通った水色の瞳をしている。真っ白な長い上着とその下に纏った薄い水色のワンピースが風に揺らいでいる。その身に纏っている服の左袖だけが綺麗に切り落とされて、外気にさらされた腕には右目と同じように包帯。胸元のスカーフを止める紫色の飾りは怪しい光を宿している。
 もう一つは、肩に付くか、付かないか位の長さの濃紺の髪に、右が赤、左が青の瞳を持った男。胸よりも三、四センチメートル程度長い、赤いリボンでとめた黒いケープに、左の胸の三センチメートル下辺りから、大きくスリットが入っている白いシャツ。両袖にも大きく切込みが入っている。その両袖の一部、黒くなった部分と、ケープの裾には、キラキラと光が散りばめられていた。上はそんなに目立つ格好だというのに、下はいたって普通の黒いズボンである。

 「どうするのよ。今回の世界には干渉するのかしら?」

 銀髪の女が言うと、濃紺の髪の男はフッと笑った。黙って男を睨みつける女をよそに男は手を僅かに広げて高らかに宣言する。

 「ああ。今回の世界からは本格的に干渉させてもらうさ。鍵は揃うようだしな」

 そういう男の声は、僅かに怒りを孕んでいるようだった。幾度となく繰り返される悪夢を近くで見ていながら傍観を決め込んでいた男は、やっと立ち上がる。馬鹿げた物語を終わらせるために、傍観者を気取るのをやめる。……何だ、随分青臭い役をやることになりそうじゃないか、そう考えて男は笑った。
 男から視線を外した女はまた、刹と風雅の様子を眺める。まるでストーカーのようじゃないか、そう考えて肩をすくめた。風雅と刹のやり取り見ていると、不思議と落ち着くのだ。その光景を自分も一度は見たことがあるような気さえしてくる。

 「駄目ね。アンタみたいにはなれそうにないわ」
 「そうかい。そりゃ結構さ。……さて、始めようじゃないか。ここ、桜蘭学園での物語を」

 フッと男が言えば、女も小さく頷いた。駆け抜けていく風が優しく二人の頬を撫でていく。
 ……そんな二人のいる方向を、刹は鋭く睨みつける。風雅の頭を優しくなでながらも、威嚇するかのように、鋭く、鋭く……。


NEXT Story 第一章 捕らわれ少年と犠牲少女


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