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白銀月夜の狼
16
:
緋織
:2011/12/29(木) 17:04:38 HOST:121-84-18-13f1.hyg2.eonet.ne.jp
1−14
『行くな、何処へも。……お前だけは』
『ああ、いるとも。私たちは、2人でひとつなのだから』
『……私たちにとって、幸せとは何なのだろう』
『はたして幸せはあるのだろうか』
『―――……いつまでも……共に』
***
「ああ、もうここでいい、降ろしてくれ!」
森まではまだ少しあるが、カーティス自身の疼きが声を作っていた。
えっ、ここで? とグレアムが言うより早くカーティスは馬車から転がり出た。その弾みで、靴先を扉付近で思い切りぶつけてしまったが、痛みを知覚野にのぼらせる時間を与えている暇はない。
今日より澄みわたった空を、カーティスは生まれてから見たことが無い。いつもは寒くて凍えてしまいそうなのを防ぐために着こんだ服は暑くてしょうがないくらい。走りながら、身体中が汗を吹きだしているのが分かる。
数日前まで雪しかなかったくせに、あんなに積もっていたのに。快晴だからとはいえ、何でたった半日程度で溶けかけようとしてるんだ。
『私は厳寒の地でないければ生きられないのだ』
哀愁を漂わせながら、そう呟いた少女の顔が忘れられない。頭からこびり付いて離れない。
その姿を脳裏に思い浮かべると、不安で心配で。
雪の彫刻で創られたかの如き少女は、―――溶けていないだろうか、と。
「フェリシア! 君はどこにいるんだ!?」
カーティスの悲痛な叫びは、木々が空気を吸うかのように吸い取ってしまった。
***
銃身から飛び出た弾丸は、真っ赤な血を引きずり出した。
一瞬だった。
生まれ持った素質と、鍛えぬいた反射を持ってしても視界に捉えることは出来なかった。
何がどうなったのかは理解できなかった。
片手で片眼にそっと手を当てる。その手に染みついたものをもう片方の眼で見つめる。
そのとき初めて何が起こったのかが分かった。脳が、そして身体中が全てを理解した。しばらくの間沈黙していた痛みは、患部に集中する。
『フェリシアッ!』
甲高い悲鳴が辺りに響くが、そんなことにまで精神を割けるほど、この身体が頑丈でないことを思い知る。
なんだ、所詮やはり寿命ある生物だったのか。それでは生み出された意味が。
『おのれ、よくも―――! 思い知れ、下劣で下等な者よ!』
駄目だ、そんなことをしては。
薄れゆく意識の中で、感情に任せて暴れまわるもう一人の自分をみた。
そこにいたのは人々が魔界の住人と恐れ、蔑んできた獣の姿であった。
感情を制御する機能が備わっていない獣は、暴れ狂い己の全てを出し尽くすまで止まることはない。たとえ、同胞であったとしてもくい止めることは不可能だ。
誰であっても暴走を止められない。それ故に、獣と畏怖されるのだ。姿だけでなく、中身までも狂暴な血と細胞で埋め尽くされているのだと。
しかし、それではいけないのだ。
それでは、我らはこれからもずっと誰からも信用されない。
助かるために、生きるために、折れることは必要なのだ。怒りや憎しみといった感情を手放さなければならないのだ。
『……何ということを。やはりお前らには無理なことであったか。……咎人は消え去るほか道はない―――!』
やめてくれ。そいつを私からとらないでくれ。
私にはもう何もない。何も、誰かのぬくもりでさえも。
二人でずっとずっと共に寄り添い、生きると約束したのだ。だから……。
「私たちを離れさせないでくれ、孤独は嫌だ、独りにしないで……!」
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