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赤瞳の不良

18ライナー:2011/12/28(水) 15:46:58 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net

 結局、紅蓮は学校を休み(朝風呂の時に風邪を引いたから)、布団に潜りながら青髪の少女と部屋にいた。
「だいぶ遅れちまったが幾つか訊いて良いか?」
 少々鼻声になりながら、紅蓮は少女に言う。
「はい」
「んじゃ訊くけどよ、何で空から落ちてきたんだ? 最も、お前自身気を失ってたみてぇだから分かんねぇと思うけど……」
 紅蓮の鼻声が聞き取りづらかったのか、少女は暫く黙ってから口を開いた。
「えーと、恐らく落ちてきたからだと思います」
「どこら辺が理由になってんだ!!」
 改めて紅蓮は聞き直し、何分か経った今、やっとちゃんとした答えが出てきた。
「分かりません」
 つい、どこら辺がちゃんとしているのか訊きたくなるが、意味の分からない答えよりずっとまマシだ。にしても、ここまで溜めて来てまさかの「分からない」は、紅蓮にとって殺してやろうかと思う勢いだった。
 しかしながら、紅蓮は女という生物に簡単に手を挙げる程無能ではない。どんなに鈍感で馬鹿でも、不良(ヤクザ)と知らない相手にいきなり殴り掛かるのは、自分の正体を明かすのと同じだ。
「……ま、それは分からないとしてこれ以上の詮索はしねぇ。それじゃあ、髪の白い厚着した女は知ってるか?」
 紅蓮が本当に訊きたかったのは、コッチの方だった。
 おかしな術を使う相手を知りたい、同じ人類にそんな奴がいるなら早めに片付けなければ、それが紅蓮の考えだ。
 すると、少女は青い髪を波打たせるようにして頷いた。
「その人は、私を狙ってて、何故狙っているかというと、力を押さえるとか何とか……」
 少女の話を聞いて、紅蓮は身を乗り出して訊く。
「アイツに攻撃が効かなかったのだが、何でか分かるか?」
「硬化能力です。物質の繊維を固めて、どんな物でも堅くすることが出来るって言うのですね。それのお陰で、物理攻撃はほぼ防げます」
 今の少女の発言で、全ての整理が付いた。
 あの白髪防寒女が投げてきた葉が何故あれほどにも鋭かったのか、それは硬化していたからだ。紅蓮の銃撃がマントで防がれたことも、それに準ずる。
「なるほどな……」
 紅蓮は半ば納得した表情になる。しかし、その後微妙な沈黙が後に続いた。
「……硬化、能力!?」
「え、何か変ですか?」
 少女はまたも首を傾げて、疑問符を浮かべる。
「能力って……お前ら一体何なんだよ。空から降ってきたり、物固めたり……」
 紅蓮に言われて、少女は思い出したように「あ」と声を上げた。
「これ、言っちゃダメなんだった……」
 何処まで馬鹿なんだ、紅蓮はそう思う。
 言ってはいけないと念を押されていたようだが、それなりに念を押されていたのだとしたら言わないだろう。それとも、念の押し方が甘かったのだろうか。
 とにかく、紅蓮が今関わろうとしている事は、非常識であって、一番信じたくないファンタジーが絡んでいるのだ。
「……とりあえず、俺には言っちまったんだから全部言ってみろって」
 紅蓮は少女に言うが、少女は俯きながら何か呟いていた。そして、不意を突くように顔を上げる。
「これ知った人間は、殺さなきゃいけないんですけど、死んで貰って良いですか?」
 風邪を引いていた紅蓮は、一気に寒気が増していくのを感じた。
「無理って言ったらどうするよ……?」
 布団の中に収まった紅蓮の手は、服の懐に忍ばされる。そこには一丁の銃が入れられていた。

19ライナー:2012/01/01(日) 12:28:43 HOST:as01-ppp17.osaka.sannet.ne.jp

「じゃあいいです」
 紅蓮はその言葉に拍子抜けする。
 一体、どこまでが重要でどこまでが重要でないのか、紅蓮にしてみたら白昼夢(ファンタジー)が起こっている時点で油断はならないはず。
 でもしかし、相手に殺意はないようで、それを察して紅蓮は懐から手を出した。
「……で、まず根本的なところから訊くぞ? お前らは何者なんだ?」
 青髪の少女は黙る。
 言ってはいけない事なのだろうが、もう紅蓮にはばれている訳で、殺しもしないなら、喋ってもいいはずだ。
 そして、少女は口を開く。
「それじゃあ、貴方は何者って訊かれたらどうします?」
 最もな意見だった。
 確かに、自分の存在を当たり前と思っている時点でそれは難しい。紅蓮の場合なら普通に人間だ、とでも言った方が良いのだろか。
 紅蓮は考えて、質問の仕方を変える。
「お前らの……あれだ、硬化能力ってのは何なんだ? 一種の魔法みたいなモンなのか?」
「うーんと、魔法ではないですね。いや、ここで言うなら魔法でしょうか?」
 少女は、何やら紅蓮に伝わらない独り言を繰り返している。
「ま、そう思ってもらって結構です」
 これは完全に少女の方が自分で納得しているのではないだろうか、紅蓮はそう思う。
「……で、その魔法ってのはどこで手に入れたんだよ?」
 別に、紅蓮自身、魔法が欲しい訳ではなかったが、少女の住む世界の確認程度に訊いてみた。
「ヘヴンです」
 一言。少女はそう言った。
 紅蓮の知識が間違っていなければ、『天国』と言う意味になるだろう。
「何処の国の町だ?」
 何となく恐怖を感じ、紅蓮は諦め半分で訊いてみた。
 答は勿論―――
「地球には有りませんよ」
 だろうな、と、紅蓮は心中で返す。
 それにしても、紅蓮は意外に自分が冷静さを保っている事に驚いていた。恐らく、いきなり殺しに掛かられていたら、白髪防寒女のように驚く騒ぎの事ではなかっただろう。
「もう、だいぶ喋っちゃいましたけど、これから言うことも黙っていてくださいね?」
 事は真剣に運ばなければいけないのだろうが、少女の目は笑っていた。
 別に怖みが混じっているようなものでは無いのだが、多分、いや、絶対にこの場に適切ではない表情だ。
 紅蓮は幾多の荒い仕事をこなしてきたが、ここまで肝が据わっている(いや、単に無神経なだけな)少女は見たことが無い。
 そして、両者は結局、自分の事は自分で解決したような気になっていた。


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