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☆男装少女 6人目のメンバー☆
204
:
いちご
:2012/07/20(金) 21:21:56 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
お邪魔します、と告げて中に入る。
「お兄ちゃんお帰りー」
「ただいま」
妹の彩乃の声が聞こえて、思わず肩をビクつかせた。
「あれ?お客さん?」
彩乃は足音がもう一つ聞こえる事に気づき、
リビングから顔を覗かせた。
「っえ!?な、なんで森山陽がっ...」
「新曲の練習。彩乃、邪魔しないでよ」
「う、うん」
ほら、さっさと行くよ。と言い、楓はことりを案内する。
彩乃の前を通り過ぎる時に控えめに頭を下げておいた。
205
:
いちご
:2012/07/21(土) 12:07:31 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
とある部屋の前で立ち止る。
楓はそこに入る。ことりも続いて入り、中を見て目を見開いた。
「うわあ...」
「ここ、ダンスレッスン用の部屋」
目の前にとても大きな鏡があり、
レッスン場並みの広さのそこに驚きを隠せない。
楓は鞄からレッスン用のCDを取り出すと、
近くにある大きな機材にセットし始めた。
「陽君、なんで急にダンス下手になったの?」
ズバリとそう聞かれて、戸惑う。
自分は陽ではない、そう言ってしまえば楽なのにそれはできない。
なんて言おうか悩んでいれば、楓は大きくため息をついた。
「ま、どうでもいいけど。僕と同じパートになったからには
ちゃんと完璧にしてよね」
「...うん」
ピ、と再生ボタンを押すと音楽が流れ始めた。
206
:
いちご
:2012/07/21(土) 12:17:05 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
ことりは楓の隣に立ち、始まるのを待つ。
足元がふらふらするが、休んでいる暇はない。
眠気と怠さと疲労が一気にことりに襲い掛かる。
「っ、」
唇を噛みしめて、なんとか堪えた。
「笑顔」
隣の楓に言われて、慌てて笑顔を張り付けた。
無理やり張り付けたぎこちないそれに、楓は無言でことりを見る。
207
:
いちご
:2012/07/21(土) 12:29:44 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「や、る、気、あ、ん、の?」
むぎゅう、とことりの両頬を引っ張る。
「いひゃい.…」
「いい加減にしてよね。
足手まとい、役立たず。時間は限られてんだよ、
その中で完璧にしなきゃいけないのに」
楓は本気なんだ。自分の仕事に誇りを持っている。
だから、嫌いな自分とでも文句言わずに練習している。
ことりは、頬の痛みに涙目になりながらも、もう一度決意を決めた。
(完璧に、ダンスが踊れるようにしよう)
彼女の目つきを見て、楓は満足したのか解放する。
208
:
いちご
:2012/07/21(土) 12:33:27 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―――陽君は、僕の憧れなんだから」
「え?」
ぽつりとつぶやかれた言葉は、
ことりに届くことはなかった。
209
:
いちご
:2012/07/27(金) 19:20:13 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
それから2時間、心を入れ替えたからか、
ことりは急激に成長していた。
なんとか楓のダンスについていけるようにまでなる。
曲が終わった瞬間、ことりはその場に座り込んだ。
「はぁー、はぁー、」
「陽君、このくらいで疲れてんの?」
いつもなら、疲れていても休憩時間も
一人で練習しているくらい努力しているのに。
「――…陽君?」
彼女の頬が赤く火照っていることに気づく。
210
:
いちご
:2012/07/27(金) 19:28:04 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「よ、陽くん…」
何処か焦点があわない瞳をしていた。
楓は彼女の視線に合わせてしゃがみこみ、額に手を触れた。
「――ッ熱」
ことりは熱を出していた。
昨日からずっと無理をしていたせいだろう。
「…家まで送る」
「立てる?」と楓はことりの腕を掴んだ。
彼女の腕の細さに驚き、目を見開く。
こんなに陽は筋肉が無かっただろうか。
「…ッ!?」
ことりは限界だったのか、ガクッ と、その場に倒れ込んだ。
211
:
いちご
:2012/07/28(土) 13:32:38 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
苦しそうな呼吸を繰り返している。
これにはさすがにヤバイと感じた楓が、慌てる。
とりあえず、ここから一番近いリビングのソファーに寝かそうと思い
ことりの体を横抱きにして持ち上げた。
男を横抱きにするなんて、と内心思ったが文句は言ってられない。
持ち上げた瞬間、想像していたよりもずっと軽い彼の体に
楓は目を見開いた。
212
:
いちご
:2012/07/29(日) 11:56:52 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「彩乃!」
「どうしたのお兄ちゃんって、陽君!?」
リビングに入ってきた、楓に抱えられていることりを見て
彩乃は声をあげた。
「熱があるみたいなんだけど」
楓はソファーにことりをそっと置きながら言った。
彩乃は陽の額に手を当てて、驚く。
213
:
いちご
:2012/08/03(金) 12:41:26 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「…お兄ちゃんは陽君の洋服着替えさせてあげてて!
汗でべたべただから余計に風邪が悪化しちゃう!」
「う、うん」
「あたしは冷えピタと風邪薬とってくるから後はよろしくね!」
テキパキと動いている彩乃を見て、
楓はさすがだと思った。
リビングを出て行った彩乃を確認してから、
近くにたたんで置いてあったスウェットの上下を手に取る。
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