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☆男装少女 6人目のメンバー☆

198いちご:2012/07/18(水) 17:42:06 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「森山。」


七瀬が低い声音で彼の名を呼んだ。


「今日は帰りなさい。」


「え、」


ことりは驚いて顔をあげた。

どうして、帰れと言われなければいけないんだろう。

自分は何か間違ったことをしただろうか?


「調子が悪いのに、無理にレッスンしても意味ないでしょ。

今日の森山はダンスのキレが悪すぎよ。

今日は帰って。調子が戻ったら自主練しなさい。」


「…ハイ。」


ことりは小さく返事をした。

どうやら、いつものようなダンスではない為に調子が

悪いのだと勘違いされてしまったらしい。

メンバーも、陽の調子が悪いということに気づいていたが、

あえて何も言わなかった。

ふらふらとした足取りで自分の荷物をまとめ、肩に担ぐ。

199いちご:2012/07/18(水) 17:54:15 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp




「...奥村ー。」


そんなことりを見かねてか、

七瀬は練習している楓に声をかけた。


「はい。」


「送っていってやりなさい。」


「え…」


なんで僕が、と声を濁らせたが、

七瀬はもう一度力強く同じことを言った。


「奥村も、今日はそのまま帰りなさい。

同じパートの森山がいないなら練習にならないでしょ。」


たしかに、七瀬が言うとおりだ。

楓は、ハァ、とため息をついてから、荷物をまとめてことりの後を追う。


「行くよ。」


「ご、ゴメン…。」


「別に。…お疲れ様でしたー。」


「お、お疲れ様でした!」


楓につられて、ことりも挨拶をする。

メンバーが茫然とこちらを見ている中、二人は練習場を後にした。

200いちご:2012/07/18(水) 18:01:08 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
゜.:。£+゜仲間゜£+゜.:。



「陽君。」


楓の視線が突き刺さる。ことりは焦った。

自分のせいで、たったの二日間しかない新曲のレッスンを最後まで

受けることができなかったのだ。

ことりは戸惑った表情で楓を見る。


「...本当に体調悪いの?」


「ぜ、全然平気!大丈夫!」


笑顔を張り付けて彼を見れば、「なら、いいけど」 と言う。

201いちご:2012/07/18(水) 18:03:59 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


ことりの家の方向とは、別の方へ向けて歩き出す彼をみて

不思議に思った。どこかに行くのだろうか。


「ねえ、楓」


「何。」


「どこいくの?」


「僕の家に決まってるだろ。」


「え?」


「練習」


体調悪くないなら、僕の家で練習する。と言う。

本来ならダンスレッスン後に練習する予定だったのだが、

半強制的に帰宅命令が出されてしまった為にしょうがない。

202いちご:2012/07/20(金) 21:18:04 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「楓の家に行ってもいいの?」


「仕方ないでしょ。場所がないんだから」


ことりは息を飲んだ。

男の子の家には行ったことがない。

いくらダンスレッスンのためと言えど、

緊張しないわけがなかった。

203いちご:2012/07/20(金) 21:20:16 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp



―――

―――――…



「ここだよ」


「でっか...。」


目の前にあるのは、大きな屋敷だった。

自分の家の3倍はありそうな楓の家に、言葉が出ない。


「何突っ立ってるの?」


「あ、今いく」


声をかけられて、慌てて彼の後につづいた。

204いちご:2012/07/20(金) 21:21:56 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp



お邪魔します、と告げて中に入る。


「お兄ちゃんお帰りー」


「ただいま」


妹の彩乃の声が聞こえて、思わず肩をビクつかせた。


「あれ?お客さん?」


彩乃は足音がもう一つ聞こえる事に気づき、

リビングから顔を覗かせた。


「っえ!?な、なんで森山陽がっ...」


「新曲の練習。彩乃、邪魔しないでよ」


「う、うん」


ほら、さっさと行くよ。と言い、楓はことりを案内する。

彩乃の前を通り過ぎる時に控えめに頭を下げておいた。

205いちご:2012/07/21(土) 12:07:31 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp



とある部屋の前で立ち止る。

楓はそこに入る。ことりも続いて入り、中を見て目を見開いた。


「うわあ...」


「ここ、ダンスレッスン用の部屋」


目の前にとても大きな鏡があり、

レッスン場並みの広さのそこに驚きを隠せない。

楓は鞄からレッスン用のCDを取り出すと、

近くにある大きな機材にセットし始めた。


「陽君、なんで急にダンス下手になったの?」


ズバリとそう聞かれて、戸惑う。

自分は陽ではない、そう言ってしまえば楽なのにそれはできない。

なんて言おうか悩んでいれば、楓は大きくため息をついた。


「ま、どうでもいいけど。僕と同じパートになったからには

ちゃんと完璧にしてよね」


「...うん」


ピ、と再生ボタンを押すと音楽が流れ始めた。

206いちご:2012/07/21(土) 12:17:05 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


ことりは楓の隣に立ち、始まるのを待つ。

足元がふらふらするが、休んでいる暇はない。

眠気と怠さと疲労が一気にことりに襲い掛かる。


「っ、」


唇を噛みしめて、なんとか堪えた。


「笑顔」


隣の楓に言われて、慌てて笑顔を張り付けた。

無理やり張り付けたぎこちないそれに、楓は無言でことりを見る。

207いちご:2012/07/21(土) 12:29:44 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「や、る、気、あ、ん、の?」


むぎゅう、とことりの両頬を引っ張る。


「いひゃい.…」


「いい加減にしてよね。

足手まとい、役立たず。時間は限られてんだよ、

その中で完璧にしなきゃいけないのに」


楓は本気なんだ。自分の仕事に誇りを持っている。

だから、嫌いな自分とでも文句言わずに練習している。

ことりは、頬の痛みに涙目になりながらも、もう一度決意を決めた。


(完璧に、ダンスが踊れるようにしよう)


彼女の目つきを見て、楓は満足したのか解放する。

208いちご:2012/07/21(土) 12:33:27 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp






「―――陽君は、僕の憧れなんだから」


「え?」



ぽつりとつぶやかれた言葉は、

ことりに届くことはなかった。

209いちご:2012/07/27(金) 19:20:13 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp



それから2時間、心を入れ替えたからか、

ことりは急激に成長していた。

なんとか楓のダンスについていけるようにまでなる。

曲が終わった瞬間、ことりはその場に座り込んだ。



「はぁー、はぁー、」


「陽君、このくらいで疲れてんの?」



いつもなら、疲れていても休憩時間も

一人で練習しているくらい努力しているのに。


「――…陽君?」



彼女の頬が赤く火照っていることに気づく。

210いちご:2012/07/27(金) 19:28:04 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp



「よ、陽くん…」


何処か焦点があわない瞳をしていた。

楓は彼女の視線に合わせてしゃがみこみ、額に手を触れた。


「――ッ熱」


ことりは熱を出していた。

昨日からずっと無理をしていたせいだろう。


「…家まで送る」


「立てる?」と楓はことりの腕を掴んだ。

彼女の腕の細さに驚き、目を見開く。

こんなに陽は筋肉が無かっただろうか。


「…ッ!?」


ことりは限界だったのか、ガクッ と、その場に倒れ込んだ。

211いちご:2012/07/28(土) 13:32:38 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


苦しそうな呼吸を繰り返している。


これにはさすがにヤバイと感じた楓が、慌てる。


とりあえず、ここから一番近いリビングのソファーに寝かそうと思い


ことりの体を横抱きにして持ち上げた。


男を横抱きにするなんて、と内心思ったが文句は言ってられない。


持ち上げた瞬間、想像していたよりもずっと軽い彼の体に


楓は目を見開いた。

212いちご:2012/07/29(日) 11:56:52 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「彩乃!」


「どうしたのお兄ちゃんって、陽君!?」


リビングに入ってきた、楓に抱えられていることりを見て

彩乃は声をあげた。


「熱があるみたいなんだけど」


楓はソファーにことりをそっと置きながら言った。

彩乃は陽の額に手を当てて、驚く。

213いちご:2012/08/03(金) 12:41:26 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「…お兄ちゃんは陽君の洋服着替えさせてあげてて!

汗でべたべただから余計に風邪が悪化しちゃう!」


「う、うん」


「あたしは冷えピタと風邪薬とってくるから後はよろしくね!」


テキパキと動いている彩乃を見て、

楓はさすがだと思った。

リビングを出て行った彩乃を確認してから、

近くにたたんで置いてあったスウェットの上下を手に取る。


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