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☆男装少女 6人目のメンバー☆
1
:
いちご
:2011/10/25(火) 18:47:37 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
どうも、いちごです!
これで2作目になります、と言っても
まだ1作目は終わっていませんが(^_^;)
本当は、受験生なのでこんなことをしている場合じゃありません・・
なかなか書けないと思いますが、優しい目で見てください。
2
:
いちご
:2011/10/25(火) 19:48:01 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
〜主人公〜
森山 ひよこ (もりやま ひよこ)17歳
顔は可愛いが、いじめられている。
双子の兄、陽のことが嫌い。
〜スカイのメンバー〜
森山 陽 (もりやま よう)17歳
陽にとって、ひよこは自慢の妹。
アイドルグループ「スカイ」のメンバー。
佐野 郁美 (さの いくみ)17歳
「スカイ」のメンバー。陽と仲がいい。
雪平 南 (ゆきひら みなみ)18歳
「スカイ」のメンバー。陽にたまに冷たく接する。
奥村 楓 (おくむら かえで)18歳
「スカイ」のメンバー。陽が嫌いと言っているが
本当は陽にあこがれている。
橋本 柚希 (はしもと ゆずき)19歳
「スカイ」のメンバー。陽とあまり喋らないが、仲は悪くない。
3
:
いちご
:2011/10/25(火) 20:05:28 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
+゜。プロローグ。゜+
「ことりちゃん、陽さんの代わりに男装して
スカイに入ってくれないかな?」
ーーすべて、この一言から始まった。
「・・・どうしよう、俺、陽のこと・・・好きかも」
「陽を見てると、可笑しくなるっ・・・」
「俺はお前に陽を渡す気はない」
男装少女に恋をするメンバーたちと
突然何も知らない世界に一人、放り込まれた、男装少女の物語。
4
:
いちご
:2011/11/03(木) 08:51:09 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
。゜+兄の代わり+゜。
私には、双子の兄がいる。森山陽(もりやま よう)。
この世で一番嫌いな人だ。
見ていたバラエティー番組が終わり、CMに入る。
そこにうつっているアイドルを見て、嫌そうな表情を浮かべると、
ことりはテレビの電源を切った。
(あんな奴、見たくもない)
あいつのせいで、私はイジメにあっている。
全部あいつが悪い。
同じ双子なのに、陽は両親から期待されてるし、
おまけに顔も運動神経もいい。友達も多いほうだし
今は人気上昇中のアイドルグループ「スカイ」の中心メンバー。
(消えてくれればいいのに・・・)
この時はまだ、本気でそう思っていた―――。
5
:
いちご
:2011/11/03(木) 11:01:42 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
母「ことり〜、もうすぐお兄ちゃんが出る番組始まるでしょ?」
こ「・・・・・」
母「ことり!!聞いてる!?テレビつけないの?」
こ「私見ない」
母親の言葉にそっけなく返事をすると、
ことりはソファーから立ち上がり、二階にある自室へと向かった。
「まったく、あの子ったら・・・・」
そんな様子のことりを呆れたような表情で見ながら
母親はテレビの電源をつけた。
6
:
燐
:2011/11/03(木) 15:07:31 HOST:zaq7a66fee5.zaq.ne.jp
あの・・台本書きは控えた方がいいと思います。
いちごs>>
7
:
いちご
:2011/11/06(日) 16:22:16 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
すいませんm(_ _)m
これから台本書きやめます
>燐s
8
:
燐
:2011/11/06(日) 16:40:21 HOST:zaqdb739e91.zaq.ne.jp
いちごs>>はい。
宜しくお願いしますね。←何か気まずいぞw
9
:
いちご
:2011/11/06(日) 16:56:39 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
いや!!全然^_^;
これからもアドバイスお願いします!
>燐s
10
:
燐
:2011/11/06(日) 16:58:34 HOST:zaqdb739e91.zaq.ne.jp
いちごs>>いや・・私のアドバイス参考にしても困るんだがw
てか、呼びタメOKか?
11
:
いちご
:2011/11/12(土) 20:57:26 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
>燐
OKだよ(*^^*)
ってか、他のスレッドでも言ったけどねww
12
:
燐
:2011/11/12(土) 20:58:10 HOST:zaqdb739e91.zaq.ne.jp
いちご>>そだなw
ま、どっちでもいいか。
13
:
いちご
:2011/12/12(月) 20:34:17 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
>燐
うんww そーいえば、
こっちもあんま書いてなかった
続き↓
そこにはインタビューをうけている
「スカイ」のメンバーたちが映っていた。
『たしか、新曲が出るんですよね?』
「はい、CDが明日発売されるんです。
皆さんよかったら買ってみてください。」
愛想笑いを浮かべた陽の表情を見て、
インタビュー会場にいたファンは、歓声をあげる。
『キャーッ!!陽くーん!』
14
:
いちご
:2012/02/05(日) 17:54:08 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
そんなファンに向かって、ファンサービスで手を振れば
歓声が悲鳴に近いくらいに大きくなった。
〜陽視点〜
――
―――
「お疲れ〜」
「お疲れ、南」
インタビューが終わって、楽屋に入って行く俺たち。
グループのメンバーは全部で5人に編制されている。
その中で最も人気なのが、俺と郁美。
メンバーの仲は悪くないが、少なからず嫉妬はあるらしく、
微妙な空気が漂っていた。
「今日も凄かったな。陽が手を振っただけで、あの歓声だろ?」
雪平 南(ゆきひら みなみ)はインタビューをうけていた時とは
一変した、冷たい表情で言った。
それを聞いていた郁美が呆れたようにため息をつく。
「嫉妬かよ、南」
「嫉妬じゃね〜って、ただ、
調子に乗ってんじゃねーって言いたいだけ」
「それを嫉妬って言うんだ、馬鹿」
気にすんなよ、陽、と郁美に声をかけられたが、
俺は困ったように笑い、ああ、と頷いただけだった。
15
:
いちご
:2012/02/05(日) 18:08:16 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「俺、先帰るわ」
「今日はどっか寄らねーの?」
いつもは飯食いに行くのに、と南が言った。
「ああ。明日妹の誕生日だから、何か買おうと思って」
「ふーん、じゃあまた明日な。
音楽番組の収録、忘れんなよ!」
「忘れねーよ、じゃーな!」
南の言葉に返事をしてから、メンバーに
お疲れ、と声をかけて、俺は楽屋を出た。
こないだ、新しい靴が欲しいと母親に言っていたことを思い出し
戸惑いながらも、俺は女の子の靴がある可愛らしい店に入っていった。
16
:
燐
:2012/02/05(日) 20:36:18 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
いちごぉぉぉぉぉ!!!!!!!
この小説見るのは初めてだったか?
そうでもないか・・・・。
ま、頑張れw←
17
:
いちご
:2012/02/05(日) 21:02:53 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
深く帽子をかぶり、なるべく自分が「スカイ」の陽だと
バレないように気をつける。
俺は何故か妹に嫌われているために、
受けとってもらえるかは分からないが、ことりが好きそうな
デザインのサンダルを購入した。
「ねぇ、あれって陽じゃない?」
「あ、ホントだ。ちょっと似てるよね」
客がちらちらとこっちを見て小声で話している。
急いで金を払い、綺麗にラッピングしてもらうと、
早足で店を出た。
明日は番組の収録があるせいで、家に帰る時間が遅くなる。
誕生日を祝ってやることが出来ないために、
今日、プレゼントを渡そうと考えていた。
今日のインタビュー会場は、家から近かったために
早く帰宅することができた俺は、ただいま、とつぶやいて家に入った。
18
:
いちご
:2012/02/05(日) 21:03:33 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
うん、前に一回アドバイスもらったw
私文才ないから、よく意味分かんなかったら言ってね?
自分でもよく意味分かんない時もあるけど(←え・・
19
:
燐
:2012/02/05(日) 21:06:23 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
いちご>>いや・・・あんなんアドバイスちゃうよ。
ただ単の評価的なw
作者が意味分からんってどうやねんなぁ・・・。
20
:
燐
:2012/02/05(日) 21:08:30 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
てか、もう一つの方更新ないん??
やたら楽しみにしてんねんけど!!!
21
:
いちご
:2012/02/06(月) 17:52:32 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
うん、なんか書き終わってから読み返すと
ん?何じゃこりゃ?的な・・・
Σ(´∀`;)・・私の小説を
楽しみにしてくれる人がいるなんて!!←w
22
:
燐
:2012/02/06(月) 18:44:19 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
いちご>>何かね・・・いちごの小説は読みやすいんよ・・。
それに何か雰囲気がエエムードやんw
23
:
いちご
:2012/02/06(月) 19:09:18 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
嬉しいわ( ;∀;)
でも、燐の小説のはクオリティすっげぇ高いけどww
うん、てか凄いよね。もう200いってる!
私はネタ切れなっちゃうから、ゆっくり書かないといけないなぁ(^_^;)
24
:
燐
:2012/02/06(月) 19:12:20 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
いちご>>ほとんどノートに下書きしてるからペースは早いよw
夜中に下書きしてるっていう・・・。←殴
25
:
いちご
:2012/02/07(火) 17:24:50 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「お帰りなさい、陽くん」
今日もテレビ見たわよ〜!と、母親は興奮気味に言う。
「・・・ことりは?」
「あの子、部屋に閉じこもって出てこないのよ。
どうせお腹が減れば出てくるでしょ」
自分も腹が減っていたし、それもそうかと考えてリビングへ向かう。
席につくと用意されていた夕ご飯を食べ始めた。
テレビに流れていたのは、明日発売されるCDの宣伝のSM。
練習中、耳にタコができるくらいずっと聞いていたため、
できれば聞きたくなかった。
26
:
いちご
:2012/02/07(火) 17:27:53 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
よ・・夜中ww
私は授業中に考えてるから
授業何やったかあんま覚えてない←w
27
:
いちご
:2012/02/08(水) 18:18:25 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
タン、タン、タン
リズムよく階段を下りる足音が聞こえて、
ことりが来たんだと察した。
ガラ、
この時間に陽が帰っているとは思っていなかったらしく
大きく目を見開いて兄を見る。
「あ、ことり」
「何」
「これ・・・」
食べるのを中断させ、プレゼントを手に取り
ことりに手渡す。
「俺、明日収録で遅くなるから・・・
明日誕生日だろ?おめでとう」
「え・・・」
まさかプレゼントを貰えるとは思っていなかったらしく
ことりは大きい目を更に大きくした。
28
:
いちご
:2012/02/10(金) 19:16:06 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
そっか、明日は陽と私の誕生日なのだ。すっかり忘れていた。
「あ、ありが「え、陽は明日もお仕事なの?」
ことりの言葉を遮り、
『折角の二人の誕生日なんだから、3人で外食しようと思ってたのに』
と、不満そうな声を出す母親。
「ごめん、母さん」
29
:
いちご
:2012/02/10(金) 19:31:08 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「お仕事だからしょうがないわね〜、また都合があうときに
3人で食べに行きましょう。ね、ことり」
「・・・・」
「陽には期待してるんだから、これからも頑張りなさいね」
陽には、という言い方に、ことりはイライラしてくる。
母親も周りの人間も、陽しか見ていない。
「ことり・・・」
そんな雰囲気の妹に気づいた陽が、心配そうに名前を呼んだ。
30
:
いちご
:2012/02/11(土) 19:09:46 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「私、別に誕生日を
祝ってもらおうなんて考えてないし」
ことがそっけなくそう言うと、母親はムッとしたような表情を見せる。
「その言い方はないでしょ。折角二人の誕生日なんだから、
お祝いするのは当たり前じゃないの」
「何が二人の誕生日なのよ!
お兄ちゃんのことしか考えていないくせに!!」
突然大声を上げて、ことりは陽から
受け取ったプレゼントを母親に投げつける。
「ことり!いい加減にしなさい!!」
「うるさい!!」
我慢の限界だった。
自分のことをちゃんと見てくれない母親に、ずっと不満を感じていた。
小学生の頃からずっと、兄を優先にしてきた母親のことは
大嫌いだし、それ以上に陽のことが気に食わない。
自分は冷たい態度をとっているのに、優しくしてくる兄が大嫌いだ。
31
:
いちご
:2012/02/13(月) 18:14:32 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「ことり」
心配した陽がことりの名前を呼んだが、
それを無視してことりは、ドタバタと二階の自室へと戻ってしまった。
「・・・・俺、様子見てくる」
「ほっときなさいよ。きっとあの子、反抗期なのよ」
行くだけ無駄よ、と言う母親に陽は戸惑う。
「陽はお仕事で疲れたでしょ?早くお風呂に入って寝なさい」
「・・・・・・うん」
母親に言われ、陽は渋々風呂に向かう。
今回のようなことは今までに何回もあったし、
自分がどれだけことりに構っても自分が芸能活動をしているかぎり
関係は良くならないことになんとなく気づいていた。
母親は自分の足元に落ちているプレゼントを手に取ると、
そっとソファーにおいて、ため息ををついた。
32
:
いちご
:2012/02/18(土) 21:57:28 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
。゜+交通事故+゜。
コンコン、
部屋でぼうっとしていると、ノックの音が聞こえた。
どうせ母親だと思い、無視をしていればガチャリとドアが開く。
「ことり、」
少し控えめに自分を呼んだのは、風呂上がりの兄だった。
「風呂・・・空いたから次入れよ」
「うん」
「今からコンビニ行くんだけど、何か欲しいもんある?」
「いらないから、もう私なんかに構わないで」
ことりはパッっと立ち上がると、陽の横を通り過ぎて、
風呂場へ向かおうとする。
陽は、それを腕を掴んで反射的に止めてしまった。
ガシッ
「な、なに」
「俺、何かした?」
悲しそうな、真剣な表情で問いかけてくる。
「っ、別に・・・」
「ことりは・・・俺の事嫌い?」
ドクン、と、心臓が鳴った。
33
:
いちご
:2012/02/19(日) 10:00:42 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
どうして陽が悲しそうな表情を見せるのかもわからないし、
いちいち自分に構ってくる理由もわからない。
今まで陽に対して酷い態度ばかりとってきたのに
優しくされる理由もわからない。
私は優しくされても嬉しくないのに・・・
むしろ生まれてくるものは“喜び”ではなく“憎しみ”だから。
だって陽さえいなければ・・・
“陽さえいなければ”
兄は悪くない。悪くないけど、優しくされると
同情されているように思える。
だから優しい兄が、同情してくる兄が・・・・
「大っ嫌い」
吐き捨てるようにそう言うと、
ことりは兄の手を振り払い風呂場へと歩いて行く。
陽は妹の姿を見て溜め息をつくと、
気晴らしにコンビニへと足を運んだ。
34
:
いちご
:2012/03/06(火) 16:59:54 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
(どうすればいいのかな)
陽は夜道を歩きながら、一人悩む。
母子家庭で育ってきたために、女手ひとつで
自分たちを育ててくれた母親には、恩返しをしたいし、
出来るなら双子の妹とも仲良くしたい。
母親は芸能活動の事を応援してくれているし、
出来るだけ期待に応えたいと思っている。
しかし、そのせいでことりに嫌われているのだ。
しかも今、「スカイ」のグループ内の雰囲気もよくない――、
「・・・・・ハァ」
無意識に陽はため息をついた。
35
:
いちご
:2012/03/06(火) 17:13:41 HOST:ntiwte053067.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
ププー、
ぼうっとしていたせいか、背後から迫ってくるトラックの
クラクションの音が聞こえなかった。
ふらふらとした足取りで、陽は歩く。
キキィ!!
急ブレーキの音が響き、この時やっと気づいた。
陽はパッと振り向き、大きく目を見開く。
目の前には大型トラック。
どうすることもできない。
「ッッ!!!」
ドンっと、強い衝撃を受け
陽の身体は中に舞い、地面に強く叩きつけられた。
激痛を感じる間もなく、
陽は意識を手放した――。
36
:
いちご
:2012/03/17(土) 17:39:34 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
―――
――――・・・
そして森山家に一本の電話がかかってくる。
丁度、ことりは風呂から上がり
部屋に戻ろうとしていた時だった。
母親が電話に出たのだが、
明らかに様子がおかしいことに気づく。
「・・・・・え?」
言葉に詰まっている母親を見て、
ことりは足を止めた。
「今向かいます!」
ガシャンッ
母親は乱暴に受話器を置いて、
車のキーを掴み玄関へと向かう。
「ことりも来なさい!!」
「う、うん」
何か大変なことがあったのだと察したことりは
頷き母親について行った。
37
:
いちご
:2012/04/02(月) 19:07:56 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
向かった場所は病院。
「お兄ちゃんに何かあったの?」
状況がいまいち分かっていないことりは
母親に聞くが、返事をしてくれなかった。
どうやらただ事じゃなさそうだ。
ことりは静かに黙って、病院に着くのを待った。
駐車場に車を止め、走る。
受付を通り、集中治療室前まで向かった。
ことりは大きく目を見開く。
治療室に自分の兄がいる。
実感はないが、心臓が大きく唸った。
「うわああっ」
母親が泣き崩れる。
ことりはどうすることもできず、
ただ、母親をじっと見ていた。
38
:
いちご
:2012/04/10(火) 18:50:29 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
しばらくして、親戚の人や
芸能事務所の関係者の人たちが集まってくる。
「スカイ」のメンバーには、知らせていないらしい。
明日は収録で、しかも近々コンサートがあり
混乱させたくない為に今は言わないと言っていた。
親戚のおばさんは、ことりの母親の肩を抱いて
大丈夫、大丈夫と繰り返し言う。
状況ををいまいち理解できていないことりは、
ただ、ぼうっしていることしか出来なかった。
数時間かけて手術が行われた。
手術がやっと終わったのか、ランプが消えた。
中から手術を行った医者が出てくる。
「陽は、陽は無事なんですか!?」
「手術は成功しましたが・・・・」
医者は目を伏せ、残念そうに続ける。
「今後、目を覚まさない可能性があります」
39
:
いちご
:2012/04/21(土) 20:12:45 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「ど、どういうことなんですか!」
親戚や、事務所の関係者は医者に詰め寄る。
「地面に大きく頭を打ち付けたときの衝撃が大きく、
脳に損傷を与えてしまったために、
目を覚まさないかもしれないということです。
まだ覚まさないと決まったわけではありませんし、
外傷は奇跡的にそれほど酷くありませんでした。
しばらく様子を見ましょう」
医者はできるだけ言葉を選び、優しく説明した。
刹那、母親や親戚は再び涙を流し始める。
「・・・・困ったな」
ふいに事務所の関係者が呟いた。
「明日の収録は、陽がセンターで歌うんだぞ。どうするんだよ」
小声で話している関係者を見て、ことりは茫然とした。
こんなときまで仕事の話をしている。
結局は売り物としか見ていない。
泣き崩れる母親と、芸能関係者を見比べて
ことりはどうしてか分からないが、腹が立った。
40
:
いちご
:2012/04/21(土) 20:26:53 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
その後、陽は病室へとうつされた。
手術後、初めて見る兄の顔に、
ことりは驚きを隠せない。
「ッ・・・・」
無意識にことりは涙を流していた。
今までに感じたことのない後悔と罪悪感が押し寄せてくる。
ずっと陽は自分と仲良くしようとしてくれていたのに、
自分は母親に気に入られている陽に嫉妬して、
冷たく接していた、
もしかして、こうなってしまったのは
自分のせいかもしれない。
ことりはそう感じた。
41
:
いちご
:2012/04/22(日) 13:31:56 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「お兄ちゃん」
死んだように眠っている兄に声をかける。
「起きてよ・・・」
ピクリともしない兄。
失って、初めて大切だと気づいた。
「ごめんなさい・・・」
溢れだした涙は、止まることを知らないように流れ続け
ポロポロと落ちては、床を濡らしていく。
母親もつられて泣いた。
42
:
いちご
:2012/04/25(水) 15:25:30 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「ことり・・・」
涙声で、ことりの名前を呼ぶ。
彼女は母親に視線を向けた。
「ッ、ごめんね・・・。お母さんが悪いわね」
陽が一番家族関係を気にしていた。
悩みを相談せず、一人で抱え込んでいた。
昔、陽からことりを大事にしてあげてと
頼まれたこともあった。
43
:
いちご
:2012/04/25(水) 17:29:38 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「今までことりのことを、気にしてあげられてなかった。
陽くんは、きっと、ことりを大事にしてあげてって
言いたかったのね」
ごめん、ごめんね。
母親はことりのことを力強く抱きしめた。
「お母さんがしっかりしないから、
陽くんは自分を犠牲にしてまで
気づかせてくれたのかもしれないわ」
ポツリと母親が呟いた言葉が
ことりの胸に深く突き刺さった。
44
:
白鳥夕
:2012/04/26(木) 13:06:10 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
ウウぅ〜泣けるよ〜 陽くんて名前好き♡ あわわ……自己紹介が遅れました。私は白鳥夕です。いちごさん受験生なのに頑張って書いてくれて嬉しいですなぁ〜。これからも応援してます。小説も勉強もファイトです。←初対面なのに失礼言ってすみませんですm(__)m
45
:
いちご
:2012/04/26(木) 18:28:39 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
<白鳥夕s
感想ありがとうございます!!受験は終わりましたよ(^O^)
全然更新していなかったので、これからたくさん書いていきたいと思います!
よかったらこれからも読んでくださいね。
46
:
いちご
:2012/04/26(木) 18:30:04 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
眠っている陽の表情は、ことりと母親を見て
微笑んでいるようだった。
「・・・あのぉ、すいませんが
少しお時間よろしいでしょうか」
今まで黙っていた芸能関係者が口を開く。
ことりと母親は涙を拭って、視線を向ける。
「ここではなんですから、待合室に移動しませんか?」
「分かりました。じゃあことりはここで・・・」
「いえ、お嬢さんも一緒に」
「え?」
まさか自分まで呼ばれると思っていなかったらしく、
ことりは驚いて声をあげる。
47
:
麻琴
:2012/04/27(金) 01:08:42 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
こんにちは!
な〜んかヤバイ展開になってきた!!
ドキドキです。
48
:
燐
:2012/04/28(土) 13:14:19 HOST:zaq7a66fe3c.zaq.ne.jp
いちご>>見たなう。
もう一つの小説の更新を待ち遠しくて待ってるねんけど…。
まだなんすか?
49
:
聖奈
:2012/04/28(土) 13:16:17 HOST:p248.net220148011.tnc.ne.jp
入れて下さい
『聖奈』です
50
:
白鳥夕
:2012/04/29(日) 10:22:02 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
桜彼方どこまでも (続)↓
世界一小さな海が有名な市街地。
この南海市で特に有名な南海大高校。いかにも大層な名前である。このお話の主人公が学校に通っている??まさか,まさか。その次に有名な海生学園高等学校に通っている。どちらとも“海”という字が入っていることには理由がある。南海大高校は2つの高校は海をはさんでいる。南海大高校は北側で海生高等学校は南側にある。同じ市内なのだからそれほど海は大きくはない。その海生高等学校には今日も通い,いつもの帰り道ルートを歩いていた主人公反町一生輝の姿があった。風邪やインフルエンザなど大きな怪我もしたことない健康な体だから休み無く通っている。そんな,日,日常を過ごしている彼にとってはそうとう苦疲で。
「少しも絶えまないよな,日常,て」 ついくせでつぶやいてしまうこの言葉。でも,特に深い意味はなかった。そんな反町の横を小さな男の子が通り過ぎる寸前だった。
ランドセルを背負っていそうな年代の小学生サイズの男の子がわざわざ立ち止まり言返してくれた。それも距離の離れたところで。 「何意味不明なこと語っちゃっているのですか?」
両者同時に振り向く。その小学生サイズのようなというのはただの推測だった。通りかかったのは海生学生の反町が通っている学校の海生学園の男子生徒だった。
51
:
白鳥夕
:2012/04/29(日) 10:25:12 HOST:248.237.accsnet.ne.jp
失礼しました(泣)間違えていちごさんのところに送ってしまいました…本当にごめんなさい
52
:
いちご
:2012/04/29(日) 11:54:17 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
<麻琴s
そうっすね・・・タイトルに男装って書いてるのに
全然出てこないですもんね(;´Д`)
<燐
いくらなんでも放置しすぎだった!すいませんm(_ _)m
続き書いときます!!
<聖奈s
どーぞどーぞ!(*^_^*)入ってくださいな!!ww
<白鳥夕s
大丈夫ですよ!
私も間違いそうになったことありますからww
53
:
聖奈
:2012/04/29(日) 14:11:43 HOST:p228.net220216007.tnc.ne.jp
じゃ、遠慮なく
お邪魔します
54
:
いちご
:2012/05/04(金) 09:43:28 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
二人は待合室に移動し、言われるがままソファーに座る。
するとスーツを着た関係者が3人部屋に入ってきた。
「私、「スカイ」のマネージャーの木村と申します。」
ス、と名刺を差し出してきた。
母親はそれをうけとり、目を通す。
「陽さんがこんな状況になってしまった直後で、
非常に言いにくいのですが・・・。」
言葉を濁らせて、木村は続ける。
「明日、歌番組の収録があるんです。
近々コンサートもあります。メンバーの中でも人気の高い、陽さんが
抜けての活動は、事務所的にもグループ的にも非常に厳しいんです。」
「え、ええ・・・。」
「たしか、お嬢さん・・・ことりさんは、陽さんとは双子ですよね?
非常に顔が似ていますし・・・。」
「そうですけど・・・。」
木村が何を言いたいのかわからず、母親は不安そうな表情を見せる。
「陽さんの代わりにグループに入っていただけないでしょうか。」
「・・・え?」
55
:
いちご
:2012/05/04(金) 09:53:19 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「陽さんの意識が戻るまでで結構です。
今、「スカイ」は伸び続けていますし、先ほども言った通り、
陽さん抜きの活動は厳しい。ですが、双子のことりさんが陽さんになり
活動してくれれば事務所的にも助かります。もちろん、ギャラは払います。
お願いします!!!」
関係者全員が頭を下げてきた。
母親は戸惑いを隠せない様子で、ことりを見た。
「・・・どうするの?ことり。」
「え?」
「ことりの判断に任せるわ。」
自分で決めなさい、と母親は言った。
「そんなの、無理だよ・・・。」
ことりは力なく答えた。
私がお兄ちゃんの代わりに芸能活動をするなんて、できるわけがない。
お兄ちゃんみたいに歌がうまいわけでもなく、
ダンスも踊れない。
「こちらも全力でフォローします。
よろしくお願いします!!」
さらに深々と頭を下げるマネージャーの木村に、ことりは言葉を詰まらせた。
「陽さんが目を覚ました時に、復帰しやすいようにという意味もあるんです。
あなたの力が必要なんです!」
ことりの頬に、冷や汗が流れた。
陽の為に、自分が身代わりになって芸能活動して、
いったい自分になんの利益になるのか。
56
:
いちご
:2012/05/04(金) 09:57:46 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
助けを求めるように母親を見れば、彼女の顔は真剣な表情へと変わっていた。
「ことり、さっきはお母さん自分で決めなさいといったけれど
陽君の代わりに、お仕事してくれないかしら。」
「え、」
「陽が小学生の時から、必死で努力して手に入れた立場でもあるのよ。
お願いことり・・・陽君の目が覚めるまで、頑張ってあげて。」
「さすがお母様!話がわかってらっしゃる!」
木村は嬉しそうな表情を見せる。
「お母様の許可もいただいたし、ことりちゃん、どうかな?」
「私は・・・。」
さっき、母親は自分の事も気にかけてくれると言って
謝ったばかりなのに、もう陽の事しか見ていない。
「絶対に、代わりになんてならない!」
「ことり・・・。」
「お兄ちゃんが努力して手に入れた立場を、簡単に私に渡してもいいわけ!?
それで本当にお兄ちゃんの為になるの!?それに、さっきも言ったけど
ダンスもできないし歌も歌えないからできるわけないじゃない!」
57
:
いちご
:2012/05/04(金) 10:02:56 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「何を言っているんですか?」
木村は不思議そうな表情を見せた。
「陽さんの為にならなくてもいいんだよ、ことりちゃん。
事務所の為に頑張ってほしいんだ。」
「ことり、アンタどうせ部活も何も入ってないでしょう?
陽君の為に、頑張りなさい。」
マネージャーは事務所の利益しか考えていない。
母親は陽の事しか考えていない。
そんな二人に言い返す気力もなく、ことりはその場に座り込んだ。
58
:
いちご
:2012/05/04(金) 15:08:50 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「では、ことりちゃんが代わりになる、という方向で
話を進めてもよろしいですか?」
「ええ、是非。」
ことりを無視して木村と母親の話が進んでいく。
無気力になり、ため息をひとつつくと
ことりはちらりと時計を見た。午前3時。
真夜中だというのに、不思議と眠くはない。
「明日の朝9時から収録が始まるのですが、
学校の方は大丈夫ですか?
できればこのことは内密にしておきたいんですが・・・。」
「ええ、大丈夫です。
私の方から連絡をしておきます。」
さっき、少しだけ母親を許したことを後悔した。
やっぱり、嫌いだと実感する。
59
:
いちご
:2012/05/04(金) 15:11:20 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「じゃあことりちゃん、明日の7時に家まで迎えにいくから
よろしくね。」
「・・・。」
返事をせず、睨むような視線を向けていると木村は苦笑して
他の関係者たちと待合室を出ていく。
残された母親とことりの間に、沈黙が流れた。
「ごめんねことり。
陽君がこんな状態になった今、協力してね。」
じゃあ、お母さん陽君の病室に行くから。
そう言い残して、待合室を出て行った。
「――――結局は、みんなお兄ちゃんなんじゃない。」
ぽつりとつぶやいた言葉は、
誰にも聞かれることはなかった。
60
:
いちご
:2012/05/04(金) 15:35:02 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
゜。+戸惑いと収録+。゜
明け方、ことりは母親に送られて家に帰った。
今日は学校を休めと言われ、渋々私服に着替える。
母親はことりに頑張ってね、とだけ告げると仕事を休んで
再び病院へと向かった。
ぽつんと一人家に残されたことりは、
ソファーに座りぼうっとしていた。
ピンポーン、
インターフォンの音が聞こえ、心臓がドキリと鳴った。
時計を見れば7時。時間だ。
躊躇いがちに玄関に向かい、がちゃりとドアを開ければ
マネージャーの木村と、大きな袋を持った女性が立っていた。
「おはよう、ことりちゃん。」
「・・・おはようございます。」
木村と女性はズカズカと家に押し入り、リビングのテーブルに
袋の中身を出し始める。
そこには、男物の服や陽の髪形に良く似たウィッグ。
さらには化粧品やさらしまで入っていた。
ビックリして目を見開けば木村は笑顔で口を開く。
「今から陽君になってもらうからね。」
どうやら、数時間前の出来事は夢ではなかったらしい。
ことりは今になって実感した。
61
:
いちご
:2012/05/04(金) 15:42:04 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
拒否する間もないまま、
服を脱がされ胸にぐるぐるとさらしを巻かれる。
男物の服を着せられると、
女性に椅子に座らされメイクが始まった。
(もう、こうなったらやるしかない.…)
ことりの心には、諦めしかなかった。
断ることも、拒否することもできないなら、やるしかない。
本当は嫌だけれど、少しだけ陽への罪悪感がある為に
やってもいいかな、という軽い気持ちがあった。
62
:
いちご
:2012/05/04(金) 15:50:14 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
30分後、
仕上げにウィッグをかぶったことりは、
完璧な陽へと変身を遂げた。
「・・・わあ、」
あまりにそっくりな為に、木村は驚きの声をあげる。
表情は陽とは比べて固いものの、誰も双子の妹なんて気づかないだろう。
「すごいよことりちゃん!」
ことりは ほら、 とマネージャーから
渡された鏡に自分をうつし、硬直した。
「え・・・、嘘。」
「これなら絶対にバレない。イケるよことりちゃん。」
「・・・。」
ことりは、木村に不安そうな表情を向けたが、
彼は何食わぬ顔で時計を見る。
63
:
いちご
:2012/05/04(金) 15:59:28 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「そろそろ行こう。間に合わなくなる。」
「ちょ、ちょっと待ってください!
私、やっぱり無理です!収録って、歌番組のでしょ!?
歌も知らないし、ダンスもできないから、絶対、できない・・・。」
「大丈夫だって。歌は音楽が流れてるから、口パクでどうにかなるし
ダンスはリハーサルの時に覚えてくれれば…」
「り、リハーサルって...。」
「一時間もあれば、大体は覚えるよ。」
「ええ!?」
無茶ばかりいう木村に驚きを隠せない。
いいからいいから、と背中を押されて、ことりは家を出ると
車に乗せられた。
64
:
いちご
:2012/05/04(金) 16:05:07 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
(なんでこんなことになったんだろう...。)
「ハァ...。」
ため息をつけば、木村は今日のスケジュールについて話始めた。
「今日は、9時から一時間リハーサル。
10時から番組の収録がある。12時からは雑誌の撮影。
色々わからないことがあったら、俺に聞いてくれればいいよ。」
「・・・はあ。」
絶対無理だと、ことりは思った。
65
:
いちご
:2012/05/04(金) 16:09:53 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「ついたよ」
「・・・」
テレビ局前につき、ことりは目を見開いた。
今までに感じたことのない緊張感が走る。
マネージャーは駐車場に車を止めると、
後部座席のドアを開けてことりに出るように指示する。
「一人称は俺。あとは、適当に話を合わせてくれてればいいから。」
「・・・そんな簡単に、行くはずないですよ。」
「大丈夫大丈夫。俺もフォローするから。」
不安で仕方がない。
66
:
いちご
:2012/05/04(金) 16:41:14 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
ことりは車から降りると、木村についていく。
メイクを担当してくれた女性とは入り口で別れた。
ぺこりを小さく頭を下げれば、女性は笑顔で手を振ってくれる。
「おはようございます!」
テレビ局に入った直後、自分に向けて挨拶をしてくる
黒いスーツの関係者達。
「お、おはようございます」
ことりは引き攣った笑顔で挨拶してしまった。
(なんなのよここ…)
大勢の大人たちに囲まれているだけで緊張するというのに、
こんな場所でカメラの前で収録なんてできるわけがない。
無意識に自身が震えているのを感じた。
67
:
いちご
:2012/05/04(金) 17:16:43 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「陽さん、こちらです」
「・・・」
「陽さん?」
「あ、ハイ!」
木村に呼ばれて、はっと顔を上げる。
そうだ。自分は今、陽だった。
『ことりちゃん、しっかりして。』
小声で木村にそう言われ、
ことりは曖昧に頷いた。
68
:
いちご
:2012/05/04(金) 17:20:45 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
そのまま楽屋へと案内される。
ドキドキドキ、
だんだんと鼓動が早くなってくる。
「じゃあ、陽さん。
リハーサル前になりましたら呼びに行きますんで」
木村はさわやかな笑顔を向ける。
「え!?木村さんは?」
「俺はほかに仕事があるから。
大丈夫、陽さんになりすまして、余計なことを話さなければどうにかなるよ。
じゃ、頑張ってねことりちゃん。」
あまりにも無責任だと思った。
ことりは泣きそうになるのを堪える。
背中を向けて歩いていってしまう木村をキッと睨みながら
どうしよう、と楽屋の前で悩む。
69
:
いちご
:2012/05/04(金) 20:23:45 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
しばらくその場で悩んでいると、
突然肩にポンと手を置かれた。
「ひいっ!」
「何突っ立ってんだよ、しかもなんだその悲鳴」
驚きすぎだろ!と声をだして笑う人物に
目を向けて、ことりは固まった。
「あ、あっ!」
今、自分の目の前にいるのは、
陽と同じグループの雪平 南。
芸能人が、アイドルが目の前にいる。
それだけでどうすればいいのかわからなくなり、
ことりは意味不明な声をあげてしまった。
70
:
いちご
:2012/05/04(金) 20:26:22 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
クラスの女子のほとんどが「スカイ」のファンなのだ。
それに、陽が時々話す内容の中にも
彼の名前はたびたびでてきた。
テレビでも何度か見たことがある。
「?とりあえず中に入ろうぜ!」
南はドアを開き、ことりの背中を押して
無理やり楽屋に押し入れた。
71
:
いちご
:2012/05/04(金) 20:28:28 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「ちょっ、」
「おっはよー!」
元気よく挨拶する南に対し、
ことりは驚きのあまり声を出せなかった。
目の前には、テレビでしか見たことのない
「スカイ」のメンバーが揃っている。
「っ〜!」
ああ、もう、どうしよう。
ことりはパニックに陥っていた。
72
:
いちご
:2012/05/04(金) 20:34:50 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「・・・陽くん、大丈夫?」
冷たい表情をした 奥村 楓 が話しかけてくる。
言葉は心配しているのに、声音は低く、少し怖かった。
テレビで見たことのある楓は子供らしい笑顔で、
愛嬌があった。
カッコイイより、可愛いが似合う男の子だったはず。
なのに、目の前にいる彼は 違う。
ことりは驚き、こくこくと頷く事だけで精一杯だった。
73
:
いちご
:2012/05/05(土) 09:08:30 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「陽くん、センターなんだからしっかりしなよ。」
楓が無表情で言ってきた。
どうやら彼は、陽の事をあまり良く思っていないらしい。
「う、うん。」
「すぐに僕が、抜くけどね。」
「え?」
「・・・ハァ、楓。いい加減にしろ。」
佐野 郁美が呆れたように言う。
「陽も気にするなよ。」
「……」
ぽんぽん、と自分の肩をたたいて
安心させようとしてくれる郁美は自分の味方らしい。
74
:
いちご
:2012/05/05(土) 09:12:56 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
(・・・なんなの、この雰囲気。)
てっきり、メンバー同士仲がいいと思っていたのに
そうでもないみたいだ。
コンコン、
楽屋にノックが響いた。
がちゃり、
そしてドアが開く。
「もうすぐリハーサルですんで、スタンバイお願いしまーす。」
「「はい」」
刹那、メンバーの目が変わった気がした。
75
:
いちご
:2012/05/05(土) 09:14:54 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
関係者の人から衣装を受け取り、
全員が素早く着替え始める。
「え、ちょっ///」
目の前で着替え始める彼等に慌てて背を向ける。
「何してんだよー、陽。」
南が お前も早く用意しろよ と言い衣装を投げつけてくる。
それを受け取り、「と、トイレ行ってくる!」と言い
慌てて楽屋を出て行った。
76
:
いちご
:2012/05/05(土) 09:18:56 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
近くのトイレに駆け込むと、
煩いくらいにバクバクと鳴っている心臓を
必死で落ち着かせようと深呼吸する。
(どうしよう...。)
手に握る衣装を見て、悩む。
できることならこのまま逃げてしまいたい。
どうしてはっきり無理だと言って断らなかったのだろう。
「っ...。」
ことりは、しゃがみこんだ。
77
:
いちご
:2012/05/05(土) 09:20:44 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
キィ、
扉の開く音がして、ことりは視線を向ける。
「っ...え!?き、キャアアー!」
「!?」
突然入ってきた女性に、悲鳴をあげられてしまう。
なんで自分を見て悲鳴をあげるのだろう。
ことりは不思議そうな表情をして立ち上がり、あたりを見回すが
何も驚くような対象はない。
78
:
いちご
:2012/05/05(土) 09:23:02 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「なっ、なんで女子トイレにいるのよ!!」
「あ!」
トイレの鏡にうつる自分を見て、ハッと気づいた。
そういえば、今は陽の姿だった。
「ご、ごめんなさい!間違えて...。」
「どこをどうすれば間違えるのよ変態!
スカイの陽が変態だったなんて...」
79
:
いちご
:2012/05/05(土) 09:27:45 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
(...もう、やるしかないのかな。)
どうせ誰も、陽の双子の
妹のことりだなんて知るはずがない。
もし失敗したとしても、
それは陽が失敗したことになる。
そう思うと、不思議と気持ちが軽くなった。
80
:
いちご
:2012/05/05(土) 09:31:10 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
素早く衣装に着替えると、男子トイレから出た。
楽屋に戻るとそこにはすでに
準備が整っているメンバーが居た。
「おせーんだよ陽。」
南が呆れたような表情で話しかけてくる。
「うん、ごめん。」
「じゃあ、行くか。」
郁美が静かに言った。
それに頷き、全員が収録場へ向かう。
81
:
いちご
:2012/05/05(土) 10:10:24 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「・・・・」
「?」
そういえば、メンバー内でも最年長の
橋本柚希とは一言も話していないな
と思い視線を向ければ、ぱちりと目があった。
気まずくなりばっと視線を外す。
(び、ビックリした...。)
収録場につくと、テレビでしか見たことがない
セットが並んでいる。
少し緊張が落ち着いたというのに、
また鼓動が早くなってきた。
「じゃあ、最終確認をします。」
聞きなれた声に、ことりはばっと顔をあげた。
目の前にはスカイのマネージャーの木村が、
台本を持って立っている。
「き、木村さん...。」
不安そうな声をあげれば、木村は笑う。
「どうしたんですか、陽さん。」
82
:
いちご
:2012/05/05(土) 13:59:26 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「ッ、...やっぱり、無「陽さんは、ここに座ってくださいね。」
「え!」
言葉を遮られて、台本を見せられた。
やはり人気というだけあり、ど真ん中の席だ。
「本番は、司会者とトークをして
終わったらスカイはすぐにステージに移動。
歌うのは最初だから、宜しくお願いしますよ」
ことりは沈んだ顔をしていた。
「陽、今日可笑しくないか?」
「さ、佐野さん...。」
「佐野さん?お前、いつも俺の事名前で呼んでただろう?」
「あ、あー...そうだった!大丈夫だよ、郁美。」
引き攣った笑顔を向ければ、郁美は訝しげな表情を浮かべた。
「そんな笑顔じゃ、テレビに出れないよ。」
呆れたような表情を見せる楓に、 ゴメン と謝るとため息をつかれた。
83
:
いちご
:2012/05/05(土) 17:18:14 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「リハーサルまで10秒前〜、9、8、7、」
言われた席に、ドキドキしながら座った。
目の前には大量の機材。
自分を映しているんだと考えると、自然と手が震えた。
(...陽、)
その震えに気づいていたのは、隣に座った郁美だった。
今日の陽は可笑しい。
同じグループのメンバーとして、
できるかぎりフォローしようと決める。
84
:
いちご
:2012/05/05(土) 17:20:28 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「3、2、1、スタート!」
「っ...。」
自然と顔が強張った。
自分は陽なんだ、大丈夫。と何度も言い聞かせるが、
震えは止まってくれない。
「今日のゲストは、今人気急上昇中のスカイです!」
司会者がそういうと、
リハーサルから見ている観覧客がわー!と盛り上がる。
85
:
いちご
:2012/05/05(土) 17:28:19 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「今日、新曲のCDの発売日なんですよね?」
司会者は問いかける。視線は陽に向いていた。
「ッ…、」
いきなり振られて驚いたのか、ことりはどうすることもできなかった。
すかさず郁美がマイクを持ち、口を開く。
「そうなんです。スカイの二枚目のシングルCDなんですよ。」
陽の異常に気付いた司会者は、一瞬不思議そうな顔をしたものの、
そこには触れずに郁美に視線を向けて質問を繰り出す。
「どういった曲になっているんですか?」
「アップテンポで、聞きやすくなってます。
曲も覚えやすいんで、よかったら買ってくださいね。」
郁美はクールな表情を崩さず、綺麗に笑った。
すると観覧客から、 キャー! という歓声が上がる。
86
:
いちご
:2012/05/05(土) 18:21:05 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「では、その新曲を今日、テレビで初公開ということで
スカイのみなさんスタンバイお願いします!」
「はい。」
「よろしくお願いします。」
メンバーは立ち上がり、ステージへと移動する。
郁美はことりの震えている手を掴み、立ち上がらせた。
「え!?郁美君と陽君が手つないでるー!」
「キャアアー!可愛いー!」
「い、郁美っ...。」
「しっかりしろ、陽。」
87
:
いちご
:2012/05/05(土) 18:29:02 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「う、うん...。」
トークは郁のフォローでどうにかなったものの、
歌とダンスはどうしようもない。
隅で自分達を見ている木村に視線を向ければ、
他人事のように手を振られた。
初めの立ち位置はどこなのか、
どういった曲なのか、
どういうダンスを踊るのか。
全くわからないまま、ことりはステージに立つ。
88
:
いちご
:2012/05/06(日) 08:48:07 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「陽はここだろ。」
初めはメンバー全員が、横一列に並んだ。
スポットライトが当たる。
柚希、楓、陽、郁美、南という順だった。
(お兄ちゃんは、いつもこんな緊張する中で頑張ってたんだ…)
陽は、真ん中で一番目立つ位置にいるのに
いつも自信満々に踊っていた。輝いていた。
89
:
いちご
:2012/05/06(日) 08:52:53 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
(私は…)
やっぱり、兄の代わりにはなれない。
「陽。」
「...?」
今まで一言も話さなかった柚希が、口を開く。
「いい加減にしろ。」
ズキリ、
胸に、重い言葉が突き刺さった。
どうして自分がこんな目に合わなければいけないんだろう。
無理やりステージに立たされて、
何もわからないのは当たり前の事なのに。
緊張を忘れ、ことりの頭には血が上った。
90
:
いちご
:2012/05/06(日) 08:55:33 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
――もう、限界だ。
「いい加減にするのは、そっちだろ!」
収録場に、ことりの声が響く。
刹那、シンと静まりかえった。
木村は焦ったように目を見開き、慌てて駆け寄る。
「よ、陽さん!ストップ!」
「元はと言えばアンタがっ...。」
キッ、とことりは木村に視線を向けた。
91
:
いちご
:2012/05/06(日) 16:46:08 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
ことりがステージを降り、
木村の前に向かおうとした時だった。
ぐい、
腕を引かれ、引き留められる。
「郁美...。」
「っ、いい加減にするのはお前だ。」
パァン!
乾いた音が響き、頬に痛みが走った。
92
:
いちご
:2012/05/08(火) 18:39:42 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
どうして自分が叩かれたのかわからなかった。
「……」
ぽかんとした表情で郁美を見る。
郁美は睨むような視線を向けると
自分の立ち位置についた。
「すいませんでした。」
そして頭を深く下げる。
観覧客も何が起こったのか理解できず、
茫然としていた。
93
:
いちご
:2012/05/15(火) 19:01:19 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「あー、もう本番まであまり時間がない!
もういい!中止だ!」
監督に言われ、スカイのメンバー全員の表情が歪んだ。
「時間がおちてる。このまま本番に入るぞ!
全員位置について!!」
「「はい」」
メンバー全員が先ほどトークをした位置へと戻っていく。
94
:
いちご
:2012/05/15(火) 19:02:39 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「こと...よ、陽さん!」
木村が叫ぶ。ことりは力なく振り向いた。
「すまない...。」
謝罪が、ずしりと心に伸し掛かる。
木村は、陽の双子の妹の自分に
少なからず期待していたのだろう。
陽の妹だから、期待していた。
「っ...。」
瞳に涙が溜まる。
95
:
いちご
:2012/05/18(金) 19:26:39 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
(私が皆に期待されないのは、お兄ちゃんのせいじゃない...
全部、私が悪かったんだ。)
自分から変わろうとせず、全部を周囲のせいにした。
兄の優しさを素直に受け入れず、傷つけていた。
「っ...。」
ことりは、ぐっと拳をつくった。
(...っ、やってやる。)
私は、何もできないわけじゃないってこと
証明させてやる。
私は、陽じゃない。森山ことりなんだ。
先ほどとは変わった、しっかりとした足取りで
自分の位置へと戻っていった。
そんな陽を郁美はちらりと見て、ふ、と口元を緩めた。
96
:
いちご
:2012/05/18(金) 19:50:14 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
そして、本番が始まる。
何台ものカメラが自分の方に向く。
受け取ったマイクを強く握りしめた。
「今日のゲストは、スカイのみなさんでーす。」
「よろしくおねがいしまーす。」
「よろしくお願いします。」
ことりは作り笑いを張り付けて、挨拶をする。
97
:
いちご
:2012/05/19(土) 22:46:06 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「今日は、新曲のCDの発売日なんですよね?」
司会者は気を使い、郁美へと視線を向けた。
郁美はリハーサルの時と同じように答えようと
マイクを口元に近づけた時だった。
「はい、そうなんです!」
しかし、答えたのは郁美では無かった。
ことりは頬を少し赤く染めながら、元気よく答える。
98
:
いちご
:2012/05/20(日) 09:24:48 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「え、陽...?」
いつもの陽の雰囲気と違うと感じたメンバーは、
ぎょっとして彼を見る。
「どういった曲になってるんですか?」
「俺は、うまくは説明できないんですけど...
凄く良い曲になってるんで、みなさん、是非買ってください!」
曖昧すぎる返答に、司会者は思わず苦笑する。
しかし、いつもと違った陽が見れて興奮しているのか
観覧客は歓声をあげる。
99
:
いちご
:2012/05/20(日) 14:42:45 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「陽さん、いつもと違いますね。」
「少し緊張しちゃって...。」
あはは、とから笑いを見せるとさらに歓声が大きくなった。
「では、今日テレビ初披露ということで、
新曲を聞かせてもらいましょう!みなさん、宜しくお願いします。」
「「お願いします」」
トークは何とか終わり、ステージに移動する。
全員が立ち位置についたとき、陽はごくりと喉をならした。
(大丈夫、いける。)
自分に言い聞かせ、深呼吸をすると真剣な表情へと変わった。
100
:
いちご
:2012/05/20(日) 14:43:04 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
はい!100いきました!
更新遅いですね…ハイ。
特にもう一つのスレのほうが…
放置です…ハイ←反省してます、マジで
多分そのうち書くんで、ヨロシクお願いします(-_-;)
101
:
もこ
:2012/05/20(日) 15:23:27 HOST:proxy20080.docomo.ne.jp
早く続きが見たいです!!
楽しみにしてます♪
102
:
いちご
:2012/05/20(日) 19:17:37 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
<もこs
感想ありがとうございます!
こっちは結構早く書き終えると思います(←多分
続き頑張りますね(´∀`*
103
:
いちご
:2012/05/20(日) 20:45:11 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「....。」
楓はそんな彼を見て、小さく笑う。
しばらくして、曲の前奏が流れ始めた。
張りつめた空気の中、
ことり以外のメンバー全員が完璧に踊りだした。
ことりだけが動かず、マイクを握りしめ,
知らない曲を聞きながら,必死に口パクで歌う。
(っ、陽!?)
(アイツ何してんだよ!)
メンバーは驚きの視線を向けたが、今は本番の収録中。
怒鳴るわけにはいかない。
104
:
いちご
:2012/05/20(日) 20:46:52 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「か、監督、カットしましょう!」
陽の異変に気付いたスタッフが止めるように頼むが、
監督は口元をつりあげて笑った。
「いや、面白い。このまま続けよう。」
「ええっ!?」
105
:
いちご
:2012/05/20(日) 20:50:26 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
ことりは笑顔を張り付けたまま、口を動かす。
冷や汗が頬を伝った。
木村はじっとことりを見ている。
ことりは、自分が間違っていると思わせないほど堂々としていた。
(陽の奴、ダンス忘れたのか!?)
郁美はフォローにまわるべく、ダンスを自然にやめて歌いながら
陽の元へといき、背中合わせになる。
それを見たメンバーが二人に
あわせるようにアドリブをしだした。
106
:
Mako♪
:2012/05/21(月) 02:54:28 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
100おめでとうございます!
これからも楽しみにしてます!
107
:
いちご
:2012/05/22(火) 18:53:46 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
<Mako♪s
コメントありがとうございます!
楽しみだなんて…(〃´ω`)ゞ
続きがんばりますね!
108
:
いちご
:2012/05/22(火) 18:54:34 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「・・・おお。」
監督は感激の声をあげる。
木村も目を見開いた。
ダンスは形になっていないが、メンバー全員がフォローしあい
中心にいる陽が良い意味で目立っていた。
「すごいじゃないか...スカイ...。」
「か、監督?」
様子が可笑しい監督にスタッフが声をかけるが
聞いていなかった。
「俺が求めていたのはこれだよ。
常識にとらわれないアイドルグループ。
こいつら...伸びるぞ。」
監督は確信したように言った。
109
:
いちご
:2012/05/22(火) 19:00:23 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「...はぁ、はぁ...。」
なんとか無事に曲が終り、メンバーは観覧客に笑顔を見せる。
刹那、
「「キャー!!!」」
爆発的な歓声があがった。
ことりはほっとしたような表情を見せる。
「スカイのみなさん、有難うございました!」
司会者の言葉を合図に、 カット! という監督の声が響いた。
メンバーは息を整えると、こちらに向かって歩いてくる監督に視線を向けた。
110
:
いちご
:2012/05/22(火) 19:12:02 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
えー、さっきこの小説を読み直したんですが
>>78
と
>>79
のとこが変
というか、話がとんでいました。
まぁ、‥そこはことりがショックを受けたという感じでww
ホンットすいませんでした…
111
:
いちご
:2012/05/22(火) 19:15:00 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「素晴らしかったよ!」
がし、と陽の両手を掴み、視線をまっすぐ合わせる。
「は、はあ...。」
「森山陽君!君は素晴らしい人材だ!期待しているぞ。」
「え?」
突然褒められ、何がなんだかわからない。
監督はことりの背中を数回叩くと、上機嫌で戻っていった。
「...陽。」
ビク、
郁美の低く冷たい声が背中に突き刺さる。
「い、郁美...。」
ことりは焦った。自分勝手な行動をし、
メンバーに迷惑をかけた。
112
:
いちご
:2012/05/22(火) 19:16:35 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
痛いほど理解しているため、謝ろうと口を開いた時だった。
「楽屋で話がある。」
「...うん。」
収録場にはまだ観覧客がいる。
そのために、スカイのマイナスイメージを与える発言はできない。
郁美に言われて頷くと、お疲れさまですと挨拶をして
楽屋へと戻っていった。
113
:
いちご
:2012/05/25(金) 21:26:39 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
がちゃん、
5人は楽屋に戻る。
南、郁美、楓、柚希の視線が自分に降り注いだ。
ピリピリした空気に肩を震わせれば、楓が陽を睨みつける。
「僕たち、お前の引立て役でも、
バックダンサーでもないんだけど。分かってる?」
「ご、ゴメン。」
ことりは、謝るしかなかった。
114
:
いちご
:2012/05/25(金) 21:30:27 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「今日の陽は、可笑しい。」
「....。」
(だって、私はお兄ちゃんじゃないし。)
心の中でそう思ったがことりは口に出さずに、
郁美を見上げる。
「あーもー!やってらんねーよ!」
南は大きなため息をついた。
「お前、最近一番人気があるからって調子に乗ってんだろ!?
自分が一番目立つようにあんなアドリブまでしやがって!
仕事をなんだと思ってんだよ!?」
あわせてるこっちの身にもなれよ!と南は大声をあげた。
それに驚き、ことりは目を見開く。
115
:
いちご
:2012/05/25(金) 21:37:02 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「別に、そんなつもりじゃ...。」
「じゃあどういうつもりだよ!?
お前、この後も単独で雑誌の撮影あんだろ!?
...俺達の事見下してんのか?」
「み、見下してなんか...。」
助けを求めるように郁美に視線を向ければ、
彼も怒っているらしく、ことりから視線を逸らす。
「・・・陽、今後もこのようなことがあるなら
スカイから抜けろ。」
柚希は低く、そう言った。
「っ....。」
険悪な雰囲気が漂う中、がちゃりと楽屋のドアが開いた。
「スカイのみなさん、お疲れ様です!
いやあ、今日の収録は良かったですよー!
陽さんのおかげですね!」
「き、木村さん...。」
マネージャーの木村は、空気を読まずに
笑顔で無神経なことを口にする。
116
:
いちご
:2012/05/26(土) 10:11:08 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「で、陽さんはこの後すぐに移動になりますけど
他のメンバーの方はこちらに目を通しておいてください。」
「なんですか、これ。」
木村はメンバーある書類を手渡した。
「来月のコンサートの詳細ですよ。
丁度収録が終わったあとに社長から連絡が来まして...
新曲を一曲、追加したいらしくて...。」
「...新曲?」
「ただでさえ忙しいのに、今からじゃ無理だろ!」
今でもスケジュールはいっぱいだった。
コンサートのダンス練習もあるのに、今から新曲を入れるとなると
歌詞や振付、立ち位置。すべてを覚えなければならない。
多忙のスカイにとって、不可能に近い。
117
:
いちご
:2012/05/26(土) 10:56:43 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「大丈夫ですよ、曲自体はそれほど難しくないんで...
けど、ダンスも歌もそれぞれパートに分かれてるんで、
同じパートの人どうし、息がぴったり合わなければ成功しない曲です。」
「...まじかよ。あ、俺は郁美と柚希と同じだ。」
紙を見て、南は呟く。
「・・・ってことは、僕は、」
「楓は陽とだな。」
「・・・。」
楓はキッ、とことりを睨んだ。
「...おい、このダンス、難しくないか?」
柚希が呟く。
メンバー全員が紙に目を通し、目を見開いた。
アクロバティックのような振付が多すぎる。
しかも、同じパートどうし息があわなければ
失敗しそうなものばかりだった。
118
:
いちご
:2012/05/26(土) 17:46:53 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「まあ、頑張ってくださいね。
スケジュールの関係で、新曲のレッスンは明日とコンサートの二日前しか
ないんですよ。各自自主練でどうにかしてください。」
「げ...。」
「あ、陽さん!後で迎えに来ますんで、
それまでに着替えておいてください。」
「は、ハイ...。」
木村は言いたいことだけをいうと、楽屋をでていった。
楽屋は沈黙する。
「ハァー、ま、決まったことはしょうがねえよな!」
「練習しかないな。」
南と郁美の言葉に、柚希は頷く。
「この後、郁美と柚希は予定空いてるか?」
「夜なら空いてる。」
「俺も。」
「なら3人で夜から練習しようぜ。」
南の言葉に二人は頷いた。
119
:
いちご
:2012/05/26(土) 19:08:42 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「...僕帰る。」
楓はそんな3人を横目に、
さっさと着替えて楽屋を出て言ってしまった。
ことりはどうすればいいのかわからず、
茫然としていた。
――――
―――――・・・
「....ハァ。」
場所は変わり、車の中。ことりは大きなため息をついた。
「お疲れ様、ことりちゃん、
思ってたよりどうにかなってよかったよー。」
運転席に座るのは、マネージャーの木村。
「どうにかなんて、なってないですよ。」
状況は凄まじく悪化しました、とことりは呟いた。
120
:
いちご
:2012/05/27(日) 14:59:57 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「...でも、大丈夫だって!」
「どこがですか!やっぱり私、お兄ちゃんの代わりに仕事するの
今日でやめます!こんなの、絶対無理です!
メンバー同士もそんなに仲良くないし、
私、嫌われてるし...来月のコンサートなんて、聞いて、ないし...。」
だんだんと声が小さくなっていく。
そんな彼女を見て、木村は苦笑した。
「陽君も、初めは今のことりちゃんみたいだったなあ。」
「え?」
「何度も仕事で失敗して、移動中に泣きながら弱音を吐いて、
そのたびに、もうこの仕事やめたいって言ってたよ。」
懐かしいなあ、と木村は言う。
家では仕事をやめたいなんて一言も言っていなかった。
いつも、楽しい と言っていたのだ。
自分や母親を心配させない為に、
ずっと弱音を吐くのを我慢していたのかもしれない。
ズキン、
ことりの胸が痛んだ。
121
:
いちご
:2012/05/27(日) 15:07:25 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「だから、大丈夫だって〜。慣れないのは最初だけだしさ、
ことりちゃんならイケる。」
「どこからその自信がくるんですか。」
「まあまあ。...ことりちゃん、もう少し頑張ってくれないかな?」
「...え、」
「無理そうな仕事は、できるだけ断って
ほかのメンバーにまわすし、...お願い。」
鏡越しにうつった木村の顔は真剣だった。
「....。」
ことりは迷う。
このまま自分が陽の代わりを務めていても、きっと、いつか限界がくる。
しかし、今まで誰かに頼られたことがなかったことりは
嫌だと思う反面、嬉しいと思う気持ちがあった。
122
:
いちご
:2012/05/27(日) 16:58:06 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「でも...。」
「こんな事を頼れるのは、ことりちゃんしかいないからさ。」
自分は頼られている。
(...どうしよう。)
ことりは悩んだ。
それを察した木村が、彼女を安心させるように笑った。
「大丈夫。本当に無理だと思ったら、
また俺に言ってくれればいいから。」
「...ハイ。」
木村に良いように言いくるめられてしまった。
中途半端な自分に嫌気がさし、視線を窓の外へと向けた。
123
:
いちご
:2012/05/27(日) 21:37:17 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
そしてふと脳裏に浮かんだのは自分と同じパートになったことが
気に食わなかったらしく、一人で先に帰ってしまった楓の事。
南や郁美、柚希は今夜3人で練習するらしい。
「...木村さん、やっぱり私も楓くんと練習した方がいいですか?」
「え?新曲のダンスの事?」
「はい...えと、佐野君たちは練習するみたいだし...。」
「佐野君...ああ、郁美さんの事か。
それはことりちゃんの判断に任せるよ。あ、あとコレ。」
「?...。」
思い出したように木村は片手で鞄から携帯を取り出した。
「これ、陽さんの仕事用の携帯。
借りてきたから連絡を取るときはこれを使って。
あと、陽さんは他のメンバーの事を名前で呼び捨てにしてたから
ことりちゃんもそうしてね。」
「は、ハイ。」
少し戸惑いがちに携帯を受け取った。
124
:
いちご
:2012/05/27(日) 21:45:14 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
゜.:。£+゜写真撮影゜£+゜.:。
「さあ、ついたよ。」
車が停止し、次の撮影場所についた。
ことりは息を飲む。
雑誌の撮影。うまくできるかどうかわからない。
緊張した面持ちで車を降りた。
「今日は野外撮影になるよ。」
「野外撮影?」
「うん、町にでての撮影。」
町に出ての撮影と聞いて、ことりは青ざめた。
町にはたくさんの人がいる。
その中で写真撮影をするなんて緊張するどころの話じゃない。
「っ...無理です!」
「無理じゃないって〜、ほら、これに着替えてメイクさんに
メイクしてもらってきて。」
木村は陽に衣装を差し出すと、楽屋へと押し込んだ。
無言で衣装を見つめ、ハァとため息をつくと仕方なく着替え始める。
125
:
いちご
:2012/05/29(火) 21:42:58 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
(大丈夫、撮影は今日だけだ、大丈夫。)
自分に言い聞かせ、落ち着かせる。
着替え終わり、鏡に自分の姿をうつして改めて 陽 そっくりなことに驚く。
コンコン、
ノックの音が聞こえて返事をすると、
外からメイク担当の女性が入ってきた。
――――
―――――…
そして、メイクが終わると木村が再び現れた。
「陽さん、時間です。」
「...ハイ。」
力なくそう返事をすれば、木村は陽の肩を数回たたいて
頑張れ と言葉をかける。
少しだけ肩の力が抜けたような気がした。
まずは、スタジオをでてすぐのところにある公園で撮影をするらしい。
公園についた瞬間、スタッフがテキパキと用意をし始めた。
126
:
いちご
:2012/06/03(日) 10:51:39 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「ねえ、あれってスカイの陽じゃない?」
「え?マジで!?うわーっ、超カッコイイ!」
通りすがりの一般人は、陽の姿を見つけると
黄色い声をあげながら集まってくる。そしてすぐに人だかりができた。
スタッフが、撮影に邪魔にならないように注意をしている姿が目に入る。
「キャー!陽くんこっちむいてー!」
声をかけられて振り向けば、さらに歓声は大きくなった。
(...さすが、お兄ちゃん)
やっぱり人気は絶大だ。
「陽さん、始めますよ。」
「あ、はい。」
準備ができたのか、スタッフが声をかけた。
「よろしく、陽くん。」
人懐っこい笑顔をしたカメラマンが挨拶をしてくる。
ことりはすかさず頭を下げた。
「よろしくお願いします。」
127
:
いちご
:2012/06/03(日) 11:48:36 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「じゃあまず、普通に好きなポーズをとってみて。」
「っ、え。」
好きなポーズ、と突然言われて困惑することり。
さすがに雑誌の撮影でピースはまずいだろうと思い考えたが思いつかない。
それを見てカメラマンが指示をだした。
「いつもならパッとできるのに、今日は調子が悪い?」
「す、すいません...。」
いつもなら、と言われてもことりが知るわけがない。
困ったような表情をすればパシャ、と一枚撮られた。
そのことに驚いているとまた一枚撮られる。
「そのまま歩いてみて。」
「え?歩くんですか?」
「うん。」
言われるがまま歩けば、カメラマンは何枚も写真を撮っていく。
128
:
いちご
:2012/06/03(日) 15:23:04 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
思っていたより緊張はしなかった。
ぶわぁ、と風が吹き、ことりは無意識に髪をおさえる。
本来の自分は髪が長いため、いつもの癖でおさえたのだが
髪に触れてはっとする。
パシャ、パシャ、
「陽くん、今日はいつもより落ち着いてるね〜。」
「そう、ですか?」
「うん、カッコイイっていうか、可愛いよ。」
その言葉に思わず振り向き、カメラマンを見る。
可愛い、と言われたのは初めてだった。
嬉しくなって自然と笑顔になる。
最後に一枚、その表情をカメラにおさめた。
129
:
いちご
:2012/06/03(日) 15:36:05 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
公園での撮影が終わり、
スタッフ全員で撮れた写真をチェックする。
「今日の陽君、表情がぎこちないな。」
スタッフの一人がそういうと、他の人も頷いた。
「いつもの陽さんじゃないみたいですね。」
何かありました?とスタッフが聞いてきた。
「い、いえ...何も...。」
そう答えるのが精一杯で、ことりははにかむ。
「まあ、いいじゃないですか。
次の撮影場所に移動しましょう。」
「は、はい。」
木村は 行きますよ、 とことりに声をかける。
「えー!行っちゃうの!?」
「陽くーん!」
ファンの声が聞こえて、自分が注目されてるのだと強く実感した。
車に乗り込むとき、ふとファンの群れを見る。
小さく手を振ると、歓声がさらに大きくなった。
130
:
いちご
:2012/06/06(水) 19:52:19 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
♪〜♪〜
移動中、渡された仕事用の携帯が鳴った。
メールが一件、来ている。
「・・・。」
見てもいいのかな、と思いつつも受信ボックスを開くと
そこには郁美からのメールが届いていた。
”プライベート用の携帯、電源切ってるの?”
プライベート用の携帯は陽が持っている為に、
連絡がつかないのは当たり前だ。
ことりは少し考えて、
”プライベート用の携帯が壊れたから、
しばらくは仕事用の携帯しか使えない。ゴメン。”と送る。
すると数分後に返信が来た。
”了解。話したいことがある、会えないか?”
「・・・。」
どうしよう。ことりは悩んだ。
131
:
いちご
:2012/06/07(木) 18:50:45 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「木村さん、雑誌の撮影が終わった後って予定ありましたっけ?」
「いや、無いよ。早くいけば夕方には終わる。」
「わかりました。」
郁やメンバーとは、あまり仲がいいとは言えない気まずい状況なのだ。
郁が話をしたいと言っているなら、話をするべきだろうと考えて
18時からなら空いてる、と言った。
"じゃあ、18時に。いつものスタジオの前で"
それを見て、了解と送ると携帯を閉じた。
気まずい雰囲気が少しでも良くなるといいと思う。
132
:
いちご
:2012/06/07(木) 18:53:01 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「ついたよ、ことりちゃん。」
「...え。」
ついた場所を見て、陽は大きく目を見開いた。
自分が通っている学校だったのだ。
「な、なんで、ここ...。」
「特別に許可をとって、学校の中で撮影をすることになったんだ。
スカイの陽も、普段は普通の男子高生っていう事を
アピールしようと思ってね。」
「...。」
ああ、気まずい。
本来なら今日、ことりはこの学校に登校しているはずなのだ。
なのに自分は陽の姿で、今、ここにいる。
133
:
いちご
:2012/06/07(木) 20:54:27 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「ああ、ここ、ことりちゃんが通ってる学校だっけ?」
「は、はい...。」
「大丈夫、誰もことりちゃんなんてわからないよ。」
ほら、行くよ。と言い駐車場に車を止めて降りる。
ごくり、ことりは生唾を飲みこむと、重い足取りで木村の後に続いた。
―――
――――…
スタッフが校長に挨拶をしている間、ことりは学ランに着替える。
そして軽いメイクをしてもらうと撮影に入った。
今は昼休みの時間の為に、生徒達が集まってくる。
「え?マジでスカイの陽!?」
「うわー、カッコイイ!後でサインもらおー!」
聞き覚えのある声に振り向けば、同じクラスの女子生徒。
自分を馬鹿にしていた奴等だった。
134
:
いちご
:2012/06/07(木) 20:56:53 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「アイツ、今日休んでてよかったね。」
「それわかるー!」
アイツ、とは自分の事だろう。
なんだか無償に腹が立ってきた。
「陽君、普通に歩いて、教室に入って好きに動いて。」
「っ、ハイ。」
生徒達の視線をあびながら、
ことりは教室へと足を踏み入れた。
好きなように動いて、と言われてもどうすればいいのかわからない。
ことりはとりあえず、窓際の一番後ろに座った。
その場所は、ことりの席がある場所でもあった。
それを見て、黄色い歓声をあげていた女子生徒は黙り込む。
135
:
いちご
:2012/06/09(土) 13:49:16 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「...。」
頬杖をついて、窓の外を眺めた。学校でいつも自分は一人だった。
誰もことり自身を見てはくれない。色々な事を思いだし、急に切なくなった。
今思えば、ちゃんと自分を見ていてくれたのは、
陽だけだったのかもしれない。
(それなのに、私は...。)
窓から入る風がことりの髪を靡かせる。
差し込む太陽の光が、ことりを引き立たせる。
「っ、」
思わずその場にいた全員が息を飲んだ。
カメラマンでさえ、茫然とことりを見ている。
「ことりちゃん...。」
木村は、誰にも聞こえない声で呟いた。
136
:
いちご
:2012/06/09(土) 14:00:45 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
今のことりは、陽ではない。
カシャ、カシャ、
カメラマンはハッとして数回シャッターを押した。
「陽君、その場所に何か思い出があるの?」
カメラマンに問われ、ことりは顔をあげる。
「...いえ、特には。」
「独特の雰囲気がでてる、綺麗だ。
そのままこちらに歩いてきて、教室から出て。」
「はい。」
ゆっくりと立ち上がり、歩いていく。
自分に向けられる冷たい視線を思いだし、自然と手が震えた。
カシャ、カシャ、
「いいねー、告白する前みたいな緊張感がある。」
「えっ///」
全くそんなつもりはなかった為に、ことりの頬は赤くなった。
カシャ、
「〜っ///」
色々思いだし、感傷に浸っていたのが馬鹿みたいだ。
ことりはガラ、と扉を開けると教室を出た。
137
:
いちご
:2012/06/09(土) 14:21:29 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
それから、写真撮影はあっという間に終わった。
初めは緊張したものの次第に慣れてきて
色んな表情を出せるようになる。
カシャ、
最後の一枚を撮り終わり、カメラマンは満足したような笑みを向けた。
「陽君、お疲れ様。今日の陽君はよかった、いつもの雰囲気とは違ったからね。」
「あ、ありがとうございます。」
「次もよろしく頼むよ。」
ポン、とカメラマンに肩に手を置かれてことりは驚く。
「お疲れ様です。」
木村はすぐにことりのもとに駆け寄り、笑顔を向ける。
「今日の仕事は終わりだよ。」
「お疲れ様です。」
今の時間は午後4時。
たしか、郁美との待ち合わせは午後6時。
余裕で間に合うだろう。
138
:
いちご
:2012/06/09(土) 14:30:05 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「陽くーん!」
黄色い歓声をあげる女子生徒には、ことりは目を向けなかった。
ことり自身、嫌いだからだ。
いつもの陽なら振り向いて愛想笑いを浮かべるだろう。
「ことりちゃん、ファンサービスも立派な仕事なんだよ。」
耳打ちされてことりはため息をつきたくなった。
ことりは振り向き、今日一番の笑顔を向ける。
「俺の事、見ててくれてありがとう。
これからも応援よろしくね。」
「「キャーーー!!!!」」
爆発的な悲鳴に耳を塞ぎたくなったが、ことりは耐えた。
「これでいいんでしょ。」
「上等です。」
木村はことりを連れて、スタッフ達に挨拶をしながら控室に向かった。
139
:
いちご
:2012/06/09(土) 14:59:26 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
゜.:。£+゜ダンスレッスン゜£+゜.:。
「お疲れ様です。」
控室で着替えて、ことりは帰る仕度をした。
この後はもう仕事がない。
「ことりちゃん、家まで送ってくよ?」
「この後予定あるんで、いいです!」
「そう?じゃあ、お疲れ。明日の18時からのダンスレッスン忘れないでね」
「わかりました。...あ、木村さん!」
「何?」
ことりはひとつ、気になったことがあった。
「学校って、どっちの学校に通えばいいんですか?」
「ことりちゃんは、ことりちゃんが通っている学校に通っていいよ。
陽さんが通う学校には長期休暇の届を出しておいたから。」
陽が通う学校は、芸能人が多く通う学校らしい。
郁美、南、楓も陽と同じ学校に通っている。
「そうなんですか...じゃあ、もう行きます。お疲れ様でした。」
もう一度丁寧に挨拶をすると、木村は笑顔でことりに手を振った。
140
:
いちご
:2012/06/09(土) 15:13:13 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
学校から、郁美との待ち合わせ場所までは近い。まだ結構時間はある。
なんとなく、兄の事が気になった為に病院に向かうことにした。
―――
――――…
病院に入り、まっすぐと陽の病室に向かう。
受付のナースが驚いたような表情で
自分を見ていたことには気づかない。
ガラ、
病室には、母親はすでにいなかった。
きっと帰ったのだろう。
ベッドで気持ちよさそうに眠る陽を見て不思議な気持ちになる。
「お兄ちゃん...。」
何故か、兄の事を嫌いだとは思わなくなっていた。
今日、兄がしている仕事を身をもって体験したからだろうか。
知らないところで苦労しているんだと理解できた。
「私、今、お兄ちゃんの代わりに仕事してるんだよ...。」
聞こえているかわからないが、話しかける。
「いままで、ごめんね...。」
ぽたり、
ことりの瞳から、涙が落ちた。
141
:
いちご
:2012/06/09(土) 19:13:10 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「私、お兄ちゃんの事、何も知らなかった...。」
陽の手を握り、ことりは続ける。
「...でね、お兄ちゃんが戻って来やすいように
私、仕事も頑張るから...はやく、目を覚ましてね。」
反応がない陽を見て、ことりの表情はさらに歪む。
これ以上涙が零れないように、口をぎゅっと紡ぐ。
腕で涙をふいて、ことりは笑顔を見せた。
「お誕生日おめでとう、お兄ちゃん―――…」
142
:
いちご
:2012/06/09(土) 19:13:29 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「...。」
奥村楓は、自室のベッドで寝転んでいた。
(陽と同じパートなんて、嫌だ)
頭の中にあるのは、そのことばかり。
しかし、二人で練習しなければきっとダンスは成功しない。
「....明日、同じパートのメンバー変えてもらうように
頼もう。」
楓はそう呟き、瞳を綴じた。
143
:
いちご
:2012/06/09(土) 19:17:19 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
――
――――…
もうすぐ待ち合わせの時間だ。
ことりは病院を出て、郁美に言われた場所に向かう。
ここからすぐの場所の為に、5分でついた。
少し早くつきすぎてしまったらしい。
郁美はまだいなかった。
しばらくすると、郁美が歩いてくる。
帽子を深くかぶり、バレないように配慮しているらしい。
「陽。」
静かに名前を呼ばれ、ことりは駆け寄る。
「お前馬鹿か?少しは気をつかえ。」
ほら、と郁美が持っていたサングラスを無理やりつけられる。
「あ、ありがとう。」
ドキ、
心臓が高鳴ったのは気のせいではないだろう。
収録の時は緊張で、何も考えられなかったが
改めて郁美を見ると格好良い。
ぼうっと見とれていると、郁美はことりの頭を叩いた。
144
:
いちご
:2012/06/09(土) 19:36:12 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「そこ座ったら?」
「う、うん。」
郁に言われて近くのベンチに座る。
「...なあ、陽。」
「何?」
「今日のお前は、お前らしくなかった。」
「...ごめん。」
「過ぎたことはもういい。お前、何かあったのか?
このあいだレッスンしていた時はダンスも歌も、トークも完璧だった....。
今日の陽は、可笑しい。信じたくないけど...
もしかして、南や楓が言ってた通り、俺達を馬鹿にしてんのか?」
「違う!絶対違う!」
ことりはばっと立ち上がり、ベンチに座る郁美と向き合う。
145
:
いちご
:2012/06/09(土) 19:48:11 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「ッ...お、俺はそんなつもりはない!
今日はただ調子が悪くて、ダンスと歌詞、ド忘れしただけで
次はちゃんと、頑張るから!」
「陽....。」
「郁美、ゴメン!」
「っぷ、ハハハ!」
いつもクールな彼が、声をあげて笑ったことに
ことりはキョトンとする。
「何必死になってんだよ。
陽はそんな奴じゃないって、分かってる。
俺も、今日は言いすぎた。悪かった...頬、大丈夫か?」
郁美は手を伸ばし、ことりの頬に触れた。
「だ、大丈夫///」
郁美は綺麗に微笑むと、ことりの頬から手を離した。
146
:
いちご
:2012/06/09(土) 19:55:19 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「何かあったら相談しろよ。」
「うん、ありがとう郁美。」
「....。」
ことりが微笑めば、郁美はじっと彼女を見る。
「な、なんだよ...。」
「お前、本当に陽か?」
「え?」
ドキン、先ほどとは違う緊張感がことりを襲った。
(ば、バレてる...?)
「な、何言ってんだよ。陽に決まってるだろ。」
「そう、だよな。」
いつもと違う陽の雰囲気に戸惑う。
いつもとは少し違う、甘い香りと少し子供っぽい
女の子のような表情にドキドキした。
147
:
いちご
:2012/06/15(金) 19:42:07 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「郁美?」
陽の色っぽい唇に、無意識に視線が向いてしまう。
「〜っ///」
陽の事を 可愛い、と思ってしまった。
「俺、この後南達と練習するから...もう行くよ。」
「あ、うん。」
「分かってると思うけど、お前も楓と練習しろよ。」
「わ、分かってるよ!」
「じゃあ、また明日な。」
早口で郁美は告げると、ことりを一人残して走っていってしまう。
「...。」
途中、郁美の様子が少し可笑しかった気がしたが、
仲直りできてよかったと思った。自然と頬が緩む。
「あ、そうだ。」
気はのらないが、楓と練習しなければいけないんだった。
でも、練習する前に自分は基本的なダンスも踊れない。
まずは自分ひとりで自主練習した方がいいと考え、
参考書を買おうと近くの本屋に向かった。
148
:
いちご
:2012/06/15(金) 19:44:40 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
――――
―――――…
「ただいま。」
家に帰宅したのは、夜8時だった。
今日は色々ありすぎて、クタクタになったが休んでいる暇はない。
「ことり、お帰り。」
「...うん。」
ことりはウィッグとサラシを取る。
解放感と脱力感が彼女を包んだ。
「ご飯できてるわよ。」
「後ででいいよ。やることあるから。」
「そう?あ、今日のお仕事どうだったの?大丈夫だった?」
「う、うん。大丈夫だった、じゃあ私行くから!」
母親を適当にあしらうと、大きな袋を抱えて自室へと向かった。
149
:
いちご
:2012/06/15(金) 19:47:49 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
ドサッ
買ってきた大量の参考書、
スカイのCDとコンサートDVDを床にバラまく。
「っ、」
(練習しなきゃ。)
もう、今日の収録みたいなことは通用しないだろう。
なら、やるしかない。
並大抵の努力ではどうにもならないことは薄々わかっている。
これ以上メンバーに迷惑をかけたくない。疲労感を我慢して、ことりは、
「はじめてのダンスレッスン」という参考書を手にした。
150
:
いちご
:2012/06/15(金) 19:52:41 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「な、何これ...。」
良くわからない。一人で練習していても、
それであっているのかすらわからない。でも、聞ける人がいないのだ。
「疲れた...。」
無意識に呟く。
「あー、もー。」
ぼふっとベッドに倒れ込んだ。
「...郁美くん、」
脳裏に浮かぶのは、郁美の姿。
彼の事を考えると、少しだけドキドキする。
郁美や、メンバーの為に、頑張ろう。
陽が築き上げてきた立場を、自分が護らなければならない。
ことりは再び起き上がると、練習を始めた。
151
:
いちご
:2012/06/15(金) 19:55:59 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
―――
――――…
ぐぅうう、
「...お腹すいた。」
時計を見れば、すでに0時をすぎていた。
そういえば晩御飯、食べてなかったな。と思いリビングへと向かう。
ふとテーブルに目を向ければ、
ことりの分の晩御飯がラップされて置かれていた。
『ことり、無理しないでね。』
紙に、そう一言書かれていた。
母親の文字に心が温かくなる。
152
:
いちご
:2012/06/15(金) 20:00:22 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「......」
もしかして、母親は陽だけを見ていたんじゃないかもしれない。
いつも気づかれないよう、影で努力する陽に気づいて
心配していただけだったのかも、と思う。
もしそうだったなら、自分は大馬鹿だ。
何も知らずに、まわりにあたり散らしていただけだった。
自分は、何も知らない子供だった。
「、っ」
ことりは椅子に座ると、ラップをとり遅めの晩御飯を食べ始めた。
(食べ終わったら、また頑張ろう。
もう少し練習すれば、あのステップができるようになるし...。)
―――少しずつ、ことりは変わり始めていた。
153
:
いちご
:2012/06/15(金) 20:22:30 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
―――
――――…
チュン、チュン、
小鳥の囀りが聞こえ、朝日が差し込む。
「...あ。」
気づけば朝になっていた。
練習に夢中で、全く気が付かなかった。
寝ていないせいで、頭が重くぼんやりしている。
ぼうっと時計を見れば7時30分。
「っ、学校!」
ハッと思いだし、ことりは急いで風呂へ向かうと入る。
風呂から上がると、バタバタと用意をし始めた。
154
:
いちご
:2012/06/15(金) 20:29:00 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「行ってきます!」
目の下にできてしまったクマを気にしつつ、ことりは家を出た。
しかし、頭の中はダンスの事ばかり。
昨日覚えたステップとダンスを忘れないように、何度も思い出す。
「あ、森山先輩!」
「?」
突然声をかけられ振り向けば、
同じ制服をきた女子生徒がいた。
「な、何?」
普段学校であまり声をかけられない為に戸惑いながら
返事をすると、彼女は嬉しそうに笑った。
155
:
いちご
:2012/06/15(金) 20:32:44 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「昨日、学校で撮影してたよね。」
「え、どういうこと?」
「あなたの双子のお兄さん。あたし見たよ!」
「あ、そうなんだ...。」
ことりは驚きつつ、彼女を見る。
「私、高1の奥村彩乃。よかったら、友達にならない?」
(...奥村?)
聞いたことある苗字に、少し考える。
「...いきなり友達って言われても。」
困ったような表情を見せると、彩乃は残念そうな表情を見せた。
「私...モデルしてるから、あんまり学校にこれなくて...
友達少なくて...。だから、森山先輩と友達になれたらいいなって
思ったんだけど...。」
やっぱり、急には無理だよね。と寂しそうな顔をした。
156
:
いちご
:2012/06/16(土) 19:02:52 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
なんだか自分が悪いことをしているような気がして、
ことりは慌てて訂正した。
「わ、私でよかったら!是非!」
「わあ、本当!?」
ありがとうっ!と彩乃はことりの両手を掴んだ。
「アドレス教えてくれない?」
「あ、うん。」
携帯を取り出し、赤外線通信をして連絡先を交換する。
彩乃は長い髪を耳にかけるしぐさを見せて、
交換が終わるとにっこり笑った。
157
:
いちご
:2012/06/16(土) 19:14:13 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
(...誰かに、似てるような)
「実はね、あたしのお兄ちゃんもスカイのメンバーなんだ...
あ、これ内緒にしてね。」
「うん...って、ええええ!?」
「森山先輩!声でかいよ!」
彩乃は慌ててことりの口を手で塞ぐ。
「モデルになったのは、自分の実力なのに...
兄のおかげでなれたって、思われたくないからオーディションの時から、
ずっとまわりにはスカイにお兄ちゃんがいるってこと秘密にしてるの。」
「そ、そうなんだ...。」
ことりは驚いて目を見開く。
誰かに似ているとずっと思っていたが、そうだったんだ。
158
:
いちご
:2012/06/16(土) 19:26:27 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
(か、楓君に似てる...。)
子供っぽい、人懐っこい可愛い笑顔がそっくりだと思った。
「なんか、森山先輩とは仲良くなれそうだし、よろしくね!」
「うん、宜しく。」
ことりは彩乃につられて笑う。
そのまま、一緒に登校することになった。
玄関で彩乃と別れ、一人教室へ向かう。
ガラ、
教室のドアを開けたとたん、
数人のクラスメイトが駆け寄ってきた。
「森山さん!」
「っ!」
驚いて目を見開けば、女子生徒は更に詰め寄る。
「1年のモデルの、奥村彩乃と登校してきたでしょ!?」
「えっ、う、うん。」
「聞いてほしいことがあるんだけど。」
有無言わせない、圧力のある言い方でことりを脅した。
159
:
いちご
:2012/06/16(土) 19:44:16 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「な、何...。」
言葉に詰まりながらも必死に答えると、
女子生徒はバッと新聞を突き出してきた。
「?」
「これが本当か、聞いてきてよ。」
「っ!」
今日の新聞の一面を大きく飾っていたのは、
まぎれもない陽と彩乃の姿だった。
内容は、昨日の午後7時にモデルの彩乃とスカイの陽が
ホテルに向かうところを目撃した、というものだった。
身に覚えのないことりは否定しようと口を開くが、
それより先に女子生徒が言葉を発した。
「今すぐ行ってきて。」
160
:
いちご
:2012/06/16(土) 19:47:30 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
昨日の午後7時は、本屋にいた。
なのになぜあんな一面が撮られたのかわからない。
ましてや彩乃とホテルなんて行くはずがない。
先ほど交換したアドレスに、メールを送ることにした。
''今日の新聞の事で、聞きたいことあるんだけど。''
するとすぐに返信が来る。
''今日の昼休みに、屋上で話そう''
それを見て、昼休みに話す事に決めた。
一年の教室には行かずにクラスに戻ると、
女子生徒達が集まってくる。
161
:
いちご
:2012/06/16(土) 19:56:26 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「森山さん!なんで戻ってくるのよ!」
「昼休みに話す事になったから。」
戸惑いがちになんとかそういえば、納得いかない表情を見せたが
渋々と言った感じで了承してくれた
「奥村彩乃が、もし陽君と付き合ってるなら、ただじゃおかないわ。」
「ねえ、森山さん。家で陽から何も聞いてないの?」
苛めの対象が、明らかに自分から
一年の彩乃に変わろうとしている。瞳が揺らいだ。
「き、聞いてないよ...昨日は、あ、会ってないから..。」
不自然にドモってしまう。
162
:
いちご
:2012/06/16(土) 20:20:51 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「ふ〜ん...ま、昼休みにわかることだしね。」
女子生徒はことりに笑顔を向けて、自分の席に戻っていった。
「っ...はぁ。」
ほっとしてため息をつけば、予鈴がなる。
ことりは自分の席につくと、教師にバレないように
鞄の中からダンスレッスンの本を取り出すと復習し始めた。
午前中の授業は、全く頭に入らなかった。
それもそのはず、ずっとダンスレッスンの本を読んでいたからだ。
今日は新曲の練習がある。自分だけ遅れをとるわけにはいかない。
163
:
いちご
:2012/06/16(土) 20:32:14 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「森山さん、お願いね。」
昼休みになると、女子生徒がことりの元に来てそういった。
頷き、ことりは鞄を持って教室を出て屋上へ向かう。
今日知り合ったばかりなのに、図々しくないか心配になったが、しょうがない。
キィ、
屋上の扉を開くと、すでに彩乃は来ていた。
「森山先輩!」
楓そっくりの笑顔を向ける彼女に戸惑う。
まわりにいた男子達が、彩乃に注目している中ことりは
彼女の近くに歩み寄る。
164
:
いちご
:2012/06/16(土) 20:34:11 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「どうせだから、ごはん食べながら話そうよ!」
「あ、うん...。」
彩乃はコンクリートの地面にすわり、弁当を広げた。
「奥村さんのお弁当、すごいね。」
弁当を見て、思ったことをそのまま口に出すと彩乃は恥ずかしそうに笑う。
「これ、お兄ちゃんが作ってるの。」
「え?」
「お父さんとお母さん、海外で仕事してて家にいないから。
二人暮らしみたいなものだよ。」
「そ、そうなんだ...なんか、意外。
奥村さんのお兄さんが料理できるなんて思ってなかった。」
「そうかな?...あ、そういえば森山先輩、
あたしに聞きたいことあるんでしょ?」
にっこり、
感情の読めない笑みを向けられ、ことりは戸惑う。
165
:
いちご
:2012/06/16(土) 20:36:07 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「お、奥村さん、今日の新聞に載ってたことって本当なの?
その、お兄ちゃんとホテル行ったって...。」
「先輩、昨日陽さんと会ってないの?」
「う、うん。」
自分が陽の代わりに男装してるなんて口が裂けても言えない為に、
適当に会話を合わせることにした。
すると彩乃は少し考える素振りを見せてから口を開いた。
「本当だよ。」
166
:
いちご
:2012/06/16(土) 21:13:49 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
ことりは困惑した。
昨日は自分が陽の代わりに男装して生活していた。
なのにどうして彩乃が 陽とホテルに行った と言うのかが分からない。
「...そ、なんだ。」
嘘でしょ?とは聞けなかった。
どこか思いつめるような表情で、
発言を否定させないような雰囲気に思わず躊躇う。
「まさか、撮られてたなんて思ってなかった....。」
私、陽君のファンに殺されちゃうかも。とおどけて話す彼女は
嘘をついているようには見えない。
まさか、意識不明だった兄が目を覚まし、彩乃と一緒にいたのか?
否、それはない。
だって、自分が見舞いに行ったときはピクリとも動かず、眠っていた。
167
:
いちご
:2012/06/16(土) 21:20:02 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「まあ、そういうことなの。
...私、陽君が好きだから...ごめんなさい、森山先輩。」
先輩のお兄さん取っちゃうような真似して、ゴメン。
素直に謝る彼女に、ことりは慌てて口を開いた。
「あ、謝らなくていいよ!
お兄ちゃんが誰と居たかなんて、私と関係ないし...
それに、奥村さんなら...いいと、思う。」
何適当なことを口走ってるんだろう、と自分でも後悔した。
その言葉を聞いた彩乃は嬉しそうに微笑み、 ありがとう と言う。
168
:
いちご
:2012/06/16(土) 21:55:22 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
♪〜♪〜、
ふいに、陽の仕事用の携帯に着信が鳴った。
それを取り出し、画面を見て焦る。
奥村 楓 からだ。
彩乃がいる前で電話をでる事もできず、
あたふたしていると不思議そうな顔をされた。
「電話、出ないの?」
「え、ああ、うん!ちょ、ちょっと電話でてくるね。」
ことりは立ち上がると、彩乃から離れる。
なるべく人のいないところに移動すると電話に出た。
男装しているときのように、少し声音を低くして話す。
169
:
Mako♪
:2012/06/16(土) 21:58:08 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
のわぁぁぁぁ!?
二人(?)の筈の陽くんに3人目が!?
こ、これは、一体……!?
いちごさん、頑張ってね!
170
:
もこ
:2012/06/17(日) 09:30:42 HOST:pc10131.amigo.ne.jp
ことり「嘘でしょ?」って聞けばよかったのにぃ〜!!
171
:
いちご
:2012/06/17(日) 14:33:34 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
Mako♪s>
感想ありがとうございます!!
最近はけっこう更新してます(*^^*)
(期末テストあるのに…)
でも頑張って書きますww
もこs>
そうですね(*´∀`)
でも彩乃©は悪役じゃないんで
多めに見てあげてくださいww
172
:
いちご
:2012/06/17(日) 14:52:37 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「もしもし。」
『今日、学校に居ないんだね。』
「え、あ、うん...暫く、学校休むことになったから。」
昨日木村に言われたことを思いだし、
そう説明すると不満そうな声が聞こえた。
『なんで?仕事?今日、わざわざ陽くんの教室行ったのに
居なかったから無駄足だったんだけど。』
刺々しい言い方にことりは思わず苦笑してしまった。
それに気づかれないように、 ゴメン と謝る。
『佐野も心配してた。』
郁美の名前を出され、申し訳ない気持ちになったが仕方がない。
今、陽はいないのだ。
173
:
いちご
:2012/06/17(日) 14:55:47 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「...うん、仕事が忙しくて...で、何か用?」
『新曲の事なんだけど、僕、陽くんと同じパート嫌だから
今日変えてもらう予定。それだけ言っとこうと思って。』
はっきりと言われたことに、ことりは驚いた。
ズキン、と心が痛む。
真っ向から拒絶され、少なからず傷ついた。
「...なんで?」
『何度も言わせる気?僕、陽くん嫌いだから。』
「そ...っか。」
自分が嫌われてしまった理由は明白だった為に、
何も言い返す事はできない。
陽がいない間に、だんだんと状況が悪化しているような気がした。
ことりは泣きたくなった。
174
:
いちご
:2012/06/17(日) 15:07:39 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
『じゃ、そういうことだからよろしくね』
プツリと切られた携帯。
ことりはそれを見つめ、泣きそうになった。
(私...どうすればいいんだろう。)
とりあえず待っている彩乃の元に向かうと、
もういいの?と聞かれる。
頷けば、 だいじょうぶ? と顔を覗き込まれた。
「だ、大丈夫。」
「今の森山先輩、昨日のお兄ちゃんみたいな顔してる。」
「え?」
「相手に言いたいことあるなら、はっきり言えば?
ため込んでても疲れるだけだよ。」
「....そうだよね。」
175
:
いちご
:2012/06/17(日) 16:07:59 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
刹那、予鈴が鳴った。
彩乃はその音を聞き、鞄を持って立ち上がる。
「あ、じゃあ私はもう行くね!
ねえ、森山先輩が良かったらこれからも一緒にご飯食べない?」
「うん。」
特に一緒に昼食をとる友達もいない為に頷けば、彩乃は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、また明日ね!」
手をひらひらと振られて、彼女は去っていく。
一人残されたことりは、弁当箱を片づけると自分も教室に戻っていった。
176
:
いちご
:2012/06/17(日) 16:09:44 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
教室に戻ると、お決まりのように
女子生徒達が自分のまわりに集まってくる。
「森山さん、どうだった?」
「...人違いだって言ってた。」
ことりは嘘をついた。
彩乃を傷つけたくはなかったからだ。
「本当に?」
「うん、昨日は仕事してたって...。」
「じゃあ、あの記事はなんなのよ?」
「合成か何かだと思う...たぶん。」
曖昧に答えると、女子生徒はことりをギロリとにらんだ。
177
:
いちご
:2012/06/17(日) 20:35:10 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「ま、今回は陽君に免じてそういうことにしておいてあげるわよ。」
納得がいかない様子だったが、女子生徒は身を引いた。
そのことにほっと息をつく。
今回は引いてくれたが、次がどうなるかわからない。
どうして彩乃が昨日、陽と一緒にいたと発言したのか、
できれば真相を調べようと考える。
ことりは、そのまま自分の席に戻ると、午後の授業の準備をしだした。
178
:
いちご
:2012/06/17(日) 20:41:25 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
キーンコーンカーンコーン、
予鈴の音で、ハッと頭を上げた。
どうやら、自分はいつのまにか眠ってしまっていたらしい。
無理もなかった。昨日は一睡もしていない。
ふと時計を見れば、授業はすでに終わっていて
下校を始める生徒達がいる。
「!」
ことりは慌てて教科書を片づけると鞄を持って教室を出た。
(ダンスレッスン行かなきゃ!)
どっとくる疲れを無視して、ことりは急いだ。
179
:
いちご
:2012/06/17(日) 20:53:25 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
ことりが学校を出ると、見覚えのある車が校舎前で止まっている。
「ことりちゃん!」
「あ...木村さん。」
マネージャーの木村が迎えに来てくれたのだ。
「斉藤、メイクを頼む。」
「ええ。」
ことりが後部座席に乗り込むと、隣に座っていた斉藤は
メイクポーチを取り出し、ことりに化粧を施していく。
黙ってされるがままになっていると、木村は口を開いた。
「ことりちゃん、ダンスの事なんだけど...
一から覚えるのは大変なんだ。並大抵の努力じゃどうにもならない。」
「...。」
ことり自身、分かっているつもりだ。
こくん、と頷くと木村は真剣な表情で言った。
「頼むよ、森山 陽 。」
丁度メイクが仕上がる。
そして胸にサラシを巻きつけると、着替えにくいが車の中で着替え始めた。
180
:
いちご
:2012/06/17(日) 21:02:32 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
暫く車で走り、ダンスレッスン場についた。
時間ギリギリだったらしく、ことりは少し慌てて会場に入る。
「ことりちゃん、頑張ってね!俺は仕事あるからもう行くけど
何かあったら連絡して!」
「はい!」
できるだけ大きな声で返事をすると、木村は笑顔を向けてから
車を走らせた。
181
:
燐
:2012/06/18(月) 19:40:23 HOST:zaq7719df3a.zaq.ne.jp
いちご>>全然ここに顔出していませんでした(-_-;)
しばらく小説読まれへんかもしれんわ…。
読むのはたぶん夏休みぐらい??
てか、夏休みも予定詰まってきてるからなるべく早く読みます<(_ _)>
182
:
いちご
:2012/07/07(土) 09:44:25 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
<燐
更新遅れてすみません(;´Д`)
ホンットすみません…
期末がありましてね…(←言い訳
読むのはゆっくりでいいよ(^^)
183
:
いちご
:2012/07/07(土) 09:59:35 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
キィ、
遠慮がちに押し扉を開けると、
中には郁美以外のメンバーがいる。
「こ、こんにちは...。」
ことりが挨拶すれば、南、柚希、楓の視線がこちらに向いた。
「...来るのが遅い。」
柚希は静かにそう言った。
時計を見れば、まだ5分前だ。
どうして遅いと言われたのかわからないことりは首をかしげたが、
喧嘩にはなりたくないため、ゴメンと謝る。
184
:
蹴球
:2012/07/08(日) 19:45:25 HOST:i219-167-175-178.s02.a018.ap.plala.or.jp
初めて見てみました。
楓 コワイ
185
:
蹴球
:2012/07/08(日) 19:45:39 HOST:i219-167-175-178.s02.a018.ap.plala.or.jp
初めて見てみました。
楓 コワイ
186
:
もこ
:2012/07/08(日) 22:35:35 HOST:proxy20008.docomo.ne.jp
待ってました!!
187
:
いちご
:2012/07/13(金) 20:54:22 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
<蹴球s
そうですね(-_-;)
私もこういうキャラ苦手です←
隣の席の人をもとに楓をつくりましたww
<もこs
わー!!( ;´Д`)
全然更新してなくてすみませんでした!!
もう部活とか勉強が忙しく過ぎて…(←言い訳
書いておきますね!
188
:
いちご
:2012/07/13(金) 20:58:55 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「...郁美は?」
「外せない用事があるから、遅れてくるらしいぜ。」
南の答えに、そうなんだ、と少し残念そうな表情を見せた。
「じゃあ、今から練習を始めるわよ〜。」
パンパン、と手を二回たたいてからレッスン場に
入ってきたのは女性だった。
「「宜しくお願いします」」
ことり以外の声が重なる。
女性は、ことりに視線を向けた。
それに気づき、慌てて頭を下げる。
「よろしくお願いします...。」
「じゃあ、最初はパートごとに分かれて練習しましょう。」
「すいません、そのことなんですけど。」
楓が一歩前に出て、発言した。
189
:
いちご
:2012/07/13(金) 20:59:50 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「何?奥村。」
「パート、変えてくれませんか。」
ズキン、
ことりの胸が痛んだ。
「駄目だ。」
しかし、それをキッパリと女性は断った。
「どうしてですか、七瀬さん。」
どうやら、ダンスを教えてくれる女性の名前は七瀬と言うらしい。
真剣な表情で七瀬を見る楓に、彼女は呆れたように言う。
190
:
いちご
:2012/07/13(金) 21:02:08 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「このパートは、奥村と森山にしかできないからよ。」
「...たしかに。俺たちがこのパートをやるとなると、身長的に無理だな〜。」
南が書類を見ながら呟いた。
メンバーの中で身長が低めの陽と楓しかできないダンスだから、
二人を選んだと七瀬は言う。
「っ...分かりました。」
楓はあきらめたようにそういうと、嫌そうな顔でことりを見た。
「...この後、開いてる?」
「う、うん...。」
「僕の家で練習するよ。」
「わかった。」
191
:
いちご
:2012/07/13(金) 21:30:01 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「じゃあ、今から一度だけ通して踊るから
それを目で見て、しっかり覚えて。」
「!?」
ことりは目を見開いた。
あまりにアバウトな練習法に驚く。
「まだ佐野が来てないから、奥村と森山のパートからするわね。」
ちゃんと見ておきなさいよ、と七瀬は言う。
頷くのを確認すると、七瀬は踊りだした。
ことりは思わず息を飲んだ。
あまりの高度な、キレのあるダンスに目を奪われる。
(じ、自分にできるわけないよ...)
ダンスを初めてまだ1日しかしていない。
基本的な動きをやっと身につけたばかりのことりにとって、難しすぎた。
192
:
いちご
:2012/07/14(土) 13:14:23 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「ここまでよ。」
「七瀬さん、ここのステップから次に動くときって
こうであってますか?」
「うん、そう。」
ことりは隣で、一度見ただけで
大体踊れている楓を見て驚愕した。
「奥村、全然なってない。」
それなのに全然駄目だと言われている。
ことりは手足が震えた。
「次、森山。やってみなさい、
アンタこういうダンス得意でしょ?」
勝手に得意にされても困る。
(ど、どうしよう...。)
出来ない。できるわけない。
この場から逃げ出したくなった。
193
:
いちご
:2012/07/14(土) 14:00:15 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「森山?」
七瀬は不思議そうな表情で自分を見る。
「っ、」
どうしよう、頭が真っ白だ。
今七瀬が踊っていたダンスを忘れてしまう。
ことりは、意を決して足を踏み出した。
昨日覚えたばかりのステップを刻む。
その光景に七瀬だけじゃなくほかのメンバーも目を見開いた。
「森山、何やってるの?」
「...スイマセン、おぼえられませんでした。」
素直にそう言って頭を下げれば、七瀬は更に驚いた。
いつもなら一度で大体を覚えてしまうのに、今日は違う。
「調子が悪いようね...もう一度書類に目を通して、
できるかぎりダンスを把握しなさい。」
「ハイ…」
194
:
いちご
:2012/07/15(日) 21:12:42 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「ハァ…」
休憩時間、ことりはため息をついた。
ダンスが難しすぎる。ことり以外のメンバーは確実に上達していく中、
一人だけ置いて行かれていた。
そんなことりを見かねた楓が、ため息交じりで近寄ってくる。
「陽君、真面目にやってる?」
ことりは汗だくの首をタオルで拭きながら、
楓を見上げた。
195
:
いちご
:2012/07/15(日) 21:15:07 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
ドキ、
「うん...ごめん。」
楓は、汗で濡れている髪と
暑さで頬が赤くなっていることりを見て、心臓が高鳴った。
動揺を隠せない楓は、ばっと視線を逸らした。
「楓?」
何処か様子の可笑しい楓を心配し、
大丈夫?と彼に触れようとした瞬間、バシ、と手を払われる。
「あ、」
楓も無意識だったらしい。
「ご、ゴメン。」
「僕こそ...。」
彼はことりを見て、小さく謝った。
196
:
いちご
:2012/07/15(日) 21:23:39 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「遅れてすいません。」
刹那、郁美が姿を現した。
「郁美、お前おせーって。」
お前がいないと全く練習になんねえ、と南は言う。
「しょうがないだろ。これでも急いできた。」
「佐野も来たことだし、練習を再開するわよ。」
再び、練習が始まる。
ことりは少しふらふらしたが、気にせず立ち上がり
最初の立ち位置へと移動する。
197
:
いちご
:2012/07/15(日) 21:25:49 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「陽…お前大丈夫か?」
「え?」
そんなことりを見た郁美が気づき、彼女に近寄る。
「顔色悪いぞ。」
「だ、大丈夫だよ。」
「無理、するなよ。」
心配そうな表情を見せる郁美にドキドキしつつ、
ことりは平常を保ち笑顔を見せた。
それからもダンスレッスンは続いたが、ことりだけ上達していない。
無理もなかった。体がついていかないのだ。
一人泣きそうになり、瞳を潤ませる。
198
:
いちご
:2012/07/18(水) 17:42:06 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「森山。」
七瀬が低い声音で彼の名を呼んだ。
「今日は帰りなさい。」
「え、」
ことりは驚いて顔をあげた。
どうして、帰れと言われなければいけないんだろう。
自分は何か間違ったことをしただろうか?
「調子が悪いのに、無理にレッスンしても意味ないでしょ。
今日の森山はダンスのキレが悪すぎよ。
今日は帰って。調子が戻ったら自主練しなさい。」
「…ハイ。」
ことりは小さく返事をした。
どうやら、いつものようなダンスではない為に調子が
悪いのだと勘違いされてしまったらしい。
メンバーも、陽の調子が悪いということに気づいていたが、
あえて何も言わなかった。
ふらふらとした足取りで自分の荷物をまとめ、肩に担ぐ。
199
:
いちご
:2012/07/18(水) 17:54:15 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「...奥村ー。」
そんなことりを見かねてか、
七瀬は練習している楓に声をかけた。
「はい。」
「送っていってやりなさい。」
「え…」
なんで僕が、と声を濁らせたが、
七瀬はもう一度力強く同じことを言った。
「奥村も、今日はそのまま帰りなさい。
同じパートの森山がいないなら練習にならないでしょ。」
たしかに、七瀬が言うとおりだ。
楓は、ハァ、とため息をついてから、荷物をまとめてことりの後を追う。
「行くよ。」
「ご、ゴメン…。」
「別に。…お疲れ様でしたー。」
「お、お疲れ様でした!」
楓につられて、ことりも挨拶をする。
メンバーが茫然とこちらを見ている中、二人は練習場を後にした。
200
:
いちご
:2012/07/18(水) 18:01:08 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
゜.:。£+゜仲間゜£+゜.:。
「陽君。」
楓の視線が突き刺さる。ことりは焦った。
自分のせいで、たったの二日間しかない新曲のレッスンを最後まで
受けることができなかったのだ。
ことりは戸惑った表情で楓を見る。
「...本当に体調悪いの?」
「ぜ、全然平気!大丈夫!」
笑顔を張り付けて彼を見れば、「なら、いいけど」 と言う。
201
:
いちご
:2012/07/18(水) 18:03:59 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
ことりの家の方向とは、別の方へ向けて歩き出す彼をみて
不思議に思った。どこかに行くのだろうか。
「ねえ、楓」
「何。」
「どこいくの?」
「僕の家に決まってるだろ。」
「え?」
「練習」
体調悪くないなら、僕の家で練習する。と言う。
本来ならダンスレッスン後に練習する予定だったのだが、
半強制的に帰宅命令が出されてしまった為にしょうがない。
202
:
いちご
:2012/07/20(金) 21:18:04 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「楓の家に行ってもいいの?」
「仕方ないでしょ。場所がないんだから」
ことりは息を飲んだ。
男の子の家には行ったことがない。
いくらダンスレッスンのためと言えど、
緊張しないわけがなかった。
203
:
いちご
:2012/07/20(金) 21:20:16 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
―――
―――――…
「ここだよ」
「でっか...。」
目の前にあるのは、大きな屋敷だった。
自分の家の3倍はありそうな楓の家に、言葉が出ない。
「何突っ立ってるの?」
「あ、今いく」
声をかけられて、慌てて彼の後につづいた。
204
:
いちご
:2012/07/20(金) 21:21:56 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
お邪魔します、と告げて中に入る。
「お兄ちゃんお帰りー」
「ただいま」
妹の彩乃の声が聞こえて、思わず肩をビクつかせた。
「あれ?お客さん?」
彩乃は足音がもう一つ聞こえる事に気づき、
リビングから顔を覗かせた。
「っえ!?な、なんで森山陽がっ...」
「新曲の練習。彩乃、邪魔しないでよ」
「う、うん」
ほら、さっさと行くよ。と言い、楓はことりを案内する。
彩乃の前を通り過ぎる時に控えめに頭を下げておいた。
205
:
いちご
:2012/07/21(土) 12:07:31 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
とある部屋の前で立ち止る。
楓はそこに入る。ことりも続いて入り、中を見て目を見開いた。
「うわあ...」
「ここ、ダンスレッスン用の部屋」
目の前にとても大きな鏡があり、
レッスン場並みの広さのそこに驚きを隠せない。
楓は鞄からレッスン用のCDを取り出すと、
近くにある大きな機材にセットし始めた。
「陽君、なんで急にダンス下手になったの?」
ズバリとそう聞かれて、戸惑う。
自分は陽ではない、そう言ってしまえば楽なのにそれはできない。
なんて言おうか悩んでいれば、楓は大きくため息をついた。
「ま、どうでもいいけど。僕と同じパートになったからには
ちゃんと完璧にしてよね」
「...うん」
ピ、と再生ボタンを押すと音楽が流れ始めた。
206
:
いちご
:2012/07/21(土) 12:17:05 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
ことりは楓の隣に立ち、始まるのを待つ。
足元がふらふらするが、休んでいる暇はない。
眠気と怠さと疲労が一気にことりに襲い掛かる。
「っ、」
唇を噛みしめて、なんとか堪えた。
「笑顔」
隣の楓に言われて、慌てて笑顔を張り付けた。
無理やり張り付けたぎこちないそれに、楓は無言でことりを見る。
207
:
いちご
:2012/07/21(土) 12:29:44 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「や、る、気、あ、ん、の?」
むぎゅう、とことりの両頬を引っ張る。
「いひゃい.…」
「いい加減にしてよね。
足手まとい、役立たず。時間は限られてんだよ、
その中で完璧にしなきゃいけないのに」
楓は本気なんだ。自分の仕事に誇りを持っている。
だから、嫌いな自分とでも文句言わずに練習している。
ことりは、頬の痛みに涙目になりながらも、もう一度決意を決めた。
(完璧に、ダンスが踊れるようにしよう)
彼女の目つきを見て、楓は満足したのか解放する。
208
:
いちご
:2012/07/21(土) 12:33:27 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―――陽君は、僕の憧れなんだから」
「え?」
ぽつりとつぶやかれた言葉は、
ことりに届くことはなかった。
209
:
いちご
:2012/07/27(金) 19:20:13 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
それから2時間、心を入れ替えたからか、
ことりは急激に成長していた。
なんとか楓のダンスについていけるようにまでなる。
曲が終わった瞬間、ことりはその場に座り込んだ。
「はぁー、はぁー、」
「陽君、このくらいで疲れてんの?」
いつもなら、疲れていても休憩時間も
一人で練習しているくらい努力しているのに。
「――…陽君?」
彼女の頬が赤く火照っていることに気づく。
210
:
いちご
:2012/07/27(金) 19:28:04 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「よ、陽くん…」
何処か焦点があわない瞳をしていた。
楓は彼女の視線に合わせてしゃがみこみ、額に手を触れた。
「――ッ熱」
ことりは熱を出していた。
昨日からずっと無理をしていたせいだろう。
「…家まで送る」
「立てる?」と楓はことりの腕を掴んだ。
彼女の腕の細さに驚き、目を見開く。
こんなに陽は筋肉が無かっただろうか。
「…ッ!?」
ことりは限界だったのか、ガクッ と、その場に倒れ込んだ。
211
:
いちご
:2012/07/28(土) 13:32:38 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
苦しそうな呼吸を繰り返している。
これにはさすがにヤバイと感じた楓が、慌てる。
とりあえず、ここから一番近いリビングのソファーに寝かそうと思い
ことりの体を横抱きにして持ち上げた。
男を横抱きにするなんて、と内心思ったが文句は言ってられない。
持ち上げた瞬間、想像していたよりもずっと軽い彼の体に
楓は目を見開いた。
212
:
いちご
:2012/07/29(日) 11:56:52 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「彩乃!」
「どうしたのお兄ちゃんって、陽君!?」
リビングに入ってきた、楓に抱えられていることりを見て
彩乃は声をあげた。
「熱があるみたいなんだけど」
楓はソファーにことりをそっと置きながら言った。
彩乃は陽の額に手を当てて、驚く。
213
:
いちご
:2012/08/03(金) 12:41:26 HOST:ntiwte023008.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「…お兄ちゃんは陽君の洋服着替えさせてあげてて!
汗でべたべただから余計に風邪が悪化しちゃう!」
「う、うん」
「あたしは冷えピタと風邪薬とってくるから後はよろしくね!」
テキパキと動いている彩乃を見て、
楓はさすがだと思った。
リビングを出て行った彩乃を確認してから、
近くにたたんで置いてあったスウェットの上下を手に取る。
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