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箱庭少女の紫蝶々

11來夢 奏 ◆ptZpvaYoVY:2011/08/04(木) 16:37:51 HOST:i118-16-154-61.s10.a021.ap.plala.or.jp

 風がさらさらと吹いていて、あたりはガヤガヤと騒ぐ声が聞こえる。舞台裏にはすでに音羽と羽鳥しかいない。小鳥と日和は先に帰ってしまったようだ。
ふと音羽の母である、神音 アンネ(カミネ)が濃い紫色のセミロングの髪を揺らし舞台裏にくる。パッと瞬発的に無表情から明るい顔に移す音羽。アンネはオレンジ色の瞳を輝かせながら近付いてくる。音羽はニコニコと笑顔を浮かべると「どうしたの、お母様」と問い掛ける。するとアンネもニコリと笑って音羽の耳元で「あと一週間後、羽鳥君の誕生日でしょう?だから星条家は準備があるらしいからうち(神音家)に泊めることになったのよ」と呟く。
 そうだ、来週は十二月二十四日だ、と音羽は考える。て言うか一週間も準備いらないでしょう、と再び思いつつ「分かった」と呟く。冷たい空気がサァーッと音羽の風にあたる。アンネは手っ取り早くさっさと羽鳥に上手くごまかしをいれて説得する。羽鳥が縦に頷いたところで「じゃあ、準備をしてくるから。今は七時だから、祭りの終わり(九時)までには呼びにくるわね」と言いのこして家へ帰って行った。


 特にやる事もなく、羽鳥の後ろをゆっくりと付いていく。薄い紫色の蝶々の髪飾りを見つめてギュッと唇を噛み締める。

 音羽は髪飾りを再びポケットにしまい、取り合えず羽鳥の後を付いて行く。行く当てもないがぶらぶらと歩く。ふと羽鳥が振り返ると「どっか行きたいとこある?」と音羽に問い掛ける。音羽は表情を一切変えず「ありません。まず終わったらすぐ帰るつもりでしたから」と相変わらずひんやりとした冷たい口調で告げる。
羽鳥はうーん、と考えると近くにあった椅子に座る。音羽に隣に座るように言うが絶対拒否、と言いたそうな顔をして羽鳥も諦める。数分間無言が続き沈黙が訪れる。その沈黙を破ったのは意外なことに音羽であった。

「……あなたは何故、そんなに私にしつこいのですか」
「何で、でしょうね。“婚約者”だからじゃないですか?」
「私はあなたを“婚約者”と認めていません。私にとってあなたは私の知人です。私の婚約者と言える人はーー。………いえ、何でもありません」

 音羽は静かに口を紡ぐ。若干うつむき、羽鳥と決して目があわないようにする。
羽鳥は音羽の言いたいこと、言いたかったことを察したように「そうですか……。では待つとしましょう」と静かに言う。音羽は深くため息を付き「待たれても意味がありませんよ」と呆れたように、確信したように言った。羽鳥が微かに笑みを浮かべると「いつでも待ちますよ。あなたと私が婚約者だと、あなたが思えるようになったら合図を下されば良い」と笑みをずっと浮かべながら静かに言う。

「絶対あり得ません」
「“絶対有り得ない”を可能にさせるのが私流ですからね」

 音羽は深くため息をつくと名前を呼ばれた。ふと声をした方へ見ると暗闇に浮かび上がる金色の髪が見える。音羽は目を見開きギュゥッと強く唇を噛み、苛立ちを押さえる。金髪を太股までウェーブを掛けて伸ばした髪、漆黒の黒い瞳にパーティー用のようなドレスを着た女性、星条 南音(セイジョウ ナミネ)こと羽鳥の母親がいる。

「お……ば様、今晩は」

震える声で挨拶をすると、南音は微笑み「ええ、今晩は。元気だったかしら?」と問い掛けて「ええ、もちろんです」と答える。羽鳥は焦ったような顔をし「で……どうしたの母さん」と用件を早く聞き出そうとする。

「あ、そうそう。もう準備が終わったから帰って来ても良いよ、って音羽ちゃんのお母様から」

 音羽はカタカタと震えながら「あ……了解しました……、すぐ帰ります……。行きましょう、羽鳥様」と言い歩き出す。すよと南音が「ちょっと待って!」と引き止めると、ガックンと音羽の体が揺れゆっくりと、ゆっくりと振り返り「息子を、宜しくね」と南音が言うと「は……い」と小さくお辞儀をして返した。






 風の音が聞こえてきて少し肌寒い。人がいなくなったせいで余計に寒さを感じる。息をはいたり吸ったりすることによって白い息が出て来る。ヒヤリと冷たい羽鳥の手とぶつかり余計に寒くなったように感じたりする。帰る途中でもとことん無言で羽鳥は喋ろうとする気配がない。はぁ、とため息をつく音羽をチラリと羽鳥は見る。珍しく羽鳥の横を歩く音羽を見るも、羽鳥はあまり嬉しいとう気分にはなれずにいた。
音羽は何度もため息を付き面白くなさそうに欠伸をしたりする。

 結局無言同士で家につく。私が玄関をカチャリと開けると、日和が待ち構えていて羽鳥に思いっ切り抱きつく。羽鳥も見ていたアンネも苦笑するが音羽は小さくため息を付き「お母様、羽鳥の部屋どこ」と尋ねる。すると「あなたの部屋の二階よ」と言った。


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